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特開2023-156925駆動機構、制御棒駆動装置および原子炉
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156925
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】駆動機構、制御棒駆動装置および原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 7/14 20060101AFI20231018BHJP
   G21C 7/12 20060101ALI20231018BHJP
   F16H 55/26 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G21C7/14
G21C7/12 200
F16H55/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066585
(22)【出願日】2022-04-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 淳
【テーマコード(参考)】
3J030
【Fターム(参考)】
3J030AB04
(57)【要約】
【課題】ラックギヤとピニオンギヤとの分解組み立てを確実かつ容易に実施すること。
【解決手段】駆動機構5は、ラックギヤ5Aと、ラックギヤ5Aに噛み合うピニオンギヤ5Bと、ラックギヤ5Aにおけるラック歯5Abを有さない部分に固定された位置決部材5Dと、ピニオンギヤ5Bの回転方向に沿って複数設けられた当接部材5Eと、を含み、ラックギヤ5Aおよびピニオンギヤ5Bの噛み合い時の相対移動方向にラックギヤ5Aまたはピニオンギヤ5Bの少なくとも一方を移動させた場合に、位置決部材5Dと当接部材5Eとの当接によりピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbの回転位置をラックギヤ5Aのラック歯5Abとの噛み合い位置とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックギヤと、
前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、
前記ラックギヤにおけるラック歯を有さない部分に固定された位置決部材と、
前記ピニオンギヤの回転方向に沿って複数設けられた当接部材と、
を含み、前記ラックギヤおよび前記ピニオンギヤの噛み合い時の相対移動方向に前記ラックギヤまたは前記ピニオンギヤの少なくとも一方を移動させた場合に、前記位置決部材と前記当接部材との当接により前記ピニオンギヤのピニオン歯の回転位置を前記ラックギヤのラック歯との噛み合い位置とする、駆動機構。
【請求項2】
前記位置決部材は、弾性力によって復帰できるように屈曲可能に構成される、請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記ラックギヤと前記ピニオンギヤとの噛み合い間隔を維持する案内部を含む、請求項1または2に記載の駆動機構。
【請求項4】
前記当接部材は、前記ピニオンギヤの回転方向に沿って3個以上設けられる、請求項1または2に記載の駆動機構。
【請求項5】
請求項1に記載の駆動機構と、
前記駆動機構によって昇降移動が可能に設けられ炉心に出し入れ可能な制御棒が連結される駆動軸と、
を含む、制御棒駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の制御棒駆動装置と、
前記制御棒駆動装置により制御される炉心と、
前記制御棒駆動装置および前記炉心を内部に配置する原子炉容器と、
を含む、原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆動機構、制御棒駆動装置および原子炉に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)は、炉心内で生成される中性子を制御棒により吸収することで、その中性子数を調整し、原子炉出力を制御している。制御棒は、制御棒駆動装置(CRDM:control rod drive mechanism)により炉心に対して出し入れされる。
【0003】
加圧水型原子炉用の制御棒駆動装置として、例えば、特許文献1に示されたラック&ピニオンによる駆動機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-023345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示すようなラック&ピニオンの駆動機構は、メンテナンス時にラックギヤとピニオンギヤとを分解組立する場合、ラックギヤに対してピニオンギヤの回転角度がずれると相互の噛み合いを行えないおそれがある。この駆動機構を制御棒駆動装置に適用した場合、多数の制御棒を駆動する全ての駆動機構の噛み合いを管理することは難しく、かつメンテナンス時は放射線領域となるため作業員が介在することを削減したい。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、ラックギヤとピニオンギヤとの分解組み立てを確実かつ容易に実施することのできる駆動機構、制御棒駆動装置および原子炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る駆動機構は、ラックギヤと、前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、前記ラックギヤにおけるラック歯を有さない部分に固定された位置決部材と、前記ピニオンギヤの回転方向に沿って複数設けられた当接部材と、を含み、前記ラックギヤおよび前記ピニオンギヤの噛み合い時の相対移動方向に前記ラックギヤまたは前記ピニオンギヤの少なくとも一方を移動させた場合に、前記位置決部材と前記当接部材との当接により前記ピニオンギヤのピニオン歯の回転位置を前記ラックギヤのラック歯との噛み合い位置とする。
【0008】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る制御棒駆動装置は、上記の駆動機構と、前記駆動機構によって昇降移動が可能に設けられ炉心に出し入れ可能な制御棒が連結される駆動軸と、を含む。
【0009】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る原子炉は、上記の制御棒駆動装置と、前記制御棒駆動装置により制御される炉心と、前記制御棒駆動装置および前記炉心を内部に配置する原子炉容器と、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ラックギヤとピニオンギヤとの分解組み立てを確実かつ容易に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の原子炉を示す概略図である。
図2図2は、実施形態の制御棒駆動装置を示す概略側面図である。
図3図3は、実施形態の制御棒駆動装置を示す一部拡大断面図である。
図4図4は、実施形態の制御棒駆動装置における電磁コイルのケーブルを示す概略斜視図である。
図5図5は、実施形態の駆動機構を示す概略斜視図である。
図6図6は、実施形態の駆動機構の基本動作を示す概略図である。
図7図7は、実施形態の駆動機構の基本動作を示す概略図である。
図8図8は、実施形態の駆動機構の基本動作を示す概略図である。
図9図9は、実施形態の駆動機構の動作を示す概略図である。
図10図10は、実施形態の駆動機構の動作を示す概略図である。
図11図11は、実施形態の駆動機構の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0013】
図1は、実施形態の原子炉を示す概略図である。
【0014】
図1に示す原子炉100は、加圧水型の原子力発電プラントに用いられる加圧水型原子炉である。加圧水型の原子力発電プラントは、原子炉100において、一次冷却材である軽水を加熱した後、高温となった一次冷却材を図示しない蒸気発生器に送る。そして、原子力発電プラントは、蒸気発生器において、高温となった一次冷却材を、二次冷却材と熱交換させることにより二次冷却材を蒸発させ、蒸発した二次冷却材の蒸気をタービンに送って発電機を駆動させることにより、発電を行っている。また、蒸気発生器に流入した高温の一次冷却材は、二次冷却材と熱交換を行うことにより冷却され、原子炉100に戻され再び高温に加熱される。一方、タービンで発電に用いられた二次冷却材の蒸気は、復水器で冷却されて液体に戻され復給水管を介して蒸気発生器に戻され一次冷却材との熱交換により再び蒸気となる。
【0015】
原子炉100は、圧力容器である原子炉容器101を有する。原子炉容器101は、原子炉容器本体101Aに原子炉容器蓋101Bが複数のスタッドボルトおよびナットにより固定されている。原子炉容器蓋101Bは、原子炉容器本体101Aの開口縁に形成された位置決めピン101Acによって、原子炉容器本体101Aに対して位置決めされて固定される。原子炉容器本体101Aは、一次冷却材を蒸気発生器に送る出口管台101Aaと、蒸気発生器で二次冷却材と熱交換して冷却された一次冷却材が戻される入口管台101Abとが設けられている。この原子炉容器101の内部に、制御棒駆動装置1、および燃料集合体102が収容される。制御棒駆動装置1の詳細は後述するが、原子炉容器101の内部の上側に配置される。燃料集合体102は、核燃料物質であり、原子炉容器101の内部の下側に設けられた炉心103に配置される。燃料集合体102は、図示しないが、多数の燃料棒が支持格子により格子状に束ねられて上下に長尺に構成されている。この燃料集合体102は、炉心103に対し、上端部を上側に向け、下端部を下側に向けて立てられた状態で多数配置される。また、炉心103は、内部に制御棒104が配置される。制御棒104は、多数の燃料集合体102の内部に上側から挿入され抜き挿し可能となっている。制御棒104は、中性子を吸収する制御材で形成され、燃料集合体102の内部に挿入されることで、燃料集合体102の核燃料物質の核分裂反応に伴う中性子を吸収して臨界状態にならないように制御することができる。一方、制御棒104は、燃料集合体102の内部から抜かれることで、原子炉100内の中性子数を増加させ、臨界から定格出力になるまで反応を上げることができる。また、原子炉容器101の内部であって、炉心103と制御棒駆動装置1との間には、制御棒104の昇降を案内する制御棒案内管105が多数配置されている。
【0016】
図2は、実施形態の制御棒駆動装置を示す概略側面図である。図3は、実施形態の制御棒駆動装置を示す一部拡大断面図である。図4は、実施形態の制御棒駆動装置における電磁コイルのケーブルを示す概略斜視図である。図5は、実施形態の駆動機構を示す概略斜視図である。
【0017】
制御棒駆動装置1は、上述したように原子炉容器101の内部に収容されている。制御棒駆動装置1は、制御棒104を上下方向に移動させることで、制御棒104を燃料集合体102の内部に抜き挿しする制御を行う。制御棒駆動装置1は、駆動モータ(駆動部)2と、電磁クラッチ3と、減速機構4と、駆動機構5と、駆動軸6と、付勢手段7と、を有する。
【0018】
駆動モータ2は、図2に示すように、制御棒駆動装置1において上側に配置されている。駆動モータ2は、図3に示すように、ロータ(回転子)2Aと、ステータ(固定子)2Bと、を有する。
【0019】
ロータ2Aは、上下方向に延びる中心軸CL上で上下方向に延びて設けられている。中心軸CLが延びる上下方向を軸方向ともいう。ロータ2Aは、駆動モータ2と、電磁クラッチ3とを収容するケース11に対して中心軸CLの周りに回転可能に設けられている。ロータ2Aは、磁性材で形成されている。ロータ2Aは、突極2Aaを有する。突極2Aaは、ロータ2Aにおいて中心軸CLから離れる径方向内側に延びた突起であり、中心軸CLの周りの周方向に間隔をおいて複数設けられている。また、ロータ2Aは、中心軸CL上で軸方向に貫通する貫通孔からなる中空部2Abが形成されている。
【0020】
ステータ2Bは、ロータ2Aの周りを囲むように中心軸CLを中心とした筒状に形成されている。ステータ2Bは、磁性材で形成されている。ステータ2Bは、中心軸CLに向く径方向内側に延びてロータ2Aに向き、中心軸CLの周りの周方向に間隔をおいて複数設けられた芯部2Baを有している。ステータ2Bは、各芯部2Baに電磁コイル2Cが絶縁材(図示せず)を介して巻き付けられている。また、ステータ2Bは、電磁コイル2Cが、図4に示す無機絶縁ケーブル8で構成されている。
【0021】
無機絶縁ケーブル8は、図4に示すように、心線8aの周りを金属シース8bで囲み、心線8aと金属シース8bとの間に例えば酸化マグネシウムなどの無機絶縁物8cを充填したもので、MIケーブル(Mineral Insulated Cable)ともいう。本実施形態において、無機絶縁ケーブル8は、金属シース8bが耐熱性・耐蝕性に優れる耐熱・耐蝕合金である、例えばインコネル690(登録商標)で形成されている。
【0022】
この駆動モータ2は、ステータ2Bの電磁コイル2Cへ電流を流すことにより発生する磁界の吸引力によりロータ2Aの突極2Aaが当該電磁コイル2Cの巻かれた芯部2Baに引き付けられロータ2Aが中心軸CLの周りに回転する。即ち、駆動モータ2は、永久磁石を用いず、磁性材からなるロータ2Aを、ステータ2Bの電磁コイル2Cに生じる磁界の吸引力により回転させるリラクタンスモータを構成する。
【0023】
電磁クラッチ3は、図3に示すように、第一磁極3Aと、第二磁極3Bと、電磁コイル3Cと、を有する。
【0024】
第一磁極3Aは、磁性材からなり、駆動モータ2のロータ2Aに固定されている。従って、第一磁極3Aは、駆動モータ2のロータ2Aの回転に伴って回転する。第一磁極3Aは、軸方向の下端に径方向外側に突出し下端面が平坦な吸着部3Aaが形成されている。
【0025】
第二磁極3Bは、磁性材からなり、第一磁極3Aに磁着することが可能であり、ケース11に対して軸方向に移動可能に設けられている。また、第二磁極3Bは、ケース11に対して中心軸CLの周りに回転可能に設けられている。第二磁極3Bは、軸方向の上端に径方向外側に突出し上端面が平坦な吸着部3Baが形成されている。吸着部3Baは、その上端面が第一磁極3Aの吸着部3Aaの下端面に対向して設けられている。第二磁極3Bは、その下端が減速機構4に接続されている。
【0026】
第一磁極3Aおよび第二磁極3Bは、中心軸CL上で軸方向に貫通する貫通孔からなる中空部3Dが形成されている。中空部3Dは、駆動モータ2のロータ2Aに形成された中空部2Abと同等の内径に形成され中空部2Abに連通する。
【0027】
電磁コイル3Cは、ケース11に固定され、第一磁極3Aと第二磁極3Bとに軸方向に磁界を発生するように設けられている。電磁コイル3Cは、図4に示す無機絶縁ケーブル8で構成されている。
【0028】
この電磁クラッチ3は、電磁コイル3Cに電流を流すことで、軸方向に磁界が発生し、第一磁極3Aの吸着部3Aaおよび第二磁極3Bの吸着部3Baに作用する。磁界が吸着部3Aaおよび吸着部3Baに作用すると、これらが相互に吸着する吸着力が発生し、第一磁極3Aに第二磁極3Bが引き付けられ吸着する。第一磁極3Aに第二磁極3Bが吸着すると、第一磁極3Aおよび第二磁極3Bを介して駆動モータ2の回転が減速機構4および駆動機構5に伝達される。一方、電磁クラッチ3は、電磁コイル3Cに電流を流さないと、第一磁極3Aの吸着部3Aaおよび第二磁極3Bの吸着部3Baへの磁界の作用がなく、第一磁極3Aと第二磁極3Bとの吸着が解除される。第一磁極3Aと第二磁極3Bとの吸着が解除されると、駆動モータ2の回転が減速機構4および駆動機構5に伝達されなくなり、減速機構4および駆動機構5が回転自由な状態になる。
【0029】
減速機構4は、電磁クラッチ3と駆動機構5との間に配置される。減速機構4は、電磁クラッチ3を介して駆動モータ2の中心軸CL周りの回転が伝達され、この回転を減速しつつ駆動機構5に伝達する。減速機構4は、図には明示しないが、例えば、遊星歯車機構からなる複数の減速部が軸方向に積層して配置される。減速機構4は、この構成により、中央に軸方向に貫通する中空部を有する。中空部は、中心軸CL上で軸方向に貫通する貫通孔からなり、電磁クラッチ3に形成された中空部3Dと同等の内径に形成され中空部3Dに連通する。
【0030】
駆動機構5は、電磁クラッチ3が吸着した状態において、駆動モータ2により駆動され、駆動軸6を昇降させる。駆動機構5は、図5に示すように、ラックギヤ5Aと、ピニオンギヤ5Bと、案内部5Cと、位置決部材5Dと、当接部材5Eと、を有する。
【0031】
ラックギヤ5Aは、上述した中空部2Ab,3Dに挿通されるように上下方向(軸方向)に沿って連続して直線状に延びて形成される。ラックギヤ5Aは、長板状に形成されたラック本体5Aaの板面に、その延在する上下方向に沿って多数のラック歯5Abが形成される。実施形態のラックギヤ5Aは、一方の板面にラック歯5Abが形成される。ラック歯5Abは、ラック本体5Aaの上方の部分には設けられていない。このラックギヤ5Aは、案内部5C(第一案内部5CA)によって軸方向に沿って昇降可能に設けられる。また、ラックギヤ5Aは、その下端が駆動軸6に連結される。
【0032】
ピニオンギヤ5Bは、円板形状のピニオン本体5Baの外周面に沿ってピニオン歯5Bbが形成される。ピニオンギヤ5Bは、ピニオン本体5Baが中心軸CLに対して直交する方向に延びる回転軸5Bcに固定される。ピニオンギヤ5Bは、駆動モータ2の回転が電磁クラッチ3および減速機構4を経て回転軸5Bcに伝達される。実施形態では、減速機構4は、駆動モータ2の中心軸CL周りの回転が伝達されるため、中心軸CLに直交する回転軸5Bcに回転を伝達するための軸変換機構(図示せず)を介して回転軸5Bcに接続される。このピニオンギヤ5Bは、ピニオン歯5Bbがラックギヤ5Aのラック歯5Abに噛み合う。このため、駆動モータ2の回転がピニオンギヤ5Bに伝達されることで、ラックギヤ5Aが軸方向に沿って昇降移動する。このピニオンギヤ5Bは、案内部5C(第二案内部5CB)によって軸方向に沿って昇降可能に設けられる。図5では、ピニオンギヤ5Bは、ラックギヤ5Aとの噛み合い位置よりも上方の位置に移動している状態を示している。
【0033】
案内部5Cは、ラックギヤ5Aの昇降移動を案内する第一案内部5CAと、ピニオンギヤ5Bの昇降移動を案内する第二案内部5CBと、を有する。
【0034】
第一案内部5CAは、スライダ5CAaと、スライドレール5CAbと、を有する。スライダ5CAaは、ラックギヤ5Aのラック本体5Aaに対し、ラック歯5Abを有さず背反する各板面に固定される。スライドレール5CAbは、ラックギヤ5Aと平行に上下方向(軸方向)に沿って連続して直線状に延びて形成される。スライドレール5CAbは、原子炉容器101の原子炉容器本体101Aに固定される。スライドレール5CAbは、スライダ5CAaが軸方向に昇降可能に組み付けられる。従って、第一案内部5CAは、スライドレール5CAbを介し、スライダ5CAaが固定されたラックギヤ5Aを軸方向に昇降可能に案内する。また、第一案内部5CAは、スライドレール5CAbによってスライダ5CAaが軸方向以外に移動することを規制することで、ピニオンギヤ5Bに噛み合うラックギヤ5Aの噛み合い距離を維持する。
【0035】
第二案内部5CBは、支持レール5CBaを有する。支持レール5CBaは、ラックギヤ5Aと平行に上下方向(軸方向)に沿って連続して直線状に延びて形成される。支持レール5CBaは、ピニオンギヤ5Bの回転軸5Bcを挟むように1対設けられる。1対の支持レール5CBaは、ピニオンギヤ5Bを貫通する回転軸5Bcの両端部に設けられる。従って、第二案内部5CBは、支持レール5CBaを介してピニオンギヤ5Bを軸方向に昇降可能に案内する。また、第二案内部5CBは、支持レール5CBaによってピニオンギヤ5Bが軸方向以外に移動することを規制することで、ラックギヤ5Aに噛み合うピニオンギヤ5Bの噛み合い距離を維持する。
【0036】
このように、案内部5Cは、ラックギヤ5Aおよびピニオンギヤ5Bの昇降移動を案内し、かつラックギヤ5Aのラック歯5Abとピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbとの噛み合い間隔E(図9(a)参照)を維持するようにラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bの位置関係を維持する。ここで、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの噛み合い間隔Eとは、ピニオンギヤ5Bの回転がラックギヤ5Aに伝達されるようにラック歯5Abとピニオン歯5Bbとが噛み合うための、例えば、図9(a)に示すようにラックギヤ5Aのラック本体5Aaとピニオンギヤ5Bのピニオン本体5Baとの相互間の距離であって、望ましくは、ラック歯5Abおよびピニオン歯5Bbの接触点が共通接線上にある関係での距離である。
【0037】
位置決部材5Dは、ラックギヤ5Aに設けられる。位置決部材5Dは、棒状に形成され、基端部5Daがラック歯5Abを有さない部分であるラック本体5Aaの上方に固定され、先端部5Dbがピニオンギヤ5B側に向けて延びて設けられる。位置決部材5Dは、先端部5Dbが基端部5Daに対して軸5Dcを介して連結され、ラックギヤ5Aおよびピニオンギヤ5Bが昇降する上下方向に屈曲可能に形成される(図8(b)参照)。位置決部材5Dは、外力によって先端部5Dbが基端部5Daに対して屈曲し、外力が無くなると水平方向に沿って直線状に復帰できるようにバネなどの弾性力によって付勢される。位置決部材5Dは、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとが噛み合い間隔Eの関係にあるとき、先端部5Dbの先端がピニオンギヤ5Bの回転軸5Bcの回転中心Sに至らない長さとされる。
【0038】
当接部材5Eは、ピニオンギヤ5Bに設けられる。当接部材5Eは、ピニオン本体5Baに固定され、回転軸5Bcの回転中心Sの延びる方向と平行に延びる棒状に形成される。当接部材5Eは、回転軸5Bcを中心としてピニオンギヤ5Bの回転方向に沿って等間隔で複数(実施形態では8個)設けられる。当接部材5Eの数をB、ピニオン歯5Bbの歯数をAとすると、A>Bで、かつAおよびBが自然数であり、B×α=Aの関係を満たす。αは自然数である。当接部材5Eは、ピニオンギヤ5Bと共に昇降移動し、かつピニオンギヤ5Bと共に回転軸5Bcの周りに回転移動する。また、当接部材5Eは、ピニオンギヤ5Bの昇降時、位置決部材5Dが延びる範囲において、位置決部材5Dの先端部5Dbに当接可能に設けられる。位置決部材5Dは、ラックギヤ5Aにおいてラック歯5Abを有さない部分に設けられているため、ラック歯5Abを有さない部分において当接部材5Eが位置決部材5Dに当接する。位置決部材5Dは、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとが噛み合い間隔Eの関係にあるとき、先端部5Dbの先端がピニオンギヤ5Bの回転軸5Bcの回転中心Sに至らない長さであるため、回転中心Sよりもラックギヤ5A側に位置する当接部材5Eが位置決部材5Dの先端部5Dbに当接することとなる。当接部材5Eが位置決部材5Dに当接すると、ピニオンギヤ5Bは回転軸5Bcの周りに回転することとなる。
【0039】
駆動軸6は、駆動機構5のラックギヤ5Aの下端に連結され、図2に示すように、制御棒案内管105に挿通される。駆動軸6は、ラックギヤ5Aとして構成されていてもよい。従って、駆動軸6は、ケース11に対して中心軸CL上に軸方向に昇降移動が可能に設けられる。駆動軸6は、昇降移動において、電磁クラッチ3の第一磁極3Aおよび第二磁極3Bに形成された中空部3D、ロータ2Aに形成された中空部2Ab、減速機構4の中空部に挿通される。そして、ラックギヤ5Aと連結、またはラックギヤ5Aとして構成される駆動軸6は、駆動機構5および制御棒駆動装置1によって上下方向に昇降移動する。駆動軸6は、その下端に制御棒104が連結される。
【0040】
従って、駆動機構5および制御棒駆動装置1は、電磁クラッチ3が吸着し駆動モータ2からの駆動力の伝達を接続されるこことで、駆動モータ2により一方向の回転が伝達され、駆動軸6(制御棒104)を上昇させる。また、駆動機構5および制御棒駆動装置1は、電磁クラッチ3が吸着し駆動モータ2からの駆動力の伝達を接続されるこことで、駆動モータ2により他方向の回転が伝達され、駆動軸6(制御棒104)を下降させる。また、駆動機構5および制御棒駆動装置1は、電磁クラッチ3が吸着して駆動機構5と駆動モータ2とが接続されることで、駆動モータ2が駆動されていない状態において、駆動軸6(制御棒104)を上昇または下降した所定の位置にて保持する。また、駆動機構5および制御棒駆動装置1は、電磁クラッチ3が吸着解除した状態で駆動モータ2からの駆動力の伝達を切断されることで、駆動機構5の各部の回転が自由となり、駆動軸6の自由な下降を許容し、駆動軸6を伴った制御棒104の自由落下を許容する。従って、電磁クラッチ3を切断状態とすることで、制御棒104が自由落下するスクラム動作を補償し、燃料集合体102の内部に挿入され燃料集合体102の核燃料物質の核分裂反応を抑制し臨界状態にならないように制御する。
【0041】
付勢手段7は、図2に示すように、本実施形態では、制御棒案内管105に設けられている。付勢手段7は、制御棒案内管105の内部に設けられ、この制御棒案内管105に挿通される駆動軸6を常に下方の炉心103側に付勢する圧縮バネを構成する。圧縮バネである付勢手段7は、上端が制御棒案内管105の内部の上端の係合部105aに引っ掛かり、下端が制御棒案内管105の内部において駆動軸6の係合部6aに引っ掛かって設けられる。従って、付勢手段7は、電磁クラッチ3が吸着解除した状態で駆動モータ2からの駆動力の伝達を切断されることで、駆動軸6の自由な下降を助勢し、駆動軸6を伴った制御棒104の自由落下を助勢する。電磁クラッチ3が吸着解除した状態では、減速機構4および駆動機構5の噛み合いの負荷が生じるが、付勢手段7は、この負荷に抗して駆動軸6の自由な下降を助勢し、駆動軸6を伴った制御棒104の自由落下を助勢する。かかる付勢手段7の作用は、舶用炉向け原子炉を想定した場合に、原子炉(船体)の傾斜・揺動・転覆の事象においても制御棒104を燃料集合体102の内部に確実に挿入する機能を担う。
【0042】
以下、駆動機構5の動作について説明する。
【0043】
駆動機構5の基本動作を図6図7図8に示す。図6から図8では、位置決部材5D(ラックギヤ5A)が固定で、当接部材5E(ピニオンギヤ5B)が案内部5Cで案内されて矢印Dで示すように下降した形態とする。
【0044】
図6に示す基本動作において、図6(a)に示すように、回転軸5Bcに直交して回転軸5Bcの回転中心Sと当接部材5Eの中心を通る基準線Lの下側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接する位置関係の場合、位置決部材5Dと当接部材5Eとの接触部で当接部材5Eの法線方向に力Mが発生する。力Mは、基準線Lの下側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接するため、当接部材5Eを上方に上げるように作用する。これにより、当接部材5Eには、回転軸5Bcの周りに図6(a)における時計回りに回転するモーメントRが発生する。すると、当接部材5Eは、図6(b)に示すように、位置決部材5Dによって押し上げられるように、ピニオンギヤ5Bを伴って時計回りに回転する。すると、当接部材5Eは、さらなる時計回りの回転により、回転軸5Bcの回転中心Sよりも上方に移動する。やがて、当接部材5Eは、図6(c)に示すように、位置決部材5Dの長さが届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れ、下降を続けられるが、ピニオンギヤ5Bと共に回転が停止する。
【0045】
図7に示す基本動作において、図7(a)に示すように、基準線Lの上側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接する位置関係の場合、力Mは、基準線Lの上側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接するため、当接部材5Eを下方に下げるように作用する。これにより、当接部材5Eには、回転軸5Bcの周りに図7(a)における反時計回りに回転するモーメントRが発生する。すると、当接部材5Eは、図7(a)に示すように、位置決部材5Dによって押し下げられるように、ピニオンギヤ5Bを伴って反時計回りに回転する。やがて、当接部材5Eは、図7(b)に示すように、位置決部材5Dの長さが届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れ、下降を続けられるが、ピニオンギヤ5Bと共に回転が停止する。
【0046】
図8に示す基本動作において、図8(a)に示すように、基準線Lで位置決部材5Dに当接部材5Eが当接する位置関係の場合、力Mは、基準線Lに沿っているため、当接部材5Eを上下させるように作用しない。従って、当接部材5Eには、回転軸5Bcの周りに回転するモーメントRが発生しない。その後、ピニオンギヤ5Bと共に当接部材5Eが下降することで、図8(b)に示すように、位置決部材5Dの先端部5Dbが下側(図8(b)の矢印K方向)に屈曲する。すると、基準線Lの上側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接することとなり、当接部材5Eには、回転軸5Bcの周りに図8(b)における反時計回りに回転するモーメントRが発生する。すると、当接部材5Eは、図8(b)に示すように、位置決部材5Dによって押し下げられるように、ピニオンギヤ5Bを伴って反時計回りに回転する。やがて、当接部材5Eは、図8(c)に示すように、位置決部材5Dが届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れ、下降を続けられるが、ピニオンギヤ5Bと共に回転が停止する。その一方で、位置決部材5Dは、弾性力によって直線状に復帰する。
【0047】
駆動機構5の動作を図9図10図11に示す。図9から図11では、ラックギヤ5Aが固定で、ピニオンギヤ5Bが基本動作と同様に案内部5Cで案内されて下降した形態とする。
【0048】
図9に示す動作において、ピニオンギヤ5Bが下降すると、当接部材5Eのいずれか1つがラックギヤ5Aの位置決部材5Dに当接する。図9示す動作は、図6に示す基本動作のように、基準線Lの下側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接した場合に相当する。このため、ピニオンギヤ5Bは、図9(a)に示すように、モーメントRの発生によって回転軸5Bcの周りに時計回りに回転する。その後、ピニオンギヤ5Bは、図9(b)および図9(c)に示すように、さらなる下降によって、さらに時計回りに回転する。やがて、ピニオンギヤ5Bは、当接部材5Eが位置決部材5Dの長さの届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れ、下降を続けられるが、回転が停止する。このピニオンギヤ5Bの回転が停止した回転角度の位置、つまり位置決部材5Dの長さの届かない位置まで至った当接部材5E’の回転角度の位置は、さらなるピニオンギヤ5Bの下降において、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラックギヤ5Aのラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置である。このピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラックギヤ5Aのラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置は、当接部材5Eがピニオン歯5Bbの歯数に対して[0038]の関係で配置されつつピニオン歯5Bbの回転角度に合った位置関係にあることと、案内部5Cによって維持されているラックギヤ5Aのラック歯5Abとピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbとの噛み合い間隔Eと、位置決部材5Dの長さと、によって設定できる。
【0049】
図10に示す動作は、図7に示す基本動作のように、基準線Lの上側で位置決部材5Dに当接部材5Eが当接した場合に相当する。このため、ピニオンギヤ5Bは、図10(a)に示すように、モーメントRの発生によって回転軸5Bcの周りに反時計回りに回転する。その後、ピニオンギヤ5Bは、図10(a)に示すように、当接部材5Eが図7(b)で示したように、位置決部材5Dの長さが届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れるため、回転が停止する。その後、ピニオンギヤ5Bは、さらに下降することで、先に位置決部材5Dの先端から離れた当接部材5Eの次の当接部材5E’(図10(b)参照)が位置決部材5Dに当接する。すると、ピニオンギヤ5Bは、この当接部材5E’が図9(b)の位置関係と同様になり、(c)(d)と続き図9の当接部材5E’となり、さらなる下降において、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラックギヤ5Aのラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。
【0050】
図11に示す動作は、図8に示す基本動作のように、基準線Lで位置決部材5Dに当接部材5Eが当接した場合に相当する。このため、ピニオンギヤ5Bは、図11(b)に示すように、モーメントRの発生によって回転軸5Bcの周りに反時計回りに回転する。その後、ピニオンギヤ5Bは、図11(c)に示すように、当接部材5Eが図8(c)で示したように、位置決部材5Dの長さが届かない位置まで至り、位置決部材5Dの先端から離れるため、回転が停止する。その後、ピニオンギヤ5Bは、さらに下降することで、先に位置決部材5Dの先端から離れた当接部材5Eの次の当接部材5E’が位置決部材5Dに当接する。すると、ピニオンギヤ5Bは、この当接部材5E’が図9に示す動作の当接部材5E’となり、さらなる下降において、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラックギヤ5Aのラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。
【0051】
なお、上述した実施形態の駆動機構5では、ラックギヤ5Aの昇降を固定としてピニオンギヤ5Bを下降させる構成で説明したがこの限りではない。例えば、ピニオンギヤ5Bの昇降を固定してラックギヤ5Aを上昇させても同様に、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。また、例えば、構成を上下反転させ、ラックギヤ5Aの昇降を固定としてピニオンギヤ5Bを下降させたり、ピニオンギヤ5Bの昇降を固定してラックギヤ5Aを上昇させたりしても同様に、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。また、例えば、ピニオンギヤ5Bおよびラックギヤ5Aの双方を近づくように昇降させても同様に、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。また、例えば、ラックギヤ5Aおよびピニオンギヤ5Bの移動方向は、上下方向の移動に限らず、別のあらゆる方向の移動であっても同様に、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbがラック歯5Abに噛み合う回転角度の位置となる。
【0052】
ここで、実施形態の原子炉100では、原子炉容器101において、ラックギヤ5Aが原子炉容器本体101Aに設けられ、少なくともピニオンギヤ5Bが原子炉容器蓋101Bに設けられており、原子炉容器蓋101Bと共に少なくともピニオンギヤ5Bが原子炉容器本体101Aから取り外せるように構成される。従って、実施形態の原子炉100は、原子炉容器蓋101Bを原子炉容器本体101Aから取り外す時に、ラックギヤ5Aからピニオンギヤ5Bを取り外すことができ、原子炉容器蓋101Bを原子炉容器本体101Aに組み付ける時に、ラックギヤ5Aにピニオンギヤ5Bを組み付けることができる。実施形態の原子炉100は、原子炉容器蓋101Bの分解組み立てと共に駆動機構5(制御棒駆動装置1)のピニオンギヤ5Bの分解組み立てを行える。
【0053】
ここで、案内部5Cは、原子炉100において、原子炉容器本体101Aの開口縁に形成された位置決めピン101Acを含む。位置決めピン101Acは、原子炉容器蓋101Bを原子炉容器本体101Aに組み付けを案内し、原子炉容器本体101Aへの原子炉容器蓋101Bの位置合わせを行う。一方、案内部5Cの第一案内部5CAは、ピニオンギヤ5Bを案内し、ラックギヤ5Aへのピニオンギヤ5Bの位置合わせを行う。そして、ピニオンギヤ5Bは、原子炉容器蓋101Bに設けられる。このため、位置決めピン101Acによって原子炉容器本体101Aへの原子炉容器蓋101Bの位置合わせをする際、複数の制御棒駆動装置1において第一案内部5CAによってラックギヤ5Aへのピニオンギヤ5Bの位置合わせができる関係とする。このように構成することで、原子炉容器本体101Aへ原子炉容器蓋101Bを組み付けるだけで、複数ある制御棒駆動装置1のピニオンギヤ5Bとラックギヤ5Aとの噛み合わせ位置が適切に合って嵌合できる。
【0054】
このように、実施形態の駆動機構5は、ラックギヤ5Aと、ラックギヤ5Aに噛み合うピニオンギヤ5Bと、ラックギヤ5Aにおけるラック歯5Abを有さない部分に固定された位置決部材5Dと、ピニオンギヤ5Bの回転方向に沿って複数設けられた当接部材5Eと、を含み、ラックギヤ5Aおよびピニオンギヤ5Bの噛み合い時の相対移動方向にラックギヤ5Aまたはピニオンギヤ5Bの少なくとも一方を移動させた場合に、位置決部材5Dと当接部材5Eとの当接によりピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbの回転位置をラックギヤ5Aのラック歯5Abとの噛み合い位置とする。
【0055】
この駆動機構5によれば、位置決部材5Dおよび当接部材5Eによって、ラックギヤ5Aまたはピニオンギヤ5Bの少なくとも一方を移動させることで、ピニオンギヤ5Bのピニオン歯5Bbの回転位置をラックギヤ5Aのラック歯5Abとの噛み合い位置にできる。この結果、実施形態の駆動機構5は、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの分解組み立てを確実かつ容易に実施できる。
【0056】
また、実施形態の駆動機構5では、位置決部材5Dは、弾性力によって復帰できるように屈曲可能に構成される。
【0057】
この駆動機構5によれば、位置決部材5Dが弾性力によって復帰できるように屈曲可能に構成されるため、当接部材5Eとの当接時に位置決部材5Dが屈曲することで、当接部材5Eと位置決部材5Dとの接触点がずれてピニオンギヤ5Bの回転のモーメントRを発生させることができ、かつ位置決部材5Dおよび当接部材5Eに過大な負荷がかかる事態を防ぐ。この結果、実施形態の駆動機構5は、ピニオンギヤ5Bを円滑に回転させることができ、かつ部材の破損を防止できる。
【0058】
また、実施形態の駆動機構5では、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの噛み合い間隔Eを維持する案内部5Cを含む。
【0059】
この駆動機構5によれば、案内部5Cによってラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの噛み合い間隔Eを維持することで、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの噛み合い精度を確保できる。この結果、実施形態の駆動機構5は、ラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの分解組み立てを確実に実施できる。
【0060】
また、実施形態の駆動機構5では、当接部材5Eは、ピニオンギヤ5Bの回転方向に沿って3個以上設けられる。
【0061】
この駆動機構5によれば、ピニオンギヤ5Bの様々な回転位置において、位置決部材5Dを当接部材5Eに当接させることが可能であり、円滑な動作を実現できる。例えば、実施形態の駆動機構5では、当接部材5Eは、ピニオンギヤ5Bの回転方向に沿って[0038]の関係条件を満たした6個から8個とすることが現実的である。
【0062】
また、実施形態の制御棒駆動装置1は、上記の駆動機構5と、駆動機構5によって昇降移動が可能に設けられ炉心103に出し入れ可能な制御棒104が連結される駆動軸6と、を含む。
【0063】
この制御棒駆動装置1によれば、上記の駆動機構5を含むことで、制御棒104を昇降移動させるためのラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの分解組み立てを確実かつ容易に実施できる。
【0064】
また、制御棒駆動装置1では、駆動モータ2と、駆動モータ2により駆動される駆動機構5と、駆動機構5によって昇降移動が可能に設けられ炉心103に出し入れ可能な制御棒104が連結される駆動軸6と、駆動モータ2から駆動軸6への駆動力の伝達を接続または切断する電磁クラッチ3と、を備え、全ての前記構成(駆動モータ2、電磁クラッチ3、減速機構4、駆動機構5、駆動軸6、電磁クラッチ3、炉心103、制御棒104)が原子炉容器101の内部に配置されている。
【0065】
この制御棒駆動装置1によれば、駆動モータ2と、電磁クラッチ3と、減速機構4と、駆動機構5と、駆動軸6と、原子炉容器101の内部に配置されているため、原子炉容器101の外部に制御棒104を駆動する構成を有さない。即ち、実施形態の制御棒駆動装置1は、原子炉容器101の内部から外部に貫通する管台を不要とし、このため、実施形態の制御棒駆動装置1を適用することで、管台の溶接部の破断事故を想定した設計をする必要がない。この結果、本実施形態の制御棒駆動装置1によれば、原子炉容器101の安全性を向上できる。
【0066】
また、実施形態の制御棒駆動装置1において、駆動機構5は、ラックギヤ5Aへのピニオンギヤ5Bの噛み合いによる。実施形態の制御棒駆動装置1は、このようなラックピニオンの簡素な噛み合いにより、駆動軸6の昇降を駆動している。この結果、実施形態の制御棒駆動装置1によれば、高温および水中の環境において、故障の少ない簡素な構成において制御棒104の駆動を確実に行うことができる。
【0067】
また、実施形態の制御棒駆動装置1において、電磁クラッチ3は、駆動モータ2から駆動軸6への駆動力の伝達を接続または切断するもので、駆動モータ2から駆動軸6への駆動力の伝達を切断することで、駆動軸6の自由な下降を許容でき、駆動軸6を伴った制御棒104の自由落下を許容する。従って、実施形態の制御棒駆動装置1によれば、電磁クラッチ3を切断状態とすることで、制御棒104が自由落下し、燃料集合体102の内部に挿入されるため、燃料集合体102の核燃料物質の核分裂反応を抑制し臨界状態にならないように制御できる。
【0068】
また、実施形態の制御棒駆動装置1では、駆動モータ2は、磁性材からなるロータ2Aを、ステータ2Bの電磁コイル2Cに生じる磁界の吸引力により回転させる。
【0069】
この制御棒駆動装置1によれば、駆動モータ2は、永久磁石を用いないリラクタンスモータを構成できる。永久磁石は、耐熱性が低く、350℃以上の高温となる原子炉容器101の内部において使用が難しい。この結果、本実施形態の制御棒駆動装置1によれば、高温の原子炉容器101の内部への配置を実現できる。
【0070】
また、実施形態の制御棒駆動装置1では、駆動モータ2および電磁クラッチ3は、電磁コイル2C,3Cのケーブルが無機絶縁ケーブル8からなる。
【0071】
この制御棒駆動装置1によれば、無機絶縁ケーブル8を用いることで、ステータ2Bの内部への浸水時において電磁コイル2C,3Cの機能を維持できる。
【0072】
また、実施形態の制御棒駆動装置1では、無機絶縁ケーブル8は、金属シース8bが耐熱・耐蝕合金からなる。
【0073】
この制御棒駆動装置1によれば、無機絶縁ケーブル8の金属シース8bに耐熱・耐蝕合金を用いることで、耐熱性を向上し、高温での環境において電磁コイル2C,3Cの機能を維持できる。
【0074】
また、実施形態の制御棒駆動装置1では、駆動モータ2のロータ2Aの中心軸CL上で軸方向に貫通する中空部2Ab,3Dが形成され、中空部2Ab,3Dに駆動軸6が挿通される。
【0075】
この制御棒駆動装置1によれば、中空部2Ab,3Dに駆動軸6が挿通されるため、駆動モータ2のロータ2Aの中心軸CL上に駆動軸6を配置でき、装置の小型化を図れる。
【0076】
また、実施形態の制御棒駆動装置1では、駆動軸6を常に炉心103側に付勢する付勢手段7を有する。
【0077】
この制御棒駆動装置1によれば、電磁クラッチ3が吸着解除した状態では、減速機構4や駆動機構5により自由な落下を妨げる負荷が生じるが、付勢手段7は、この負荷に抗して駆動軸6の自由な下降を助勢し、駆動軸6を伴った制御棒104の自由落下を助勢できる。この結果、実施形態の制御棒駆動装置1によれば、燃料集合体102の核燃料物質の核分裂反応を確実に抑制し臨界状態にならないように安全に制御できる。かかる付勢手段7の作用は、舶用炉向け原子炉を想定した場合に、原子炉(船体)の傾斜・揺動・転覆の事象においても制御棒104を燃料集合体102の内部に確実に挿入する機能を担う。
【0078】
また、実施形態の原子炉100は、上記の制御棒駆動装置1と、制御棒駆動装置1により制御される炉心103と、制御棒駆動装置1および炉心103を内部に配置する原子炉容器101と、を含む。
【0079】
この原子炉100によれば、上記の駆動機構5を有する制御棒駆動装置1を含むことで、制御棒104を昇降移動させるためのラックギヤ5Aとピニオンギヤ5Bとの分解組み立てを確実かつ容易に実施できる。この結果、実施形態の原子炉100は、放射線領域であっても制御棒駆動装置1のメンテナンスを安全に行える。また、この原子炉100によれば、制御棒駆動装置1の駆動性能を確保し、原子炉容器101の安全性を向上でき、原子炉容器101の小型化を図れ、高温および水中の環境において制御棒104の駆動を確実に行うことができ、安全な制御ができる。
【0080】
本開示は以下の発明を包含する。
[発明1]
ラックギヤと、
前記ラックギヤに噛み合うピニオンギヤと、
前記ラックギヤにおけるラック歯を有さない部分に固定された位置決部材と、
前記ピニオンギヤの回転方向に沿って複数設けられた当接部材と、
を含み、前記ラックギヤおよび前記ピニオンギヤの噛み合い時の相対移動方向に前記ラックギヤまたは前記ピニオンギヤの少なくとも一方を移動させた場合に、前記位置決部材と前記当接部材との当接により前記ピニオンギヤのピニオン歯の回転位置を前記ラックギヤのラック歯との噛み合い位置とする、駆動機構。
[発明2]
前記位置決部材は、弾性力によって復帰できるように屈曲可能に構成される、発明1に記載の駆動機構。
[発明3]
前記ラックギヤと前記ピニオンギヤとの噛み合い間隔を維持する案内部を含む、発明1または2に記載の駆動機構。
[発明4]
前記当接部材は、前記ピニオンギヤの回転方向に沿って3個以上設けられる、発明1から3のいずれか1つに記載の駆動機構。
[発明5]
発明1から4のいずれか1つに記載の駆動機構と、
前記駆動機構によって昇降移動が可能に設けられ炉心に出し入れ可能な制御棒が連結される駆動軸と、
を含む、制御棒駆動装置。
[発明6]
発明5に記載の制御棒駆動装置と、
前記制御棒駆動装置により制御される炉心と、
前記制御棒駆動装置および前記炉心を内部に配置する原子炉容器と、
を含む、原子炉。
【符号の説明】
【0081】
1 制御棒駆動装置
5 駆動機構
5A ラックギヤ
5Ab ラック歯
5B ピニオンギヤ
5Bb ピニオン歯
5C 案内部
5D 位置決部材
5E 当接部材
6 駆動軸
100 原子炉
101 原子炉容器
103 炉心
104 制御棒
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11