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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156912
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ゼータ電位測定用治具セット
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/26 20060101AFI20231018BHJP
   G01N 27/447 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G01N27/26 P
G01N27/447 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066570
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000206967
【氏名又は名称】大塚電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長沢 広也
(72)【発明者】
【氏名】笹 一志
(72)【発明者】
【氏名】浜尾 保
(72)【発明者】
【氏名】村上 典彦
(57)【要約】
【課題】簡便な作業で試料の交換またはメッキ処理を施すことができるゼータ電位測定用治具セットを提供する。
【解決手段】枠体と枠体に固定される測定用治具を有するゼータ電位測定用治具セットである。枠体は、対向して配置される第1及び第2保持壁と、第1及び第2保持壁の下端を連結し陽極板及び陰極板を有する底壁と、アーム状の第1ロック部を有する。測定用治具は、底部に陽極板及び陰極板が位置する陽極穴部及び陰極穴部を有し、底壁の上に配置される下段ブロックと、試料が配置される凹部とセル連通孔を有し下段ブロックの上に配置されるセルと、平面視で凹部を囲う枠状の形状を有しセルの上に配置される中段ブロックと、中段ブロックの上に配置されるとともに凹部の上面を塞ぐ上部部材と、上部部材を底壁側に押圧する第2ロック部と、有する。第1ロック部は、中段ブロックを底壁側に押圧し、枠体、下段ブロック、セル、中段ブロックを一体化させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体と、該枠体に固定される測定用治具と、を有する電気泳動移動度測定に用いられるゼータ電位測定用治具セットであって、
前記枠体は、
試料に照射される照射光及び該照射光が前記試料により散乱された散乱光が通過する開口をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される第1保持壁及び第2保持壁と、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結し陽極板及び陰極板を有する底壁と、
アーム状の第1ロック部と、
を有し、
前記測定用治具は、
底部に前記陽極板及び前記陰極板が位置する陽極穴部及び陰極穴部を有し、前記底壁の上に配置される下段ブロックと、
前記試料が配置される凹部と、該凹部の底面に前記陽極穴部及び前記陰極穴部のそれぞれと連通するセル連通孔と、を有し、前記照射光及び前記散乱光を透過する材料で形成され、前記下段ブロックの上に配置されるセルと、
平面視で前記凹部を囲う枠状の形状を有し、前記セルの上側に配置される中段ブロックと、
前記中段ブロックの上に配置されるとともに前記凹部の上面を塞ぐ上部部材と、
前記上部部材を前記底壁側に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、前記上部部材と、を一体化させる第2ロック部と、
を有し、
前記第1ロック部は、前記中段ブロックを前記底壁側に弾性的に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、を一体化させる、
ことを特徴とするゼータ電位測定用治具セット。
【請求項2】
前記下段ブロックは、
前記底壁と接する面に、前記陽極穴部及び前記陰極穴部の周囲を囲う第1シールと、
前記セルと接する面に、前記陽極穴部及び前記陰極穴部の周囲を囲う第2シールと、
を有し、
前記中段ブロックは、
前記セルと接する面に、前記凹部を囲う第3シールと、
前記上部部材と接する面に、第4シールと、
を有することを特徴とする請求項1に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項3】
前記第1ロック部は、一方の端部が、ロック位置において前記中段ブロックの上面に設けられた第1被嵌合部と弾性的に嵌合する嵌合部を有し、他方の端部が、ロック位置と非ロック位置で回動可能に前記第1保持壁及び前記第2保持壁の端部に軸支された、アームであることを特徴とする請求項1または2に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項4】
前記第2ロック部は、長軸方向と短軸方向を有し、かつ、中心から端部にかけて厚みが変化する形状を有し、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁は、それぞれ前記第2ロック部の端部が係合する係合穴を有し、
前記第2ロック部は、前記底壁の面内方向に回転可能であり、端部が前記係合穴に係合することで前記上部部材を前記底壁側に押圧することを特徴とする請求項1または2に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項5】
前記上部部材は、
前記セルの上に配置されて前記セルの上面を前記底壁側に押圧するセル上面押さえ部と、
前記中段ブロックの上方に配置され、前記中段ブロック及び該中段ブロックに設けられた前記第4シールを前記底壁側に押圧する上段ブロックと、
有することを特徴とする請求項2に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項6】
前記上段ブロックは、前記セルの上方に上下方向に貫通する貫通孔を有し、
前記測定用治具は、さらに、前記貫通孔に配置され、前記セル上面押さえ部を前記セルに押圧する押圧部を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項7】
前記下段ブロックは、前記陽極穴部及び前記陰極穴部に前記試料を供給する供給路を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項8】
枠体と、該枠体に固定される測定用治具と、前記枠体に固定されるメッキ用治具と、を有する電気泳動移動度測定に用いられるゼータ電位測定用治具セットであって、
前記枠体は、
試料に照射される照射光及び該照射光が前記試料により散乱された散乱光が通過する開口をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される第1保持壁及び第2保持壁と、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結し陽極板及び陰極板を有する底壁と、
一方の端部が嵌合部を有し、他方の端部がロック位置と非ロック位置で回動可能に前記第1保持壁及び前記第2保持壁の端部に軸支された、アーム状の第1ロック部と、
を有し、
前記測定用治具は、
前記照射光が照射される位置に試料が配置される凹部を有するセルと、
前記第1ロック部が前記ロック位置にあるときに、前記嵌合部と弾性的に嵌合する第1被嵌合部と、
を有し、
前記メッキ用治具は、
前記陽極板及び前記陰極板をメッキするメッキ液が配置される凹部と、
前記第1ロック部が前記ロック位置にあるときに、前記嵌合部と弾性的に嵌合する第2被嵌合部と、
を有するメッキ液保持具を有し、
前記測定用治具と前記メッキ用治具は、前記枠体に対して選択的に交換して装着される、ことを特徴とするゼータ電位測定用治具セット。
【請求項9】
前記測定用治具は、
底部に前記陽極板及び前記陰極板が位置する陽極穴部及び陰極穴部を有し、前記底壁の上に配置される下段ブロックと、
前記試料が配置される凹部と、該凹部の底面に前記陽極穴部及び前記陰極穴部のそれぞれと連通するセル連通孔と、を有し、前記照射光及び前記散乱光を透過する材料で形成され、前記下段ブロックの上に配置されるセルと、
平面視で前記凹部を囲う枠状の形状を有し、前記セルの上側に配置される中段ブロックと、
前記中段ブロックの上に配置されるとともに前記凹部の上面を塞ぐ上部部材と、
前記上部部材を前記底壁側に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、前記上部部材と、を一体化させる第2ロック部と、
を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項10】
前記メッキ液保持具は、前記メッキ液が配置される凹部の底面に前記陽極穴部及び前記陰極穴部のそれぞれと連通するメッキ液連通孔を有する、ことを特徴とする請求項8または9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項11】
前記下段ブロックは、
前記底壁と接する面に、前記陽極穴部及び前記陰極穴部の周囲を囲う第1シールと、
前記セルと接する面に、前記陽極穴部及び前記陰極穴部の周囲を囲う第2シールと、
を有し、
前記中段ブロックは、
前記セルと接する面に、前記凹部を囲う第3シールと、
前記上部部材と接する面に、第4シールと、
を有することを特徴とする請求項9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項12】
前記第1ロック部は、前記中段ブロックを前記底壁側に弾性的に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、を一体化させる、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項13】
前記第2ロック部は、長軸方向と短軸方向を有し、かつ、中心から端部にかけて厚みが変化する形状を有し、
前記第1保持壁及び前記第2保持壁は、それぞれ前記第2ロック部の端部が係合する係合穴を有し、
前記第2ロック部は、前記底壁の面内方向に回転可能であり、端部が前記係合穴に係合することで前記上部部材を前記底壁側に押圧することを特徴とする請求項11に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項14】
前記上部部材は、
前記セルの上に配置されて前記セルの上面を前記底壁側に押圧するセル上面押さえ部と、
前記中段ブロックの上方に配置され、前記中段ブロック及び該中段ブロックに設けられた前記第4シールを前記底壁側に押圧する上段ブロックと、
有することを特徴とする請求項9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項15】
前記上段ブロックは、前記セルの上方に上下方向に貫通する貫通孔を有し、
前記測定用治具は、さらに、前記貫通孔に配置され、前記セル上面押さえ部を前記セルに押圧する押圧部を有する、
ことを特徴とする請求項14に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項16】
前記下段ブロックは、前記陽極穴部及び前記陰極穴部に前記試料を供給する供給路を有する、ことを特徴とする請求項9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【請求項17】
前記メッキ用治具は、さらに、メッキ液が配置される凹部に嵌合し、該凹部の上面を覆う蓋を有し、
該蓋は、前記メッキ液が配置される凹部と上面を連通する圧抜き孔を有する、
ことを特徴とする請求項8または9に記載のゼータ電位測定用治具セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゼータ電位測定用治具セットに関する。
【背景技術】
【0002】
電場の影響下で移動する試料セル容器内の粒子の電気泳動移動度やζ(ゼータ)電位を測定する電気泳動移動度測定装置が知られている。電気泳動移動度測定装置は、電界を付与した試料に光を照射し、試料により散乱された散乱光を受光器で検出する。検出された散乱光の周波数成分を解析することにより粒子の速度が算出され、粒子速度分布又はそれらの粒子の電気泳動移動度の分布が得られる(下記特許文献1乃至3参照)。
【0003】
電気泳動移動度測定装置には、透明壁を有するセルには、測定対象となる粒子の分散体を懸濁させた試料が配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-169982号公報
【特許文献2】特開平05-312757号公報
【特許文献3】特開平10-104188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体平板試料の表面のゼータ電位を測定する場合、個体試料と液体試料がともに用いられる。個体試料と液体試料が配置されたセルと電気泳動移動度測定装置との位置関係を固定するために、ゼータ電位測定用治具セットが用いられる。ゼータ電位測定用治具セットから液体試料が漏れだすと電気泳動移動度測定装置の汚れや破損につながる恐れがある。従来、ゼータ電位測定用治具は、ロック部により複数の部材が共締めされた構成を有しており、個体試料を交換する際に、ロック部を緩めると、各部材の間に液体試料が漏れ出してしまうという課題(第1の課題)があった。
【0006】
また、ゼータ電位測定用治具セットは、試料に電界をかけるために、陽極板と陰極板を有している。陽極板と陰極板にメッキ処理を施す場合、ゼータ電位測定用治具セットから陽極板と陰極板を取り外し、取り外した陽極板と陰極板にメッキ処理を施した後で、再度陽極板と陰極板をゼータ電位測定用治具セットに配置する必要があり、作業が煩雑(第2の課題)であった。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その第1の目的は、各部材の間に液体試料が漏れ出させずに、簡便な作業で個体試料を交換することができるゼータ電位測定用治具セットを提供することである。
【0008】
また、第2の目的は、簡便な作業で陽極板と陰極板にメッキ処理を施すことができるゼータ電位測定用治具セットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記第1の課題を解決するために、本開示に係る一側面に係るゼータ電位測定用治具セットは、枠体と、該枠体に固定される測定用治具と、を有する電気泳動移動度測定に用いられるゼータ電位測定用治具セットであって、前記枠体は、試料に照射される照射光及び該照射光が前記試料により散乱された散乱光が通過する開口をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される第1保持壁及び第2保持壁と、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結し陽極板及び陰極板を有する底壁と、アーム状の第1ロック部と、を有し、前記測定用治具は、底部に前記陽極板及び前記陰極板が位置する陽極穴部及び陰極穴部を有し、前記底壁の上に配置される下段ブロックと、前記試料が配置される凹部と、該凹部の底面に前記陽極穴部及び前記陰極穴部のそれぞれと連通するセル連通孔と、を有し、前記照射光及び前記散乱光を透過する材料で形成され、前記下段ブロックの上に配置されるセルと、平面視で前記凹部を囲う枠状の形状を有し、前記セルの上側に配置される中段ブロックと、前記中段ブロックの上に配置されるとともに前記凹部の上面を塞ぐ上部部材と、前記上部部材を前記底壁側に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、前記上部部材と、を一体化させる第2ロック部と、有し、前記第1ロック部は、前記中段ブロックを前記底壁側に弾性的に押圧し、前記枠体と、前記下段ブロックと、前記セルと、前記中段ブロックと、を一体化させる、ことを特徴とする。
【0010】
上記第2の課題を解決するために、本開示に係る他の一側面に係るゼータ電位測定用治具セットは、枠体と、該枠体に固定される測定用治具と、前記枠体に固定されるメッキ用治具と、を有する電気泳動移動度測定に用いられるゼータ電位測定用治具セットであって、前記枠体は、試料に照射される照射光及び該照射光が前記試料により散乱された散乱光が通過する開口をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される第1保持壁及び第2保持壁と、前記第1保持壁及び前記第2保持壁の各下端を連結し陽極板及び陰極板を有する底壁と、一方の端部が嵌合部を有し、他方の端部がロック位置と非ロック位置で回動可能に前記第1保持壁及び前記第2保持壁の端部に軸支された、アーム状の第1ロック部と、を有し、前記測定用治具は、前記照射光が照射される位置に試料が配置される凹部を有するセルと、前記第1ロック部が前記ロック位置にあるときに、前記嵌合部と弾性的に嵌合する第1被嵌合部と、を有し、前記メッキ用治具は、前記陽極板及び前記陰極板をメッキするメッキ液が配置される凹部と、前記第1ロック部が前記ロック位置にあるときに、前記嵌合部と弾性的に嵌合する第2被嵌合部と、を有するメッキ液保持具を有し、前記測定用治具と前記メッキ用治具は、前記枠体に対して選択的に交換して装着される、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】電気泳動移動度測定装置に配置されたゼータ電位測定用治具セットを示す斜視図である。
図2】枠体に固定された測定用治具の斜視図である。
図3】枠体に固定された測定用治具の三面図である。
図4】枠体に固定された測定用治具の断面図である。
図5】枠体の三面図である。
図6】測定用治具の三面図である。
図7】第2ロック部の開閉状態を示す図である。
図8】第1ロック部の開閉状態を示す図である。
図9】枠体に固定されたメッキ用治具の斜視図である。
図10】枠体に固定されたメッキ用治具の三面図である。
図11】枠体に固定されたメッキ用治具の断面図である。
図12】メッキ用治具の三面図である。
図13】メッキ用治具に含まれるメッキ液保持具の三面図である。
図14】メッキ用治具に含まれる蓋の三面図である。
図15】メッキ処理の方法及びゼータ電位の測定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示における各実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
ゼータ電位測定用治具セット100は、電気泳動移動度測定に用いられる。具体的には、ゼータ電位測定用治具セット100は、図1に示す電気泳動移動度測定装置102に配置され、ゼータ電位の測定が行われる。試料が配置されるセル304(後述)は、ゼータ電位測定用治具セット100の内部に配置されており、電気泳動移動度測定装置102は、セル304に配置された試料に対して、後述する陽極板210及び陰極板212を介して電界を印加する。第1保持壁204及び第2保持壁206には開口220が設けられており、電気泳動移動度測定装置102は、一方の開口220から測定用の光を照射する。そして、電気泳動移動度測定装置102は、他方の開口220から出射される散乱光に基づいてゼータ電位を測定する。
【0014】
以下、図2乃至図8を参照しながら、第1実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100の各構成について説明する。図2は、枠体200に測定用治具300が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の斜視図である。図3は、枠体200に測定用治具300が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の三面図である。図4は、枠体200に測定用治具300が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の断面図である。図5は、ゼータ電位測定用治具セット100に含まれる各構成のうち、枠体200のみを記載した三面図である。図6は、ゼータ電位測定用治具セット100に含まれる各構成のうち、測定用治具300のみを記載した三面図である。図7は、第2ロック部312のロック状態と非ロック状態を示す図である。図8は、第1ロック部208のロック状態と非ロック状態を示す図である。
【0015】
図2に示すように、第1実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100は、枠体200と、該枠体200に固定される測定用治具300と、を有する。また、枠体200は、底壁202と、第1保持壁204及び第2保持壁206と、第1ロック部208と、を有する。
【0016】
底壁202は、第1保持壁204及び第2保持壁206の各下端を連結し陽極板210及び陰極板212を有する。具体的には、第1保持壁204及び第2保持壁206の下端に位置し、第1保持壁204及び第2保持壁206の位置関係を固定する。底壁202は、陽極板210及び陰極板212が配置される。陽極板210及び陰極板212の一方は、x軸方向に向かって延びる導電板を介して、電気泳動移動度測定装置102から所定の電圧が印加される端子と電気的に接続される。他の一方は、-x軸方向に向かって延びる導電板を介して、電気泳動移動度測定装置102から所定の電圧が印加される端子と電気的に接続される。陽極板210には、電気泳動移動度測定装置102から陰極板212に印加されるよりも高い電圧が印加される。
【0017】
第1保持壁204及び第2保持壁206は、試料に照射される照射光及び該照射光が試料により散乱された散乱光が通過する開口220をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される。具体的には、図2から図5に示すように、第1保持壁204及び第2保持壁206は、それぞれxz平面に広い面を有しy軸方向に薄い形状である板状部と、上部(z軸方向)に把手部214とを有する。第1保持壁204及び第2保持壁206は、板状部のxz平面が互いに対向して配置される。板状部は、y軸方向に貫通する開口220をそれぞれ対応する位置に有する。当該開口220の一方は試料に照射される光が通り、開口220の他方は試料に散乱された光が通る。なお、板状部と把手部214は一体的に形成されていてもよい。
【0018】
また、第1保持壁204及び第2保持壁206は、それぞれ第2ロック部312の端部が係合する係合穴216を有する。具体的には、第1保持壁204及び第2保持壁206の各把手部214は、第2ロック部312と対応する位置に、係合穴216を有する。係合穴216は、第1保持壁204及び第2保持壁206の向かい合う面に設けられ、第2ロック部312の長軸方向の先端部が嵌合する。当該係合穴216は、第2ロック部312の長軸方向が第1保持壁204と第2保持壁206とが向かい合う方向に位置した時に、第2ロック部312の上面と接する領域を有する。
【0019】
なお、図2乃至図8では、枠体200は、底壁202と、第1保持壁204と、第2保持壁206と、が一体的に形成される場合について記載している。しかしながら、底壁202と、第1保持壁204と、第2保持壁206と、がそれぞれ個別に形成され、ネジなどを用いて各部が固定されてもよい。
【0020】
第1ロック部208は、アーム状である。例えば、第1ロック部208は、一方の端部が、ロック位置において中段ブロック306の上面に設けられた第1被嵌合部340と弾性的に嵌合する嵌合部218を有し、他方の端部が、ロック位置と非ロック位置で回動可能に第1保持壁204及び第2保持壁206の端部に軸支された、アームである。
【0021】
具体的には、図3及び図5に示すように、第1ロック部208は、第1保持壁204及び第2保持壁206のx軸方向の両端にそれぞれ1個ずつ設けられる。第1ロック部208は、xz平面内で見て、第1保持壁204に軸支された細長い形状を有する部分と、第2保持壁206に軸支された細長い形状を有する部分と、を有する。また、yz平面の側面図で示すように、第1ロック部208は、該2つの細長い形状を有する部分を連結する部分を有する。第1ロック部208は、細長い形状を有する部分(xz平面で示される部分)の一方の端部に、ロック位置において中段ブロック306の上面に設けられた第1被嵌合部340(後述)と嵌合する嵌合部218を有する。当該嵌合部218は、例えば円柱状の形状であるが他の形状でもよい。
【0022】
嵌合部218は、例えば樹脂で形成され、中段ブロック306の上面に設けられた第1被嵌合部340と弾性的に嵌合する。第1ロック部208は、細長い形状を有する部分(xz平面で示される部分)の他方の端部が、第1保持壁204及び第2保持壁206の端部に軸支されている。これにより、第1ロック部208は、y軸を中心軸として回動可能である。図8(a)に示す状態がロック状態であり、図8(b)に示す状態が非ロック状態である。第1ロック部208がロック状態であるときに、第1ロック部208は、中段ブロック306を底壁202側に弾性的に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、を一体化させる。
【0023】
なお、各図では、第1ロック部208が第1保持壁204及び第2保持壁206に軸支される場合について記載しているが、第1ロック部208は底壁202に軸支されてもよい。
【0024】
測定用治具300は、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、第2ロック部312と、を有する。
【0025】
下段ブロック302は、底部に陽極板210及び陰極板212が位置する陽極穴部314及び陰極穴部316を有し、底壁202の上に配置される。具体的には、例えば、下段ブロック302は、内側にセル304が配置される空間を有し、当該空間の下側に陽極穴部314及び陰極穴部316を有する。陽極穴部314及び陰極穴部316は、底壁202の陽極板210及び陰極板212と対応する位置に設けられる。陽極穴部314及び陰極穴部316は、供給路318を介して液体試料が配置される空間である。
【0026】
下段ブロック302は、底壁202と接する面に、陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲う第1シール320と、セル304と接する面に、陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲う第2シール322と、を有する。具体的には、第1シール320は、下段ブロック302の底壁202と接する面に設けられた陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲うOリングである。第1ロック部208と第2ロックの少なくとも一方が下段ブロック302を底壁202側に押圧した状態において、第1シール320は、下段ブロック302と底壁202の間に液体試料が漏洩することを防止する。第2シール322は、下段ブロック302のセル304と接する面に設けられた陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲うOリングである。第1ロック部208と第2ロックの少なくとも一方がセル304を底壁202側に押圧した状態において、第1シール320は、セル304と下段ブロック302の間に液体試料が漏洩することを防止する。
【0027】
下段ブロック302は、液体試料供給用つまみ324と、陽極穴部314及び陰極穴部316に液体試料を供給する供給路318を有する。具体的には、図4に示すように、下段ブロック302は、陽極穴部314及び陰極穴部316の側面と液体試料供給用つまみ324が配置される箇所とをつなぐ空間(供給路318)を有する。液体試料供給用つまみ324は他の部分から分離できる構成であり、当該供給路318を介して陽極穴部314及び陰極穴部316に液体試料を供給できる。これにより、ゼータ電位測定用治具セット100から個体試料を取り出さなくても容易に液体試料の除去及び供給を行うことができる。
【0028】
セル304は、試料が配置される凹部と、該凹部の底面に陽極穴部314及び陰極穴部316のそれぞれと連通するセル連通孔326と、を有し、照射光及び散乱光を透過する材料で形成され、下段ブロック302の上に配置される。具体的には、例えば、セル304は、透明なガラスで形成される。また、図4に示すように、セル304は、上面に試料が配置される平坦な凹部を有する。また、セル304は、該凹部の底面に陽極穴部314まで貫通するセル連通孔326と、陰極穴部316まで貫通するセル連通孔326を有する。測定時には、凹部及びセル連通孔326の空間は個体試料及び液体試料で満たされる。凹部は、第1保持壁204及び第2保持壁206の開口220の側方に位置し、測定空間として機能する。これにより、測定空間に配置された試料に光が照射される。
【0029】
中段ブロック306は、平面視で凹部を囲う枠状の形状を有し、セル304の上側に配置される。具体的には、例えば、中段ブロック306は、セル304の上側に配置される枠状の部材である。中段ブロック306は、セル304の上側に配置された状態で、上面から見てセル304に設けられた凹部全てが見える位置に孔が設けられている。当該孔は、セル上面押さえ部332の側面を囲う形状の孔である。また、当該孔はセル304の外縁よりは小さいため、中段ブロック306はセル304と重畳する領域を有する。
【0030】
中段ブロック306は、第1ロック部208の端部がロック位置にあるときに、嵌合部218と弾性的に嵌合する第1被嵌合部340を有する。具体的には、例えば、中段ブロック306は、x軸方向の両端の近傍の上面に、円柱状の嵌合部218に沿った形状のへこみ(第1被嵌合部340)を有する。第1ロック部208の端部がロック位置にあるときに、円柱状の嵌合部218が第1被嵌合部340に弾性的に嵌合する。
【0031】
なお、第1被嵌合部340と嵌合部218の少なくとも一方が弾性を有していれば、他方は剛性部材で形成されてもよい。例えば、嵌合部218がゴム等の弾性を有する樹脂で形成される場合、第1被嵌合部340は金属などの剛性部材で形成されてもよい。逆に、第1被嵌合部340がゴム等の弾性を有する樹脂で形成される場合、嵌合部218は金属などの剛性部材で形成されてもよい。また、嵌合部218と第1被嵌合部340の双方がゴム等の弾性を有する樹脂で形成されてもよい。
【0032】
中段ブロック306は、セル304と接する面に、凹部を囲う第3シール328と、上部部材と接する面に、第4シール330と、を有する。具体的には、例えば、第3シール328は、中段ブロック306のセル304と接する面の、中段ブロック306とセル304が重畳する領域に設けられたOリングである。すなわち、第3シール328は、セル304の凹部の周囲を囲うOリングである。第1ロック部208と第2ロックの少なくとも一方がロック状態であるときに、第3シール328は、中段ブロック306とセル304の間に試料が漏洩することを防止する。第4シール330は、中段ブロック306の上段ブロック334と接する面に設けられたOリングである。第4シール330は、枠状の中段ブロック306の孔を囲う形状であって、上部部材に含まれる上段ブロック334と接する領域に設けられる。第4シール330は、第2ロック部312が上段ブロック334を底壁202側に押圧した状態で、上段ブロック334と中段ブロック306の間を密閉する。すなわち、第2ロック部312が上段ブロック334を底壁202側に押圧していない状態では、第1ロック部208がロック状態であったとしても、第4シール330は、上段ブロック334と中段ブロック306の間を密閉しない。
【0033】
上部部材は、中段ブロック306の上に配置されるとともに凹部の上面を塞ぐ部材である。上部部材は、セル上面押さえ部332と、上段ブロック334と、押圧部と、を有する。
【0034】
セル上面押さえ部332は、セル304の上に配置されてセル304の上面を底壁202側に押圧する。具体的には、例えば、図4に示すように、セル上面押さえ部332は、枠状の中段ブロック306の孔の内壁に沿った形状であって、セル304の上面に接して配置される。セル上面押さえ部332のセル304と接する面は平坦に形成される。セル上面押さえ部332は、押圧部によってセル304側に押圧される。
【0035】
上段ブロック334は、中段ブロック306の上方に配置され、中段ブロック306及び該中段ブロック306に設けられた第4シール330を底壁202側に押圧する。具体的には、上段ブロック334は、セル上面押さえ部332及び中段ブロック306の上側に配置される。上段ブロック334の上側は、第2ロック部312と接する。後述するように第2ロック部312が回転することにより、上段ブロック334は、底壁202側に押圧される。これにより、上段ブロック334は、中段ブロック306及び該中段ブロック306に設けられた第4シール330を底壁202側に押圧する。
【0036】
また、上段ブロック334は、セル304の上方に上下方向に貫通する貫通孔を有する。当該貫通孔には、押圧部が配置される。当該貫通孔の側壁はねじ切りされていないため、第2ロック部312がセル上面押さえ部332にかける押圧とは別に、押圧部によって底壁202側に押圧することができる。
【0037】
押圧部は、貫通孔に配置され、セル上面押さえ部332をセル304に押圧する。具体的には、例えば、押圧部は、貫通孔に配置される円柱状の軸部336と、軸部336の上方(z軸方向)に設けられたつまみ部338と、軸部336の下方(-z軸方向)に設けられたブロック状の部材と、を有する。当該つまみ部338と軸部336は固定されており、つまみ部338を底壁202と平行な面内(xy平面内)に回転させることで、円柱状の軸部336は該円柱の軸を回転軸として回転する。ブロック状の部材は、上側に軸部336と嵌合する穴を有し、当該穴の壁面はねじ切りされている。軸部336が回転することにより、ブロック状の部材は、該穴に嵌合された軸部336によって下側(セル304側)に押圧される。
【0038】
第2ロック部312は、上部部材を底壁202側に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、を一体化させる。具体的には、例えば、第2ロック部312は、長軸方向と短軸方向を有し、かつ、中心から端部にかけて厚みが変化する形状を有する。第2ロック部312は、長軸方向と短軸方向を有する略楕円形状であり、上側の表面に先端に向かってz軸方向の高さが低くなるように傾斜が設けられる。第2ロック部312は、上段ブロック334の上に配置される。
【0039】
第2ロック部312は、底壁202の面内方向に回転可能であり、端部が係合穴216に係合することで上部部材を底壁202側に押圧する。具体的には、例えば、第2ロック部312は、xy平面内で回転可能であり、図7(a)に示すように、第2ロック部312の長軸が反時計回りに60度回転した状態では、第2ロック部312は、把手部214に設けられた係合穴216に嵌合しない。第2ロック部312が第1保持壁204及び第2保持壁206の係合穴216と係合していない場合、第2ロック部312は、非ロック状態である。
【0040】
一方、図7(b)に示すように、第2ロック部312の長軸がy軸と平行な状態では、第2ロック部312は、把手部214に設けられた係合穴216に嵌合する。第2ロック部312が第1保持壁204及び第2保持壁206の係合穴216と係合している場合、第2ロック部312は、ロック状態である。第2ロック部312が係合穴216に嵌合するときに、第2ロック部312の上側の表面に設けられた傾斜によって、第2ロック部312の下側に配置された上段ブロック334は、底壁202側に押圧される。これにより、第2ロック部312は、上部部材を底壁202側に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、を一体化させる。なお、把手部214に係合穴216ではなく庇形状が設けられる構成とする場合、庇の下側の面が第2ロック部312の上面と接する。
【0041】
以上のように、第1実施形態にかかるゼータ電位測定用治具セット100によれば、第1ロック部208は、中段ブロック306を底壁202側に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、を一体化させる。また、第2ロック部312は、上部部材を底壁202側に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、を一体化させる。第1ロック部208をロック状態としたままで第2ロック部312を緩めることで、上部部材を取り外すことができる。これにより、底壁202、下段ブロック302、セル304、中段ブロック306の各部材の間に液体試料を漏れ出させずに、かつ、液体試料を除去することなく容易にセル304の凹部に配置された個体試料を交換することができる。
【0042】
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100について説明する。第2実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100は、電気泳動移動度測定に用いられ、枠体200と、該枠体200に固定される測定用治具300と、枠体200に固定されるメッキ用治具400と、を有する。
【0043】
測定用治具300とメッキ用治具400は、枠体200に対して選択的に交換して装着される。具体的には、枠体200の陽極板210及び陰極板212にメッキ処理を行う場合、メッキ用治具400が枠体200に装着され、メッキ用治具400は、第1ロック部208によって枠体200に固定される。そして、枠体200に固定されたメッキ用治具400は、図1に示す電気泳動移動度測定装置102に配置され、メッキ処理が行われる。一方、電気泳動移動度測定を行う場合、測定用治具300が枠体200に装着され、測定用治具300は、第1ロック部208によって枠体200に固定される。枠体200に固定された測定用治具300が枠体200は、図1に示す電気泳動移動度測定装置102に配置され、ゼータ電位の測定が行われる。メッキ処理の方法及びゼータ電位の測定方法については後述する。
【0044】
以下、図9乃至図14を参照しながら、第2実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100の各構成について説明する。図9は、枠体200にメッキ用治具400が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の斜視図である。図10は、枠体200にメッキ用治具400が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の三面図である。図11は、枠体200にメッキ用治具400が固定されたゼータ電位測定用治具セット100の断面図である。図12は、ゼータ電位測定用治具セット100に含まれる各構成のうち、メッキ用治具400のみを記載した三面図である。図13は、メッキ用治具400に含まれる各構成のうち、メッキ液保持具402のみを記載した三面図である。図14は、メッキ用治具400に含まれる各構成のうち、蓋404のみを記載した三面図である。なお図14のみ、上面図に代えて下面図を記載している。
【0045】
枠体200は、第1実施形態における枠体200と同様である。すなわち、図5に示すように、枠体200は、第1保持壁204及び第2保持壁206と、底壁202と、第1ロック部208と、を有する。第1保持壁204及び第2保持壁206は、試料に照射される照射光及び該照射光が試料により散乱された散乱光が通過する開口220をそれぞれ対応する位置に有し、互いに対向して配置される。また、第1保持壁204及び第2保持壁206は、それぞれ第2ロック部312の端部が係合する係合穴216を有する。底壁202は、第1保持壁204及び第2保持壁206の各下端を連結し陽極板210及び陰極板212を有する。第1ロック部208は、アーム状である。第1ロック部208は、一方の端部が嵌合部218を有し、他方の端部がロック位置と非ロック位置で回動可能に第1保持壁204及び第2保持壁206の端部に軸支される。第1ロック部208は、他方の端部がロック位置にあるときに中段ブロック306を底壁202側に弾性的に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、を一体化させる。
【0046】
測定用治具300は、枠体200に固定され、ゼータ電位測定に用いられる。ここでは測定用治具300が、第1実施形態における測定用治具300と同様である場合について説明するが、異なっていてもよい。第1実施形態と同様である場合、測定用治具300は、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、第2ロック部312と、を有する。
【0047】
下段ブロック302は、底部に陽極板210及び陰極板212が位置する陽極穴部314及び陰極穴部316を有し、底壁202の上に配置される。下段ブロック302は、底壁202と接する面に、陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲う第1シール320と、セル304と接する面に、陽極穴部314及び陰極穴部316の周囲を囲う第2シール322と、を有する。下段ブロック302は、陽極穴部314及び陰極穴部316に試料を供給する供給路318を有する。
【0048】
セル304は、照射光が照射される位置に試料が配置される凹部を有する。セル304は、試料が配置される凹部と、該凹部の底面に陽極穴部314及び陰極穴部316のそれぞれと連通するセル連通孔326と、を有し、照射光及び散乱光を透過する材料で形成され、下段ブロック302の上に配置される。
【0049】
中段ブロック306は、平面視で凹部を囲う枠状の形状を有し、セル304の上側に配置される。中段ブロック306は、セル304と接する面に、凹部を囲う第3シール328と、上部部材と接する面に、中段ブロック306の外周に沿った第4シール330と、を有する。中段ブロック306は、第1ロック部208の端部がロック位置にあるときに、嵌合部218と弾性的に嵌合する第1被嵌合部340を有する。第1被嵌合部340は、第1ロック部208がロック位置にあるときに、嵌合部218と弾性的に嵌合する。
【0050】
上部部材は、中段ブロック306の上に配置されるとともに凹部の上面を塞ぎ、セル上面押さえ部332と、上段ブロック334と、押圧部と、を有する。セル上面押さえ部332は、セル304の上に配置されてセル304の上面を底壁202側に押圧する。押圧部は、貫通孔に配置され、セル上面押さえ部332をセル304に押圧する。上段ブロック334は、中段ブロック306の上方に配置され、中段ブロック306及び該中段ブロック306に設けられた第4シール330を底壁202側に押圧する。上段ブロック334は、セル304の上方に上下方向に貫通する貫通孔を有する。
【0051】
第2ロック部312は、上部部材を底壁202側に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、上部部材と、を一体化させる。第2ロック部312は、長軸方向と短軸方向を有し、かつ、中心から端部にかけて厚みが変化する形状を有する。第2ロック部312は、底壁202の面内方向に回転可能であり、端部が係合穴216に係合することで上部部材を底壁202側に押圧する。
【0052】
なお、第2実施形態では、第1ロック部208は、測定用治具300を枠体200に固定しさえすればよく、中段ブロック306とセル304と下段ブロック302を一体化させる機能は有しなくてもよい。従って、測定用治具300は、少なくとも、試料が配置されるセル304と、第1ロック部208の端部がロック位置にあるときに、嵌合部218と弾性的に嵌合する第1被嵌合部340と、を有していれば、第1実施形態と異なっていてもよい。例えば、下段ブロック302と中段ブロック306が一体的に構成されていてもよい。
【0053】
メッキ用治具400は、図12乃至図14に示すように、メッキ液保持具402と、蓋404と、を有する。メッキ液保持具402は、凹部と、メッキ液連通孔406と、第2被嵌合部408と、を有する。
【0054】
具体的には、メッキ液保持具402は、第1保持壁204と第2保持壁206の間に、底壁202の上に配置される部材である。メッキ液保持具402は枠体200に配置されたときに第1ロック部208で固定できるように、x軸方向の長さが底壁202と略同一であり、y軸方向の長さが第1保持壁204と第2保持壁206の間の距離と略同一の平面形状を有する。
【0055】
また、メッキ液保持具402は、第1ロック部208がロック位置にあるときに、嵌合部218と弾性的に嵌合する第2被嵌合部408を有する。具体的には、例えば、第2被嵌合部408は、メッキ液保持具402の上面のx軸方向の両端付近に2か所設けられる。第2被嵌合部408の形状は、中段ブロック306に設けられた第1被嵌合部340と同様の形状であって、円柱状の嵌合部218に沿った形状のへこみである。また、メッキ液保持具402が枠体200に固定された状態における第2被嵌合部408の高さと、測定用治具300が枠体200に固定された状態における第1被嵌合部340の高さと、が同一となる位置に第2被嵌合部408は設けられる。これにより、測定用治具300を固定する枠体200にメッキ液保持具402を装着した場合にも、第1ロック部208の端部がロック位置にあるときに、円柱状の嵌合部218が第2被嵌合部408に弾性的に嵌合する。すなわち、測定時とメッキ処理時の双方において、枠体200を共用することができる。
【0056】
また、メッキ液保持具402は、メッキ液を保持する空間が設けられる。具体的には、例えば、メッキ液保持具402は、図13に示すように、上面に陽極板210及び陰極板212をメッキするメッキ液が配置される凹部を有する。さらに、メッキ液保持具402は、メッキ液が配置される凹部の底面に陽極穴部314及び陰極穴部316のそれぞれと連通するメッキ液連通孔406を有する。凹部にメッキ液が注入されたときに、メッキ液連通孔406を介して、メッキ液が陽極板210及び陰極板212に接触する。
【0057】
蓋404は、メッキ液が配置される凹部に嵌合し、該凹部の上面を覆う。具体的には、例えば、図14に示すように、蓋404は、底面にメッキ液保持具402の凹部と嵌合する凸部と、上面にブロック状の把持部を有する。該凸部は、蓋404がメッキ液保持具402に嵌合した状態でメッキ液が外部に漏れないように、周囲を囲う第5シール410を有する。第5シール410は、例えばOリングである。なお、蓋404は、メッキ液が漏れださないように封入できる形状であれば任意の形状であってよく、図示した形状に限られない。
【0058】
また、蓋404は、メッキ液が配置される凹部と上面を連通する圧抜き孔412を有する。具体的には、蓋404は、底面の第5シール410で囲われる領域(凸部の頂部)の2か所に、底面と上面を連通する圧抜き孔412を有する。蓋404をメッキ液保持具402に嵌合させることで、メッキ処理に関わる作業を行う際に、危険なメッキ液が飛散することを防止できる。また、メッキ処理時にメッキ液から気泡が生じる場合がある。このような場合に、圧抜き孔412によって、気泡を外に逃がすことにより、メッキ液を保持する空間の気圧が増加し、蓋404が飛ばされることを防止できる。
【0059】
続いて、第2実施形態に係るゼータ電位測定用治具セット100を用いたメッキ処理の方法及びゼータ電位の測定方法を、図15に示すフローチャートを参照しながら説明する。以下では、メッキ処理として白金黒メッキ処理を行う場合について説明する。また、陽極板210及び陰極板212に白金黒メッキが施されている場合、陽極板210及び陰極板212が大気に触れた状態で陽極板210及び陰極板212を保管することは好ましくないため、陽極板210及び陰極板212は、底壁202と個別に保管されているものとする。
【0060】
まず、底壁202に陽極板210及び陰極板212を配置する(S1502)。具体的には、底壁202の電圧が印加される場所に陽極板210及び陰極板212を配置する。次に、メッキ処理を行う場合には、S1506へ進み、メッキ処理を行わない場合はS1526へ進む(S1504)。なお、白金黒メッキがなされた陽極板210及び陰極板212は、1度のメッキ処理によって10回から20回程度の使用が可能である。測定を重ねた場合、白金黒メッキの剥がれや劣化が生じるため、所定の回数の測定を行うたびに、再度メッキ処理を行う必要が生じる。ここでは、メッキ処理を行う必要が生じたものとして説明する。
【0061】
次に、メッキ液保持具402を枠体200に配置し、第1ロック部208によってメッキ液保持具402を枠体200に固定する(S1606)。そして、メッキ液保持具402に設けられた凹部に白金黒メッキ用のメッキ液を注入し、蓋404を配置する(S1508)。例えば、六塩化白金酸と酢酸鉛の水溶液をメッキ液保持具402に設けられた凹部に注入し蓋404を配置する。
【0062】
次に、S1508でメッキ液が封入されたメッキ用治具400と枠体200からなるゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102に配置する(S1510)。そして、電気泳動移動度測定装置102を用いて、所定の時間、陽極板210及び陰極板212に電圧を印加することにより、白金黒メッキ処理を行う(S1512)。白金黒メッキ処理が終了すると、ゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102から取り出す(S1514)。
【0063】
次に、取り出したメッキ用治具400から蓋404を取り外し、メッキ液を除去する(S1516)。そして、枠体200にメッキ用保持部が固定された状態のまま、メッキ用保持部の凹部に洗浄液を注入し、蓋404を配置する(S1518)。洗浄液は、例えば硫酸である。
【0064】
次に、S1518で洗浄液が封入されたメッキ用治具400と枠体200からなるゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102に配置する(S1520)。そして、電気泳動移動度測定装置102をもちいて、所定の時間、陽極板210及び陰極板212に電圧を印加することにより、陽極板210及び陰極板212の洗浄を行う。洗浄処理が終了すると、ゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102から取り出す(S1522)。さらに、メッキ液保持具402から洗浄液を除去し、枠体200からメッキ液保持具402を取り外す(S1524)。S1506乃至S1524のステップにより、メッキ処理に係るステップは完了する。
【0065】
S1504においてメッキ処理を行う必要がない場合、及び、S1524でメッキ処理が完了した場合、測定を行うために下段ブロック302を枠体200に配置する(S1526)。続いて、枠体200に対して、下段ブロック302の上にセル304を配置する(S1528)。さらに、中段ブロック306を枠体200に配置する(S1530)。そして、第1ロック部208をロック状態にする(S1532)。ここで、メッキ液保持具402が枠体200に固定された状態における第2被嵌合部408の位置と、測定用治具300が枠体200に固定された状態における第1被嵌合部340の位置と、が同一となるように第1被嵌合部340及び第2被嵌合部408は設けられる。従って、共通の枠体200に対して、メッキ用治具400だけでなく測定用治具300を固定することができる。第1ロック部208をロック状態とすることにより、第1ロック部208は、中段ブロック306を底壁202側に弾性的に押圧し、枠体200と、下段ブロック302と、セル304と、中段ブロック306と、を一体化させる。
【0066】
次に、試料を配置する(S1534)。S1532の状態では、セル304の上面は上部部材によって塞がれていないため、セル304の上面に設けられた凹部に個体試料を配置することができる。試料を配置した後、上部部材と第2ロック部312を配置する(S1536)。さらに、第2ロック部312を回転させることにより、第2ロック部312をロック状態とする。第2ロック部312をロック状態とすることにより、第2ロック部312は、上部部材を底壁202側に押圧する(S1538)。そして、液体試料供給用つまみ324を取り外し、供給路318を介して陽極穴部314及び陰極穴部316のそれぞれに液体試料を供給する(S1540)。
【0067】
次に、S1540までのステップにより試料が配置された測定用治具300と枠体200からなるゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102に配置する(S1542)。そして、電気泳動移動度測定装置102を用いて、所定の時間、陽極板210及び陰極板212に電圧を印加することにより、測定を行う(S1544)。測定が終了すると、ゼータ電位測定用治具セット100を電気泳動移動度測定装置102から取り出す。
【0068】
以上のステップにより、メッキ処理と測定が完了する。上記のように、共通の枠体200に対して、メッキ用治具400だけでなく測定用治具300を固定することができる。従って、メッキ処理の後に測定を行うときに、電極の取り外しや配置を行う必要がないため作業が簡便である。また、電極の取り外しや配置を行う必要がないため、メッキ処理後の電極がピンセットなどと接触し、はがれてしまうリスクを低減することができる。
【符号の説明】
【0069】
100 ゼータ電位測定用治具セット、102 電気泳動移動度測定装置、200 枠体、202 底壁、204 第1保持壁、206 第2保持壁、208 第1ロック部、210 陽極板、212 陰極板、214 把手部、216 係合穴、218 嵌合部、220 開口、300 測定用治具、302 下段ブロック、304 セル、306 中段ブロック、312 第2ロック部、314 陽極穴部、316 陰極穴部、318 供給路、320 第1シール、322 第2シール、324 液体試料供給用つまみ、326 セル連通孔、328 第3シール、330 第4シール、332 セル上面押さえ部、334 上段ブロック、336 軸部、338 つまみ部、340 第1被嵌合部、400 メッキ用治具、402 メッキ液保持具、404 蓋、406 メッキ液連通孔、408 第2被嵌合部、410 第5シール、412 圧抜き孔。

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