(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156911
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】車両の補助制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 10/02 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
B60T10/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066569
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】直井 人士
【テーマコード(参考)】
3D047
【Fターム(参考)】
3D047BB20
(57)【要約】
【課題】エンジン冷却流体を循環させるポンプを制御することで脈動の発生による影響を低減し、構成部品を保護することができる車両の補助制動装置を提供する。
【解決手段】エンジン10の冷却回路50に設けられる車両の補助制動装置1であって、冷却回路50において冷却流体を循環させるためのポンプ30と、エンジン10の出力側に連結された変速機と車両の駆動輪との間に配設され、冷却流体が流れ込むことで駆動輪に制動力を発生させる流体室を備えたリターダ20と、冷却流体のリターダ20への流入を制御する制御部70と、を備え、制御部70は、冷却流体をリターダ20へ流入させる時にエンジン10の回転数が所定値以上の場合、ポンプ30の出力を所定期間に渡り抑制する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却回路に設けられる車両の補助制動装置であって、
前記冷却回路において冷却流体を循環させるためのポンプと、
前記内燃機関の出力側に連結された変速機と上記車両の駆動輪との間に配設され、前記冷却流体が流れ込むことで前記駆動輪に制動力を発生させる流体室を備えたリターダと、
前記冷却流体の前記リターダへの流入を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記冷却流体を前記リターダへ流入させる時に前記内燃機関の回転数が所定値以上の場合、前記ポンプの出力を所定期間に渡り抑制することを特徴とした車両の補助制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の補助制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の大型車両には、特許文献1のように、車両の変速機にリターダを備えるものがある。このリターダは、エンジンの冷却回路に接続されて、補助制動が必要な時に冷却流体をリターダのチャンバ内に通過させることで抵抗力を発生させ、変速機の回転力を低減させ、結果として車両に制動力を与えるようになっている。
【0003】
また、エンジンの冷却回路内で冷却流体を循環させるポンプとして、エンジンの回転動力をクランクプーリを介して伝えることにより速度可変に作動するものがある。この場合、ポンプには、エンジンの回転動力の入力を断続する粘性式クラッチ(特許文献2参照)や電磁クラッチが設けられる(特許文献3参照)。粘性式クラッチや電磁クラッチはクラッチの滑り量を増加させてポンプに伝達するエンジンの回転動力の量を減少させてポンプ出力を抑えるいわゆるスリップ制御が可能であり、例えば、エンジンが低回転のときに燃費削減を目的としてスリップ制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-519627号公報
【特許文献2】特表2010-519105号公報
【特許文献3】特開2014-109375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような車両用冷却回路の閉回路において、それらの構成部品であるポンプやリターダの作動によって発生する脈動により、冷却回路に接続するラジエータ等の部品が厳しい圧力変動にさらされることがある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エンジンの冷却流体を循環させるポンプを制御することで冷却回路に発生する脈動を抑制し、冷却回路の構成部品を保護することができる車両の補助制動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る車両の補助制動装置は、内燃機関の冷却回路に設けられる車両の補助制動装置であって、前記冷却回路において冷却流体を循環させるためのポンプと、前記内燃機関の出力側に連結された変速機と上記車両の駆動輪との間に配設され、前記冷却流体が流れ込むことで前記駆動輪に制動力を発生させる流体室を備えたリターダと、前記冷却流体の前記リターダへの流入を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記冷却流体を前記リターダへ流入させる時に前記内燃機関の回転数が所定値以上の場合、前記ポンプの出力を所定期間に渡り抑制することを特徴とする。
【0009】
このように構成された車両の補助制動装置は、エンジンの冷却流体を循環させるポンプを制御することで冷却回路に発生する脈動の影響を低減し、冷却回路の構成部品を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の車両の補助制動装置を模式的に示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る車両の補助制動装置の制御構成を示すブロック図である。
【
図3】(A)リターダ作動時の、エンジン回転数に応じたポンプ回転数の目標設定値と、ポンプ回転数を目標設定値にするために必要な粘性式クラッチの滑り量に基づくスリップ率と、を示すグラフである。(B)ラジエータの入力側及び出力側の圧力についてポンプの出力抑制の影響を示すグラフである。
【
図4】本発明の一実施形態の車両の補助制動装置の制御部が実行するポンプ出力制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態の車両の補助制動装置を模式的に示す概略構成図である。本実施形態の車両の補助制動装置1が搭載される車両は、トラックやバス等の商用大型車である。補助制動装置1は、
図1に示すように、不図示の車輪の駆動源となるエンジン(内燃機関)10、補助ブレーキであるリターダ20、ポンプ30、及びラジエータ40を備えた液圧回路50と、アクセルペダル11と、クラッチペダル12と、補助ブレーキスイッチ23と、制御部70と、を含んで構成される。本実施形態の液圧回路50は、ラジエータ40で冷却された流体(冷媒)を、ポンプ30により送液して、エンジン10を冷却し、さらにリターダ20においてトルク伝達用流体として用いている。
【0013】
リターダ20は、主に商用大型車に用いられる補助ブレーキであり、例えば流体式リターダである。本実施形態では、リターダ20において攪拌抵抗を生じさせる流体としてオイルではなく冷却水が用いられている。なお、液圧回路50を循環する流体は、水であってもオイルであっても構わない。
【0014】
リターダ20は、エンジン10の出力側に連結された変速機(不図示)と車両の駆動輪(不図示)との間に配設され、液圧回路50においてエンジン10からラジエータ40への冷却流体のリターダ流体通路51を形成している。リターダ20は、内部のリターダ流体通路51から分岐する通路52aを介して、冷却流体を流入させることで駆動輪に制動力を発生させるチャンバ(流体室)21を備える。チャンバ21を通過した冷却液体はチャンバ21に接続する通路52bを介してリターダ流体通路51に合流する。また、通路52aには、チャンバ21への流体の流入を制御するチャンバ入力弁22が設けられている。リターダ20は、その機能を発揮させない(作動させていない)状態では、チャンバ21内が空になっており、流体が満たされていない。しかし、リターダ20は、補助ブレーキとしての制動力を発生させる場合には、チャンバ入力弁22が開状態となることで冷却流体が導入されチャンバ21内の不図示のロータとステータとの間で攪拌抵抗が生じ、最終的に車両に対する制動力を発生する。
【0015】
チャンバ入力弁22は、制御部70の制御により開状態と閉状態を切り替えられる。チャンバ入力弁22が開状態となることでリターダ20のチャンバ21に液圧回路50の冷却流体が流入し、補助ブレーキとしての制動力が発生する。
【0016】
補助ブレーキスイッチ23は、例えば、運転席に設けられ、運転者が車両を制動させる場合に運転者の所定の操作によりリターダ20を作動させるオン状態と、作動させないオフ状態を選択するスイッチである。所定の操作とは、運転席に設けられているアクセルペダル11を開放状態、かつ、クラッチペダル12を開放状態にする操作である。
【0017】
ポンプ30は、液圧回路50に冷却を強制循環させるもので、クランクプーリを介してエンジン10の回転動力により駆動され、基本的にはエンジン回転数Neに比例した速度で作動する。本実施例では、ポンプ30は、エンジン10の回転動力の入力を断続する粘性式クラッチを備える。この粘性式クラッチは内部に動力伝達媒体であるシリコンオイルが封入されており、クラッチの入力回転数に対する滑り量を図示しない電子バルブで制御できるようになっている。これによりクラッチの断続を制御し、出力の抑制(スリップ率)を調整することができる。
【0018】
ラジエータ40は、主に冷却流体(冷媒)と外気との熱交換によって、エンジンを通過して加熱された冷却流体を熱放出させている。液圧回路50には、不図示の加圧キャップが組み付けられ、加圧キャップ及び分岐通路53を介してリザーバタンク41が接続されている。加圧キャップは、正圧弁と、負圧弁とを具えている。正圧弁は、バネ部材により付勢され冷却液経路内を大気圧より高い圧力に保持するとともに、冷却液経路内の圧力が所定圧以上に上昇すると開き、膨張した冷却液をリザーバタンク41に送り出して冷却液通路内の圧力を所定の圧力に調整している。負圧弁は、冷却液経路内の圧力が所定圧以下に低下すると開き、リザーバタンク41から冷却液を冷却液経路に流入させる。
【0019】
制御部70は、電子演算装置や記憶部等から構成される制御ユニットで、例えば車両用のECU(電子制御ユニット:Electronic Control Unit)であり、車両の補助制動装置1の各コンポーネントや各種センサとCAN(Controller Area Network)等の通信ネットワークを介して通信可能である。本実施形態では、制御部70は、主に予めインストールされた所定のプログラムに従ってリターダ20への流体流入やポンプ30の出力抑制制御を行う機能を有する。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態に係る車両の補助制動装置の制御構成を示すブロック図である。本図を参照して、車両の補助制動装置1の制御の構成と機能を以下に説明する。
【0021】
制御部70は、エンジン10、アクセルペダル11、クラッチペダル12、補助ブレーキスイッチ23、チャンバ入力弁22、及びポンプ30と通信可能に接続されている。また、制御部70は、相互に通信可能に接続された、エンジン回転数判定部71、リターダ入力弁制御部72、ポンプ制御部73、及び計時部74を備える。
【0022】
エンジン回転数判定部71は、エンジン10からエンジン回転数Neを取得し、エンジン回転数Neが所定のエンジン回転数ne以上か否かを判定する(エンジン回転数判定)。所定の回転数neは、例えば、リターダ20を作動させた時に冷却流体の脈動のピーク圧力が液圧回路50やラジエータ40の設定内圧を超える付近の値に設定される。
【0023】
リターダ入力弁制御部72は、補助ブレーキスイッチ23のオン状態・オフ状態と、アクセルペダル11及びクラッチペダル12の踏み込み状態・解放状態と、に基づいて、チャンバ入力弁22を開状態又は閉状態に切り替える制御を行う。具体的には、補助ブレーキスイッチ23がオン状態からオフ状態に切り替えられた場合、リターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を閉状態に切り換える(既に閉状態であった場合は、閉状態を維持する)。一方、補助ブレーキスイッチ23がオン状態の時に、アクセルペダル11が開放状態かつクラッチペダル12が開放状態となった場合、リターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を閉状態から開状態に切り換える。また、チャンバ入力弁22が開状態かつ補助ブレーキスイッチ23がオン状態の時に、アクセルペダル11又はクラッチペダル12のいずれかが踏み込み状態に切り替わった場合には、チャンバ入力弁22を閉状態に切り換える。
【0024】
ポンプ制御部73は、エンジン回転数Neに応じて、チャンバ入力弁22が開状態とされると同時に、ポンプ30の出力を一時的に(所定の期間)抑制する制御を行う(ポンプ出力抑制制御)。具体的には、エンジン回転数Neが所定のエンジン回転数ne以上である場合、チャンバ入力弁22が開状態とされると同時に、ポンプ30の粘性式クラッチの滑り量を調整して、ポンプ30の出力を抑制する。具体的には、ポンプ回転数Npを、ポンプ30の吐出圧力Ppが所定の吐出圧力pp1となる所定のポンプ回転数npまで減少させる。また、ポンプ制御部73は、ポンプ30の出力抑制制御を開始してから所定の期間が経過すると、ポンプ出力抑制制御を終了する。所定の期間とは、チャンバ入力弁22が開状態とされた時から、後述する計時部74により出力された計時値Tが所定の計時値tに到達するまでである。また、所定の期間(すなわち所定の計時値t)は、リターダ20の作動後に発生した脈動が収束し液圧回路50の系内の圧力がほぼ安定化するまでの時間に設定される。所定のポンプ回転数npについては後述する。
【0025】
計時部74は、ポンプ制御部73がポンプ30の出力抑制を開始した時点から計時を開始し、経過時間を計時値Tとして出力する。なお、計時部74は、ポンプ制御部73によるポンプ30の出力抑制が終了すると、計時を終了し、計時値Tをリセットする。また、計時中にリターダ20の作動が中止された場合にも計時値Tをリセットする。
【0026】
図3(A)は、リターダ作動時の、エンジン回転数に応じたポンプ回転数の目標設定値と、ポンプ回転数を目標設定値にするために必要な粘性式クラッチの滑り量に応じて決まるスリップ率とを示すグラフである。
図3(B)は、ラジエータの入力側及び出力側の圧力についてポンプの出力抑制の影響を示すグラフである。これらの図を参照しながら、ポンプの出力抑制について説明する。
【0027】
ポンプ30の粘性式クラッチの滑り量が0(ゼロ)で作動している場合の粘性式クラッチのスリップ率を0とする。滑り量は0(ゼロ)以上1以下の数値を取ることができる。スリップ率が0の場合は、入力される回転動力の100%が粘性式クラッチを介して、ポンプ30の回転動力となる。スリップ率が0.5の場合は、入力される回転動力の50%が粘性式クラッチを介して、ポンプ30の回転動力となる。
【0028】
図3(A)に示すように、エンジン回転数Neが所定のエンジン回転数neまでの区間では、線S1で示すようにスリップ率は0に設定され、ポンプ回転数Npは、線Np1で示すように、エンジン回転数Neに比例して増加する。すなわち、この区間ではポンプ出力抑制制御は行われない。一方、エンジン回転数Neが所定のエンジン回転数ne以降の区間では、スリップ率を、エンジン回転数Neに応じて線S2で示す値に一時的に上げることで、ポンプ回転数Npを、線Np2で示す所定のエンジン回転数neに下げることができる。なお、比較のために、リターダ20の作動時にポンプ出力抑制制御が行われない場合のエンジン回転数Neに応じたポンプ回転数Npが破線Np3として示されている。
【0029】
このように、エンジン回転数Neが所定の回転数neを超える区間で、リターダ20を作動させる場合に、一時的にポンプ出力抑制制御を行うことで、ポンプ回転数Npが所定のポンプ回転数npまで下がり、
図3(B)に示すように、ラジエータ40の入力側及び出力側の平均圧力を、線Pin2、Pout2で示す平均圧力値pp2、pp1に抑えることができる。なお、比較のために、ポンプ出力抑制制御が行われない場合のラジエータ40の入力側及び出力側の平均圧力が破線Pin3、Pout3に示されている。この平均圧力値pp2は、脈動が発生しても液圧回路の構成部品に影響を及ぼさない値が選択され、選択されたpp2に応じて所定のエンジン回転数neが
図3(B)から求めることができる。
【0030】
図4は、本発明の一実施形態の車両の補助制動装置の制御部が実行するポンプ出力制御ルーチンを示すフローチャートである。以下同フローチャートに沿って説明する。当該ルーチンは、アクセルペダル11又はクラッチペダル12がオン、かつ、補助ブレーキスイッチ23がオン、の状態でスタートする。
【0031】
まず、ステップS101として、制御部70は、アクセルペダル11(
図3ではアクセルと表示)及びクラッチペダル12(
図3ではクラッチと表示)の両方が解除(オフ、踏み込まれていない状態)された信号を取得し、ステップS102に進む。
【0032】
続くステップS102として、制御部70のエンジン回転数判定部71は、エンジン10から取得したエンジン回転数Neが所定の回転数ne以上か否かを判定する(エンジン回転数判定)。当該判定結果が真(Yes)の場合、即ちエンジン回転数Neが、所定の回転数ne以上である場合は、ステップS104に進む。当該判定結果が偽(No)の場合、即ちエンジン回転数Neが、所定の回転数ne未満である場合は、ステップS107に進む。
【0033】
ステップS103として、すなわち、ステップS102のエンジン回転数判定においてエンジン回転数Neが所定の回転数ne以上であると判定された場合、制御部70のリターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を閉状態から開状態に切り替える。また、同時に、制御部70のポンプ制御部73は、ポンプ30のスリップ制御を開始する。さらに、同時に、制御部70の計時部74は、計時を開始する。そして、ステップS104に進む。
【0034】
ステップS104では、制御部70の計時部74は、計時値Tが所定の計時値t以上であるかを判定する(計時判定)。当該判定結果が真(Yes)の場合、即ち計時判定において、計時値Tが所定の計時値t以上である場合は、ステップS105に進む。当該判定結果が偽(No)の場合、即ち計時判定において計時値Tが所定の計時値t未満である場合は、計時を継続する。
【0035】
ステップS105として、制御部70のポンプ制御部73は、ポンプ30のスリップ制御を終了して、当該ルーチンをリターンする。
【0036】
ステップS106として、制御部70のリターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を開状態に切り換えて、当該ルーチンをリターンする。
【0037】
なお、当該ルーチン実行中に、補助ブレーキスイッチ23がオフ状態に切り替わった場合、当該ルーチンは強制割り込み終了され、制御部70のリターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を閉状態に切り換える。同様に、当該ルーチンのステップS103の実行後、即ち、チャンバ入力弁22が開状態において、アクセルペダル11またはクラッチペダル12が踏み込み状態となった場合にも、当該ルーチンは強制割り込み終了され、制御部70のリターダ入力弁制御部72は、チャンバ入力弁22を閉状態に切り換える。
【0038】
以上のように構成された車両の補助制動装置1は、リターダ20が作動開始したとき、即ちリターダ20のチャンバ21に冷却流体が入り始めるときから所定の期間、ポンプ30の出力を一時的に下げることで、液圧回路50の平均圧力を下げることができる。これにより、脈動の発生による影響を低減し、液圧回路50の構成部品を保護することができる。また、センサを追加で設けることなく、制御部70のプログラムを変更することで、容易に実装できる。
【0039】
以上で本発明に係る車両の補助制動装置1の実施形態についての説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0040】
上記実施形態においては、ポンプ30のクラッチとして粘性式クラッチを用いたが、これに限らず、例えば、電磁クラッチなどを用いてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、ポンプ30は、エンジンの回転をベルトにより伝達して駆動されるタイプであったが、モータ駆動式であってもよい。この場合は、制御部70がモータの回転数を制御することでポンプ出力を制御しても良い。モータ制御により、ポンプ30の出力抑制量や抑制期間の微調整が容易となる。また、粘性式クラッチや電磁式クラッチを介すよりも、各段に応答性が良くなる。
【符号の説明】
【0042】
1 :補助制動装置
10 :エンジン
11 :アクセルペダル
12 :クラッチペダル
20 :リターダ
21 :チャンバ
22 :チャンバ入力弁
23 :補助ブレーキスイッチ
30 :ポンプ
40 :ラジエータ
41 :リザーバタンク
50 :液圧回路
51 :リターダ流体通路
53 :分岐
70 :制御部
71 :エンジン回転数判定部
72 :リターダ入力弁制御部
73 :ポンプ制御部
74 :計時部