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特開2023-156969ポリ塩化ビニルフィルム及び加飾フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156969
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ポリ塩化ビニルフィルム及び加飾フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231018BHJP
   C08L 27/06 20060101ALI20231018BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20231018BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20231018BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20231018BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231018BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08L27/06
C08L33/14
C08K5/10
C08K5/3492
B32B27/00 E
B32B27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161032
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2022066194
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 秀明
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA24
4F071AA33X
4F071AA44
4F071AC10
4F071AC12
4F071AC19
4F071AE04
4F071AE05
4F071AF30
4F071AF34Y
4F071AF57
4F071AH03
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
4F100AH03A
4F100AH08A
4F100AK01C
4F100AK15A
4F100AK25A
4F100AK41A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA04A
4F100CA05A
4F100CA07A
4F100CB05B
4F100GB08
4F100GB81
4F100JL09
4F100JN01
4F100YY00A
4J002BD041
4J002BD051
4J002BD061
4J002BD071
4J002BD081
4J002BD091
4J002BG072
4J002EF038
4J002EF058
4J002EG048
4J002EH096
4J002EH146
4J002EU187
4J002FD026
4J002FD038
4J002FD057
4J002GC00
4J002GF00
4J002GL00
(57)【要約】
【課題】耐候性及び透明性に優れ、かつ吸水白化が抑制されたポリ塩化ビニルフィルム、並びに、該ポリ塩化ビニルフィルムを含む加飾フィルムを提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ基含有アクリル樹脂及び脂肪族亜鉛系安定剤を含有し、上記可塑剤は、脂肪族又は脂環式エステル化合物を含み、上記紫外線吸収剤は、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ上記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含み、上記紫外線吸収剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して0.5重量部以上、3重量部以下であり、厚さが50μm以上であり、かつJIS K 7373:2006に規定の黄色度YI値が5未満であるポリ塩化ビニルフィルム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ基含有アクリル樹脂及び脂肪族亜鉛系安定剤を含有し、
前記可塑剤は、脂肪族又は脂環式エステル化合物を含み、
前記紫外線吸収剤は、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ前記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含み、
前記紫外線吸収剤の含有量は、前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して0.5重量部以上、3重量部以下であり、
厚さが50μm以上であり、かつJIS K 7373:2006に規定の黄色度YI値が5未満であることを特徴とするポリ塩化ビニルフィルム。
【請求項2】
前記可塑剤の含有量は、前記ポリ塩化ビニル100重量部に対して10重量部以上、80重量部以下であることを特徴とする請求項1に記載のポリ塩化ビニルフィルム。
【請求項3】
前記紫外線吸収剤は、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニルフィルム。
【請求項4】
前記紫外線吸収剤は、2-[4,6-ビス(1,1′-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノールを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニルフィルム。
【請求項5】
前記脂肪族亜鉛系安定剤は、脂肪族バリウム-亜鉛系安定剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニルフィルム。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニルフィルムと、粘着剤層とを含むことを特徴とする加飾フィルム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のポリ塩化ビニルフィルムと、樹脂フィルムと、粘着剤層とをこの順位に備え、
前記ポリ塩化ビニルフィルムが最表面に配置されることを特徴とする加飾フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ塩化ビニルフィルム及び加飾フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装飾及び保護のために、基材の表面に加飾フィルムを貼り付けることが行われている。加飾フィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルムを含むものが挙げられる。ポリ塩化ビニルフィルムには、紫外線による劣化を防止するために紫外線吸収剤が配合されることがある(例えば、特許文献1~5参照)。
【0003】
特許文献1には、透明ベースフィルム層と、前記透明ベースフィルム層上に形成された印刷層と、前記印刷層上に形成されたオーバーレイフィルム層と、を備え、透明ベースフィルム層は、バリウム‐亜鉛系の熱安定剤、可塑剤、紫外線吸収剤を含む半硬質塩化ビニル樹脂フィルムを有し、前記オーバーレイフィルム層は、アクリル樹脂とアクリル樹脂系ゴムとの混合物に、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及びトリアジン系紫外線吸収剤のうち少なくとも一方を含む化粧シートが開示されている。
【0004】
特許文献2には、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、(A)バリウム化合物を0.1~5.0重量部、(B)亜鉛化合物の1種または2種を合計で0.1~5.0重量部、(C)ヒンダートアミン系光安定剤(HALS)0.1~1.0質量部、(D)紫外線吸収剤として、ベンゾフェノン系骨格化合物、ベンゾトリアゾール系骨格化合物、トリアジン系骨格化合物、シアノアクリレート系骨格化合物の1種又は2種以上を0.001~1.0質量部含有する屋外用塩化ビニル樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献3には、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、(A)成分として、有機酸亜鉛塩を0.01~10.0質量部、(B)成分として、β-ジケトン化合物を0.01~10.0質量部、及び(C)成分として、特定の分子構造を有するトリアジン系化合物の一種以上を0.01~20.0質量部含有する塩化ビニル系樹脂組成物が開示されている。
【0006】
特許文献4には、基材と、粘着剤層とを含む装飾シートであって、前記基材が、塩化ビニル樹脂と、特定の分子構造を有する紫外線吸収剤と、金属石鹸(a1)および有機錫化合物(a2)からなる群より選択される1種以上の化合物からなる熱安定剤(A)とを含み、さらに塩化ビニル樹脂100重量部に対して、上記特定の分子構造を有する紫外線吸収剤を0.5~20重量部、熱安定剤(A)を1~10重量部含むことを特徴とする装飾シートが開示されている。
【0007】
特許文献5には、基材層、透明性樹脂層及び表面保護層をこの順に有し、該基材層及び該透明性樹脂層の少なくとも一方の層が、少なくとも360~380nmに紫外線の吸収波長を有する樹脂を含む樹脂組成物により構成され、JIS K0115:2004に準拠して測定される、該表面保護層の波長360~380nmにおける吸光度A11が0.1超であり、該透明性樹脂層及び該表面保護層の波長360~380nmにおける吸光度A12が0.3超である、化粧シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-074752号公報
【特許文献2】特開2021-116383号公報
【特許文献3】特許第6626091号明細書
【特許文献4】特開2012-097247号公報
【特許文献5】国際公開第2020/067469号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
加飾フィルムは、基材に美観を付与するため、優れた透明性が要求される。また、屋外用途に加飾フィルムを用いる場合、長期使用に耐え得る耐候性が求められる。更に、壁面等の装飾に使用される場合、雨等により加飾フィルムが水を含むと白化することがあった。そのため、加飾フィルムに用いられるポリ塩化ビニルフィルムとして、優れた透明性、耐候性に加え、吸水白化が抑制されたポリ塩化ビニルフィルムが求められていた。
【0010】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐候性及び透明性に優れ、かつ吸水白化が抑制されたポリ塩化ビニルフィルム、並びに、該ポリ塩化ビニルフィルムを含む加飾フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一実施形態は、ポリ塩化ビニル、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ基含有アクリル樹脂及び脂肪族亜鉛系安定剤を含有し、上記可塑剤は、脂肪族又は脂環式エステル化合物を含み、上記紫外線吸収剤は、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ上記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含み、上記紫外線吸収剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して0.5重量部以上、3重量部以下であり、厚さが50μm以上であり、かつJIS K 7373:2006に規定の黄色度YI値が5未満であるポリ塩化ビニルフィルムである。
【0012】
(2)本発明のある実施形態は、上記(1)の構成に加え、上記可塑剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して10重量部以上、80重量部以下である。
【0013】
(3)本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記紫外線吸収剤は、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含む。
【0014】
(4)本発明のある実施形態は、上記(1)又は(2)の構成に加え、上記紫外線吸収剤は、2-[4,6-ビス(1,1′-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノールを含む。
【0015】
(5)本発明のある実施形態は、上記(1)~(4)のいずれかの構成に加え、上記脂肪族亜鉛系安定剤は、脂肪族バリウム-亜鉛系安定剤である。
【0016】
(6)本発明の他の一実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニルフィルムと、粘着剤層とを含む加飾フィルムである。
【0017】
(7)本発明の更に他の一実施形態は、上記(1)~(5)のいずれかに記載のポリ塩化ビニルフィルムと、樹脂フィルムと、粘着剤層とをこの順位に備え、上記ポリ塩化ビニルフィルムが最表面に配置される加飾フィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐候性及び透明性に優れ、かつ吸水白化が抑制されたポリ塩化ビニルフィルム、並びに、該ポリ塩化ビニルフィルムを含む加飾フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る加飾フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
図2】実施形態に係る加飾フィルムの他の一例を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[ポリ塩化ビニルフィルム]
本発明の一実施形態は、ポリ塩化ビニル、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ基含有アクリル樹脂及び脂肪族亜鉛系安定剤を含有し、上記可塑剤は、脂肪族又は脂環式エステル化合物を含み、上記紫外線吸収剤は、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ上記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含み、上記紫外線吸収剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して0.5重量部以上、3重量部以下であり、厚さが50μm以上であり、かつJIS K 7373:2006に規定の黄色度YI値が5未満であるポリ塩化ビニルフィルムである。
【0021】
<ポリ塩化ビニル(PVC)>
上記ポリ塩化ビニルとしては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、塩化ビニルと共重合可能な他の単量体と塩化ビニルとの共重合体を挙げることができる。上記共重合可能な他の単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;エチレン、プロピレン、スチレン等のオレフィン;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジブチル、フマル酸ジエチル等のフマル酸ジエステル;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル;塩化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル等を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも一方」を表す。
【0022】
上記共重合体における上記共重合可能な他の単量体の含有量は、通常、50重量%以下であり、好ましくは10重量%以下である。上記ポリ塩化ビニルのなかでも、寸法安定性に優れる点から、塩化ビニルの単独重合体が好ましい。
【0023】
上記ポリ塩化ビニルの平均重合度は800~1300が好ましい。なお、本発明において、ポリ塩化ビニルの平均重合度は、JIS K 6721「塩化ビニル系樹脂試験方法」に準拠して測定した平均重合度を意味する。上記平均重合度が1300を超えると、ポリ塩化ビニルフィルムの伸びが不十分となるおそれがある。
【0024】
<可塑剤>
上記可塑剤は、ポリ塩化ビニルフィルムに柔軟性を付与する添加物である。上記ポリ塩化ビニルフィルムは、可塑剤として脂肪族又は脂環式エステル化合物を含む。脂肪族又は脂環式エステル化合物は、ポリ塩化ビニルとの相溶性が良好である。脂肪族又は脂環式エステル化合物を含む可塑剤を用いることにより、耐候性を確保しつつ、伸びがよく破断し難い柔軟なフィルムとすることができる。その結果、フィルム状に成形することが容易であり、基材への貼り付け時においても、基材の表面形状への優れた追従性が得られる。
【0025】
上記可塑剤は、少なくとも脂肪族エステル化合物及び脂環式エステル化合物の少なくとも一方を含んでいればよく、両方を含んでもよい。また、ポリ塩化ビニルフィルムの分野で用いられる他の可塑剤を含んでもよいが、芳香族基を有する可塑剤を含まないことが好ましい。上記芳香族基を有する可塑剤を用いた場合には、ベンゼン環の共役二重結合の影響で光吸収が大きく、充分な耐候性が得られない。芳香族基を有する可塑剤としては、例えば、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソノニル(DINP)、テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOTP)等のフタル酸エステル等が挙げられる。
【0026】
上記脂肪族エステル化合物(非環式の脂肪族エステル)としては、アジピン酸エステル、アジピン酸とポリアルコールが結合したポリエステルが好適に用いられる。脂肪族エステル化合物の具体例としては、ADEKA社製のアデカサイザー(登録商標) PN‐7535、アデカサイザー PN‐7160等が挙げられる。
【0027】
上記脂環式エステル化合物としては、例えば、シクロヘキサン系カルボン酸エステルが好適に用いられる。脂環式エステル化合物の具体例としては、BASF社製のHEXAMOLL(登録商標)DINCH(ヘキサモールディンチ)等が挙げられる。上記HEXAMOLL DINCHは、ジ-イソノニル-シクロヘキサン-ジカルボキシレートを含む可塑剤である。
【0028】
上記可塑剤の数平均分子量は、420以上であることが好ましい。数平均分子量が420未満では、可塑剤がフィルム表面にブリードアウトするおそれがある。上記可塑剤の数平均分子量の上限は、例えば3000であってもよい。上記可塑剤の数平均分子量が3000を超えると、ポリ塩化ビニルフィルムが硬くなり、屋外でのフィルムの施工性が低下するおそれがある。上記可塑剤の数平均分子量のより好ましい上限は、2000である。
【0029】
上記可塑剤の数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ)により測定する。なお、測定条件は以下の通りである。
装置名:HLC‐8120(東ソー社製)
カラム:G7000HXL 7.8mmID×30cm 1本 GMHXL 7.8mmID×30cm 2本 G2500HXL 7.8mmID×30cm 1本(東ソー社製)
サンプル濃度:1.5mg/mlになるようにテトラヒドロフランで希釈
移動相溶媒:テトラヒドロフラン
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
【0030】
上記可塑剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して10重量部以上、80重量部以下であることが好ましい。上記含有量が10重量部未満であると、ポリ塩化ビニルフィルムが硬くなり過ぎることで、屋外でのフィルムの施工性が低下するおそれがある。上記含有量が80重量部を超えると、可塑剤がフィルム表面にブリードアウトする(浮き出る)おそれがある。上記含有量のより好ましい上限は50重量部であり、更に好ましい上限は30重量部である。
【0031】
上記ポリ塩化ビニル100重量部に対する、上記脂肪族又は脂環式エステル化合物の含有量は、10重量部以上、50重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることがより好ましい。可塑剤として脂肪族エステル化合物と脂環式エステル化合物とが併用される場合は、上記脂肪族又は脂環式エステル化合物の含有量は、脂肪族エステル化合物の含有量と脂環式エステル化合物の含有量の合計量を意味する。また、脂肪族又は脂環式エステル化合物以外の可塑剤を併用する場合、可塑剤全体に対する上記脂肪族エステル化合物の含有量は、80重量%以上、100重量%以下であってもよい。
【0032】
<紫外線吸収剤>
紫外線吸収剤は、ポリ塩化ビニルフィルム表面に当たる紫外線を吸収することで主に塩化ビニル樹脂の光劣化を抑制する作用を有する。上記紫外線吸収剤は、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ上記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含む。2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を含むことにより、広波長域で強い光吸収性能を有し、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤やベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた場合よりも耐候性を向上することが可能である。また、上記骨格に結合した水酸基が1つのみであることにより、立体障害が少なく、ポリ塩化ビニルに対する高い相溶性を確保することができる。ポリ塩化ビニルに対する相溶性が充分でないと、フィルムの透明性が低下したり、フィルム表面へのブリードアウト(析出)が発生し粘着特性やラミネート性の低下を引き起こしたりする。また、紫外線吸収剤として液体のものを用いると、ブリードアウトが発生するので、固体の化合物が用いられる。上記紫外線吸収剤の融点は、ポリ塩化ビニルフィルムの原料を溶融混練する際の温度よりも低いことが好ましく、具体的には、100~130℃であることが好ましい。また、上記紫外線吸収剤は、20℃で粉体状であることが好ましい。
【0033】
上記紫外線吸収剤は、下記化学式(1)で表される2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールを含むことが好ましい。下記化学式(1)で表される化合物を含む紫外線吸収剤の具体例としては、ADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)LA‐46等が挙げられる。
【0034】
【化1】
【0035】
また、上記紫外線吸収剤は、下記化学式(2)で表される2-[4,6-ビス(1,1′-ビフェニル-4-イル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-[(2-エチルヘキシル)オキシ]フェノールを含むことが好ましい。下記化学式(2)で表される化合物を含む紫外線吸収剤の具体例としては、BASFジャパン社製のTinuvin1600等が挙げられる。
【0036】
【化2】
【0037】
上記紫外線吸収剤の含有量は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.5重量部以上、3重量部以下である。なお、上記紫外線吸収剤の含有量とは、上記2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ前記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物を含む紫外線吸収剤の含有量である。上記含有量が0.5重量部未満であると、充分な耐候性が得られない。上記含有量が3重量部を超えると、紫外線吸収剤がポリ塩化ビニルフィルムの表面に移行し、ブリードアウトするおそれがある。ブリードアウトが生じると、ポリ塩化ビニルフィルムの透明性、及び、粘着特性が低下してしまう。上記紫外線吸収剤の含有量の好ましい下限は1重量部であり、好ましい上限は2重量部である。
【0038】
紫外線吸収剤として、上記2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ前記骨格に水酸基が1つのみ結合した分子構造を有する20℃で固体の化合物の他に、ポリ塩化ビニルフィルムの分野で用いられる紫外線吸収剤を用いてもよいが、耐候性をより向上させる観点から、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等を含まないことが好ましい。
【0039】
<エポキシ基含有アクリル樹脂>
ポリ塩化ビニルフィルムにエポキシ基含有アクリル樹脂を配合することにより、ポリ塩化ビニルフィルムの加工性を向上することができる。上記エポキシ基含有アクリル樹脂は、ポリ塩化ビニルの熱分解を抑制する熱安定剤として機能し、ポリ塩化ビニルフィルムの成膜時の耐熱性を向上させることができる。エポキシ基含有アクリル樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製のメタブレン(登録商標)P‐1901、日油社製のマープルーフ(登録商標)G-0150M等が挙げられる。ポリ塩化ビニルフィルムから溶出し難いことから、上記エポキシ基含有アクリル樹脂は、20℃で固体(粉体)のものが好ましい。
【0040】
上記エポキシ基含有アクリル樹脂の含有量は、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、0.5重量部以上、6重量部以下であることが好ましく、1重量部以上、4重量部以下であることがより好ましい。なお、ポリ塩化ビニルフィルムの耐候性や、ポリ塩化ビニルフィルムに対して粘着剤を塗工した後の粘着フィルム(加飾フィルム)の粘着特性が低下するおそれがあることから、エポキシ基含有大豆油(エポキシ化大豆油)を含有する場合には、ポリ塩化ビニル100重量部に対して、1重量部以下であることが好ましく、エポキシ基含有大豆油を含有しないことがより好ましい。
【0041】
<安定剤>
本実施形態に係るポリ塩化ビニルフィルムは、脂肪族亜鉛系安定剤を含有する。脂肪族亜鉛系安定剤を用いることで、フィルム加工時の耐熱性と、フィルム使用時の耐吸水白化性とを両立することができる。脂肪族亜鉛系安定剤は、分子中に少なくとも亜鉛イオンを含む脂肪族有機化合物を含む。上記脂肪族有機化合物は、例えば脂肪酸誘導体である。脂肪族亜鉛系安定剤は、分子中に芳香族基を有さないことが好ましい。
【0042】
ポリ塩化ビニルのような含ハロゲン樹脂は、溶融混練やフィルム成形の際に脱ハロゲン化水素に起因する熱分解を起こし易いため、熱安定剤を添加し、加工工程における劣化を抑制することがある。樹脂組成物の混錬時やフィルムの形成時の劣化、分解を抑制する添加物を安定剤ともいい、特に熱分解を抑制する添加剤を熱安定剤ともいう。ポリ塩化ビニルフィルムが熱安定剤を含有しない場合、製造時に塩化ビニル樹脂の熱劣化が進み、得られたポリ塩化ビニルフィルムの耐候性が低下する。熱安定剤を添加することで耐候性が向上する一方で、本発明者は、熱安定剤の種類によっては、ポリ塩化ビニルフィルムが吸水白化を起こす場合があることに着目し、耐候性と耐吸水白化性とを両立させるためには、特に脂肪族亜鉛系安定剤が好適であることを見出した。
【0043】
本発明者の検討によると、ポリ塩化ビニルフィルムを水に浸漬すると、溶融混練やフィルム成形などのフィルム加工時に、発生した塩化亜鉛が溶け出すことで、ポリ塩化ビニルにボイド(穴)が発生し、この穴が光を拡散することでヘイズが高くなり、白化として視認されると考えられる。吸水により生じた白化は、ポリ塩化ビニルフィルムを乾燥させても白く痕が残る不可逆的な現象である。脂肪族亜鉛系安定剤は、塩化亜鉛が発生し難いと考えられ、フィルム加工時の耐熱性と、フィルム使用時の耐吸水白化性とを両立することができる。なお、ポリ塩化ビニルフィルムの熱安定剤として芳香族系の熱安定剤が用いられることがあるが、芳香族系の熱安定剤は吸水白化が起こるため、本実施形態に係るポリ塩化ビニルフィルムに用いる熱安定剤としては適さない。
【0044】
上記脂肪族亜鉛系安定剤の含有量は、上記ポリ塩化ビニル100重量部に対して、3重量部以上、7重量部以下であることが好ましい。脂肪族亜鉛系安定剤の含有量を上記範囲とすることで、よりバランスよく耐候性と耐吸水白化性とを両立させることができる。上記脂肪族亜鉛系安定剤の含有量は、4重量部以上、6重量部以下であることがより好ましい。
【0045】
上記脂肪族亜鉛系安定剤中の亜鉛の含有量は、脂肪族亜鉛系安定剤全体に対して0.5重量部以上、2.5重量部以下であることが好ましい。亜鉛の含有量を0.5重量部以上、2.5重量部以下と低含有量にすることで、塩化亜鉛の生成が抑えられ、長期にわたってフィルムの吸水白化を抑制することができる。脂肪族亜鉛系安定剤全体に対する亜鉛の含有量は、0.75重量部以上、2.25重量部以下であることがより好ましい。
【0046】
上記脂肪族亜鉛系安定剤中に滑剤を含んでもよい。滑剤は、ポリ塩化ビニルを含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物の溶融混練時に、材料間の摩擦やポリ塩化ビニル系樹脂組成物と混練機等の金属面との摩擦により生じる摩擦熱の発生を抑制したり、フィルム成形機に対する金属剥離性等を向上させる目的で添加される添加物である。
【0047】
上記滑剤としては特に限定されないが、例えば、脂肪酸、脂肪族アルコール、脂肪酸アミド、脂肪族炭化水素、脂肪酸エステル、金属石鹸等が挙げられる。
【0048】
上記滑剤は、脂肪族亜鉛系安定剤全体に対して10重量部以上、22重量部以下であってもよい。滑剤の含有量を上記範囲とすることで、滑性が良化し加工中の発熱を抑えることで樹脂の熱分解を抑制でき、塩化亜鉛の生成を抑制できる。脂肪族亜鉛系安定剤全体に対する滑剤の含有量は、12~20重量部であることがより好ましく、13~15重量部であることが更に好ましい。
【0049】
上記脂肪族亜鉛系安定剤は、脂肪族バリウム-亜鉛系安定剤であることが好ましい。上記脂肪族バリウム-亜鉛系安定剤は、分子中にバリウムと亜鉛をと含む脂肪族有機化合物を含む。上記脂肪族亜鉛系安定剤の具体例としては、ADEKA社製のアデカスタブ(登録商標)AC‐724、ADEKA社製のQL‐1135等が挙げられる。
【0050】
ポリ塩化ビニルフィルムは、必要に応じて、着色剤(顔料)、滑剤、改質剤、充填剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、ポリ塩化ビニルに一般的に配合されるものを使用することができる。
【0051】
本実施形態に係るポリ塩化ビニルフィルムは、厚さが50μm以上であり、かつJIS K 7373:2006に規定の黄色度YI値が5未満である。本明細書中、ポリ塩化ビニルフィルムの黄色度YIは、ポリ塩化ビニルフィルムの背面に当て板として白色板を配置し、上記白色板とポリ塩化ビニルフィルムとの黄色度YI値の差をYI値とする。上記白色板としては、分光反射率付常用標準白色板を用いる。上記厚さが50μm未満であると、フィルム自体の強度が不足し、充分な耐久性及び耐候性が得られず、黄色度YI値が5以上であると、ポリ塩化ビニルフィルムは充分な透明性を有さない。上記ポリ塩化ビニルフィルムの厚さの上限は、例えば300μmである。上記厚さが300μmを超える場合には、フィルムのコシが強すぎて、基材への貼付けが困難になるおそれがある。また、上記厚さに合わせて紫外線吸収剤の量を多くしないと、耐候性を向上する効果が充分に得られなくなるおそれがあるが、紫外線吸収剤の量が多くなることで、紫外線吸収剤がポリ塩化ビニルフィルムの表面に移行し、ブリードアウトするおそれがある。上記厚さの好ましい下限は70μmであり、好ましい上限は250μmである。上記YI値は、4以下であることが好ましい。
【0052】
本実施形態に係るポリ塩化ビニルフィルムは、引張破断強度が10N/10mm以上であることが好ましく、20N/10mm以上であることがより好ましい。また、引張破断伸度が50%以上であることが好ましく、100%以上であることがより好ましい。上記引張破断強度及び引張破断伸度は、K6732に準じた方法で測定した値である。
【0053】
ポリ塩化ビニルフィルムの製造方法としては、例えば、バンバリーミキサー等を用いて、上述のポリ塩化ビニル、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ基含有アクリル樹脂及び脂肪族亜鉛系安定剤を加熱しながら混合(溶融混練)し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た後、該ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を成膜する方法が挙げられる。
【0054】
上記成膜方法としては、カレンダー成形、押出成形、射出成形等の従来公知の成形法を用いることができるが、厚さの薄いフィルムであっても優れた厚み精度で作製できることから、カレンダー成形が好適である。
【0055】
上記カレンダー加工に用いられるカレンダー形式は特に限定されず、例えば、逆L型、Z型、直立2本型、L型、傾斜3本型等、従来公知の形式を採用することができる。
【0056】
[加飾フィルム]
本発明の他の一実施形態は、上記ポリ塩化ビニルフィルムと、粘着剤層とを含む加飾フィルムである。図1は、実施形態に係る加飾フィルムの一例を模式的に示した断面図である。図1に示したように、加飾フィルム10は、ポリ塩化ビニルフィルム1の背面に粘着剤層2が積層されており、基材(図示せず)の表面に貼り付けることで、基材表面を保護したり、意匠を付与したりすることができる。ポリ塩化ビニルフィルム1としては、上述のポリ塩化ビニルフィルムを用いることができる。
【0057】
<粘着剤層>
粘着剤層2は、粘着機能(感圧接着性)を有するものであれば特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等の粘着剤を含有するものが挙げられる。なかでも、粘着性、加工性、耐熱老化性、耐湿老化性、耐候性に優れるとともに、比較的安価である点から、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
【0058】
粘着剤層2の厚さは特に限定されないが、10~60μmであることが好ましく、20~50μmであることがより好ましい。
【0059】
粘着剤層2は、各種コーティング装置、バーコート、ドクターブレード等の汎用の成膜装置や成膜方法を用いて、後述するセパレーター3上に粘着剤組成物を塗工し、その後乾燥することにより形成することができる。
【0060】
図示していないが、加飾フィルム10は、更に、印刷層、プライマー層等の他の層を有していてもよい。印刷層は、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、ロータリースクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、静電印刷等により行うことができる。
【0061】
ポリ塩化ビニルフィルム1は、加飾フィルム10のベースフィルムとして用いられてもよいし、トップフィルムとして用いられてもよいし、ベースフィルム及びトップフィルムとして用いられてもよい。耐候性、耐吸水白化性に優れることから、トップフィルムとして好適に用いることができる。
【0062】
ポリ塩化ビニルフィルム1をベースフィルムとして用いる場合、上記印刷層は、例えば、ポリ塩化ビニルフィルム1の粘着剤層2と反対側の表面に配置されてもよい。ポリ塩化ビニルフィルム1は透明性が高いことから、上記印刷層は、ポリ塩化ビニルフィルム1の粘着剤層2側(背面側)の表面に配置されてもよい。
【0063】
ポリ塩化ビニルフィルム1をトップフィルムとして用いる場合、ポリ塩化ビニルフィルム1は加飾フィルム10の最表面に配置されてもよい。ポリ塩化ビニルフィルム1は加飾フィルム10の最表面に配置することで、屋外で使用しても変色、白化が起こり難い加飾フィルムを得ることができる。ポリ塩化ビニルフィルム1をトップフィルムとして用いる場合、上記印刷層は、ポリ塩化ビニルフィルム1の粘着剤層2側の表面に配置される。
【0064】
図2は、実施形態に係る加飾フィルムの他の一例を模式的に示した断面図である。ポリ塩化ビニルフィルム1がトップフィルムとして用いられる場合、図2に示したように、加飾フィルム10は、ポリ塩化ビニルフィルム1と、樹脂フィルム(ベースフィルム)4と、粘着剤層2とをこの順に備え、ポリ塩化ビニルフィルム1が最表面に配置されてもよい。ポリ塩化ビニルフィルム1と樹脂フィルム4としては、他の粘着剤層を介さずに熱ラミネート等で積層してもよい。樹脂フィルム4のポリ塩化ビニルフィルム1と接する面に上記印刷層が設けられてもよい。
【0065】
樹脂フィルム4としては、特に限定されないが、ポリ塩化ビニルを含有するものであることが好ましい。樹脂フィルム4中のポリ塩化ビニルは、組成及び平均分子量等の点で、ポリ塩化ビニルフィルム1中の塩化ビニル樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
樹脂フィルム4は、可塑剤を含有することが好ましい。樹脂フィルム4中の可塑剤は、組成、含有量及び数平均分子量等の点で、ポリ塩化ビニルフィルム1中の可塑剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、ポリ塩化ビニルフィルム1及び樹脂フィルム4は、積層されることから、基本的には同じ硬さであることが好ましい。そのため、ポリ塩化ビニルフィルム1及び樹脂フィルム4は、厚さが同じであれば、可塑剤の含有量も同じであることが好ましい。
【0067】
樹脂フィルム4は、必要に応じて、ポリ塩化ビニルフィルム1で例示した安定剤、着色剤(顔料)、滑剤、改質剤、充填剤等の他の添加剤を含有してもよい。これらの添加剤としては、ポリ塩化ビニルに一般的に配合されるものを使用することができ、ポリ塩化ビニルフィルム1中の添加剤と同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、樹脂フィルム4は、ポリ塩化ビニルフィルム1とは異なり、紫外線吸収剤を含んでいなくてもよい。
【0068】
<セパレーター>
図1に示したように、加飾フィルム10の粘着剤層2側にセパレーター3が配置されてもよい。セパレーター3は、粘着剤層2の表面を保護し、使用時に剥離できるものであれば、特に限定されない。
【0069】
セパレーター3は、加飾フィルムの分野で通常使用される離型フィルムや離型紙を用いることができ、粘着剤層2と接する面に離型処理が施されていてもよい。上記離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム等の表面をシリコーン系、アルキド系、フッ素系剥離剤等でコーティングしたものが挙げられる。上記離型紙としては、例えば、上質紙の表面をシリコーン系、アルキド系、フッ素系剥離剤等でコーティングしたものが挙げられる。
【0070】
加飾フィルム10は、粘着剤層2を介して基材に貼り付けて用いることができる。上記基材の材質は、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂);鉄、銅、アルミニウム等の金属;合金等が挙げられる。
【0071】
実施形態に係る加飾フィルムの用途としては特に限定されないが、例えば、基材の表面の加飾、保護、広告等に用いることができる。また、上記加飾フィルムの表面に文字、図柄等を転写し、上記基材に貼り付けて、広告として用いることができる。基材としては、壁面に取り付ける化粧板(壁装材)、室内ドア、クローゼットやキッチンの扉、家具、フローリング等の内装材が挙げられる。実施形態に係る加飾フィルムは、耐候性、耐吸水白化性に優れることから、屋内外壁装用に好適に用いることができる。また、耐吸水白化性に優れることから、浴室、台所、洗面所、トイレ等の水回りの壁装にも好適に用いることができる。
【実施例0072】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0073】
下記実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
<可塑剤>
PN‐7535:ADEKA社製、「アデカサイザー PN‐7535」(アジピン酸系ポリエステル、数平均分子量2000)
PN‐7160:ADEKA社製、「アデカサイザー PN‐7160」(アジピン酸系ポリエステル、数平均分子量800)
DINCH:BASFジャパン社製、「HEXAMOLL(登録商標)DINCH」(脂環式エステル、数平均分子量430)
DINP:フタル酸ジイソノニル(ジェイ・プラス社製)
DOTP:テレフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(ジェイ・プラス社製)
【0074】
<紫外線吸収剤>
LA‐46:ADEKA社製、「アデカスタブ LA‐46」(トリアジン系紫外線吸収剤、上記化学式(1)の化合物、融点106~108℃)
チヌビン1600:BASFジャパン社製、「Tinuvin 1600」(トリアジン系紫外線吸収剤、上記化学式(2)の化合物、融点120~130℃)
LAF‐70:ADEKA社製、「アデカスタブ LAF‐70」(トリアジン系紫外線吸収剤、2,4,6-トリフェニル-1,3,5-トリアジン骨格を有し、かつ上記骨格に水酸基が3つ結合した分子構造を有する)
1413:ADEKA社製、「アデカスタブ 1413」(ベンゾフェノン系紫外線吸収剤)
LA‐29:ADEKA社製、「アデカスタブ LA‐29」(ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)
【0075】
<エポキシ化合物>
P‐1901:三菱ケミカル社製、「メタブレン P‐1901」(エポキシ基含有アクリル樹脂、粉体)
G‐0150M:日油社製、「マープルーフ G‐0150M」(エポキシ基含有アクリル樹脂、粉体)
O‐130P:ADEKA社製、「アデカサイザー O‐130P」(エポキシ化大豆油、液体)
W‐128S:DIC社製、「エポサイザー W‐128S」(エポキシ化脂肪酸イソブチル、液体)
上記、粉体(固体)、液体は、20℃における状態である。
【0076】
<熱安定剤>
熱安定剤の詳細は下記表1に示した通りである。
AC‐724:ADEKA社製、「アデカスタブ(登録商標)AC‐724」
AC‐258:ADEKA社製、「アデカスタブ(登録商標)AC‐258」
【0077】
【表1】
【0078】
<ポリ塩化ビニルフィルムの作製>
(実施例1)
平均重合度1000のポリ塩化ビニル100重量部に対して、表1に示した配合量で、可塑剤としてのアジピン酸系ポリエステルと、紫外線吸収剤としての2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノールと、エポキシ基含有アクリル樹脂と、熱安定剤としてのバリウム‐亜鉛系の熱安定剤とを添加し、ポリ塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られたポリ塩化ビニル系樹脂組成物を2軸ロールで180℃で10分間、溶融混練した後、カレンダー成形を行って厚さ70μmのシート状に成形し、ポリ塩化ビニルフィルムを作製した。なお、表2及び後述する表3~5において、配合量の単位「PHR」は、ポリ塩化ビニル100重量部に対する重量部数を表している。
【0079】
(実施例2~7)
実施例2~7は下記表2に示したように、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ化合物及び安定剤の種類、配合量又はポリ塩化ビニルフィルムの厚さを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニルフィルムを作製した。
【0080】
(実施例8及び9)
安定剤の含有量を下記表3のように変えたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8及び9のポリ塩化ビニルフィルムを作製した。
【0081】
(実施例10及び11)
安定剤の含有量を下記表3のように変えたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例10及び11のポリ塩化ビニルフィルムを作製した。
【0082】
(実施例12及び13)
エポキシ化合物の種類と含有量を下記表3のように変えたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例12及び13のポリ塩化ビニルフィルムを作製した。
【0083】
(比較例1~13)
比較例1~7は下記表4、比較例8~13は下記表5に示したように、可塑剤、紫外線吸収剤、エポキシ化合物及び安定剤の種類、配合量又はポリ塩化ビニルフィルムの厚さを変更したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリ塩化ビニルフィルムを作製した。
【0084】
<評価試験>
実施例1~13、比較例1~13で作製したポリ塩化ビニルフィルムについて、下記(1)~(4)の評価を行い、結果を下記表2~5に示した。
【0085】
(1)耐候性
各ポリ塩化ビニルフィルムをスガ試験機社製の促進耐候性試験機(メタルウェザーメーター)に投入した。上記光照射は、JIS K7350に準拠し、下記条件で行った。下記照射条件20時間と暗黒条件4時間の合計24時間を1サイクルとして実施し、500時間光照射した。
<測定条件>
・光源:メタルハイドロランプ(波長:300nm~400nm)
・照射条件
照度:100mW/cm
ブラックパネル温度:53℃
槽内湿度:50%
時間:20時間
降雨:10sec 15minに1回
・暗黒条件
照度:0mW/cm
槽内湿度:95%
時間:4時間
【0086】
光照射前、300時間照射後、500時間照射後の各ポリ塩化ビニルフィルムの色度(L*a*b*表色系におけるb*)を、色差計(日本電色工業社製、SE6000)を用いて測定した。照射前と300時間照射後との色差Δb、及び、照射前と500時間照射後との色差Δbを求め、下記評価基準に基づき変色度合いを判定した。
(判定基準)
◎ :Δb値の差が5以下
〇 :Δb値の差が5より大きく10以下
× :Δb値の差が10より大きく20以下
××:Δb値の差が20より大きい
【0087】
(2)透明性
各ポリ塩化ビニルフィルムの黄色度(YI値)は、色差計(日本電色工業社製、SE6000)を用いて、JIS K 7373:2006に準拠した方法で、白色板(分光反射率付常用標準白色板)を当て板として用いた反射測定方法により測定した。上記白色板とポリ塩化ビニルフィルムの黄色度の差を、ポリ塩化ビニルフィルムの黄色度(YI値)として、下記評価基準に基づき透明性を判定した。
(判定基準)
〇:YI値が5未満
×:YI値が5以上
【0088】
(3)ブリードアウト性
各ポリ塩化ビニルフィルムを温度50℃、湿度90%の環境下に1ヵ月間放置し、表面への噴き出し度合い(析出状態)を目視で確認した。
(判定基準)
〇:表面への噴き出しがなく、透明性が変わらなかった
×:表面への噴き出しが有り、透明性が低下した
【0089】
(4)耐吸水白化性
各ポリ塩化ビニルフィルムを40℃の水に4日間(96時間)浸漬し、96時間浸漬後に取り出し、24時間放置した各ポリ塩化ビニルフィルムのHAZE(%)を、HAZEメーター(日本電色工業社製、NDH5000)を用いて、JIS K7136に準拠した方法で測定した。浸漬前と96時間浸漬後とのHAZE差を求め、下記評価基準に基づき白化度合いを判定した。
(判定基準)
〇:HAZE差が3.0未満
△:HAZE差が3.0以上、7.0未満
×:HAZE差が7.0以上
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
表2及び表3に示したように、実施例1~13のポリ塩化ビニルフィルムは、耐候性及び透明性に優れ、高湿環境への放置後のブリードアウトがなく、更に、吸水白化も抑制されていた。
【0095】
表4及び表5に示したように、比較例1~11及び13は、安定剤として芳香族系のバリウム‐亜鉛系安定剤を用いており、いずれも耐吸水白化性が低かった。比較例12は、安定剤として脂肪族系のバリウム‐亜鉛系安定剤を用いており、耐吸水白化性は改善されたが、エポキシ化安定剤としてエポキシ化脂肪酸イソブチル(20℃で液体)を用いていることから、耐候性が不十分であった。
【0096】
可塑剤としてDINPを用いた比較例1、DOTPを用いた比較例8は、耐候性が低かった。可塑剤として脂肪族エステル化合物を用いた比較例2は、同じくベンゾフェノン系紫外線吸収剤を用いた比較例1より耐候性がやや改善したものの、不十分であった。
【0097】
比較例3は、上記化学式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤を用いているものの、含有量が少なく、耐候性が不十分であった。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を用いた比較例4は、300時間の耐候性評価は〇であるが、500時間の耐候性、透明性が低く、ブリードアウトが発生した。比較例5は上記化学式(2)のトリアジン系紫外線吸収剤を用い、比較例11は上記化学式(1)のトリアジン系紫外線吸収剤を用いているが、ともに配合量が多いため、耐候性は良好であるものの透明性が低く、ブリードアウトが発生した。特定のトリアジン骨格に水酸基が3つ結合したトリアジン系紫外線吸収剤を用いた比較例6は、耐候性は良好であるものの透明性が低く、ブリードアウトが発生した。
【0098】
エポキシ化合物としてエポキシ化大豆油(20℃で液体)を用いた比較例7は、透明性はよいものの、耐候性は不十分であり、ブリードアウトが発生した。エポキシ化合物を添加しなかった比較例9は、透明性がよく、ブリードアウトは発生しなかったが、耐候性が不十分であった。
【0099】
フィルムの厚さを40μmとした比較例10は、耐候性が不十分であった。
【0100】
実施例1、2について、JIS K6732に準じた方法で、各ポリ塩化ビニルフィルムを1号ダンベルで打ち抜いたサンプルを速度50mm/minで引っ張り、引張破断強度(N/10mm)及び引張破断伸度(%)を測定し、結果を下記表6に示した。
【0101】
【表6】
【0102】
表6に示したように、実施例1及び2のポリ塩化ビニルフィルムは、引張破断強度が20N/10mm以上と良好であり、引張破断伸度100%以上で伸びが良好であることが確認できた。
【符号の説明】
【0103】
1:ポリ塩化ビニルフィルム
2:粘着剤層
3:セパレーター
4:樹脂フィルム
10:加飾フィルム
図1
図2