(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156910
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
B41J2/165 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066565
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角▲崎▼ 正太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056JA13
2C056JA17
(57)【要約】
【課題】キャップがヘッドのノズル面をキャッピングした際に、吸収体を支持する支持部がノズル面に接触することを抑制する。
【解決手段】本開示に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、前記ノズル面との間に空間を形成可能なキャップユニットと、を有する。キャップユニットは、前記ノズル面から吐出される前記液体を吸収可能な吸収体と、前記吸収体の下面を支持する支持部と、前記吸収体の下方に位置する吸引口を複数有し、前記空間内を吸引する吸引ユニットと、を備える。前記支持部の上端は、前記吸収体の上面よりも下方に位置し、前記複数の吸引口の各々は、前記吸収体の前記下面から離間している。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、
前記ノズル面との間に空間を形成可能なキャップユニットと、
を有し、
前記キャップユニットは、
前記ノズル面から吐出される前記液体を吸収可能な吸収体と、
前記吸収体の下面を支持する支持部と、
前記吸収体の下方に位置する吸引口を複数有し、前記空間内を吸引する吸引ユニットと、
を備え、
前記支持部の上端は、前記吸収体の上面よりも下方に位置し、
前記複数の吸引口の各々は、前記吸収体の前記下面から離間している、
液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記吸収体の前記上面又は前記下面の法線方向に見たときに、
前記複数の吸引口の少なくとも一部の吸引口の中心は、前記吸収体の外縁よりも中心に近い中心部に位置する、
液体吐出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置であって、
前記複数の吸引口の一部の吸引口の中心は、前記中心部に位置し、
前記一部の吸引口以外の吸引口の中心は、前記吸収体の中心よりも外縁に近い外周部に位置する、
液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の印刷装置であって、
前記吸収体の前記上面又は前記下面の法線方向に見たときに、
前記複数の吸引口の中心は、前記吸収体の中心に対して対称に位置する、
液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを吐出するヘッドのノズル面をキャッピングするキャップと、キャップ内に配置され、インクを吸収する吸収体とを有するキャップユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャップユニットが吸収体を支持する支持部をさらに有し、支持部の先端をカシメることにより吸収体及び抑制部材をキャップ内に固定している。このようにすることでキャップがノズル面をキャッピングして吸引を行った際に吸収体及び抑制部材が浮き上がってノズル面への接触することを防止している。ところが、キャップがノズル面をキャッピングして吸引を行った際にキャップが変形して支持部の先端がノズル面に接触するおそれがある。
【0005】
本発明は、キャップがヘッドのノズル面をキャッピングし吸引した際に、吸収体を支持する支持部がノズル面に接触することを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、前記ノズル面との間に空間を形成可能なキャップユニットと、を有し、前記キャップユニットは、前記ノズル面から吐出される前記液体を吸収可能な吸収体と、前記吸収体の下面を支持する支持部と、前記吸収体の下方に位置する吸引口を複数有し、前記空間内を吸引する吸引ユニットと、を備え、前記支持部の上端は、前記吸収体の上面よりも下方に位置し、前記複数の吸引口の各々は、前記吸収体の前記下面から離間している、液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャップがヘッドのノズル面をキャッピングした際に、吸収体を支持する支持部がノズル面に接触することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、液体吐出装置1の外観の概略説明図である。
【
図3】
図3は、キャップユニット50Aの斜視図である。
【
図4】
図4は、キャップユニット50Aの分解斜視図である。
【
図5】
図5は、キャップユニット50Aの収容部513及びバネ53の説明図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、キャップユニット50Aの構成の概要を示す説明図である。
【
図7】
図7Aは、吸収体64及び抑制部材65を外した状態の比較例のキャップユニット60Aの斜視図である。
図7Bは、抑制部材65の固定方法の説明図である。
【
図8】
図8Aは、第1変形例のキャップユニット70Aの構成の概要を示す説明図である。
図8Bは、第2変形例のキャップユニット70Bの構成の概要を示す説明図である。
図8Cは、第3変形例のキャップユニット70Cの構成の概要を示す説明図である。
【
図9】
図9Aは、第4変形例のキャップユニット80Aの斜視図である。
図9Bは、吸収体84及び抑制部材85を外した状態の第4変形例のキャップユニット80Aの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。
【0011】
===実施形態===
<基本構成>
図1は、液体吐出装置1の外観の概略説明図である。
【0012】
以下の説明では、
図1に示されるように、キャリッジ21の移動方向を「走査方向」と呼ぶことがある。また、媒体Mの移動方向を「搬送方向」と呼び、媒体Mの供給側を「上流(上流側)」と呼び、媒体Mの排出側を「下流(下流側)」と呼ぶことがある。ヘッド41のノズル面42(後述;
図2B参照)に垂直な方向を「上下方向」と呼び、媒体Mから見てヘッド41の側を「上」と呼び、逆側を「下」と呼ぶことがある。なお、上下方向は、走査方向及び搬送方向に垂直な方向になる。
【0013】
液体吐出装置1は、媒体M(印刷用紙、印刷フィルムなど)に液体を吐出する装置である。ここでは、液体吐出装置1は、媒体Mに画像を印刷する装置(インクジェットプリンタ)である。但し、液体吐出装置1は、ヘッド41から液体を吐出する装置であれば、媒体Mに画像を印刷する装置でなくても良い。液体吐出装置1は、キャリッジユニット20と、搬送ユニット30と、ヘッドユニット40と、キャップ機構50とを有する。
【0014】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21を走査方向に移動させるユニットである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジ21を走査方向に移動させるためのモーター(不図示)とを有する。キャリッジ21は、走査方向に往復移動する部材であり、ヘッド41(後述)を搭載する。なお、走査方向の移動範囲の端部にキャリッジ21を移動させて、キャリッジ21を待機させることがある。キャリッジ21を待機させる位置のことを「ホームポジション」と呼ぶことがある。ホームポジションには、キャップ機構50が配置されている。
【0015】
搬送ユニット30は、媒体Mを搬送方向に搬送するユニットである。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。搬送ユニット30は、例えば搬送ローラー31と、搬送ローラー31を駆動するモーター(不図示)とを有する。搬送ローラー31は、回転することによって媒体Mを搬送方向に搬送する部材である。なお、搬送ユニット30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、搬送ユニット30は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを搬送方向に搬送するよう構成されても良い。
【0016】
図2A及び
図2Bは、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
【0017】
ヘッドユニット40は、媒体Mに液体を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ここでは、ヘッドユニット40は1つのヘッド41を有するが、複数のヘッド41を有しても良い。ヘッド41は、
図2Aの拡大図に示されるように、液体を吐出する複数のノズル45を有する。液体は、ここではインクである。インクは、画像を構成するドットを媒体Mに形成するための液体である。但し、ヘッド41から吐出する液体は、インクに限られず、例えば処理液でも良い。ヘッド41は、
図2Aに示されるように、複数のノズル列44を有する。複数のノズル列44は、走査方向に並んで配置されている。それぞれのノズル列44は、搬送方向に並ぶ複数のノズル45によって構成されている。ノズル45は、ヘッド41のノズル面42(下面)で開口しており、その開口から液体が吐出される。
【0018】
ヘッド41は、
図2Bに示されるように、キャリッジ21の下面に配置されている。キャリッジ21が走査方向に移動することによって、ヘッド41も走査方向に移動する。キャリッジ21をホームポジションに移動させると、キャップ機構50によってヘッド41をキャッピングすることができる。
【0019】
キャップ機構50は、ヘッド41のノズル面42(下面)を覆うための機構である。ヘッド41のノズル面42を覆うことを「キャッピング」と呼ぶことがある。キャップ機構50は、ホームポジションに配置されている(
図1参照)。キャップ機構50は、ヘッド41のノズル面42を覆うキャップユニット50A(後述;
図3参照)と、キャップユニット50Aを上下方向に移動させるキャップ移動機構(不図示)とを有する。キャリッジ21がホームポジションに移動すると、キャップ移動機構(不図示)がキャップユニット50Aをヘッド41に接近させ、これにより、キャップユニット50Aがヘッド41のノズル面42を覆うことになる。
【0020】
図3は、キャップユニット50Aの斜視図である。
図4は、キャップユニット50Aの分解斜視図である。
図5は、キャップユニット50Aの収容部513及びバネ53の説明図である。
【0021】
キャップユニット50Aは、キャップ51でヘッド41のノズル面42を覆うための構造体である。キャップユニット50Aは、キャップ51と、吸収体54と、吸引ユニット57と、支持部521Bと、ベース52と、バネ53と、ケース56と、を有する。
【0022】
キャップ51は、ヘッド41のノズル面42を覆う部材である。キャップ51がノズル面42を覆う時にキャップ51がノズル45に接触しないように、キャップ51は、
図4に示されるように、凹状に構成されている。キャップ51は、ゴム製であり、変形可能である。キャップ51が柔軟なゴムで構成されることによって、キャップ51がノズル面42に密着し易くなる。キャップ51は、底部511と、壁部512とを有しており、底部511及び壁部512によって収容部513(収容空間,内部空間)が構成される。
【0023】
底部511は、キャップ51の底を構成する部位である。底部511は、
図4に示されるように、矩形状の板状の部位であり、上下方向に対して垂直な部位である。底部511は、キャップ51がノズル面42を覆う時にノズル面42に間隔をあけた状態でノズル面42に略平行に配置される。底部511は、支持部521B(後述)と共に吸収体54を支持する支持部としての機能も有する。底部511は、吸引穴511Aと、挿通穴511Bとを有する。吸引穴511Aは、吸引ユニット57の吸引口部材521A(後述)を挿通させる貫通穴である。吸引穴511Aは、吸引ユニット57の吸引口部材521A(後述)に対応する位置に設けられる。挿通穴511Bは、支持部521B(後述)を挿通させる貫通穴である。挿通穴511Bは、支持部521B(後述)に対応する位置に設けられる。挿通穴511Bは、パッキン514を収容可能な凹部を有する。パッキン514は、挿通穴511Bと支持部521Bとの間の隙間を塞ぐ部材である。但し、パッキン514が設けられなくても良い
【0024】
壁部512は、キャップ51の側面を構成する部位である。壁部512は、
図4に示されるように、矩形状の底部511の周縁から立ち上がる壁状の部位である。壁部512は、上下方向に略平行に構成されている。矩形状の底部511の周縁を囲繞するよう壁部512が構成されることによって、凹状のキャップ51が構成されるとともに、収容部513(収容空間,内部空間)が構成される。壁部512の上縁は、ヘッド41のノズル面42に接触する接触部となる。キャップ51がノズル面42を覆う時にヘッド41のノズル列44(
図2参照)を囲繞するよう、壁部512の上縁がヘッド41のノズル面42に接触する。
【0025】
壁部512は、
図3の拡大図に示されるように、引っ掛け部512Aを有する。引っ掛け部512Aは、壁部512の内壁面から内側に突出した爪状の部位である。引っ掛け部512Aは、吸収体54を引っ掛ける部位である。壁部512が引っ掛け部512Aを有することにより、抑制部材55が壁部512から外れることを抑制できる。本実施形態のキャップユニット50Aでは、後述する吸引ユニット57による吸引力により、吸収体54が下方に引っ張られることになる。このため、吸引ユニット57による吸引力により、抑制部材55が壁部512から外れることも抑制できる場合、壁部512は、引っ掛け部512Aを有さなくても良い。
【0026】
収容部513は、吸収体54を収容する部位である。収容部513は、底部511及び壁部512によって構成された空間(キャップ51の内部空間)であり、内部に吸収体54が収容される。なお、
図3に示されるように、収容部513に吸収体54が収容された時、壁部512は、吸収体54よりも上側に突出する。これにより、キャップ51がノズル面42を覆う時に吸収体54がヘッド41のノズル面42に接触することを抑制する。
【0027】
吸収体54は、液体を吸収する部材である。吸収体54は、
図4に示されるように、上下方向に垂直な、矩形の板状の部材である。ここでは、吸収体54は、多孔質焼結体で構成された部材である。但し、吸収体54は、多孔質焼結体に限られるものではなく、例えばスポンジのような発泡体で構成された多孔質体でも良い。なお、多孔質焼結体で構成された吸収体54は、多孔質体(発泡体)で構成された吸収体54よりも硬度が高く、後述するように上方に向かって突出した支持部521B(後述;
図6B参照)により支持されても、形状を保持することができる。
【0028】
吸引ユニット57は、収容部513(キャップ51の内部空間)内を吸引する部材である。吸引ユニット57は、収容部513内を吸引することにより、収容部513内を負圧にする。そして、吸引ユニット57は、収容部513内の液体を吸引し、キャップユニット50Aの外部へ排出する。吸引ユニット57は、吸引口部材521Aと、吸引管522と、収容部513内を負圧にするためのポンプ(不図示)とを有する。
【0029】
吸引口部材521Aは、空間内を吸引するための吸引口が形成された部材である。吸引口部材521Aは、吸収体54の下方に位置しており、
図5に示されるように、キャップ51の吸引穴511Aに挿入される。また、吸引口部材521Aは、ベース52(後述)と一体的に形成されている。但し、吸引口部材521Aは、ベース52と別体で形成され、ベース52に取り付けられる構成であっても良い。本実施形態のキャップユニット50Aでは、吸引ユニット57は、複数の吸引口部材521Aを有している。
図4に示される例では、吸引ユニット57は、4つの吸引口部材521Aを有している。但し、吸引ユニット57が有する吸引口部材521Aの数は、複数であれば4つに限られない。なお、吸引口部材521Aの配置については後述する。また、以下の説明では、吸引口部材を、単に「吸引口」と呼ぶことがある。
【0030】
吸引管522は、一端が吸引口部材521Aに連通し、他端が収容部513(キャップ51の内部空間)内を負圧にするためのポンプ(不図示)に連通する部材である。本実施形態のキャップユニット50Aでは、複数の吸引口部材521Aの各々に吸引管522が接続される。なお、
図4では、1つの吸引口部材521Aに接続される吸引管522のみを代表して図示しており、他の吸引口部材521Aに接続される吸引管522を不図示としている。
【0031】
支持部521Bは、吸収体54の下面を支持する部材である。支持部521Bの下端は、ベース52(後述)に固定されている。なお、支持部521Bは、ベース52と一体的に形成(一体成型)されても良い。そして、支持部521Bは、
図4に示されるように、上方に向かって突出し、支持部521Bの上端が吸収体54の下面に接触するよう構成されている。
図4に示される例では、キャップユニット50Aは、複数(ここでは、9つ)の支持部521Bを有している。但し、吸引ユニット57が有する支持部521Bの数は、9つ以外の複数であっても良いし、吸収体54を安定的に支持することができれば1つであっても良い。なお、支持部521Bの配置については後述する。
【0032】
ベース52は、キャップ51を保持する部材である。ベース52は、キャップ51よりも硬質な材質で構成されており、ここでは樹脂製である。ベース52は、
図4に示されるように、キャップ収容部521を有する。キャップ収容部521は、キャップ51を収容する凹状の部位である。キャップ51の底部511が矩形状であるため、キャップ収容部521の底面も矩形状である。
図5に示されるように、ベース52は、バネ53によって上側に向かって押圧されている。キャップ収容部521には、
図4に示されるように、前述した吸引ユニット57の吸引口部材521Aと、支持部521Bとが設けられている。
【0033】
バネ53は、ベース52を押圧する部材である(
図5参照)。キャップ51がノズル面42を覆う時、バネ53が圧縮され、ベース52がケース56に対して下側に移動する。バネ53がベース52を押圧することによって、所定の押圧力でキャップ51をノズル面42に押圧できる。また、バネ53で押圧した状態のキャップ51をノズル面42に接触させるため、仮に接触前のキャップ51がノズル面42に対して傾いていても、キャップ51をノズル面42に密着させることができる。
【0034】
ケース56は、ベース52を保持する部材である。ケース56は、上側に向かって押圧されているベース52の上抜けを防止するよう、ベース52を保持する。キャップ51がノズル面42を覆う時、キャップ51がノズル面42に押されることによって、ベース52がケース56に対して下側に移動する。ケース56は、上ケース56Aと、下ケース56Bとを有する。上ケース56Aは、ケース56の上部を構成する部材であり、ベース52の上抜けを防止する。下ケース56Bは、ケース56の下部を構成する部材であり、上ケース56Aを固定する部材である。
【0035】
なお、前述したように、キャップ51の底部511と、吸収体54と、ベース52のキャップ収容部521の底面とは、それぞれ矩形状である。しかし、後述する
図8Bに示されるキャップユニット70Bのように、吸収体74Bが矩形状以外(
図8Bでは、楕円形状)であり、キャップの底部等が吸収体74Bの形状に対応する形状であっても良い。すなわち、キャップユニットは、ヘッドの形状に合わせて様々な形状を選択することができる。
【0036】
<支持部521B及び吸引口部材521Aの詳細>
図6A及び
図6Bは、キャップユニット50Aの構成の概要を示す説明図である。なお、
図6Aは、吸収体54の上面の法線方向に見たときの、キャップユニット50Aの平面図を示している。前述したように、吸収体54は、上下方向に垂直な板状の部材である。このため、
図6Aは、下方向に見たときの、キャップユニット50Aの平面図でもある。さらに、
図6Aは、吸収体54の下面の法線方向に見たときの、キャップユニット50Aの平面図でもある。また、
図6Bは、
図6Aに示されるA-A線で切断した時の、キャップユニット50Aの断面図を示している。
【0037】
図6A及び
図6Bでは、説明を容易にするために、キャップユニット50Aの主要な構成のみを図示しており、主要な構成以外の構成については、図示を省略している。ここで、キャップユニット50Aの主要な構成とは、吸収体54と、支持部521Bと、吸引ユニット57(吸引口部材521A及び吸引管522)と、ベース52と、ケース56の下ケース56Bである。但し、
図6A及び
図6Bでは、ベース52及び下ケース56Bを一体的な部材として図示している。
【0038】
支持部521Bは、
図6Bに示されるように、上方に向かって突出し、支持部521Bの上端が吸収体54の下面に接触するよう構成されている。つまり、支持部521Bの上端は、
図6Bに示されるように、吸収体54の上面よりも下方に位置している。言い換えると、支持部521Bは、吸収体54よりも上側に突出した部位を有さない。これにより、キャップユニット50Aがヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体54を支持する支持部521Bがノズル面42に接触することを抑制できる。
【0039】
しかし、吸収体54の下面が支持部521Bにより支持されるだけで、他の部材により支持されない場合、吸収体54は、上方への移動が拘束されない。つまり、吸収体54の下面が支持部521Bにより支持されるだけで、他の部材により支持されない場合、吸収体54は、容易に浮き上がってしまう。そこで、本実施形態のキャップユニット50Aでは、吸収体54の下方に位置する吸引口部材521A(吸引ユニット57)における吸引力により、吸収体54を下方に引っ張る力を発生させている。すなわち、吸引口部材521Aは、収容部513(キャップ51の内部空間)内を負圧にするための吸引を行う部材であると共に、吸収体54を下方に引っ張るための吸引を行う部材である。これにより、吸収体54の下面が支持部521Bにより支持されるだけで、他の部材により支持されない場合においても、吸収体54の浮きを抑制することができる。
【0040】
また、
図6Bに示されるように、複数の吸引口部材521Aの各々は、吸収体54の下面から離間している。言い換えると、複数の吸引口部材521Aの各々の上端と、吸収体54の下面との間に隙間が存在する。仮に複数の吸引口部材521Aの各々の上端が、吸収体54の下面に密着している場合、吸収体54に溜まった液体を直接吸引することが可能である一方、収容部513(キャップ51の内部空間)内を負圧にするために空気を吸引することが困難となる。したがって、複数の吸引口部材521Aの各々が、吸収体54の下面から離間していることにより、吸収体54に溜まった液体を吸引すると共に、収容部513(キャップ51の内部空間)内を負圧にするよう空気を吸引することが容易にできる。
【0041】
図6Aに示される方向に見たとき、複数の吸引口部材521Aの各々の中心C(
図6Aに示される点を参照)は、中心部P1の内側に位置する。ここで、吸収体54における「中心部」とは、吸収体54の中心までの最短距離が吸収体54の外縁(外形)までの最短距離以下となる位置の集合である。本実施形態の場合は、吸収体54における「中心部」は、吸収体54の外縁と同心の領域であって、吸収体54の外縁に対して相似比が2分の1となる相似領域(
図6Aに示される破線で囲まれた矩形を参照)である。また、中心とは、幾何中心であり、矩形状の吸収体54の場合、対角線の交点の位置である。本実施形態のキャップユニット50Aでは、複数の吸引口部材521Aは、吸収体54の中心近くに密集して配置されている。これにより、吸収体54における液体が溜まりやすい中心部P1の付近を重点的に吸引することができる。
【0042】
但し、吸引ユニット57が有する複数の吸引口部材521Aの全てにおいて、中心Cが中心部P1に位置していなくても良い。すなわち、複数の吸引口部材521Aの全てが、吸収体54の中心近くに密集して配置されていなくても良い。全ての吸引口部材521Aの各々の中心Cが、
図6Aに示される外周部P2に位置していても良い。ここで、吸収体54における「外周部」とは、吸収体54の外縁で画定される領域のうち、前述の「中心部」以外の領域である。また、後述する
図8Aに示されるキャップユニット70Aのように、中心Cが中心部P1に位置している吸引口部材521Aと、中心Cが外周部P2に位置している吸引口部材521Aとが混在していても良い。
【0043】
さらに、
図6Aに示される方向に見たとき、複数の吸引口部材521Aの各々の中心Cは、吸収体54の中心に対して対称に位置している。
図6Aに示される例では、複数の吸引口部材521Aの各々の中心Cは、吸収体54の中心に対して回転対称となるよう位置している。これにより、吸収体54の浮きを偏りなく抑制することができる。但し、複数の吸引口部材521Aの中心Cは、吸収体54の中心に対して対称に位置していなくても良い。
【0044】
図6Aに示される方向に見たとき、複数の支持部521Bは、吸収体54の面(上面又は下面)において均等に配置されている。これにより、吸収体54を安定的に支持することができる。但し、複数の支持部521Bは、吸収体54の面において均等に配置されていなくても良い。
【0045】
<比較例>
以下では、吸収体よりも上側に突出した部位を有する支持部を備えるキャップユニットを比較例として、本実施形態のキャップユニット50Aの効果を改めて説明する。
【0046】
図7Aは、吸収体64及び抑制部材65を外した状態の比較例のキャップユニット60Aの斜視図である。
図7Bは、抑制部材65の固定方法の説明図である。
【0047】
比較例のキャップユニット60Aは、本実施形態のキャップユニット50Aと異なり、抑制部材65をさらに有する。また、キャップユニット60Aは、本実施形態のキャップユニット50Aと異なるキャップ61と、吸収体64と、吸引ユニット67と、支持部621Bとを有する。なお、キャップユニット60Aのその他の構成は、本実施形態のキャップユニット50Aと同様である。
【0048】
抑制部材65は、吸収体64を抑える部材である。抑制部材65は、上下方向に垂直な部材である。ここでは、抑制部材65は、金網で構成されている。
図7A及び
図7Bに示されるように、抑制部材65が吸収体64よりも上になるように、吸収体64及び抑制部材65が、キャップ61の収容部613に収容される。
【0049】
なお、比較例のキャップユニット60Aでは、吸引ユニット67は、
図7Aに示されるように、1つの吸引口部材621Aが、吸引穴611Aに挿通される態様である。すなわち、比較例のキャップユニット60Aでは、吸収体54を下方に引っ張るための吸引を行う機能が著しく低く、吸収体64を抑えるために、抑制部材65が必要である。
【0050】
抑制部材65は、固定部651を有する。固定部651は、支持部621Bに固定される部位である。固定部651は、
図7Aに示されるように、支持部621B(後述)を挿通させる挿通穴651Aを有する。
図7Bに示されるように、固定部651の挿通穴651Aに挿通した支持部621Bの端部を熱カシメすることによって、抑制部材65が固定され、抑制部材65が外れることが抑制される。また、吸収体64は、支持部621B(後述)を挿通させる挿通穴64Aを有する。
【0051】
支持部621Bは、本実施形態のキャップユニット50Aの支持部521Bと同様に、下端がキャップユニット60Aを構成するベース(不図示)に固定され、上方に向かって突出する。比較例のキャップユニット60Aでは、支持部621Bは、キャップ61、吸収体64及び抑制部材65に挿通され、抑制部材65を固定する。したがって、
図7Bに示されるように、支持部621Bの上端は抑制部材65(固定部651)よりも上方に突出する。
【0052】
比較例のキャップユニット60Aでは、キャップ61がヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、抑制部材65よりも上側に突出した支持部621Bの上端がノズル面42に接触するおそれがある。そこで、本実施形態のキャップユニット50Aでは、支持部521Bは、支持部521Bの上端が吸収体54の下面に接触するよう構成されている。すなわち、
図6Bに示されるように、支持部521Bの上端は、吸収体54の上面よりも下方に位置している。これにより、キャップユニット50Aのキャップ51がヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体54を支持する支持部521Bの一部(すなわち、支持部521Bの上端)がノズル面42に接触することを抑制できる。さらに、本実施形態のキャップユニット50Aでは、吸引ユニット57により吸収体54を下方に引っ張ることができるので、吸収体54を抑える抑制部材も不要となる。
【0053】
<変形例>
図8Aは、第1変形例のキャップユニット70Aの構成の概要を示す説明図である。第1変形例のキャップユニット70Aでは、複数(ここでは、8つ)の吸引口部材721Aは、中心Cが中心部P1内に位置している4つの吸引口部材721Aと、中心Cが外周部P2内に位置している4つの吸引口部材721Aとで構成されている。これにより、吸収体54における液体が溜まりやすい中心部P1の付近を重点的に吸引しつつ、吸収体54の外周部P2の浮きも抑制することができる。
図8Aに示される例では、中心Cが外周部P2内に位置している4つの吸引口部材721Aは、矩形状の吸収体74Aの四隅に配置されている。すなわち、複数の吸引口部材721Aの各々の中心Cは、吸収体74Aの中心に対して対称に位置している。
【0054】
図8Bは、第2変形例のキャップユニット70Bの構成の概要を示す説明図である。前述したキャップユニット50A,70Aは、矩形状であった。しかし、キャップユニットは、ヘッドの形状に合わせて様々な形状を選択することができる。第2変形例のキャップユニット70Bは、
図8Bに示される方向に見たとき、楕円形状を有している。このような場合においても、キャップユニット70Bがヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体74Bを支持する支持部721Bがノズル面42に接触することを抑制できる。
【0055】
図8Cは、第3変形例のキャップユニット70Cの構成の概要を示す説明図である。第3変形例のキャップユニット70Cでは、
図8Cに示される方向に見たとき、複数の吸引口部材721Aが直線状に配置されている。このような場合においても、キャップユニット70Cがヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体74Cを支持する支持部721Bがノズル面42に接触することを抑制できる。
【0056】
図9Aは、第4変形例のキャップユニット80Aの斜視図である。
図9Bは、吸収体84及び抑制部材85を外した状態の第4変形例のキャップユニット80Aの斜視図である。
【0057】
前述したキャップユニット50Aでは、吸引ユニット57により吸収体54を下方に引っ張ることができるので、吸収体54を抑える抑制部材が不要であった。しかし、第4変形例のキャップユニット80Aのように、金属製の網状の部材である抑制部材85を有する態様であっても良い。これにより、吸収体84をより安定的に抑えることができる。なお、抑制部材85は、金属製でなくても良いし、網状の部材でなくても良い。
【0058】
抑制部材85は、枠部852と、リブ853とを有する。枠部852は、抑制部材85の周縁を構成する部位である。枠部852は、矩形状の抑制部材85の4辺の周縁を構成する。リブ853は、抑制部材85を補強する部位である。
図9Aの拡大図に示されるように、キャップ81の壁部812が有する引っ掛け部812Aは、リブ853と連結している枠部852の部位を引っ掛けることが望ましい。これにより、抑制部材85を安定的に保持できる。
【0059】
第4変形例のキャップユニット80Aは、抑制部材85を有しているが、前述したキャップユニット50Aと同様に、支持部821Bの上端は、吸収体84の上面よりも下方に位置している。このため、キャップユニット80Aがヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体74Cを支持する支持部721Bがノズル面42に接触することを抑制できる。
【0060】
===小括===
上記の液体吐出装置1は、
図1,
図2A及び
図2Bに示されるように、液体を吐出するノズル面42を備えるヘッド41と、ノズル面42との間に空間(収容部513)を形成可能なキャップユニット50Aと、を有する。キャップユニット50Aは、
図3,
図4,
図6A及び
図6Bに示されるように、ノズル面42から吐出される液体を吸収可能な吸収体54と、吸収体54の下面を支持する支持部521Bと、吸収体54の下方に位置する吸引口部材521Aを複数有し、空間(収容部513)内を吸引する吸引ユニット57と、を備える。また、支持部521Bの上端は、
図6Bに示されるように、吸収体54の上面よりも下方に位置し、複数の吸引口部材521Aの各々は、吸収体54の下面から離間している。これにより、キャップユニット50Aがヘッド41のノズル面42をキャッピングした際に、吸収体54を支持する支持部521Bがノズル面42に接触することを抑制できる。
【0061】
また、上記の液体吐出装置1では、
図6Aに示されるように、吸収体54の上面又は下面の法線方向に見たときに、複数の吸引口部材521Aの少なくとも一部の吸引口部材521Aの中心Cは、吸収体54の外縁よりも中心に近い中心部P1に位置する、ことが望ましい。これにより、吸収体54における液体が溜まりやすい中心部P1の付近を重点的に吸引することができる。
【0062】
また、上記の液体吐出装置1では、
図8A及び
図8Bに示されるように、複数の吸引口部材521Aの一部の吸引口部材521Aの中心Cは、中心部P1に位置し、一部の吸引口部材521A以外の吸引口部材521Aの中心Cは、吸収体54の中心よりも外縁に近い外周部P2に位置する、ことが望ましい。これにより、吸収体54における液体が溜まりやすい中心部P1の付近を重点的に吸引しつつ、吸収体54の外周部P2の浮きも抑制することができる。
【0063】
また、上記の液体吐出装置1では、
図6A、
図8A、
図8B及び
図8Cに示されるように、吸収体54の上面又は下面の法線方向に見たときに、複数の吸引口部材521Aの中心Cは、吸収体54の中心に対して対称に位置する、ことが望ましい。これにより、吸収体54の浮きを偏りなく抑制することができる。
【0064】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 液体吐出装置、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
30 搬送ユニット、31 搬送ローラー、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
42 ノズル面、44 ノズル列、45 ノズル、
50 キャップ機構、
50A,60A,70A~70C,80A キャップユニット、
51,61,81 キャップ、511,611,811 底部、
511A,611A,811A 吸引穴、
511B,611B,811B 挿通穴、
512,812 壁部、512A,812A 引っ掛け部、
513,613,813 収容部、514 パッキン、
52 ベース、521 キャップ収容部、
521A,621A,721A,821A 吸引口部材、
521B,621B,721B,821B 支持部、
522 吸引管、53 バネ、
54,64,74A~74C,84 吸収体、
64A 挿通穴、65,85 抑制部材、
651 固定部、651A 挿通穴、
852 枠部、853 リブ、
56 ケース、56A 上ケース、56B 下ケース、
57,67,87 吸引ユニット、
M 媒体、C 中心、P1 中心部、P2 外周部