(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156964
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法、及び保存システム
(51)【国際特許分類】
A01N 1/02 20060101AFI20231018BHJP
A61K 35/19 20150101ALN20231018BHJP
【FI】
A01N1/02
A61K35/19 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145607
(22)【出願日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】202210386290.2
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522364251
【氏名又は名称】西安北光医学生物技術有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】胡佚凡
(72)【発明者】
【氏名】黄培庚
【テーマコード(参考)】
4C087
4H011
【Fターム(参考)】
4C087AA03
4C087BB38
4C087BB63
4H011BB18
4H011CA01
4H011CB08
4H011CD02
4H011CD13
(57)【要約】
【課題】保存期間を延長することができる細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法及び保存システムの提供。
【解決手段】本発明は、細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法及び保存システムを開示し、細胞、組織または臓器の保存技術の分野に属する。この方法は、細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに調整することを含む。発明者らは、懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を調整することで、細胞、組織または臓器の抗損傷を高めることができることを見出した。特に、懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を調整することは、PSLsの緩和、輸血後の血小板寿命の延長、血小板の止血機能の保護、血小板の保存期間の延長に有効である。したがって、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を高めることで、活性を維持したまま血小板濃縮物を長期保存できる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法であって、
細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに調整することを含み、
好ましくは、前記細胞は、血小板から選択されるものであり、
より好ましくは、前記細胞は、血小板濃縮物から選択されるものである、
ことを特徴とする細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法。
【請求項2】
保存対象とする前記血小板濃縮物をマルチガスインキュベーターの通気性容器に入れ、マルチガスインキュベーター内の二酸化炭素の体積分率を1%~8%に制御することを含み、
好ましくは、マルチガスインキュベーター内の二酸化炭素の体積分率を2%~5%に制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
保存対象とする前記血小板濃縮物をマルチガスインキュベーターの通気性容器に入れ、マルチガスインキュベーター内の酸素ガスの体積分率を10%~20%に制御し、
好ましくは、インキュベーター内の窒素ガスの体積分率を70%~90%に制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御し、
保存条件としては、温度が2℃~17℃の場合、静置保存し、温度が18℃~24℃の場合、連続的に振盪保存する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
保存対象とする前記血小板濃縮物を気密容器に入れ、前記気密容器に、体積分率が1%~8%である二酸化炭素ガス、体積分率が10%~20%である酸素ガス、体積分率が70%~90%である窒素ガスのうちの少なくとも1つを充填することを含み、
好ましくは、保存対象とする前記血小板濃縮物の入った気密容器をインキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御し、保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
保存対象とする前記血小板濃縮物を、逆止弁を備える容器または一方向通気性材料で作製された容器に入れることを含み、
好ましくは、前記保存対象とする前記血小板濃縮物の入った一方向通気性容器をインキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御し、保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
血小板濃縮物の懸濁媒体に、化学反応により二酸化炭素を生成させる物質を添加し、
好ましくは、前記の化学反応により二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記炭酸塩は、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウムから選択され、前記酵素は、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ-1、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォグリセレートキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸脱水素酵素複合体、イソクエン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素複合体、コハク酸CoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoA合成酵素、L-3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニウム酪酸、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、β-ケトアシル-CoAチオラーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼまたはβ-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼのβ-ケトチオラーゼから選択される、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
血小板採取装置で保存対象とする前記血小板を採取し、血小板採取装置に、予め、体積分率が1~8%である二酸化炭素ガス、体積分率が10~20%である酸素ガス、体積分率が70~90%である窒素ガスのうちの少なくとも2つを充填し、
好ましくは、保存対象とする前記血小板を採取しながら、血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
血小板採取装置で保存対象とする血小板を採取し、血小板採取装置に、予め、化学反応により二酸化炭素を生成させる物質を充填し、
好ましくは、前記の化学反応により二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記炭酸塩は、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウムから選択され、前記酵素は、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ-1、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォグリセレートキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸脱水素酵素複合体、イソクエン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素複合体、コハク酸CoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoA合成酵素、L-3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニウム酪酸、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、β-ケトアシル-CoAチオラーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼまたはβ-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼのβ-ケトチオラーゼから選択され、
好ましくは、保存対象とする血小板濃縮物の生体は、ヒト、サル、ヒツジ、ウサギ、ネズミ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ或いはウシから選択される、
ことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
細胞、組織または臓器の保存システムであって、
前記保存システムは、細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに制御し、
前記保存システムは、細胞、組織または臓器を収容するための一方向通気性容器と、二酸化炭素を生成させる物質と、インキュベーターと、を含み、
前記二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種であり、
好ましくは、前記細胞は、血小板から選択されるものであり、
好ましくは、前記細胞は、血小板濃縮物から選択されるものである、
ことを特徴とする保存システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞、組織または臓器の保存技術の分野に属し、具体的には、細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法、及び保存システムに関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は、巨核球細胞が分化して形成された細胞片であり、その主な役割が止血である。臨床治療では、適時に血小板を輸血することで、患者の治療時間を稼ぐことができ、予後の改善ひいては救命にも繋がる。近年、血小板の供給不足が常態化しており、その原因は様々であるが、22±2℃の空気中での通常の振盪保存(以下、単に、通常保存と称する)の保存期間が短いことは、主な要因の一つである。この条件で血小板の保存期間は、5日間にすぎない。実際には、採血、感染症スクリーニング検査及び血液使用許可に必要な約2日間を除けば、臨床で使用できるのは僅か3日間程度であり、その期間内に使用されなければ、廃棄しなければならない。PNAS 2017年の報道によると、通常保存の血小板の期限切れによる廃棄率は10.3%にも達した。このような高い廃棄率は、大きな経済的損失(米国では年間約8000万ドル)をもたらし、患者の経済的負担も増加させるため、血小板の不足がさらに深刻になった。また、期限切れによる廃棄は、貴重な血液資源を浪費し、献血者のモチベーションにも大きな影響を与えるため、献血者からの2回目の献血の意欲を著しく低下させ、血小板の需要と供給とのバランスがさらに崩れた。
【0003】
多くの研究により、通常保存の血小板の保存期間が短くなる理由は、主に、血小板保存損傷(platelet storage lesions、 PSLs)であることを見出した。PSLsは、保存中に血小板において現れた細胞膜分子、エネルギー代謝、輸血後の寿命および止血機能の一連の変化を指す。具体的には、細胞膜でのP-セレクチン(CD62P)の発現、ホスファチジルセリン(Phosphatidylserine、 PS)の露出、GP Ibα(CD42b)の脱落、エネルギー物質のアデノシン三リン酸(ATP)の産生の低下、急速なグルコースの消費、乳酸の大量蓄積、血小板凝集能の低下、輸血後の血小板寿命の短縮により表れた。したがって、いかにPSLsを軽減して血小板の保存期間を延長することは、世界的な難題となり、その研究も盛んになっている。
【0004】
しかしながら、いままで、PSLsを軽減した血液の保存方法はあまりなかった。
【0005】
上記の事情を鑑みて、本発明を提出する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、保存期間を延長することができる細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法及び保存システムを提供することを目的とする。
【0007】
本発明は、以下のように実現される。
【0008】
本発明は、細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法(Anti-lesion storage method in cells、 tissues and organs ALSM-CTO)を提供し、細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに調整することを含む。
【0009】
選択可能な実施形態において、上記の細胞は、血小板から選択されたものである。
【0010】
選択可能な実施形態において、上記の細胞は、血小板濃縮物から選択されたものである。
【0011】
選択可能な実施形態において、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに高める。
【0012】
発明者らは、懸濁媒体の二酸化炭素の分圧を調整することで、細胞、組織または臓器の抗損傷性を高めることができることを見出した。
【0013】
特に、発明者らは、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに調整する(例えば、高める)ことで、血小板のCD62Pの発現、CD42bの脱落、PSの露出、グルコース消費、乳酸蓄積、ATPの産生の低下を抑止することができ、さらに凝集の機能障害、最大振幅(Maximum amplitude、 MA)の値の下降、輸血後の血小板寿命の短縮および出血時間の短縮を効果的に抑止できることを見出した。以上により、血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を高めることは、PSLsの緩和、輸血後の血小板寿命の延長、血小板の止血機能の保持に有効であることがわかった。したがって、血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を高めることで、活性を維持したまま血小板を長期保存できる。
【0014】
二酸化炭素の分圧(Partial Pressure of Carbon Dioxide、PCO2)は、液体中に溶け込んだ二酸化炭素分子による圧力であり、二酸化炭素張力とも言われる。血液ガス分析装置で測定できる。
【0015】
上記の血小板濃縮物の懸濁媒体は、保存微環境とも名づけられる。
【0016】
上記の血小板濃縮物は、医療機関で献血した血小板、または人工的に体外で誘導された血小板を含むが、これらに限定されない。
【0017】
本発明の好ましい実施態様において、上記の方法は、保存対象とする血小板濃縮物をマルチガスインキュベーターの通気性容器に入れ、マルチガスインキュベーター内の二酸化炭素の体積分率を1%~8%に制御することを含む。
【0018】
好ましくは、インキュベーター内の二酸化炭素の体積分率を2%~5%に制御する。
【0019】
本発明の好ましい実施態様において、保存対象とする血小板濃縮物をマルチガスインキュベーターの通気性容器に入れ、マルチガスインキュベーター内の酸素ガスの体積分率を10%~20%に制御する。
【0020】
好ましくは、マルチガスインキュベーター内の窒素ガスの体積分率を70%~90%に制御する。
【0021】
インキュベーター内で通気性素材を設置することで、通気性容器の内外の二酸化炭素の分圧のバランスを保つことができるため、PSLsの緩和、輸血後の血小板寿命の延長、血小板の止血機能の保持、血小板の保存期間の延長に効果的である。
【0022】
本発明の好ましい実施態様において、マルチガスインキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御する。保存条件としては、温度が2℃~17℃の場合、静置保存し、温度が18℃~24℃の場合、連続的に振盪保存する。
【0023】
選択可能な実施形態において、インキュベーター内の二酸化炭素ガス、酸素ガスと窒素ガスの3種類の気体(の体積分率)のうちの少なくとも1つを制御する。
【0024】
本発明は、さらに、別の保存方法を提供し、保存対象とする血小板濃縮物を気密容器に入れ、気密容器に、体積分率が1%~8%である二酸化炭素ガス、体積分率が10%~20%である酸素ガス、体積分率が70%~90%である窒素ガスのうちの少なくとも2つを充填する。
【0025】
保存対象とする血小板濃縮物の入った気密容器をインキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御する。保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する。
【0026】
予め混合気体を充填した密閉容器をインキュベーター内に設置し、密閉容器内の二酸化炭素の分圧を維持することで、PSLsの緩和、輸血後の血小板寿命の延長、血小板の止血機能の保持、血小板の保存期間の延長を効果的に行うことが可能である。
【0027】
選択可能な実施形態において、血小板濃縮物の保存方法は、保存対象とする血小板濃縮物を、逆止弁を備える容器または一方向通気性材料で作製された容器に入れることを含む。両容器は、外からの気体の進入を許容し、容器内からの気体が外へ逃がすことができない。
【0028】
選択可能な実施形態において、保存対象とする血小板濃縮物の入った一方向通気性容器をインキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御する。保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する。
【0029】
選択可能な実施形態において、血小板濃縮物の懸濁媒体に、化学反応により二酸化炭素を生成させる物質を添加する。
【0030】
上記の化学反応により二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種である。例えば、炭酸と炭酸塩の組み合わせ、炭酸、炭酸塩と酵素の組み合わせが挙げられる。
【0031】
炭酸塩は、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウムから選択され、酵素は、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ-1、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォグリセレートキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸脱水素酵素複合体、イソクエン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素複合体、コハク酸CoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoA合成酵素、L-3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニウム酪酸、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、β-ケトアシル-CoA チオラーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼまたはβ-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼのβ-ケトチオラーゼなどを含むが、これらに限らない。
【0032】
本発明の好ましい実施態様において、予め保存対象とする血小板濃縮物に二酸化炭素を生成させる炭酸水素ナトリウムを添加し、そしてこの血小板濃縮物を、逆止弁を備える容器に入れ、インキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御する。保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する。
【0033】
本発明の好ましい実施態様において、血小板採取装置で保存対象つする血小板を採取し、血小板採取装置に、予め、体積分率が1~8%である二酸化炭素ガス、体積分率が10~20%である酸素ガス、体積分率が70~90%である窒素ガスのうちの少なくとも2つを充填する。
【0034】
選択可能な実施形態において、保存対象とする血小板を採取しながら、血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに制御する。
【0035】
本発明の好ましい実施態様において、血小板採取装置で保存対象とする血小板を採取し、血小板採取装置に、予め、化学反応により二酸化炭素を生成させる物質を充填する。
【0036】
選択可能な実施形態において、化学反応により二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種である。
【0037】
選択可能な実施形態において、炭酸塩は、炭酸カルシウムまたは炭酸水素ナトリウムから選択され、酵素は、ヘキソキナーゼ、ホスホフルクトキナーゼ-1、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、フォスフォグリセレートキナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ピルビン酸脱水素酵素複合体、イソクエン酸脱水素酵素、αケトグルタル酸脱水素酵素複合体、コハク酸CoAリガーゼ、コハク酸デヒドロゲナーゼ、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、アシルCoA合成酵素、L-3-ヒドロキシ-4-トリメチルアンモニウム酪酸、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼI、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼII、β-ケトアシル-CoA チオラーゼ、アシルCoAデヒドロゲナーゼ、エノイルCoAヒドラターゼまたはβ-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼのβ-ケトチオラーゼから選択される。
【0038】
本発明の好ましい実施態様において、保存対象とする上記血小板濃縮物はヒト、サル、ヒツジ、ウサギ、ネズミ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ或いはウシから選択される。
【0039】
本発明は、細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに制御する細胞、組織または臓器の保存システムをさらに提供し、そのシステムは、細胞、組織または臓器を入れるための一方向通気性容器と、二酸化炭素を生成させる物質と、インキュベーターと、を含み、二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸、炭酸塩および酵素から選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
本発明の好ましい実施態様において、細胞は血小板から選択されるものであり、本発明の好ましい実施態様において、細胞は血小板濃縮物から選択されるものである。
【0041】
本発明の好ましい実施態様において、一方向通気性の容器とは、逆止弁を備えた容器のことで、二酸化炭素を生成させる物質は、炭酸水素ナトリウムから選択される。
【0042】
炭酸水素ナトリウムを添加した血小板濃縮物を、逆止弁を備える容器に入れ、そしてインキュベーターに置き、インキュベーター内の保存温度を2℃~24℃に制御する。保存条件としては、2℃~17℃の場合、静置保存し、18℃~24℃の場合、振盪保存する。
【0043】
通常の通気性容器を一方向通気性容器に置き換えることで、血小板の代謝に必要な酸素ガスが入りやすくなるだけでなく、代謝過程で生成したCO2の漏出も防止することができる。また、血小板の代謝により生成した乳酸を添加した炭酸水素ナトリウムと化学反応させて二酸化炭素を生成させることで、二酸化炭素の分圧をさらに高めながら血小板の保存に有害な乳酸を消費することができるため、PSLsの緩和、輸血後の血小板寿命の延長、血小板の止血機能の保持、血小板の保存期間の延長を効果的に行うことが可能である。
【0044】
本発明は、下記の有益な効果を有する。
【0045】
本発明は、細胞、組織または臓器の抗損傷保存方法を提供する。細胞、組織または臓器を保存する懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30~50mmHgに制御することで、CD62Pの発現、CD42bの脱落、PSの露出、グルコース消費、乳酸蓄積、ATPの産生の低下、凝集の機能障害、MA値の低下、及び輸血後の血小板寿命の短縮を効果的に抑止することができる。したがって、懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を高めることで、活性を維持したまま血小板濃縮物を長期保存できる。
【0046】
また、本発明は、細胞、組織または臓器を保存するためのシステムをさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
本発明における実施例の技術案をより明瞭に説明するため、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に説明するが、当然のことながら、以下に説明する図面は、本発明のいくつかの実施例を示すものにすぎず、範囲を限定するものではない。当業者にとっては、発明能力を用いなくて、これらの図面に基づいて他の関連図面を得ることが可能である。
【0048】
【
図1A】実施例と比較例で保存された血小板のCD62P発現の統計結果を示す図である。
【
図1B】実施例と比較例で保存された血小板のPS露出の統計結果を示す図である。
【
図1C】実施例と比較例で保存された血小板のCD42b脱落の統計結果を示す図である。
【
図2A】実施例と比較例で保存された血小板のグルコース消費の統計結果を示す図である。
【
図2B】実施例と比較例で保存された血小板の乳酸生成の統計結果を示す図である。
【
図2C】実施例と比較例で保存された血小板のATP濃度の統計結果を示す図である。
【
図3A】誘導剤としてAAを用いた実施例1と比較例4で保存された血小板の凝集能の統計結果を示す図である。
【
図3B】誘導剤としてADPを用いた実施例1と比較例4で保存された血小板の凝集能の統計結果を示す図である。
【
図4】実施例1と比較例4で保存された血小板のMA値の統計結果を示す図である。
【
図5】実施例1と比較例4で保存された血小板の輸血後の寿命の統計結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の実施例の目的、技術案および利点をより明瞭に説明するため、以下、本発明の実施例の技術案を明瞭かつ完全に説明する。実施例において、具体的な条件を明記しないことについて、従来の条件又はメーカーの勧めの条件下で行うことが可能である。使用する試剤又は器械の、製造メーカーが明記されていないものが、市販の従来品を使用することが可能である。
【0050】
以下、実施例を参照しながら、本発明の特徴と特性をより詳しく説明する。
【0051】
実施例の主な試薬および材料
Anti-human CD62P-FITC抗体
Annexin V-FITCアポトーシス検出キット アメリカBD社製
Anti-human CD42b-PE、Anti-human CD41-FITCおよびAnti-mouse CD41-APC アメリカBiolegend社製
アラキドン酸(Arachidonic acid、AA)血小板凝集能キットおよびアデノシン二リン酸(adenosine diphosphate、 ADP)血小板凝集能キット シスメックス株式会社製
ATP測定キット shanghai beyotime biotechnology社製
Amicus Separator血小板アフェレーシス装置および対応する血小板保存袋 (Amicus アメリカ)
3131マルチガスインキュベーター (Thermo、アメリカ)
SYNERGYマイクロプレートリーダー (Bio-Tex、アメリカ)
FACS Cantoフローサイトメーター (BD、アメリカ)
GEM3500血液ガス分析装置 (IL、アメリカ)
CS-2400全自動血液凝固測定装置 (Sysmex、日本)
5000トロンボエラストグラフ止血分析装置 (Haemoscope、アメリカ)
非肥満糖尿病/重症複合免疫不全(non obese diabetes server combined immune-deficiency、NOD SCID)マウス サイヤジェン株式会社製
【0052】
実施例1
本実施例は、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を40 mmHgに制御することを含む血小板の保存方法を提供する。
【0053】
具体的には、まず、保存対象とする血小板濃縮物を用意した。また、10日以内に薬物を服用していない健康な成人をボランティアとして募集し、治験参加同意書に署名してもらった。さらに、献血者の健康診断基準に従って一般検査を行い、合格後、ボランティアに対して採血を行い、つまり、アフェレーシス装置を用いてボランティアから直接新鮮血小板を20U採取し、22±2℃で振盪保存した。
【0054】
上記の血小板を通気性血小板保存袋に入れ、そしてマルチガスインキュベーター内に置き、22±2℃で振盪保存した。
【0055】
マルチガスインキュベーター内の気体の組成は、3.5%のCO2、17%のO2、80%のN2を含む。
【0056】
実施例2
本実施例は、保存対象とする血小板濃縮物を気密容器に入れ、体積分率が3.5%である二酸化炭素、体積分率が17%である酸素ガス、体積分率が80%である窒素ガスの混合気体を上記容器に充填し、その後、インキュベーターに置き、22±2℃で振盪保存することを含む、血小板の保存方法を提供する。それ以外の工程は実施例1と同様である。
【0057】
実施例3
本実施例は、保存対象とする血小板濃縮物を、外部からの気体の進入のみが許容される、逆止弁を備える容器に入れ、また上記容器内に予め炭酸水素ナトリウムを入れ、その後、インキュベーターに置き、22±2℃で振盪保存することを含む、血小板の保存方法を提供する。それ以外の工程は実施例1と同様である。
【0058】
比較例1
実施例1との相違点は、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を5mmHgに制御することだけである。
【0059】
比較例2
実施例1との相違点は、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を30mmHgに制御することだけである。
【0060】
比較例3
実施例1との相違点は、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体における二酸化炭素の分圧を50mmHgに制御することだけである。
【0061】
比較例4
実施例1との相違点は、保存対象とする血小板濃縮物を従来の通気性血小板保存袋に入れ、その後、シェイキングインキュベーターに置き、22±2℃で振盪保存することである。
【0062】
実験例1
本実験例では、上記の実施例と比較例の血小板に対して、CD62Pの発現、PSの露出、CD42bの脱落の解析を実施する。実験のグループ分けおよび実験方法は、用意した血小板を7グループに均等に分け、それぞれ実施例1、実施例2、実施例3、比較例1、比較例2、比較例3、比較例4の方法にしたがって保存するように行われる。そして、保存後の3日目、5日目、7日目、8日目に、測定用のサンプルをそれぞれ適量採取し、Anti-CD62P-FITC抗体、Annexin V-FITCアポトーシス検出キット、Anti-CD42b-PE抗体のプロトコルを参照しながらCD62P、PS、CD42bをそれぞれ標識し、フローサイトメトリー解析を行う。
【0063】
図1A、1B、1Cは、各グループの保存後の3日目、5日目、7日目、8日目のCD62Pの発現、PSの露出、CD42bの脱落の統計解析の結果を示す。実施例1と4つの比較例の結果から分かるように、血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧が上昇することにしたがい、CD62Pの発現を表すCD62Pの陽性血小板の比率と、PSの露出を表すAnnexin Vの陽性血小板の比率は、いずれも下がった後再び上がり、CD42bの脱落を表すPEの平均蛍光強度は、上昇した後、低下に転じるようになった。そのうち、実施例1の方法によるCD62Pの陽性血小板の比率とAnnexin Vの陽性血小板の比率は最も低く、PEの平均蛍光強度は最も高かった。実施例1、2、3は、同じ保存時間の比較例4に比べて、CD62Pの陽性血小板の比率及びAnnexin Vの陽性血小板の比率がいずれも下がり、PEの平均蛍光強度が上昇した。保存後の7日目の実施例1、2、3のCD62Pの陽性血小板の比率、Annexin Vの陽性血小板の比率、PEの平均蛍光強度は、保存後の5日目の比較例4と統計的な差異がなかった。PSLsが発生したとき、CD62Pの発現、PSの露出、CD42bの脱落が起こる。したがって、上記の結果から分かるように、保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧がPSLsの発生に繋がり、実施例1、2および3の方法は、いずれも保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させるため、PSLsの発生を抑えることができる。さらに、実施例1、2および3の方法によれば、生体外での血小板保存効果を向上させ、その保存期間を従来の5日間から7日間に延長できることがわかった。
【0064】
実験例2
本実験例では、上記の実施例と比較例の血小板サンプルに対して血液ガス分析を行った。実験例1との相違点は、血液ガス分析装置のプロトコルを参照しながら血液ガス分析を行い、ATP検出キットのプロトコルを参照しながらATP濃度分析を行ったことのみである。
【0065】
図2A、2B、2Cは、各グループの保存後の3日目、5日目、7日目、8日目のグルコース消費量、乳酸生成量、ATP濃度の統計解析の結果を示す。実施例1と4つの比較例の結果から分かるように、血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧が上昇することにしたがい、グルコース消費量と乳酸生成量は、いずれも下がった後再び上がり、ATP濃度は、上昇した後、低下に転じるようになった。そのうち、実施例1の方法によるグルコース消費量と乳酸生成量は最も少なく、ATP濃度は最も高かった。実施例1、2、3は、同じ保存時間の比較例4に比べて、グルコース消費量および乳酸生成量がいずれもの下がり、ATP濃度が上昇した。保存後の7日目の実施例1、2、3のグルコース消費量、乳酸生成量、ATP濃度は、保存後の5日目の比較例4と統計的な差異がなかった。PSLsが発生した時、ATPの産生の低下や、それに伴う急速なグルコースの消費と乳酸の大量蓄積も起こる。したがって、上記の結果から分かるように、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧がPSLsの発生に繋がり、実施例1、2および3の方法は、いずれも生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させるため、PSLsの発生を抑えることができる。さらに、実施例1、2および3の方法によれば、生体外での血小板保存効果を向上させ、その保存期間を従来の5日間から7日間に延長できることがわかった。
【0066】
実験例3
本実験例では、上記実施例1と比較例4で保存された血小板に対して、血小板凝集能の測定を行った。保存後の3日目、5日目、および7日目に測定用のサンプルをそれぞれ適量採取し、全自動血液凝固測定装置を用いて、血小板凝集能(AA)キット(比濁法)および血小板凝集能(ADP)キット(比濁法)のプロトコルを参照しながら、血小板凝集能の測定を行った。
【0067】
図3Aおよび3Bは、AAまたはADPを誘導剤とした2グループの血小板凝集能の統計解析の結果を示す。その結果から分かるように、保存時間が長くなることにしがたい、AAまたはADPで誘導された実施例1と比較例4で保存された血小板の凝集率はいずれも低下した。比較例4と比べて、同じ保存時間の実施例1で保存した血小板の凝集率が上昇した。また、保存後の7日目の実施例1で保存した血小板の凝集率は、保存後の5日目の比較例4で保存した血小板と統計的な差異がなかった。血小板凝集率は、血小板の止血機能に比例する。したがって、これらの結果から分かるように、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、血小板の止血機能を保つことができる。さらに、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、生体外での血小板の保存効果を向上させ、その保存期間を従来の5日間から7日間に延長できることがわかった。
【0068】
実験例4
本実験例では、上記実施例1と比較例1で保存した血小板に対して、MA値を測定した。10日以内に薬物を服用していない健康な成人をボランティアとして募集し、消毒後、肘正中皮静脈から3mLの末梢血を採取し、3.8%クエン酸ナトリウム抗凝固剤を含有する試験管に入れた。そして、100gで10分間遠心して、多血小板血漿と下層細胞を分離し、更に2000gで10分間遠心して、多血小板血漿における血小板を血漿から分離し、その血漿を上記の下層細胞と均一に混合して乏血小板ヒト末梢血を得た。その後,実施例1と比較例1で保存したヒト血小板を、最終濃度が200×109/Lとなるように、乏血小板ヒト末梢血に添加し,均一に混合した後,キットのプロトコルを参照しながらMA値を測定した。
【0069】
図4は、保存後の5日目、7日目の2グループのMA値の統計解析の結果を示す。その結果から分かるように、実施例1のMA値は、同じ保存時間の比較例1よりも高く、また、保存後の7日目の実施例1は、保存後の5日目の比較例1と統計的な差異がなかった。MA値は、血小板の止血機能を総合的に評価する指標の一つであり、血小板の止血機能に比例する。この結果から分かるように、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、血小板の止血機能を保つことができる。さらに、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、その保存期間を従来の5日間から7日間に延長できることがわかった。
【0070】
実験例5
本実験例では、上記実施例1と比較例1で保存した血小板に対して、輸血後の寿命を統計分析した。保存後の3日目、5日目、および7日目に測定用のサンプルをそれぞれ適量採取し、マウスの尾静脈注射を行った。そして、注射から12時間後に尾の先端を切断し、末梢血を適量採取した。赤血球溶解をした後、Anti-human CD41-FITCとAnti-mouse CD41-APCにより標識し、FITC+/APC+の比率をフローサイトメトリーにて求めた。
【0071】
図5は、2グループの輸血後の血小板寿命の統計分析の結果を示す。その結果から分かるように、輸血後の時間の経過に伴い、実施例1と比較例1で保存した血小板の輸血後のFITC
+/APC
+比率は下げ、輸血後に同じ時間経過した実施例1のFITC
+/APC
+比率は、比較例1よりも高かった。また、保存後の7日目の実施例1は、保存後の5日目の比較例1と統計的な差異がなかった。この結果から分かるように、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、輸血後の血小板寿命を延長できる。さらに、生体外での保存対象とする血小板濃縮物の懸濁媒体におけるCO
2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、その保存期間を従来の5日間から7日間に延長できることがわかった。
【0072】
当業者であれば、生体外で血小板を保存する際にPSLsが発生することは周知的なことであり、具体的には、血小板において、CD62Pの発現、CD42bの脱落、PSの露出、グルコース消費、乳酸蓄積、ATPの産生の低下、止血機能の障害、及び輸血後の血小板寿命の短縮などの現象により表れた。発明者らの鋭意研究により、保存媒体におけるCO2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、保存した血小板の活性化、アポトーシスおよびCD42bの脱落を効果的に抑止できることを見出した。また、保存媒体におけるCO2の分圧を40mmHgまで上昇させることで、血小板の止血機能も大幅に改善され、輸血後の寿命も著しく延長された。
【0073】
以上により、本発明に開示された技術案は、血小板の生体外保存の条件を改善することにより、その保存効果を向上させながら、保存期間も延長させる新たなものであり、血小板の保存に重要な役割を果たす。
【0074】
上記の記載は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではない。当業者にとって、本発明に各種の変更や変化を有してもよい。本発明の精神および原理から逸脱しない限り、行った如何なる変更、均等置換または改良なども、本発明の保護範囲内に属する。