(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156918
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】包装容器およびこれに使用される包装用フィルム
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20231018BHJP
B65D 77/20 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D77/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066578
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】594146180
【氏名又は名称】中本パックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135781
【弁理士】
【氏名又は名称】西原 広徳
(74)【代理人】
【識別番号】100217227
【弁理士】
【氏名又は名称】野呂 亮仁
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 月花
(72)【発明者】
【氏名】松村 翔
(72)【発明者】
【氏名】本多 衛
【テーマコード(参考)】
3E013
3E067
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BB11
3E013BC04
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF13
3E013BF32
3E067AB01
3E067AC01
3E067BA07A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067BC02A
3E067CA10
3E067CA24
3E067FA01
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】包装容器内が昇温した際に、確実に蒸通できる包装用フィルムおよびそれを備える包装容器を提供する。
【解決手段】内容物を収容する容器2と、容器2の片面の一周連続する接合領域231にて接合されて容器2との間を前記内容物が収容された状態で密閉する蓋材フィルム3とを備え、蓋材フィルム3は、容器2と接合されるシーラント層32と、シーラント層32の容器2と対向する表面の一部に積層されている弱シール層34とを備え、弱シール層34は、少なくとも一部が接合領域231の一部を構成し、かつ、シーラント層32の容器2に対する接合力よりも容器2に対する接合力が弱い弱接合力組成物で形成されている包装容器1とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を収容する収容体と、前記収容体の片面の一周連続する接合領域にて接合されて前記収容体との間を前記内容物が収容された状態で密閉する包装用フィルムとを備え、
前記包装用フィルムは、
前記収容体と接合されるシーラント層と、
前記シーラント層の前記収容体と対向する表面の一部に積層されている弱シール層とを備え、
前記弱シール層は、少なくとも一部が前記接合領域の一部を構成し、かつ、前記シーラント層の前記収容体に対する接合力よりも前記収容体に対する接合力が弱い弱接合力組成物で形成されている
包装容器。
【請求項2】
前記弱接合力組成物は、前記収容体の内側の前記内容物から発生する前記水分を吸収する親水性組成物と、前記収容体の内側の前記内容物から発生する前記油分を吸収する親油性組成物の内、少なくとも一方を含有する
請求項1記載の包装容器。
【請求項3】
前記親水性組成物および前記親油性組成物は、前記弱シール層中に粒子として存在している
請求項2記載の包装容器。
【請求項4】
前記収容体は、前記内容物を収容する凹状の収容部と当該収容部の開口部に沿って形成されたフランジ部を有し、
前記フランジ部は、1以上の湾曲部を有し、
前記弱シール層は、前記湾曲部と接合される位置の前記シーラント層の表面の少なくとも一部に設けられている
請求項1、2または3記載の包装容器。
【請求項5】
シーラント層と、
前記シーラント層の表面の一部に積層されている弱シール層とを備え、
前記弱シール層は、接合対象に対する接合力が前記シーラント層よりも弱い弱接合力組成物で形成されている
包装用フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、食品を包装する包装容器およびこれに使用される包装用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済みまたは半調理状態の食品を常温、低温、あるいは冷凍保存可能に包装袋等の包装容器に収容し、開封せずに電子レンジで加熱する再調理方法が知られている。このような再調理方法を行える食品の包装形態においては、包装容器を開封せずに電子レンジで加熱すると、包装容器内の水分が水蒸気になり、体積が増加して包装容器が膨張する。したがって、水蒸気が逃げられる仕組み(蒸通機構)がないと容器破裂等の恐れがある。
【0003】
このような蒸通機構として、内層に到達しない程度の深さを有する脆弱加工部を形成した積層フィルムを容器の蓋材とし、容器内部で発生した水蒸気を圧力によって破断された脆弱加工部から排出する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
しかし、上述のような脆弱加工部を有する積層フィルムでは、加熱時に脆弱加工部が破断されないことがあり、その場合は電子レンジ内で包装容器が破裂する恐れがあるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、包装容器内が昇温した際に、確実に蒸通できる包装容器およびこれに使用される包装用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、内容物を収容する収容体と、前記収容体の片面の一周連続する接合領域にて接合されて前記収容体との間を前記内容物が収容された状態で密閉する包装用フィルムとを備え、前記包装用フィルムは、前記収容体と接合されるシーラント層と、前記シーラント層の前記収容体と対向する表面の一部に積層されている弱シール層とを備え、前記弱シール層は、少なくとも一部が前記接合領域の一部を構成し、かつ、前記シーラント層の前記収容体に対する接合力よりも前記収容体に対する接合力が弱い弱接合力組成物で形成されている包装容器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明により、包装容器内が昇温した際に、確実に蒸通できる包装容器およびこれに使用される包装用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】実施例1~15および比較例1の表を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面と共に説明する。
【0011】
図1は、包装容器1の斜視図であり、
図2は、包装容器1の平面図である。
包装容器1は、内容物を収容する収容体である容器2と、蓋材フィルム3(包装用フィルム)とで構成されている。
【0012】
容器2は、底部21と、底部21から外周全周にわたって立ち上がった壁部22と、壁部22の上端部から外方向に全周にわたって突出したフランジ部23を有する。底部21および壁部22によって上面が開放された収容部26が形成されており、壁部22の上端全周が収容部26の開口部25となる。また、フランジ部23は、開口部25の全周に一周連続して設けられ、少なくとも1つ以上の外周方向に湾曲した湾曲部24を有し、その内周にあたる開口部25も湾曲している。本実施例の容器2は、底部21の4つの角が、それぞれ同じ半径で湾曲した略正方形の形状に形成され、壁部22が、底部21の外周全周から均一に外方向へ広がりつつ上方へ湾曲した後傾斜方向へ直線状に立ち上がった形状に形成されている。壁部22の傾斜は、底部21から開口部25へ向かって末広がりになる形状である。本実施例の容器2のフランジ部23は、壁部22の上端から外方向へ全体が等幅分突出する形状に形成されている。また、本実施例のフランジ部23は、平面方向から見て、4つの角にそれぞれ同じ半径の湾曲部24が形成された略正方形の形状を有する。そして、フランジ部23の内周で形成された開口部25も、同様に4つの角が湾曲した略正方形を有する。
【0013】
容器2は、耐熱性の素材で形成されている。このような素材としては、例えば、耐熱性樹脂を使用することができる。本実施例の容器2は、耐熱性樹脂の一種であるポリプロピレンを使用している。
【0014】
蓋材フィルム3は、シート状に形成され、容器2のフランジ部23の外周と同一のサイズかそれより一回り大きいサイズに形成されている。蓋材フィルム3の形状は、容器2の形状に合わせて適宜の形状とすることができる。本実施例の蓋材フィルム3は、正方形の形状を有する。また、蓋材フィルム3は、多角形のような角を有する形状の場合、蓋材フィルム3が容器2に接合された後の抜き加工の工程時など、適宜の工程時に蓋材フィルム3の角が丸くなるように切り出されてもよい。
蓋材フィルム3は、外周付近の一部が全周にわたって容器2(接合対象)のフランジ部23に接合(接着)されている。この蓋材フィルム3の下面の一部とフランジ部23の上面全面との接合部分が接合領域231となる。この接合により、包装容器1は、容器2の内側に蓋材フィルム3によって閉じられて密閉された内部空間11が形成されている。
フランジ部23と蓋材フィルム3の接合方法は、蓋材フィルム3を溶かして接合する溶着(ヒートシール)とすることが好ましい。なお、接合方法はこれに限らず、超音波振動を蓋材フィルム3に与えて接着する超音波シールとするなど、適宜の接合方法を用いることができる。
内部空間11には、例えば、加熱によって水分および油分の少なくとも一方を放出する調理済みまたは半調理状態の食品(図示せず)が収容される。
【0015】
図3は、蓋材フィルム3の平面図であり、
図4は、包装容器1のA-A矢視断面図である。
蓋材フィルム3は、蓋材フィルム3の表面基材である基材層31と、基材層31に対して容器2側に積層されているシーラント層32と、基材層31とシーラント層32とを接合している接合層33と、シーラント層32の容器2と対向する表面に積層されている弱シール層34とを備える。
【0016】
基材層31は、薄膜のフィルム形状を有する。基材層31の厚みは、素材にもよるが、一般的に食品包装で使用されるフィルムにおいて基材となる層の厚みとすることができる。このような基材層の厚みとしては、例えば、下限として5μm以上とすることができ、8μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましい。また、上限として、50μm以下とすることができ、30μm以下とすることが好ましく、25μm以下とすることがより好ましい。また、基材層31は、可撓性の樹脂素材で形成されている。中でも、耐熱性を有する樹脂素材とすることが好ましい。このような樹脂素材としては、例えば、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリプロピレン、またはこれらを複合した樹脂を使用することができる。また、ポリエステル、ナイロン(ポリアミド)、ポリプロピレンといった樹脂素材は、二軸延伸フィルムとすることができる。また、基材層31は、少なくとも容器2の開口部25を覆い、フランジ部23の上面の全周を覆う形状および大きさを有する。
【0017】
シーラント層32は、薄膜のフィルム形状を有し、基材層31に対して接合層33を介して接合されている。シーラント層32の厚みは、素材にもよるが、一般的に食品包装で使用されるフィルムにおいてシーラント材となる層の厚みとすることができる。このようなシーラント層の厚みとしては、例えば、下限として10μm以上とすることができ、20μm以上とすることが好ましく、30μm以上とすることがより好ましい。また、上限として、100μm以下とすることができ、80μm以下とすることが好ましく、60μm以下とすることがより好ましい。また、シーラント層32は、可撓性の樹脂素材で形成されている。中でも、容器2を形成する樹脂素材に対して、ヒートシールによって熱溶着可能な樹脂素材とすることが好ましい。このような樹脂素材としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらを複合した樹脂素材を使用することができる。また、シーラント層32は、イージーピール性を有することが好ましい。これにより、シーラント層32を容器2から剥離して包装容器1を簡単に開封することができる。また、シーラント層32は、少なくとも容器2の開口部25をすべて覆い、フランジ部23の上面の全周を覆う形状および大きさを有する。シーラント層32の大きさは、基材層31と同じであることが好ましい。すなわち、シーラント層32と基材層31とがぴったりと重なって積層していることが好ましい。また、ポリプロピレンの二軸延伸フィルムをシーラント層32とし、基材層31および接合層33を有さない構成としてもよい。
【0018】
接合層33は、接着剤であり、基材層31とシーラント層32を互いに積層するように接合(接着)する。このような接合層33(接着剤)としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、およびこれらの複数を混合した接着剤とすることができる。なお、基材層31とシーラント層32は、熱を用いる押し出しラミネート等により接合することも可能であるが、熱を用いない接着剤(接合層33)による接着(ドライラミネートなど)とすることが好ましい。
【0019】
弱シール層34は、薄膜のフィルム形状を有し、シーラント層32において容器2と対向する表面の一部に積層されている。弱シール層34をシーラント層32に対して積層させる積層方法としては、例えば、液状とした弱シール層34の素材をシーラント層32に塗布(印刷)して乾燥させる方法とすることができる。このとき、塗布方法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、オスセット印刷、およびインクジェットといった種々の印刷方法の内1つを使用することができるが、グラビア印刷を使用することが好ましい。また、弱シール層34は、フランジ部23に接合(溶着)された際に、シーラント層32がフランジ部23に接合(溶着)された際と比較して接合力(接着力)が弱くなるような素材(弱接合力組成物)で形成されている。本発明の弱シール層34は、容器2が有する4つの角部(湾曲部24)の内1つに対応した蓋材フィルム3の角部に、その角が頂点の1つとなるような二等辺三角形の範囲となるように設けられている。すなわち、弱シール層34は、湾曲部24と接合される位置のシーラント層32の表面を含むように設けられている。弱シール層34の厚みは、弱接合力組成物の種類、および含有物によって適宜設定することができるが、下限として0.1μm以上とすることができ、0.5μm以上とすることが好ましく、1μm以上とすることがより好ましく、2μm以上とすることがさらに好ましく、3μm以上が好適である。また、弱シール層34の厚みの上限としては、20μm以下とすることができ、15μm以下とすることが好ましく、10μm以下とすることがより好ましく、8μm以下とすることがさらに好ましく、6μm以下とすることがより好ましく、5μm以下とすることがさらに好ましく、4μm以下とすることが好適である。
【0020】
弱シール層34を形成する弱接合力組成物は、基材となる弱接合力基材組成物と、親水性である親水性組成物および親油性である親油性組成物の内少なくとも一方とで構成されている。弱接合力組成物は、有機溶媒または水性溶媒に溶解または分散され、液状の塗料としてシーラント層32に塗布され、弱シール層34となる。なお、乾燥前の液状の弱接合力組成物中には、弱接合力基材組成物の一部が固体(粒子)として存在していてもよい。また、乾燥前の液状の弱接合力組成物中には、親水性組成物および親油性組成物が固体(粒子)として存在することが好ましい。また、液状の弱接合力組成物は、エマルジョンまたはディスパージョンの形態であることが好ましい。有機溶媒としては、弱接合力基材組成物の真溶剤(その組成物を溶解できる溶剤)を使用することができる。このような真溶剤としては、例えば、弱接合力基材組成物をエチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)とする場合はトルエンを使用することができる。また、真溶剤を希釈する稀釈剤を配合してもよい。希釈剤としては、例えば、メチルエチルケトンおよび酢酸エチルの内1以上を使用することができる。また、弱接合力組成物の軟化点は、シーラント層32の軟化点より低く、200℃以下とすることができ、150℃以下とすることが好ましく、140℃以下とすることがより好ましく、120℃以下とすることがさらに好ましく、100℃以下とすることが好適である。また、弱接合力組成物の軟化点は、常温より大きい値とすることができ、40℃以上とすることが好ましい。
【0021】
弱接合力基材組成物は、弱シール層34がフランジ部23に接合(溶着)された際に、シーラント層32がフランジ部23に接合(溶着)された際と比較して接合力(接着力)が弱くなるような素材であればよい。また、弱接合力基材組成物は、有機溶媒または水性溶媒に溶解して液状としてシーラント層32に塗布できる素材(塗布可能組成物)とすることが好ましい。このような素材としては、例えば、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、変性ポリオレフィン、酢酸ビニル、塩素化ポリプロピレン、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、ワックス類、グリセロール、各種界面活性剤、およびオイル類の内1以上を単体で、または混合して使用することができる。なお、変成ポリオレフィンとしては、例えば、無水マレイン酸またはカルボン酸等で変性したポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂を使用することができる。弱接合力基材組成物の軟化点は、シーラント層32の軟化点より低く、200℃以下とすることができ、150℃以下とすることが好ましく、140℃以下とすることがより好ましく、120℃以下とすることがさらに好ましく、100℃以下とすることが好適である。また、弱接合力基材組成物の軟化点は、常温より大きい値とすることができ、40℃以上とすることが好ましい。
【0022】
親水性組成物は、包装容器1の内部空間11に収容された内容物を加熱することによって発生する蒸気に含まれる水分のうち少なくとも一部の水分を吸収する組成物である。また、弱接合力基材組成物に混合されて弱シール層34を形成した際に、弱シール層34中で粒子として存在する組成物であることが好ましい。このような親水性組成物としては、例えば、デンプン、高分子吸収剤(アクリル系パウダー)を使用できる。中でもデンプンを使用することが好ましい。親水性組成物は、弱接合力基材組成物100重量%に対して、下限として0.5重量%以上含有することができ、1重量%以上含有することが好ましく、2重量%以上含有することが好適である。また、弱接合力基材組成物100重量%に対する親水性組成物の割合は、上限として20重量%以下含有することができ、15重量%以下含有することが好ましく、10重量%以下含有することがより好ましい。
【0023】
親油性組成物は、包装容器1の内部空間11に収容された内容物を加熱することによって発生する蒸気に含まれる油分の少なくとも一部を吸収する組成物である。また、弱接合力基材組成物に混合されて弱シール層34を形成した際に、弱シール層34中で粒子として存在する組成物であることが好ましい。このような親油性組成物としては、例えば、シリカ粒子に有機ケイ素化合物を反応させて親油性を付与したシリカ粒子(親油性シリカ粒子)を使用できる。親油性組成物は、弱接合力基材組成物100重量%に対して、下限として1重量%以上含有することができ、2重量%以上含有することが好ましく、5重量%以上含有することがより好ましく、8重量%以上含有することが好適である。また、弱接合力基材組成物100重量%に対する親油性組成物の割合は、上限として20重量%以下含有することができ、15以下重量%含有することが好ましく、12重量%以下含有することがより好ましく、10重量%以下含有することが好適である。
【0024】
蓋材フィルム3とフランジ部23とが接合されている領域である接合領域231は、大部分が強接合領域232であり、強接合領域232よりも接合力が弱い弱接合領域233が部分的に設けられている(
図2参照)。この部分的に設けられる弱接合領域233は、1以上の箇所とすることができ、例えば、接合領域231の1箇所、対向する2箇所、直交して対向する4箇所など、適宜の配置とすることができる。すなわち、蓋材フィルム3が容器2と接合(溶着)されているとき、接合されている領域である接合領域231は、強接合領域232と弱接合領域233とを有する。このとき、シーラント層32とフランジ部23とが直接接合(溶着)されている領域が強接合領域232となり、弱シール層34とフランジ部23とが直接接合(溶着)されている領域が弱接合領域233となる。
【0025】
強接合領域232は、接合領域231の少なくとも半分以上の面積を占めている。強接合領域232の接合力(接着力、シール強度)は、下限を2N/cm以上とすることができ、3N/cm以上とすることが好ましく、4N/cm以上とすることがより好ましく、5N/cm以上とすることが好適である。強接合領域232の接合力(接着力、シール強度)の上限は、20N/cm以下とすることができ、15N/cm以下のとすることが好ましく、10N/cm以下とすることがより好ましく、8N/cm以下のとすることが好適である。これは、人の手で蓋材フィルム3を容器2から剥がそうとした際に、強く力を入れて(一方の手で容器2を引っ張りながら他方の手で蓋材フィルム3を容器2と逆方向に引っ張って)剥がせる程度の接合力である。本実施例では、蓋材フィルム3が容器2と接合(溶着)されているとき、シーラント層32とフランジ部23とが接合(溶着)されている領域が強接合領域232となる。
【0026】
弱接合領域233は、接合領域231の全体の内、半分以下の面積を占めている。より詳細には、接合領域231の全体の内、弱接合領域233が占める面積の割合は、上限として30%以下とすることが好ましく、25%以下とすることがより好ましい。また、弱接合領域233の占める割合は、下限として1%以上とすることができ、1.5%以上とすることが好ましく、5%以上とすることがより好ましい。さらに、1つの弱接合領域233の直線状の長さを直線長さLとしたとき、直線長さLは、上限として接合領域231の外周の長さの35%以下とすることができ、25%以下とすることが好ましく、20%以下とすることがより好ましい。実際の長さの上限としては、20cm以下とすることができ、15cm以下とすることが好ましく、10cm以下とすることがより好ましい。さらに、直線長さLは、下限としては、包装容器1を平面方向から見て、直線Lの線分の少なくとも一部と内部空間11とが重なる長さ以上とすることができる。より詳細には、接合領域231の外周の長さの0.5%以上とすることができ、1.5%以上とすることが好ましく、3%以上とすることがより好ましい。実際の長さの下限としては、0.5cm以上とすることができ、0.8cm以上とすることが好ましく、1cm以上とすることがより好ましい。
【0027】
また、弱接合領域233の接合力(シール強度)は、人の手で蓋材フィルム3を容器2から剥がそうとした際に、軽く力を入れて(一方の手で容器2を持ちながら他方の手で蓋材フィルム3を剥離方向に引っ張って)剥がせる程度の接合力である。弱接合領域233の接合力(シール強度)は、具体的には、下限値を0.05N/cm以上とすることができ、0.1N/cm以上とすることが好ましく、0.5N/cm以上とすることがより好ましく、1N/cm以上とすることが好適である。また、弱接合領域233の接合力(シール強度)の上限値は、4N/cm以下とすることができ、3.5N/cm以下とすることが好ましく、3N/cm以下とすることがより好ましく、2N/cm以下とすること好適である。本実施例では、蓋材フィルム3が容器2と接合(溶着)されているとき、弱シール層34とフランジ部23とが接合(溶着)されている領域が弱接合領域233となる。したがって、弱接合領域233は、シーラント層32において弱シール層34が積層されている範囲に含まれている。言いかえると、弱接合領域233は、包装容器1を平面方向から見て弱シール層34と接合領域231とが重なっている範囲である。また、弱接合領域233は、フランジ部23において、容器2の開口部25が湾曲している位置の外周に配置された湾曲部24に設けられていることが好ましい。
【0028】
以上のような構成を有する本実施例の包装容器1は、電子レンジで加熱すると内容物(食品)が昇温される。このとき、内容物からは水分および油分を含む蒸気が発生し、密閉された内部空間11の内容積が増加する。このとき、包装容器1が昇温されている間、内容物から蒸気が発生し続けるため、内容積は時間経過にともなって増加する。したがって、内部空間11から容器2および蓋材フィルム3を外側に押す力(圧力)が発生し、時間経過にともなって圧力が増加する。また、弱シール層34が所定の温度(弱接合力組成物の軟化点)に到達したとき、弱シール層34を形成している弱接着力組成物が軟化し、弱シール層34とフランジ部23との接合力が弱くなる。さらに、弱シール層34に含まれる吸水性組成物が蒸気に含まれる水分の一部を吸収し、吸収した水分によって弱シール層34がさらに軟化して蒸通効果を高める。また、弱シール層34に含まれる吸油性組成物が蒸気に含まれる油分の一部を吸収し、吸収した油分によって弱シール層34がさらに軟化して蒸通効果を高める。ここで、内部空間11からの圧力が所定の大きさ(パンク圧)となったとき、弱シール層34とフランジ部23とが剥離し、剥離した箇所の開口部25から容器2内の蒸気が外部に漏れだし蒸通する。
【0029】
<実施例>
図5に、実施例1~15および比較例1を示す。
A群としている実施例1においては、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)3000g、デンプン60g、親油性シリカ粒子300g、およびトルエン30240gを混合し、ディスパーで十分に撹拌・溶解して、固形分10%の弱接着力組成物塗剤を作成した。その後、作成した弱接着力組成物塗剤をシーラント層32の表面の一部に塗布し、乾燥して2~3μmの厚みを有する弱シール層34を形成した。塗布条件は、グラビア版としてヘリオグラフ版(60線)を用いたグラビア印刷機を使用し、塗布速度100m/分とした。乾燥条件は、乾燥温度60℃として十分に乾燥させた。そして、弱シール層34を形成した樹脂フィルムをポリプロピレン製耐熱容器(容器2)のフランジ部23の上面に熱溶着(ヒートシール)し、内部空間11を密閉した試験用の包装容器1を作成した。熱溶着は、条件として温度170℃で0.35MPaの圧力を3秒間かけた。
【0030】
各実施例および比較例において、弱シール層34およびシーラント層32と容器2との接合力(シール強度)と試験用の包装容器1のパンク圧の一方または両方を測定し、結果を評価している。パンク圧の測定は、内部空間11に徐々に空気を注入し、蒸通した時点(弱シール層34が容器2に対して剥離状態となって内部空間11の気体が外部へ漏れ出る状態となった時点)での圧力(最大圧力)をパンク圧とした。
【0031】
実施例1(A群)に示すように、弱シール層34(弱接合力組成物)に親水性組成物と親油性組成物の両方を含有させた場合、弱シール層34の厚みが2~3μmで、弱シール層34の無い部分での接合力より弱く、かつ、輸送等で簡単に剥離せず、かつ適度なパンク圧で蒸通する良好な接合力を得られた。
【0032】
B群としている実施例2~5は、弱シール層34に親水性組成物および親油性組成物をいずれも含有させず、弱シール層34の塗布厚みを異ならせて測定したものである。
この実施例2~5(B群)に示すように、弱シール層34の接合力は、弱シール層34の厚みが1μm、2μm、4μm、および6μmのいずれの厚みの場合であっても、比較例1の弱シール層34を有さない(0μm)場合と比較して接合力が小さくなった。また、測定した範囲では、弱シール層の厚みが厚くなるにつれて、接合力が大きくなった。
【0033】
C群としている実施例6~9は、弱シール層34に親水性組成物および親油性組成物をいずれも含有させず、内部空間11に水を15cc収容させた状態として、弱シール層34の塗布厚みを異ならせて測定したものである。
この実施例6~9(C群)に示すように、昇温前パンク圧は、弱シール層の厚みが0.7μmのとき最も小さい0.03MPaとなり、1.5μmのとき最も大きい0.06MPaとなった。また、昇温後パンク圧は、0.7μm、0.9μm、1.5μm、および2.5μmのいずれの場合においても、0.05~0.06MPaで推移した。
【0034】
D群としている実施例10~12は、弱シール層34に親水性組成物を異なる含有率で含有させて測定したものである。
この実施例10~12(D群)に示すように、親水性組成物の含有量が弱接合力基材組成物100重量%に対して2,5,10重量%のいずれの場合でも、弱シール層34の接合力が1.2~1.5(N/cm)と良好な結果が得られた。また、温湯に5分浸漬した後でも、弱シール層34の接合力が1.3~1.1(N/cm)と良好な結果が得られ、温湯に10分浸漬した後ででは接合力が0(N/cm)となって蒸通状態になることが確認された。したがって、常温では適切な接合力を得られ、昇温時に水分を吸収して好適に蒸通することが確認された。
【0035】
E群としている実施例13~15は、弱シール層34に親油性組成物を異なる含有率で含有させて測定したものである。
この実施例13~15(E群)に示すように、親油性組成物の含有量が弱接合力基材組成物100重量%に対して2,5,10重量%のいずれの場合でも、弱シール層34の接合力が1.8~1.1(N/cm)と良好な結果が得られた。また、親油性組成物10重量%の実施例15については、温湯に5分浸漬した後に弱シール層34の接合力が0.1(N/cm)、温湯に10分浸漬した後に弱シール層34の接合力が0.5(N/cm)と顕著に低下しており、良好に蒸通することが確認された。なお、温湯への浸漬時間と接合力が比例していないが、これは測定における誤差と思われる。
【0036】
比較例1は、A群である実施例1と同様の構成で、弱シール層34を設けずに測定したものである。
この比較例1(A群)に示すように、弱シール層34を設けていないと、接合力が弱い部分がないため、適切に蒸通しないことが確認された。
【0037】
なお、実施例としては図示省略しているが、
図2の直線長さLに示した弱接合領域の直線長さが3cm、5cm、7cm、または9cmとなるようにし、それぞれの直線長さを有する弱シール層が0.7μmまたは0.9μmとなるようにして測定した場合でも、各パンク圧(MPa)が0.05~0.08(MPa)であり、良好な結果が得られている。
【0038】
また、蓋材フィルム3における弱シール層34の塗布範囲を、
図2に直線長さLとして記載した湾曲部24(角部)に設けたもの(角部タイプ)、湾曲部24(角部)に隣接する直線部(辺部)に設けたもの(辺端タイプ)、および、直線部(辺部)の中央に設けたもの(辺中央タイプ)の3種類を作成し、電子レンジでの加熱を蒸通時点で停止した。角部タイプは容器2が変形せず良好な結果であったが、辺端タイプは容器2の側面が少し凹となるように変形し、辺中央タイプは容器2の側面が大きく凹み変形した。したがって、弱シール層34は湾曲部24(角部)に設けることが好適である。
【0039】
以上の構成により、包装容器内が昇温した際に確実に蒸通できる食品包装用フィルムを提供することができる。
蓋材フィルム3は、容器2と接合されるシーラント層32と、シーラント層32の容器2と対向する表面の一部に積層されている弱シール層34とを備え、弱シール層34は、シーラント層32の容器2に対する接合力よりも容器2に対する接合力が弱い弱接合力組成物で形成されている。この構成により、内部空間11が密閉された包装容器1において、内部空間11の圧力が高まっても確実に蒸通し、包装容器1の破裂を防止することができる。詳細には、容器2の内部空間11に収容された食品などの内容物が昇温された際に蒸気が発生し、内部空間11の圧力を上昇させるが、弱シール層34と容器2とが接合されている弱接合領域233において、包装容器1が変形または破裂する圧力に到達するより前に弱シール層34が容器2から剥離し、剥離した箇所から蒸通させることができる。
【0040】
また、包装容器1において、強接合領域232は、接合領域231の少なくとも半分以上の面積を占め、弱接合領域233は、接合領域231の全体の内、半分以下の面積を占め、弱接合領域233もある程度の接合力を有している。この構成により、人の手で蓋材フィルム3を容器2から剥がせる接合力としながら、輸送中や陳列時の衝撃などで包装容器1が開封(弱接合領域233が剥離)されることを防止することができる。
【0041】
また、1つの弱接合領域233の直線状の長さを直線長さLとしたとき、直線長さLは、上限として接合領域231の外周の長さの35%以下、実際の長さの上限としては、20cm以下であり、下限としては、包装容器1を平面方向から見て、直線Lの線分の少なくとも一部と内部空間11とが重なる長さ以上である。この構成により、包装容器1が変形または破裂する圧力に到達するより前に弱シール層34が容器2から剥離し、剥離した箇所から蒸通させることができる。また、包装容器1が蒸通した際に、確実に内部空間11と包装容器1の外部空間とを連通させて蒸通させることができる。
【0042】
また、弱接合領域233は、容器2のフランジ部23において、容器2の開口部25が湾曲している位置の外周に配置された湾曲部24に設けられている。言いかえると、弱シール層34は、湾曲部24と接合される位置のシーラント層32の表面に設けられている。この構成により、包装容器1が変形または破裂する圧力に到達するより前に弱シール層34が容器2から剥離し、剥離した箇所から蒸通させることができるとともに、電子レンジの加熱を停止して包装容器1の内部空間11内が温度低下で負圧になっても容器2が変形することを防止できる。また、包装容器1を開封しようとする消費者は、包装容器1を弱接合領域233が設けられている湾曲部24から簡単に開封することができ、消費者の満足度を向上させることができる。
【0043】
また、弱シール層34は、親水性組成物および親油性組成物の少なくとも一方を含有する。この構成により、弱シール層34が内容物から発生する蒸気の水分および油分の少なくとも一方を吸収し、包装容器1を昇温した際により確実に弱シール層34を容器2から剥離させて蒸通させることができる。詳述すると、親水性組成物が内容物から発生する水分を吸収することにより、この水分が電子レンジのマイクロ波により振動して加熱され、水分のない弱シール層34よりも、弱シール層34を早く軟化させることができる。同様に、親油性組成物が内容物から発生する油分を吸収することにより、この油分が電子レンジのマイクロ波により振動して加熱され、油分のない弱シール層34よりも、弱シール層34を早く軟化させることができる。また、弱シール層34に親水性組成物と親油性組成物の両方を含有させている場合には、内容物に油分が少ないか含まれていない場合でも親水性組成物で水分を吸収でき、逆に内容物に水分が少ないか含まれていない場合でも親油性組成物で油分を吸収できる。このため、内容物における水分量と油分量の割合に左右される幅が少なく安定して弱シール層34が軟化し蒸通することができる。また、弱シール層34が早く軟化することによって、容器2が蒸通に至るまでの膨張を抑制することができ、蒸通時のパンク音を低減させることができる。
【0044】
また、親水性組成物および親油性組成物は、弱シール層34中で粒子として存在する。この構成により、弱シール層中に粒子として点在する親水性組成物および親油性組成物が、より効率的に内容物から発生する蒸気の水分および油分を吸収することができる。これにより、弱シール層34の軟化速度を速めることができる。
【0045】
また、親水性組成物として少なくともデンプンを含有させて使用する。この構成により、内容物から発生する蒸気に含まれる水分をシーラント層32に徐々に浸透させ、弱シール層34を形成している弱接合力基材組成物の粒子どうしの凝集力を弱めて(粒子どうしを分離させて)、より弱シール層34を容器2から分離(蒸通)しやすくすることができる。
【0046】
また、親油性組成物として少なくとも親油性処理を施したシリカ粒子(親油性シリカ粒子)を含有させて使用する。この構成により、弱シール層34中で多くの親油性組成物を粒子の状態とでき、より平均的に分散させ、内容物から発生する蒸気に含まれる油分を効率的に吸収することができる。また、大量の蓋材フィルム3を1枚の長いシート状に形成して製造する場合、製造後シートの保管方法としてロール状に巻いて保管する方法とすることができるが、そのような保管方法であっても重なったシート同士が強固に密着(ブロッキング)されることがなく、保管後に所定の大きさに切り出して製品化する際に作業性を向上させることができる。
【0047】
また、弱接合力組成物は、軟化点がシーラント層32より低い。この構成により、内容物、容器2、および蓋材フィルム3の温度上昇によって、容器2と接合された弱接着力組成物で形成された弱シール層34が軟化し、弱シール層34と容器2との接合力が弱まって確実に蒸通することができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施例に限らず、様々な形態をとることができる。
例えば、本実施例では、収容体を、底部および壁部によって形成された収容部を備える容器としたが、内容物の形状に対応して成形されたフィルムとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、食品を包装する包装容器および包装容器のフィルム蓋材の製造および販売に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…包装容器
11…内部空間
2…容器
21…底部
22…傾斜部
23…フランジ
231…接合領域
232…強接合領域
232…弱接合領域
24…湾曲部
25…開口部
26…収容部
3…蓋材フィルム
31…基材層
32…シーラント層
33…接合層
34…弱シール層