(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023156999
(43)【公開日】2023-10-25
(54)【発明の名称】導電性巻線スロット用の樹脂ダム付き電気部品
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20231018BHJP
【FI】
H02K3/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023061213
(22)【出願日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】17/659,097
(32)【優先日】2022-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、マシュー ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ヨウンシ、カリム
(72)【発明者】
【氏名】カーウェン、ノーラン グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤギエルスキ、ジョン ラッセル
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC14
5H604DB02
5H604DB17
5H604DB25
5H604PB01
5H604PB03
(57)【要約】
【課題】電気機械(100)用の電気部品(102)を提供する。
【解決手段】電機部品(102)は、スロット(120)が画成された本体(112)と、スロット(120)の軸方向端部(130,132)の外に延びる導電性巻線(118)とを含む。電気部品(102)は、スロットの軸方向端部(130,132)における導電性巻線(118)の周囲に樹脂ダム(160)を含む。樹脂ダム(160)は、製造時に、少なくとも導電性巻線(118)とスロット(120)の内面(164)との間の空間(162)を介した液体連通を遮断する。電気部品(102)は、スロット(120)内にあって、スロット(120)の軸方向端部(130,132)で樹脂ダム(160)に接する絶縁樹脂(170)を含む。樹脂ダム(160)は、スロット(120)の完全な充填及び導電性巻線(118)の封入を確実にする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械(100)用の電気部品(102)であって、当該電気部品(102)が、
スロット(120)が画成されている本体(112)と、
前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)の外に延びる導電性巻線(118)と、
前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)で前記導電性巻線(118)を取り囲む第1の樹脂ダム(160A)であって、少なくとも前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)における前記導電性巻線(118)と前記スロット(120)の内面(164)との間の空間(162)を介した液体連通を遮断する、第1の樹脂ダム(160A)と、
前記スロット(120)内にあってかつ前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)の第1の樹脂ダム(160A)に接する絶縁樹脂(170)と
を備える、電気部品(102)。
【請求項2】
第1の樹脂ダム(160A)が、前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)において前記導電性巻線(118)の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分(142)を含む、請求項1に記載の電気部品(102)。
【請求項3】
前記可撓性材料(142)が、内部に間隙を含む布を含んでおり、前記絶縁樹脂(170)が前記布の間隙に埋め込まれている、請求項2に記載の電気部品(102)。
【請求項4】
前記可撓性材料(142)の部分が、前記導電性巻線(118)と前記スロット(120)の底部(144)との間にも延在している、請求項2に記載の電気部品(102)。
【請求項5】
前記可撓性材料(142)の部分が、前記スロット(120)内の前記導電性巻線(118)の半径方向内側(152)にも延在している、請求項4に記載の電気部品(102)。
【請求項6】
前記可撓性材料(142)の部分が、前記スロット(120)内の前記導電性巻線(118)の半径方向内側(152)にも延在している、請求項2に記載の電気部品(102)。
【請求項7】
当該電気部品(102)の前記スロット(120)が、当該電気部品(102)の複数のスロット(120)を含んでいて、各スロット(120)が、その第1の軸方向端部(130)の外に延びる導電性巻線(118)を含んでおり、
第1の樹脂ダム(160A)が複数の第1の樹脂ダム(160)を含んでいて、1つの第1の樹脂ダム(160A)が、前記複数のスロット(120)の各スロット(120)の第1の軸方向端部(130)において前記導電性巻線(118)の周囲に延在しており、
前記絶縁樹脂(170)が、各スロット(120)内にあって、かつ各スロット(120)の第1の軸方向端部(130)において各々の第1の樹脂ダム(160A)の周囲にある、請求項2に記載の電気部品(102)。
【請求項8】
第1の樹脂ダム(160A)が、複数のスロット(120)の1以上のスロット(120)の第1の軸方向端部(130)において前記導電性巻線(118)の周りに巻き付けられた可撓性材料の1以上の部分(142)を含む、請求項7に記載の電気部品(102)。
【請求項9】
前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)の反対側にある第2の軸方向端部(132)において前記導電性巻線(118)を取り囲む第2の樹脂ダム(160B)をさらに備えており、前記導電性巻線(118)が、前記スロット(120)の第2の軸方向端部(132)の外に延びており、第2の樹脂ダム(160B)が、少なくとも前記スロット(120)の第2の軸方向端部(132)における前記導電性巻線(118)と前記スロット(120)の内面(164)との間の空間(162)を介した液体連通を遮断する、請求項1に記載の電気部品(102)。
【請求項10】
第1の樹脂ダム(160A)及び第2の樹脂ダム(160B)が、前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)及び前記スロット(120)の第2の軸方向端部(132)において前記導電性巻線(118)の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分(142)を含む、請求項9に記載の電気部品(102)。
【請求項11】
第1の樹脂ダム(160A)が、前記スロット(120)の第1の軸方向端部(130)に当接するように構成された位置で前記導電性巻線(118)から半径方向に延在するダム部材(190)を含む、請求項1に記載の電気部品(102)。
【請求項12】
前記導電性巻線(118)が、導電性コア(136)と前記導電性コア上の絶縁皮膜(138)とを含んでおり、前記ダム部材(190)が、前記導電性巻線(118)の絶縁皮膜の下に部分的に延在する可撓性材料(142)を含む、請求項11に記載の電気部品(102)。
【請求項13】
第1の樹脂ダム(160A)が、前記ダム部材(190)を前記導電性巻線(118)の外面(195)に結合するように構成された留め具(196)を含む、請求項11に記載の電気部品(102)。
【請求項14】
軸を有する電気機械(100)であって、当該電気機械(100)が、
本体(112)内に画成された複数のスロット(120)を含む電気部品(102)であって、各スロット(120)が、当該電気機械(100)の軸に対して半径方向及び軸方向に延在する、電気部品(102)と、
各スロット(120)内にあって、かつ各スロット(120)の第1の軸方向端部(130)の外に延びる導電性巻線(118)と、
前記複数のスロット(120)の1以上のスロット(120)の第1の軸方向端部(130)にあって、かつ前記1以上のスロット(120)内の前記導電性巻線(118)を取り囲む第1の樹脂ダム(160A)であって、少なくとも前記1以上のスロット(120)の第1の軸方向端部(130)における前記導電性巻線(118)と前記1以上のスロット(120)の内面(164)との間の空間(162)を介した液体連通を遮断する、第1の樹脂ダム(160A)と、
前記1以上のスロット(120)内にあって、第1の樹脂ダム(160A)に接する絶縁樹脂(170)と
を備える、電気機械(100)。
【請求項15】
第1の樹脂ダム(160A)が、前記1以上のスロット(120)の第1の軸方向端部(130)において前記導電性巻線(118)の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分(142)を含む、請求項14に記載の電気機械(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に電気機械に関し、さらに具体的には、電気機械の電気部品の導電性巻線スロットの軸方向端部の導電性巻線の周囲に樹脂ダムを用いて製造時に液体樹脂を保持することに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械は、固定子及び回転子を含む。固定子及び回転子の一方又は両方は、内部に導電性巻線又はコイルを含む。導電性巻線は、電気部品(例えば固定子又は回転子)の磁性体内に画成される複数のスロットに配置される。電動機では、電気部品の磁性体の周りの導電性巻線は、巻線に電流を流すと回転子に回転運動を生じさせることができる。逆に、発電機では、回転子が回転すると、導電性巻線に電流が流れる。導電性巻線は所定の位置に保持され、絶縁樹脂で処理されたスロットライナ又は絶縁テープによってスロット内で電気的に絶縁される。電気機械の製造時には、絶縁樹脂を施工するために真空加圧含浸(VPI)工程が行われる。VPI工程では、樹脂を液体の形態でスロットに施工し、樹脂をスロット内の導電性巻線に浸透させて封入するために真空に引く。最初の真空引きに続いて、スロット内の導電性巻線をさらに含浸させるために加圧工程が行われることもある。次いで、絶縁樹脂を硬化させるため電気部品は高温での加熱硬化工程(例えばベーキング工程)に付される。VPI工程中及び工程後に、導電性巻線の周囲及びスロット内に液体絶縁樹脂を保持するのが難題となることがある。特に、加熱硬化工程中に液体絶縁樹脂を保持するのは、高温で(硬化前の)絶縁樹脂の粘度が低下するので、特に難しい問題となりかねない。加熱硬化工程は、電気部品の回転を含むこともあり、その結果、電気部品全体のすべてのスロット内の液体絶縁樹脂に重力が徐々に印加される。スロット内での液体絶縁樹脂の保持不足は、導電性巻線の部材の周りの絶縁樹脂に薄い絶縁領域及び/又はボイドを生じ、電気機械の性能を低下させてしまうおそれがある。
【発明の概要】
【0003】
以下に挙げるすべての態様、具体例及び特徴は、技術的に可能な方法で組合せることができる。
【0004】
本開示の一態様では、電気機械用の電気部品を提供するが、本電気部品は、スロットが画成されている本体と、スロットの第1の軸方向端部の外に延びる導電性巻線と、スロットの第1の軸方向端部で導電性巻線を取り囲む第1の樹脂ダムであって、少なくともスロットの第1の軸方向端部における導電性巻線とスロットの内面との間の空間を介した液体連通を遮断する第1の樹脂ダムと、スロット内にあってスロットの第1の軸方向端部で第1の樹脂ダムに接する絶縁樹脂とを備える。
【0005】
本開示の別の態様は、上述の態様を包含し、第1の樹脂ダムは、スロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分を含む。
【0006】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料は、内部に間隙を含む布を含んでおり、絶縁樹脂は、布の間隙に埋め込まれている。
【0007】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、導電性巻線とスロットの底部との間にも延在している。
【0008】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、スロット内の導電性巻線の半径方向内側にも延在している。
【0009】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、スロット内の導電性巻線の半径方向内側にも延在している。
【0010】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、電気部品内のスロットは、電気部品内に複数のスロットを含んでいて、各スロットは、第1の軸方向端部の外に延びる導電性巻線を含んでおり、第1の樹脂ダムは複数の第1の樹脂ダムを含んでいて、1つの第1の樹脂ダムが、複数のスロットの各スロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周囲に延在しており、絶縁樹脂は、各スロット内にあって、かつ各スロットの第1の軸方向端部において各々の第1の樹脂ダムの周囲にある。
【0011】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、複数のスロットの各スロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の1以上の部分を含む。
【0012】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、スロットの第1の軸方向端部の反対側にある第2の軸方向端部において導電性巻線を取り囲む第2の樹脂ダムをさらに備えており、導電性巻線は、スロットの第2の軸方向端部の外に延びており、第2の樹脂ダムは、少なくともスロットの第2の軸方向端部における導電性巻線とスロットの内面との間の空間を介した液体連通を遮断する。
【0013】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダム及び第2の樹脂ダムは、スロットの第1の軸方向端部及びスロットの第2の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分を含む。
【0014】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、スロットの第1の軸方向端部に当接するように構成された位置で導電性巻線から半径方向に延在するダム部材を含む。
【0015】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、導電性巻線は、導電性コアと該導電性コア上の絶縁皮膜とを含んでおり、ダム部材は、導電性巻線の絶縁皮膜の下に少なくとも部分的に延在する可撓性材料を含む。
【0016】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、ダム部材を導電性巻線の外面に結合するように構成された留め具を含む。
【0017】
本開示の一態様では、軸を有する電気機械を提供するが、本電気機械は、本体内に画成された複数のスロットを含む電気部品であって、各スロットが、電気機械の軸に対して半径方向及び軸方向に延在する電気部品と、各スロット内にあって、かつ各スロットの第1の軸方向端部の外に延びる導電性巻線と、複数のスロットの1以上のスロットの第1の軸方向端部にあって、かつ1以上のスロット内の導電性巻線を取り囲む第1の樹脂ダムであって、少なくとも1以上のスロットの第1の軸方向端部における導電性巻線と1以上のスロットの内面との間の空間を介した液体連通を遮断する第1の樹脂ダムと、1以上のスロット内にあって、第1の樹脂ダムに接する絶縁樹脂とを備える。
【0018】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、1以上のスロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分を含む。
【0019】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料は、内部に間隙を有する布を含み、絶縁樹脂は、布の間隙に埋め込まれている。
【0020】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、導電性巻線と、導電性巻線が位置するそれぞれのスロットの底部との間にも延在している。
【0021】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、導電性巻線が位置するそれぞれのスロット内の導電性巻線の半径方向内側にも延在し、可撓性材料の部分は、それぞれのスロットの第1の軸方向端部における導電性巻線の半径方向内側における導電性巻線上からの液体連通を遮断する。
【0022】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、可撓性材料の部分は、導電性巻線が位置するそれぞれのスロット内の導電性巻線の半径方向内側にも延在している。
【0023】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、複数のスロットの各スロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周囲に延在する第1の樹脂ダムを含んでおり、絶縁樹脂は、各スロット内にあって、かつ各スロットの第1の軸方向端部において各々の第1の樹脂ダムの周囲にある。
【0024】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、複数のスロットの1以上のスロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の1以上の部分を含む。
【0025】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、各スロットの第1の軸方向端部の反対側にある第2の軸方向端部において導電性巻線を取り囲む第2の樹脂ダムをさらに備えており、導電性巻線は、各スロットの第2の軸方向端部の外に延びており、第2の樹脂ダムは、少なくとも各スロットの第2の軸方向端部における導電性巻線と各スロットの内面との間の空間を介した液体連通を遮断する。
【0026】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダム及び第2の樹脂ダムは、各スロットの第1の軸方向端部及び各スロットの第2の軸方向端部において導電性巻線の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分を含む。
【0027】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、スロットの第1の軸方向端部に当接するように構成された位置で導電性巻線から半径方向に延在するダム部材を含む。
【0028】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、導電性巻線は、導電性コアと該導電性コア上の絶縁皮膜とを含んでおり、ダム部材は、導電性巻線の絶縁皮膜の下に少なくとも部分的に延在する可撓性材料を含む。
【0029】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムは、ダム部材を導電性巻線の外面に結合するように構成された留め具を含む。
【0030】
本開示の一態様では、方法を提供するが、本方法は、電気機械の電気部品内のスロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周囲に第1の樹脂ダムを形成するステップであって、導電性巻線が、スロットの第1の軸方向端部の外に延びる、ステップと、導電性巻線及びスロットに液体樹脂を施工するステップであって、第1の樹脂ダムが、スロットの第1の軸方向端部における導電性巻線とスロットの内面との間の空間を介しての液体樹脂の液体連通を遮断する、ステップと、液体樹脂を硬化させて、スロット内及び導電性巻線の周囲にあって、かつスロットの第1の軸方向端部における第1の樹脂ダムに接する絶縁樹脂を生じさせるステップとを含む。
【0031】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、第1の樹脂ダムを形成するステップは、スロットの第1の軸方向端部において導電性巻線の周りに可撓性材料の第1の部分を巻き付けることを含む。
【0032】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、導電性巻線とスロットの底部との間に可撓性材料の第2の部分を配置することをさらに含んでおり、第1の部分と第2の部分は同延である。
【0033】
本開示の別の態様は、上述の態様のいずれかを包含し、上記スロット又は上記スロットに隣接する電気部品内の別のスロットの一方の半径方向開口端において導電性巻線上に可撓性材料の第3の部分を配置することをさらに含んでおり、第1の部分、第2の部分及び第3の部分は同延である。
【0034】
この発明の概要の欄に記載した態様も含めて、本開示に記載した2以上の態様を組合せて、本明細書に具体的に記載されていない実施態様としてもよい。
【0035】
1以上の実施態様の詳細を、添付の図面及び以下の説明に記載する。その他の特徴、目的及び利点は、発明の詳細な説明、図面並びに特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本開示の上記その他の特徴については、本開示の様々な実施形態について記載する添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによって理解を深めることができよう。
【
図1】本開示の実施形態に係る電気部品を含む電気機械の簡略化した断面側面図。
【
図2】本開示の実施形態に係る電気部品の導電性巻線なしでの簡略化した端面図。
【
図3】本開示の実施形態に係る電気部品の導電性巻線及び樹脂ダムを含めた端面図。
【
図4】本開示の実施形態に係る電気部品のスロット内の例示的な導電性巻線の、樹脂ダムなしでの軸方向断面図。
【
図5】本開示の実施形態に係る樹脂ダムを含む電気部品の本体の軸方向端部の周方向断面図。
【
図6】本開示の他の実施形態に係る樹脂ダムを含む電気部品の本体の軸方向端部の周方向断面図。
【
図7】本開示の他の実施形態に係る樹脂ダムを含む電気部品の本体の軸方向端部の周方向断面図。
【
図8】本開示の実施形態に係る樹脂ダムを両方の軸方向端部に含む電気部品の本体の周方向断面図。
【
図9A】
図5に示す導電性巻線の周囲に巻き付けられた可撓性材料の部分(黒い太線で示す)の概略図。
【
図9B】別の実施形態に係る導電性巻線の周囲に巻き付けられた可撓性材料の部分(黒い太線で示す)の概略図。
【
図10】本開示の実施形態に係る、スロット内に延在しない可撓性材料の単一の部分(黒い太線で示す)を含む樹脂ダムを備える電気部品の概略端面図。
【
図11】本開示の実施形態に係るスロット内に延在しない可撓性材料の単一の部分を含む樹脂ダムを備える電気部品の概略端面図。
【
図12】本開示の実施形態に係る、スロット内に延在しない可撓性材料の単一の部分が導電性巻線上に設けられている樹脂ダムの斜視図。
【
図13】本開示の実施形態に係る、導電性巻線に結合したダム部材を含む樹脂ダムの斜視図。
【
図14】本開示の他の実施形態に係る、留め具を用いて導電性巻線に結合したダム部材を含む樹脂ダムの斜視図。
【0037】
なお、本開示の図面は必ずしも縮尺通りではない。図面は、本開示の典型的な態様を例示するものにすぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。図面において、同様の符号は複数の図面間で同様の構成要素を表す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
まず、本開示を明確に説明するため、発電機及び電動機のような電気機械の例示的用途において関連する機械部品について言及及び説明する際に、用語を選択する必要がある。できるだけ、当技術分野で一般的な用語を、その通常の意味と一致するように用いる。別途記載されていない限り、かかる用語は、本願の文脈及び添付の特許請求の範囲に則して広義に解釈すべきである。ある部品について幾つかの異なる又は重複する用語を用いて言及されることが多々あることは当業者には明らかであろう。本明細書において、単一の部材として記載したものであっても、別の文脈では複数の部品からなるものとして記載することもある。或いは、本明細書のある箇所で複数の部品を含むものとして記載したものであっても、別の箇所では単一の部材として記載することもある。
【0039】
さらに、本明細書では幾つかの記述的用語を繰返し用いるが、本欄の冒頭でこれらの用語を定義しておくと有用であろう。これらの用語及びその定義は、別途明記しない限り、以下の通りである。中心軸に対して異なる半径方向位置に配置された部品について説明する必要が多々ある。「軸方向」という用語は、軸(例えば発電機又は電動機のような電気機械の軸)に平行な運動又は位置をいう。「半径方向」という用語は、軸(例えば導電性巻線の軸又は電気機械の軸)に垂直な運動又は位置をいう。このような場合、第1の部品が第2の部品よりも軸に近い場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向内側」又は「中心軸近位側」と記載される。一方、第1の部品が第2の部品よりも軸から遠く位置する場合、本明細書では第1の部品は第2の部品の「半径方向外側」又は「中心軸遠位側」と記載される。最後に、「周方向」という用語は、軸を中心とした運動又は位置(例えば発電機又は電動機の固定子の本体の周方向内面)をいう。自明であろうが、かかる用語は、電気機械の軸に対して適用される。
【0040】
さらに、本明細書では、以下に記載する通り、幾つかの記述的用語を繰返し用いる。「第1の」、「第2の」及び「第3の」という用語は、ある部品を他の部品と区別するために互換的に用いられ、個々の部品の位置又は重要性を示すものではない。
【0041】
本明細書で用いる用語は、特定の実施形態を説明するためのものにすぎず、開示内容を限定するものではない。本明細書において、単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。本明細書において、「備える」、及び/又は「含む」という用語は、記載した特徴、整数、ステップ、操作、構成要素及び/又は部品が存在することを示し、他の1以上の特徴、整数、ステップ、操作、構成要素、部品及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではない。「任意」又は「適宜」という用語は、その用語に続いて記載された事象又は状況が起きても起きなくてもよいこと或いはその用語に続いて記載された部品又は構成要素が存在しても存在しなくてもよいことを意味しており、かかる記載はその事象又は状況が起こる場合と起こらない場合並びにその部品又は構成要素が存在する場合と存在しない場合とを包含する。
【0042】
ある構成要素又は層が別の構成要素又は層「の上」、「に係合」、「に接続」又は「に結合」しているという場合、その別の構成要素又は層の上に直接位置していても、その別の構成要素又は層に直接係合、接続又は結合していてもよいし、或いは介在する構成要素又は層が存在していてもよい。対照的に、ある構成要素が別の構成要素又は層「の直接上」、「に直接係合」、「に直接接続」又は「に直接結合」しているという場合、介在する構成要素又は層は存在しない。構成要素間の関係について説明するために用いられる他の用語(例えば「~の間」と「直接~の間」、「隣接」と「直接隣接」など)も同様に解釈される。本明細書で用いる「及び/又は」という用語は、記載されたものの1以上のあらゆるすべての組合せを包含する。本明細書において、「結合」及び「装着」という用語は互換的に用いられる。
【0043】
上述の通り、本開示は、電気機械用の電気部品を提供する。電気部品は、スロットが画成されている本体と、スロットの1以上の軸方向端部の外に延びる導電性巻線とを含む。典型的には、本体は、複数のスロットが形成された磁性材料を含んでいて、各スロットは、その中に導電性巻線が配置されるように構成される。電気部品としては、導電性巻線を有するあらゆる電気機械部品が挙げられ、例えば、限定されるものではないが、電動機又は発電機用の固定子、或いは電動機用の特定の回転子などがある。電気部品は、スロットの軸方向端部において導電性巻線の周囲に樹脂ダムを含む。樹脂ダムは、製造時に、少なくともスロットの軸方向端部における導電性巻線とスロットの内面との間の空間を介した液体の連通を遮断する。例えば、樹脂ダムは、導電性巻線及びスロットに液体絶縁樹脂を含浸させるためのVPI工程中及び工程後におけるスロットからの液体絶縁樹脂の漏れを阻止し得る。樹脂ダムはまた、後段の樹脂硬化工程の際の漏れを阻止することもできる。電気部品の各スロット内のいかなる数の導電性巻線(例えば1個、数個又は全部)に、樹脂ダムを設けてもよい。電気部品は、スロット内にあってスロットの1以上の軸方向端部で樹脂ダムに接する(固化した)絶縁樹脂も含んでいる。したがって、樹脂ダムは最終的な電気部品の一部である。樹脂ダムは、VPI工程中及び工程後に、液体樹脂を導電性巻線の周囲及びスロット内に保持する。さらに、樹脂ダムは、加熱硬化工程に際して、高温で液体絶縁樹脂の粘度が低下し、電気部品の回転が起きたとしても、液体絶縁樹脂を保持する。その結果、樹脂ダムはスロットの完全な充填及び導電性巻線の封入を担保する。さらに、樹脂ダムは、導電性巻線の部材の周りの絶縁樹脂に薄い絶縁領域及び/又はボイドが生成するのを防いで、電気機械の良好な性能を担保する。
【0044】
図1は、本開示の実施形態に係る電気部品102を含む電気機械100の概略図を示す。説明の便宜上、電気機械100として、固定子106と回転子108を含む発電機104を挙げる。この例では、電気部品102は固定子106を含む。固定子106は、固定子フレーム110と、以下でさらに説明する通り、磁性コアの周りに導電性巻線118を含んでいてもよい本体112とを含むことができる。電気機械100の回転子108は、回転軸線RAを有するシャフト114をさらに含んでいてもよい。固定子106は、回転子108の周囲に配置される。シャフト114は、例えばガスタービン、蒸気タービン、風力タービン、水力タービン、内燃機関その他の回転出力を与えるように構成された適切な装置によって駆動されて回転軸の周りで回転する。シャフト114は、実質的に円筒形の本体116に結合している(なお、回転子108は、代わりに、磁性コアの周りの導電性巻線を含んでいてもよい)。回転子108は固定子106内に配置され、静止磁場を与えるように構成されている。明らかであろうが、固定子106内で回転子108が回転すると、導電性巻線に電流が生じ、発電機104からの電気出力を生成する。
【0045】
図2は、電気部品102、例えば発電機104の固定子106の軸方向端面図を導電性巻線118(
図1)及び回転子108なしで示したものであり、
図3は、電気部品102、例えば発電機104の固定子106の軸方向端面図を導電性巻線118と共に、ただし回転子108を除いて示したものである。電気機械100用の電気部品102は、複数のスロット120が画成された本体112を含んでいてもよい。すなわち、電気部品102は、その本体112に画成された複数のスロット120を含んでいる。各スロット120は、電気機械100の軸線RA(
図1)に対して半径方向及び軸方向に延在している。例えば電気機械100の寸法に依存するが、任意の数のスロット120を設けて、スロット内に任意の数の導電性巻線118が配置されるようにしてもよい。
図3に示すように、幾つかの導電性巻線118は、導電性巻線118を本体112内に戻すためのUターン122を含んでいるが、他の導電性巻線124は、他の構造との接続のため本体112から軸方向に離れて延在する。このようにして、様々な導電性巻線118は、公知の様式で電気部品102内を折り返し往復する。本体112は電気部品102の磁性コア126を提供し、電気機械100に適した現在公知の又は将来開発される磁性材料を含むことができる。本体112及びそのスロット120はどのように作製してもよく、種々の構成の中でも、例えば管状部材にスロットを機械加工してもよいし、スロット付プレートを積み重ねてもよい。
【0046】
図3に示すように、電気部品102は、各スロット120内に導電性巻線118を含む。導電性巻線118は、スロット120の第1の軸方向端部130の外に延びる。
図1に示すように、本体112及びスロット120は、第1の軸方向端部130の反対側に第2の軸方向端部132も含む。導電性巻線118は、スロット120の第2の軸方向端部132の外にも延びている。導電性巻線118は、電気機械で用いられるあらゆる形態の導電性巻線(コイルとも呼ばれる)を含んでいてもよい。
図4は、スロット120内の例示的な導電性巻線118の軸方向断面図を、樹脂ダムなしで、示したものである。導電性巻線118は、例えば多数の導電性部材136を含んでいてもよく、各々絶縁テープ138(例えばマイカテープ)その他の絶縁層で互いに絶縁されている。各導電部材136は、様々な形態の導電性材料、例えば、限定されるものではないが、中空(図示)、中実、撚線又は異なるタイプの導電性材料の混合体などを含むことができる。接地壁絶縁層140で、導電性部材136及び絶縁テープ138を取り囲んでもよい。
図4は、導電性巻線118とスロット120の底部144(すなわち導電性巻線118の半径方向外側146)の間に延在する可撓性材料の部分142も示す。可撓性材料層の部分150が、適宜、スロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152に延在していてもよい。可撓性材料の部分142,150は、電気機械の作動時にスロット120内の導電性巻線118の損傷を低減するため、衝撃及び/又は振動を吸収することができる任意の材料を含むことができる。特定の実施形態では、可撓性材料の部分142,150は、フェルトのような多孔質布、例えば繊維同士が絡み合った不織布を含んでいてもよい。可撓性材料は、電気機械100の作業環境及び/又は本明細書に記載の樹脂ダム160の作成に耐えることができる有機又は無機材料で作ることができる。部分142,150は、後述の通り、絶縁樹脂170を受け入れる間隙も含んでいる。保持エレメント154を、スロット120内の導電性巻線118の上に配置してもよい。保持エレメント154は、導電性巻線118をスロット120内に物理的に保持するための現在公知の又は将来開発される任意の機構を含むことができる。
【0047】
図3及び
図5~
図8に示すように、電気部品102は、スロット120の軸方向端部130及び/又は132において導電性巻線118の周囲に樹脂ダム160を含んでいる。
図5~
図8は、本開示の様々な実施形態に係る樹脂ダム160を含む電気部品102の本体112の周方向断面図を示す。いずれかの軸方向端部130,132の樹脂ダムには160という符号を付し(例えば
図5~
図7参照)、スロット120の第1の軸方向端部130の樹脂ダムには160Aという符号を付し(例えば
図3及び
図8参照)、スロット120の第2の軸方向端部132の樹脂ダムには160Bという符号を付した(例えば
図8参照)。樹脂ダム160は、少なくともスロット120の軸方向端部130,132における導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162を介した液体連通を遮断する。以下でさらに説明する通り、電気部品102は、スロット120内にあってかつスロット120の軸方向端部130,132で樹脂ダム160に接する(硬化、固化した)絶縁樹脂170も含んでいる。なお、
図4では、説明の便宜上、絶縁樹脂170は拡大して描かれており、導電性巻線118はスロット120の内面164に密着している。絶縁樹脂170は、可撓性材料の部分142,150及び樹脂ダム160に埋め込まれている(
図5の断面では暗い黒線で示してあるが、他の断面図では網掛けされている)。
【0048】
樹脂ダム160は、任意の数のスロット120(例えば、1個、数個又は全部のスロット)の軸方向端部130,132に設けてもよい。樹脂ダム160の施工は、例えば、製造時にスロット120からの液体絶縁樹脂の漏れが懸念される場合などに基づいてユーザが決定し得る。
【0049】
樹脂ダム160は、本開示の実施形態に係る多数の形態をとることができる。
【0050】
ある実施形態では、樹脂ダム160は、可撓性材料の1以上の部分182を含むことができる。樹脂ダム160の形成に使用される可撓性材料の部分182は、導電性巻線118とスロット120の底部144の間(すなわち、導電性巻線118の半径方向外側146の下)に延在する可撓性材料の部分142とは別個であっても、或いは同延であってもよい。加えて/或いは、樹脂ダム160の形成に使用される可撓性材料の部分182は、スロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152に延在する可撓性材料の部分150とは別個であっても、或いは同延であってもよい。可撓性材料の部分142,150,180は、その機能(例えばスロット120内の衝撃/振動吸収及び/又は樹脂ダム160の形成)に必要な任意の幅を有し得る。可撓性材料の部分142,150,180は、それらの部分にわたって寸法を変えてもよく、例えば、可撓性材料の1枚の同延ストリップの場合、スロット120内の部分142,150は、樹脂ダム160の部分182よりも幅及び/又は高さが薄くてもよい。
【0051】
図5において、可撓性材料の単一の同延部分は、導電性巻線118とスロット120の底部144との間に延在し(部分142)、スロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152に延在し(部分150)、かつスロット120の軸方向端部130,132で導電性巻線118の周りに巻き付けられている(可撓性材料の巻付け部分182)。
図6の周方向断面図では、可撓性材料の単一の同延部分180は、導電性巻線118とスロット120の底部144との間に延在し(部分142)、スロット120の軸方向端部130,132で導電性巻線118に巻き付けられている(可撓性材料の巻付け部分182)。
図7の周方向断面図では、可撓性材料の単一の同延部分180は、スロット120内の導電性巻線118の内側152に延在し(部分150)、スロット120の軸方向端部130,132で導電性巻線118に巻き付けられている(可撓性材料の巻付け部分182)。
図12は、本明細書の他の箇所で説明するが、樹脂ダム160専用の可撓性材料の単一部分182を示す。
【0052】
可撓性材料の部分142,150を設ける場合、部分142,150は、スロット120に沿った任意の距離に延在し得る。部分142,150を各軸方向端部130,132から延在して設ける場合、スロット120内のそれらの端部は、スロット120内で交わらなくてもよく、すなわちそれらの端部の間に絶縁樹脂170が存在していてもよい。或いは、両方の軸方向端部130,132から延在する部分142及び/又は150の端部は、スロット120内で互いに当接してもよいし、或いは重なり合っていてもよい。
図8の断面図に示すように、ある実施形態では、可撓性材料の単一の部分で、部分142,150及び両軸方向端部130,132の巻付け部分182をもたらすことができる。例えば、スロット120の底部144から反時計回りに移動させて、可撓性材料の部分はスロット120の第1の軸方向端部130までスロット120内の部分142として延在してもよく、スロット120の第1の軸方向端部130で第1の樹脂ダム160Aを形成し(第1の軸方向端部130で導電性巻線118の周りに巻き付けられ)、第1の軸方向端部130からスロット120の第2の軸方向端部132まで部分150として延在し、第2の軸方向端部132で第2の樹脂ダム160Bを形成し(第2の軸方向端部132で導電性巻線118の周りに巻き付けられ)、スロット120の第2の軸方向端部132までスロット120内に部分142として延在する。
【0053】
可撓性材料の部分182は、樹脂ダム160を形成するのに十分な任意の様式で導電性巻線118の周りに巻き付けることができる。すなわち、部分182は、導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162からの液体絶縁樹脂の漏れを低減又は防止するための望ましいいかなる方法で包んでもよい。
図9Aは、
図5に示すような導電性巻線118の周りに巻き付けられた可撓性材料の部分182(黒い太線で示す)の概略図を示す。この非限定的な例では、可撓性材料の部分は、スロット120の底部144の導電性巻線118の下から延在し(部分142、頁外)、次いで樹脂ダム160の部分182として、導電性巻線118に沿って(電気部品102の)半径方向内向きに延在し、導電性巻線118の半径方向内側152(スロットの外側)を周方向に通過し、次いで導電性巻線118に沿って半径方向外向きに、導電性巻線118の下(図示)、再び半径方向内向きに、次いでそれ自体の中に挟み込んでから、部分150としてスロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152(
図9Aの頁内)に入る。
図9Bは、別の実施形態に係る導電性巻線118の周りの周りに巻き付けられた可撓性材料の部分(黒い太線で示す)の概略図を示す。この非限定的な例では、可撓性材料の部分は、所与のスロット120の底部144の導電性巻線118の下からに延在し(部分142、頁外)、次いで部分182として導電性巻線118に沿って(電気部品102の)半径方向内向きに延在し、導電性巻線118の半径方向内側152(所与のスロットの外側)を周方向に通過し、次いで導電性巻線118に沿って半径方向外向きに、導電性巻線118の下(図示)、再び半径方向内向きに延在する。この位置で、部分182はそれ自体の下に挟み込んでもよい。しかる後、可撓性材料は、部分142が(
図9Bの頁内に)配置された所与のスロット120に隣接する(図の右側)別のスロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152に部分150として(
図9Bの右側に)延びてもよい。したがって、可撓性材料の部分142,150,182は、樹脂ダム160に及び複数のスロット120に使用することができる。
図9A~
図Bに関して、可撓性材料の部分は、便宜上、弛んだ状態で描かれているが、部分は樹脂ダム160を形成するため張った状態で作られる。
【0054】
可撓性材料の部分182は、製造時に樹脂ダム160が適切に機能し、かつ所定の位置に留まるのを担保するレベルの緊張性を有することができる。可撓性材料の部分182は、軸方向端部130,132及び導電性巻線118とスロット120との間の及び空間162に当接する所定の位置に、製造時に樹脂ダム160が適切に機能し、かつ所定の位置に留まるのを担保する方法で、配置及び固定することができる。
【0055】
図10及び
図11は、樹脂ダム160用の可撓性材料の単一部分182がスロット120内に延在していない電気部品102の概略端面図を示す。可撓性材料の部分182は、任意の数のスロット120の任意の数の導電性巻線118の周囲に延在し、スロット120の所与の軸方向端部130又は132で樹脂ダム160を形成する。すなわち、可撓性材料180の部分は、任意の数のスロット120から延在する任意の数の導電性巻線118の周りを包んで、任意の数の樹脂ダム160を形成し得る。可撓性材料180の部分182はいかなる長さであってもよい。このようにして、電気部品102の所与の軸方向端部130,132のスロット120を出る導電性巻線118の1個、数個又は全部が樹脂ダム160を含むことができる。可撓性材料の部分182は、導電性巻線118の周りで任意の経路(例えば正弦波形(
図10)又は個別巻き(
図11))を取ることができる。
【0056】
図12は、各導電性巻線118がスロット120内に延在しない可撓性材料の単一部分182をそれぞれ有している樹脂ダム160の実施形態の斜視図を示す。可撓性材料の部分182は、スロット120の軸方向端部130,132で単一の導電性巻線118の周りに巻き付けられているだけであってもよい。したがって、各導電性巻線118は、その樹脂ダム160を形成する可撓性材料の部分182をそれぞれ含んでいる。この構成の1つの樹脂ダム160が
図12に示してあるが、スロット120に設けられる導電性巻線118の1個、数個又は全部をそのように構成してもよい。各部分182は、所定の位置に留まるのを担保する任意の様式で巻き付けることができ、例えば、
図9に示すものと同様に巻き付けることができる。
【0057】
図3及び
図5に示すように、軸方向端部130及び/又は132で導電性巻線118の周りに巻き付けられる可撓性材料の部分182は、導電性巻線118とスロット120との間の空間162を物理的に覆うべく、導電性巻線118から半径方向に延在し、かつスロット120の軸方向端部130,132と接する樹脂ダム160を生じる。このようにして、樹脂ダム160は、スロット120からの液体樹脂の漏れを阻止する。加えて、可撓性材料の部分142,150,182は、絶縁樹脂170が布その他の材料の間隙に埋め込まれるように、内部に間隙を含む布又は他の可撓性材料を含んでいてもよい。その結果、硬化後に、スロット120内の導電性巻線118の周りで絶縁樹脂170の薄い領域及びボイドが減り、電気機械100の性能が向上する。最終電気機械100において、絶縁樹脂170は、樹脂ダム160内に埋め込まれていてもよく、及び/又は樹脂ダム160を取り囲んでいてもよい。
【0058】
前述の実施形態のいずれにおいても、例えば
図3及び
図5に示すように、可撓性材料の部分182が、軸方向端部130及び/又は132で導電性巻線118の周りに巻き付けられて、導電性巻線118から半径方向に延在し、かつスロット120の軸方向端部130,132と接する樹脂ダム160を生じ、導電性巻線118とスロット120との間の空間162を物理的に覆う。このようにして、樹脂ダム160は、スロット120からの液体樹脂の漏れを遮断する。加えて、可撓性材料の部分142,150,182は、絶縁樹脂170が布又は他の材料の間隙に埋め込まれるように、その内部に間隙を含む布又は他の可撓性材料を含んでいてもよい。その結果、硬化後、スロット120内の導電性巻線118の周りで絶縁樹脂170の薄い領域やボイドが減り、電気機械100の性能が向上する。最終電気機械100において、絶縁樹脂170は、樹脂ダム160内に埋め込まれていてもよく、及び/又は樹脂ダム160を取り囲んでいてもよい。
【0059】
他の実施形態では、樹脂ダム160は、可撓性材料の部分182を含まないが、可撓性又は剛性材料からなるダム部材190を含む。
図13及び
図14は、樹脂ダム160が、導電性巻線118に結合したダム部材190を含む実施形態の斜視図を示す。この形態の樹脂ダム160は、少なくともスロット120の軸方向端部130及び/又は132における導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162を介しての液体連通を遮断するため、スロット120のそれぞれの導電性巻線118に沿ってかつ軸方向端部130,132に接して配置することができる。さらに具体的には、特定の実施形態では、樹脂ダム160は、スロット120の軸方向端部130又は132に当接するように構成された位置で導電性巻線118から半径方向に延在するダム部材190を含む。上述の通り、導電性巻線118は、導電性コア(例えば多数の中空導電性部材136を含む)と、導電性コア上の絶縁皮膜(例えば絶縁テープ138(マイカテープその他の絶縁層)及び/又は接地壁絶縁層140を含む)とを含む。ある実施形態では、
図13に示すように、ダム部材190は、導電性巻線118の絶縁皮膜(例えばテープ138及び/又は絶縁層140)の下に部分的に延在する可撓性材料(例えば上述のもの)を含んでいてもよい。導電性コア(部材136)(及び絶縁皮膜の幾つかの内層)と絶縁皮膜の外層との間に位置するダム部材190の部分192を参照されたい。この場合、樹脂ダム160は、スロット120内に配設される前の導電性巻線118の一部として形成されてもよいし、或いはスロット120内に配設した後で絶縁皮膜がその上に位置するように導電性巻線118に追加してもよい。
【0060】
他の実施形態では、
図14に示すように、樹脂ダム160は、ダム部材190を導電性巻線118の外面195に結合するように構成された留め具196を含む。この場合、樹脂ダム160は、スロット120内への配設前又は配設後の導電性巻線118上に配置し得る。留め具196は、ダム部材190への結合に適した現在公知の又は将来開発される任意の留め具を含むことができる。図に示す非限定的な例では、ダム部材190は、導電性巻線118上に配置することができ、留め具196の連結によって閉じることができる伸縮式C字型エレメント198を含む。この例では、ダム部材190は、前述の材料と同じくらい柔軟な可撓性材料(例えばフェルト)を含んでいてもよいし、或いは若干硬いもの(例えば軟質プラスチック)であってもよい。いずれにしても、留め具196は、ダム部材190を導電性巻線118の外面195に、スロット120の軸方向端部130,132に接して固定するための、あらゆる形態の締結機構(例えば、限定されるものではないが、雄/雌コネクタを有するC字型部材(図示)、面ファスナーなど)を含んでいてもよい。すなわち、留め具196は、ダム部材190を導電性巻線118及びスロット120に対して導電性巻線118から半径方向に延在するように閉じて固定する。樹脂ダム160は、液体樹脂を確実に遮断するため締結前にスロット120の軸方向端部130,132に接するように配置することができる。
【0061】
図3に示すように、電気部品102が、樹脂ダム160を必要とする複数のスロットを含んでいる場合、1又は複数の樹脂ダム160Aを設けることができる。一実施形態では、ある第1の樹脂ダム160Aは、複数のスロットの各スロット120の第1の軸方向端部130において導電性巻線118の周囲に延在し得る。電気部品102は、各スロット120内及び各スロット120の第1の軸方向端部130の各々の第1の樹脂ダム160Aの周囲に絶縁樹脂170も含んでいる。第1の樹脂ダム160Aは、本明細書に記載の任意の形態を取り得る。例えば、第1の樹脂ダム160Aは、複数のスロットの1以上のスロット120の第1の軸方向端部130で導電性巻線118の周りに巻き付けられた可撓性材料の1以上の部分182を含んでいてもよい。
図8に最もよく示されているように、第2の樹脂ダム160Bは、スロット120の第1の軸方向端部130と反対側の第2の軸方向端部132の導電性巻線118の周囲にあってもよい。導電性巻線118は、スロット120の第2の軸方向端部132の外に延びており、第2の樹脂ダム160Bは、少なくともスロットの第2の軸方向端部132における導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162を介しての液体連通を遮断する。第2の樹脂ダム160Bは、本明細書に記載の任意の形態を取り得る。例えば、第2の樹脂ダム160Bは、複数のスロットの1以上のスロット120の第2の軸方向端部132において導電性巻線118の周りに巻き付けられた可撓性材料の1以上の部分182を含んでいてもよい。
図8について説明したように、第1の樹脂ダム160A及び第2の樹脂ダム160Bは、スロット120の第1の軸方向端部130及びスロットの第2の軸方向端部132において導電性巻線118の周りに巻き付けられた可撓性材料180の単一部分を含んでいてもよい。或いは、各軸方向端部130,132は、それぞれの樹脂ダム160であって、反対側の軸方向端部の樹脂ダムとは不連続な、樹脂ダム160を別個に有していてもよい。
【0062】
次に、本開示の実施形態に係る方法について説明する。この方法は、
図3及び
図5~
図14に示すように、電気機械100の電気部品102におけるスロット120の軸方向端部130及び/又は132において導電性巻線118の周囲に樹脂ダム160を形成することを含む。導電性巻線118は、スロット120の軸方向端部130,132の外に延びており、様々な導電性巻線118は、公知の様式で電気部品102内を折り返し往復する。樹脂ダム160は、本明細書に記載の技術及び構成を用いて形成し得る。例えば、
図15及び
図16の斜視図に示すように、樹脂ダム160の形成は、スロット120の第1の軸方向端部130において導電性巻線118の周りに可撓性材料の部分182を巻き付けることを含んでいてもよい。適宜、
図4~
図6及び
図8に示すように、樹脂ダム160の形成は、導電性巻線118とスロット120の底部144との間に可撓性材料の部分142を配置することも含んでいてもよく、部分142と部分182は同延である。適宜、
図5、
図7、
図8及び
図17に示すように、樹脂ダム160の形成は、可撓性材料の部分150を、部分142が配置されるスロット120内或いは
図9Bに示すように部分142が配置されるスロット120に隣接する電気部品102内の別のスロット120内の導電性巻線118の半径方向内側152に配置することを含んでいてもよい。ある実施形態では、部分142,150,182は同延、すなわち単一の長さである。他の実施形態では、各部分142,150,182は別々であってもよいし、2つの連続する部分が同延であってもよい。樹脂ダム160は、少なくとも導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162を塞ぐために、スロット120の軸方向端部130,132に対して押し付けてもよい。
【0063】
本方法は、導電性巻線118及びスロット120に液体樹脂を施工することを含んでいてもよい。液体樹脂の施工は、現在公知の又は将来開発される真空加圧含浸(VPI)プロセスを含んでいてもよい。
図18~
図20の斜視図に示すように、樹脂ダム160は、少なくともスロット120の軸方向端部130,132における導電性巻線118とスロット120の内面164との間の空間162を介した液体樹脂の液体連通を遮断する。本方法は、
図18(曲線矢印)にも示すように、液体樹脂を硬化させて、スロット120内、導電性巻線118の周囲、及びスロット120の軸方向端部130,132における樹脂ダム160に接する絶縁樹脂170を生じさせることも含む。硬化工程は、使用する絶縁樹脂に適した現在公知の又は将来開発される任意の熱プロセスを含むことができる。硬化工程は、電気部品の回転を含んでいてもよい。例えば
図18~
図20に示すように、硬化及び固化した絶縁樹脂170は、スロット120内及び樹脂ダム160に接して存在する。絶縁樹脂170は、可能な場合には、樹脂ダム160にも埋め込まれ、樹脂ダム160を取り囲んでもよい。樹脂ダム160は、取り外す必要はなく、電気機械100の電気部品102(例えば固定子106)の一部のままであってもよい。
【0064】
本開示の実施形態は、様々な技術的及び商業的利点をもたらし、その具体例について本明細書に記載してきた。例えば、本開示の教示内容は、導電性巻線118及びスロット120の完全な絶縁を可能にし、絶縁体内の薄い領域又はボイドを減少させることができ、部分放電(すなわちコロナ)を減少させ、電気機械100の性能向上をもたらす。
【0065】
添付の図面は、本開示の幾つかの実施形態に関する処理の幾つかを示す。これに関して、各図面は、記載された方法の実施形態に関連するステップ又はプロセスを表す。幾つかの別の実施態様では、図面に記載された行為は、関与する行為によっては、図に記された順序通りに起こらなくてもよいし、或いは例えば実質的に同時に又は逆の順序で実施してもよい。
【0066】
本明細書及び特許請求の範囲で用いる近似表現は、数量の修飾語であって、その数量が関係する基本機能に変化をもたらさない許容範囲内で変動し得る数量を表すために適用される。したがって、「約」、「略」及び「実質的に」のような用語で修飾された値はその厳密な数値に限定されない。場合によっては、近似表現は、その値を測定する機器の精度に対応する。本明細書及び特許請求の範囲において、数値限定の範囲は互いに結合及び/又は交換可能であり、かかる範囲は、前後関係等から明らかでない限り、その範囲に含まれるあらゆる部分範囲を特定しかつ包含する。範囲の特定の値に用いられる「約」は、上下限に適用され、その値を測定する機器の精度に依存する場合を除いて、記載された数値の±10%を示すことがある。
【0067】
以下の特許請求の範囲において機能的記載によって特定された構成要素の対応する構造、材料、行為及び均等物は、特許請求の範囲に具体的に記載された他の構成要素と組合せて機能を発揮するあらゆる構造、材料又は行為を包含する。本開示の記載は、例示及び説明を目的としたものであり、網羅的なものでもなければ、開示された形態に限定するものでもない。本開示の技術的範囲及び技術的思想から逸脱せずに、数多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本開示の実施形態は、本開示の原理及び実用的用途の説明として最も適しかつ当業者が様々な実施形態に関する開示内容及び特定の用途に適した様々な修正について理解できるように、選択して記載したものである。
【符号の説明】
【0068】
100 電気機械
102 電気部品
112 電気部品の本体
118 導電性巻線
120 スロット
130,132 スロットの軸方向端部
160,160A,160B 樹脂ダム
162 導電性巻線とスロットの内面との間の空間
164 スロットの内面
170 絶縁樹脂
190 ダム部材
196 留め具
【外国語明細書】