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特開2023-156972ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体
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  • 特開-ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体 図1
  • 特開-ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156972
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/785 20220101AFI20231018BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20231018BHJP
   C08J 7/048 20200101ALI20231018BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231018BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20231018BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231018BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20231018BHJP
   C09D 129/04 20060101ALI20231018BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20231018BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20231018BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20231018BHJP
   C07C 229/08 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
C01F7/785
C08J5/18 CEX
C08J7/048
C08L101/00
C08K9/04
C09D7/61
C09D201/00
C09D129/04
C09C1/00
C09C3/08
C08L29/04 A
C07C229/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022181203
(22)【出願日】2022-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2022066617
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博行
(72)【発明者】
【氏名】岡田 淳
【テーマコード(参考)】
4F006
4F071
4G076
4H006
4J002
4J037
4J038
【Fターム(参考)】
4F006AA35
4F006AB20
4F006AB65
4F006AB72
4F006BA05
4F006CA07
4F006DA04
4F071AA29
4F071AB17
4F071AB21
4F071AC12
4F071AC12A
4F071AD02
4F071AE05
4F071AE19
4F071AE22
4F071AF08
4F071AF30
4F071AF34Y
4F071AG34
4F071AH04
4F071AH05
4F071AH19
4F071BA02
4F071BA07
4F071BB02
4F071BC02
4F071BC12
4G076AA10
4G076AA16
4G076AB04
4G076BA13
4G076BA24
4G076BA38
4G076BA43
4G076BA46
4G076BD01
4G076BD02
4G076CA08
4G076CA25
4G076CA26
4G076DA02
4G076DA30
4H006AA05
4H006AB12
4H006AB48
4H006AB99
4H006NB16
4J002AA001
4J002AB031
4J002BB221
4J002BE021
4J002BE031
4J002BG011
4J002BG131
4J002DE286
4J002FB086
4J002FB236
4J002FD016
4J002FD206
4J002GA00
4J002GB00
4J002GB04
4J002GG01
4J002GG02
4J037AA30
4J037CB09
4J037CB16
4J037EE11
4J037FF03
4J038CE011
4J038HA536
4J038KA08
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038NA03
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】本発明は、高いアスペクト比を備えつつも着色性を制御できるハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体を提供するものである。
【解決手段】本開示の複合体は、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸とを有している。上記複合体は、アスペクト比が85以上である。上記複合体は、Y.I.値が0~5である。Y.I.値は、黄色度を示す。上記複合体は、アミノ酸の含有量が、0質量%より大きく10.0質量%以下である。上記アミノ酸の含有量は、上記複合体の全質量に対する含有量である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペクト比が85以上である、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体であって、
前記複合体の黄色度を示すY.I.値が0~5であり、
前記複合体の全質量に対する前記アミノ酸の含有量が、0質量%より大きく10.0質量%以下であることを特徴とする、複合体。
【請求項2】
前記アミノ酸がグリシン類化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記ハイドロタルサイト類化合物が下記の式(1)で表されることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO ・・・(1)
(式(1)中、M2+は2価の金属カチオンであり、M3+は3価の金属カチオンであり、An-はn価のアニオンであり、Xは0.17<X<0.36を満たす数であり、nは1~6の整数であり、mは0<m<1.80を満たす数である。)
【請求項4】
前記複合体は、1次粒子の厚みが20nm以下であり、前記アスペクト比が100以上であることを特徴とする、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
請求項1に記載の複合体とポリマーとを含有する塗工液。
【請求項6】
前記ポリマーが水溶性ポリマーであることを特徴とする、請求項5に記載の塗工液。
【請求項7】
前記水溶性ポリマーがポリビニルアルコールであることを特徴とする、請求項6に記載の塗工液。
【請求項8】
請求項5に記載の塗工液によって形成された被覆層を有するフィルム。
【請求項9】
前記被覆層の厚みが1μm以上1000μm以下であることを特徴とする、請求項8に記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロタルサイト又はその焼成物を示すハイドロタルサイト類化合物は、イオン交換能を有し、例えば、樹脂に配合させることで、樹脂の劣化を抑制するなど様々な用途に使われる。この種のハイドロタルサイト類化合物としては、アミノ酸を利用して、よりアスペクト比を高くする方法が知られている(特許文献1及び非特許文献1)。特許文献1及び非特許文献1に開示された方法では、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/092453号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】NATURE COMMUNICATIONS(2019)10:2398, High gas barrier coating using non-toxic nanosheet dispersions for flexible food packaging film.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1及び非特許文献1に開示された方法では、ハイドロタルサイト類化合物のアスペクト比を高くすると着色され、複合体の利用用途が限られるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、より利用用途の高い複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を行った結果、高いアスペクト比を備えつつも着色性を制御できるハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体とすることで、より利用用途の高い複合体を形成し得ることを見出した。
本開示は、かかる知見に基づいて完成されたものであり、以下の各態様を含むものである。
【0008】
(第1の開示)
本第1の開示において、複合体は、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸とを有している。上記複合体は、アスペクト比が85以上である。上記複合体は、Y.I.値が0~5である。Y.I.値は、黄色度を示す。上記複合体は、アミノ酸の含有量が、0質量%より大きく10.0質量%以下である。上記アミノ酸の含有量は、上記複合体の全質量に対する含有量である。
【0009】
(第2の開示)
本第2の開示は、第1の開示において、上記アミノ酸がグリシン類化合物である。
【0010】
(第3の開示)
本第3の開示は、第1の開示又は第2の開示において、上記ハイドロタルサイト類化合物が下記の式(1)で表される。
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO ・・・(1)
(式(1)中において、M2+は、2価の金属カチオンである。式(1)中において、M3+は、3価の金属カチオンである。式(1)中において、An-はn価のアニオンである。式(1)中において、Xは、0.17<X<0.36を満たす数である。式(1)中において、nは、1~6の整数である。式(1)中において、mは、0<m<1.80を満たす数である。)
【0011】
(第4の開示)
本第4の開示は、第1の開示から第3の開示いずれかにおいて、上記複合体の1次粒子の厚みが20nm以下である。上記複合体は、アスペクト比が100以上である。
【0012】
(第5の開示)
本第5の開示は、塗工液である。上記塗工液は、第1の開示から第4の開示のいずれかに記載される上記複合体を含有する。上記塗工液は、ポリマーを含有する。
【0013】
(第6の開示)
本第6の開示は、第5の開示において、上記ポリマーが水溶性ポリマーである。
【0014】
(第7の開示)
本第7の開示は、第6の開示において、上記水溶性ポリマーがポリビニルアルコールである。
【0015】
(第8の開示)
本第8の開示は、フィルムである。上記フィルムは、被覆層を有する。
上記被覆層は、第5の開示から第7の開示のいずれかに記載される上記塗工液によって形成される。
【0016】
(第9の開示)
本第9の開示は、第8の開示において、上記被覆層の厚みが1μm以上1000μm以下である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、高いアスペクト比を有しつつ、着色性を制御することが可能なハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態の包装用フィルムを製造するフィルム製造装置の模式図を示す。
図2図2は、本発明の実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3の加熱工程後のスラリー溶液の写真並びに比較例4から比較例6の加熱工程において昇温させて100℃に到達した際のスラリー溶液の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体(以下、単に「本発明の複合体」等と称することがある。)の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において「ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体」とは、アミノ酸がハイドロタルサイト類化合物に化学修飾している状態のことを意味する。
【0020】
[複合体]
本発明の一実施形態では、複合体は、アスペクト比が85以上である、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体である。本実施形態の複合体は、該複合体の黄色度を示すY.I.値が0~5である。さらに、本実施形態の複合体は、該複合体の全質量に対する上記アミノ酸の含有量が、0質量%より大きく10.0質量%以下である。
【0021】
本実施形態の複合体は、高いアスペクト比を有していることで、被覆層を形成したときに、当該被覆層内において複数の複合体が被覆層の面方向に対して平行となるように配列し、優れたガスバリア性を発揮することができる。そして、本実施形態の複合体は、Y.I.値が5以下の特定の範囲内にあり、且つアミノ酸の含有量が10.0質量%以下という特定の範囲内にある。これにより、本実施形態の複合体は、黄褐色等の着色のない透明性の高い被覆層を形成することができる。このような透明性の高い被覆層が得られる作用機序については、いかなる理論にも拘束されるものではないが、次のように考えられる。
【0022】
まず、本実施形態の複合体は、前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られる複合金属酸化物と、剥離剤であるアミノ酸(例えば、グリシン等)とを混合してスラリー溶液を調製する溶液調製工程と、該溶液調製工程にて調製したスラリー溶液を加熱する加熱工程と、を有する製造方法によって得ることができる。かかる製造方法は、剥離剤としてアミノ酸を用いることによってハイドロタルサイト類化合物の層間剥離が生じるため、1次粒子の厚みの薄いハイドロタルサイト類化合物を得る点で有利である。しかしながら、ハイドロタルサイト類化合物を剥離させるための加熱工程では、アルカリ条件下でアミノ酸同士のペプチド結合が促進されて、ポリアミノ酸(例えば、ポリグリシン等のペプチド)が生成する。ポリグリシン等のペプチドは、長鎖になると黄変が生じ、分子鎖が長くなるほど黄色味が増すことが知られている。そのため、このような長鎖のペプチド(ポリペプチド)が含まれるハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体をポリマー等とともに塗工液に配合すると、得られる被覆層の透明性や美観を損なうことになる。
【0023】
本実施形態では、上述の溶液調製工程において、スラリー濃度及びアミノ酸濃度をそれぞれ特定の範囲内にすることで、アルカリ条件下においてもアミノ酸同士のペプチド結合の形成を抑制し、ポリアミノ酸(ペプチド)の生成を阻害することができる。その結果、得られる複合体の黄変が抑制できると考えられる。このようにして、アスペクト比が85以上という高いアスペクト比を有しながらも、黄色度を示すY.I.値が0~5であり、アミノ酸の含有量が0質量%より大きく10.0質量%以下である複合体を得ることができる。そして、このような複合体は、ポリマー等とともに塗工液に配合されて、高いガスバリア性と透明性とを兼ね備えた被覆層を形成することができる。このように、本実施形態の複合体は、透明性や美観を損なうことなく、ガスバリア性を必要とする多種多様の用途に使用することができる。例えば、本実施形態の複合体を含有する塗工液をフィルムに適用した場合には、透明性を損なうことなく高いガスバリア性をフィルムに付与することができる。
【0024】
なお、本実施形態の複合体は、上述の溶液調製工程において、前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られる複合金属酸化物を、アミノ酸の水溶液を用いて水和させている。アミノ酸の水溶液は、例えば、グリシン水溶液が挙げられる。水和の際に、溶液中のアミノ酸分子が陰イオンとしてハイドロタルサイト類化合物の層間に取り込まれることにより、ハイドロタルサイト類化合物の層間が剥離する。ハイドロタルサイト類化合物の層間が剥離することで、厚みの薄い粒子が形成される。厚みの薄い粒子は、加熱工程で加熱され、幅方向の粒子成長が促進されたハイドロタルサイト類化合物として複合体が形成される。言い換えれば、アスペクト比が高い粒子が形成される。このとき、ハイドロタルサイト類化合物の量に対してアミノ酸の量が少なすぎる場合は、十分に剥離されていないハイドロタルサイト類化合物粒子が残ってしまい、結果的に得られる複合体のアスペクト比が低くなる。すなわち、複合体は、アスペクト比が85未満となる。
【0025】
上述のとおり、本実施形態の複合体は、黄色度を示すY.I.値が0~5である。このY.I.値は、黄変等の着色に影響を及ぼす「ポリアミノ酸含量」の指標となる。このY.I.値が5を超えると、黄褐色等の着色が生じた状態となるため、このような着色した複合体を塗工液の一成分として用いて被覆層を形成すると、透明性や美観を損なう恐れがある。Y.I.値の好ましい範囲は、4以下であり、更に好ましくは3以下である。Y.I.値がこのような範囲内にあると、より透明性の高い被覆層を形成することができる。
【0026】
以下、本実施形態の複合体に含まれる各種成分について説明する。
【0027】
(ハイドロタルサイト類化合物)
本実施形態の複合体に含まれるハイドロタルサイト類化合物は特に限定されず、例えば、下記の式(1)で表されるハイドロタルサイト類化合物が挙げられる。
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO ・・・(1)
(式(1)中において、M2+は2価の金属カチオンであり、M3+は3価の金属カチオンであり、An-はn価のアニオンである。Xは0.17<X<0.36を満たす数である。nは1~6の整数であり、mは0<m<1.80を満たす数である。)
【0028】
上記式(1)において、好ましいM2+はMg2+であり、好ましいM3+はAl3+である。これらのハイドロタルサイト類化合物は、生体に対する安全性が高く、また、ポリプロピレンやポリエチレン等の樹脂との屈折率が近いことにより、このような樹脂からなる基材上に被覆層を形成したときに、透明性を維持しやすい。さらに、Mg/Alのモル比は、ハイドロタルサイト構造がより確実に得られるという点から、4~8の範囲内であることが好ましい。
【0029】
また、上記式(1)において、An-のアニオンの種類は特に限定されず、例えば、炭酸イオン(CO 2-)や水酸化物イオン(OH)などが挙げられる。
【0030】
なお、上述のハイドロタルサイト類化合物は、本実施形態の複合体に含まれるハイドロタルサイト類化合物であるが、本実施形態の複合体の製造に用いられる、原料としての前駆体ハイドロタルサイト類化合物についても同様である。後述するように、前駆体ハイドロタルサイト類化合物は、焼成して複合金属酸化物とした後、アミノ酸の水溶液と混合される。前駆体ハイドロタルサイト類化合物、すなわち、焼成前のハイドロタルサイト類化合物の焼成時に塩素ガスや二酸化窒素ガスのような腐食性ガスが発生しない等の点から、好ましくは炭酸イオンである。
【0031】
(アミノ酸)
一方、本実施形態の複合体に含まれるアミノ酸は特に限定されず、例えば、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸などの各種アミノ酸が挙げられる。更に具体的には、例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、セリン、グリシン、β-アラニン、β-アミノ酪酸、γ-アミノ酪酸、β-ロイシンなどが挙げられる。これらのアミノ酸は、1種類のアミノ酸が単独で含まれていても、2種類以上のアミノ酸が含まれていてもよい。さらに、これらのアミノ酸は、複数個のアミノ酸が結合してなる多量体(すなわち、ペプチド)の形態であってもよい。
【0032】
上記の各種アミノ酸の中でも、本実施形態の複合体に含まれるアミノ酸は、溶解度10g/100mLHO以上のアミノ酸が好ましく、特にグリシン類化合物が好ましい。このようなアミノ酸、特にグリシン類化合物は、高い誘電率を有するため、1次粒子の厚みの薄い複合体が得られる点で有利である。さらに、グリシンは、静菌作用を有していて、サプリメントや着色料、香料等にも利用されており、生体安全性の点からも有利である。
【0033】
なお、本明細書においては、アミノ酸と、アミノ酸の多量体とを含む物質を「アミノ酸類化合物」と称することがある。例えば、グリシンとポリグリシンとを含む物質は、「グリシン類化合物」と称することがある。
【0034】
さらに、本明細書において、「溶解度10g/100mLHO以上」とは、25℃の水100gに溶解する対象物(すなわち、アミノ酸)の質量が10g以上である、という溶解度を意味する。
【0035】
本実施形態の複合体において、当該複合体の全質量に対するアミノ酸の含有量は、0質量%より大きく10.0質量%以下である。アミノ酸の含有量は、高いガスバリア性と透明性とを兼ね備えた被覆層をより確実に形成し得るという点から、好ましくは1.0質量%以上8.0質量%以下であり、更に好ましくは1.5質量%以上6.0質量%以下である。
【0036】
また、本実施形態の複合体は、上述のとおり、85以上という高いアスペクト比を有している。これにより、本実施形態の複合体は、被覆層を形成したときに優れたガスバリア性を発揮することができる。複合体のアスペクト比は、より高いガスバリア性が得られる等の点から、好ましくは90以上であり、更に好ましくは100以上である。複合体のアスペクト比の上限は特に限定されないが、例えば500以下である。
【0037】
なお、本明細書において、複合体のアスペクト比は、層状構造を有する複合体の1次粒子の幅(直径)と厚みとの比であり、複合体の1次粒子の幅を厚みで割ることにより求めることができる。
【0038】
本実施形態の複合体は、85以上のアスペクト比を有するものであれば、1次粒子の厚みは特に限定されず、例えば、20nm以下の厚みが挙げられる。複合体は、被覆層を形成したときに、より優れたガスバリア性が得られる点から、複合体の1次粒子の厚みが20nm以下であり且つアスペクト比が100以上であることが好ましい。
【0039】
なお、複合体の1次粒子の厚みは、0.7nm~10nmの範囲内であることが更に好ましい。複合体の1次粒子の厚みが0.7nm以上10nm以下の範囲内にあると、ハイドロタルサイト類化合物が十分に剥離した状態となり、被覆層を形成したときに、より高いガスバリア性を発揮することができる。
【0040】
以下、本実施形態の複合体の製造方法について説明する。
【0041】
[複合体の製造方法]
本実施形態の複合体は、上述のとおり、剥離剤である所定濃度のアミノ酸の水溶液と、前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られる複合金属酸化物と、を混合してスラリー溶液を調製する溶液調製工程と;該溶液調製工程で得られたスラリー溶液を加熱する加熱工程と;を有する製造方法によって得ることができる。
【0042】
なお、溶液調製工程において、スラリー溶液のアミノ酸濃度は、得られる複合体の全質量に対するアミノ酸の含有量が0質量%より大きく50.0質量%以下の範囲内となる濃度であればよい。
【0043】
(溶液調製工程)
溶液調製工程では、まず、前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成して複合金属酸化物を得る。前駆体ハイドロタルサイト類化合物は、上述の複合体に含まれるハイドロタルサイト類化合物と同様のハイドロタルサイト類化合物を用いることができる。この前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成する際の焼成時間は特に限定されないが、例えば、焼成炉を用いて焼成する場合、0.1時間以上24時間以下の時間である。同様に焼成温度も特に限定されず、例えば、焼成炉を用いて焼成する場合、300℃以上700℃以下の温度である。前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成する際の焼成時間は、例えば、マイクロ波を用いて焼成する場合、1分以上12時間以下の時間である。マイクロ波を用いて焼成する場合、例えば、300℃以上700℃以下の温度とすることもできる。
【0044】
次いで、前駆体ハイドロタルサイト類化合物を焼成して得られた複合金属酸化物の粉末に、所定濃度のアミノ酸水溶液を添加して混合することで、スラリー溶液を得る。このとき、スラリー溶液のスラリー濃度は、30g/L未満であることが好ましい。通常、このような剥離剤を用いて得られるハイドロタルサイト類化合物は、1次粒子の厚みが数nmと薄いため、スラリー濃度が高いと剥離過程でゲル化してしまい、不均質なサンプルとなる場合がある。そこで、本実施形態の複合体の製造方法では、溶液調製工程におけるスラリー濃度を30g/L未満にすることで、ハイドロタルサイト類化合物の粒子間相互作用を低減させ、剥離過程におけるゲル化を抑制することができる。これにより、上記製造方法は、スラリー溶液のスラリー状態を維持することができるため、複合体を均一かつ効率よく生産することができる。
【0045】
なお、溶液調製工程におけるスラリー濃度は、生産性などの点から、10g/L~28g/Lの範囲内であることが更に好ましい。ここで、スラリー濃度は、次式により求めることができる。
スラリー濃度(g/L)=複合金属酸化物の重量(g)/スラリーの容量(L)
【0046】
溶液調製工程において、スラリー溶液のアミノ酸濃度は、0.6mol/L未満であることが好ましい。スラリー溶液のアミノ酸濃度がこのような範囲内にあると、アスペクト比が85以上であり且つY.I.値が0~5である複合体をより確実に得ることができる。すなわち、高いガスバリア性を有するとともに、黄褐色等の着色のない透明性の高い被覆層を形成し得る複合体を、より確実に得ることができる。なお、スラリー溶液のアミノ酸濃度は、0.2mol/L~0.5mol/Lの範囲内であることが更に好ましい。
【0047】
溶液調製工程において、スラリー溶液中のアミノ酸とハイドロタルサイト類化合物の3価の金属カチオンとのモル比、すなわち、アミノ酸/(M3+のモル比は、2~6の範囲内であることが好ましい。例えば、アミノ酸がグリシンであり、ハイドロタルサイト類化合物の3価の金属カチオンがAl3+である場合、グリシン/Alのモル比は、2~6の範囲内であることが好ましい。かかるモル比がこのような範囲内にあると、アスペクト比が85以上であり且つY.I.値が0~5である複合体、すなわち、高いガスバリア性を有するとともに、黄褐色等の着色のない透明性の高い被覆層を形成し得る複合体を、より確実に得ることができる。
【0048】
(加熱工程)
加熱工程では、上述の溶液調製工程で得られたスラリー溶液を加熱することで、ハイドロタルサイト類化合物の粒子成長が促進される。このとき、溶液中のアミノ酸分子が陰イオンとしてハイドロタルサイト類化合物の層間に取り込まれることにより、ハイドロタルサイト類化合物の層間が剥離し、厚みの薄い粒子(すなわち、アスペクト比が高い粒子)としてハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸との複合体が生成される。
【0049】
加熱工程においては、スラリー溶液を撹拌しながら加熱することが好ましい。撹拌手段は特に限定されないが、スラリー溶液の流動性を保ちつつ、均一に撹拌することができるものが好ましい。
【0050】
加熱工程において、加熱温度は特に限定されないが、20℃~250℃の範囲内の温度であることが好ましく、より確実にアミノ酸が変性することを抑制できるという観点から、特に好ましい加熱温度の上限は170℃である。加熱時間は特に限定されないが、1分~100時間の範囲内の時間であることが好ましい。また、加熱工程は、スラリー溶液の濃度が変動しにくい等の点から、閉鎖系で実施することが好ましい。
【0051】
(その他の工程)
加熱工程後の工程は、本発明の効果を阻害しない限り特に制限されない。加熱工程後の工程としては、例えば、加熱工程後のスラリー溶液をアルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム溶液)で洗浄する洗浄工程、該洗浄工程後に固液分離処理を行って固形物を得る固液分離工程、該固液分離工程で得られた固形物を乾燥させて複合体の粉末を得る乾燥工程、複合体の粒子の表面を各種表面処理剤で処理する表面処理工程などが挙げられる。
【0052】
なお、表面処理工程で用いられる表面処理剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、リン酸エステル類処理剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、アルミニウムカップリング剤、シリコーン系処理剤、ケイ酸及び水ガラス等を例示することができるが、この限りではない。特に好ましい表面処理剤は、オレイン酸、ステアリン酸、オクタン酸及びオクチル酸からなる群より選ばれる1種以上である。複合体の粒子を表面処理することにより、樹脂に添加、混練、分散する場合等において、1次粒子の凝集を防止できる。
【0053】
また、上記の洗浄工程の前に、加熱工程後のスラリーをイオン交換水で希釈する希釈工程を行ってもよく、また、上記の乾燥工程の代わりに、ポリマー溶液等と混合することで塗工液を調製する塗工液調製工程を行ってもよい。
【0054】
以上の製造方法によって得られる本実施形態の複合体は、上述のとおり、ポリマーの溶液と混合することで、塗工液を調製することができる。
【0055】
[塗工液]
本実施形態の複合体とポリマーとを含有する塗工液は、後述する基材上に塗工して乾燥させることで、被覆層を形成することができる。塗工液に含まれる複合体の濃度は特に限定されないが、基材への塗工性などの点から、20質量%以下の濃度が好ましく、10質量%以下の濃度がより好ましい。
【0056】
(ポリマー)
塗工液に含有されるポリマーは、水やアルコール等の溶媒に溶解された溶液の形態で用いられる。なお、溶液中のポリマー濃度は特に限定されないが、基材への塗工性などの点から、20質量%以下の濃度が好ましく、10質量%以下の濃度がより好ましい。
【0057】
塗工液に含有されるポリマーの種類は、特に限定されず、形成する被覆層やフィルムの用途等に応じた任意のポリマーを採用することができる。そのようなポリマーとしては、例えば、水溶性ポリマーなどが挙げられ、更に具体的には、ポリビニルアルコール、ビニルアルコールを含むコポリマー(例えば、ポリエチレンビニルアルコール等)、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらの水溶性ポリマーは、1種類のポリマーを単独で用いても、2種類以上のポリマーを併用してもよい。水溶性ポリマーを用いることで、基材と塗工層との分離がしやすく、リサイクル性が高くなるため、国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の達成に貢献することができる。
【0058】
これらの水溶性ポリマーの中でも、ガスバリア性、透明性及び塗工性などの点から、ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0059】
(その他の成分)
塗工液は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、上述の複合体及びポリマーのほかに、その他の添加成分を含有していてもよい。そのような添加成分としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、架橋剤、難燃剤などが挙げられる。これらの添加成分は、1種類の添加成分を単独で用いてもよく、2種類以上の添加成分を併用してもよい。
【0060】
[フィルム]
本実施形態の複合体とポリマーとを含有する塗工液は、基材上に塗工して乾燥させることで、被覆層を形成することができる。乾燥の条件は、例えば、常温から160℃の温度範囲で1秒から24時間の間で適宜に設定することができる。ここで、基材としてフィルム状の基材(以下、「フィルム状基材」と称することがある。)を用いた場合は、フィルム状基材が被覆層によって覆われた複層構造のフィルムを得ることができる。また、基材上の被覆層を剥離することにより、当該被覆層からなる単層構造のフィルムを得てもよい。このようにして得られる複層構造又は単層構造のフィルムは、例えば、各種包装用フィルムとして好適に用いることができる。
【0061】
包装用フィルムは、水溶性ポリマーを利用する場合、水溶性ポリマーの複層構造で形成してもよいし、水溶性ポリマーの単層構造で形成してもよい。このような包装用フィルムとしては、例えば、洗剤、農薬、若しくは医薬品の薬剤を包装するフィルムが挙げられる。薬剤の形態としては、例えば、粉末、固体、ゲル、液体が挙げられる。また、包装用フィルムは、魚餌を包装するフィルムに利用してもよい。さらに、包装用フィルムは、液体洗剤を包装するフィルムに利用してもよい。
【0062】
(基材)
フィルムの形成に用いられる基材は特に限定されず、形成するフィルムの用途等に応じた任意の基材を用いることができる。そのような基材としては、例えば、上述のフィルム状基材などが挙げられ、更に具体的には、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルフィルムなどの樹脂製フィルム;紙;織布や不織布、編布等の繊維シートなどが挙げられる。
【0063】
基材としてフィルム状基材を用いる場合、その厚さは特に限定されないが、例えば、0.01μm~250μmが好ましく、1μm~100μmの範囲内の厚さがより好ましい。なお、上述の塗工液によって形成される被覆層の厚さも特に限定されないが、例えば、0.01μm~100μmの範囲内の厚さである。
【0064】
本発明の複合体を用いて得られるフィルムは、例えば、食品包装用フィルム、飲料包装用フィルム、飲料用ボトル、医薬品包装フィルム、工業用ガスバリアフィルム、ガス分離用フィルム、紙製バリア材などの幅広い分野において、利用が可能である。
【0065】
また、本発明の複合体が含有されたフィルムは、袋状包装体に利用できる。包装体は、個装、内装、外装の他、内部に収容する包装対象物に応じた、任意の構成を採用することができる。
【0066】
本発明の複合体が含有されたフィルムを袋状包装体に利用する場合、袋状包装体は、例えば、包装体の外側に被覆層を有する構成にすることができる。被覆層は、複合体が含有された塗工液を包装体の外側に塗工し、乾燥させることによって形成することができる。包装体は、高いアスペクト比でガスバリア性を高めつつ、着色性が制御された構成にすることができる。特に、包装体は、例えば、包装体の外側に塗工液によって形成された被覆層を有することにより、包装対象物が液体又は液体を含んだものであっても塗工成分の溶出を防止することができる。
【0067】
さらに、本発明の複合体が含有されたフィルムを袋状包装体に利用する場合、袋状包袋体は、例えば、包装体の内側に被覆層を有する構成にすることができる。被覆層は、複合体が含有された塗工液を包装体の内側に塗工し、乾燥させることによって形成することができる。包装体は、例えば、包装体の内側に塗工液によって形成された被覆層を有することにより、包装体が摩擦や水濡れ等の外からの影響を受けた際にも、被覆層が損傷を受けることなく維持できる。その結果、包装体は、被覆層が有するガスバリア性等の効果が維持されるため、内容物の品質を保持することができる。なお、袋状包袋体は、例えば、包装体の内側に被覆層を有する構成の場合、包装体の融着面を除いて、被覆層を形成してもよい。また、袋状包袋体は、例えば、包装体の内側に被覆層を有する構成の場合、包装体の融着面にガスバリア性を持たせた接着層を形成させ、接着層を除いて、被覆層を形成してもよい。
【0068】
さらにまた、本発明の複合体が含有されたフィルムを袋状包装体に利用する場合、袋状包袋体は、例えば、包装体の内側と外側の両面に被覆層を有する構成にすることができる。袋状包袋体は、包装体の内側と外側の両面に塗工液によって形成された被覆層を有することにより、内側又は外側のいずれか一方に被覆層を有する場合と比較して、より高いガスバリア性を得ることができる。その結果、袋状包装体は、例えば、小麦粉、菓子類、茶葉、乾燥野菜などの低水分活性の内容物の品質維持、長期保存が可能となる。
【0069】
本発明の複合体が含有されたフィルムは、フィルム状基材の間に塗工液によって形成された被覆層を有する多層フィルムの構造に形成してもよい。本発明の複合体が含有された多層フィルムを袋状包装体に利用する場合、袋状包袋体は、例えば、一対の多層フィルムで包装対象物が内部に収納できるように構成できればよい。複合体が含有された多層フィルムを用いた袋状包装体は、フィルム状基材同士を接着することができるため、接着剤を別途使用する必要がなく構成できる。多層フィルムを用いた袋状包装体は、包装体の外側に塗工液によって形成された被覆層を有する袋状包装体、及び包装体内側に塗工液によって形成された被覆層を有する袋状包装体の利点を併せ持つことができる。
【0070】
複合体が含有されたフィルムが単層構造の場合、被覆層自体がフィルムとなる。単層構造のフィルムは、例えば、図1に示すフィルム製造装置100により製造することができる。
【0071】
フィルム製造装置100は、第1タンク1と、第2タンク2と、第3タンク3とを備えている。また、フィルム製造装置100は、第1塗工ドラム71と、第2塗工ドラム72と、流延ベルト8とを備えている。フィルム製造装置100は、第1塗工ドラム71と第2塗工ドラム72とが回転することにより、第1塗工ドラム71と第2塗工ドラム72との間を流延ベルト8が移動する。言い換えれば、流延ベルト8は、第1塗工ドラム71と第2塗工ドラム72との回転により、第1塗工ドラム71と第2塗工ドラム72との間を移動できるように構成されている。フィルム製造装置100は、第1塗工ドラム71と第2塗工ドラム72との間を移動する流延ベルト8に対向して、熱風10を送風できる乾燥装置9が配置されている。図1において、熱風10は破線で例示している。
【0072】
図1の第1タンク1は、複合体と水とを含むスラリーが貯蔵されている。第1タンク1には、スラリーを攪拌する第1撹拌機41が設けられている。第2タンク2は、ポリマーが貯蔵されている。第2タンク2には、ポリマーを攪拌する第2撹拌機42が設けられている。第1タンク1は、第1ポンプ51を介して、スラリーを第3タンク3に供給できるように構成されている。第2タンク2は、第2ポンプ52を介して、ポリマーを第3タンク3に供給できるように構成されている。第3タンク3は、第1タンク1から供給されたスラリーと、第2タンク2から供給されたポリマーとを混合した混合ポリマーを攪拌する第3撹拌機43が設けられている。
【0073】
第3タンク3は、第3ポンプ53を介して、混合ポリマーを流延ダイ6から流延ベルト8上に流延させる。流延ダイ6から流延させた混合ポリマーは、流延ベルト8と一緒に進行方向に移動し、流延ベルト8の幅方向且つ進行方向に配置される。流延ベルト8と一緒に進行方向に移動する混合ポリマーは、乾燥装置9からの熱風10で乾燥しフィルム12となる。なお、図1において、流延ベルト8と平行に記載された矢印は、流延ベルト8の進行方向を示す。
【0074】
フィルム製造装置100は、第2塗工ドラム72と隣接して、流延ベルト8上のフィルム12を剥離する剥離ロール11が設けられている。フィルム製造装置100は、剥離ロール11と対応して巻取装置13が設けられている。巻取装置13は、剥離ロール11で剥離されたフィルム12を巻き取る。なお、図1において、剥離ロール11で剥離されたフィルム12と平行に記載された矢印は、フィルム12の進行方向を示す。
【0075】
フィルム製造装置100は、例えば、流延ベルト8の代わりに、メッキ処理が施されたロールを支持体として用いることもできる。フィルムは、溶液流延法を用いた構成だけに限られず、溶融押出法を用いて形成することもできる。
【0076】
本実施形態の複合体が含有された被覆層を用いた包装フィルムは、例えば、加熱されたシールバーを用いて、フィルムの端部同士がシールされることで、内部に内容物を包装させた袋状包装体となる。フィルムのシール方法としては、例えば、ヒートシール、水シール、若しくは糊シールを行うことができる。
【0077】
包装フィルムは、例えば、1回分の液体洗剤を密封し、包装することができる。被覆層は、ポリビニルアルコールを用いた場合、水溶性の袋状包袋体となる。袋状包袋体は、ポリビニルアルコール由来の水溶性を有し、さらに本実施形態の複合体を含有することで、高い保香性を保持することもできる。また、袋状包袋体は、複合体を含有することで、強度を維持しつつ袋状包袋体の薄膜化を行うこともできる。水溶性の袋状包装体の場合、フィルムの厚みは、1μ以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。水溶性の袋状包装体の場合、フィルムの厚みは、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。なお、フィルムの厚みは、例えば、マイクロメータ、若しくは光干渉法を用いた膜厚計で測定することができる。
【0078】
塗工液は、例えば、界面活性剤、可塑剤、剥離剤、安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、増量剤、消泡剤、分散剤の少なくとも1種の助剤を含有することができる。助剤は、有機物質、若しくは無機物質の何れであってもよい。
【0079】
界面活性剤は、例えば、イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、高分子界面活性剤が挙げられる。イオン性界面活性剤は、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、例えば、ポリマー100質量部に対して、0.03質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましい。界面活性剤の含有量は、例えば、ポリマー100質量部に対して、2.5質量部以下が好ましく、1.5質量部以下がより好ましい。
【0080】
可塑剤は、例えば、グリセリン、ジグリセリン、グルコース、フルクトース、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0081】
塗工液は、ハイドロタルサイト類化合物とアミノ酸とを有する複合体の他に無機粒子を含んでいてもよい。複合体の他の無機粒子としては、例えば、シリカ、タルク、カオリン、雲母、グラファイト、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムが挙げられる。
【0082】
[フィルム以外の適用例]
また、本発明の複合体は、化粧品に添加する添加剤として利用できる。言い換えれば、本発明の一態様は、本発明の複合体を含む化粧品である。複合体は、酸素や水分等の特性分子の透過を抑制する。そのため、複合体を含む化粧品は、複合体の含有量を調整することで、酸素や水分等の特性分子の透過性を制御することができる。複合体は、特定の黄色度を示し、光を反射する。そのため、複合体を含んだ化粧品とすることで、光の反射特性を制御することが可能な化粧品を得ることができる。
【0083】
また、本発明の複合体は、塗料に添加する添加剤として利用できる。言い換えれば、本発明の一態様は、本発明の複合体を含む塗料である。複合体は、酸素や水蒸気等の特性分子の透過を抑制する。そのため、複合体を含む塗料は、複合体の含有量を調整することで、酸素や水蒸気等の特性分子の透過性を制御することができる。複合体は、ハイドロタルサイト類化合物に起因する難燃性を有する。そのため、複合体を含む塗料とすることで、燃焼を抑制することが可能な塗料を得ることができる。また、複合体は、特定の黄色度を示し、光を反射する。そのため、複合体を含んだ塗料とすることで、光の反射特性を制御することが可能な塗料を得ることができる。
【0084】
さらに、本発明の複合体は、樹脂に添加する樹脂添加剤として利用できる。本発明の一態様は、本発明の複合体を含む樹脂組成物である。複合体を樹脂添加剤として含有する樹脂組成物は、複合体を含まない樹脂組成物と比較して強度を高めることができる。言い換えれば、樹脂添加剤として複合体を用いることで、高いアスペクト比に起因する補強効果を有する樹脂組成物を得ることができる。また、複合体を樹脂添加剤として含有する樹脂組成物は、複合体の含有量により、複合体の黄色度に応じた所定の色に着色することができる。
【0085】
また、本発明の複合体を含む樹脂組成物は、適宜の用途に応じた成形が可能である。例えば押出成形により、チューブ状に成形できる。言い換えれば、本発明の一態様は、本発明の複合体を含むチューブである。複合体は、ヘリウムガス等の不活性ガス、酸素や水分等の特性分子の透過を抑制する。そのため、複合体を含むチューブは、複合体の含有量を調整することで、ヘリウムガス等の不活性ガス、酸素や水分等の特性分子の透過性を制御することができる。例えば、本発明の複合体を生体適合性の高い樹脂等に配合することで得られるチューブは、医療分野で用いられるガスバリア性等が要求される各種チューブとして利用できる。そのようなチューブの例として、医療用カテーテルが挙げられる。
【0086】
なお、本発明は、上述の実施形態や後述する実施例等に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、適宜組み合わせや代替、変更等が可能である。
【実施例0087】
以下、実施例及び比較例を例示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
実施例1
(前駆体ハイドロタルサイト類化合物の製造)
1L容積の反応槽にイオン交換水を入れ、ここに、撹拌しながら1.5mol/Lの塩化マグネシウム水溶液160mLと、1mol/Lの塩化アルミニウム水溶液120mLと、8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液90mL及び1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液60mLの混合溶液と、を同時に滴下して反応物を得た。反応時のpHは9.5であった。得られた反応物を水洗した後、イオン交換水を加えて再乳化スラリー700mLを得た。得られた再乳化スラリーを170℃で13時間水熱処理を行った。その後、得られた固形物を水洗し、105℃で16時間乾燥を行い、粉砕した。得られた粉末の化学式は、Mg0.67Al0.33(OH)(CO0.17・0.50HOで表されるハイドロタルサイト類化合物であった。このハイドロタルサイト類化合物を前駆体ハイドロタルサイト類化合物として、複合体の製造に用いた。
【0089】
(前駆体ハイドロタルサイト類化合物の焼成)
得られた前駆体ハイドロタルサイト類化合物を、電気炉にて450℃で12時間焼成を行い、焼成物(複合金属酸化物)を得た。
【0090】
(溶液調製工程)
得られた焼成物17.5gをガラスビーカーに投入し、2mol/Lのグリシン水溶液175mL(グリシン粉体26.3g相当)を添加し、均一になるまで撹拌した。この時、得られたスラリー溶液のグリシン/Alのモル比は5.26であった。その後、イオン交換水を加えて全量を700mLとし、均一になるまで再度撹拌した。このときのスラリー濃度は、25g/Lであった。また、このときのグリシン濃度は0.5mol/Lであった。
【0091】
(加熱工程)
続いて、スラリー溶液を700rpmで撹拌しながら、100℃で48時間水熱処理を行った。得られたサンプル(スラリー溶液)はスラリー状で白色であり、特段の臭気は感じられなかった。なお、加熱工程後のスラリー溶液の写真を図2に示す。
【0092】
(洗浄工程~乾燥工程)
次に、得られたスラリー溶液にイオン交換水を加えて全量を1750mLとし、撹拌機を用いて常温において400rpmで16時間撹拌した。スラリー溶液の撹拌を維持しつつ、該スラリー溶液に3.96mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液88.4mLを徐々に滴下した。得られたスラリー溶液を固液分離して固形物を得た。さらに、得られた固形物を60℃で16時間乾燥させることにより、実施例1のサンプル(複合体)を得た。得られたサンプルの特徴は、下記の表1に示す。
【0093】
実施例2
溶液調製工程において、焼成物を14.0g用いたこと、及び2mol/Lのグリシン水溶液を140mL(グリシン粉体21.0g相当)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は20g/Lであり、グリシン濃度は0.4mol/Lであった。
【0094】
実施例3
溶液調製工程において、焼成物を7.0g用いたこと、及び2mol/Lのグリシン水溶液を70mL(グリシン粉体10.5g相当)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は10g/Lであり、グリシン濃度は0.2mol/Lであった。
【0095】
比較例1
溶液調製工程において、焼成物を70.0g用いたこと、2mol/Lのグリシン水溶液を700mL(グリシン粉体105.1g相当)用いたこと、及び加熱工程において撹拌を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は100g/Lであり、グリシン濃度は2mol/Lであった。
【0096】
比較例2
溶液調製工程において、焼成物を70.0g用いたこと、2mol/Lのグリシン水溶液を266mL(グリシン粉体39.9g相当)用いたこと、及び加熱工程において撹拌を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例2のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は100g/Lであり、グリシン濃度は0.76mol/Lであった。
【0097】
比較例3
溶液調製工程において、焼成物を70.0g用いたこと、グリシン水溶液を用いなかったこと、加熱工程において撹拌を行わなかったこと、及び洗浄工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例3のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は100g/Lであり、グリシン濃度は0mol/Lであった。
【0098】
比較例4
溶液調製工程において、焼成物を35.0g用いたこと、及び2mol/Lのグリシン水溶液を350mL(グリシン粉体52.5g相当)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例4のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は50g/Lであり、グリシン濃度は1mol/Lであった。
【0099】
比較例5
溶液調製工程において、焼成物を28.0g用いたこと、及び2mol/Lのグリシン水溶液を280mL(グリシン粉体42.0g相当)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例5のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は40g/Lであり、グリシン濃度は0.8mol/Lであった。
【0100】
比較例6
溶液調製工程において、焼成物を21.0g用いたこと、及び2mol/Lのグリシン水溶液を210mL(グリシン粉体31.5g相当)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例6のサンプルを得た。溶液調製工程におけるスラリー溶液のスラリー濃度は30g/Lであり、グリシン濃度は0.6mol/Lであった。
【0101】
実施例4
(塗工液の作製)
実施例1のサンプル及びポリビニルアルコール(PVA)水溶液(シグマアルドリッチ社製、Mw67,000、Mowiol(登録商標) 8-88)の固形分濃度を測定し、実施例1のハイドロタルサイト類化合物とグリシン類化合物との複合体が3wt%、PVAが2wt%となるようにイオン交換水を加えて調整し、これを撹拌しながら混合することにより塗工液を得た。
【0102】
(フィルムの作製)
まず、フィルム状基材である、縦55mm×横105mmにカットしたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)、フィルム厚み50μm、品番タイプ#50-U483)を、自動塗工装置(テスター産業株式会社製、PI-1210型)のガラス板上に固定した。次に、ベーカーアプリケーター(ヨシミツ精機株式会社製、YBA型)を自動塗工装置のガラス板上にセットし、厚みが均一に50μmとなるように塗工液をPETフィルム上に塗工した。塗工した塗工液によって形成された被覆層を常温で16時間乾燥させることにより、実施例4のフィルムを得た。
【0103】
比較例7
実施例1のサンプルの代わりに比較例1のサンプルを用いたこと以外は、実施例4と同様にして、比較例7のフィルムを得た。
【0104】
比較例8
実施例1のサンプル(ハイドロタルサイト類化合物とグリシン類化合物との複合体)の代わりに、実施例1の「前駆体ハイドロタルサイト類化合物の製造」工程で得られた前駆体ハイドロタルサイト類化合物を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、比較例8のフィルムを得た。すなわち、比較例8のフィルムは、ハイドロタルサイト類化合物とグリシン類化合物との複合体の代わりに、未剥離のハイドロタルサイト類化合物(未剥離HT)を用いたものである。
【0105】
比較例9
塗工液を塗工しなかったこと以外は、実施例4と同様にして、比較例9のフィルムを得た。すなわち、比較例9のフィルムは、塗工液による被覆層が形成されていないPETフィルム(フィルム状基材)単体である。
【0106】
比較例10
PVAのみを含む塗工液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、比較例10のフィルムを得た。
【0107】
実施例5
(フィルムの作製)
フィルム状基材としてポリプロピレン(PP)フィルム(東洋紡株式会社製、パイレン(登録商標)フィルム-OT、フィルム厚み50μm、銘柄P2261)を用いたこと、及び厚みが均一に25μmとなるように塗工液を塗工したこと以外は、実施例4と同様にして、実施例5のフィルムを得た。
【0108】
実施例6
厚みが均一に12.5μmとなるように塗工液を塗工したこと以外は、実施例5と同様にして、実施例6のフィルムを得た。
【0109】
比較例11
塗工液を塗工しなかったこと以外は、実施例5と同様にして、比較例11のフィルムを得た。すなわち、比較例11のフィルムは、塗工液による被覆層が形成されていないPPフィルム(フィルム状基材)単体である。
【0110】
比較例12
PVAのみを含む塗工液を用いたこと以外は、実施例5と同様にして、比較例12のフィルムを得た。
【0111】
[各種測定]
実施例1から実施例3及び比較例1から比較例6のサンプルについて、下記に示す各種物性等の測定を行った。これらの測定結果は、下記の表1に示す。また、実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3の加熱工程後のスラリー溶液並びに比較例4から比較例6の加熱工程において昇温させて100℃に到達した際のスラリー溶液について写真を撮影した。この写真については、図2に示す。
【0112】
(加熱工程後の粘度測定)
スラリー溶液を25℃の温度に調節した後、B型粘度計(Brookfield社製、DV2T型)を用いて、同温度で粘度を測定した。
【0113】
(複合体の1次粒子の厚みとアスペクト比の測定)
走査型プローブ顕微鏡(株式会社島津製作所製、SPM-9700HT型)を用いて、1次粒子の幅と厚みを測定した。アスペクト比は、下記式により求めた。
(1次粒子のアスペクト比)=(1次粒子の幅)/(1次粒子の厚み)
なお、アスペクト比は、任意の1次粒子20個に対してそれぞれアスペクト比を算出し、その平均値をサンプルのアスペクト比とした。
【0114】
(グリシン類化合物含量の測定)
60℃で16時間乾燥させた粉末試料0.5gと、硫酸カリウム5gと、硫酸銅(II)5水和物2gとをよく混合してサンプルチューブに入れ、濃硫酸15mlを添加した。続いて、ケルダール分析システム(Buchi社製、KjelFlex K-360/K-425 SpeedDigester)を用いて、470℃で90分処理した。さらに、イオン交換水10mLと、30%水酸化ナトリウム水溶液と、2%ホウ酸水溶液40mLとを用いて、水蒸気蒸留を240秒間行った。得られた蒸留液にメチルレッドとメチレンブルーの混合指示薬を3滴滴下し、0.1mol/Lの塩酸水溶液を用いて蒸留液が紫色になるまで滴定した。粉末試料を用いないブランクについても同様に滴定を行い、下記の式(I)及び(II)より、グリシン類化合物含量を算出した。
(窒素N含量)[wt%]=((0.1mol/L塩酸水溶液のファクター)×(滴下量[ml]-ブランク[ml])×1.401[mg/ml])×100/粉末試料量[mg] ・・・(I)
(グリシン類化合物含量)[wt%]=(窒素N含量)[wt%]×(75.07[g/mol]/14.01[g/mol]) ・・・(II)
【0115】
(黄色度(Y.I.値)測定)
60℃で16時間乾燥させた粉末試料を粉砕し、目開き150μmの篩過網にて篩過した後、それをガラス製試薬瓶に0.2g入れた。続いて、10Φの見口及び試料台を用いて、予め標準白板で標準校正を行った測色色差計(日本電色工業株式会社製、Color meter ZE6000型)で測定を行った。合計3回の測定を実施し、各測定の前には試薬瓶を10回振とうした。得られる3回分の測定値から平均値を算出し、Yellow Index値(Y.I.値)を得た。
【0116】
[フィルムの評価]
実施例4から実施例6及び比較例7から比較例12のフィルムについて、下記に示す各種物性等の測定を行った。これらの測定結果は、下記の表2ないし表3に示す。
【0117】
(全光線透過率及びHaze(曇り度)測定)
フィルムの塗工終点より20mmをカットし、塗工面を入射光側にして曇り度計(日本電色工業株式会社製、NDH4000型)で測定を行い、全光線透過率及びHaze(曇り度)を得た。
【0118】
(酸素ガス透過度測定)
フィルムを直径約55mmの円形に切り抜き、ガス透過度測定装置(GTRテック株式会社製、GTR-11AET型)を用いて、ガス透過度を測定した。測定方法は、JIS K 7126-1 第1部(差圧法)に準じ、以下の条件で測定を行った。
・測定温度:23.0℃
・相対湿度:ゼロ
・透過面積:15.2cm
・測定ガス:酸素ガス
フィルムを透過した酸素ガスを、キャピラリガスクロマトグラフシステム(株式会社島津製作所製、GC-2014型)で分析することで、酸素ガス透過度を得た。なお、酸素ガス透過度測定では、フィルムのガス透過性に応じて、測定分析時間を適度に調整することができる。
【0119】
【表1】
【0120】
【表2】
【0121】
【表3】
【0122】
表1から表3及び図2に示すように、本発明の実施例のハイドロタルサイト類化合物とグリシン類化合物との複合体は、高いガスバリア性と透明性とを兼ね備えたフィルム(被覆層)を形成することができた。一方、比較例の複合体は、黄褐色に着色したり、ゲル化したりして、本発明のような高いガスバリア性と透明性とを兼ね備えたフィルムを形成することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の複合体、該複合体を含有する塗工液、及び該塗工液を用いて形成される被覆層を有するフィルムは、例えば、食品包装用フィルム、飲料包装用フィルム、飲料用ボトル、医薬品包装フィルム、工業用ガスバリアフィルム、ガス分離用フィルムに利用できる。また、その他、本発明の複合体、該複合体を含有する塗工液は、紙製バリア材、塗料、耐傷材、化粧品、添加剤などの幅広い分野で好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0124】
100 フィルム製造装置
1 第1タンク
2 第2タンク
3 第3タンク
41 第1撹拌機
42 第2撹拌機
43 第3撹拌機
51 第1ポンプ
52 第2ポンプ
53 第3ポンプ
6 流延ダイ
71 第1塗工ドラム
72 第2塗工ドラム
8 流延ベルト
9 乾燥装置
10 熱風
11 剥離ロール
12 フィルム
13 巻取装置
図1
図2