(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156905
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ターゲットおよび黒化膜
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20231018BHJP
C23C 14/08 20060101ALI20231018BHJP
C22C 19/07 20060101ALI20231018BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20231018BHJP
C22C 9/06 20060101ALI20231018BHJP
C22C 19/03 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C23C14/08 K
C22C19/07 Z
G06F3/041 490
G06F3/041 495
C22C9/06
C22C19/03 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066558
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 巡
(72)【発明者】
【氏名】下村 恭平
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA09
4K029AA11
4K029BA50
4K029BC07
4K029CA06
4K029DC04
4K029DC08
4K029DC09
(57)【要約】
【課題】反射率が低く抑えられ且つ高温高湿下でも変色し難い耐環境試験特性を備えた黒化膜を形成するのに好適なスパッタリング用のターゲットを提供する。
【解決手段】スパッタリング用のターゲットは、CuaNibCocで表される組成を有し、前記aはCuの比率をat%で示し、前記bはNiの比率をat%で示し、前記cはCoの比率をat%で示し、a+b+c=100、0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、10≦b≦65、0.1≦c、である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuaNibCocで表される組成を有し、前記aはCuの比率をat%で示し、前記bはNiの比率をat%で示し、前記cはCoの比率をat%で示し、
a+b+c=100、
0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、
10≦b≦65、
0.1≦c、
であることを特徴とするスパッタリング用のターゲット。
【請求項2】
組成が(CuaNibCoc)100-xOxで表される金属酸化物からなり、前記aはCuの比率をat%で示し、前記bはNiの比率をat%で示し、前記cはCoの比率をat%で示し、前記xはOの比率をat%で示し、
a+b+c=100、
0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、
10≦b≦65、
0.1≦c、
30≦x≦50、
であることを特徴とする黒化膜。
【請求項3】
前記xが30≦x<40であることを特徴とする、請求項2に記載の黒化膜。
【請求項4】
前記xが40≦x≦50であることを特徴とする、請求項2に記載の黒化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スパッタリング用のターゲットおよびこのターゲットを用いて好適に形成することができる黒化膜に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、液晶パネルで代表される表示装置(ディスプレイ装置)の上面にタッチ操作検出用のセンサ(タッチパネルセンサ)を重ねて、表示と入力の2つの機能を融合した装置である。このタッチパネルでは、操作者が画面上の表示をタッチ操作すると、操作された位置の情報が外部に信号として出力され、そして外部装置が操作位置の位置情報に基づいて操作者が望む適切な動作を行う。
【0003】
従来よりタッチパネルセンサにおいては、電極として透明なITO(Indium Tin Oxide:酸化インジウムスズ)電極が用いられているが、ITOは、比抵抗が高く、また曲げ性にも劣るため、近年におけるタッチパネルの大型化や曲面化に十分対応できない問題を有している。
そのため、ITOよりも比抵抗や曲げ性に優れるCuやAlをメッシュ状に加工したメタルメッシュ配線が使用され始めてきている。この金属線を用いた金属電極の場合、金属線が不透明で金属光沢を有することから、外部からの光がこの金属線に当って反射し、その反射光によって表示部に対する視認性が低下することが問題とされている。そして、この問題を解決する手段として、金属線の表面に反射低減膜としての黒化膜を形成することが提案されている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-216795号公報
【特許文献2】特開2016-216797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、反射低減膜としての黒化膜は、今後、車載用途での適用の拡大が予想されており、高温高湿下でも膜面が変色し難い耐環境試験特性が求められる。例えば上記特許文献1に記載された黒化膜はCuNiW合金の酸化物、また特許文献2に記載された黒化膜はCuNiMo合金の酸化物から成るものであるが、これら公知の黒化膜においては十分な耐環境試験特性は得られていない。
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、反射率が低く抑えられ且つ高温高湿下でも変色し難い耐環境試験特性を備えた黒化膜を提供すること、および、この黒化膜を形成するのに好適なスパッタリング用のターゲットを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、Cuの酸化物を含む黒化膜において、更にNiおよびCoを所定量含有させることで、高温高湿下でも変色し難い耐環境試験特性が得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
而して本発明の黒化膜は、組成が(CuaNibCoc)100-xOxで表される金属酸化物からなり、前記aはCuの比率をat%で示し、前記bはNiの比率をat%で示し、前記cはCoの比率をat%で示し、前記xはOの比率をat%で示し、
a+b+c=100、0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、10≦b≦65、0.1≦c、30≦x≦50、であることを特徴とする。
このように規定された本発明によれば、反射率が低く抑えられ且つ高温高湿下でも変色し難い耐環境試験特性を備えた黒化膜とすることができる。
【0008】
ここで、前記xが30≦x<40であれば、低反射率で且つ耐環境試験特性を備えるとともに、従来から広く使用されている塩化第二鉄にてエッチング可能な黒化膜とすることができる。
【0009】
また、前記xが40≦x≦50であれば、低反射率で且つ耐環境試験特性を備えるとともに、電気比抵抗が低く抑えられた黒化膜とすることができる。
【0010】
また本発明のターゲットは、スパッタリング用のターゲットであって、CuaNibCocで表される組成を有し、前記aはCuの比率をat%で示し、前記bはNiの比率をat%で示し、前記cはCoの比率をat%で示し、
a+b+c=100、0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、10≦b≦65、0.1≦c、であることを特徴とする。
このように規定された本発明のターゲットを用いることで、低反射率で且つ耐環境試験特性を備えた黒化膜を、スパッタ装置を用いた反応性スパッタリングにて好適に成膜することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(A)は本発明の一実施形態の黒化膜を備えた積層体を示した図、(B)は同積層体の他の形態例を示した図である。
【
図2】同積層体の更に他の形態例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に本発明の実施形態について具体的に説明する。
<1.積層体>
図1において、10Aは本発明の一実施形態の黒化膜を備えた積層体の一例を示している。同図において12は透明な基材で、この基材12の一方の面(図中の上面)に、電極形成する金属層14が基材12全面に亘って膜状に積層されている。そしてこの金属層14の、基材12とは反対側の面即ち図中上面に、反射低減膜としての黒化膜16が積層形成されている。この黒化膜16もまた、金属層14の全面に亘って膜状に積層形成されている。
【0013】
透明な基材12はソーダライムガラスなどのガラスであっても良く、またポリエチレンテレフタレート(PET),ポリプロピレン(PP),ポリスチレン(PS),ポリ塩化ビニル(PVC),ポリカーボネート(PC),ポリメチルメタクリレート(PMMA),ポリイミド(PI)などの樹脂材料であっても良い。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
【0014】
金属層14は電気比抵抗が8.0μΩ・cm以下の導電性の高いものであるのが良く、そのような材料として純Cu、Cu合金、純Al、Al合金等を用いることができる。
【0015】
黒化膜16は、金属層14の図中上面に積層形成されている。黒化膜16は外部からの光がこの金属線(金属層)に当って反射して、その反射光によって表示部に対する視認性が低下するのを防止することを目的とした層で、光の反射率が20%未満、好ましくは15%未満に抑えられている。この黒化膜16については、後に詳述する。
【0016】
積層体10Aは、実際にはこれを加工してタッチパネルセンサの要素として用いる。
図1(A)で示す、10はその加工後の積層体を示している。
加工後の積層体10においては、加工前の積層体10Aにおける膜状の金属層14の余分となる部分が除去されて多数の極細線S1のみが金属層14として残されており、それら残された極細線S1が互いに平行をなして縞状パターンの電極14Dを形成している。
黒化膜16もまた余分の部分が除去されて、極細線S1の図中上面を覆う部分のみが極細線S2となって残され、それらが極細線S1の図中上面に入射する光を吸収して極細線S1からの光の反射を抑制する働きをなしている。
このような極細線S1、S2は、例えば塩化第二鉄等のエッチング液を用いたウェットエッチング手法にて形成することができる。
【0017】
図1(B)は積層体の他の形態例を示している。同図で示す積層体20A、20のように、金属層14と透明の基材12との間に黒化膜16を積層形成することも可能である。
また、
図2で示す積層体22A、22のように、図中下側から上に向って透明の基材12,第1の黒化膜16,金属層14,第2の黒化膜16を順に積層形成し、金属層14の基材12とは反対側の図中上面に暗色層となる第2の黒化膜16を積層形成するとともに、金属層14の下側、つまり金属層14と基材12との間においても、同様の暗色層となる第1の黒化膜16を積層形成することも可能である。
【0018】
<2.黒化膜>
次に、本実施形態の黒化膜16について説明する。
黒化膜16は、組成が(CuaNibCoc)100-xOxで表されるCuNiCo合金酸化物から成る。ここで、aはCuNiCo合金に占めるCuの比率(at%)を示し、bはCuNiCo合金に占めるNiの比率(at%)を示し、cはCuNiCo合金に占めるCoの比率(at%)を示し、xはCuNiCo合金酸化物に占めるOの比率(at%)を示している。本例では、これらa、b、c、xを、それぞれ、a+b+c=100、0.30≦a/(b+c)≦0.70、10≦b≦65、0.1≦c、30≦x≦50、と規定している。
【0019】
黒化膜16における各化学成分の限定理由等を以下に説明する。
Cuは、酸化物とすることで暗色化して膜の反射率を低くするのに有効な元素である。CuNiCo合金に占めるCuの比率(a)が過度に小さいと、相対的にNi、Coの比率(b+c)が増加するため塩化第二鉄を用いたエッチング性が悪化する。一方、Cuの比率(a)が過度に大きいと、相対的にNi、Coの比率(b+c)が低下し、耐環境試験特性が悪化する。このため本例では、Cuの比率(a)を0.30≦a/(a+b+c)≦0.70と規定している。好ましくは、0.40≦a/(a+b+c)≦0.70である。
【0020】
Niは、黒化膜の耐食性および耐変色性を高めるのに有効な元素であり、この効果を得るため本例では、CuNiCo合金に占めるNiの比率(b)を10(at%)以上とする。但し、Niを含有させた場合でも、高温高湿下では、局所的な斑点変色が生じ、この斑点変色部を起点として変色が広がってしまう場合がある。この斑点変色はNiの比率が大きいほど顕著に認められることから、本例では、Niの比率(b)を10≦b≦65と規定している。好ましくは30≦b≦50であり、より好ましくは40≦b≦50である。
【0021】
Coは、上記斑点変色の発生を抑制するのに有効な元素である。その効果を得るために本例では、CuNiCo合金に占めるCoの比率(c)を0.1(at%)以上とする。但し、過剰な添加は反射率を上昇させるため、その上限を20(at%)とするのが好ましい。より好ましい範囲は、1≦c≦10である。
【0022】
Oは、CuNiCo合金の酸化物から成る黒化膜において、その比率(x)を高めることで、反射率を低く抑え、また耐環境試験特性を高めることができる。但し、比率(x)を過度に高めた場合にはエッチング性が悪化するため、本例では比率(x)を30≦x≦50と規定している。
また、このように規定された範囲内において、電気比抵抗とエッチング性はトレードオフの関係にあることが確認されており、エッチング性を選択的に高めたい場合はOの比率(x)を、30≦x<40の範囲内とすることが望ましい。一方、優れた電気比抵抗を選択的に得たい場合は比率(x)を、40≦x≦50の範囲内とすることが望ましい。
【0023】
黒化膜の成膜には、酸素ガスを含む反応性スパッタリング法を好適に用いることができる。具体的には、バランスドマグネトロンスパッタリング法、アンバランスドマグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法などが挙げられる。スパッタリングによって形成される黒化膜の金属成分の組成は、スパッタリング用のターゲットの組成とほぼ同じであり、スパッタリングによる成膜は製造性にも優れている。
【0024】
<3.ターゲット>
本実施形態のスパッタリング用のターゲットは、前記黒化膜を形成する用途で用いられるもので、Cu、Ni、Coを含有し、CuaNibCocで表される組成を有している。但し、ターゲットには不可避的不純物が含まれ得る。
ここで、aはCuNiCo合金に占めるCuの比率(at%)を示し、bはCuNiCo合金に占めるNiの比率(at%)を示し、cはCuNiCo合金に占めるCoの比率(at%)を示し、これらa、b、cは、それぞれ、a+b+c=100、0.30≦a/(a+b+c)≦0.70、10≦b≦65、と規定されている。
これらa、b、cを上記黒化膜の組成と同じ範囲で規定したのは、スパッタリング法によって形成される黒化膜の金属成分の組成が、スパッタリング用のターゲットの組成とほぼ同じになることに基づいている。
【0025】
本ターゲットは、所定の成分組成を有するブロックを溶製によって製造し、そこから切り出して作製することができる。
また、場合によっては、成分元素を含む粉末を混合し、混合粉を冷間から熱間において加圧することで製造することができる。原料粉末は、成分元素を含む純金属または合金であってもよい。成形方法としては、例えば、冷間静水圧成形(CIP)法、熱間静水圧成形(HIP)法、熱間押出法、超高圧ホットプレス法などがある。
【実施例0026】
次に本発明の実施例を以下に詳しく説明する。この実施例では、下記表1,2で示す組成の金属酸化物から成る黒化膜を備えた積層体を作製し、反射率、耐環境試験特性、電気比抵抗、エッチング性の評価を行った。
【0027】
【0028】
【0029】
<積層体の作製>
上記表1、表2に示す金属成分組成となるよう溶製によってターゲットを作製した。
次に、作製したターゲットを用い反応性スパッタリング法により、評価用のガラス基材(サイズ:φ100×0.5t)の表面もしくはガラス基材の表面に形成したCu金属膜の表面に膜厚30~50nmの黒化膜を形成した。
【0030】
スパッタリングによる黒化膜の成膜条件は、以下の通りである。
・真空度:1×10-4Pa以下
・成膜ガス:Arガスと酸素ガスとの混合ガス
・スパッタ圧:0.15Pa
・スパッタパワー:150W
【0031】
<反射率の評価>
黒化膜/Cu金属膜/基材の層構成からなる積層体を用い、JIS K 7105に準拠して反射率の測定を行った。詳しくは紫外可視分光光度計を用いて可視光(波長400~800nm)について波長50nm毎の反射率を測定し、その平均値を反射率として算出した。反射率の測定は、黒化膜の側から基材側を見たときの反射光の測定、即ち黒化膜の側から基材側に光が入射したときの反射光を測定し、下記評価基準にて評価した。その結果を表1、表2に示す。
○:反射率が15%未満
△:反射率が15%以上、20%未満
×:反射率が20%以上
【0032】
<耐環境試験特性の評価>
図3で示すように、黒化膜/Cu金属膜/黒化膜/基材の層構成からなる積層体を用い、かかる積層体を85℃×85%RH(相対湿度)の大気雰囲気下にて保持し、100h毎に積層体の膜面の明度(L*)および色度(a*、b*)を分光色差計で測定し、下記計算式にて規定された試験開始時(0h)を基準とした色差ΔE*を算出した。
【数1】
そして色差ΔE*が5以下であった時間を耐用時間とし、下記評価基準にて評価した。その結果を表1、表2に示す。
○:耐用時間が1000h以上の場合
△:耐用時間が500h以上、1000h未満の場合
×:耐用時間が500h未満の場合
【0033】
<電気比抵抗の評価>
黒化膜(厚み50nm)/基材の層構成からなる積層体を作製し、4探針法により黒化膜の5箇所で測定し、その平均値より電気比抵抗(Ω・cm)を算出し、下記評価基準にて評価した。その結果を表1、表2に示す。
○:1Ω・cm未満
△:1Ω・cm以上、10Ω・cm未満
×:10Ω・cm以上
【0034】
<エッチング性の評価>
黒化膜(厚み50nm)/基材の層構成からなる積層体を作製し、かかる積層体から20mm角の試料を切り出し、この試料を、塩化第二鉄が1質量%、残部が水からなるエッチング液に浸漬させた。そして基材上に形成した黒化膜が完全に溶解されるまでの時間を測定し、下記評価基準にて評価した。その結果を表1、表2に示す。
○:5~10秒で全量溶解した場合
×:上記以外の場合
【0035】
表1、表2の評価結果から次のことが分かる。
比較例1~10は、黒化膜を単金属の酸化物で構成した例である。比較例1~10では、Cu、Ni、Co、W、Crの何れかの単金属を用いて黒化膜が構成されている。反射率については、CoもしくはWを用いた比較例5~8において良好な結果が得られているが、これら比較例5~8は耐環境試験特性の評価結果が「×」である。またCu以外の単金属を用いた例ではエッチング性の評価も「×」である。
【0036】
比較例11~18は、黒化膜をCuと他の1種の金属から成る合金の酸化物で構成した例である。CuNi合金(比較例11,12)およびCuCo合金(比較例13,14)の場合に、耐環境試験特性は改善するも、未だ斑点変色が生じるため目標とする1000h以上の耐用時間は得られていない。
【0037】
比較例19~28は、黒化膜をCuNiCo合金の酸化物で構成した例であるが、何れかの元素の比率が本発明の請求の範囲と異なっている。Oの比率(x)が20at%で本発明の下限値よりも低い比較例19~22および比較例24~27は、反射率の評価が「×」で目標の反射率抑制効果が得られていない。
【0038】
比較例22,23は、Niの比率(b)が70at%で本発明の上限値を上回った例である。これらの例ではNiの比率が高いため斑点変色が生じ、耐環境試験特性の評価が「×」であった。
比較例27,28は、Niの比率(b)が5at%で本発明の下限値を下回った例である。これらの例においても膜面の変色が生じ、耐環境試験特性の評価が「×」であった。
【0039】
以上のように各比較例においては、反射率、耐環境試験特性の少なくとも何れか一方の評価が目標未達であった。
【0040】
これに対し、CuNiCo合金の酸化物から成り、構成元素の比率が本発明の規定を満足する黒化膜を備えた実施例1~27については、反射率および耐環境試験特性のいずれの評価も良好な結果が得られている。
【0041】
各実施例について更に詳しくみると、電気比抵抗とエッチング性についてはトレードオフの関係にあり、実施例1~3、実施例10~12、実施例19~21で示すようにOの比率(x)を30≦x<40とすれば、Cu等の金属配線のエッチング液として広く使用されている塩化第二鉄にてエッチング可能な黒化膜を得ることができ、また実施例4~9、実施例13~18、実施例22~27で示すようにOの比率(x)を40≦x≦50とすれば、電気比抵抗が1Ω・cm未満に抑えられた黒化膜を得ることができることが分かる。
【0042】
以上本発明の実施形態及び実施例について詳しく説明したが、これはあくまで一例示である。本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた態様で実施可能である。