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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156974
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】鉄イオンを含む自己組み立て複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/02 20060101AFI20231018BHJP
   C07K 17/02 20060101ALI20231018BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231018BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20231018BHJP
   C12N 5/0775 20100101ALI20231018BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 38/02 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 31/7068 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 31/7072 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 31/708 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 31/7076 20060101ALI20231018BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20231018BHJP
   A61K 49/18 20060101ALI20231018BHJP
   A61L 27/02 20060101ALI20231018BHJP
   A61L 27/50 20060101ALI20231018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20231018BHJP
   A61P 29/00 20060101ALN20231018BHJP
   A61K 31/58 20060101ALN20231018BHJP
【FI】
A61K47/02
C07K17/02
C12N15/11 Z
C12N5/07
C12N5/0775
A61K47/26
A61K9/14
A61K9/70
A61K38/02
A61K31/7068
A61K31/7072
A61K31/708
A61K31/7076
A61K35/12
A61K49/18
A61L27/02
A61L27/50
A61P35/00
A61P29/00
A61K31/58
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183802
(22)【出願日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】10-2022-0046023
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0097806
(32)【優先日】2022-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】518107501
【氏名又は名称】コリア ユニバーシティ リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KOREA UNIVERSITY RESEARCH AND BUSINESS FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】145,Anam-ro,Seongbuk-gu,Seoul,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヒミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユ-リ
(72)【発明者】
【氏名】ペ,グン-ヒュ
(72)【発明者】
【氏名】リ,ソン-ギュ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ナ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ミン,スン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソン-ヨル
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C081
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BB03
4B065BB11
4B065BC41
4C076AA30
4C076AA71
4C076AA94
4C076BB11
4C076DD23
4C076DD23A
4C076DD23M
4C076DD69
4C076DD69A
4C076DD69M
4C076FF31
4C081AB03
4C081CE11
4C081CF21
4C081DA01
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA44
4C084MA05
4C084MA43
4C084NA12
4C085HH07
4C085JJ03
4C085KA28
4C085KB08
4C085KB59
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA12
4C086EA10
4C086EA17
4C086EA18
4C086GA16
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA43
4C086NA12
4C086ZB11
4C086ZB26
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB33
4C087BB63
4C087CA04
4C087MA05
4C087NA12
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA60
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体内に存在する自然物質を利用して既存の技術より毒性が少なく、無害で、かつ持続的な薬物、分子または有効成分等の放出を制御でき、薬物を標的器官に効率的に伝達され得る薬物伝達システムのための薬物伝達体を提供する。
【解決手段】鉄イオン、および1種以上のリガンドを含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己組み立てまたは自己分解され、前記リガンドと鉄イオンが自己組み立てされて少なくとも一部がラウンド形態である組み立て体を形成する、鉄イオンを含む自己組み立て複合体を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄イオン、および
1種以上のリガンドを含み、
前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己組み立てまたは自己分解され、
前記リガンドと鉄イオンが自己組み立てされて少なくとも一部がラウンド形態である組み立て体を形成する、
鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項2】
有効成分をさらに含み、
前記有効成分は、前記自己組み立て複合体に担持される、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項3】
前記有効成分は、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ドキソルビシン、薬物、タンパク質、有機酸、有機塩基、香料および染料のうち少なくともいずれか一つである、
請求項2に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項4】
前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己分解されることで排出され、
前記有効成分は、放出時間の間持続的に放出される、
請求項2に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項5】
前記放出時間は、1日~90日である、
請求項4に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項6】
前記リガンドは、
ホスフェートおよびホスホネートのうち少なくともいずれか一つを含む、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項7】
前記リガンドは、
AMP、ADP、ATP、TMP、TDP、TTP、CMP、CDP、CTP、GMP、GDP、GTP、UMP、UDP、UTP、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(Threose nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)、HNA(1,5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1,5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)およびCeNA(cyclohexenyl nucleic acid)のうち少なくともいずれか一つである、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項8】
前記リガンドは、AMPおよびATPが混合されたものであり、
前記AMPおよびATPが2:1~1:2のモル濃度比率で含まれる、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項9】
前記リガンドがADPおよびATPのうち少なくともいずれか一つを含む場合、前記自己組み立て複合体は親水性を有し、
前記リガンドがAMPを含む場合、前記自己組み立て複合体は疎水性を有する、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項10】
前記リガンドは、AMP、ADP、ADPとATPの混合リガンド、およびAMPとATPの混合リガンドのうち少なくともいずれか一つであり、
前記自己組み立て複合体が球形に備えられ、
複数の前記自己組み立て複合体が互いに付着されて2次元的プレート形状または3次元的集合体を形成する、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項11】
前記2次元的プレート形状は、前記磁場の印加時に回転する、
請求項10に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項12】
前記3次元的集合体は、集合体の内部に気孔を含む、
請求項10に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項13】
前記2次元的プレート形状および3次元的集合体のうち少なくともいずれか一つは、内部に細胞を担持して生体内に細胞を伝達する、
請求項10に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項14】
隣り合う前記リガンドの間のπ-π相互作用、および水素結合のうち少なくともいずれか一つ、または
鉄イオンと前記リガンドとの間の配位結合によって自己組み立て複合体を形成する、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項15】
前記鉄イオンおよびリガンドは、5:1~1:1のモル濃度比率で含まれる、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項16】
前記リガンドの種類によって自己分解速度が変わる、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項17】
1日~90日間自己分解される、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項18】
キレート化剤を含む条件、強酸条件および強塩基条件のうち少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進され、
前記強酸条件のpHは2~5であり、前記強塩基条件のpHは9~12である、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項19】
自己分解が促進されて0.5秒~1分間自己分解される、
請求項15に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項20】
前記自己組み立て複合体は、常磁性を有し、
前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほど磁気モーメントが大きく形成される、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項21】
生体内または生体外で前記自己組み立て複合体に磁場印加する場合、前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほどさらに速く拡散される、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【請求項22】
物質伝達キャリア、細胞培養培地、T2造影剤および人工骨の材料のうち少なくともいずれか一つとして使用される、
請求項1に記載の鉄イオンを含む自己組み立て複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄イオンを含む自己組み立て複合体に関し、より詳細には、鉄イオンおよびリガンドが可逆的に自己組み立ておよび自己分解される自己組み立て複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物伝達システムとは、既存の薬物の副作用を最小化し、薬物が有している効能および効果を最適化させ、疾病治癒に必要な最小の薬物を効果的に伝達するための剤形と定義され得る。
【0003】
薬物伝達システムの分野は、低コストと短い開発期間で既存の薬物の新たな剤形開発を可能とすることで次世代のバイオ産業の核心と認識されており、多様な機能と性能を有する生体高分子および合成高分子を利用して新たな薬物伝達体を開発する研究が盛んになっている。
【0004】
既存の薬物伝達体は、人体の内部に存在しない合成物質であるジホスフェートと金属イオンを利用した自己組み立て複合体または体内毒性問題があるFe等、人工的に合成された物質を利用する。
【0005】
上の既存の薬物伝達システムは、人体内に存在しない物質を使用するので毒性問題が存在し、成長因子、タンパク質等の伝達で価格競争力が保障されない場合があり、持続的な薬物放出が制御されず、短期間に限定されている。
【0006】
また、体内に薬物伝達体が伝達して所望の標的に長期間あるいは所望の期間の間薬物を伝達して薬物による副作用を減らし、効能を最大値に引き上げなければならない必要がある。
【0007】
従って、体内に存在する自然物質を利用して既存の技術より毒性が少なく、無害で、かつ持続的な薬物、分子または有効成分等の放出を制御でき、薬物を標的器官に効率的に伝達され得る薬物伝達システムを開発する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、鉄イオンを含む自己組み立て複合体を提供するためのことである。前記自己組み立て複合体は、可逆的に自己組み立ておよび自己分解され、生体内に有効成分を伝達できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は、鉄イオン、および1種以上のリガンドを含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己組み立てまたは自己分解され、前記リガンドと鉄イオンが自己組み立てされて少なくとも一部がラウンド形態である組み立て体を形成する、鉄イオンを含む自己組み立て複合体を含むことができる。
【0010】
一実施例において、有効成分をさらに含み、前記有効成分は、前記自己組み立て複合体に担持されるものであってよい。
【0011】
一実施例において、前記有効成分は、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ドキソルビシン、薬物、タンパク質、有機酸、有機塩基、香料および染料のうち少なくともいずれか一つであってよい。
【0012】
一実施例において、前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己分解されることで排出され、前記有効成分は、放出時間の間持続的に放出されるものであってよい。
【0013】
一実施例において、前記放出時間は、1日~940日であるものであってよい。
【0014】
一実施例において、前記リガンドは、ホスフェートおよびホスホネートのうち少なくともいずれか一つを含むものであってよい。
【0015】
一実施例において、前記リガンドは、AMP、ADP、ATP、TMP、TDP、TTP、CMP、CDP、CTP、GMP、GDP、GTP、UMP、UDP、UTP、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(Threose nucleic acid)、GNA(glycol nucleic acid)、HNA(1,5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1,5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)およびCeNA(cyclohexenyl nucleic acid)のうち少なくともいずれか一つであってよい。
【0016】
一実施例において、前記リガンドは、AMPおよびATPが混合されたものであり、前記AMPおよびATPが2:1~1:2のモル濃度比率で含まれるものであってよい。
【0017】
一実施例において、前記リガンドがADPおよびATPのうち少なくともいずれか一つを含む場合、前記自己組み立て複合体は親水性を有し、前記リガンドがAMPを含む場合、前記自己組み立て複合体は疎水性を有するものであってよい。
【0018】
一実施例において、前記リガンドは、AMP、ADP、ADPとATPの混合リガンド、およびAMPとATPの混合リガンドのうち少なくともいずれか一つであり、前記自己組み立て複合体が球形に備えられ、複数の前記自己組み立て複合体が互いに付着されて2次元的プレート構造または3次元的集合体を形成するものであってよい。
【0019】
一実施例において、前記2次元的プレート形状は、前記磁場の印加時に回転するものであってよい。
【0020】
一実施例において、前記3次元的集合体は、集合体の内部に気孔を含むものであってよい。
【0021】
一実施例において、前記2次元的プレート形状および3次元的集合体のうち少なくともいずれか一つは、内部に細胞を担持して生体内に細胞を伝達するものであってよい。
【0022】
一実施例において、隣り合う前記リガンドの間のπ-π相互作用、および水素結合のうち少なくともいずれか一つ、または鉄イオンと前記リガンドとの間の配位結合によって自己組み立て複合体を形成するものであってよい。
【0023】
一実施例において、前記鉄イオンおよびリガンドは、5:1~1:1のモル濃度比率で含まれるものであってよい。
【0024】
一実施例において、前記リガンドの種類によって自己分解速度が変わるものであってよい。
【0025】
一実施例において、1日~90日間自己分解されるものであってよい。
【0026】
一実施例において、キレート化剤を含む条件、強酸条件および強塩基条件のうち少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進され、前記強酸条件のpHは2~5であり、前記強塩基条件のpHは9~12であるものであってよい。
【0027】
一実施例において、自己分解が促進されて0.5秒~1分間自己分解されるものであってよい。
【0028】
一実施例において、前記自己組み立て複合体は常磁性を有し、前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほど磁気モーメントが大きく形成されるものであってよい。
【0029】
一実施例において、生体内および生体外で前記自己組み立て複合体に磁場印加する場合、前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほどさらに速く拡散されるものであってよい。
【0030】
一実施例において、物質伝達キャリア、細胞培養培地、T2造影剤および人工骨の材料のうち少なくともいずれか一つとして使用されるものであってよい。
【発明の効果】
【0031】
以上、検討したような本発明によれば、鉄イオンを含む自己組み立て複合体を提供することができる。前記自己組み立て複合体は、可逆的に自己組み立ておよび自己分解され、生体内に有効成分を伝達できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の一実施例によってFe-ATP自己組み立て複合体が形成されることを模式的に示したものである。
図2】それぞれFe-ATP、Fe-ADPおよびFe-AMP自己組み立て複合体の特性を分析した結果である。
図3】それぞれFe-ATP、Fe-ADPおよびFe-AMP自己組み立て複合体の特性を分析した結果である。
図4】それぞれFe-ATP、Fe-ADPおよびFe-AMP自己組み立て複合体の特性を分析した結果である。
図5】鉄イオンとATPが自己組み立てされることを観察したイメージである。
図6】EDTAがある条件で形成された自己組み立て複合体が分解されることを観察した結果である。
図7】鉄イオンとATPの濃度を異なるようにして自己組み立て複合体の大きさを調節しながら自己組み立て体を製造し、特性を分析した結果である。
図8】Fe-ADPでの自己組み立て複合体の可逆的磁気特性(常磁性)を示すグラフである。
図9】自己組み立て複合体が永久磁石が印加される方向に移動することを示すものである。
図10】2Dプレートを形成した自己組み立て複合体が磁場の印加によって回転することを示したものである。
図11】3Dスキャフォールドを形成した自己組み立て複合体が磁場の印加によって移動することを示したものである。
図12】磁場印加時に自己組み立て複合体の大きさによる移動速度差を示すものである。
図13】Fe-ATP自己組み立て体のMRI造影剤としての性能を確認する実験を進行した結果である。
図14】生体内に自己組み立て体を注入した後、生体外部で磁場を印加して自己組み立て体の磁気的特性を確認した結果である。
図15】生体内/外でEDTA条件で自己組み立て体が自己分解されることを実験した結果である。
図16】生体内/外でEDTA条件で自己組み立て体が自己分解されることを実験した結果である。
図17】2Dプレートを形成した自己組み立て複合体がEDTA条件で自己分解されることを実験した結果である。
図18】鉄イオン、ATPおよびドキソルビシン(DOX)が自己組み立てされることを示す模式図である。
図19】自己組み立て複合体にドキソルビシンを担持した後、放出時間を観察した結果である。
図20】鉄イオン、ATPおよび薬物分子(トリアムシノロンアセトニド)が自己組み立てされることを示す模式図である。
図21】自己組み立て複合体に薬物分子(トリアムシノロンアセトニド)を担持した後、放出時間を観察した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明および図面に含まれている。
【0034】
本発明の利点および特徴、そして、それらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述されている実施例を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下において開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され得、以下の説明において別に明示されない限り、本発明に成分、反応条件、成分の含量を表現する全ての数字、値および/または表現は、このような数字が本質的に異なるものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、全ての場合、「約」という用語により修飾されるものと理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、別に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までの全ての値を含む。さらには、このような範囲が整数を指す場合、別に指摘されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含む全ての整数が含まれる。
【0035】
また、本発明において範囲が変数について記載される場合、前記変数は、前記範囲の記載された終了点を含む記載された範囲内の全ての値を含むものと理解されるだろう。例えば、「5~10」の範囲は、5、6、7、8、9、および10の値だけではなく、6~10、7~10、6~9、7~9等の任意の下位範囲を含み、5.5、6.5、7.5、5.5~8.5および6.5~9等のような記載された範囲の範疇に妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解されるだろう。例えば、「10%~30%」の範囲は、10%、11%、12%、13%等の値と30%までを含む全ての整数だけではなく、10%~15%、12%~18%、20%~30%等の任意の下位範囲を含み、10.5%、15.5%、25.5%等のように記載された範囲の範疇内の妥当な整数の間の任意の値も含むものと理解されるだろう。
【0036】
図1は、それぞれ本発明の一実施例による鉄を含む自己組み立て複合体を模式的に示した図である。
【0037】
図1は、鉄イオン(Fe2+)およびATP(Adenosine triphosphate)が自己組み立ておよび自己分解される形態を模式的に示したものである。前記鉄イオンは、ATPのリン酸基部位および水と配位結合して金属錯体を形成することができる。また、前記アデニン部位の芳香族環は、π-π相互作用を形成することができる。また、前記アデニン部位の窒素と前記鉄イオンに結合した水分子は、水素結合を形成することができる。
【0038】
前記自己組み立て複合体は、このように配位結合、π-π相互作用および水素結合を含んで形成され得、これらのうち少なくともいずれか一つの結合によって複合体が形成され得る。
【0039】
本発明の一側面によれば、本発明の実施例は、鉄イオン、および1種以上のリガンドを含み、前記リガンドと鉄イオンが可逆的に自己組み立てまたは自己分解され、前記リガンドと鉄イオンが自己組み立てされて少なくとも一部がラウンド形態である組み立て体を形成する、鉄イオンを含む自己組み立て複合体を含むことができる。
【0040】
前記自己組み立て複合体は、有効成分をさらに含むことができ、前記有効成分は、前記自己組み立て複合体に担持されるものであってよい。前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己組み立てされる時に前記自己組み立て複合体の内部に担持されて備えられ得る。
【0041】
前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己分解される時に排出され得る。従って、前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己分解される時間を調節することで放出される時間および速度を調節できる。前記自己組み立て複合体は、リガンドの種類によって自己分解速度が異なり得、前記自己組み立て複合体は、表面から一定速度で順次に自己分解され得る。従って、前記有効成分は、前記自己組み立て複合体が自己分解される時間の間持続的に放出され得る。即ち、前記有効成分は、放出時間の間持続的に放出されるものであってよい。
【0042】
前記自己組み立て複合体が自己分解される時間、即ち、放出時間は、1日~90日であるものであってよい。ただし、前記自己組み立て複合体の自己分解が促進される環境では、前記放出時間は、0.5秒~1分であってよい。また、前記自己組み立て複合体の自己分解が促進される環境では、前記放出時間は、0.5秒~10秒であってよい。
【0043】
前記有効成分は、前記自己組み立て複合体に担持されて自己分解時に放出され得る物質であってよい。例えば、前記有効成分は、アデノシン、グアノシン、ウリジン、シチジン、ドキソルビシン、薬物、タンパク質、有機酸、有機塩基、香料および染料のうち少なくともいずれか一つであってよい。前記薬物は、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)であってよい。
【0044】
前記リガンドは、前記鉄イオンと配位結合(coordination bond)して自己組み立てされ得る物質であってよい。前記リガンドは、前記リガンドと結合して金属錯化合物を形成することができる。
【0045】
前記リガンドは、ホスフェートおよびホスホネートのうち少なくともいずれか一つを含むものであってよい。前記ホスフェート(phosphate)またはホスホネート(phosphonate)は、前記鉄イオンと配位結合できる部分であってよい。
【0046】
例えば、前記リガンドは、AMP(アデノシン一リン酸、Adenosine monophosphate)、ADP(アデノシン二リン酸、Adenosine diphosphate)、ATP(アデノシン三リン酸、Adenosine triphosphate)、TMP(チミジン一リン酸、Thymidine monophosphate)、TDP(チミジン二リン酸、Thymidine diphosphate)、TTP(チミジン三リン酸、Thymidine triphosphate)、CMP(シチジン一リン酸、Cytidine monophosphate)、CDP(シチジン二リン酸、Cytidine diphosphate)、CTP(シチジン三リン酸、Cytidine triphosphate)、GMP(グアノシン一リン酸、Guanosine monophosphate)、GDP(グアノシン二リン酸、Guanosine diphosphate)、GTP(グアノシン三リン酸、Guanosine triphosphate)、UMP(ウリジン一リン酸、Uridine monophosphate)、UDP(ウリジン二リン酸、Uridine diphosphate)、UTP(ウリジン三リン酸、Uridine triphosphate)、DNA、RNA、AEP(2-アミノエチルホスホン酸、2-aminoethylphosphonic acid)、TNA(トレオース核酸、Threose nucleic acid)、GNA(グリコール核酸、glycol nucleic acid)、HNA(1,5-アンヒドロヘキシトール核酸、1,5-anhydrohexitol nucleic acid)、ANA(1,5-アンヒドロアトリトール核酸、1,5-anhydroatritol nucleic acid)、FANA(2’-デオキシ-2’-フルオロアラビノ核酸、2’-deoxy-2’-fluoroarabino nucleic acid)およびCeNA(シクロヘキシニル核酸、cyclohexenyl nucleic acid)のうち少なくともいずれか一つであるものであってよい。
【0047】
前記鉄イオンは、例えば、前記リガンドのリン酸基部位等、電子が豊富な部位と配位結合して金属錯化合物を形成することができる。
【0048】
前記自己組み立て複合体は、少なくとも一部がラウンド形態に形成され得る。または、前記自己組み立て複合体は、球形に形成され得る。前記自己組み立て複合体は、複数個の前記鉄イオンおよびリガンドが結合して形成されるものであってよい。前記鉄イオンおよびリガンドは、5:1~1:1のモル濃度比率で結合でき、好ましくは、1:1のモル濃度比率で結合できる。
【0049】
前記自己組み立て複合体は、隣り合う前記鉄イオンとリガンドとの間に配位結合、π-π相互作用および水素結合のうち少なくともいずれか一つによって少なくとも一部がラウンドである形態であるか球形を形成するものであってよい。前記自己組み立て複合体は、これらの相互作用または結合によってそれぞれの鉄イオンおよびリガンドが密に密着し得る。従って、前記自己組み立て複合体は、前記鉄イオンおよびリガンドが密に固まって形成されるものであってよい。
【0050】
前記自己組み立て複合体は、前記リガンドの種類または配合比率によってさらに密に形成されるか緩く形成され得る。前記配合比率をモル濃度比率であってよい。
【0051】
前記リガンドは、1種または2種以上が共に含まれて自己組み立て複合体を形成することができる。
【0052】
前記リガンドが例えば二リン酸または三リン酸を含む場合、前記自己組み立て複合体は、親水性(hydrophilicity)を有し得る。前記リガンドが三リン酸を含む場合、前記自己組み立て複合体は、-2価の負電荷を帯び得る。また、前記リガンドが二リン酸を含む場合、前記自己組み立て複合体は、-1価の負電荷を帯び得る。前記リガンドが二リン酸または三リン酸を含む場合は、前記リガンドがADP、ATP、TDP、TTP、CDP、CTP、GDP、GTP、UDPおよびUTPのうち少なくともいずれか一つである場合を意味し得る。
【0053】
また、前記リガンドが例えば一リン酸を含む場合、前記自己組み立て複合体は、疎水性(hydrophobicity)を有し得る。前記リガンドが一リン酸を含む場合、前記自己組み立て複合体は、中性を帯び得る。前記リガンドが一リン酸を含む場合は、前記リガンドがAMP、TMP、CMP、GMPおよびUMPのうち少なくともいずれか一つである場合を意味し得る。
【0054】
また、前記リガンドは、AMPおよびATPが混合されて含まれ得る。この場合、前記自己組み立て複合体は、親水性(hydrophilicity)を有し得る。前記リガンドがAMPおよびATPが混合されたものである場合、前記AMPおよびATPが2:1~1:2のモル濃度比率で含まれるものであってよい。好ましくは、前記AMPおよびATPは、1:1のモル濃度比率で含まれるものであってよい。
【0055】
前記リガンドがATPである場合、前記自己組み立て複合体は、球形の形態を帯び、均一な直径に形成され得る。このとき、前記自己組み立て複合体同士の固まりが起こらないことがある。前記自己組み立て複合体の直径は、前記リガンドおよび鉄イオンの濃度によって変わり得るが、同じ濃度では均一に形成され得る。
【0056】
前記リガンドがAMP、AMPとADPの混合リガンドまたはAMPとATPの混合リガンドである場合、前記自己組み立て複合体は、球形に形成され得、前記自己組み立て複合体同士で集合体を形成することができる。前記自己組み立て複合体が結合した集合体は、特定形状を有しなくてよい。この場合、複数の前記自己組み立て複合体が集合体を形成して3次元的形状を有し得る。
【0057】
前記自己組み立て複合体は、自発的に自己分解され得る。前記自己組み立て複合体が自己分解される場合、生体内および生体外で1日~90日間自己分解されるものであってよい。前記自己組み立て複合体は、自己分解されながら鉄イオンまたはリガンドを放出でき、前記自己組み立て複合体に有効成分が担持されている場合、前記有効成分を共に放出できる。
【0058】
前記自己組み立て複合体は、前記有効成分を徐放型に放出できる。
【0059】
前記自己組み立て複合体は、前記リガンドの種類によって自己分解速度が変わり得る。前記リガンドの種類および配合比によって前記自己組み立て複合体の電荷および性質が変わり得、そのような特性によって前記自己組み立て複合体が自己組み立てされた程度が変わり得る。従って、前記リガンドの種類および配合比を調節して分解速度を調節できる。
【0060】
例えば、リガンドがAMPである場合、一つのリン酸基が鉄イオン(Fe2+)と配位結合を形成し、前記自己組み立て複合体は、中性を帯びるようになる。ここで、前記鉄イオンは、水分子とさらに結合できる。前記中性の自己組み立て複合体は、疎水性特性によってさらに密にパッキング(packing)され得、この場合、自己分解がゆっくり進行し得る。
【0061】
また、例えば、リガンドがADPである場合、二つのリン酸基が鉄イオンと配位結合を形成し、前記自己組み立て複合体は、-1価の電荷を帯び得る。しかし、この場合は、-2価の電荷を帯びる場合であるATPリガンドを使用した場合よりは電荷が小さくてパッキングがさらに緩く形成され得る。また、この場合は、リガンドがAMPである場合よりもパッキングがさらに緩く形成され得る。従って、リガンドがADPである場合、自己分解が速く進行し得る。
【0062】
例えば、リガンドの種類がAMP、ADP、ATPおよびAMP+ATPの混合リガンドがある場合、自己分解が進行する速度は、AMP、ATP、AMP+ATPおよびADPの順に速くなり得る。
【0063】
前記自己分解が進行する速度は、前記有効成分、鉄イオンおよびリガンドのうち少なくともいずれか一つの放出速度に該当し得る。
【0064】
前記自己組み立て複合体は、1日~90日間自己分解され得る。ただし、前記自己組み立て複合体が生体内で自己分解される場合、3日以内に自己分解され得る。
【0065】
また、前記自己組み立て複合体を特定条件に置くと自己分解がさらに速く進行し得る。前記自己組み立て複合体は、キレート化剤を含む条件、強酸条件および強塩基条件のうち少なくともいずれか一つの条件で自己分解が促進され得る。
【0066】
前記キレート化剤は、前記リガンドの代わりに鉄イオンと結合を形成して前記自己組み立て複合体が自己分解されることを促進させることができる。前記キレート化剤は、前記鉄イオンに対して前記リガンドより親和力の高い物質であってよく、例えば、EDTAであってよい。
【0067】
また、前記強酸または強塩基条件は、前記鉄イオンとリガンドの結合が分解されることを促進させることができ、やはり前記自己組み立て複合体の自己分解を促進させることができる。前記強酸は、例えば、塩酸(HCl)であってよく、前記強塩基は、例えば、NaClであってよい。
【0068】
例えば、前記強酸条件のpHは2~5であり、前記強塩基条件のpHは9~12であってよい。また、好ましくは、前記強酸条件のpHは3~4であり、前記強塩基条件のpHは10~11であってよい。
【0069】
前記自己組み立て複合体の自己分解が促進される場合、0.5秒~10秒間自己分解され得る。
【0070】
前記自己組み立て複合体は、鉄イオンを含んでおり、常磁性を有し得る。前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほど磁気モーメントが大きく形成されるものであってよい。従って、前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほど磁場を印加すると磁場による引力(または斥力)がさらに大きく作用し得る。言い換えれば、生体内および生体外で前記自己組み立て複合体に磁場印加する場合、前記自己組み立て複合体が大きく形成されるほどさらに速く拡散されるものであってよい。
【0071】
また、外部磁場が形成された場合にのみ磁性を帯びるので、体内および体外で前記自己組み立て複合体を調節することが容易であり得る。
【0072】
前記自己組み立て複合体は、常磁性特性によってMRI造影剤として利用できる。好ましくは、前記自己組み立て複合体は、T2造影剤として利用され得る。
【0073】
また、前記リガンドがAMPである場合、前記自己組み立て複合体が非常に密に形成され得、前記自己組み立て複合体が3次元的に組み立てされて堅く形成され得る。前記リガンドがAMPである場合、2次元プレート(plate)構造または3次元スキャフォールド(scaffold)構造を形成することができ、人工骨の材料として使用され得る。
【0074】
前記自己組み立て複合体を利用して形成される2次元または3次元の構造もまた自己組み立て複合体と同様に自己組み立て、自己分解および常磁性を有し得る。前記2次元構造は、磁場を印加する場合、常磁性によって回転し得る。
【0075】
前記2次元プレート構造または3次元スキャフォールド構造の場合、内部に気孔を含んでいてよい。前記気孔には、細胞、薬物およびその他の伝達物質のうち少なくともいずれか一つを担持できる。従って、前記構造体を生体内に移植して細胞等のような物質を生体内に伝達できる。
【0076】
例えば、PMMA粒子をモールドとして使用して作った後、PMMAを溶かして除去できる。このとき、PMMAが除去された空いた空間に薬物または細胞等の伝達物質を入れて生体内に伝達するキャリアとして利用できる。
【0077】
前記自己組み立て複合体は、物質伝達キャリア、細胞培養培地、T2造影剤および人工骨の材料のうち少なくともいずれか一つとして使用されるものであってよい。
【0078】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記実施例は、本発明の好ましい一実施例であるだけで、本発明の権利範囲が下記実施例によって制限されるものではない。
【0079】
[実施例]
1.実施例1(Fe-AMP)
Fe-AMP自己組み立て複合体を製造した。
【0080】
FeCl溶液およびAMP溶液をそれぞれ20mMの濃度で含むDIウォーターを準備した。
【0081】
FeCl溶液1mLをAMP溶液1mL(同じ濃度)に添加し、ボルテックスミキサーで混合した。混合された溶液は、37℃で12時間の間インキュベーションした。
【0082】
自発的な自己組み立てが形成された後、Fe-AMP自己組み立て体を含む溶液は、10000rpmで5分間遠心分離した。
【0083】
反応していない試薬を除去するために、溶液の上清液を捨ててDIウォーターを添加して遠心分離する過程を2回繰り返した。
【0084】
洗滌後、収集されたFe-AMP自己組み立て体粒子をDIウォーター2mLに分散させた。
【0085】
2.実施例2(Fe-ADP)
Fe-ADP自己組み立て複合体を製造した。
【0086】
FeCl溶液およびADP溶液をそれぞれ20mMで含むDIウォーターを準備した。FeCl溶液1mLをATP溶液1mL(同じ濃度)に添加し、ボルテックスミキサーで混合した。混合された溶液を37℃で12時間の間インキュベーションした。自発的な自己組み立てが形成された後、Fe-ADP自己組み立て体を含む溶液は、10000rpmで5分間遠心分離した。
【0087】
反応していない試薬を除去するために、溶液の上清液を捨ててDIウォーターを添加した後、遠心分離する過程を2回遂行した。
【0088】
洗滌後、収得されたFe-ADP自己組み立て体粒子をDIウォーター2mLに分散させた。
【0089】
3.実施例3(Fe-ATP)
大きさを調節できるFe-ATP自己組み立て体を合成した。
【0090】
FeCl溶液およびATP溶液を含むDIウォーターを多様な濃度で準備した。FeClとATP溶液は、それぞれ2.5mM、5mM、10mM、20mM、および30mMの濃度で、100nm、300nm、1000nm、1500nmおよび3000nmの大きさのFe-ATP自己組み立て体粒子を生成できる。
【0091】
1mLのFeCl溶液を1mLのATP溶液(同じ濃度)に添加し、ボルテックスミキサー(vortex mixer)で混合した。この混合された溶液は、37℃で12時間の間インキュベーションした。自己組み立てが形成された後、Fe-ATP自己組み立て体を含む溶液は、10000rpmで5分間遠心分離した。
【0092】
反応していない試薬を除去するために、上清液を捨ててDIウォーターを添加して溶液を遠心分離する過程を2回遂行した。
【0093】
洗滌後、収集されたFe-ATP自己組み立て体粒子を2mL DIウォーターに分散させた。100mM EDTA溶液100μLをこの分散液に穏やかに添加し、数秒以内にFe-ATPの自己分解を観察した。
【0094】
【表1】
4.実施例4(Fe-(AMP+ATP))
Fe-(AMP+ATP)自己組み立て複合体を製造した。
【0095】
FeCl溶液、AMP溶液およびATP溶液をそれぞれ10mMの濃度で含むDIウォーターを準備した。
【0096】
FeCl溶液1mL、AMP溶液1mLおよびATP溶液1mL(同じ濃度)をボルテックスミキサーを利用して混合した。混合された溶液は、37℃で12時間の間インキュベーションした。
【0097】
自発的な自己組み立てが形成された後、Fe-(AMP+ATP)自己組み立て体を含む溶液は、10000rpmで5分間遠心分離した。
【0098】
反応していない試薬を除去するために、溶液の上清液を捨ててDIウォーターを添加して遠心分離する過程を2回繰り返した。
【0099】
洗滌後、収集されたFe-(AMP+ATP)自己組み立て体粒子をDIウォーター2mLに分散させた。
【0100】
[実験方法]
1.走査電子顕微鏡(SEM、Scanning electron microscopy)イメージング
自己組み立て複合体の形態的特性を確認するために、SEM(FEI、Quanta 250 FEG)イメージングを遂行した。製造された自己組み立て複合体を収集して室温の真空オーブンで乾燥させ、SEMイメージング前に90秒間白金めっきを遂行した。
【0101】
2.試料振動式磁束計(VSM、Vibrating sample magnetometry)測定
自己組み立て複合体の磁気的特性を分析するために、室温で-19000Oeから19000Oeの間の磁場を印加してVSM(Tecnai 20、FEI、USA)測定を遂行した。サンプルの乾燥重量に対して正規化した後、生成された磁気モーメントが可逆ヒステリシスループ(reversible hysteresis loop)に表示された。
【0102】
3.透過電子顕微鏡(TEM、Transmission Electron Microscopy)およびエネルギー分散X線分光器(EDS、Energy-dispersive X-ray spectroscopy)マッピング
自己組み立て複合体の大きさおよび元素組成を確認するために、TEMイメージングおよびEDSマッピング(Tecnai 20、FEI、USA)を遂行した。
【0103】
4.現場光学顕微鏡イメージング(In situ optical microscopy imaging)
Fe-ATP自己組み立て複合体が自発的に自己組み立てまたは自己分解される様子を確認し、前記自己組み立て複合体に磁場を印加した時に移動する速度および方向を確認するために現場光学顕微鏡イメージング(Nikon Eclipse Ts2)を遂行した。
【0104】
5.2D Fe-AMPプレート合成
2D Fe-AMPプレート合成のために、500mM AMP溶液を含むDIウォーター20mL、500mM FeCl溶液を含むDIウォーター20mLおよびローダミン(Rhodamine、Rhodamine 6G、CAS:989-38-8、Sigma-Aldrich)溶液を含むDIウォーター2mL(5mg/mL)を準備した。
【0105】
まず、ローダミン溶液2mLを500mM FeCl溶液20mLに添加した。この溶液に500mM AMP溶液20mLを添加し、室温で1時間の間ボルテックスミキサー(vortex mixer)を使用して混合した。ローダミンが担持されたFe-AMP自己組み立て体を収集するために、混合溶液を12000rpmで10分間遠心分離し、上清液は捨てた。反応していない試薬を除去するために、DIウォーター40mLをローダミンが担持されたFe-AMP自己組み立て体に添加し、12000rpmで10分間遠心分離する過程を4回繰り返した。
【0106】
それから、ローダミンが担持されたFe-AMP自己組み立て体を37℃のオーブンで5日間乾燥した。乾燥した自己組み立て体を収集し、モルタル(mortar)を使用して粉砕した。約10mgの自己組み立て体を利用してハンドプレスで2D Fe-AMPプレート(直径13mm、高さ1mm)を製造した。
【0107】
この2DプレートをPBS溶液に入れ、磁場を印加してプレートを観察した。永久磁石の位置による2Dプレートの動きおよび1M EDTA溶液を含むDIウォーター1mLを添加した後の2Dプレートの自己分解を光学蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse Ts2)を通して観察した。
【0108】
6.2D Fe-AMP細胞シート製造
2D Fe-AMPに細胞を培養する実験を遂行した。
【0109】
細胞シーディング(cell seeding)前に、5番実験で製造した2D Fe-AMPプレートを切って48-ウェル細胞プレート(48-well cell plate)に入れた。このプレートを10%熱-不活性されたウシ胎児血清(heat-inactivated fetal bovine serum)、4mM L-グルタミン(L-glutamine)、および50U/mLペニシリン/ストレプトマイシン(penicillin and streptomycin)が含まれた高グルコース(high glucose)Dulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM)の成長培地50μLで37℃、5% COの条件で培養し、培地は、24時間の間8時間毎に取り替えた。
【0110】
その後、ヒト間葉系幹細胞(hMSCs、human mesenchymal stem cells、Lonza、PT-2501、passage #5)を2D Fe-AMPプレートに約2×105cells/cmの密度でシーディングした後、細胞培養後48時間に2D Fe-AMP細胞プレート(細胞が付着された2D Fe-AMPプレート)を収集した。収集した2D-Fe-AMP細胞プレートをひっくり返してPBS溶液に入れた。この2D-Fe-AMP細胞プレートを1M EDTA溶液を含むDIウォーター1mLに入れるや否や自己分解され、光学蛍光顕微鏡(Nikon Eclipse Ts2)を通して観察した。
【0111】
7.3D Fe-AMP骨スキャフォールド製造
ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA、poly(methyl methacrylate))浸出方法を利用して3D Fe-AMP巨大多孔性骨支持体(macroporous bone scaffold)を合成した。
【0112】
まず、円筒形ポリエチレンモールド(直径8mm)にPMMA300mg(直径125~150μm;Bangs Laboratories、BB05N)を充填した。このモールドに、2M FeClを含むDIウォーター200μLを添加し、ボルテックスミキサー(vortex mixer)を利用して5分間穏やかに混合した。この混合物を含むモールドを密封し、25℃で1日間維持した。
【0113】
その後、3D Fe-AMP集合体をモールドから分離し、振とう条件(shaking condition、100rpm)で3日間ジクロロメタン(DCM、dichloromethane)50mLに浸漬してPMMAを浸出させた。DCMは、24時間毎に取り替えた。3日後、3D Fe-AMP集合体をDIウォーター50mLに30分間浸漬させてから乾燥した。
【0114】
この後、3D Fe-AMP集合体を1cmまたは1.5cmの高さに切断した後、骨治癒治療前30分間紫外線を照射して殺菌した。
【0115】
8.ドキソルビシン(doxorubicin)放出実験
自己組み立て複合体の物質伝達性能を実験するためにドキソルビシン放出実験を遂行した。ドキソルビシン(doxorubicin、BORYUNG製薬、A.D.Mycin、品目基準コード:199001007)を含むFe-ATP、Fe-ADP、Fe-AMPまたはFe-(ATP+AMP、1:1)自己組み立て体を合成するために、FeCl、ATP、ADPおよびAMP溶液を含むDIウォーター(濃度100mM、いずれも同じ濃度)をそれぞれ準備した。
【0116】
ドキソルビシン溶液(濃度:2g/L)6mLに100mM ATP(またはADP、AMP、ATP+AMP)溶液2mLおよび100mM FeCl溶液2mLを添加し、ボルテックスミキサーで混合した。反応していない試薬を除去するために、上清液を捨てて、DIウォーターを添加した後、残りの溶液に遠心分離を2回遂行した。
【0117】
洗滌後、収集されたFe-ATP自己組み立て体粒子をPBS溶液(pH7.4)1mLに分散させ、透析バッグ(dialysis bag、SnakeSkinTM Dialysis Tubing、7kDa MWCO)に移した。Fe-ATP(またはFe-ADP、Fe-AMP、Fe-(ATP+AMP、1:1))自己組み立て体が入っている透析バッグをバイアル(vial)に入れ、PBS溶液(pH7.4)4mLをバイアルに添加して全体体積を5mLに維持させた。1、3、7日目に、Fe-ATP(またはFe-ADP、Fe-AMP、Fe-(ATP+AMP、1:1))自己組み立て体がある透析バッグを含むバイアルで上清液を収集して放出されたドキソルビシンの濃度を測定した。
【0118】
PBS溶液は、全体体積が5mLに維持されるようにさらにバイアルに添加された。サンプル溶液は、0.5μm注射器フィルタ(syringe filter、Advantec)を利用してろ過し、上清液をUV-Vis分光法で分析した。
【0119】
9.実験成分
前記実験で使用した物質は、下記のとおりである。
【0120】
ATP:Adenosine 5’-triphosphate disodium salt hydrate(99%、Sigma-Aldrich、5g、cat.No.A26209)
AMP:Adenosine-5’-monophosphate disodium salt(J61643、Alfa Aesar)
ADP:Adenosine 5’-diphosphate sodium salt(A2754、Sigma-Aldrich)
FeCl:Iron(II) chloride(97%、Sigma-Aldrich、25g、cat.No.372870)
EDTA:Ethylenediaminetetraacetic acid(EDTA、99.5%、Junsei、500g、cat.No.17385S0401)
Rhodamine:Rhodamine 6G(CAS:989-38-8、Sigma-Aldrich)
PMMA:PMMA(125 to 150μm in diameter;Bangs Laboratories、BB05N)
Doxorubicin:BORYUNG製薬、A.D.Mycin(品目基準コード:199001007)
[実験例]
1.形態分析
図2乃至4は、Fe-AMP、Fe-ADPおよびFe-ATP自己組み立て体それぞれの形態および成分を分析した図である。EDSマッピングは、鉄(Fe)およびリン(P)元素に対して遂行した。
【0121】
図2の上側図面でSEMイメージがFe-ATP自己組み立て体が均一な大きさを持って形成されたことを示す。また、TEMおよびEDSイメージで鉄(Fe)およびリン(P)元素が存在することを確認でき(図2の右下)、鉄イオン(Fe2+)およびATPが1:1の比率で含まれていることを確認できる。
【0122】
図3は、Fe-ADP自己組み立て体に対する図であり、鉄とリンの存在を確認でき、鉄イオンとADPが1:1で含まれたことを確認できる。ただし、TEMおよびEDSイメージから見て自己組み立て体の間に若干の固まりがあることが見られる。
【0123】
図4は、Fe-AMP自己組み立て体に対する図であり、鉄とリンの存在を確認でき、鉄イオンとAMPが1:1で含まれたことを確認できる。ただし、TEMイメージで自己組み立て体の間に3次元的に集合体が多く形成されたことを確認できる。
【0124】
2.自己組み立ておよび自己分解確認
鉄イオンとリガンドが自己組み立ておよび自己分解されることを観察した。ここで、リガンドは、ATPを使用した。
【0125】
図5において、鉄イオンとATPとの間に自発的に3分程度後に自己組み立てされた粒子が見られ、10分以内に自己組み立て体が速く形成されることを確認できる。図6においては、EDTAがある条件で形成された自己組み立て体が分解されることを観察したものであり、10秒以内に自己組み立て体が全て分解されて消えることを確認できる。
【0126】
3.自己組み立て体の大きさによる特性確認
図7において、鉄イオンとATPの濃度を異なるようにして自己組み立て体の大きさを調節しながら自己組み立て体を製造し、特性を分析した。多様な大きさのFe-ATP自己組み立て体は、互いに異なる磁気特性を示し、磁場印加時、移動速度で異なるように現れた。図8は、Fe-ADPでの可逆的磁気特性(常磁性)が現れることを示す。
【0127】
図7のSEMイメージで鉄イオンとATPの濃度が高いほど球形の自己組み立て体の大きさが大きく形成されることを確認できた。ただし、同じ濃度で形成される自己組み立て複合体の大きさは、ほぼ一定であった。また、自己組み立て体の大きさが大きいほど磁気モーメントが高くなることをVSM測定結果で確認できる。
【0128】
また、自己組み立て複合体の大きさが大きいほど永久磁石に引かれてくる速度も速く示された。これは、自己組み立て複合体の大きさが大きいほど磁気モーメントが大きく形成されるためである。
【0129】
図9乃至11は、自己組み立て複合体またはこれらの構造体が永久磁石が印加される方向に移動するものであり、自己組み立て体の常磁性を確認できる。図10は、Fe-AMPの2Dプレートを製造して実験した結果であり、磁場を印加するとプレートが回転することを確認できる。図11は、Fe-AMPの3次元スキャフォールド構造を形成して実験した結果である。自己組み立て体の形態、大きさ等と関係なく常磁性を有することを確認できる。
【0130】
図12は、自己組み立て体が永久磁石に引かれてくる速度を比較したイメージであり、それぞれ1.5μm、2μm、3μmおよび3.5μmの大きさを持って測定した。ここで大きさ差が最も大きい1.5μmおよび3.5μmの大きさの場合を比較したとき、速度に二倍以上の差があることを確認できる。これを利用して自己組み立て体の大きさが大きいほど磁気モーメントが大きいことも確認できる。
【0131】
4.MRI造影剤性能確認
Fe-ATP自己組み立て体のMRI造影剤としての性能を確認する実験を進行し、その結果を図13に示した。実験は、Fe-ATPおよびFe-ATP+EDTAの条件で遂行し、対照群として水を利用した。
【0132】
Fe-ATP自己組み立て体は、T1イメージでは観察されないが、T2ではMRI信号を示した。しかし、EDTAを含む場合には自己組み立て体が分解されてT2信号を得ることができず、EDTAがない条件でFeとATPのT2造影剤としての性能が発現されることを確認できた。
【0133】
図13において、マウスに自己組み立て複合体を注入した図で、対照群(control、緑色円)と比較したとき、Cy5.5を含む自己組み立て複合体(赤色円)でT2イメージが現れることを確認できる。従って、自己組み立て複合体が生体内で安定して作用することを確認できる。
【0134】
5.生体内で自己組み立て体の特性確認
生体内に自己組み立て体を注入した後、生体外部で磁場を印加して自己組み立て体の磁気的特性を確認し、図14に示した。ここで、リガンドは、ATPを使用し、全身蛍光顕微鏡(whole-body fluorescence)を利用して撮影した。赤色部分が自己組み立て体のある部分であり、自己組み立て体が永久磁石のある方向にますます移動して拡散することを確認できる。これにより生体外部で磁場を印加して生体内に自己組み立て体が適用される部位を調節できる。
【0135】

図15および16は、生体内で自己組み立て体が自己分解されることを実験したものである。Cy5カプセル化されたFe-ATP自己組み立て体を利用してEDTAがある条件とない条件で遂行した。EDTAを注入した場合にのみFe-ATPが自己分解されて広がることを確認できる(図15)。また、マウスに注入して生物発光イメージを撮影した図16においては、EDTAの存在の有無と関係なく蛍光が観察されたが、EDTAを注入した場合にはFe-ATP自己組み立て体が分散されてさらに広い範囲で観察された。
【0136】
図17は、ローダミンを含有したFe-AMPの2次元プレート構造がEDTAを注入した環境で速く自己分解されることを示す。EDTAを注入した後、1分程度になったとき、ほとんどの自己組み立て複合体が分解され、5分後には自己組み立て複合体が見つけられなかった。
【0137】
6.薬物伝達実験
自己組み立て体に薬物を担持した後、放出する実験を遂行し、図18および21に示した。
【0138】
図18および19は、ドキソルビシンを利用して実験した模式図と結果である。模式図は、鉄イオンとリガンドが自己組み立てされるとき、これらの稠密構造内にドキソルビシンが浸透して担持されることを示す。図19は、リガンドの種類によってドキソルビシンが放出される時間をグラフで示したものである。リガンドの種類を除く他の条件は全て同一に適用され、最も密にパッキングされるFe-AMPで放出量が最も少なく、最も緩くパッキングされるFe-ADPで最も速く放出されることを確認できる。従って、リガンドの種類を調節して生体内で薬物が放出される時間を調節できる。
【0139】
図20および21は、トリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide)を利用して実験した模式図と結果である。自己組み立て複合体が自己分解されながらトリアムシノロンアセトニドが放出され、グラフで約70日が経った後にも累積放出量が増加することを確認できる。
【0140】
本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須な特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるだろう。それゆえ、以上において記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そして、その均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
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