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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157029
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ハーブの香味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20231019BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20231019BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231019BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231019BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231019BHJP
   A23L 29/00 20160101ALN20231019BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L27/20 D
A23L2/00 B
A23L2/52
A23L2/38 C
A23L29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066658
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】303044712
【氏名又は名称】三井農林株式会社
(72)【発明者】
【氏名】大野 敦子
【テーマコード(参考)】
4B035
4B047
4B117
【Fターム(参考)】
4B035LC01
4B035LG05
4B035LG37
4B047LB08
4B047LF10
4B047LG06
4B047LG37
4B117LC02
4B117LG18
4B117LK07
4B117LP01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ハーブ本来の香味を有する嗜好性の高いハーブティー用のハーブの香味改善方法及びハーブの製造方法を提供すること。
【解決手段】乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加することを特徴とするハーブの香味改善方法であって、前記乾燥ハーブがカモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム及びルイボスの中から選ばれる1種以上であることを特徴とするハーブの香味改善方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを添加することを特徴とするハーブの香味改善方法。
【請求項2】
ハーブの香味改善が、ハーブのフレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感の付与、および、ミネラル感または嫌味の低減方法の少なくとも1つ以上である請求項1に記載のハーブの香味改善方法。
【請求項3】
乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加することを特徴とする請求項1または2に記載のハーブの香味改善方法。
【請求項4】
乾燥ハーブがカモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム及びルイボスの中から選ばれる1種以上である請求項1~3のいずれかに記載のハーブの香味改善方法。
【請求項5】
ホトリエノールを25~200ppm添加されたことを特徴とする乾燥ハーブ。
【請求項6】
乾燥ハーブがハーブティー用であって、カモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム及びルイボスの中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項5に記載のハーブ。
【請求項7】
乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加することを特徴とするハーブの製造方法。
【請求項8】
乾燥ハーブがハーブティー用であって、カモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム、ルイボスの中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項7に記載のハーブの製造方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥ハーブの香味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハーブは、カフェインが含まれていないことやハーブ自体の生理機能性を期待して、あるいは止渇用や香味を楽しむことを目的として幅広い年齢層に親しまれている。特に植物の葉、花、果実などを煎じたり、抽出するなどして飲用するハーブティーは、健康志向やナチュラル志向の高まりとともに、食後やデザートと一緒に飲用するほか、リラックスやリフレッシュ効果を期待して仕事中の休憩時間や就寝前など様々なシーンで飲用されている。
【0003】
ハーブティーに使用されるハーブは、乾燥したものが広く流通されていることもあり、ハーブ本来のフレッシュさは損失してしまい、ハーブのよさを十分に味わうことができなかった。また、ハーブ特有の生薬臭やえぐ味により、ハーブティーを敬遠してしまう人も少なくない。
ハーブの香味改善方法として、例えば、ガラクトマンナンによる苦味、えぐ味、渋味等の嫌味や後味を改善する方法(特許文献1)、ハーブ含有飲料において、スクラロースによるハーブの臭気、渋味、及び苦味の抑制方法(特許文献2)、ハーブにネトルを配合することによってハーブの特異的な味覚および/または臭気を緩和する方法(特許文献3)が開示されている。
【0004】
ところで、ホトリエノールは、紅茶、高級烏龍茶に多量に含まれていることが、非特許文献1~3に記載されている。また、特許文献4には、3,7-ジメチル-1,5(E),7-オクタトリエン-3-オール(ホトリエノール)を香料組成物として飲料に添加することによって、自然で天然感のある香気を賦与する方法が、特許文献5にはホトリエノールが加熱後にも保持された茶飲料として、ホトリエノールとアスコルビン酸類とを含有してホトリエノールの含有量が10ppb以上である茶飲料が開示されている。
さらに、ホトリエノールの生理機能効果として、自律神経調節効果(特許文献6)、睡眠改善効果(特許文献7)が知られている。しかし、ホトリエノールにハーブの香味に対する効果があることはこれまで知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-218936号公報
【特許文献2】特開2002-306142号公報
【特許文献3】特開2004-008051号公報
【特許文献4】特開2000-192073号公報
【特許文献5】特開2009-089641号公報
【特許文献6】特開2019-163248号公報
【特許文献7】国際公開第2020/059808号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】伊奈和夫、他3名共編、「茶の化学成分と機能」、弘学出版、2002年1月30日発行、p.49
【非特許文献2】Ogura,M.,et al.,Identification of Aroma Components during Processing of the Famous Formosa Oolong Tea “Oriental Beauty”,ACS Symposium Series Vol.988,2008 Food Flavor Capter 8,pp.87-97
【非特許文献3】Kawakami,M.,他3名, Aroma Composition of Oolong Tea and Black Tea by Brewed Extraction Method and Characterizing Compounds of Darjeeling Tea Aroma,J.Agric.Food Chem.1995,43,pp.200-207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ハーブの香味を改善する方法として上記のようないくつかの方法が開示されている。これらのガラクトマンナン、スクラロースまたはネトルを配合する方法では、ハーブ本来の香味が損なわれてしまう可能性があり、ハーブ本来のフレッシュさを保持しながら生薬臭さやミネラル感、えぐ味、渋味または後味の悪さといった嫌な味の改善を解決するためには十分ではなかった。
【0008】
したがって、本発明の課題はハーブ本来の香味を有する嗜好性の高いハーブティー用のハーブの香味改善方法を提供することにある。具体的には、ハーブのフレッシュ感、およびフラワリーまたはフルーティー感の付与、およびミネラル感または嫌味の低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、原料として使用するハーブ(原料ハーブともいう)にホトリエノールを添加したところ、香味において、ミネラル感や嫌な味(えぐ味、渋味、後味の悪さ)が抑えられることに加え、フレッシュさ、フラワリーまたはフルーティーな香味が付与されることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
[1]乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを添加することを特徴とするハーブの香味改善方法
[2]ハーブの香味改善が、ハーブのフレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感の付与、および、ミネラル感または嫌味の低減方法の少なくとも1つ以上である[1]に記載のハーブの香味改善方法
[3]乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加することを特徴とする[1]または[2]に記載のハーブの香味改善方法
[4]乾燥ハーブがカモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム及びルイボスの中から選ばれる1種以上である[1]~[3]のいずれかに記載のハーブの香味改善方法
[5]ホトリエノールを25~200ppm添加されたことを特徴とする乾燥ハーブ
[6]乾燥ハーブがハーブティー用であって、カモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム及びルイボスの中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする[5]に記載のハーブ
[7]乾燥ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加することを特徴とするハーブの製造方法
[8]乾燥ハーブがハーブティー用であって、カモミール、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム、ルイボスの中から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする[7]に記載のハーブの製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、乾燥したハーブのミネラル感(金属味)、または嫌味(えぐ味、渋味、後味の悪さ)を抑制しながらも、生のハーブのようなフレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感で表される爽快な香味を有するハーブを提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」とは、質量%を指す。また、「下限値~上限値」の数値範囲は、特に他の意味であることを明記しない限り、「下限値以上、上限値以下」の数値範囲を意味する。
【0013】
本発明におけるハーブの香味改善とは、水性溶媒で抽出した際の香味が、ミネラル感や嫌味を抑制しながらも、生のハーブのようなフレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感を付与することを意味する。
本発明におけるフレッシュ感とは、生ハーブのような新鮮さや爽快な香味を意味する。
本発明におけるフラワリーまたはフルーティー感とは、果実や花様のほのかな甘さ、または花の蜜のようなまろやかな自然な甘味を意味する。
本発明におけるミネラル感とは、重曹のような金属味(塩味を感じる金属味)、金気臭、またはぬるぬるとした感覚の味を意味する。
本発明における嫌味とは、えぐ味、苦味、後味の悪さ(後残りともいう)、酸化臭、イモ臭、薬草臭または枯草臭を意味する。
本発明における香味とは、飲料(ハーブ抽出液)を口に含んだ時、飲み込んだ時、または飲み込んだ後に感じる味と香りを意味する。
【0014】
本発明におけるホトリエノール添加前のハーブを原料ハーブ、ホトリエノール添加後をホトリエノール添加ハーブまたは本発明のハーブ、本発明のハーブで抽出したものをハーブ抽出液あるいはハーブティーとする。
本発明に用いる原料ハーブは、花、葉、実等から水等で抽出して飲用するハーブティー用の素材となるものを示す。原料ハーブは、上記植物原料を採取後、乾燥工程、切断又は裁断工程を経て得られ、乾燥ハーブ単品であるいは適宜ブレンドしたものを原料ハーブとして用いることができる。
具体的なハーブとしては、カモミール(ジャーマンカモミール)、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム、ルイボス、レモングラス、ラベンダー、ジャスミンフラワー、エルダーフラワー、エキナセア、オスマンサス(キンモクセイ)、オレンジピール、カレンデュラ(マリーゴールド、キンセンカ)、クロモジ、コーンフラワー (矢車菊)、サフラワー(べにばな)、ショウガ、シナモン、陳皮、甜茶、バジル、ハニーブッシュ、ブラックベリー(リーフ)、マテ茶、ユーカリ、ラベンダー、リンデン、レモンバーベナ、レモンピール、レモンマートル、ローズ、ローズマリー、ワイルドストロベリー(リーフ)から選ばれるハーブである。
中でも、カモミール(ジャーマンカモミール)、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム、ルイボス、レモングラス、ラベンダー、ジャスミンフラワー、エルダーフラワーが好ましく、カモミール(ジャーマンカモミール)、ペパーミント、ローズヒップ、ハイビスカス、レモンバーム、ルイボスがより好ましい。これらのハーブは、リラックス効果、リフレッシュ効果、鎮静作用、疲労回復、抗うつ作用、発汗作用等の効果を有することが知られているが、本発明のホトリエノールを添加することでこれらの効果が減失することはない。また、ホトリエノールの睡眠改善効果や自律神経調節効果が加わるため、機能性素材としての利用が期待できる。
【0015】
本発明のハーブは、乾燥したハーブ(いわゆるドライハーブ)であり、水分量が5%以下であることが好ましい。また、これらのハーブをブレンドしてもよいし、これら以外のハーブやドライフルーツを配合してもよい。ブレンドの例としては、カモミールとペパーミント、ペパーミントとレモンバーム、ローズヒップとハイビスカス、ルイボスとレモン果皮(レモンピール)などが挙げられる。
【0016】
本発明のハーブは、ハーブティーとして好適に利用できる。ハーブティーを淹れる方法は一般的に行われている方法でよく、リーブのまま、あるいはティーバッグに封入して、水等で抽出することができる。抽出温度と抽出時間は特に限定されないが、90~95℃で1分半抽出することが好ましい。
本発明のハーブの形状は、特に限定しないが、通常のティーバッグに封入できるものであればよく、粒子が細かいものでも利用することができる。
【0017】
〈ホトリエノール〉
本発明におけるホトリエノールは、化学式C1016Oで表される、CAS登録番号20053-88-7のモノテルペンアルコール系化合物である。ホトリエノールは、3位に不斉炭素があり、3R-(-)-3,7-ジメチル-1,5(E),7-トリエン-3-オール(以下、3R-(-)体という。)と3S-(+)-3,7-ジメチル-1,5(E),7-トリエン-3-オール(以下、3S-(+)体という。)の光学活性体が存在するが、本発明に用いられるホトリエノールは、3R-(-)体であっても、3S-(+)体であってもよく、また、それらの混合物であってもよく、ラセミ混合物であってもよい。
本発明のホトリエノールは、発酵茶等の天然物から抽出されたものであっても、化学的に全合成されたものであっても、又は発酵茶等の天然物から抽出物を化学処理して半合成されたものであってもよい。天然物からの抽出物の場合に、ホトリエノールが含まれる抽出物をそのまま又は濃縮等の操作をして用いることができ、抽出物を蒸留、カラムクロマトグラフィー等の分離精製操作を行って、ホトリエノールを単離精製したもの又はその他の成分を含む画分として用いることができる。化学的な合成方法としては、例えば特開2004-107207号公報や特開2000-192073号公報に記載の方法が例示できる。
得られたホトリエノールまたはホトリエノールを含む画分は目的に応じて適宜製剤化して香味改善用に用いることができる。また、ホトリエノールを含む組成物はエタノールなどの有機溶媒を含んでいてもよい。また、食品上許容される安定剤等を配合してもよい。さらに、窒素置換等で気中の酸素濃度を低くしたうえで冷凍保存することで、保存性を高めることもできる。原料ハーブに添加する際のホトリエノールの形態は、特に限定されるものではなく、例えば、粉末状、顆粒状、液体状またはペースト状のものでもよいが、製造しやすさの点から液体状であることが好ましい。市販されているホトリエノール含有の香料を用いてもよい。例えば、株式会社井上香料製造所の製品(製品名:ホトリエノール、製品コード:0001199)が挙げられる。
なお、ホトリエノールは、はちみつ、葡萄又は茶葉には含まれていることが報告されているが、本発明における原料ハーブについては、ホトリエノールが含有されていることは報告されていない。
【0018】
〈香味改善方法〉
本発明の製造方法は、ホトリエノールを含有する香料を原料ハーブに噴霧あるいは滴下して添加することを特徴とする。詳細な方法は後述する。
【0019】
本発明の香味が改善されたハーブの製造方法は、原料ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppm添加する。香味の改善効果の顕著さから30~180ppmが好ましく、50~150ppmがより好ましい。これらの範囲において、ミネラル感やえぐ味等の嫌味が抑制され、フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感がアップしたハーブティーを味わうことができる。
【0020】
本発明の原料ハーブへのホトリエノールの添加方法は、香料によって着香する着香茶で一般的に利用されている公知の製造手段を用いればよく、水分量5%以下の乾燥ハーブ原料に、直接ホトリエノール配合溶液を噴霧あるいは滴下して添加する方法が例示できる。具体的には、密閉容器に原料ハーブを入れ、ホトリエノール配合香料を所定量滴下して添加し、均等になるように十分に原料ハーブになじませ、さらに常温にて保管し均質化を行う。保管は12時間以上が好ましく、1日以上がより好ましい。工業的に製造する場合は、原料ハーブ約100~300kgをブレンダー内に投入し、ホトリエノール配合溶液を滴下して、20分から40分程度ターンブレンダー等で撹拌し、密閉容器に充填し保管する。少量の生産の場合は、密閉容器にいれたハーブに上記同様にホトリエノールを滴下して5~20分撹拌後そのまま常温にて保管する。
なお、前述のホトリエノール配合溶液は、ホトリエノールを10%以下配合した溶液が例示でき、溶媒は食品として適したものであればよく、水、エタノール溶液が挙げられる。
【0021】
ハーブ抽出液中のホトリエノールの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析法により定量することができる。また、分析精度が高められる点において、サロゲート法や標準添加法を採用するのが好ましい。詳細な条件は本明細書の実施例の項に記載する。
【0022】
本発明の方法で得られたハーブは、ホトリエノール以外の食品香料を発明の効果に影響を与えない範囲で添加することができる。例えば、レモン、アップル、ピーチ等のフルーツフレーバー、ローズ等の花様フレーバーが挙げられる。また、レモン等果実ピール、花びら(例えば、バラ、桜)を添加することもできる。これらの添加量は目的とする香味に合わせて、適宜添加することができ、ハーブに対して約0.1~5%程度が例示できる。
【0023】
本発明で得られたハーブは、様々な用途に利用することができる。ハーブそのものを主体として利用する例としては、各種容器にハーブを包装してリーフ製品とするほか、ティーバッグの形態として、またインスタント粉末飲料や容器詰飲料の原料として利用することができる。
【0024】
本発明のハーブは、ティーバッグでの利用が好ましい。ティーバッグのサイズ、材質、形状、タグの有無等は、公知の方法を適宜利用することができる。例えば、ティーバッグに使用する素材は、パルプ等の天然素材やナイロン、ポリエステル等合成繊維が挙げられる。また、ティーバッグのサイズ、形状は公知のものを適宜利用することができる。1カップ用のテトラ型であれば、1辺40~60mm、平型であれば、50~60mm×40~50mmが例示できる。
抽出方法は、1カップ用のティーバッグを使用して抽出する場合、水(お湯)は約150mL~200mLを使用し、ハーブの種類によって、水の温度を適宜調整すればよい。例えば、沸騰直後あるいは85~90℃が例示できる。お湯の場合は、抽出時間は1~2分間が好ましい。殺菌済みのハーブを使用して低温(水出し)で抽出する場合はさらに長時間ティーバッグを抽出液に浸漬してもよい。ティーバッグの形態にすることで、より手軽に香味が改善されたハーブティーを味わうことができる。
【0025】
本発明のハーブは、インスタント粉末飲料や容器詰飲料のハーブ抽出原料として利用することができる。これらは公知の方法で製造することができ、RTD飲料、濃縮飲料、粉末エキスに加工することもできる。また、ハーブそのものを粉砕して、飲料や菓子類のトッピング用素材としても利用できる。ただし、本発明の製造方法で得られるハーブの利用または用途はこれらに限定されるものではない。
【0026】
以上のようにホトリエノールにより香味が改善されたハーブティーはより飲用しやすくなるが、ホトリエノールの添加によって、ハーブ自体が持つ基本的な香味、またはリラックス効果やリフレッシュ効果などは損なわれることはない。複数のハーブをブレンドした場合でも同様である。ブレンドされたハーブにホトリエノールを配合することによって、それぞれのハーブの特性を生かしながらも、複雑な香味にフレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感が付与されたより味わい深いハーブティーが得られる。
また、本発明のハーブティーを飲用することによって、ホトリエノールによる睡眠改善、自律神経調節効果、リラックス効果やリフレッシュ効果も期待できる。
【実施例0027】
以下に本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0028】
《ホトリエノールの分析方法》、
本発明で得られたハーブの抽出液を適宜希釈し、希釈液10mLと塩化ナトリウム3gを20mLバイアルに入れ、内部標準物質としてシクロヘプタノール(東京化成工業(株)製を終濃度で50ppbとなるように添加した。このサンプル液について下記条件で固相マイクロ抽出法(Solid Phase Micro Extraction:SPME)を用いたGC/MS分析に供した。評価はホトリエノールのピークエリアと内部標準物質のピークエリアの比によって求めた。
<SPME-GC/MS条件>
・GC:TRACE GC ULTRA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
・MS:TSQ QUANTUM XLS(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
・SPMEファイバー:50/30μm Divinylbenzene/Carboxen/Polydimethylsiloxane Stableflex
・抽出:60℃、30分
・カラム:SUPELCO WAX10(0.25mmI.D.×60m×0.25μm、シグマアルドリッチ社製)
・オーブンプログラム:40℃で2分間保持した後、100℃まで3℃/分で昇温、200℃まで5℃/分で昇温、240℃まで8℃/分で昇温し、240℃で8分間保持した。
・キャリアーガス:ヘリウム(100kPa、一定圧力)
・インジェクター:スプリット(スプリットフロー 10mL/分)、240℃
・イオン化:電子イオン化
・イオン化電圧:70eV
・測定モード:スキャン
・モニタリングイオン:ホトリエノール;m/z=71
【0029】
<参考例>ハーブの香味確認
ハーブの香味について、実施例の前にパネルによる香味評価を行い、ハーブの香味の不具合等を確認した。
市販の乾燥ハーブ(カモミール(ジャーマンカモミール)、ペパーミント、レモンバーム、ハイビスカス、ローズヒップ、ルイボス)を原料に用いて、官能評価を下記の方法で行った。
前記ハーブ1.5gに90~95℃の熱湯150mLを注いで90秒間抽出させ、茶こしでハーブ殻を取り除き抽出液を調製した。上記によって得られたハーブの抽出液について、訓練された専門のパネル5名で香味評価を行った。
フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感(ほのかな甘さ、まろやかな自然な甘味)、ミネラル感(金属味)、嫌味(えぐ味、苦味、後残り、酸化臭、イモ臭、薬草臭または枯草臭他)について、コメントで評価した結果を以下に示す。
・カモミール:ミネラル感、えぐ味、後残りを感じる
・ペパーミント:ミネラル感、えぐ味、後残りを感じる
・レモンバーム:ミネラル感、えぐ味、後残りを感じる
・ハイビスカス:酸化臭、尖った酸味、後残りを感じる
・ローズヒップ:加熱臭、蒸かしたイモ臭、重い酸味、埃っぽさを感じる
・ルイボス:ミネラル感、薬草臭、枯草臭を感じる
上記の結果から、ハーブの香味には、フレッシュ感、ミネラル感、えぐ味、後残り、薬草臭、枯草臭、加熱臭や蒸かしたイモ臭が課題であることが確認された。
【0030】
〈実施例1〉ホトリエノールを添加による香味改善効果の確認
参考例1と同様のハーブを使用した。
密閉可能なアルミ蒸着フィルム製の袋に入れたハーブに、5%ホトリエノール含有エタノール溶液を200μL(ハーブ重量に対するホトリエノール濃度100ppm)をそれぞれ添加し、撹拌後常温にて一日保管してホトリエノールを添加したハーブを作製した。
参考例と同様にして抽出液を得て、官能評価を行った。結果を表1に示す。
官能評価は、訓練された専門のパネル5名で行い、評価項目は、フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、嫌味、総合評価として、下記のように点数を付けた。
官能評価方法:下記の評価基準に従い、コントロールと比較して官能評価を実施した。フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感は強ければ「+」方向、弱ければ「-」方向、ミネラル感、嫌味は弱ければ「+」方向、強ければ「-」方向として評価し、点数化してパネル5名の平均値を採用した。また、前記4項目のほかホトリエノールの添加による違和感を評価し、すべての項目より総合的な評価を行った。詳細な評価方法は下記に示す。
〈フレッシュ感/フラワリーまたはフルーティー感〉
+3:コントロールと比較して非常に強く感じる
+2:コントロールと比較して強く感じる
+1:コントロールと比較してやや強く感じる
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや弱く感じる
-2:コントロールと比較して弱く感じる
-3:コントロールと比較してほとんど感じない

〈ミネラル感/嫌味〉
+3:コントロールと比較して全く感じない
+2:コントロールと比較してやや弱く感じる
+1:コントロールと比較して弱く感じる
0:コントロールと同等
-1:コントロールと比較してやや強く感じる
-2:コントロールと比較して強く感じる
-3:コントロールとより非常に強く感じる
各点数が1.5以上を◎、0を超えて1.5未満を〇、-0.5以上0以下を△、-0.5未満を×とした。

〈ホトリエノールの添加による違和感〉
ホトリエノールの添加による飲料全体の香味の違和感について下記の基準より官能評価を行い、最も多い評価を採用した。
◎:違和感が全くない
〇:違和感がわずかにある
△:違和感がある
×:違和感を強く感じる

〈総合評価〉
フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、または嫌味と、ホトリエノールの添加による飲料全体の香味の違和感を含め、下記に示す方法で総合的な評価を行った。
・フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、または嫌味がいずれも◎または〇であって、かつホトリエノールによる飲料全体の香味の違和感が◎のものを◎良好
・フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、または嫌味がいずれも◎または〇であって、かつホトリエノールによる違和感が〇であるものを〇良
・フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、または嫌味がいずれも◎または〇であって、ホトリエノールによって違和感が△であるものを△適(香味改善効果はある)
・フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感、ミネラル感、または嫌味のうちひとつでも△または×があるもの、またはホトリエノールによる違和感が×であるのものを×不適
【0031】
【表1】
【0032】
試験例1-1~1-6の市販のハーブは、表1の結果に示されている通り、ホトリエノールの添加により、フレッシュ感、フラワリーまたはフルーティー感が向上し、ミネラル感や嫌味が低減されることが確認できた。
【0033】
<実施例2>ホトリエノールの添加量
ハーブの香味改善効果に対するホトリエノールの添加濃度の影響を検討した。
密閉可能なアルミ蒸着フィルム製の袋に入れた市販の乾燥ハーブに、ホトリエノール(5%ホトリエノール含有エタノール溶液)をハーブ(カモミール、ルイボス)に対して0~300ppmとなるようにそれぞれ添加し、撹拌後常温にて一日保管してホトリエノールを添加したハーブを作製した。得られたハーブを以下のように抽出し、香味評価を実施した。
評価方法:得られたハーブ1.5gを150mL95℃の熱湯にて2分間抽出した。官能評価は実施例1と同様に行い、その結果を表2に示した。
【0034】
【表2】
【0035】
表2の結果より、ハーブに対して、ホトリエノールを25~200ppmの範囲で添加すれば、フレッシュ感、及びフラワリーまたはフルーティー感の向上効果、及びミネラル感及び嫌味の抑制効果とハーブティーとしての香味が良好であることが確認できた。
ホトリエノールが300ppmの添加ではフレッシュ感、及びフラワリーまたはフルーティー感の向上効果、及びミネラル感及び嫌味の抑制効果が見られたものの、ホトリエノール自体の香味が感じられ、総合的なハーブティーとしての評価は低かった。
以上により、ホトリエノールのハーブの香味改善効果が確認できた。
【0036】
<実施例3>ブレンドの例
ブレンドしたハーブについて、ホトリエノール添加による香味改善効果を検討した。市販のハーブを表3に示した配合で混合したのち、実施例1と同様にしてホトリエノールを添加し、ホトリエノールを添加したハーブを作製した。得られたハーブのうち1.5gを不織布製のティーバッグに封入してティーバッグを作製した。官能評価は実施例1と同様に行い、その結果を表3に示した。
なお、ハーブ抽出液のホトリエノールの含有量は、上述のホトリエノールの分析方法による結果から、500ppbであることが確認できた。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果より、ブレンドタイプのハーブでも、単品の場合と同様にホトリエノールの香味改善効果が確認できた。
【0039】
<実施例4>
実施例1と実施例3で得られたハーブティーにおいて、飲用後の気分(リラックス感、リフレッシュ感)についてのアンケート調査を行った。
飲用後、コントロールと比較して、リラックス感(癒される気分)、リフレッシュ感(すっきりする気分)が高ければ「+」方向、低ければ「-」方向(-3~+3の範囲)で評価を実施した。結果を表4に示す。
表4の結果よりホトリエノール配合によって、リラックスした気分やリフレッシュな気分がより感じられることが確認できた。
【0040】
【表4】