(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156985
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】直接的な力測定装置
(51)【国際特許分類】
F16D 66/00 20060101AFI20231018BHJP
F16D 65/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
F16D66/00 Z
F16D65/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023034206
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10 2022 105 427.6
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518201739
【氏名又は名称】メソード・エレクトロニクス・マルタ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】METHODE ELECTRONICS MALTA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンダー・ガレア
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ギーシブル
(72)【発明者】
【氏名】ユリウス・ベック
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シンクレア
【テーマコード(参考)】
3J058
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA62
3J058AA69
3J058AA87
3J058BA60
3J058CC22
3J058CC82
3J058CD13
3J058DB18
3J058DB27
3J058DD06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ブレーキキャリパに作用する力を測定するための装置を提供すること。
【解決手段】車両(9)のブレーキシステム内で発生する少なくとも1つの第1力を測定するための装置。ブレーキシステムは、少なくともキャリパ(16)と少なくとも1つのブレーキディスク(4)とからなる。キャリパ(16)と車両(9)とを接続する少なくとも2つのロードピン(12、13)は、第1力を測定するために配置されている。変換手段は、基本力を測定される第1力に変換するように配置されている。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(9)のブレーキシステム(20)内で発生する少なくとも1つの第1力(19)を測定するための装置であって、
前記ブレーキシステム(20)は
- 少なくともキャリパ(16)と
- 少なくとも1つのブレーキディスク(4)を有し、
ここで、前記キャリパ(16)と前記車両(9)とを接続する少なくとも2つのロードピン(12、13)が、前記第1力(19)を測定するために配置されており、
基本力(22)を前記測定対象の第1力(19)に変換する変換手段(21)が配置されている
ことを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記変換手段(21)が、前記基本力(22)としての線形反力(23)を前記第1力(19)としてのトルクモーメント(25)に変換することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項3】
前記ロードピン(12,13)が磁気弾性せん断力センサ(26)であることを特徴とする請求項2記載の測定装置。
【請求項4】
前記変換手段(21)が、前記基本力(22)としての前記線形反力(23)を、前記第1力(19)としてのせん断力に変換することを特徴とする請求項1記載の測定装置。
【請求項5】
前記ロードピン(12、13)が磁気弾性せん断センサであることを特徴とする請求項4記載の測定装置。
【請求項6】
前記変換手段(21)が変換ピン(29)であることを特徴とする請求項4記載の測定装置。
【請求項7】
前記変換手段(21)が、前記基本力(22)としての制動トルクを、前記第1力(19)としての線形せん断力(30)に変換することを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記ロードピン(12,13)が磁気弾性トルクセンサ(26)であることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の特徴に従った直接的な力測定用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状の最新技術システムは、ブレーキ力を決定するために間接的な測定に基づくことが多い。他の既知のシステムでは、測定は数学的計算に基づいている。
【0003】
現状では、必要なブレーキ力を発生させるために使用されるエネルギーの測定に基づいているのが一般的である。ここで、要求されるブレーキ力は、電気エネルギーによって、または空気圧によって、または油圧を使用して生成することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
多くの現状最新の技術のシステムは、しばしば、不正確であるか、または時間を要する。
【0005】
したがって、本発明の目的は、ブレーキキャリパに作用する力を測定するための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題を解決するには、基本力を第1力に変換して測定するように設けられた変換手段による。
【0007】
[ブレーキシステム]
【0008】
本発明によれば、ブレーキシステムは、以下の構成要素のうちの1つまたは複数を含んでいる。 少なくとも1つのブレーキキャリパ、少なくとも1つのブレーキパッドおよび/またはブレーキシュー。少なくとも1つのブレーキピストンもまたブレーキシステムに含まれる。また、ブレーキシステムは、少なくとも1つのブレーキディスクを含んでいる。
【0009】
ブレーキシステムの構成要素について、以下により詳細に言及する。
【0010】
ブレーキシステムは、移動するシステムからエネルギーを吸収することによって移動を防止する機械的装置と称される。
【0011】
ブレーキシステムは、動いている車両を減速または停止させるために使用される。また、車両の車輪または車軸を減速または停止させることもある。
【0012】
ブレーキシステムは、好ましくは、摩擦を発生させることによって、動きを減速または停止させる。
【0013】
以下では、陸上の車両に関連してブレーキシステムを説明する。ブレーキシステムは、ブレーキとも称される。
【0014】
[ブレーキキャリパ]
【0015】
本発明では、ブレーキキャリパを、ブレーキパッドとブレーキピストンの少なくとも一方を収容するアセンブリと理解する。
【0016】
一般に、キャリパは、フローティング(非固定)キャリパとして設計されることがある。あるいは、キャリパは、固定キャリパとして設計されることもある。フローティングキャリパとは逆に、固定キャリパはブレーキディスクに対して相対的に移動することがない。したがって、固定キャリパは、ディスクの凹凸に対する耐性が低い。
【0017】
フローティングキャリパは、ブレーキディスクに対して移動する。フローティングキャリパは、ブレーキディスクの回転軸と平行な線に沿って移動することができる。
【0018】
[間接測定と直接測定の比較]
【0019】
[間接的な測定]
【0020】
現状最新のシステムは、間接測定システムとして設計されることが多い。間接測定システムは、通常、必要なブレーキ力を発生させるために使用されるエネルギー源を測定する。
【0021】
例えば、必要なブレーキ力は、電気エネルギーによって、または空気圧によって、または油圧を利用して発生させることができる。
【0022】
本発明は、油圧式ブレーキシステムを参照して、以下により詳細に説明される。
【0023】
油圧ブレーキシステムの場合、あるブレーキ力を発生させるのに必要なエネルギーは、例えば、必要な油圧を発生させるのに必要な力を決定することによって決定することができる。
【0024】
[直接測定]
【0025】
特定の制動力を与えるために必要なエネルギーの直接測定は、当該物体の特性を明示的に測定する際に行うことができる。
【0026】
例として、ブレーキシステム、好ましくはブレーキディスクを使用して、ある制動力を提供するために使用されるエネルギーは、ブレーキシューおよび/またはブレーキパッドで直接測定することができる。
【0027】
例として、しかし決して限定的なものではないが、ワット(単位:W)単位の制動力(PB)は、ニュートン(単位:N)単位のブレーキシステムのブレーキシューにおける接線制動力(FB)とメートル毎秒(単位:メートル/秒)のブレーキシュー間の速度(v)を乗じることによってブレーキシューで求めることが出来る。
【0028】
対応する式は、次のようになる。
【0029】
(PB) = (FB) * v
【0030】
必要な制動エネルギーは、別の技術的方法で決定することもできることは言うまでもない。
【0031】
本発明は、本発明によるロードピンが、制動操作を行うために提供される制動力の有効性の程度に関する有用な情報を提供するため、非常に有利であることが分かる。
【0032】
有効性の程度は、車両と路面との間に提供される制動力を意味する。
【0033】
本発明とは逆に、現状最新技術の解決策は、キャリパとブレーキディスクの間の力のみを測定する。
【0034】
力、好ましくはブレーキ力は、反力を決定することによって直接的な方法で測定することができる。
【0035】
反力は、力の均衡を得るために常に存在する。
【0036】
[反力]
【0037】
本発明では、反力は、作用力と反対方向に作用する力であると理解している。
【0038】
油圧式ディスクブレーキ装置の例では、ブレーキディスクに必要な制動トルクを作用させるために、油圧式ブレーキ装置のブレーキシューに制動力が作用する。このように、液圧ブレーキシステムにおいて、反力とは、必要な制動力に必要な液圧を発生させるために必要な力である。
【0039】
すべての力には、同じ大きさの反対向きの反力が存在する。
【0040】
個々のシステムの機械的な設定に応じて、反力は以下のタイプのうちの1つである可能性がある。
【0041】
反力はトルクである場合もある。また、反力は、せん断力であってもよい。もちろん、軸方向の反力やその他の力であってもよい。
【0042】
[トルク]
【0043】
本発明では、トルクという用語は、直線的な力の回転的な等価物であると理解している。トルクはまた、モーメントと呼ばれることもある。トルクは、さらに、力のモーメントとして、または回転力として言及されることがある。あるいは、トルクは、旋回効果として理解されることもある。本発明によれば、トルクは、物体の回転運動における変化をもたらす力の能力を表す。
【0044】
一例として、トルクは、レバーアームによって引き起こされることがある。このように、直線的な反力は、トルクモーメントに変換される。トルクモーメントは、後述する磁気弾性力センサによって測定される。
【0045】
磁気弾性力センサは、トルクセンサであってもよい。
【0046】
[せん断力]
【0047】
本発明によれば、剪断力は、物体のある部分をある特定の方向に押す非整列力を表す。一方、物体の別の部分は反対方向に押される。
【0048】
本発明によれば、制動力はピンを介して伝達されることがある。制動力は、磁気弾性力センサで測定することができ、磁気弾性力センサは、剪断力センサとして設計することができる。
【0049】
[軸力]
【0050】
あるいは、反力は軸方向の力であってもよい。
【0051】
軸力とは、構造物のある断面に対する逆引張力、または逆引張圧を指す。軸力は、ある作用によって引き起こされる。
【0052】
逆引張力が断面の重心に位置する場合、それは軸力と呼ばれ、磁気弾性力センサは軸力センサとして設計することができる。
【0053】
上記で言及した任意の反力は、以下でより詳細に説明する磁気弾性力センサによって測定することができる。
【0054】
[磁気弾性力センサ]
【0055】
磁気弾性力センサは、少なくとも1つの力を測定するように設計されている。磁気弾性力センサによって測定される力は、トルクであってもよい。しかし、磁気弾性力センサは、トルク以外の力を測定するように設計されていてもよいことは言うまでもない。
【0056】
本発明によれば、磁気弾性力センサは、シャフトに取り付けられる強磁性体リングからなり、シャフトがセンサによって測定される。
【0057】
あるいは、シャフトは、強磁性体から構成されてもよい。ここで、シャフトの一部分は永久的に磁化されることがある。シャフトの磁化された部分は、周方向の磁界を生成することができ、外部リングを必要としない。
【発明の効果】
【0058】
このように、磁気弾性力センサは、磁気弾性効果に基づくものである。本発明によれば、磁気弾性力センサは、非接触センシングを使用して、回転または静止したシャフトの正確なトルク測定を提供する。
【0059】
本発明によれば、磁化部は、上記で言及したシャフト以外の幾何学的対象物上に配置されることもできる。
【0060】
また、本発明によれば、強磁性リングは、リング上以外の他の幾何学的な物体上に配置することも可能である。
【0061】
以下、添付の図を参照して本発明の更なる実施例及び有利な実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】ブレーキパッドとブレーキディスクを有するブレーキピストンの概略図である。
【
図2】レバーアームに対する反力を示す模式図である。
【
図3】センシングコイルの領域に磁気を持つシャフトを示したものである。
【
図4】線形反力がせん断面積に与える影響を示したものです。
【
図7】ブレーキディスクが回転している状態を示している。
【
図8】制動トルクを示す1つの矢印と、それに対応する反力を示す別の矢印を示したものである。
【
図9】仮想軸に対して反対方向に走る軸方向の反力を示している。
【
図10】キャリパとロードピンを構成する車両のホイールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1は、ブレーキシリンダ2内に配置されるブレーキピストン1を示す。ブレーキペダル(図示せず)により、ブレーキシリンダ2内の作動液に液圧が発生する。
【0064】
ブレーキシリンダ2内の液圧がさらに上昇すると、圧縮された作動液がブレーキピストン1を長手軸3に沿ってブレーキディスク4に向かって押し出す。
【0065】
ブレーキピストン1の前端部6には、ブレーキパッド5が配置されている。
【0066】
ブレーキシリンダ2内の液圧がさらに上昇すると、ブレーキパッド5がブレーキディスク4に押し付けられ、その結果、ブレーキ処理が開始される(図示せず)。
【0067】
ブレーキピストン1を長手方向軸3に沿ってブレーキディスク4に向かって押す力24は、ブレーキシリンダ2内で発生する。
【0068】
ブレーキパッド5をブレーキディスク4に適用する力27は、長手方向軸線3に沿って延びる。
【0069】
ブレーキピストン1を長手方向軸線3に沿ってブレーキディスク4に向かって押す力24は、ブレーキパッド5をブレーキディスク4に押し付ける力27と一致する。ブレーキピストン1を長手方向軸3に沿って押す力24に関して、および/またはブレーキパッド5をブレーキディスク4に押し付ける力27に関して、力のバランスを表す反力は、参照数字23によって表される。
【0070】
図2は、レバーアーム7に対する反力23を示す模式図である。
図2に示す反力23は、線形反力23である。
【0071】
レバーアーム7は、回転軸を中心に回転し、トルクモーメント25を発生させる。
【0072】
図2の説明では、反力23は、レバーアーム7に直角に作用する。
【0073】
図3は、磁気弾性トルクセンサを示す図である。
図3に描かれた磁気弾性トルクセンサは、
図2で言及されたトルク力に変換された直線力がどのように測定されるかを示すものである。
【0074】
図3では、トルクセンサのセンシングコイルが参照番号12と13で表されている。
【0075】
図4は、せん断面積15に対する線形反力14の影響を示す。
【0076】
図5は、磁化帯10、11を有するロードピン12、13を示す。ロードピン12,13は、キャリパ16上に配置されている。ロードピン12,13は、キャリパ16に対向してせん断領域15を有する。
【0077】
図6は、車両9のブレーキディスク4を示している。キャリパ16は、ブレーキディスク4の上方に配置されている。
図6では、磁気弾性せん断力センサが参照番号12,13で表されている。磁気弾性せん断力センサ12,13は、ブレーキディスク4と車両9とを接続する。
【0078】
図7は、回転中のブレーキディスク4を示す。キャリパ16は、ブレーキディスク4の領域に配置されている。ロードピン12,13は、キャリパ16に配置されていることがわかる。
【0079】
図8は、
図6と同様の構成であるが、
図8では、矢印17、18が示されている点が異なる。矢印17は、ブレーキパッド5(図示せず)をブレーキディスク4に当てて、制動トルクが直線力に変換されることを表している。一方、矢印18は、逆方向を向いた反力を表している。
【0080】
図9の説明では、軸方向の反力は、仮想軸に対して反対方向に走る。
【0081】
図10は、車両9の車輪を示す図である。ブレーキディスク4は、ホイールの中央に配置されている。
【0082】
キャリパ16は、ブレーキディスク4の上方に配置されている。
【0083】
図10の説明では、ロードピン12,13は、キャリパ16の上方に配置されている。
【符号の説明】
【0084】
1 ブレーキピストン
2 ブレーキシリンダ
3 縦軸
4 ブレーキディスク
5 ブレーキパッド
6 フロントエンド
7 レバーアーム
8 軸
9 車両
10 磁化帯
11 磁化帯
12 ロードピン
13 ロードピン
14 線形反力
15 せん断面積
16 キャリパ
17 矢印
18 矢印
19 第1力
20 ブレーキシステム
21 変換手段
22 基本力
23 反力
24 ブレーキパッドを押す力
25 トルク力
26 磁気弾性トルクセンサ
27 ブレーキパッドがブレーキディスクに加わる力
28 磁気弾性せん断力
29 変換ピン
30 線形せん断力
【外国語明細書】