(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157047
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】車両用通信システム
(51)【国際特許分類】
H04W 4/40 20180101AFI20231019BHJP
H04W 76/30 20180101ALI20231019BHJP
H04W 76/10 20180101ALI20231019BHJP
【FI】
H04W4/40
H04W76/30
H04W76/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066692
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100121027
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 大起
(72)【発明者】
【氏名】敷島 明人
(72)【発明者】
【氏名】岡村 建作
(72)【発明者】
【氏名】中西 雷太
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB03
5K067EE02
(57)【要約】
【課題】車両側の機器にユーザインターフェース(UI)が設けられる場合、設けられない場合にかかわらず、通信装置を通信接続スポットに接続するための接続先情報を、通信装置に事前に登録することを可能にする車両用通信システムを提供する。
【解決手段】車両用通信システム1は、車両Mに搭載されるTCU2と、TCU2とWiFi(登録商標)通信可能な携帯端末3とを備え、携帯端末3をTCU2にWiFi(登録商標)接続し、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるユーザインターフェースを用いてWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードを入力し、入力されたWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをTCU2のメモリ22に事前に記憶する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される通信装置と、当該通信装置と通信可能な携帯端末と、を備える車両用通信システムであって、
前記携帯端末は、
前記通信装置に通信接続し、
当該携帯端末におけるユーザインターフェースを用いて行われる、前記通信装置と当該通信装置に登録する通信接続スポットとにより行われる通信の通信方式において当該通信装置を当該通信接続スポットに通信接続するための接続先情報の入力を受け付け、
入力を受け付けた前記接続先情報を前記通信装置に送信し、
前記通信装置は、前記携帯端末から受信する前記通信方式における前記接続先情報を保持する
ことを特徴とする車両用通信システム。
【請求項2】
前記通信装置は、
前記接続先情報が保持されているか否かを判定し、
前記接続先情報が保持されていると判定した場合には、前記接続先情報に基づいて前記通信接続スポットに前記通信方式により通信接続し、
ソフトウェアに関わるデータを、前記通信接続スポットを介して取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用通信システム。
【請求項3】
前記通信装置が前記ソフトウェアに関わるデータを取得した後、前記通信方式での前記通信装置と前記通信接続スポットとの通信接続が切断されることを特徴とする請求項2に記載の車両用通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される通信装置をWiFi(登録商標)スポットなどの通信接続スポットに接続する車両用通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に配置されたディスプレイオーディオと、車両に配置されてディスプレイオーディオと通信可能な携帯端末と、車両に配置されたルータとを備え、携帯端末を、ディスプレイオーディオからの信号に基づいて、ルータに接続するアクセスポイント接続システムがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、通信装置をWiFi(登録商標)スポット、つまり、WiFi(登録商標)ルータに接続するには、通信装置に、当該WiFi(登録商標)ルータのSSID(Service Set Identifier)を選択して当該WiFi(登録商標)ルータのパスワードを入力するためのユーザインターフェース(UI)が必要となる。
【0005】
しかしながら、車両側の機器にUIが設けられない場合、UIを用いてWiFi(登録商標)ルータのSSID(Service Set Identifier)を選択したり当該WiFi(登録商標)ルータのパスワードを入力したりすることができず、当該通信装置はWiFi(登録商標)ルータ経由での情報の取得などをできない。例えば、ソフトウェアのアップデート実施の際にWiFi(登録商標)ルータ経由でのOTA(Over The Air:無線通信を用いた車載ECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)のソフトウェア更新方法)を実施できない。
【0006】
本発明の目的は、車両側の機器にユーザインターフェース(UI)が設けられる場合、設けられない場合にかかわらず、通信装置を通信接続スポットに接続するための接続先情報を、通信装置に事前に登録することを可能にする車両用通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するため、本発明に係る車両用通信システムは、車両に搭載される通信装置と、当該通信装置と通信可能な携帯端末と、を備える車両用通信システムであって、前記携帯端末は、前記通信装置に通信接続し、当該携帯端末におけるユーザインターフェースを用いて行われる、前記通信装置と当該通信装置に登録する通信接続スポットとにより行われる通信の通信方式において当該通信装置を当該通信接続スポットに通信接続するための接続先情報の入力を受け付け、入力を受け付けた前記接続先情報を前記通信装置に送信し、前記通信装置は、前記携帯端末から受信する前記通信方式における前記接続先情報を保持することを特徴としている。
【0008】
この構成によれば、ユーザは、携帯端末におけるユーザインターフェースを用いて、通信装置と当該通信装置に登録する通信接続スポットとにより行われる通信の通信方式において当該通信装置を当該通信接続スポットに通信接続するための接続先情報を入力することで、接続先情報を通信装置に登録できるため、車両側の機器にユーザインターフェースが設けられる場合、設けられない場合にかかわらず、通信装置を通信接続スポットに接続するための接続先情報を通信装置に事前に登録して通信装置を通信接続スポットに接続することが可能になる。
【0009】
また、前記通信装置は、前記接続先情報が保持されているか否かを判定し、前記接続先情報が保持されていると判定した場合には、前記接続先情報に基づいて前記通信接続スポットに前記通信方式により通信接続し、ソフトウェアに関わるデータを、前記通信接続スポットを介して取得するとしてもよい。
【0010】
この構成によれば、ユーザは通信接続スポットに接続するための接続先情報を通信装置に事前登録しておけば、通信装置は、ソフトウェアに関わるデータを、通信接続スポット経由で取得することができ、ユーザビリティの向上が図られる。
【0011】
また、前記通信装置が前記ソフトウェアに関わるデータを取得した後、前記通信方式での前記通信装置と前記通信接続スポットとの通信接続が切断されるとしてもよい。
【0012】
これによれば、更新の必要なソフトウェアに関わるデータの取得を終了した後、通信装置と通信接続スポットとの通信接続が切断されるため、通信装置および通信接続スポットそれぞれの通信負荷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ユーザは、携帯端末におけるユーザインターフェースを用いて、通信装置と当該通信装置に登録する通信接続スポットとにより行われる通信の通信方式において当該通信装置を当該通信接続スポットに通信接続するための接続先情報を入力することで、接続先情報を通信装置に登録できるため、車両側の機器にユーザインターフェースが設けられる場合、設けられない場合にかかわらず、通信装置を通信接続スポットに接続するための接続先情報を通信装置に事前に登録して通信装置を通信接続スポットに接続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係るTCUに対するWiFi(登録商標)ルータの事前登録に関わる車両用通信システムの構成を示すブロック図であり、(b)はWiFi(登録商標)ルータの事前登録用のユーザインターフェースを示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るTCUがWiFi(登録商標)ルータ経由でのデータの取得に関わる車両用通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図1の車両用通信システムにおいて行われるTCUに対するWiFi(登録商標)ルータの事前登録処理の処理フローを示すフローチャートである。
【
図4】
図2の車両用通信システムにおいて行われるTCUがWiFi(登録商標)ルータ経由でのデータの取得処理の処理フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
1.車両用通信システムの構成
1.1.TCUに対するWiFi(登録商標)ルータの事前登録に関わる車両用通信システムの構成
本発明の一実施形態に係るTCU(Telematics Control Unit)2に対するWiFi(登録商標)ルータ4(
図2参照)の事前登録に関わる車両用通信システム1の構成について
図1を参照しつつ説明する。
【0017】
TCU2に対するWiFi(登録商標)ルータ4(
図2参照)の事前登録に関わる車両用通信システム1は、
図1(a)に示す通り、車両Mに搭載されるTCU2と、携帯端末3とを備える。TCU2には、ECU5がCAN(Controller Area Network)を介して接続されており、TCU2とECU5とはCAN通信が可能になっている。なお、CANは一例であり、車内におけるLAN(Local Area Network)における通信である。
【0018】
TCU2は、本実施形態では、通信方式としてWiFi(登録商標)をサポートしており、各種制御および各種演算などを行うCPU21と、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ22と、WiFi(登録商標)用の通信部23と、CAN用の通信部(不図示)と、携帯電話通信網用の通信部(不図示)などとを備える。なお、TCU2は、本発明の「通信装置」に対応する。
【0019】
携帯端末3は、例えば、スマートフォンやタブレットパソコンなどのユーザが所持する携帯端末であり、本実施形態では、通信方式としてWiFi(登録商標)をサポートしており、各種制御および各種演算などを行うCPU31と、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ32と、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどの表示ユニット33と、WiFi(登録商標)用の通信部34と、携帯電話通信網用の通信部(不図示)などとを備える。なお、携帯端末3は、本発明の「携帯端末」に対応する。
【0020】
ユーザが所持する携帯端末3を用いたTCU2に対するWiFi(登録商標)ルータ4(
図2参照:本発明の「通信接続スポット」に相当)の事前登録では、携帯端末3のCPU31は、TCU2をWiFi(登録商標)の親機とし、自端末(携帯端末3)をWiFi(登録商標)の子機とし、自端末(携帯端末3)をTCU2にWiFi(登録商標)接続する。携帯端末3とTCU2とのWiFi(登録商標)接続後、携帯端末3とTCU2とはWiFi(登録商標)通信を行うことになる。携帯端末3のTCU2へのWiFi(登録商標)接続では、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示される通信方式(WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)など)の選択用のユーザインターフェース(UI)を利用して、表示される通信方式の中から使用する通信方式を選択し(本実施形態ではWiFi(登録商標)を選択し)、続いて、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるWiFi(登録商標)の親機として使用する機器の選択用のUIを利用して、検出した1又は複数のWiFi(登録商標)の親機の中からWiFi(登録商標)の親機として利用するTCU2のSSIDを選択し、続いて、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示される選択したWiFi(登録商標)の親機のパスワードの入力用のUIを利用して、WiFi(登録商標)の親機として利用するTCU2のパスワードを入力する。入力したパスワードが正しい場合には、TCU2をWiFi(登録商標)の親機とし、携帯端末3をWiFi(登録商標)の子機として、TCU2と携帯端末3とがWiFi(登録商標)接続される。ただし、以前に携帯端末3をTCU2にWiFi(登録商標)接続したことがあり、TCU2のSSIDとパスワードとがメモリ32に記憶されている場合には、ユーザがTCU2のSSIDを選択したり、TCU2のパスワードを入力したりすることなく、自動的にTCU2と携帯端末3とはWiFi(登録商標)接続される。なお、WiFi(登録商標)の親機とWiFi(登録商標)の子機との間のWiFi(登録商標)接続の手順は、既知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0021】
携帯端末3とTCU2とのWiFi(登録商標)接続後、携帯端末3のCPU31は、TCU2内のローカルサイトにログインする。この携帯端末3のCPU31のTCU2内のローカルサイトへのログインでは、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるTCU2内のローカルサイトへのログイン用のUIを利用して、当該ローカルサイトに登録済みのユーザIDとパスワードとを入力し、TCU2のCPU21は、携帯端末3のCPU31から受信する、ユーザにより入力されたユーザIDとパスワードとを確認して正しければ、携帯端末3のCPU31の、TCU2内のローカルサイトへのログインを許可し、携帯端末3のCPU31はTCU2内のローカルサイトにログインしてアクセスできる。なお、携帯端末3のCPU31の、TCU2内のローカルサイトへのログインの手順は、既知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0022】
TCU2のCPU21は、通信部23を介して、TCU2に事前登録する機器と行う通信方式(WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)など)を選択するためのUIを表示部に表示するための表示情報を携帯端末3へ送信する。携帯端末3のCPU31は、通信部34を介して受信した当該表示情報に基づいて、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に、TCU2に対して事前登録する機器と行う通信方式を選択するためのUIを表示する。ユーザは、このUIを利用して通信方式(本実施形態では、WiFi(登録商標))を選択して登録ボタンを押下する。携帯端末3のCPU31は、登録ボタンの押下を契機として、通信部34を介して、ユーザにより選択された通信方式(本実施形態では、WiFi(登録商標))をTCU2へ送信する。
【0023】
続いて、TCU2のCPU21は、通信部23を介して、TCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とする機器のSSIDおよびパスワードを入力するためのUIを表示部に表示するための表示情報を携帯端末3へ送信する。携帯端末3のCPU31は、通信部34を介して受信した当該表示情報に基づいて、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に、WiFi(登録商標)においてTCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とする機器のSSIDおよびパスワードを入力するための、例えば
図1(b)に示す、UIを表示する。ユーザは、このUIを利用して、TCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とする機器のSSIDおよびパスワード、本実施形態ではWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードを入力して登録ボタンを押下する。携帯端末3のCPU31は、登録ボタンの押下を契機として、通信部34を介して、ユーザにより入力されたWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをTCU2へ送信する。TCU2のCPU21は、通信部23を介して受信したWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをメモリ22に記憶する(TCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合のWiFi(登録商標)の親機とするWiFi(登録商標)ルータ4をTCU2に事前登録する)。
【0024】
携帯端末3のCPU31はTCU2内のローカルサイトからログアウトする。なお、携帯端末3のCPU31の、TCU2内のローカルサイトからのログアウトの手順は、既知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0025】
携帯端末3のCPU31とTCU2のCPU21とは、携帯端末3とTCU2との間のWiFi(登録商標)接続を切断する。なお、携帯端末3とTCU2との間のWiFi(登録商標)接続の切断の手順は、既知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0026】
1.2.TCUがWiFi(登録商標)ルータ経由でのデータの取得に関わる車両用通信システム
本発明の一実施形態に係るTCU2がWiFi(登録商標)ルータ4経由でのデータの取得に関わる車両用通信システム1の構成について
図2を参照しつつ説明する。
【0027】
TCU2がWiFi(登録商標)ルータ4経由でのデータの取得に関わる車両用通信システム1は、
図2に示す通り、車両Mに搭載されるTCU2と、WiFi(登録商標)ルータ4とを備える。TCU2には、上述したように、ECU5がCAN(Controller Area Network)を介して接続されており、TCU2とECU5とはCAN通信が可能になっている。
【0028】
TCU2は、上述したように、本実施形態では、通信方式としてWiFi(登録商標)をサポートしており、CPU21と、メモリ22と、WiFi(登録商標)用の通信部23と、CAN用の通信部(不図示)と、携帯電話通信網用の通信部(不図示)などとを備える。
図1を用いて説明したTCU2に対するWiFi(登録商標)ルータ4の事前登録により、メモリ22にはWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードが記憶されている。
【0029】
WiFi(登録商標)ルータ4は、例えば、ユーザが所持する自宅のWiF(登録商標)ルータであり、本実施形態では、通信方式としてWiFi(登録商標)をサポートしており、各種制御および各種演算などを行うCPU41と、各種プログラムや各種データを記憶するメモリ42と、WiFi(登録商標)用の通信部34と、IP(Internet Protocol)ネットワーク用の通信部(不図示)などとを備える。
【0030】
TCU2がWiFi(登録商標)ルータ4経由でのデータの取得する一例として、TCU2がOEMセンタ6からのOTAの実施要求を受信し、TCU2がOTAセンタ7から更新を行うソフトウェアに関わるデータ(アップデートするソフトウェア用の更新データ)をWiFi(登録商標)ルータ4を介して受信し、アップデートするソフトウェアに対応するECU(例えば、ECU5)がソフトウェア用の更新データを用いてソフトウェアの更新を行う場合について説明する。
【0031】
OEMセンタ6は、TCU2などにOTAを実施させるために、OTAの実施を要求するOTA要求(アップデートするソフトウェアの更新データを示す情報を含む。)を、携帯電話通信網を介して、TCU2などへ送信する。TCU2のCPU21は、携帯電話通信網用の通信部(不図示)を介して、OEMセンタ6からOTA実施要求を受信する。なお、本実施形態では、TCU2はOEMセンタ6からOTA実施要求を受信した場合にWiFi(登録商標)ルータ4にWiFi(登録商標)接続するとするが、これに限定されるものではなく、例えば、OEMセンタ6はOTA実施要求を行うとともにWiFi(登録商標)接続を要求するWiFi(登録商標)接続要求を行うようにし、TCU2はOEMセンタ6からWiFi(登録商標)接続要求を受信した場合にWiFi(登録商標)ルータ4にWiFi(登録商標)接続するようにしてもよい。
【0032】
OEMセンタ6からOTA実施要求を受信した場合、TCU2のCPU21は、WiFi(登録商標)においてTCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とする機器のSSIDおよびパスワード、本実施形態ではWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードがメモリ22に事前に記憶されているか否かを判定する。なお、以下では、SSIDおよびパスワードは、本発明の「接続先情報」に相当する。
【0033】
WiFi(登録商標)の親機とするWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードがメモリ22に事前に記憶されている場合、TCU2のCPU21は、現在TCU2をWiFi(登録商標)接続することができるWiFi(登録商標)の親機を検出し、検出したWiFi(登録商標)の親機のSSIDとメモリ22に事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDとに基づいて、メモリ22にSSIDが事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4を検出できたか否かを判定する。
【0034】
メモリ22にSSIDが事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4を検出できた場合、TCU2のCPU21はメモリ22に事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4のパスワードを用い、TCU2のCPU21とWiFi(登録商標)ルータ4のCPU41との処理により、WiFi(登録商標)ルータ4をWiFi(登録商標)の親機とし、TCU2をWiFi(登録商標)の子機とし、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とWiFi(登録商標)接続する。
【0035】
TCU2のCPU21は、OTA実施要求に含まれるアップデートするソフトウェアの更新データを示す情報に基づいて、OTAセンタ7に対してアップデートするソフトウェア用の更新データをWiFi(登録商標)ルータ4を介して要求し、OTAセンタ7からアップデートするソフトウェア用の更新データをWiFi(登録商標)ルータ4を介して受信する。ここで、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とは、TCU2の通信部23とWiFi(登録商標)ルータ4の通信部43とを介してWiFi(登録商標)通信を行う。また、WiFi(登録商標)ルータ4とOTAセンタ7とは、WiFi(登録商標)ルータ4のIPネットワーク用の通信部(不図示)などを用いてIPネットワーク8を介して通信を行う。TCU2のCPU21は、OTAセンタ7から受信したアップデートするソフトウェア用の更新データを、CAN用の通信部(不図示)を介して、アップデートするソフトウェアに対応するECU(例えば、ECU5)に送信し、当該ECUは当該更新データに基づいてソフトウェアの更新を行う。
【0036】
TCU2のCPU21とWiFi(登録商標)ルータ4のCPU41とは、ECUが更新データに基づくソフトウェアの更新を終了した後に、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とのWiFi(登録商標)接続を切断する。なお、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4の間のWiFi(登録商標)接続の切断の手順は、既知技術であるので、詳細な説明を省略する。
【0037】
ここで、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4の間のWiFi(登録商標)接続の切断は、TCU2のCPU21が更新データの受信を完了した後であればよい。
【0038】
2.車両用通信システムの通信処理
2.1.TCUに対するWiFi(登録商標)ルータの事前登録処理
図1を参照しつつ説明した車両用通信システム1における、TCU2に対するWiFi(登録商標)ルータ4の事前登録処理について
図3を参照しつつ説明する。
【0039】
上述したように、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示される各UIを利用して、携帯端末3とTCU2との間の通信に使用する通信方式(本実施形態ではWiFi(登録商標))を選択し、WiFi(登録商標)で親機とする機器のSSID(本実施形態ではTCU2のSSID)を選択し、WiFi(登録商標)で親機とする機器のパスワード(本実施形態ではTCU2のパスワード)を入力する。携帯端末3のCPU31とTCU2のCPU21とは、TCU2をWiFi(登録商標)の親機とし、携帯端末3をWiFi(登録商標)の子機とし、携帯端末3をTCU2にWiFi(登録商標)接続する。WiFi接続後に、上述したように、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるUIを利用して、TCU2内のローカルサイトに登録済みのユーザIDおよびパスワードを入力する。携帯端末3のCPU31とTCU2のCPU21との処理により、携帯端末3のCPU31はTCU2内のローカルサイトにログインする(ステップS1)。
【0040】
続いて、上述したように、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるUI(
図1(b)参照)を利用し、TCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とする機器(本実施形態では、WiFi(登録商標)ルータ4)のSSIDおよびパスワードを入力して登録ボタンを押下する。携帯端末3のCPU31は、ユーザにより入力されたWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをTCU2へ送信し、TCU2のCPU21は、携帯端末3から受信したWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをメモリ22に記憶する(ステップS2)。
【0041】
続いて、携帯端末3のCPU31とTCU2のCPU21との処理により、携帯端末3のCPU31はTCU2内のローカルサイトからログアウトする(ステップS3)。
【0042】
続いて、携帯端末3のCPU31とTCU2のCPU21との処理により、携帯端末3とTCU2とのWiFi(登録商標)接続を切断し(ステップS4)、
図3の事前登録処理を終了する。
【0043】
2.2.TCUがWiFi(登録商標)ルータ経由でのデータの取得処理
図2を参照しつつ説明した車両用通信システム1における、TCU2がWiFi(登録商標)ルータ4経由でのデータの取得処理について
図4を参照しつつ説明する。
【0044】
OEMセンタ6は、TCU2などにOTAを実施させるために、OTAの実施を要求するOTA実施要求(アップデートするソフトウェアの更新データを示す情報を含む。)を、携帯電話通信網を介して、TCU2などへ送信する。TCU2のCPU21は、携帯電話通信網用の通信部(不図示)を介して、OTA実施要求を受信することになる。
【0045】
TCU2のCPU21は、携帯電話通信網用の通信部(不図示)を介して、OEMセンタ6からOTA実施要求を受信したか否かを判定する(ステップS11)。OTA実施要求を受信していないと判定された場合には(S11:NO)、ステップS11の処理に戻り、一方、OTA実施要求を受信したと判定された場合には(S11:YES)、ステップS12の処理に進む。
【0046】
TCU2のCPU21は、WiFi(登録商標)においてTCU2をWiFi(登録商標)の子機とする場合にWiFi(登録商標)の親機とするWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードがメモリ22に事前に記憶されているか否かを判定する(ステップS12)。WiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードがメモリ22に事前に記憶されていると判定された場合には(ステップS12:YES)、ステップS13の処理に進み、一方、WiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードがメモリ22に事前に記憶されていないと判定された場合には(ステップS12:NO)、
図4のデータの取得処理を終了する。
【0047】
TCU2のCPU21は、現在TCU2をWiFi(登録商標)接続することができるWiFi(登録商標)の親機を検出し、検出したWiFi(登録商標)の親機のSSIDとメモリ22に事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDとに基づいて、メモリ22にSSIDが事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4が検出できたかを判定する(ステップS13)。メモリ22にSSIDが事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4を検出できていないと判定された場合には(S13:NO)、ステップS13の処理に戻り、一方、メモリ22にSSIDが事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4を検出できたと判定された場合には(S13:YES)、ステップS14に進む。
【0048】
TCU2のCPU21はメモリ22に事前に記憶されているWiFi(登録商標)ルータ4のパスワードを用い、TCU2のCPU21とWiFi(登録商標)ルータ4のCPU41との処理により、WiFi(登録商標)ルータ4をWiFi(登録商標)の親機とし、TCU2をWiFi(登録商標)の子機とし、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とをWiFi(登録商標)接続する(ステップS14)。
【0049】
TCU2のCPU21は、OTA実施要求に含まれるアップデートするソフトウェアの更新データを示す情報に基づいて、OTAセンタ7に対してアップデートするソフトウェア用の更新データをWiFi(登録商標)ルータ4を介して要求し、OTAセンタ7からアップデートするソフトウェア用の更新データをWiFi(登録商標)ルータ4を介して受信する。TCU2のCPU21は、OTAセンタ7から受信したアップデートするソフトウェア用の更新データを、アップデートするソフトウェアに対応するECU(例えば、ECU5)に送信し、当該ECUは更新データに基づいてソフトウェアの更新を行う(ステップS15)。このようにして、OTAが実施される。ここで、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とはWiFi(登録商標)通信を行い、WiFi(登録商標)ルータ4とOTAセンタ7とはIPネットワーク8を介しての通信を行う。
【0050】
TCU2のCPU21は、ECUが更新データに基づいてソフトウェアの更新を終了したか否か(OTAの実施を終了したか否か)を判定する(ステップS16)。OTAセンタ7から更新を行うソフトウェアに関わるデータの全てを受信したか否かを判定する(ステップS16)。ソフトウェアの更新を終了していないと判定された場合には(S16:NO)、ステップS15の処理に戻り、ソフトウェアの更新を終了したと判定された場合には(S16:YES)、ステップS17の処理に進む。
【0051】
TCU2のCPU21とWiFi(登録商標)ルータ4のCPU41とは、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とのWiFi(登録商標)接続を切断し(ステップS17)、
図4のデータの取得処理を終了する。
【0052】
ここで、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4の間のWiFi(登録商標)接続の切断は、TCU2のCPU21が更新データの受信を完了した後であればよい。
【0053】
3.効果
以上の実施形態によれば、ユーザは、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるUIを用いて、TCU2をWiFi(登録商標)ルータ4にWiFi(登録商標)接続するためのSSIDおよびパスワードを入力することで、SSIDおよびパスワードをTCU2のメモリ22に記憶して登録できるため、車両M側の機器にUIが設けられる場合、設けられない場合にかかわらず、TCU2をWiFi(登録商標)ルータ4に接続するためのSSIDおよびパスワードをTCU2のメモリ22に事前に記憶してTCU2をWiFi(登録商標)ルータ4に接続することが可能になる。
【0054】
また、携帯端末3をTCU2にWiFi(登録商標)接続させ、携帯端末3の表示ユニット33の表示部に表示されるUIを利用してWiFi(登録商標)ルータ4のSSIDおよびパスワードをTCU2のメモリ22に記憶させることができるのは、携帯端末3をTCU2にWiFi(登録商標)接続させるのに必要なTCU2のパスワードを知っているユーザに限られるため、セキュリティ上のリスクは小さい。
【0055】
また、車両Mに搭載する機器(例えば、ディスプレイオーディオ、カーナビゲーション装置など)にUIを設定する必要がないため、車両MにUIを設けられる機器を搭載しなくもよく、車両Mに搭載する機器のユーザの選択の自由度が向上する。
【0056】
また、車両Mに搭載する機器(例えば、ディスプレイオーディオ、カーナビゲーション装置など)にUIを設定する必要がないため、UIの設定に関わる費用を抑えることができ、これにより、車両Mや付属機器の価格上昇を抑えることができる。
【0057】
また、ユーザはWiFi(登録商標)ルータ4に接続するためのSSIDおよびパスワードをTCU2に事前登録しておけば(TCU2のメモリ22に事前に記憶しておけば)、TCU2は、アップデートするソフトウェアの更新データを、WiFi(登録商標)ルータ4経由で取得することができ、ユーザビリティの向上が図られる。
【0058】
また、自宅のWiFi(登録商標)ルータ4をIPネットワーク8に接続する役割を担う接続事業者(プロバイダ)は定額でデータ量無制限のサービスを提供することが多く、しかも定額は安価であることが多い。このため、TCU2をWiFi(登録商標)ルータ4にWiFi(登録商標)接続し、TCU2はWiFi(登録商標)ルータ4経由でアップデートするソフトウェアの更新データを取得することで、ユーザに新たな通信費の負担を課すことがない。
【0059】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、携帯端末3とTCU2との間の通信方式としてWiFi(登録商標)を用いるとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、Bluetooth(登録商標)など他の通信方式を用いるようにしてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、TCU2とTCU2に事前に接続先情報を記憶する機器(上記実施形態ではWiFi(登録商標)ルータ4)との間の通信方式としてWiFi(登録商標)を用いるとしているが、これに限定されるものではなく、TCU2とTCU2に事前に接続先情報を記憶する機器との間の通信方式として、例えば、Bluetooth(登録商標)など他の通信方式を用いるようにしてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、携帯端末3とTCU2との間の通信方式と、TCU2とTCU2に事前に接続先情報を記憶する機器(上記実施形態ではWiFi(登録商標)ルータ4)との間の通信方式とを同じにしているが、これに限定されるものではなく、携帯端末3とTCU2との間の通信方式と、TCU2とTCU2に事前に接続先情報を記憶する機器との間の通信方式とを異なるようにしてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、TCU2がWiFi(登録商標)ルータ4経由で取得するデータを、OTAセンタ7からのアップデートするソフトウェア用の更新データとしているが、これに限定されるものではなく、当該更新データ以外の、例えばデータサイズの大きいデータなどのデータであってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、イグニッション(IG)スイッチがON、OFFに関わらず、
図4のステップS12以降の処理が行われるとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、IGスイッチがOFFの場合に
図4のステップS12以降の処理が行われるようにしてもよい。このようにすれば、車両Mが自宅の駐車場に駐車しているなどTCU2をWiFi(登録商標)ルータ4にWiFi(登録商標)接続できる可能性が高い場合に
図4のステップS12以降の処理が行われるので、TCU2のCPU21の処理負荷の軽減が図られる。
【0065】
また、上記実施形態の
図4に、例えば、OTA実施中にIGスイッチがONになった場合にOTA実施(ステップS15)を中止して、TCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とのWiFi(登録商標)接続を切断する手順を追加するようにしてもよい。このようにすれば、車両Mが自宅の駐車場から出発するなどTCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とのWiFi(登録商標)接続を維持できなくなる可能性が高い場合にOTA実施(ステップS15)を中止してTCU2とWiFi(登録商標)ルータ4とのWiFi(登録商標)接続を切断するので、TCU2のCPU21の処理負荷およびWiFi(登録商標)ルータ4のCPU41の処理負荷の軽減が図られる。
【0066】
また、上記実施形態では、ステップS13の処理を、WiFi(登録商標)ルータ4を検出できるまで行うとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、予め定められた一定時間の間にWiFi(登録商標)ルータ4を検出できなかった場合にはステップS13の処理を終了する(タイムアウトする)ようにしてもよい。このようにすれば、TCU2のCPU21の処理負荷の軽減が図られる。なお、予め定められた一定時間の間にWiFi(登録商標)ルータ4を検出できずにステップS13の処理を終了した場合、予め定められた時間経過後に再度ステップS13の処理を開始するようにしてもよい。
【0067】
また、上記の実施形態で説明した内容や上記の変形例で説明した内容を適宜組み合わせるようにしてもよい。
【0068】
本発明は、車両に搭載される通信装置をWiFi(登録商標)スポットなどの通信接続スポットに接続する車両用通信システムに広く適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
M:車両
1:車両用通信システム
2:TCU
3:携帯端末
4:WiFi(登録商標)ルータ