(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156896
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】建物連結構造及びその設計方法
(51)【国際特許分類】
E04H 9/02 20060101AFI20231018BHJP
F16F 15/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
E04H9/02 301
E04H9/02 331B
E04H9/02 331D
E04H9/02 331E
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066538
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】西原 愼一
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC43
2E139AC80
2E139BA03
2E139BA04
2E139BA12
2E139CA01
2E139CA11
2E139CA21
3J048AA06
3J048AB01
3J048BE01
3J048CB30
3J048DA04
3J048EA38
(57)【要約】
【課題】隣り合う大規模な免震建物の距離を低減し易い建物連結構造及びその設計方法を提供する。
【解決手段】第1下部構造体11、第1免震層12及び第1上部構造体13をこの順に有する第1建物10と、第2下部構造体21、第2免震層22及び第2上部構造体23をこの順に有する第2建物20であって、上面視において、第1上部構造体13の第1重心G1を通る第1上部構造体13の第1長手軸LA1が、第2上部構造体23の第2重心G2を通る第2上部構造体23の第2長手軸LA2に交差し且つ第2重心G2を通らない、第2建物20と、第1上部構造体13の下端側部分の第1長手方向の端部と第2上部構造体23の下端側部分の第2短手方向の端部とを連結する剛性部材30と、第2上部構造体23の上端側部分が第1長手方向の地震力によって捻じれを生じるように、第1上部構造体13の上端側部分の第1長手方向の端部と第2上部構造体23の上端側部分の第2短手方向の端部とを連結する減衰部材40と、を有する建物連結構造。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1下部構造体、第1免震層及び第1上部構造体をこの順に有する第1建物と、
第2下部構造体、第2免震層及び第2上部構造体をこの順に有する第2建物であって、上面視において、前記第1上部構造体の第1重心を通る前記第1上部構造体の第1長手軸が、前記第2上部構造体の第2重心を通る前記第2上部構造体の第2長手軸に交差し且つ前記第2重心を通らない、第2建物と、
前記第1上部構造体の下端側部分の第1長手方向の端部と前記第2上部構造体の下端側部分の第2短手方向の端部とを連結する剛性部材と、
前記第2上部構造体の上端側部分が前記第1長手方向の地震力によって捻じれを生じるように、前記第1上部構造体の上端側部分の前記第1長手方向の端部と前記第2上部構造体の前記上端側部分の前記第2短手方向の端部とを連結する減衰部材と、を有する建物連結構造。
【請求項2】
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれと、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体を3次元立体解析モデルとすることで架構応力解析モデルを作成する静的応力解析用モデル作成ステップと、
前記架構応力解析モデルにより静的弾塑性増分解析を行い、当該増分解析によって得られる荷重・変形関係から各建物各階層の復元力特性を設定する架構復元力特性設定ステップと、
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれと、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体について、各階床の重心位置に質点として質量を集約し、前記質点間を設定された前記復元力特性による曲げ剛性とせん断剛性を持つバネ要素とし、免震装置を上部構造・下部構造間に所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置する動的解析用モデル作成ステップと、
各々の前記質点に回転慣性を付加し、前記質点間の各々の前記バネ要素にねじり剛性を付加し、前記減衰部材を所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置し、前記減衰部材と同階層の各々の前記質点との間を剛体接続とする第1捻じれ対応ステップと、
建設地の地盤特性を考慮した地震波を作成する地震波作成ステップと、
前記静的応力解析用モデル作成ステップ、前記架構復元力特性設定ステップ、前記動的解析用モデル作成ステップ及び前記第1捻じれ対応ステップにより作成された応答解析モデルと前記地震波による時刻歴応答解析を行い、得られた各時刻の解析結果から、少なくとも層せん断力の最大応答値を得る時刻歴応答解析ステップと、
前記層せん断力の前記最大応答値を包絡する値となるよう、架構応力解析用の設計用地震力を設定する設計用地震力設定ステップと、
前記減衰部材の最大減衰力により、前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれに地震時に入力する架構応力解析用の設計用ねじりモーメントを設定する第2捻じれ対応ステップと、を有する、請求項1に記載の建物連結構造の設計方法。
【請求項3】
長期荷重、前記設計用地震力及び前記設計用ねじりモーメントにより、前記免震装置による付加応力を考慮して前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれの架構応力解析を行う上部構造架構応力解析ステップと、
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体からの荷重と、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体における前記設計用地震力により、前記免震装置による付加応力を考慮して前記第1下部構造体と前記第2下部構造体の架構応力解析を行う下部構造架構応力解析ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により前記減衰部材の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う上端側連結減衰部材検討ステップと、を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により断面算定を行う上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により、前記免震装置の支承部材の面圧・変形量の確認、取り付け部の検討を行う免震支承部材検討ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により、前記免震層に設けられる免震層減衰部材の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う免震層減衰部材検討ステップと、を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1捻じれ対応ステップを、前記免震装置の位置を実際の配置に合わせ、前記減衰部材を実際の位置に配置して行う、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記第2捻じれ対応ステップにおいて、前記設計用ねじりモーメントを前記架構応力解析用モデルに入力される偶力とする、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建物連結構造及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、隣り合う免震建物の上部構造体の下端側部分同士と上端側部分同士を剛性部材で連結することにより、建物間距離の低減を可能にした建物連結構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される建物連結構造は、大規模な建物への適用が難しかった。
【0005】
そこで本発明の目的は、隣り合う大規模な免震建物の距離を低減し易い建物連結構造及びその設計方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下のとおりである。
【0007】
[1]
第1下部構造体、第1免震層及び第1上部構造体をこの順に有する第1建物と、
第2下部構造体、第2免震層及び第2上部構造体をこの順に有する第2建物であって、上面視において、前記第1上部構造体の第1重心を通る前記第1上部構造体の第1長手軸が、前記第2上部構造体の第2重心を通る前記第2上部構造体の第2長手軸に交差し且つ前記第2重心を通らない、第2建物と、
前記第1上部構造体の下端側部分の第1長手方向の端部と前記第2上部構造体の下端側部分の第2短手方向の端部とを連結する剛性部材と、
前記第2上部構造体の上端側部分が前記第1長手方向の地震力によって捻じれを生じるように、前記第1上部構造体の上端側部分の前記第1長手方向の端部と前記第2上部構造体の前記上端側部分の前記第2短手方向の端部とを連結する減衰部材と、を有する建物連結構造。
【0008】
[2]
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれと、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体を3次元立体解析モデルとすることで架構応力解析モデルを作成する静的応力解析用モデル作成ステップと、
前記架構応力解析モデルにより静的弾塑性増分解析を行い、当該増分解析によって得られる荷重・変形関係から各建物各階層の復元力特性を設定する架構復元力特性設定ステップと、
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれと、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体について、各階床の重心位置に質点として質量を集約し、前記質点間を設定された前記復元力特性による曲げ剛性とせん断剛性を持つバネ要素とし、免震装置を上部構造・下部構造間に所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置する動的解析用モデル作成ステップと、
各々の前記質点に回転慣性を付加し、前記質点間の各々の前記バネ要素にねじり剛性を付加し、前記減衰部材を所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置し、前記減衰部材と同階層の各々の前記質点との間を剛体接続とする第1捻じれ対応ステップと、
建設地の地盤特性を考慮した地震波を作成する地震波作成ステップと、
前記静的応力解析用モデル作成ステップ、前記架構復元力特性設定ステップ、前記動的解析用モデル作成ステップ及び前記第1捻じれ対応ステップにより作成された応答解析モデルと前記地震波による時刻歴応答解析を行い、得られた各時刻の解析結果から、少なくとも層せん断力の最大応答値を得る時刻歴応答解析ステップと、
前記層せん断力の前記最大応答値を包絡する値となるよう、架構応力解析用の設計用地震力を設定する設計用地震力設定ステップと、
前記減衰部材の最大減衰力により、前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれに地震時に入力する架構応力解析用の設計用ねじりモーメントを設定する第2捻じれ対応ステップと、を有する、[1]に記載の建物連結構造の設計方法。
【0009】
[3]
長期荷重、前記設計用地震力及び前記設計用ねじりモーメントにより、前記免震装置による付加応力を考慮して前記第1上部構造体と前記第2上部構造体のそれぞれの架構応力解析を行う上部構造架構応力解析ステップと、
前記第1上部構造体と前記第2上部構造体からの荷重と、前記第1下部構造体と前記第2下部構造体における前記設計用地震力により、前記免震装置による付加応力を考慮して前記第1下部構造体と前記第2下部構造体の架構応力解析を行う下部構造架構応力解析ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により前記減衰部材の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う上端側連結減衰部材検討ステップと、を有する、[2]に記載の方法。
【0010】
[4]
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により断面算定を行う上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により、前記免震装置の支承部材の面圧・変形量の確認、取り付け部の検討を行う免震支承部材検討ステップと、
前記上部構造架構応力解析ステップと前記下部構造架構応力解析ステップの応力解析結果により、前記免震層に設けられる免震層減衰部材の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う免震層減衰部材検討ステップと、を有する、[3]に記載の方法。
【0011】
[5]
前記第1捻じれ対応ステップを、前記免震装置の位置を実際の配置に合わせ、前記減衰部材を実際の位置に配置して行う、[2]~[4]の何れか1項に記載の方法。
【0012】
[6]
前記第2捻じれ対応ステップにおいて、前記設計用ねじりモーメントを前記架構応力解析用モデルに入力される偶力とする、[2]~[5]の何れか1項に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、隣り合う大規模な免震建物の距離を低減し易い建物連結構造及びその設計方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1A】本発明の一実施形態の建物連結構造を示す上面図である。
【
図2A】
図1Aに示す建物連結構造において廊下を設けた場合の一例を示す上面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の設計方法を示すフローチャートである。
【
図4】実施例における静的応力解析用モデル作成ステップで作成した架構応力解析モデルを示す画像である。
【
図5】実施例における架構復元力特性設定ステップで設定した復元力特性を示す表である。
【
図6】実施例における架構復元力特性設定ステップで得られた荷重・変形関係を示すグラフである。
【
図7】実施例における動的解析用モデル作成ステップで作成した動的解析用モデルを示す説明図である。
【
図8】実施例における第1捻じれ対応ステップでさらに設定を加えた動的解析用モデルを示す説明図である。
【
図9】実施例における地震波作成ステップで作成した地震波の波形を示すグラフである。
【
図10】実施例における地震波作成ステップで作成した地震波の速度応答スペクトルを示すグラフである。
【
図11】実施例における時刻歴応答解析ステップで得られた時刻歴応答解析結果を示す表とグラフである。
【
図12】実施例における設計用地震力設定ステップで設定した設計用地震力を示す表である。
【
図13】実施例における第2捻じれ対応ステップで架構応力解析用モデルに入力した設計用ねじりモーメントを示す説明図である。
【
図14】実施例における上部構造架構応力解析ステップで得られた架構応力解析結果を示す説明図である。
【
図15】実施例における下部構造架構応力解析ステップで得られた架構応力解析結果を示す説明図である。
【
図16】実施例における上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップで得られた断面算定結果を示す表である。
【
図17】実施例における免震支承部材検討ステップで使用した面圧・変形関係を示すグラフである。
【
図18】実施例における免震層減衰部材検討ステップで検討したオイルダンパーを示す説明図である。
【
図19】実施例における上端側連結減衰部材検討ステップで使用したオイルダンパーの応答結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を例示説明する。
【0016】
図1A~
図1Bに示すように、本発明の一実施形態において建物連結構造は、第1建物10、第2建物20、剛性部材30及び減衰部材40を有する。
【0017】
本実施形態の建物連結構造は2棟のRC(Reinforced Concrete)造の集合住宅に適用される。なお、本実施形態の建物連結構造はこれに限らず、例えば、3棟以上のRC造の集合住宅マンションに適用してもよいし、RC造以外の建物や、集合住宅以外の建物に適用してもよい。
【0018】
第1建物10は、第1下部構造体11、第1免震層12及び第1上部構造体13を鉛直上方に向けてこの順に有する免震建物である。第1上部構造体13は上面視において、第1重心G1と第1重心G1を通る第1長手軸LA1と第1重心G1を通り第1長手軸LA1に垂直な第1短手軸SA1とを有する。また第1上部構造体13は上面視において、2つの長辺と2つの短辺を有する長方形状の外形をなす。なお、第1上部構造体13は上面視において長方形状以外の細長い外形をなす構成としてもよい。
【0019】
第2建物20は、第2下部構造体21、第2免震層22及び第2上部構造体23を鉛直上方に向けてこの順に有する免震建物である。第2上部構造体23は上面視において、第2重心G2と第2重心G2を通る第2長手軸LA2と第2重心G2を通り第2長手軸LA2に垂直な第2短手軸SA2とを有する。また第2上部構造体23は上面視において、2つの長辺と2つの短辺を有する長方形状の外形をなす。長方形状をなす。なお、第2上部構造体23は上面視において長方形状以外の細長い外形をなす構成としてもよい。
【0020】
第1長手軸LA1に平行な方向を第1長手方向ともいい、第1短手軸SA1に平行な方向を第1短手方向ともいい、第2長手軸LA2に平行な方向を第2長手方向ともいい、第2短手軸SA2に平行な方向を第2短手方向ともいう。
【0021】
上面視において、第1上部構造体13の第1重心G1を通る第1上部構造体13の第1長手軸LA1は、第2上部構造体23の第2重心G2を通る第2上部構造体23の第2長手軸LA2に交差(本実施形態では直交)し且つ第2重心G2を通らない。このように、第1建物10は第2建物20に対して偏芯配置される。本実施形態では第1建物10と第2建物20は第1長手軸LA1と第2長手軸LA2が直交する偏芯配置とされるが、これに限らず、第1建物10と第2建物20は第1長手軸LA1と第2長手軸LA2が90°以外の角度で交差する偏芯配置としてもよい。
【0022】
本実施形態では第1上部構造体13と第2上部構造体23は、上面視でL字状をなす偏芯配置とされる。なお、第1上部構造体13と第2上部構造体23はこれに限らず、例えば、上面視で略T字状をなす偏芯配置としてもよい。
【0023】
本実施形態では第1建物10は、第1上部構造体13が例えば12層から24層の階層構造を有する大規模な建物である。なお、第1建物10はこれに限らず、例えば、第1上部構造体13が11層以下の階層構造を有する中・小規模な建物として構成してもよい。
【0024】
本実施形態では第2建物20は、第2上部構造体23が例えば12層から24層の階層構造を有する大規模な建物である。なお、第2建物20はこれに限らず、例えば、第2上部構造体23が11層以下の階層構造を有する中・小規模な建物として構成してもよい。
【0025】
第1免震層12と第2免震層22はそれぞれ、免震装置を有する。免震装置は、支承部材(アイソレータ)とダンパーを有する。支承部材は特に限定されないが、例えば、積層ゴム支承部材、すべり支承部材又は転がり支承部材、或いはこれらの任意の組み合わせによって構成される。ダンパーは特に限定されないが、例えば、オイルダンパー、鋼材ダンパー又は鉛ダンパー、或いはこれらの任意の組み合わせによって構成される。
【0026】
第1免震層12と第2免震層22は別々に分離して設けてもよいし、一体に連ねて設けてもよい。
【0027】
第1下部構造体11と第2下部構造体21はそれぞれ、例えば1層の階層構造を有するが、これに限らず、2層以上の階層構造を有してもよい。
【0028】
第1下部構造体11と第2下部構造体21は別々に分離して設けてもよいし、一体に連ねて設けてもよい。
【0029】
剛性部材30は、第1上部構造体13の下端側部分の第1長手方向の(第2上部構造体23側の)端部と第2上部構造体23の下端側部分の第2短手方向の(第1上部構造体13側の)端部とを連結する。すなわち、剛性部材30は、第1上部構造体13の下端側部分の(第2上部構造体23側の)短辺と第2上部構造体23の下端側部分の(第1上部構造体13側の)長辺とを連結する。
【0030】
剛性部材30は、第1上部構造体13の下端側部分と第2上部構造体23の下端側部分とを1層以上の階層において連結する。剛性部材30によるこの連結により、地震時に第1上部構造体13と第2上部構造体23は、剛性部材30によって連結される1層以上の階層において一体に水平方向に振動する。
【0031】
剛性部材30が第1上部構造体13の下端側部分と第2上部構造体23の下端側部分とを複数層の階層において連結する場合、当該複数層の階層は連続する階層としてもよいし、不連続の階層としてもよい。
【0032】
剛性部材30は、第1上部構造体13の下端部(つまり、下端又は下端付近或いはその両方)と第2上部構造体23の下端部とを連結するのが好ましい。
【0033】
剛性部材30は例えば、梁、ブレースなどの構造部材によって構成される。剛性部材30は例えば、鉄骨、又は鉄骨とコンクリートによって構成される。剛性部材30は例えば、躯体の一部として構成される。
【0034】
減衰部材40は、第1上部構造体13の上端側部分の第1長手方向の(第2上部構造体23側の)端部と第2上部構造体23の上端側部分の第2短手方向の(第1上部構造体13側の)端部とを連結する。すなわち、減衰部材40は、第1上部構造体13の上端側部分の(第2上部構造体23側の)短辺と第2上部構造体23の上端側部分の(第1上部構造体13側の)長辺とを連結する。
【0035】
減衰部材40は、第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とを1層以上の階層において連結する。減衰部材40によるこの連結により、地震時に第1上部構造体13と第2上部構造体23は、減衰部材40によって連結される1層以上の階層において相互に水平方向(第1長手方向と第2長手方向)に力を減衰させつつ伝達する。
【0036】
減衰部材40は、第1長手方向の地震力によって第2上部構造体23の上端側部分が(
図1Aにおいて時計回り方向と反時計回り方向に繰り返し)捻じれを生じるように第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とを連結する。より具体的には、減衰部材40は、第1長手方向の地震力によって第2上部構造体23の上端側部分が捻じれを生じ、第2長手方向の地震力によって第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とのそれぞれが(
図1Aにおいて時計回り方向と反時計回り方向に繰り返し)捻じれを生じるように第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とを連結する。
【0037】
減衰部材40は、第1上部構造体13の上端部(つまり、上端又は上端付近或いはその両方)と第2上部構造体23の上端部とを連結するのが好ましい。
【0038】
所定の階層において、減衰部材40は例えば、1つ以上のダンパー41によって構成される。ダンパー41は例えば、オイルダンパー、鋼材ダンパー又は鉛ダンパー、或いはこれらの任意の組み合わせによって構成され、好ましくはオイルダンパーによって構成される。
【0039】
所定の階層において、減衰部材40は例えば、
図1Aに示すように第1短手方向に並べて設けられる2つのダンパー41によって構成され、当該2つのダンパー41は、上面視において減衰方向(つまり、減衰できる力の方向)が第1長手軸LA1に対して互いに反対側に傾くように配置される。
【0040】
図2A~
図2Bに示すように、建物連結構造は、第1上部構造体13の上端側部分の第1長手方向の端部と第2上部構造体23の上端側部分の第2短手方向の端部との間に渡り廊下50を有する構成としてもよい。渡り廊下50には、図示しないエキスパンションジョイント(Expansion joint)が、地震時の第1上部構造体13と第2上部構造体23の間の相対変位を吸収可能に設けられる。このように渡り廊下50を設ける場合には、エキスパンションジョイントのコスト低減などの観点から、第1上部構造体13と第2上部構造体23の相互間の間隔(つまり建物間距離)ができるだけ小さいのが好ましい。なお、渡り廊下50を設けない場合でも、建物間距離が小さい方が好ましい場合がある。
【0041】
渡り廊下50は、図示する例では第1上部構造体13の外廊下13aと第2上部構造体23の外廊下23aとの連結部によって構成されるが、これに限らず例えば、第1上部構造体13の内廊下と第2上部構造体23の内廊下との連結部によって構成してもよい。なお、渡り廊下50を設けない構成としてもよい。
【0042】
偏芯配置とされる第1上部構造体13と第2上部構造体23は、第1長手方向と第2長手方向のそれぞれにおいて固有周期が異なるため、地震時に第1長手方向と第2長手方向のそれぞれにおいて異なる揺れ方をする。この場合、剛性部材30によって第1上部構造体13の下端側部分と第2上部構造体23の下端側部分とを連結すると、地震時の揺れの大きさは、第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とのそれぞれにおいて増幅される。しかし、その増幅される揺れは、減衰部材40によって第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とを連結することにより、当該減衰部材40によって減衰することができる。その結果、第1上部構造体13と第2上部構造体23とを互いに連結せずに独立した構造とした場合に比べて、建物間距離を小さく設定することができる。したがって、本実施形態の建物連結構造によれば、隣り合う大規模な免震建物の距離を容易に低減できる。
【0043】
なお、このように減衰部材40によって第1上部構造体13の上端側部分と第2上部構造体23の上端側部分とを連結する構成とした場合には、少なくとも、第1長手方向の地震力によって第2上部構造体23の上端側部分が減衰部材40を介した第1上部構造体13からの減衰し切れない力の伝達によって捻じれを生じることになる。そこで、その捻じれによる影響を考慮した設計が必要となる。
【0044】
本実施形態の建物連結構造は、以下に説明する一実施形態の設計方法によって設計するのが好ましい。
【0045】
図3に示すように、本実施形態の設計方法は、静的応力解析用モデル作成ステップS1、架構復元力特性設定ステップS2、動的解析用モデル作成ステップS3、第1捻じれ対応ステップS4、地震波作成ステップS5、時刻歴応答解析ステップS6、設計用地震力設定ステップS7、第2捻じれ対応ステップS8、上部構造架構応力解析ステップS9、下部構造架構応力解析ステップS10、上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップS11、免震支承部材検討ステップS12、免震層減衰部材検討ステップS13及び上端側連結減衰部材検討ステップS14をこの順に有する。
【0046】
なお、本実施形態の設計方法は、上記のステップを可能な範囲で順序を入れ替えて行う構成としてもよい。また、本実施形態の設計方法は、上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップS11から免震層減衰部材検討ステップS13までのステップを有さない構成としてもよい。本実施形態の設計方法は、上部構造架構応力解析ステップS9から上端側連結減衰部材検討ステップS14までのステップを有さない構成としてもよい。
【0047】
静的応力解析用モデル作成ステップS1は、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれと、第1下部構造体11と第2下部構造体21を3次元立体解析モデルとすることで架構応力解析モデル(一例として、
図4を参照)を作成するステップである。
【0048】
架構復元力特性設定ステップS2は、架構応力解析モデルにより静的弾塑性増分解析を行い、当該増分解析によって得られる荷重・変形関係(一例として、
図6を参照)から各建物各階層の復元力特性(一例として、
図5を参照)を設定するステップである。
【0049】
動的解析用モデル作成ステップS3は、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれと、第1下部構造体11と第2下部構造体21について、各階床の重心位置に質点として質量を集約し、質点間を設定された復元力特性による曲げ剛性とせん断剛性を持つバネ要素(曲げせん断棒モデル又は串団子モデル)とし、免震装置を上部構造・下部構造間に所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置する(一例として、
図7を参照)ステップである。
【0050】
第1捻じれ対応ステップS4は、各々の質点に回転慣性を付加し、質点間の各々のバネ要素にねじり剛性を付加し、減衰部材40を所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置し、減衰部材40と同階層の各々の質点との間を剛体接続とする(一例として、
図8を参照)ステップである。第1捻じれ対応ステップS4は、免震装置の位置を実際の配置に合わせ、減衰部材40を実際の位置に配置して行うのが好ましい。
【0051】
地震波作成ステップS5は、建設地の地盤特性を考慮した地震波(一例として、
図9、
図10を参照)を作成するステップである。
【0052】
時刻歴応答解析ステップS6は、静的応力解析用モデル作成ステップS1、架構復元力特性設定ステップS2、動的解析用モデル作成ステップS3及び第1捻じれ対応ステップS4により作成された応答解析モデルと地震波による時刻歴応答解析を行い、得られた各時刻の解析結果から、少なくとも層せん断力の最大応答値(一例として、
図11を参照)を得るステップである。
【0053】
設計用地震力設定ステップS7は、層せん断力の最大応答値を包絡する値となるよう、架構応力解析用の設計用地震力(一例として、
図12を参照)を設定するステップである。
【0054】
第2捻じれ対応ステップS8は、減衰部材40の最大減衰力により、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれに地震時に入力する架構応力解析用の設計用ねじりモーメントを設定するステップである。第2捻じれ対応ステップS8においては、設計用ねじりモーメントを架構応力解析用モデルに入力される偶力(一例として、
図13を参照)とするのが好ましい。
【0055】
上部構造架構応力解析ステップS9は、長期荷重、設計用地震力及び設計用ねじりモーメントにより、免震装置による付加応力を考慮して第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれの架構応力解析(一例として、
図14を参照)を行うステップである。
【0056】
下部構造架構応力解析ステップS10は、第1上部構造体13と第2上部構造体23からの荷重と、第1下部構造体11と第2下部構造体21における設計用地震力により、免震装置による付加応力を考慮して第1下部構造体11と第2下部構造体21の架構応力解析(一例として、
図15を参照)を行うステップである。
【0057】
上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップS11は、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により断面算定(一例として、
図16を参照)を行うステップである。断面算定により、各断面が許容耐力内であることを確認することができる。
【0058】
免震支承部材検討ステップS12は、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により、免震装置の支承部材の面圧・変形量の確認、取り付け部の検討(一例として、
図17を参照)を行うステップである。
【0059】
免震層減衰部材検討ステップS13は、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により、免震層に設けられる免震層減衰部材(一例として、
図18を参照)の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行うステップである。
【0060】
上端側連結減衰部材検討ステップS14は、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により減衰部材40の最大応答速度の確認(一例として、
図19を参照)、取り付け部の検討を行うステップである。
【0061】
本実施形態の設計方法によれば、本実施形態の建物連結構造を容易に実現することができる。
【0062】
本発明は前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0063】
したがって、前述した実施形態の建物連結構造は、第1下部構造体11、第1免震層12及び第1上部構造体13をこの順に有する第1建物10と、第2下部構造体21、第2免震層22及び第2上部構造体23をこの順に有する第2建物20であって、上面視において、第1上部構造体13の第1重心G1を通る第1上部構造体13の第1長手軸LA1が、第2上部構造体23の第2重心G2を通る第2上部構造体23の第2長手軸LA2に交差し且つ第2重心G2を通らない、第2建物20と、第1上部構造体13の下端側部分の第1長手方向の端部と第2上部構造体23の下端側部分の第2短手方向の端部とを連結する剛性部材30と、第2上部構造体23の上端側部分が第1長手方向の地震力によって捻じれを生じるように、第1上部構造体13の上端側部分の第1長手方向の端部と第2上部構造体23の上端側部分の第2短手方向の端部とを連結する減衰部材40と、を有する建物連結構造である限り変更可能である。
【0064】
また、前述した実施形態の建物連結構造は、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれと、第1下部構造体11と第2下部構造体21を3次元立体解析モデルとすることで架構応力解析モデルを作成する静的応力解析用モデル作成ステップS1と、架構応力解析モデルにより静的弾塑性増分解析を行い、当該増分解析によって得られる荷重・変形関係から各建物各階層の復元力特性を設定する架構復元力特性設定ステップS2と、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれと、第1下部構造体11と第2下部構造体21について、各階床の重心位置に質点として質量を集約し、質点間を設定された復元力特性による曲げ剛性とせん断剛性を持つバネ要素とし、免震装置を上部構造・下部構造間に所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置する動的解析用モデル作成ステップS3と、各々の質点に回転慣性を付加し、質点間の各々のバネ要素にねじり剛性を付加し、減衰部材40を所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置し、減衰部材40と同階層の各々の質点との間を剛体接続とする第1捻じれ対応ステップS4と、建設地の地盤特性を考慮した地震波を作成する地震波作成ステップS5と、静的応力解析用モデル作成ステップS1、架構復元力特性設定ステップS2、動的解析用モデル作成ステップS3及び第1捻じれ対応ステップS4により作成された応答解析モデルと地震波による時刻歴応答解析を行い、得られた各時刻の解析結果から、少なくとも層せん断力の最大応答値を得る時刻歴応答解析ステップS6と、層せん断力の最大応答値を包絡する値となるよう、架構応力解析用の設計用地震力を設定する設計用地震力設定ステップS7と、減衰部材40の最大減衰力により、第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれに地震時に入力する架構応力解析用の設計用ねじりモーメントを設定する第2捻じれ対応ステップS8と、を有する、建物連結構造の設計方法によって設計するのが好ましい。
【0065】
なお、前述した実施形態の設計方法は、上記構成において、長期荷重、設計用地震力及び設計用ねじりモーメントにより、免震装置による付加応力を考慮して第1上部構造体13と第2上部構造体23のそれぞれの架構応力解析を行う上部構造架構応力解析ステップS9と、第1上部構造体13と第2上部構造体23からの荷重と、第1下部構造体11と第2下部構造体21における設計用地震力により、免震装置による付加応力を考慮して第1下部構造体11と第2下部構造体21の架構応力解析を行う下部構造架構応力解析ステップS10と、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により減衰部材40の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う上端側連結減衰部材検討ステップS14と、を有する方法であるのが好ましい。
【0066】
前述した実施形態の設計方法は、上記構成において、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により断面算定を行う上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップS11と、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により、免震装置の支承部材の面圧・変形量の確認、取り付け部の検討を行う免震支承部材検討ステップS12と、上部構造架構応力解析ステップS9と下部構造架構応力解析ステップS10の応力解析結果により、免震層に設けられる免震層減衰部材の最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行う免震層減衰部材検討ステップS13と、を有する方法であるのが好ましい。
【0067】
前述した実施形態の設計方法は、上記構成において、第1捻じれ対応ステップS4を、免震装置の位置を実際の配置に合わせ、減衰部材40を実際の位置に配置して行う方法であるのが好ましい。
【0068】
前述した実施形態の設計方法は、上記構成において、第2ねじれ対応ステップS8において、設計用ねじりモーメントを架構応力解析用モデルに入力される偶力とする方法であるのが好ましい。
【実施例0069】
本発明の実施例として、東棟(第1建物)と南棟(第2建物)の2棟からなるRC造の24階建て集合住宅を以下のとおり設計した。
【0070】
まず、上部構造・下部構造のそれぞれを3次元立体解析モデルとした(静的応力解析用モデル作成ステップ)。作成した3次元立体解析モデルを
図4に示す。次に、架構応力解析モデルにより静的弾塑性増分解析を行い、増分解析によって得られた
図6に示す荷重・変形関係から各棟各層の復元力特性を設定した(架構復元力特性設定ステップ)。設定した復元力特性を示す表
図5に示す。次に、上部構造の各棟、下部構造について、各階床の質量を重心位置に質点として集約し、質点間は設定した復元力特性による曲げ剛性、及びせん断剛性を持つバネ要素とする動的解析用モデルとしての曲げせん断棒モデルを作成した。免震装置は上部構造と下部構造の間に所定の剛性と減衰係数を持つ要素として配置した。免震装置の諸元は、製品のばらつき、温度によるばらつき、経年による性状変化を考慮して設定した(動的解析用モデル作成ステップ)。作成した動的解析用モデルを
図7に示す。次に、動的解析用モデルにねじれを考慮してさらに設定を加えた(第1捻じれ対応ステップ)。その際、免震装置の位置は実際の配置に合わせた。各質点に回転慣性を付加し、質点間の各バネ要素にねじり剛性を付加した。2棟連結オイルダンパーは、所定の剛性を減衰係数を持つ要素とし、実際の位置に配置した。2棟連結オイルダンパーと各棟の質点は、剛体接続とした。その結果得られた動的解析用モデルを
図8に示す。
図8に示すように、両棟の24階床及び21階床をオイルダンパーで連結し、オイルダンパー端部の節点は各棟剛心位置の節点と剛体で接続し、節点間の距離・回転角が同一となるようにした。各階剛心位置に節点を設け、質量及び回転慣性を加えた。各階の節点間はねじり剛性を与えた等価曲げせん断棒で接続した。2階及び免震床は剛床とした。免震層の免震装置・オイルダンパーは各平面位置に配置した。1階の節点間はねじり剛性を与えた等価せん断棒で接続した。
【0071】
次に、建設地の地盤特性を考慮した地震波を作成した(告示波、サイト波)。作成した地震波の波形(Vs600m/s)を
図9に示す。また、作成した地震波の速度応答スペクトル(h=5%)を
図10に示す。次に、作成した応答解析モデル、地震波による時刻歴応答解析を行った。得られた各時刻の解析結果から、変位、層間変位、速度、加速度、層せん断力及び転倒モーメントについて、最大応答値を得た(時刻歴応答解析ステップ)。得られた時刻歴応答解析結果の一例(レベル2地震動時、東棟X方向)を
図11に示す。次に、最大応答層せん断力を包絡する値となるよう、架構応力解析用の設計用地震力を設定した(設計用地震力設定ステップ)。設定した設計用地震力を
図12に示す。なお、2層より下部のEV部は十分剛性が高いと考え、2層重量及び地震力(表中、免震層の欄)に含む。次に、上部連結オイルダンパーの最大減衰力により、各棟上部構造への地震時のねじりモーメントを、架構応力解析用モデルに偶力として入力した(第2捻じれ対応ステップ)。架構応力解析用モデルに入力した設計用ねじりモーメントを
図13に示す。上部連結オイルダンパーにより、南棟・東棟各棟に捻じれが生じる。最大応答時のオイルダンパー減衰力を、各棟の最大応答との位相差を考慮して0.5倍し、各棟のダンパー設置階に偶力を作用させた。
【0072】
次に、長期荷重及び設計用地震力により上部構造の架構応力解析を行った。その際、免震装置による付加応力を考慮した(上部構造架構応力解析ステップ)。得られた架構応力解析結果(設計用地震荷重時・Y方向正、1通り応力図)を
図14に示す。次に、上部構造からの荷重及び下部構造における設計用地震力により下部構造の架構応力解析を行った。その際、免震装置による付加応力を考慮した(下部構造架構応力解析ステップ)。得られた架構応力解析結果を
図15に示す。次に、応力解析結果により断面算定を行った。各断面が許容耐力内であることを確認した(上部構造架構・下部構造架構断面算定ステップ)。得られた断面算定結果(G1の断面算定)を
図16に示す。次に、免震支承材について、面圧・変形量の確認、取り付け部の検討を行った(免震支承部材検討ステップ)。使用した積層ゴムの面圧・変形関係を
図17に示す。
【0073】
次に、免震層オイルダンパーについて、最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行った(免震層減衰部材検討ステップ)。検討したオイルダンパーを
図18に示す。オイルダンパー取り付け部の検討方針として、オイルダンパー基礎はオイルダンパーの最大減衰力によって発生する応力に対し、短期許容応力度以下になるように設計を行うこととし、最大減衰力は、オイルダンパーの変動特性を考慮した値とすることとした。また、検討は、基礎の強軸方向に反力が作用する場合と、材軸直交方向に変形した場合を組み合わせて行うこととした。そして、検討諸元、アンカーボルトの検討、曲げに対する検討、せん断に対する検討を以下のとおり行った。
・検討諸元
水平性能 :最大減衰力 Fmax=900(kN)
設計用最大減衰力:Pmax=1.20×900=1080(kN)
・アンカーボルトの検討
アンカーボルト :8-M30(ABR490)
ねじ部有効断面積:
sca=560.6(mm
2/本)
コンクリート強度:Fc=48(N/mm
2)
設計用応力 :N
D=Pmax=1080(kN)
許容引張力 :p
a=min(p
a1,p
a2)=1403(kN)
p
a1=φ
1・σ
pa・
sca=1.0×490×560.0×10
-3=2198(kN)
p
a2=φ
2・σ
t・A
c=2/3×0.31×√48×9.80×10
5×10
-3×1403(kN)
N
D/p
a=1080/1403=0.77≦1.0・・・OK
・曲げに対する検討
基礎断面 :b=600(mm), D=1000(mm), d=900(mm), j=787.5(mm)
主筋 :4-D32(SD390), a
t=794(mm
2/本)
設計用応力 :M
D=Pmax・h=1080×0.70=756(kN・m)
許容耐力 :M
A=a
t・f
t・j=4×794×390×787.5×10
-6=975(kN・m)
M
D/M
A=756/975=0.78≦1.0・・・OK
・せん断に対する検討
基礎断面 :b=600(mm), D=1000(mm), d=900(mm), j=787.5(mm)
コンクリート強度:Fc=48(N/mm
2), fs=1.455(N/mm
2)
帯筋 :4-D13@100(SD295A), p
π=0.847(%)
【0074】
そして最後に、上部連結オイルダンパーについて最大応答速度の確認、取り付け部の検討を行った(上端側連結減衰部材検討ステップ)。使用したオイルダンパーの応答結果(レベル2地震動時のOD部材方向応答結果、X方向時)を
図19に示す。