IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイカ工業株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157050
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】低誘電率樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20231019BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20231019BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231019BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20231019BHJP
   C08L 25/06 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20231019BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20231019BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231019BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231019BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C08L53/02
C09J153/02
C09J11/06
C08L53/00
C08L25/06
C08K5/3492
B32B15/08 101Z
B32B27/30 B
B32B27/00 104
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066698
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青谷 光
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB17B
4F100AH03
4F100AH03A
4F100AH06A
4F100AK12
4F100AK12A
4F100AK73A
4F100AL06
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02A
4F100CA16A
4F100CB00A
4F100EJ67A
4F100GB41
4F100JG05
4F100JK06
4F100YY00A
4J002BC033
4J002BP01W
4J002BP03X
4J002EU186
4J002EX077
4J002FD143
4J002FD147
4J002FD346
4J002GJ01
4J040DM011
4J040HB41
4J040HD30
4J040HD36
4J040JA02
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA26
4J040KA29
4J040LA09
4J040MA02
4J040NA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】誘電率や誘電正接が十分低いと共に、加圧なしでも加熱だけで基材と銅箔を貼り合わせ、実用に耐えうる接着力を発現できる樹脂組成物及び接着剤を提供する。
【解決手段】スチレンとブタジエンからなる水素添加したブロック共重合体と、スチレンとエチレンを含む水素添加したブロック共重合体と、架橋剤又は/及び粘着付与剤と、シランカップリング剤と、を含み、前記架橋剤と粘着付与剤の合計配合比率が固形分全量に対し5~25重量%であることを特徴とする樹脂組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンとブタジエンからなる水素添加したブロック共重合体(A)と、スチレンとエチレンを含む水素添加したブロック共重合体(B)(但し(A)を除く)と、架橋剤(C)又は/及び粘着付与剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、を含み、前記(C)と(D)合計の配合比率が固形分全量に対し5~25重量%であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)がスチレン系オリゴマーであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(D)がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹 脂組成物。
【請求項4】
前記(C)の配合量が固形分全体に対し3~12重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹脂組成物。
【請求項5】
銅張積層板の接着剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電特性を有する樹脂組成物及びそれを用いた銅張積層板用の接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンに代表される電子機器は高性能化、高機能化が急速に進んでおり、電子機器に用いられる電子部品の素材についても、耐熱性や機械的強度、電気特性等の諸物性に関して更なる改善が要求されるようになっている。例えば、コンデンサや半導体部品を実装するプリント配線板についても、より高密度、高機能化が求められている。
【0003】
特に高精細で動きの早い動画などで求められる伝送信号の高速化に対応するためには、高周波領域における信号遅延や伝送損失を抑えることができるような電気特性が必要となり、リジットプリント配線板やフレキシブルプリント配線板(以下FPCという)の構成材料(例えば接着剤組成物)には、低誘電率、低誘電正接といった低誘電特性が求められている(特許文献1)。
【0004】
こうした低誘電特性を持つ基板材料としては、ポリフェニレンエーテルがよく知られているが、基材と銅箔を貼り合わせる接着シートとして用いる場合は、ポリイミドや銅箔のような被着体に挟み、加熱と共に高い圧力をかけて接着を行う必要があった。しかしながらこの方法は、roll to rollの生産に不向きで生産性に劣り、また十分に加圧ができる設備を保有していない場合は、接着力が安定しないという問題点があった。そのため、加圧なしでも加熱だけで基材と銅箔を貼り合わせることが可能な、低誘電特性を有する接着剤が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-79354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、誘電率や誘電正接が十分低いと共に、加圧なしでも加熱だけで基材と銅箔を貼り合わせ、実用に耐えうる接着力を発現できる樹脂組成物及び接着剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、スチレンとブタジエンからなる水素添加したブロック共重合体(A)と、スチレンとエチレンを含む水素添加したブロック共重合体(B)(但し(A)を除く)と、架橋剤(C)又は/及び粘着付与剤(D)と、シランカップリング剤(E)と、を含み、前記(C)と(D)合計の配合比率が固形分全量に対し5~25重量%であることを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記(C)がスチレン系オリゴマーであることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物を提供する。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記(D)がトリアリルイソシアヌレートであることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹脂組成物を提供する。
【0010】
また請求項4記載の発明は、前記(C)の配合量が固形分全体に対し3~12重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹脂組成物を提供する。
【0011】
また請求項5記載の発明は、銅張積層板の接着剤であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の樹脂組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の樹脂組成物は、誘電率や誘電正接が十分低いと共に、加圧なしでも加熱だけで実用に耐えうる接着力を発現できるため、銅張配線板、特にFPCにおいて基材と銅箔を貼り合わせる接着剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の樹脂組成物の構成は、スチレンとブタジエンからなる水素添加(以下水添という)したブロック共重合体(A)と、スチレンとエチレンを含む水素添加したブロック共重合体(B)と、架橋剤(C)と、粘着付与剤(D)と、シランカップリング剤(E)である。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0015】
本発明に使用されるスチレンとブタジエンからなる水添したブロック共重合体(A)は、ハードセグメントであるポリスチレンブロックと、ソフトセグメントであるポリブタジエンからなるブロックコポリマーを水添した、幅広い温度でゴム弾性を示す熱可塑性ポリマー(以下SEBS:スチレン―エチレン―ブチレン―スチレン)である。水添していないスチレンブタジエンブロックコポリマー(以下SBS)と比較し、特に耐候性、耐熱老化性、低温加工性に優れている。
【0016】
前記(A)の水添は部分的にされたもの(以下SBBS:スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン)でも良いが、完全水添したSEBSがより耐候性、耐熱性が優れると同時に、(B)及び(C)との相溶性が向上するため好ましい。またアミン変性や酸変性することにより、シート化したときの伸び率が向上する傾向があり特に好ましい。水添していないSBSでは、(B)及び(C)との相溶性が低下したり、経時的な接着力の低下等が懸念されたりする場合がある。市販品ではタフテックHシリーズ(商品名:旭化成社製、SEBS)、及び同Mシリーズ(マレイン酸変性SEBS)、同MPシリーズ(アミン変性SEBS)等がある。
【0017】
前記(A)のスチレン比率は15~70重量%が好ましく、18~40重量%が更に好ましく、20~35重量%が特に好ましい。15重量%以上とすることで充分な引張強度を確保することができ、70重量%以下とすることで充分な弾性力を確保することが出来る。
【0018】
前記(A)の配合比率は、組成物の固形分全量に対し20~60重量%が好ましく、25~55重量%が更に好ましく、30~50重量%が特に好ましい。20重量%以上とすることで、シート化した時に充分な凝集力と耐熱性を確保でき、60重量%以下とすることで、充分な低誘電特性を確保することが出来る。
【0019】
本発明に使用されるスチレンとエチレンを含む水素添加したブロック共重合体(B)は、誘電特性の向上と共に、シート化した際の伸びを大きくする効果が期待でき、例えばスチレン-エチレン/プロピレンの水添したジブロック共重合体、スチレン-エチレン-エチレン/プロピレン-スチレンの水添したブロック共重合体(以下SEEPS)、スチレン-エチレン/プロピレン-スチレンの水添したブロック共重合体(以下SEPS)などが挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、(A)との相溶性に優れる点で、SEEPSおよびSEPSが好ましい。市販品ではセプトン2000シリーズ(商品名:クラレ社製、SEPS)及び同4000シリーズ(SEEPS)等がある。なおエチレン/プロピレンとは、エチレンとプロピレンの共重合部分がブロックではなくランダム共重合であることを示す。
【0020】
前記(B)のスチレン比率は15~40重量%が好ましく、18~35重量%が更に好ましい。15重量%以上とすることで充分な伸び率を確保することができ、40重量%以下とすることでゲル化を抑え十分な保存安定性を確保することが出来る。
【0021】
前記(B)の配合比率は、組成物の固形分全量に対し20~50重量%が好ましく、25~45重量%が更に好ましく、28~40重量%が特に好ましい。20重量%以上とすることで十分な伸び率を確保でき、50重量%以下とすることで相溶性が低下せず十分な保存安定性を確保できる。
【0022】
本発明に使用される架橋剤(C)は、多官能の不飽和二重結合を有する化合物で、加熱時での加圧なしでも接着力を向上させる目的で配合する。(C)を配合することにより、硬化反応(架橋反応)時に架橋密度が一層高くなり、樹脂組成物の硬化物の耐熱性を向上させることが期待できる。官能基数は2~6官能であることが好ましく、2~4官能であることが更に好ましい。2官能以上とすることで十分な架橋反応を期待でき、6官能以下とすることで硬化収縮を抑制することができる。
【0023】
前記(C)としては、例えばトリアリルイソシアヌレート等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物、トリアリルシアヌレート等のトリアルケニルシアヌレート化合物、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリロイル化合物、ポリブタジエン等の分子中にビニル基を2個以上有する多官能ビニル化合物等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、(A)及び(B)との相溶性が良好で、誘電特性に影響を与えにくい点でトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0024】
前記(C)の配合比率は、組成物の固形分全量に対し20重量%以下が好ましく、3~18重量%が更に好ましく、8~16重量%が特に好ましい。20重量%以下とすることで誘電正接を大きく上昇させず、十分に剥離力を向上させることができる。
【0025】
本発明に使用される粘着付与剤(D)は、前記(C)と同様に、加熱時での加圧なしでも接着力を向上させる目的で配合する。軟化点は85~110℃が好ましく、90~105℃が更に好ましい。85℃以上とすることで硬化物の十分な耐熱性を確保することができ、110℃以下とすることで基材と銅箔とをラミネートする時の十分な初期接着力を確保することができる。
【0026】
前記(D)としては、例えばロジン誘導体、テルペン系樹脂、スチレン系(共)重合体、クマロン系樹脂、テルペン-フェノール系樹脂、石油系炭化水素樹脂等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、(A)、(B)及び(C)との相溶性が良好で、熱的な安定性が良好なスチレン系オリゴマーが好ましい。
【0027】
前記(D)の配合比率は、組成物の固形分全量に対し15重量%以下が好ましく、3~12重量%が更に好ましく、5~10重量%が特に好ましい。15重量%以下とすることで十分な剥離力を確保することができる。また、(C)と(D)合計の配合比率は、組成物の固形分全量に対し5~25重量%であり、8~24重量%が好ましく、12~24重量%が更に好ましい。5重量%未満では十分な剥離力を確保できない場合があり、25重量%超では誘電正接が上昇する等の誘電特性低下や、剥離力が低下する場合がある。
【0028】
本発明に使用されるシランカップリング剤(E)は、分子内に有機材料及び無機材料と結合する官能基を併せ持ち、機械的強度の向上、接着性の向上を目的に配合する。特に加熱されることで加水分解及び脱水縮合が加速され、剥離力が向上する。有機材料と反応する官能基としては、例えばビニル基、エポキシ基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基などが挙げられ、無機材料とは加水分解性シリル基が反応する。これらの中では、高い耐熱性と共に分子量が大きく嵩高い構造のため揮発性が低いエポキシ官能基を有するオリゴマータイプ(以下オリゴマー系という)、及び接着力及び耐熱性の向上に効果が大きくイソシアヌレート骨格を有するタイプ(以下イソシアヌレート系という)を含むことが好ましく、両者を併用することが更に好ましい。オリゴマー系の市販品としてはCOATOSIL MP 200(商品名:モメンティブ社製)があり、イソシアヌレート系の市販品としてはKBM9659(商品名:信越化学社製)等が挙げられる。
【0029】
前記(E)の配合比率は、組成物の固形分全量に対し0.1~5重量%であることが好ましく、0.5~3.0重量%であることが更に好ましい。この範囲とすることで、十分な剥離接着力を確保することができる。またオリゴマー系とイソシアヌレート系を併用する場合の比率としては、オリゴマー系:イソシアヌレート系=1:1~4:1が好ましく、3:2~3:1が更に好ましい。
【0030】
本発明の組成物には、更に有機過酸化物(F)を含んでも良い。特に(C)を配合する場合には、(F)を含むことが好ましい。(F)は重合開始剤として働き、加熱により開裂してラジカルを発生させる。例えばジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキサイド)ヘキシン-3、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α’-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。市販品ではパーブチルP及びパーブチルD(商品名:日本油脂社製)等がある。
【0031】
前記(F)の配合比率は、ラジカル反応成分である(C)100重量部に対し1~10重量部であることが好ましく、3~8重量部であることが更に好ましい。この範囲内とすることで、過剰添加とならず十分な硬化性を確保することができる。
【0032】
本発明の樹脂組成物には性能を損なわない範囲で、必要に応じ酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、無機充填材、有機微粒子等の添加剤を配合することができる。
【0033】
前記酸化防止剤は、配合することにより硬化後の皮膜物性劣化を防止することができる。酸化防止剤としてはフェノール系、リン系、フェノールリン系、硫黄系などが挙げられ、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。酸化防止剤の配合量としては、全固形分に対し5重量%以下が好ましく、2重量%以下が更に好ましい。市販品ではスミライザーGP(商品名:住友化学社製、フェノールリン系)等が挙げられる。
【0034】
本発明の組成物を使用する場合は、例えばトルエン等の親溶媒で溶解し、溶液の状態で基材フィルムに塗布した後に乾燥し、そこへ銅箔をラミネートして貼り合わせ、加熱して硬化させる。銅箔を貼り合わせたり、ラミネートしたりする際には、基材と銅箔が密着して気泡が残らぬ程度に圧力をかける必要があるが、加熱の際には圧力をかける必要はなく、roll to rollのような連続生産に好適である。
【0035】
粘着層の厚さは10~50μmが例示されるが特に限定されるものではなく、用途、被着体の種類により自由に設定できる。硬化時の加熱は(E)の加水分解や脱水縮合を促進させると同時に、(F)を開裂させて熱ラジカル反応をさせるために必要であり、条件としては例えば160~200℃で、40~80分が例示されるが、(E)及び(F)の種類や、基材の種類により任意に設定可能である。
【0036】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【0037】
実施例及び比較例
容器に、前記(A)としてタフテックMP10(商品名:旭化成社製、水添されたアミン変性SEBS、スチレン比率30%)を、前記(B)としてセプトン4044(商品名:クラレ社製、SEEPS、スチレン比率32%)を、前記(C)としてTAIC(商品名:日本化成社製、トリアリルイソシアヌレート)を、前記(D)としてFTR6100(商品名:三井化学社製、スチレン系オリゴマー、軟化点95℃)及びFTR0100(商品名:三井化学社製、スチレン系オリゴマー、軟化点100℃)を、前記(E)としてCOATOSILMP200(商品名:モメンティブ社製、エポキシ官能基を有するオリゴマー系)及びKBM9659(商品名:信越化学工業社製、イソシアヌレート系)を、前記(F)としてパーブチルP(商品名:日本油脂社製、α,α’-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン)を、添加剤としてスミライザーGP(商品名:住友化学、フェノールリン系酸化防止剤)を表1及び2に示す量を入れ、更にトルエンを固形分が20%となるように加え、混合攪拌して実施例1~10、比較例1~5の樹脂組成物を調製した。
【0038】
評価用積層板の作成
上記で得た樹脂組成物を、厚さ50μmのカプトン200H(商品名:東レ・デュポン社製、ポリイミドフィルム)上に、乾燥後の厚みで25μmになるよう均一に塗布し、その後80℃オーブンで5分間乾燥してトルエンを揮発させ、厚さ12μmの銅箔CF-T9FZ-HS-12(商品名:福田金属箔粉工業社製)の粗面に120℃、0.2MPaの条件で貼り合わせ、180℃、1時間の条件で接着層を硬化させて積層板を作成した。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
評価方法は以下とした。
【0042】
比誘電率:上記で得た樹脂組成物を、離形PETフィルム(50μm)上に、乾燥後の厚みで25μmになるよう均一に塗布し、その後80℃オーブンで5分間乾燥してトルエンを揮発させ、剥離力の異なる離形PETフィルムを貼り合わせ、180℃、1時間の条件で硬化して測定サンプルとし、アンリツ社製のネットワークアナライザMS46122B、エーイーティー社製の測定共振器10GHz・TEモードを用い、周波数10GHz、測定温度25℃における比誘電率を測定し、3.0以下を〇、3.0超を×とした。
【0043】
誘電正接:比誘電率と同じサンプルを、同じ測定器を用いて、周波数10GHz、測定温度 25℃における誘電正接を測定し、0.0030未満を◎、0.0030~0.0033を〇、0.0033超を×とした。
【0044】
剥離力:上記で作成した積層板を用いて幅10mm×長さ150mmにカットし、ミネベア社製の引張り試験機TGI-1kNを用い、銅箔の90°引きはがし強度を、クロスヘッドスピード50mm/min.、測定温度 25℃で測定し、0.8N/cm以上を◎、0.5~0.8N/cmを〇、0.5N/cm未満を×とした。
【0045】
評価結果
評価結果を表3及び4に示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
実施例の樹脂組成物は、比誘電率、誘電正接、剥離力の評価項目でいずれも良好な結果を得た。
【0049】
一方、(C)と(D)の配合量合計が25重量%超の比較例1および2は誘電正接が高く、(E)及び(B)を含まない比較例3および4は剥離力が低く、(A)を含まない比較例5は相溶性に劣り、いずれも本願発明に適さないものであった。