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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157045
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/00 20060101AFI20231019BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L25/00 B
H01L27/04 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066689
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中柴 康隆
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝行
【テーマコード(参考)】
5F038
【Fターム(参考)】
5F038AV06
5F038AZ04
5F038AZ05
5F038BH03
5F038BH10
5F038CA10
5F038CA16
5F038CA20
(57)【要約】
【課題】半導体装置の信頼性を向上する。
【解決手段】第1電位が印加されるインダクタと接続される略四角形形状の配線W1でインダクタを囲み、この配線W1を第1電位とは異なる第2電位が印加される略四角形形状の配線W2で囲みながら、配線W2の外側に配線W2と接続されるパッドを配置する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層配線層と、
前記多層配線層内に形成された下層インダクタと、
平面視において前記下層インダクタと重なるように、前記多層配線層上に形成された上層インダクタと、
平面視において、前記上層インダクタを囲むように前記多層配線層上に形成された第1配線と、
平面視において、前記第1配線を囲むように前記多層配線層上に形成された第2配線と、
を有し、
前記第1配線は、第1基準電位が印加されるように構成され、
前記第2配線は、前記第1基準電位と異なる第2基準電位が印加されるように構成され、
前記第1配線は、
第1方向にそれぞれ延在する第1辺および第2辺と、
前記第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延在する第3辺および第4辺と、
を含み、
前記第2配線は、
前記第1方向にそれぞれ延在する第5辺および第6辺と、
前記第2方向にそれぞれ延在する第7辺および第8辺と、
を含む、半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1辺と前記第5辺との間の距離を第1距離とし、
前記第2辺と前記第6辺との間の距離を第2距離とし、
前記第3辺と前記第7辺との間の距離を第3距離とし、
前記第4辺と前記第8辺との間の距離を第4距離とする場合、
前記第1距離と前記第2距離と前記第3距離と前記第4距離は、等しい、半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1辺と前記第3辺との交差部は、曲率を有し、
前記第1辺と前記第4辺との交差部は、曲率を有し、
前記第2辺と前記第3辺との交差部は、曲率を有し、
前記第2辺と前記第4辺との交差部は、曲率を有する、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記多層配線層内に形成されたシールリングを有し、
前記第2配線は、前記シールリングと電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記上層インダクタは、
第1タップパッドと、
前記第1タップパッドと接続された渦巻配線と、
平面視において前記渦巻配線の内部に配置され、かつ、前記渦巻配線と接続された第1トランスパッドと、
を含み、
前記第1タップパッドは、前記第1配線と接続されている、半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第1辺と前記第3辺との交差部は、第1曲率を有し、
前記第1辺と前記第4辺との交差部は、前記第1曲率を有し、
前記第2辺と前記第3辺との交差部は、前記第1曲率を有し、
前記第2辺と前記第4辺との交差部は、前記第1曲率を有し、
前記渦巻配線は、第2曲率を有する平面形状を有しており、
前記第1曲率は、前記第2曲率よりも小さい、半導体装置。
【請求項7】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記第1タップパッド、前記渦巻配線および前記第1トランスパッドは、それぞれ曲率を有する平面形状をしている、半導体装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記下層インダクタは、前記多層配線層上に配置されている第2タップパッドおよび第2トランスパッドと前記多層配線層内に形成された配線を介して電気的に接続され、
平面視において、前記第5辺、前記第6辺、前記第7辺または前記第8辺は、前記第2タップパッドと前記第1配線の間に配置され、
前記第2タップパッドは、前記第2配線と電気的に接続されている、半導体装置。
【請求項9】
請求項8に記載の半導体装置において、
前記第2タップパッドおよび前記第2トランスパッドは、それぞれ曲率を有する平面形状を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関し、例えば、誘導結合した一対のインダクタを利用して、異なる電位の間での信号伝送を可能とする半導体装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-82673号公報(特許文献1)には、デジタルアイソレータ(マイクロアイソレータ)において、絶縁破壊を抑制する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-82673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、誘導結合した一対のインダクタを利用して電気的非接触の信号伝送を可能とするトランスフォーマ(マイクロアイソレータ)がある。このトランスフォーマによれば、電気的非接触の状態での信号伝送が可能となるため、一方の回路からの電気的ノイズが他方の回路に悪影響を及ぼすことを抑制できる利点が得られる。そして、このように構成されているトランスフォーマでは、互いに大きく電位の異なる回路間での電気的非接触の信号伝送も可能となるように、絶縁耐圧の向上が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施の形態における半導体装置は、多層配線層と、多層配線層内に形成された下層インダクタと、平面視において下層インダクタと重なるように、多層配線層上に形成された上層インダクタと、平面視において、上層インダクタを囲むように多層配線層上に形成された第1配線と、平面視において、第1配線を囲むように多層配線層上に形成された第2配線と、を有する。ここで、第1配線は、第1基準電位が印加されるように構成され、第2配線は、第1基準電位と異なる第2基準電位が印加されるように構成されている。そして、第1配線は、第1方向にそれぞれ延在する第1辺および第2辺と、第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延在する第3辺および第4辺と、を含む。また、第2配線は、第1方向にそれぞれ延在する第5辺および第6辺と、第2方向にそれぞれ延在する第7辺および第8辺と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
一実施の形態によれば、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】負荷回路を駆動する駆動制御部の構成例を示す図である。
図2】信号の伝送例を示す説明図である。
図3】2チップ構成を示す図である。
図4】3チップ構成を示す図である。
図5】関連技術における半導体チップを示す平面図である。
図6図5のA-A線で切断した断面図である。
図7】半導体チップのレイアウトを示す図である。
図8】互いに平行している直線部分を示す図である。
図9】ラウンド形状の端点を含む部分を示す図である。
図10】変形例1における半導体チップを示す図である。
図11】変形例3における半導体チップを示す図である。
図12】(a)および(b)は、インダクタの形状例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0009】
<回路構成>
図1は、モータなどの負荷回路を駆動する駆動制御部の構成例を示す図である。図1に示すように、駆動制御部は、制御回路CCと、トランスフォーマTR1と、トランスフォーマTR2と、駆動回路DRと、インバータINVとを有し、負荷回路LODと電気的に接続されている。
【0010】
送信回路TX1および受信回路RX1は、制御回路CCから出力される制御信号を駆動回路DRに伝達するための回路である。一方、送信回路TX2および受信回路RX2は、駆動回路DRから出力される信号を制御回路CCに伝達するための回路である。制御回路CCは、駆動回路DRを制御する機能を有する回路である。駆動回路DRは、制御回路CCからの制御に基づいて、負荷回路LODを制御するインバータINVを動作させる回路である。
【0011】
制御回路CCには、電源電位VCC1が供給され、制御回路CCは接地電位GND1により接地される。一方、インバータINVには、電源電位VCC2が供給され、インバータINVは接地電位GND2により接地される。このとき、例えば、電源電位VCC1は、インバータINVに供給される電源電位VCC2よりも小さい。言い換えれば、インバータINVに供給される電源電位VCC2は、電源電位VCC1よりも大きい。
【0012】
送信回路TX1と受信回路RX1との間には、誘導結合(磁気結合)したコイル(インダクタ)CL1aとコイルCL1bからなるトランスフォーマTR1が介在している。これにより、送信回路TX1から受信回路RX1に、トランスフォーマTR1を介して信号を伝達することができる。この結果、駆動回路DRは、トランスフォーマTR1を介して、制御回路CCから出力された制御信号を受信することができる。
【0013】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR1によって、制御回路CCから駆動回路DRへの電気的ノイズの伝達を抑制しながら、制御回路CCから駆動回路DRに制御信号を伝達することができる。このことから、制御信号への電気的ノイズの重畳に起因する駆動回路DRの誤動作を抑制することができ、これによって、半導体装置の動作信頼性を向上することができる。
【0014】
トランスフォーマTR1を構成するコイルCL1aおよびコイルCL1bは、それぞれインダクタとして機能する。トランスフォーマTR1は、誘導結合したコイルCL1aとコイルCL1bからなる磁気結合素子として機能することになる。
【0015】
同様に、送信回路TX2および受信回路RX2の間には、誘導結合したコイルCL2bとコイルCL2aとからなるトランスフォーマTR2が介在している。これにより、送信回路TX2から受信回路RX2に、トランスフォーマTR2を介して信号を伝達することができる。この結果、制御回路CCは、トランスフォーマTR2を介して、駆動回路DRから出力された信号を受信することができる。
【0016】
このように、誘導結合を利用して電気的に絶縁したトランスフォーマTR2によって、駆動回路DRから制御回路CCへの電気的ノイズの伝達を抑制しながら、駆動回路DRから制御回路CCに信号を伝達することができる。このことから、信号への電気的ノイズの重畳に起因する制御回路CCの誤動作を抑制することができ、これによって、半導体装置の動作信頼性を向上することができる。
【0017】
トランスフォーマTR1は、コイルCL1aとコイルCL1bとにより構成されており、コイルCL1aとコイルCL1bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このことから、コイルCL1aに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL1bに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。このとき、コイルCL1aが一次コイルであり、コイルCL1bが二次コイルである。このように、トランスフォーマTR1は、コイルCL1aとコイルCL1bとの間に生じる電磁誘導現象を利用している。すなわち、送信回路TX1からトランスフォーマTR1のコイルCL1aに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR1のコイルCL1bに生じた誘導電流を受信回路RX1で検知することにより、受信回路RX1は送信回路TX1から出力された制御信号に対応した信号を受信できる。
【0018】
同様に、トランスフォーマTR2は、コイルCL2aとコイルCL2bとにより構成されており、コイルCL2aとコイルCL2bとは、導体によっては繋がっておらず、磁気的に結合している。このことから、コイルCL2bに電流が流れると、その電流の変化に応じてコイルCL2aに誘導起電力が発生して誘導電流が流れるようになっている。このように、送信回路TX2からトランスフォーマTR2のコイルCL2bに信号を送って電流を流した結果、トランスフォーマTR2のコイルCL2aに生じた誘導電流を受信回路RX2で検知することにより、受信回路RX2は送信回路TX2から出力された制御信号に対応した信号を受信することができる。
【0019】
送信回路TX1からトランスフォーマTR1を経由して受信回路RX1に至る経路と、送信回路TX2からトランスフォーマTR2を経由して受信回路RX2に至る経路とにより、制御回路CCと駆動回路DRとの間の信号の送受信が行なわれる。すなわち、送信回路TX1が送信した信号を受信回路RX1が受信し、送信回路TX2が送信した信号を受信回路RX2が受信することにより、制御回路CCと駆動回路DRとの間で信号の送受信を行うことができる。上述のように、送信回路TX1から受信回路RX1への信号の伝達には、トランスフォーマTR1が介在する一方、送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達には、トランスフォーマTR2が介在する。これにより、駆動回路DRは、制御回路CCから送信された信号に応じて、負荷回路LODを動作させるためのインバータINVを駆動することができる。
【0020】
制御回路CCと駆動回路DRとは、基準電位の電圧レベルが異なっている。すなわち、制御回路CCでは、基準電位が接地電位GND1に固定されている一方、図1に示すように、駆動回路DRは、インバータINVと電気的に接続されている。インバータINVは、例えば、ハイサイド用IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)とローサイド用IGBTとを有している。そして、インバータINVでは、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御と、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御を駆動回路DRで行なうことにより、インバータINVによる負荷回路LODの制御が実現される。具体的に、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御は、駆動回路DRによって、ハイサイド用IGBTのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。同様に、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御は、駆動回路DRによって、ローサイド用IGBTのゲート電極に印加する電位を制御することによって行なわれる。
【0021】
ここで、例えば、ローサイド用IGBTのオン制御は、接地電位GND2と接続されているローサイド用IGBTのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)+しきい値電圧(15V)」をゲート電極に印加することにより実現される。一方、例えば、ローサイド用IGBTのオフ制御は、接地電位GND2と接続されているローサイド用IGBTのエミッタ電位(0V)を基準として、「エミッタ電位(0V)」をゲート電極に印加することにより実現される。したがって、ローサイド用IGBTのオン/オフ制御は、0Vを基準電位として、ゲート電極にしきい値電圧(15V)を印加するか否かによって行なわれる。
【0022】
一方、例えば、ハイサイド用IGBTのオン制御も、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を基準電位として、この基準電位に対して、ゲート電極に「基準電位+しきい値電圧(15V)」を印加するか否かによって行なわれる。ところが、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、ローサイド用IGBTのエミッタ電位のように接地電位GND2に固定されているわけではない。すなわち、インバータINVにおいては、電源電位VCC2と接地電位GND2との間に、ハイサイド用IGBTとローサイド用IGBTとが直列接続されている。そして、インバータINVでは、ハイサイド用IGBTがオンする際には、ローサイド用IGBTをオフする一方、ハイサイド用IGBTがオフする際には、ローサイド用IGBTをオンする制御が行なわれる。したがって、ハイサイド用IGBTがオフしている際には、ローサイド用IGBTがオンしていることから、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、オンしているローサイド用IGBTによって、接地電位GND2となる。一方、ハイサイド用IGBTがオンしている際には、ローサイド用IGBTがオフしていることから、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、電源電位VCC2となる。このとき、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御は、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「基準電位+しきい値電圧(15V)」を印加するか否かによって行なわれる。
【0023】
上述したように、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、ハイサイド用IGBTがオンしている場合とオフしている場合で変動する。すなわち、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位は、接地電位GND2(0V)から電源電位VCC2(例えば、800V)まで変動する。したがって、ハイサイド用IGBTをオンするためには、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を基準電位として、ゲート電極に「基準電位(800V)+しきい値電圧(15V)」を印加する必要がある。このことから、ハイサイド用IGBTのオン/オフ制御を行なう駆動回路DRにおいては、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を把握する必要がある。このため、駆動回路DRは、ハイサイド用IGBTのエミッタ電位を入力するように構成されている。この結果、駆動回路DRには、800Vの基準電位が入力され、駆動回路DRは、この800Vの基準電位に対して、15Vのしきい値電圧(15V)をハイサイド用IGBTのゲート電極に印加することによって、ハイサイド用IGBTのオンするように制御する。したがって、駆動回路DRには、800V程度の高電位が印加される。
【0024】
このように、駆動制御部は、低電位(数十V)を取り扱う制御回路CCを有するとともに、高電位(数百V)を取り扱う駆動回路DRを有している。このことから、制御回路CCと駆動回路DRとの間での信号の伝達は、異電位回路間での信号の伝達を行なうことが必要とされる。
【0025】
この点に関し、制御回路CCと駆動回路DRとの間での信号の伝達は、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2を介在して行なわれるため、異電位回路間での信号の伝達が可能である。
【0026】
上述したように、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2とにおいては、一次コイルと二次コイルとの間に、大きな電位差が発生する場合がある。逆に言えば、大きな電位差が発生する場合があるため、導体では繋がずに磁気結合させた一次コイルと二次コイルを信号の伝達に用いている。したがって、トランスフォーマTR1を形成するにあたって、半導体装置の動作信頼性を向上する観点から、コイルCL1aとコイルCL1bとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くすることが重要である。同様に、トランスフォーマTR2を形成するにあたって、半導体装置の動作信頼性を向上する観点から、コイルCL2bとコイルCL2aとの間の絶縁耐圧をできるだけ高くすることが重要である。
【0027】
<信号の伝送例>
図2は、信号の伝送例を示す説明図である。図2において、送信回路TX1は、送信回路TX1に入力された方形波の信号SG1のエッジ部分を取り出して一定パルス幅の信号SG2を生成し、トランスフォーマTR1のコイルCL1a(一次コイル)に信号SG2を送る。この信号SG2による電流がトランスフォーマTR1のコイルCL1a(一次コイル)に流れると、それに応じた信号SG3が誘導起電力によりトランスフォーマTR1のコイルCL1b(二次コイル)に流れる。この信号SG3を受信回路RX1で増幅し、更に方形波に変調することで、方形波の信号SG4が受信回路RX1から出力される。これにより、送信回路TX1に入力された信号SG1に対応した信号SG4を受信回路RX1から出力することができる。このようにして、送信回路TX1から受信回路RX1に信号を伝達することができる。送信回路TX2から受信回路RX2への信号の伝達も同様に行なうことができる。
【0028】
<2チップ構成>
上述した駆動制御部のうちの送受信回路部は、例えば、2つの半導体チップに分けて形成される。具体的に、図3は、2チップ構成を示す図である。図3において、半導体チップCHP1には、送信回路TX1とトランスフォーマTR1と受信回路RX2とが形成されている。一方、半導体チップCHP2には、受信回路RX1と駆動回路DRと送信回路TX2とトランスフォーマTR2とが形成されている。このような2チップ構成では、例えば、トランスフォーマTR1が送信回路TX1と受信回路RX2と同一の半導体チップCHP1に形成される。したがって、トランスフォーマTR1と送信回路TX1と受信回路RX2の集積化が可能となる。同様に、トランスフォーマTR2が駆動回路DRと受信回路RX1と送信回路TX2と同一の半導体チップCHP2に形成される。このため、トランスフォーマTR2と駆動回路DRと受信回路RX1と送信回路TX2の集積化が可能となる。
【0029】
ただし、2チップ構成では、例えば、トランスフォーマTR1と送信回路TX1と受信回路RX2とを1つの半導体チップに形成することが必要なため、半導体チップCHP1の製造プロセスが複雑化してしまう。同様に、2チップ構成では、例えば、トランスフォーマTR2と駆動回路DRと受信回路RX1と送信回路TX2とを1つの半導体チップに形成することが必要なため、半導体チップCHP2の製造プロセスが複雑化してしまう。この結果、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の製造コストが上昇してしまう。
【0030】
<3チップ構成>
そこで、上述した送受信回路部を2チップ構成ではなく、3チップ構成で実現することが検討されている。以下では、新規な3チップ構成について説明する。
【0031】
図4は、3チップ構成を示す図である。図4において、半導体チップCHP1には、送信回路TX1と受信回路RX2とが形成されている。また、半導体チップCHP2には、駆動回路DRと受信回路RX1と送信回路TX2とが形成されている。一方、半導体チップCHP3には、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2とが形成されている。
【0032】
これにより、3チップ構成では、トランスフォーマTR1とトランスフォーマTR2だけが形成された半導体チップCHP3を有している。すなわち、3チップ構成では、半導体チップCHP1および半導体チップCHP2の構成に関わらず、半導体チップCHP3を使用することができる。このことから、3チップ構成によれば、使用可能な半導体チップCHP1および半導体チップCHP2のバリエーションを増加させることができる利点が得られる。言い換えれば、トランスフォーマTR1およびトランスフォーマTR2が形成された半導体チップCHP3の汎用性を高めることができる。さらに、トランスフォーマTR1およびトランスフォーマTR2が形成された半導体チップCHP3は、トランジスタを含んでいないため、配線工程だけで形成することができる結果、製造プロセスの簡素化を図ることができる。したがって、3チップ構成によれば、製造コストの削減が可能となり、これによって、競争力の高い製品を製造できる。
【0033】
<関連技術における半導体チップの構成>
以下では、3チップ構成を前提とした関連技術における半導体チップCHP3の構成について説明する。本明細書でいう「関連技術」とは、公知技術ではないが、本発明者が見出した課題を有する技術であって、本願発明の前提となる技術である。
【0034】
図5は、関連技術における半導体チップCHP-Rを示す平面図である。
【0035】
図5において、半導体チップCHP-Rの平面形状は、矩形形状をしており、半導体チップCHP-Rの周縁部にシールリングSRが設けられている。そして、平面視において、シールリングSRに囲まれるように、上層インダクタ100および上層インダクタ200が設けられている。ここで、上層インダクタ100は、タップパッド1aと、タップパッド1aと接続された渦巻配線1bと、渦巻配線1bと接続されたトランスパッド1cを有する。同様に、上層インダクタ200は、タップパッド2aと、タップパッド2aと接続された渦巻配線2bと、渦巻配線2bと接続されたトランスパッド2cを有する。
【0036】
また、平面視において、シールリングSRに囲まれるように、タップパッド3aおよびトランスパッド3cと、タップパッド4aおよびトランスパッド4cが設けられている。
タップパッド3aおよびトランスパッド3cは、上層インダクタ100の下方に形成されている下層インダクタ(図示せず)のタップパッドおよびトランスパッドである。すなわち、上層インダクタ100と対になる下層インダクタが、上層インダクタ100の下方に形成されており、この下層インダクタから配線を介して引き出されたタップパッド3aおよびトランスパッド3cが上層インダクタ100と同層に形成されている。
【0037】
同様に、タップパッド4aおよびトランスパッド4cは、上層インダクタ200の下方に形成されている下層インダクタ(図示せず)のタップパッドおよびトランスパッドである。すなわち、上層インダクタ200と対になる下層インダクタが、上層インダクタ200の下方に形成されており、この下層インダクタから配線を介して引き出されたタップパッド4aおよびトランスパッド4cが上層インダクタ200と同層に形成されている。
【0038】
ここで、例えば、上層インダクタ100および上層インダクタ200には、約800V程度の基準電位が印加される。これに対し、下層インダクタ(タップパッド3aおよびトランスパッド3c)と下層インダクタ(タップパッド4aおよびトランスパッド4c)には、0V程度の基準電位が印加される。つまり、上層インダクタ100と対になる下層インダクタには、上層インダクタ100に印加される基準電位とは異なる基準電位が印加される。同様に、上層インダクタ200と対になる下層インダクタには、上層インダクタ200に印加される基準電位とは異なる基準電位が印加される。
【0039】
次に、図6は、図5のA-A線で切断した断面図である。
【0040】
図6において、例えば、p型半導体基板SUBの表面には、p型半導体基板SUBよりも高い不純物濃度を有するp型半導体領域PRが形成されており、このp型半導体領域PR上に多層配線層が形成されている。そして、多層配線層には、シールリングSRが形成されている。また、多層配線層内には、渦巻配線3bを有する下層インダクタ300が形成されている。この下層インダクタ300(渦巻配線3b)からは、多層配線層内に形成された配線が引き出されており、渦巻配線3bは、多層配線層の最上層に形成されたトランスパッド3cと電気的に接続されている。すなわち、下層インダクタ300は、多層配線層内に形成された配線を介して、トランスパッド3cおよびタップパッド(図示しない)と電気的に接続されている。
【0041】
さらに、多層配線層上には、上層インダクタ100が形成されている。すなわち、下層インダクタ300の上方に上層インダクタ100が形成されており、この上層インダクタ100は、渦巻配線1bとトランスパッド1cとを有している。
【0042】
そして、上層インダクタ100を覆うように表面保護膜PASとポリイミド樹脂膜PIが形成されている。表面保護膜PASおよびポリイミド樹脂膜PIには開口部が設けられており、トランスパッド3cの表面の一部およびトランスパッド1cの表面の一部が露出している。なお、表面保護膜PASは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜から構成されている。
【0043】
以上のようにして、関連技術における半導体チップCHP-Rが構成されている。
【0044】
<改善の余地>
続いて、関連技術に存在する改善の余地について説明する。
【0045】
図5において、例えば、上層インダクタ100や上層インダクタ200には、約800V程度の基準電位が印加される一方、シールリングSRおよび下層インダクタ(タップパッド3aおよびトランスパッド3c、タップパッド4aおよびトランスパッド4c)には、約0Vの基準電位が印加される。つまり、多層配線層上において、異電位の構成要素が同層で配置されている。この結果、例えば、図5の点線矢印で示すように、約800Vが印加された上層インダクタ100と、約0Vが印加されたシールリングSRあるいは約0Vが印加されたタップパッド3aとの間で「沿面放電」と呼ばれる放電現象が発生する。よって、この「沿面放電」に起因する絶縁耐圧の低下が問題点として顕在化する。この「沿面放電」について、さらに説明する。
【0046】
図6において、上層インダクタ100の下方には、下層インダクタ300が配置されている。上層インダクタ100には約800Vの基準電位が印加される一方、下層インダクタ300には約0Vの基準電位が印加される。したがって、図6の実線矢印で示すように、上層インダクタ100と下層インダクタ300が対向する方向において、上層インダクタ100と下層インダクタ300との間の放電が懸念される。この点に関し、上層インダクタ100と下層インダクタ300との間の耐圧は、「真性耐圧」と呼ばれ、この「真性耐圧」は、設計値で制御可能である。すなわち、層間絶縁膜の厚さを制御することにより、「真性耐圧」を確保することができる。
【0047】
これに対し、多層配線層上には、上層インダクタ100だけでなく、下層インダクタ300と電気的に接続されるトランスパッド3cが形成されている。したがって、多層配線層上において、互いに異電位が印加されている上層インダクタ100と下層インダクタ300のトランスパッド3cが同層で形成されている。このことから、図6の点線矢印で示すように、約800Vが印加された上層インダクタ100と、約0Vが印加されたトランスパッド3cとの間で「沿面放電」が発生し、「沿面放電」に起因する絶縁耐圧の低下が懸念される。この「沿面放電」は、上層インダクタ100の形状やトランスパッド3cの形状に依存して生じやすくなり、設計値で「沿面放電」を回避することは困難である。
【0048】
特に、3チップ構成では、半導体チップCHP-Rにインダクタだけが形成されており、互いに異電位が印加された上層インダクタ100と下層インダクタ300のタップパッド3aやトランスパッド3cが同層で近接して配置される。このため、3チップ構成では、「沿面放電」が生じやすく、「沿面放電」に起因する絶縁耐圧(ガルバニック耐圧)の低下が問題点として顕在化することを本発明者が新規に見出した。
【0049】
「沿面放電」とは、例えば、絶縁物の表面に配置された一対の電極間に高電圧を印加したとき、絶縁物の表面に沿って電極間を電流が流れる放電現象として定義される。この「沿面放電」は、誘電率の高い絶縁物ほど生じやすく、絶縁物の裏面にも電極が存在する場合に生じやすいことが知られている。この「沿面放電」を引き起こす起点が「特異点」と呼ばれる。
【0050】
例えば、図5において、パッド(タップパッド1aやタップパッド2a)の角部や渦巻配線(渦巻配線1bや渦巻配線2b)の折れ曲がり部が特異点となりやすい。さらには、曲率を有する部位(例えば、円)の端点も特異点となる。したがって、本明細書において、「特異点」とは、「沿面放電」を引き起こす起点となりやすい箇所として定義され、例えば、角部や曲率を有する部位の端点(円の端点など)を挙げることができる。
【0051】
図5に示すように、関連技術においては、互いに異電位の構成要素が配置されている多層配線層上に上述した特異点が存在することから、「沿面放電」が生じやすく、「沿面放電」に起因する絶縁耐圧の低下が問題点として顕在化する。すなわち、関連技術には、「沿面放電」を抑制して絶縁耐圧を向上する観点から、改善の余地が存在する。
【0052】
そこで、本実施の形態では、関連技術に存在する改善の余地を克服するための工夫を施している。以下では、この工夫を施した本実施の形態における技術的思想を説明する。
【0053】
<実施の形態における基本思想>
本発明者は、互いに同層に形成された異電位の構成要素間に発生する「沿面放電」を抑制するためには、特異点を有する構成要素を特異点の少ない形状で囲むことにより実現できることを新規な知見として獲得し、この知見に基づいて、基本思想を想到している。
【0054】
すなわち、基本思想は、特異点を有する構成要素を略四角形形状の配線で囲む思想である。具体的に、本実施の形態における基本思想は、例えば、第1電位が印加される第1構成要素と接続される略四角形形状の第1配線で第1構成要素を囲み、第1電位とは異なる第2電位が印加される略四角形形状の第2配線でこの第1配線を囲みながら、第2配線の外側に第2配線と接続される第2構成要素を配置する思想である。
【0055】
以下では、上述した基本思想を具現化した具現化態様について説明する。
【0056】
<具現化態様>
<<半導体チップのレイアウト>>
図7は、半導体チップCHPのレイアウトを示す図である。
【0057】
図7において、半導体チップCHPは、平面視において互いに重なる上層インダクタと下層インダクタとを含むマイクロアイソレータ(トランスフォーマ)を有する半導体チップである。
【0058】
この半導体チップCHPは、図7に示すように、平面形状が矩形形状である。図7では、半導体チップCHPに設けられた多層配線層の上面が示されている。半導体チップCHPに設けられた多層配線層上には、上層インダクタ100および上層インダクタ200が形成されている。上層インダクタ100は、タップパッド1aと、タップパッド1aと接続された渦巻配線1bと、渦巻配線1bと接続されたトランスパッド1cを有する。同様に、上層インダクタ200は、タップパッド2aと、タップパッド2aと接続された渦巻配線2bと、渦巻配線2bと接続されたトランスパッド2cを有する。上層インダクタ100および上層インダクタ200は、平面視においてそれぞれ下層インダクタと重なるように形成されている。
【0059】
また、半導体チップCHPに設けられた多層配線層上には、タップパッド3aおよびトランスパッド3cと、タップパッド4aおよびトランスパッド4cが設けられている。タップパッド3aおよびトランスパッド3cは、上層インダクタ100の下方に形成されている下層インダクタ(図示せず)のタップパッドおよびトランスパッドである。すなわち、上層インダクタ100と対になる下層インダクタが、上層インダクタ100の下方に形成されており、この下層インダクタから配線を介して引き出されたタップパッド3aおよびトランスパッド3cが上層インダクタ100と同層に形成されている。同様に、タップパッド4aおよびトランスパッド4cは、上層インダクタ200の下方に形成されている下層インダクタ(図示せず)のタップパッドおよびトランスパッドである。すなわち、上層インダクタ200と対になる下層インダクタが、上層インダクタ200の下方に形成されており、この下層インダクタから配線を介して引き出されたタップパッド4aおよびトランスパッド4cが上層インダクタ200と同層に形成されている。
【0060】
さらに、半導体チップCHPに設けられた多層配線層上には、平面視において、上層インダクタ100および上層インダクタ200を囲む配線W1が形成されている。この配線W1は、例えば、約800Vの基準電位(第1基準電位)が印加されるように構成されており、上層インダクタ100のタップパッド1aおよび上層インダクタ200のタップパッド2aと電気的に接続されている。具体的には、多層配線層上に形成された接続用配線を介して、上層インダクタ100のタップパッド1aおよび上層インダクタ200のタップパッド2aのそれぞれから、配線W1に基準電位が印加される。この結果、配線W1と上層インダクタ100および上層インダクタ200とは電気的に接続されており、配線W1と上層インダクタ100および上層インダクタ200には、約800Vの基準電位が印加される。
【0061】
また、半導体チップCHPに設けられた多層配線層上には、平面視において、配線W1を囲む配線W2が形成されている。この配線W2は、例えば、約0Vの基準電位(第2基準電位)が印加されるように構成されており、上層インダクタ100と対になる下層インダクタのタップパッド3aおよび上層インダクタ200と対になる下層インダクタのタップパッド4aと電気的に接続されている。具体的には、多層配線層上に形成された接続用配線を介して、下層インダクタのタップパッド3aとタップパッド4aのそれぞれから、配線W2に基準電位が印加される。この接続用配線は、多層配線層内に設けられていても良い。特に、タップパッド3aおよびタップパッド4aは、配線W2の外側に配置されている。すなわち、配線W2の1辺は、配線W1とタップパッド3aおよびタップパッド4aの間に配置されている。このようにして、配線W2と、上層インダクタ100と対になる下層インダクタおよび上層インダクタ200と対になる下層インダクタとは電気的に接続されており、配線W2と、上層インダクタ100と対になる下層インダクタおよび上層インダクタ200と対になる下層インダクタには、約0Vの基準電位が印加される。
【0062】
以上のことから、配線W1と配線W2は、多層配線層上において同層に配置されている。そして、約800Vが印加される上層インダクタ100および上層インダクタ200と接続される略四角形形状の配線W1で上層インダクタ100および上層インダクタ200を囲み、この配線W1を約0Vが印加される略四角形形状の配線W2で囲みながら、配線W2の外側に配線W2と接続されるタップパッド3aおよびタップパッド4aを配置するという基本思想が具現化される。
【0063】
ここで、図7に示すように、配線W1は、多層配線層の上面に沿う第1方向にそれぞれ延在する第1内辺IS1および第2内辺IS2と、多層配線層の上面に沿い、且つ第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延在する第3内辺IS3と第4内辺IS4を有する。ここで、第1方向と第2方向は直交していることが好ましい。すなわち、配線W1は、第1内辺IS1と、第1内辺IS1と平行する第2内辺IS2と、第1内辺IS1と交差する第3内辺IS3と、第3内辺IS3と平行する第4内辺IS4を含むように構成されている。さらに、配線W1は、第1内辺IS1と第3内辺IS3との交差部CP1と、第1内辺IS1と第4内辺IS4との交差部CP2と、第2内辺IS2と第3内辺IS3との交差部CP3と、第2内辺IS2と第4内辺IS4との交差部CP4を有している。このとき、交差部CP1、交差部CP2、交差部CP3および交差部CP4のそれぞれは、曲率を有する形状から構成されている。
【0064】
一方、配線W2は、図7に示すように、多層配線層の上面に沿う第1方向にそれぞれ延在する第1外辺ES1および第2外辺ES2と、多層配線層の上面に沿い、且つ第1方向と交差する第2方向にそれぞれ延在する第3外辺ES3と第4外辺ES4を有する。すなわち、配線W2は、第1外辺ES1と、第1外辺ES1と対向する第2外辺ES2と、第1外辺ES1と交差する第3外辺ES3と、第3外辺ES3と対向する第4外辺ES4を含むように構成されている。このとき、第1外辺ES1は、第1内辺IS1と平行するように配置されており、第2外辺ES2は、第2内辺IS2と平行するように配置されている。また、第3外辺ES3は、第3内辺IS3と平行するように配置されており、第4外辺ES4は、第4内辺IS4と平行するように配置されている。
【0065】
例えば、図7において、第1内辺IS1と第1外辺ES1との間の距離を第1距離L1とし、第2内辺IS2と第2外辺ES2との間の距離を第2距離L2とし、第3内辺IS3と第3外辺ES3との間の距離を第3距離L3とし、第4内辺IS4と第4外辺ES4との間の距離を第4距離L4とする場合、第1距離L1と第2距離L2と第3距離L3と第4距離L4は等しい。例えば、第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4のそれぞれは、約200μm程度である。
【0066】
<<具現化態様における特徴>>
次に、具現化態様における特徴点について説明する。
【0067】
具現化態様における第1特徴点は、例えば、図7に示すように、約800Vが印加される上層インダクタ100および上層インダクタ200と接続される略四角形形状の配線W1が上層インダクタ100および上層インダクタ200を囲み、約0Vが印加される略四角形形状の配線W2がこの配線W1を囲みながら、配線W2の外側に配線W2と接続されるタップパッド3aおよびタップパッド4aを配置する点にある。言い換えれば、上層インダクタ(上層インダクタ100および上層インダクタ200)とタップパッド(タップパッド3aおよびタップパッド4a)の間に、互いに対向する配線W1の1辺と配線W2の1辺が形成されている。図7では、上層インダクタとタップパッドの間に第2内辺IS2と第2外辺ES2が形成されているレイアウトが示されているが、例えば第1内辺IS1と第1外辺ES1が上層インダクタとタップパッドの間に形成されているレイアウトでも良い。
【0068】
これにより、例えば、約800Vの基準電位と約0Vの基準電位との間の絶縁耐圧が、略四角形形状の配線W1と略四角形形状の配線W2の間で規定される。つまり、第1特徴点によれば、インダクタ(上層インダクタ100および上層インダクタ200)の形状およびパッド(タップパッド3aおよびトランスパッド3c、タップパッド4aおよびトランスパッド4c)の形状に存在する特異点からの「沿面放電」が抑制される。なぜなら、特異点を有するインダクタが略四角形形状の配線W1で囲まれ、この配線W1が略四角形形状の配線W2で囲まれる結果、インダクタやパッドに存在する特異点が「沿面放電」の起点となることを抑制することができるからである。
【0069】
そして、第1特徴点によれば、略四角形形状の配線W1と、この配線W1を囲む略四角形形状の配線W2によって、互いに平行する部位が多く形成される結果、「沿面放電」しにくくなる構成が実現される。これにより、第1特徴点によれば、「沿面放電」に起因する絶縁耐圧(ガルバニック耐圧)の低下を抑制することができ、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0070】
特に、第1特徴点によれば、配線W1と配線W2との間の距離(図7に示す第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4)を調整することにより、「沿面放電」を効果的に抑制することができる。すなわち、第1特徴点によれば、特異点からの「沿面放電」ではなく、配線W1と配線W2との間の「沿面放電」を抑制すれば良い。この結果、「沿面放電」の抑制が、配線W1と配線W2の間の距離の調整で対応可能となる利点が得られる。この点に関し、例えば、図7に示す第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4を等しくすることによって、「沿面放電」を効果的に抑制することができる。なお、「沿面放電」を効果的に抑制できてさえいれば、第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4は互いに等しくなくても良い。半導体チップCHPのレイアウトによって、第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4のいずれかが異なっていても良い。第1距離L1、第2距離L2、第3距離L3および第4距離L4が互いに等しければ、「沿面放電」をより効果的に抑制することができる。
【0071】
また、「沿面放電」を効果的に抑制する観点から、互いに対向する配線W1を構成する辺と配線W2を構成する辺は平行であることが好ましい。しかしながら、「沿面放電」を効果的に抑制できてさえいれば、これらの辺が平行であることに限定されない。例えば、互いに対向する配線W1の辺と配線W2の辺において、配線W2の辺が配線W1の辺に対して傾斜していても良い。
【0072】
続いて、具体的態様における第2特徴点は、例えば、図7に示すように、略四角形形状の配線W1の4つの角部のそれぞれが曲率を有するラウンド形状から構成されている点にある。これにより、角部が配線W1の2辺から構成される直角形状を有する場合と比較して、角部を起点とした「沿面放電」を抑制することができる。このように具体的態様における第2特徴点は、4つの角部のそれぞれが曲率を有するラウンド形状から構成される点にあるが、例えば、図7に示すように、4つの角部のそれぞれをラウンド形状にする場合であっても、第3内辺IS1や第4内辺IS4のような直線部分は残存させることが望ましい。なぜなら、例えば、図8に示すように、第3内辺IS1と第3外辺ES3との対向領域において、互いに平行している直線部分の間で最も「沿面放電」が起こりにくいからである。言い換えれば、図9に示すように、第3内辺IS3全体がラウンド形状IRである場合、ラウンド形状IRの端点が特異点として機能しやすくなり、図8に示す構成よりも「沿面放電」が生じやすくなるからである。
【0073】
<変形例1>
図10は、変形例1における半導体チップCHPを示す図である。
【0074】
図10に示すように、半導体チップCHPの外縁部には、多層配線層内にシールリングSRが形成されており、配線W2とシールリングSRが一体的に形成されている。シールリングSRは、上層インダクタ100、上層インダクタ200、配線W1およびパッド(タップパッド3aおよびトランスパッド3c、タップパッド4aおよびトランスパッド4c)を囲むように形成されている。シールリングSRは、配線W2のいずれか3辺を共有している。このように、配線W2は、シールリングSRと一体的に形成されていてもよい。これにより、半導体チップCHPにクラックが生じるのを防ぐことができる。
【0075】
<変形例2>
具体的態様では、配線W1に約800Vの基準電位が印加されるように構成されている一方、配線W2に約0Vの基準電位が印加されるように構成されている例について説明した。この点に関し、具体的態様における技術的思想は、これに限らず、例えば、配線W1に約0Vの基準電位が印加されるように構成されている一方、配線W2に約800Vの基準電位が印加されるように構成されていてもよい。
【0076】
<変形例3>
図11は、変形例3における半導体チップCHPを示す図である。
【0077】
図11に示すように、上層インダクタ100のタップパッド1aおよびトランスパッド1cは、曲率を有する平面形状(円形形状)であってもよい。同様に、上層インダクタ200のタップパッド2aおよびトランスパッド2cは、曲率を有する平面形状(円形形状)であってもよい。また、上層インダクタ100の渦巻配線1bおよび上層インダクタ200の渦巻配線2bは、曲率を有するように構成されていてもよい。さらに、タップパッド3a、タップパッド4a、トランスパッド3cおよびトランスパッド4cは、曲率を有する平面形状(円形形状)であってもよい。
【0078】
なお、図11において、「沿面放電」を効果的に抑制する観点から、交差部CP1~CP4の曲率は、渦巻配線(1b、2b)の曲率やタップパッド(1a、2a、3a、4a)およびトランスパッド(1c、2c、3c、4c)の曲率よりも小さいことが望ましい。
【0079】
<変形例4>
インダクタは、差動制御に対応する形状であってもよい。具体的に、インダクタの平面形状は、例えば、図12(a)や図12(b)に示す平面形状であってもよい。具体的には、図12(a)や図12(b)に示すように、インダクタは、一対の差動配線に対応して、センタータップパッド5aと、渦巻配線5bと、トランスパッド5cと、渦巻配線5dと、トランスパッド5eを備えるように構成されていてもよい。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1a タップパッド
1b 渦巻配線
1c トランスパッド
2a タップパッド
2b 渦巻配線
2c トランスパッド
3a タップパッド
3b 渦巻配線
3c トランスパッド
4a タップパッド
4c トランスパッド
5a センタータップパッド
5b 渦巻配線
5c トランスパッド
5d 渦巻配線
5e トランスパッド
100 上層インダクタ
200 上層インダクタ
300 下層インダクタ
CC 制御回路
DR 駆動回路
CHP 半導体チップ
CHP-R 半導体チップ
CHP1 半導体チップ
CHP2 半導体チップ
CHP3 半導体チップ
CL1a コイル
CL1b コイル
CL2a コイル
CL2b コイル
CP1 交差部
CP2 交差部
CP3 交差部
CP4 交差部
ES1 第1外辺
ES2 第2外辺
ES3 第3外辺
ES4 第4外辺
GND1 接地電位
GND2 接地電位
INV インバータ
IS1 第1内辺
IS2 第2内辺
IS3 第3内辺
IS4 第4内辺
LOD 負荷回路
L1 第1距離
L2 第2距離
L3 第3距離
L4 第4距離
PAS 表面保護膜
PI ポリイミド樹脂膜
PR p型半導体領域
RX1 受信回路
RX2 受信回路
SG1 信号
SG2 信号
SG3 信号
SG4 信号
SR シールリング
SUB p型半導体基板
TR1 トランス
TR2 トランス
TX1 送信回路
TX2 送信回路
VCC1 電源電位
VCC2 電源電位
W1 配線
W2 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12