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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156906
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】研掃材収集排出装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20231018BHJP
   B24C 11/00 20060101ALI20231018BHJP
   B24C 3/06 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B24C9/00 G
B24C11/00 Z
B24C9/00 H
B24C9/00 E
B24C3/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066560
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】503055554
【氏名又は名称】ヤマダインフラテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】山田 博文
(72)【発明者】
【氏名】山田 翔平
(57)【要約】
【課題】研掃材を収集する作業員にかかる負担を軽減することのできる研掃材収集排出装置を提供する。
【解決手段】研掃材収集排出装置100は、床面上を移動するための車輪111と、研掃材を収集するための磁着部121と、磁着部121によってかき集められた研掃材を排出するホッパー部131と、を備え、車輪111によって移動する方向に直交する方向を幅方向として、磁着部121によってかき集められる研掃材の範囲の幅長さL1とホッパー部131によって排出される研掃材の範囲の幅長さL2がL1>L2である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物の保全目的で投射されて投射作業空間の床面上に堆積した研掃材を、当該床面上を移動することで装置本体内に収集するとともに前記装置本体内に収集した研掃材を当該床面に排出する研掃材収集排出装置であって、
前記装置本体は、
前記床面上を移動するための移動手段と、
前記床面上に堆積した研掃材を収集するための収集手段と、
前記収集手段によって収集された研掃材を前記床面上に排出する排出手段と、
を備え、
前記移動手段によって移動する方向に直交する方向を幅方向とし、
前記装置本体が移動している状態で前記収集手段は、前記床面上に堆積した研掃材のうち、幅長さL1の範囲で研掃材を収集する機能を有し、
前記装置本体が移動している状態で前記排出手段は、前記床面上に幅長さL2の範囲で研掃材を排出する機能を有し、
さらに、前記幅長さL1と前記幅長さL2とが、
L1>L2
である
ことを特徴とする研掃材収集排出装置。
【請求項2】
前記研掃材は磁性を有しており、
前記収集手段は、
床面に対向し、幅長さL1と同じ幅長さを有する磁着部と、
当該磁着部に磁着した研掃材を当該磁着部から分離する分離部と、
を備えており、
前記排出手段は、
前記分離部によって分離した前記研掃材が投入されるホッパー部を備え、前記ホッパー部は、床面に対向し、幅長さL2と同じ幅長さの排出開口部を備えてなる
請求項1に記載の研掃材収集排出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に鋼構造物の保全工事において、作業空間の床面に堆積する研掃材を収集し、かつ収集しやすい状態で当該作業空間の床面に排出する研掃材収集排出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、新設するものや既設のものに関わらず鋼構造物はサビ等の発生を防ぐために、あるいは特に既存の鋼構造物においては経年劣化によって腐食が進行した塗装の更新のために、予防保全が施されている。このように予防保全は、サビ等を取り除いたり、古い塗膜を取り除いたりする必要があるため、近年ではブラスト処理(1種ケレン)によってサビや塗膜を除去し、その後、新規の塗装を施すことが行われている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-207624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した背景事情の下、従来の工法にあっては、次のような問題があった。すなわち、足場が組まれ、かつ粉塵が漏洩することが防止された板張りされて密閉状となった養生空間では、光が届かない暗所となる。このような過酷な環境下で研掃材の収集を行うと、作業効率が悪く多くの編成人員を必要とする。さらに、床面に堆積した研掃材を収集するために屈んだ体勢での作業となるために腰痛等の職業病に繋がる危険性もあり、当該作業に従事する作業員にとっては非常に過酷な作業環境であるという問題があった。
【0005】
そこで本発明は、研掃材を収集する作業員にかかる負担を軽減することのできる研掃材収集排出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、鋼構造物の保全目的で投射されて投射作業空間の床面上に堆積した研掃材を、当該床面上を移動することで装置本体内に収集するとともに前記装置本体内に収集した研掃材を当該床面に排出する研掃材収集排出装置であって、前記装置本体は、前記床面上を移動するための移動手段と、前記床面上に堆積した研掃材を収集するための収集手段と、前記収集手段によって収集された研掃材を前記床面上に排出する排出手段と、を備え、前記移動手段によって移動する方向に直交する方向を幅方向とし、前記装置本体が移動している状態で前記収集手段は、前記床面上に堆積した研掃材のうち、幅長さL1の範囲で研掃材を収集する機能を有し、前記装置本体が移動している状態で前記排出手段は、前記床面上に幅長さL2の範囲で研掃材を排出する機能を有し、さらに、前記幅長さL1と前記幅長さL2とが、L1>L2であることを特徴とする研掃材収集排出装置である。
【0007】
また、上記の構成を具現化すべく、前記研掃材は磁性を有しており、前記収集手段は、床面に対向し、幅長さL1と同じ幅長さを有する磁着部と、当該磁着部に磁着した研掃材を当該磁着部から分離する分離部と、を備えており、前記排出手段は、前記分離部によって分離した前記研掃材が投入されるホッパー部を備え、前記ホッパー部は、床面に対向し、幅長さL2と同じ幅長さの排出開口部を備えてなる構成が提案される。
【0008】
かかる構成は、前記投射作業空間における床面上に堆積した研掃材を、本発明の研掃材収集排出装置を移動させることによって所定の幅長さL2にまでかき寄せる機能を備えるものである。すなわち、投射作業空間にあっては、作業直後は無秩序に研掃材が散乱しているところ、これらの研掃材を作業員が回収するにあたり、前記研掃材収集排出装置が移動した後から作業員が幅長さL2までかき寄せられた研掃材を回収していくことで、作業員の負担が飛躍的に軽減されることになるとともに、全体の作業時間も大幅に短縮される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の研掃材収集排出装置は、作業員にかかる負担を格段に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例にかかる鋼橋の保全塗装の手順を示すフロー図である。
図2】循環式のブラスト装置を説明する概要説明図である。
図3】実施例にかかる研掃材収集排出装置の斜視図である。
図4】研掃材収集排出装置における主にホッパー部を示す縦断面図である。
図5】収集された研掃材がホッパー部に投入される過程を説明する概要説明図である。
図6】研掃材収集排出装置の使用状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる研掃材収集排出装置を具体化した実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、下記に示す実施例に限定されることはなく、適宜設計変更が可能である。
【0012】
まず、鋼橋(鋼構造物)の保全塗装手順の一例を説明する。
図1に示すように、まず保全塗装の対象となる鋼橋に足場を仮設する。これと共に、外部に粉塵が漏出しないように防塵シートを張設し、非塗装部分の養生を行い、ブラスト処理及びショットピーニング処理を行うための装置を設置する事前準備(S101)を行う。
【0013】
その後、前記鋼橋に塗布されている旧塗膜の種類や厚さ、あるいは該鋼橋の状況等を調査(S102)する。そして、調査結果に基づき、使用するグリット及びショットの種類や投射速度等を決定する。ここで、選定するグリット(非球形)及びショット(球形)は、共にJIS Z 0310:2004に規定された磁性を有する鉄製(金属系)研削材を用いる。
【0014】
そして前記S102において決定したグリットを用いて、まずブラスト処理を行う(S103)。具体的には、前記鋼橋における剥離対象の塗膜の剥離と素地調整を行う。なお、該ブラスト処理によって剥離した塗膜やサビ等、及び使用済みグリットが粉塵として発生するが、前記S101において防塵シートを張設しているため、外部に粉塵が漏出することはなく、該粉塵が作業現場に堆積していく。
【0015】
続いて、グリットを投射したブラスト装置に対して、グリットに代えて前記S102によって決定したショットを装填して該ショットを投射可能とする。かかる工程により、ショット入れ替え工程が構成される。
【0016】
そして、前記ブラスト処理によって素地面が表出したブラスト処理済部分に対して、前記ショットに入れ替えたブラスト装置を用いてショットピーニング処理を行う(S104)。かかる処理により、素地面の疲労強度及び耐応力腐食割れ性が向上する工程Bが構成される。なお、該ショットピーニング処理によって発生した使用済みショットは、そのまま作業現場に、S103における使用済みグリットと混在しつつ粉塵として堆積していく。ところで、該ショットピーニング処理は前記ブラスト処理を行った全ての素地面に対して行ってもよいし、溶接箇所周辺や強度に不安のある箇所等に対して適宜部分的に行ってもよい。
【0017】
なお、上記S103におけるブラスト処理と、上記S104におけるショットピーニング処理は、同時に行ってもよい。ブラスト処理とショットピーニング処理とを同時に行う構成については、例えば特開2018-118338号公報に開示されている構成が好適に適用可能である。
【0018】
その後、前記ブラスト処理、及びショットピーニング処理を行った素地面の確認を行う(S105)。かかる確認は目視確認のみならず、例えばISO8501ブラスト写真帳による比較、あるいは表面粗さ測定器による粗さ確認等も含まれる。これによって未剥離の塗膜が残っていないか、あるいは素地面の粗さが規格内であるか、等の確認がなされ、不十分な箇所に対して的確な処理がなされることとなる。例えばブラスト処理を行うことのできない箇所は手工具等を用いて素地調整がなされる。
【0019】
こうして素地面の確認が済んだ部分に対して最終塗膜を形成するための最終仕上げ塗装を行う(S106)。なお、かかる塗装は、例えば防錆塗装として下塗り塗装、該防錆塗装を保護する中塗り塗装、及び最終仕上げ塗装となる上塗り塗装のように複数回にわたって層状に塗装されることが一般的である。
【0020】
前記塗装が済むと、その確認(S107)が行われる。かかる確認は塗装が乾燥した後の膜厚確認だけでなく、例えば塗装作業中にウェットネスゲージを用いてウェット膜厚の確認等も含まれる。また、このような確認は前記最終仕上げ塗装となる上塗り塗装後のみならず、前記下塗り塗装、及び中塗り塗装時にも行われる。
【0021】
前記確認によって塗装作業が完了すると、現場の片付けを行う(S108)。具体的には、足場や防塵シート等の収集、及びブラスト-ショットピーニング投射装置の撤収を行って保全塗装の完了となる。
【0022】
また、上記手順と共に、粉塵の回収工程を実行する(S110)。具体的には、前記ブラスト処理(S103)で発生した使用済みグリット、前記ショットピーニング処理(S104)で発生した使用済みショット、及び、各工程で生じた剥離物やサビ等を含む粉塵を分別しつつ回収していく。
【0023】
なお、回収した使用済みグリット、及び使用済みショットは共にJIS Z 0310:2004に規定する鉄製(金属系)研削材であるため、使用時に鋼橋と衝突してもアルマンダイトガーネットや製鉄スラグのように破砕することがなく、再利用可能である。中でも高炭素鋳鋼のものは600回程度再利用することができ、非常に経済的であると共に、剥離した塗膜やその他の異物と分別することで廃棄物の量を大幅に減少させることができる。
【0024】
以下、グリットとショットとを共通の装置で投射することが可能であり、しかも使用済みグリット、使用済みショット、及び剥離した塗膜等を回収してそれぞれ分別することができる循環式のブラスト装置1を一例として説明する。
【0025】
図2に示すように、前記ブラスト装置1は、作業対象となる鋼橋Kの投射作業空間αに隣接して設置される装置本体部2を備えている。さらに該装置本体部2は、圧送ホース4を具備し、該圧送ホース4の先端に投射器3が接続されている。該投射器3からはグリットやショットが投射される。また、前記装置本体部2は、吸引ホース5を具備し、該吸引ホース5の先端が作業現場αに配置されている。これにより、該吸引ホース5を介して、投射作業空間αで発生した使用済みグリット、使用済みショット、及び剥離した塗膜やサビ等を含む異物からなる粉塵を吸引することができる。なお、粉塵が外部に漏出しないように、図示しない防塵シートが投射作業空間αには張設され、送風機や集塵装置等も適宜設置される。
【0026】
また、図2に示すように、ブラスト装置1の装置本体部2には、グリットホッパータンク10とショットホッパータンク20とが互いに隣接して配設されている。さらに詳述すると、該グリットホッパータンク10は、グリット及び使用済みグリット(以下、これらの混合物をグリットという)を貯留しておく機能を有している。また、前記ショットホッパータンク20は、ショット及び使用済みショット(以下、これらの混合物をショットという)を貯留しておく機能を有している。さらに、前記グリットホッパータンク10には、該グリットホッパータンク10内に貯留されたグリットを作業現場αまで圧送するためのグリット加圧タンク11が接続されている。また、同様に、前記ショットホッパータンク20には、該ショットホッパータンク20内に貯留されたショットを投射作業空間αまで圧送するためのショット加圧タンク21が接続されている。
【0027】
さらに、前記グリット加圧タンク11及び前記ショット加圧タンク21には、乾燥圧縮空気配管31を介して乾燥圧縮空気供給手段30が接続されている。かかる乾燥圧縮空気供給手段30は、乾燥した圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサーとエアドライヤーとで構成されている。また、前記乾燥圧縮空気配管31には切換弁32が備えられており、乾燥圧縮空気を前記グリット加圧タンク11又はショット加圧タンク21に選択的に送給可能とされ、グリットに代えてショットを投射可能に装填自在としている。
【0028】
また、前記グリット加圧タンク11及び前記ショット加圧タンク21には、前記圧送ホース4が接続されている。そして、かかる構成により、前記乾燥圧縮空気供給手段30から供給された乾燥圧縮空気による空気圧よってグリット又はショットが該圧送ホース4を介して投射器3から投射され、作業対象となる鋼橋Kにブラスト処理、あるいはショットピーニング処理が実行可能となっている。なお、これまでの機能を備えたブラスト装置1により、本実施例にかかる投射装置(ブラスト-ショットピーニング投射装置)が構成されている。
【0029】
前記投射作業空間αに堆積した使用済みグリット、使用済みショット、及び剥離した塗膜等の異物を含む粉塵は、前記吸引ホース5の一端からまとめて吸引される。そして、該吸引ホース5によって吸引された粉塵は、分別室40内に到達する。
【0030】
また、前記分別室40には、ダストホース51が取り付けられており、該ダストホース51には、剥離塗膜収集部としてのダスト収集部50が接続されている。さらに、該ダスト収集部50には、粉塵吸引手段としての空気吸引装置60が接続されている。したがって、該空気吸引装置60の空気吸引力によって、前記粉塵が吸引可能となっている。
【0031】
前記分別室40では、公知技術によって前記粉塵を使用済みグリット、使用済みショット、及び剥離した塗膜を含む異物をそれぞれ分別することが可能となる。こうして分別された使用済みグリットは前記分別室40下側にある前記グリットホッパータンク10に戻され、再利用される。また同様にして、使用済みショットも該分別室40下側にある前記ショットホッパータンク20に戻されて再利用される。こうしてグリット及びショットを循環して使用し続けることができる。
【0032】
上記した実施例においては、適宜設計変更可能である。例えば、前記切換弁32は作業現場αにおける作業員Hが切り換え操作できるように作業現場α内に設けられていてもよいし、あるいは遠隔操作可能にしてもよい。また、乾燥圧縮空気供給手段30をグリット加圧タンク11とショット加圧タンク21とにそれぞれ個別に設けるようにしてもよい。また、圧送ホース4はグリット用とショット用とに分けて設けてもよい。また、投射器3も、同様にグリット用とショット用とに分けても構わない。また、分別室40は、グリットホッパータンク10及びショットホッパータンク20の直上に配置する必要はなく、位置は特に限定されない。また、グリットホッパータンク10とショットホッパータンク20内に連通しつつ各ホッパータンク10,20を気密状態としてもよいし、グリット又はショットを一時貯留するための専用タンクを配置し、所望のタイミングで各ホッパータンク10,20にグリット及びショットを供給するようにしてもよい。また、ブラスト装置1内でのグリット量あるいはショット量が規定値よりも少なくなった場合には新品を供給することができるようにしておくことが望ましい。また、装置本体部2は例えば車両上に載置して移動可能としてもよい。また、本実施例の保全塗装工法は、鋼構造物の再塗装時のみならず新規に建設する鋼構造物に対して適用してもよい。
【0033】
次に、本発明の研掃材収集排出装置100について説明する。
研掃材収集排出装置100は、上記した保全塗装工法のなかのS110の粉塵回収工程において用いられる。
【0034】
研掃材収集排出装置100は、所定の床面上を走行して移動可能となっており、投射作業空間αにおける床面上に堆積した粉塵のなかの少なくとも研掃材を、当該床面上を移動しながら収集し、収集した研掃材を当該床面に排出する機能を有している。
【0035】
さらに詳述すると、研掃材収集排出装置100は、図3等に示すように、床面上を移動(自走)するための移動手段110と、粉塵に含まれる研掃材を少なくとも収集するための収集手段120と、少なくとも研掃材を排出する排出手段130と、を備えた装置本体101を具備している。
【0036】
移動手段110は、左右一対の前輪・後輪を構成する車輪111を備えている。車輪111は図示しない駆動源であるモーターによる駆動が可能とされている。ここで、移動手段110によって移動する方向を前後方向とし、前後方向に直交する方向を幅方向として以下説明する。
【0037】
収集手段120は、枠体形状の装置本体101の側壁に対して軸支された磁着部121を備えている。具体的に磁着部121は、装置本体101の幅方向に沿った回転軸125の回りに回転自在となっており、長さL1の幅長さを有する円柱形状で磁性を有している。そして、磁着部121が軸支された状態において当該磁着部121における側周面の下端部が床面に対面している。また、収集手段120は、装置本体101が移動して車輪111が回転すると、これとともに車輪111の回転方向に対して逆方向に磁着部121が回転する伝達機構(図示省略)を有している。なお、後で詳述するが、磁着部121における側周面の下端部には、投射作業空間αに堆積した研掃材が磁着することとなる。
【0038】
また、磁着部121の側周面の上端部に臨む位置には、板形状の分離部122が配置されている。詳述すると、分離部122の下縁は磁着部121の側周面に沿って幅方向に配向されており、分離部122の下縁と磁着部121の上端部とが軽く接触している。また、磁着部121に対して所定の角度で後方上向きに突き出された分離部122の上縁は、後述するホッパー部131の上方に配置されている。かかる分離部122は、回動する磁着部121に磁着した研掃材を含む粉塵を当該磁着部121から分離する機能を有している。
【0039】
排出手段130は、図4等に示すように、上下両端部に開口を有する筒形状のホッパー部131を備えている。また、図5に示すように、ホッパー部131の上端部に形成された上側開口部132は、上述の分離部122の上縁の直下に配置されている。また、ホッパー部131の下端部には、床面に対面し、かつ幅長さL2の排出開口部133が形成されている。そして、磁着部121における幅長さL1と、排出開口部133における幅長さL2とは、L1>L2の関係が成立している。
【0040】
次に、研掃材収集排出装置100の使用態様について説明する。
研掃材収集排出装置100を、研掃材が堆積した投射作業空間αの床面上を移動させると、図6に示すように、少なくとも研掃材が、幅長さL1の範囲で磁着部121に磁着されて当該磁着部121が回転することにより装置本体101内に収集されていく。
【0041】
そして、回転する磁着部121に磁着された研掃材は、分離部122の下縁に当接して磁着部121から分離され、分離部122の板面上を伝って分離部122の上縁からホッパー部131内に落下する。
【0042】
ホッパー部131内に落下した研掃材は、ホッパー部131の内周面に沿って下降し、底部に形成された排出開口部133から長さL2の幅長さで再度床面に排出される。すなわち、研掃材収集排出装置100が移動することで幅長さL1の範囲で研掃材が収集され、次いで床面上に幅長さL2(<L1)の範囲でかき寄せられた研掃材が帯状に排出されることとなる。このため作業員は、かき寄せられた研掃材を吸引ホース5で回収すればよい。再度述べると、従来であれば、広い範囲にわたって堆積した研削材を含む粉塵を作業員が手でかき集めてから吸引ホース5によって収集していたが、研掃材収集排出装置100を移動させるだけで少なくとも研掃材が幅狭状にかき寄せられるため、作業員はかき寄せられた研掃材を吸引ホース5によって収集するだけで済む。これによって作業員の人数の削減や作業時間の大幅な短縮を図ることができる。
【0043】
なお、研掃材収集排出装置100は、上記していないその他の機能が追加されたものであっても勿論よい。
【0044】
なお、磁着部121は、例えば鉄製の筒体の内部に磁石を配置し、前記磁石を車輪111の回転と連動して回動させるものでもよい。かかる構成は、磁石が回動すると研掃材が前記筒体表面を伝って当該研掃材が装置本体101内部に導入される。また、これらに限られず、磁着部121は他の構成からなるものであっても勿論よい。
【符号の説明】
【0045】
100 研掃材収集排出装置
101 装置本体
110 移動手段
111 車輪
120 収集手段
121 磁着部
122 分離部
130 排出手段
131 ホッパー部
132 上側開口部
133 排出開口部

図1
図2
図3
図4
図5
図6