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特開2023-157083スライド式切換弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157083
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】スライド式切換弁及びこれを用いた冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20231019BHJP
   F25B 41/20 20210101ALI20231019BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
F25B41/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066752
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 正吾
(72)【発明者】
【氏名】村田 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岡田 聡
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 秀剛
(72)【発明者】
【氏名】三留 陵
(72)【発明者】
【氏名】剱持 大一郎
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC38
3H067DD02
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA16
3H067EC22
3H067ED07
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】別体である弁本体及びプランジャチューブの軸芯合わせを円滑かつ確実に行うとともに、互いの接合部を堅固に接合することにより、接合部から外部への作動流体のリークを抑制し得るスライド式切換弁を提供することである。
【解決手段】スライド式切換弁100であって、弁本体40は、小径部41と、プランジャチューブ10が固定される大径部42と、段差部43と、を有し、大径部42は、プランジャチューブ10の外径をガイドするとともにプランジャチューブ10の外径との間隙が小さいガイド部42Aと、ガイド部42Aよりもプランジャチューブ10の外径との間隙が大きい延伸部42Bとから構成され、段差部43とガイド部42Aとの間に、プランジャ20の軸線方向の他方への移動を規制するストッパが設けられる。これにより、接合部から外部への作動流体のリークを抑制することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板により成形され、軸線方向の一方に開口端を備える有底筒形状の弁本体と、
前記弁本体の前記開口端に固定される円筒形状のプランジャチューブと、
前記弁本体の周壁に連結され、前記弁本体の内部と連通する複数の継手管と、
前記プランジャチューブ内を軸線方向に摺動可能なプランジャと、
前記プランジャに連結され、前記弁本体の内部を軸線方向に移動することで、前記複数の継手管との連通状態を切換えるスライド弁体と、
を有するスライド式切換弁であって、
前記弁本体は、
前記スライド弁体が収容される小径部と、
前記小径部の内径よりも大きい内径を有し、前記プランジャチューブが固定される大径部と、
前記小径部と前記大径部との間に形成される段差部と、
を有し、
前記大径部は、前記プランジャチューブの外径をガイドするとともに前記プランジャチューブの外径との間隙が小さいガイド部と、前記ガイド部よりも前記プランジャチューブの外径との間隙が大きく、前記プランジャチューブとの接合部である、ろう溜め領域を画定する延伸部とから構成され、
前記段差部と前記ガイド部との間に、前記プランジャの軸線方向の他方への移動を規制するストッパが設けられることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記ストッパは、前記プランジャチューブの外径に略等しい外径と、前記プランジャの摺動部の外径より小さい内径と、を有するストッパリングであり、
前記ストッパリングは、前記プランジャチューブの軸線方向の他方と、前記段差部との間に挟持されていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
前記ストッパは、前記プランジャの摺動部の外径より小さい内径を有するように、前記プランジャチューブの軸線方向の他方を、径方向内側に折り曲げて形成される円環部であり、
前記円環部は、前記段差部と当接することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
前記プランジャチューブは、前記弁本体の前記小径部の内径と略同一の外径を有するように、前記円環部を介して、軸線方向の他方へと縮径され、前記小径部の内径によりガイドされる絞り部をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記ストッパにおける前記プランジャとの当接面には、前記当接面の内周側に連通した溝、または複数の凸部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記延伸部の軸線方向の一方は、径方向外側に折り曲げて形成されるフランジ部を有していることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記弁本体の周壁には、径方向の外側に突出し、略円筒形状からなる突出部が設けられ、
少なくとも1つの前記継手管は、基部と、前記基部の内径より大きく、前記突出部の外径と略同一の内径を有する取付部と、を有し、
前記取付部の内周面が、前記突出部の外周面にガイドされて、前記継手管が前記弁本体に固定されることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記少なくとも1つの継手管は、前記基部と前記取付部との間に形成される傾斜部をさらに有し、
前記傾斜部と、前記突出部の突出端部との間に、ストレーナが挟持されていることを特徴とする請求項7に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
前記突出部の前記突出端部は、前記突出部の径方向内側に折り曲げて形成される折り曲げ部を有することを特徴とする請求項8に記載のスライド式切換弁。
【請求項10】
前記突出部において、前記折り曲げ部を有する前記突出端部の内径は、前記少なくとも1つの継手管における前記基部の内径以上であることを特徴とする請求項9に記載のスライド式切換弁。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載のスライド式切換弁は、直動式電磁スライド弁であることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項12】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、パイロット式の四方切換弁と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項11に記載のスライド式切換弁が、前記パイロット式の四方切換弁のパイロット弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、別体である弁本体及びプランジャチューブを備えるスライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特に、段落[0005]-[0006]参照)には、従来のスライド式切換弁(以下、「従来のスライド式切換弁」という)として、別体である弁本体及びプランジャチューブを備えるものが記載されている。この従来のスライド式切換弁では、弁本体及びプランジャチューブが別体であり、組み立てプロセスも多くなるため、主に、以下の2つの問題点により、弁本体及びプランジャチューブにおける接合部から冷媒などの作動流体が外部にリークするおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】中国実用新案第210920205号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1に、弁本体及びプランジャチューブを接合する際に、同心軸上に配置した両部材を固定することが困難であり、芯ずれが生じていた(以下、「従来の問題点(接合部の芯ずれ)」という)。また、第2に、プランジャがストッパに当接する毎に、このストッパを介して、接合部を引き剥がそうとする方向にせん断力が繰り返し負荷されるため、接合部に強度不足が生じていた(以下、「従来の問題点(接合部の強度不足)」という)。
【0005】
これに対して、特許文献1(特に、段落[0040]及び図1参照)では、弁本体及びプランジャチューブを別体とすることに代え、深絞りによって、弁本体及びプランジャチューブを一体成形し、接合部自体をなくすことにより、従来の問題点(接合部の芯ずれ)及び従来の問題点(接合部の強度不足)を解消するものである。
【0006】
しかしながら、弁本体及びプランジャチューブを一体成形すると、以下の2つの新たな問題点が生じていた。第1に、深絞りは、絞りの深さが深いほど、多大な加工プロセスを要し、コストが高くなるおそれがある。第2に、深絞りが施された一体成形品には、大きな残留加工応力が生じているため、これに起因した応力腐食割れにより、外部への作動流体のリークが生じるおそれがある。
【0007】
よって、出願人は、特許文献1のように、弁本体及びプランジャチューブを一体成形し、新たな問題点を生じさせるのではなく、弁本体及びプランジャチューブを別体とすることを前提とした上で、従来の問題点(接合部の芯ずれ)及び従来の問題点(接合部の強度不足)を解消することを試みた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、別体である弁本体及びプランジャチューブの軸芯合わせを円滑かつ確実に行うとともに、互いの接合部を堅固に接合することにより、接合部から外部への作動流体のリークを抑制し得るスライド式切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、薄板により成形され、軸線方向の一方に開口端を備える有底筒形状の弁本体と、前記弁本体の前記開口端に固定される円筒形状のプランジャチューブと、前記弁本体の周壁に連結され、前記弁本体の内部と連通する複数の継手管と、前記プランジャチューブ内を軸線方向に摺動可能なプランジャと、前記プランジャに連結され、前記弁本体の内部を軸線方向に移動することで、前記複数の継手管との連通状態を切換えるスライド弁体と、を有し、前記弁本体は、前記スライド弁体が収容される小径部と、前記小径部の内径よりも大きい内径を有し、前記プランジャチューブが固定される大径部と、前記小径部と前記大径部との間に形成される段差部と、を有し、前記大径部は、前記プランジャチューブの外径をガイドするとともに前記プランジャチューブの外径との間隙が小さいガイド部と、前記ガイド部よりも前記プランジャチューブの外径との間隙が大きく、前記プランジャチューブとの接合部である、ろう溜め領域を画定する延伸部とから構成され、前記段差部と前記ガイド部との間に、前記プランジャの軸線方向の他方への移動を規制するストッパが設けられるスライド式切換弁である。
【0010】
また、上記スライド式切換弁であって、前記ストッパは、前記プランジャチューブの外径に略等しい外径と、前記プランジャの摺動部の外径より小さい内径と、を有するストッパリングであり、前記ストッパリングは、前記プランジャチューブの軸線方向の他方と、前記段差部との間に挟持されているものとしてもよい。
【0011】
また、上記スライド式切換弁であって、前記ストッパは、前記プランジャの摺動部の外径より小さい内径を有するように、前記プランジャチューブの軸線方向の他方を、径方向内側に折り曲げて形成される円環部であり、前記円環部は、前記段差部と当接するものとしてもよい。
【0012】
また、上記スライド式切換弁であって、前記プランジャチューブは、前記弁本体の前記小径部の内径と略同一の外径を有するように、前記円環部を介して、軸線方向の他方へと縮径され、前記小径部の内径によりガイドされる絞り部をさらに備えるものとしてもよい。
【0013】
また、上記スライド式切換弁であって、前記ストッパにおける前記プランジャとの当接面には、前記当接面の内周側に連通した溝、または複数の凸部が設けられているものとしてもよい。
【0014】
また、上記スライド式切換弁であって、前記延伸部の軸線方向の一方は、径方向外側に折り曲げて形成されるフランジ部を有しているものとしてもよい。
【0015】
また、上記スライド式切換弁であって、前記弁本体の周壁には、径方向の外側に突出し、略円筒形状からなる突出部が設けられ、少なくとも1つの前記継手管は、基部と、前記基部の内径より大きく、前記突出部の外径と略同一の内径を有する取付部と、を有し、前記取付部の内周面が、前記突出部の外周面にガイドされて、前記継手管が前記弁本体に固定されるものとしてもよい。
【0016】
また、上記スライド式切換弁であって、前記少なくとも1つの継手管は、前記基部と前記取付部との間に形成される傾斜部をさらに有し、前記傾斜部と、前記突出部の突出端部との間に、ストレーナが挟持されているものとしてもよい。
【0017】
また、上記スライド式切換弁であって、前記突出部の前記突出端部は、前記突出部の径方向内側に折り曲げて形成される折り曲げ部を有するものとしてもよい。
【0018】
また、上記スライド式切換弁であって、前記突出部において、前記折り曲げ部を有する前記突出端部の内径は、前記少なくとも1つの継手管における前記基部の内径以上であるものとしてもよい。
【0019】
また、上記スライド式切換弁であって、直動式電磁スライド弁であるものとしてもよい。
【0020】
また、冷凍サイクルシステムであって、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、パイロット式の四方切換弁と、を含み、上記スライド式切換弁が、前記パイロット式の四方切換弁のパイロット弁として用いられているものとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、別体である弁本体及びプランジャチューブの軸芯合わせを円滑かつ確実に行うとともに、互いの接合部を堅固に接合することにより、接合部から外部への作動流体のリークを抑制し得るスライド式切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のパイロット式の四方切換弁の断面図である。
図2】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るスライド式切換弁のコイル非通電状態を示す断面図である。
図4図3のスライド式切換弁における部分拡大図であり、(a)は、パイロット弁本体の全体図、(b)は、図3のパイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成の拡大図、(c)は、図3の突出部とD継手管との取り付け構成の拡大図を、それぞれ表す。
図5】第1の実施形態の変形例1におけるパイロット弁本体を示す図であり、(a)は、変形例1のその1におけるパイロット弁本体の全体図、(b)は、(a)の実線Vbで囲まれた領域の拡大図、(c)は、変形例1のその2におけるパイロット弁本体の全体図、(d)は、(c)の実線Vdで囲まれた領域の拡大図、(e)は、変形例1のその3におけるパイロット弁本体の全体図、(f)は、(e)の実線Vfで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図6】第1の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブの断面図であり、(a)は、プランジャチューブの全体図、(b)は、(a)の実線VIbで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図7】第1の実施形態の変形例3におけるパイロット弁本体を示す図であり、(a)は、変形例3のその1におけるパイロット弁本体の全体図、(b)は、(a)の矢印VIIb方向から見た矢視図、(c)は、変形例3のその2におけるパイロット弁本体の(b)に対応する矢視図、(d)は、変形例3のその3におけるパイロット弁本体の(b)に対応する矢視図を、それぞれ表す。
図8図3に示されるスライド式切換弁のコイル通電状態を示す断面図である。
図9】第2の実施形態に係るスライド式切換弁のコイル非通電状態を示す断面図である。
図10図9のスライド式切換弁における部分拡大図であり、(a)は、パイロット弁本体の全体図、(b)は、図9のパイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成の拡大図、(c)は、図9の突出部とD継手管との取り付け構成の拡大図を、それぞれ表す。
図11】第2の実施形態の変形例におけるストッパリングを示す図であり、(a)は、ストッパリングの全体図、(b)は、(a)の矢印XIb方向から見た矢視図を、それぞれ表す。
図12】第3の実施形態に係るスライド式切換弁のコイル非通電状態を示す断面図である。
図13図12のスライド式切換弁における部分拡大図であり、(a)は、図12のパイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成の拡大図、(b)は、第3の実施形態の変形例1における(a)に対応する拡大図を、それぞれ表す。
図14】第3の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブを示す図であり、(a)は、プランジャチューブの全体図、(b)は、(a)の矢印XIVb方向から見た矢視図を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施形態について、図1から図14を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0024】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「左」、「右」、「上」、「下」とは、図3-6,図7(a),図8-10,図11(a),図12-13,図14(a)に示される方向を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「軸線方向の一方」、「軸線方向の他方」とは、図3-6,図7(a),図8-10,図11(a),図12-13,図14(a)に示される「中心軸線方向の右側」、「中心軸線方向の左側」をそれぞれ示す。
【0025】
<パイロット式の四方切換弁について>
図1を用いて、本発明のパイロット式の四方切換弁200について説明する。パイロット式の四方切換弁200は、弁ハウジング210、一対のピストン220A,220B、連結板230、切換弁座240、弁体250、から主に構成される。以下、パイロット式の四方切換弁200のそれぞれの構成を順に説明する。ここで、図中の長手方向の軸線Xは、弁ハウジング210の中心軸である。
【0026】
弁ハウジング210は、円筒形状の円筒部211と、一対のキャップ部212A,212Bと、から構成される。円筒部211の両端は、一対のキャップ部212A,212Bにより、それぞれを塞がれる。また、詳細は後述するが、一対のキャップ部212A,212Bには、パイロット式の四方切換弁200の第1作動室2A及び第2作動室2Bに、スライド式切換弁100が流体連通するように、圧力導入管3L及び圧力導入管3Rがそれぞれ接続される。
【0027】
一対のピストン220A,220Bは、板ばね221A,221Bをそれぞれ備え、弁ハウジング210内に収容され、互いに対向配置される。この一対のピストン220A,220Bは、板ばね221A,221Bを円筒部211の内周面にそれぞれ押圧しながら往復移動可能である。これにより、弁ハウジング210の内部は、一対のピストン220A,220Bにより、第1作動室2A、第2作動室2B、及び、第1作動室2A及び第2作動室2Bに挟まれる高圧室2Cに仕切られる。
【0028】
連結板230は、長手方向の軸線Xに沿って延在する金属板からなり、中央に形成される嵌合孔231と、両端と中央との間に形成される一対の透孔232A,232Bと、を備える。この連結板230は、両端に一対のピストン220A,220Bをそれぞれ取り付け、中央の嵌合孔231に弁体250を保持する。
【0029】
切換弁座240は、円筒部211内の中央下方側に配設される。この切換弁座240は、長手方向の軸線X方向に一直線上に並ぶ、3つの貫通穴241E,241S,241Cを順に備えており、各貫通穴241E,241S,241Cには、円筒部211を介して、E継手管1E、S継手管1S、C継手管1Cがそれぞれ取り付けられる。また、切換弁座240と対向する円筒部211の中央上方側には、円筒部211内に開口するD継手管1Dが取り付けられる。
【0030】
弁体250は、移動方向である長手方向の軸線X方向に沿って、椀状凹部251と、椀状凹部251を挟むように一対のスライド部252A,252Bと、椀状凹部251の開口部付近に差し渡され、椀状凹部251の両側壁に固定されるピン253と、を備える。椀状凹部251は、椀状の容器を裏返した形状であり、切換弁座240との間で空間を形成する。一対のスライド部252A,252Bは、切換弁座240に対して、下面を当接させながら摺動する。
【0031】
<パイロット式の四方切換弁の動作について>
パイロット式の四方切換弁200において、スライド式切換弁100により、圧縮機300の吸入圧力及び吐出圧力が、圧力導入管3Lを介して第1作動室2A、又は、圧力導入管3Rを介して第2作動室2Bのいずれか一方に、それぞれ選択的に導入される(図2参照)。これにより、一対のピストン220A,220Bが、長手方向の軸線Xに沿って、往復移動し、弁体250の切換弁座240に対する位置を切り換える。
【0032】
具体的には、一対のピストン220A,220Bを、長手方向の軸線Xに沿って、左側位置に移動させると、弁体250と切換弁座240により、S継手管1SとE継手管1Eとが、椀状凹部251を介して連通するとともに、D継手管1DとC継手管1Cとが、高圧室2C及び透孔232Bを介して連通する。一方、一対のピストン220A,220Bを、長手方向の軸線Xに沿って、右側位置に移動させると、弁体250と切換弁座240により、S継手管1SとC継手管1Cとが、椀状凹部251を介して連通するとともに、D継手管1DとE継手管1Eとが、高圧室2C及び透孔232Aを介して連通する。
【0033】
<冷凍サイクルシステムについて>
図2を用いて、冷凍サイクルシステム1について説明する。冷凍サイクルシステム1は、スライド式切換弁100、パイロット式の四方切換弁200、圧縮機300、室外熱交換機400、室内熱交換機500、絞り装置(膨張弁)600、から主に構成される。
【0034】
パイロット式の四方切換弁200において、S継手管1Sは、圧縮機300の吸入口に接続されるとともに、D継手管1Dは、圧縮機300の吐出口に接続される。また、C継手管1Cは、室外熱交換機400に接続されるとともに、E継手管1Eは、室内熱交換機500に接続される。さらに、室外熱交換機400と室内熱交換機500は、絞り装置600を介して、互いに接続される。これにより、冷凍サイクルシステム1は、C継手管1Cから室外熱交換機400、絞り装置600、室内熱交換機500及びE継手管1Eからなる流体経路と、S継手管1Sから圧縮機300及びD継手管1Dからなる流体経路と、から構成される。なお、冷凍サイクルシステム1における冷媒中には、圧縮機300及びその他機器の保護のため、微量の冷凍機油が含まれる。
【0035】
スライド式切換弁100は、図2に示すように、パイロット式の四方切換弁200に接続されている。このスライド式切換弁100は、図3及び図8に示すように、電磁コイルユニット70により、スライド弁体30を移動させることにより、圧縮機300の吸入圧力及び吐出圧力を、圧力導入管3Lを介する第1作動室2A、及び、圧力導入管3Rを介する第2作動室2Bへのいずれか一方に、それぞれ選択的に導入させる。これにより、パイロット式の四方切換弁200は、圧縮機300の吸入口と接続されるS継手管1S、及び、圧縮機300の吐出口と接続されるD継手管1Dを、室外熱交換機400に接続されるC継手管1C、及び、室内熱交換機500に接続されるE継手管1Eのいずれか一方に、それぞれ連通させることにより、冷凍サイクルシステム1の流体経路を切り換える。このように、直動式電磁スライド弁であるスライド式切換弁100を、パイロット式の四方切換弁200のパイロット弁として用いることにより、パイロット式の四方切換弁200が大口径を有する場合においても、流体経路の切り換えをスムーズに行うことができる。
【0036】
<冷凍サイクルシステムの動作について>
まず、冷房運転時(図2の実線矢印参照)においては、スライド式切換弁100は、コイルを非通電状態として、圧縮機300の吸入口と接続されるS継手管1Sの連通先を、パイロット式の四方切換弁200の圧力導入管3Lを介して第1作動室2Aに切り換える。同時に、圧縮機300の吐出口と接続されるD継手管1Dの連通先を、パイロット式の四方切換弁200の圧力導入管3Rを介して第2作動室2Bに切り換える。この結果、圧縮機300の吸入圧力及び吐出圧力が導入された第1作動室2Aと第2作動室2Bとの間の圧力差により、パイロット式の四方切換弁200内の一対のピストン220A,220Bが左側位置に移動する。これにより、圧縮機300で圧縮された高圧の冷媒は、D継手管1Dから高圧室2Cを介して、C継手管1Cに流入され、室外熱交換機400、絞り装置600、室内熱交換機500の順に流れ、E継手管1Eから椀状凹部251を介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機300へと循環する。この際、室外熱交換機400は、凝縮器(コンデンサ)として機能するとともに、室内熱交換機500は、蒸発器(エバポレータ)として機能する。
【0037】
次に、暖房運転時(図2の破線矢印参照)においては、スライド式切換弁100は、コイルを通電状態として、圧縮機300の吸入口と接続されるS継手管1Sの連通先を、パイロット式の四方切換弁200の圧力導入管3Rを介して第2作動室2Bに切り換える。同時に、圧縮機300の吐出口と接続されるD継手管1Dの連通先を、パイロット式の四方切換弁200の圧力導入管3Lを介して第1作動室2Aに切り換える。この結果、圧縮機300の吸入圧力及び吐出圧力が導入された第1作動室2Aと第2作動室2Bとの間の圧力差により、パイロット式の四方切換弁200内の一対のピストン220A,220Bが右側位置に移動する。これにより、圧縮機300で圧縮された高圧の冷媒は、D継手管1Dから高圧室2Cを介して、E継手管1Eに流入され、室内熱交換機500、絞り装置600、室外熱交換機400の順に流れ、C継手管1Cから椀状凹部251を介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機300へと循環する。この際、暖房運転時には、冷媒が冷房運転時とは逆に循環されており、室内熱交換機500が、凝縮器として機能するとともに、室外熱交換機400が、蒸発器として機能する。
【0038】
(第1の実施形態)
<スライド式切換弁について>
図3を用いて、第1の実施形態に係るスライド式切換弁100Aについて説明する。スライド式切換弁100Aは、プランジャチューブ10、プランジャ20、スライド弁体30、パイロット弁本体(弁本体)40、弁座50、吸引子60、電磁コイルユニット70、から主に構成される。以下、スライド式切換弁100Aのそれぞれの構成を順に説明する。ここで、図中の中心軸線Cは、プランジャチューブ10、プランジャ20、及び、パイロット弁本体40の中心軸である。なお、スライド式切換弁100Aについて説明した後、「パイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成」及び「パイロット弁本体の突出部とD継手管との取り付け構成」について、それぞれ具体的に説明する。
【0039】
プランジャチューブ10は、ステンレス鋼の薄板により成形したものであり、中心軸線Cに沿った円筒形状を有する。
【0040】
プランジャ20は、磁性を帯びたステンレス鋼からなり、中心軸線Cの右側へ延在する円柱形状の拡径部(摺動部)22と、拡径部22から中心軸線Cの左側へ延在し、拡径部22よりも外径が小さい突出部21と、を備える。突出部21と拡径部22との接合部には、肩部23が形成される。ここで、プランジャ20が、プランジャチューブ10内を中心軸線C方向に摺動可能に案内されるように、拡径部22の外径が、プランジャチューブ10の内径より僅かに小さく設定されている。また、プランジャ20は、突出部21及び拡径部22の内部に、中心軸線Cに沿って中心軸線Cに沿って互いに貫通する、連通路24A,24Bを備える。この連通路24Bの内径は、連通路24Aの内径よりも大きく設定され、連通路24Aと連通路24Bとの間には、コイルばね支持部24Cが形成される。
【0041】
さらに、プランジャ20の突出部21は、中心軸線Cに対して垂直な方向(上下方向)の同軸上に、下部に開口部を有する弁ばね収容孔25及び弁体ガイド孔26を備える。この弁体ガイド孔26の内径は、弁ばね収容孔25の内径よりも大きく設定される。
【0042】
スライド弁体30は、PTFEなどの樹脂からなり、プランジャ20の弁体ガイド孔26内に、上下方向にスライド可能に収容されるとともに、弁ばね収容孔25に収容される弁ばね31により、弁座50の上面に対して、所定の荷重で付勢される。このスライド弁体30は、下方に開口した凹形状であり、弁座50との間で空間を形成する窪み部30Aを備える。このスライド弁体30は、詳細は後述するが、プランジャ20に連結され、パイロット弁本体40の内部を中心軸線C方向に移動することにより、複数の継手管1C,1D,1E,1Sとの連通状態を切換えることができる。
【0043】
パイロット弁本体40は、ステンレス鋼の薄板をプレス加工(深絞り加工)により成形したものであり、中心軸線C方向の右側に開口端を備える有底筒形状を有する。これにより、スライド式切換弁100Aの軽量・小型化を図ることができる。パイロット弁本体40の上方側周壁には、D継手管1Dが取り付けられる。また、パイロット弁本体40の下方側周壁には、弁座取付孔40Aが形成され、この弁座取付孔40Aを介して、弁座50が取り付けられる。このパイロット弁本体40は、プランジャチューブ10の左側の開口端に固定される。
【0044】
弁座50は、ステンレス鋼や真鍮などからなり、中心軸線C方向に沿って、3つの貫通孔51E,51S,51Cを順に備えており、各貫通孔51E,51S,51Cには、E継手管1E、S継手管1S、C継手管1Cがそれぞれ取り付けられる。
【0045】
吸引子60は、磁性を帯びたステンレス鋼からなり、プランジャチューブ10の右側の開口部に挿入された後に、溶接により、プランジャチューブ10に固定される。この吸引子60に対して、プランジャ20を中心軸線Cに沿って、離隔する方向へと付勢するために、コイルばね61が、コイルばね支持部24Cと、吸引子60の左側端部との間に挟持される。
【0046】
電磁コイルユニット70は、プランジャ20及び吸引子60を選択的に励磁するために、プランジャチューブ10の外周部に配置されるモールドコイル部71と、モールドコイル部71を覆い内側に収容する磁性体からなるケーシング72と、モールドコイル部71を外部の駆動制御部(不図示)へと電気的に接続するリード線73と、を備える。電磁コイルユニット70は、ケーシング72の取付孔72Aを介して、小ネジ74を、吸引子60の雌ネジ孔60Aと螺合させることにより、吸引子60に固定される。
【0047】
<パイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成について>
ここで、図4(a)及び図4(b)を用いて、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10との具体的な取り付け構成について説明する。
【0048】
まず、図4(a)に示すように、パイロット弁本体40は、スライド弁体30が収容される小径部41と、小径部41の内径よりも大きい内径を有し、プランジャチューブ10が固定される大径部42と、小径部41と大径部42との間に形成される段差部43と、を有する。また、大径部42は、プランジャチューブ10の外径をガイドするガイド部42Aと、ガイド部42Aよりも内径が大きい延伸部42Bと、延伸部42Bの中心軸線C方向の端部に、径方向外側に折り曲げて形成されるフランジ部42Cと、を有する。なお、ガイド部42Aの内径は、プランジャチューブ10の外径と略同一に設定される。
【0049】
次に、パイロット弁本体40をプランジャチューブ10に取り付けるために、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10の中心軸線C方向の相対距離を近接させる。ここで、図4(b)に示すように、パイロット弁本体40の延伸部42Bの内径と、プランジャチューブ10の外径との差が比較的小さく設定されている。よって、パイロット弁本体40のフランジ部42Cを径方向外側に折り曲げることにより、プランジャチューブ10の先端部10Aを延伸部42Bにスムーズに挿入させることができる。これにより、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10との中心軸線C上への軸芯合わせが自律的に行われる。その後、パイロット弁本体40のガイド部42Aの内径に、プランジャチューブ10の外径がガイドされながら圧入され、プランジャチューブ10の先端部10Aが、パイロット弁本体40の段差部43に当接する。これにより、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10との中心軸線C上へのさらなる軸芯合わせが自律的に行われるため、従来の問題点(接合部の芯ずれ)を解消し、別体である弁本体及びプランジャチューブの軸芯合わせを円滑かつ確実に行うことができる。また、ガイド部42Aの中心軸線C方向長さは、所定値(例えば、プランジャチューブ10の肉厚)以上に設定されることから、圧入後に、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10の互いの中心軸が傾くことを抑制することができる。
【0050】
さらに、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10をろう付けRにより接合する。具体的には、パイロット弁本体40の延伸部42Bとプランジャチューブ10との隙間が比較的小さく設定されているため、ろう材を、中心軸線C方向に沿った毛細管現象により、延伸部42Bとプランジャチューブ10とにより画定される、ろう溜め領域(接合部)RAの全体に浸透拡散させ、両部材を堅固に接合させることができる。この際、ろう溜め領域RAの右側開放端には、ろう付けフィレットFが形成されるので、この右側開放端から外部への作動流体のリークをより確実に抑制することができる。
【0051】
第1の実施形態において、図4(b)に示すように、パイロット弁本体40の段差部(ストッパ)43が、プランジャ20の肩部23と当接し、ストッパとして機能することにより、プランジャ20の中心軸線C方向への移動を規制する。よって、プランジャ20が段差部43に当接する毎に、段差部43を介して、ろう溜め領域RAに対して、接合部を引き剥がそうとする方向にせん断力が直接負荷される。しかしながら、ろう溜め領域RAは、比較的大きな接合面積、つまり、接合部を引き剥がそうとするせん断力に対抗し得る接合強度を有していることから、従来の問題点(接合部の強度不足)を解消し、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10との接合部を堅固に接合することができる。また、延伸部42Bの中心軸線C方向長さは、所定値(例えば、プランジャチューブ10の肉厚以上、より好ましくはプランジャチューブ10の外径の20%以上、すなわちガイド部42Aの中心軸線C方向長さよりも大きな長さ)に設定されることから、所望の接合面積を確実に確保することができる。なお、パイロット弁本体40にプランジャチューブ10が堅固に圧入されていることから、ろう付けの際に、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10の相対位置がずれることはない。
【0052】
第1の実施形態においては、プランジャチューブ10の先端部10Aを、パイロット弁本体40の段差部43に当接させるものであるが、これに限らず、例えば、プランジャチューブ10の先端部10Aを、パイロット弁本体40の段差部43に当接させなくてもよい。この先端部10Aを段差部43に当接させない場合においても、延伸部42Bとプランジャチューブ10とにより画定される、ろう溜め領域RAの大きさは変化しないため、先端部10Aを段差部43に当接させる場合と同様に、接合部を堅固に接合させることができる。ただし、プランジャチューブ10の先端部10Aをパイロット弁本体40の段差部43に当接させた方が、プランジャ20の中心軸線C方向の移動量の管理がし易くなるので好ましい。
【0053】
第1の実施形態において、パイロット弁本体40のガイド部42Aにより、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10の軸芯合わせが自律的に行われるとともに、パイロット弁本体40の延伸部42Bにより、堅固な接合強度を有する、ろう溜め領域RAが画定される。よって、第1の実施形態では、従来の問題点(接合部の芯ずれ及び接合部の強度不足)を解消し、接合部から外部への作動流体のリークを抑制することができる。
【0054】
(第1の実施形態の変形例1)
ここで、図5を用いて、第1の実施形態の変形例1におけるパイロット弁本体40-1,40-2,40-3について説明する。この第1の実施形態の変形例1におけるパイロット弁本体40-1,40-2,40-3は、ガイド部42Aに、内径側に突出する環状の突起B、内径側に突出する複数の突起P、内径側に突出する中心軸線C方向に延在する複数の線状の突起Lをそれぞれ設けている点で、第1の実施形態におけるパイロット弁本体40と相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0055】
第1の実施形態におけるパイロット弁本体40は、深絞り加工により成形されているため、特に、ガイド部42Aの内径を、延伸部42Bよりも内径が小さくするとともに、プランジャチューブ10の外径と略同一となるように、寸法管理する必要があるため、加工コストが高くなるおそれがあった。
【0056】
これに対し、第1の実施形態の変形例1におけるパイロット弁本体40-1,40-2,40-3は、ガイド部42A及び延伸部42Bの内径を同一に設定し、深絞り加工を施した後に、ガイド部42Aに対して、カシメ加工などにより、内径側に突出する環状の突起B、内径側に突出する複数の突起P、内径側に突出する中心軸線C方向に延在する複数の線状の突起Lを設けるものである。この際、中心軸線Cに対する、環状の突起B、複数の突起Pからなる仮想円、及び、線状の突起Lからなる仮想円のそれぞれの内径は、プランジャチューブ10の外径との間隙が小さくなるように設定すればよいため、加工コストを抑えることができる。なお、環状の突起Bを設ける場合は、図5(a)-(b)に示すように、中心軸線C方向に少なくとも2か所以上離間して配置することにより、また、複数の突起Pを設ける場合には、図5(c)-(d)に示すように、円周方向に少なくとも3つ以上均等配置するとともに、中心軸線C方向に少なくとも2か所以上離間して配置することにより、さらに、複数の線状の突起Lを設ける場合には、図5(e)-(f)に示すように、円周方向に少なくとも3つ以上均等配置することにより、パイロット弁本体40-1,40-2,40-3及びプランジャチューブ10の軸芯合わせをそれぞれ自律的に行うことができる。
【0057】
さらに、特に、第1の実施形態の変形例1において、パイロット弁本体40-2,40-3が、内径側に突出する複数の突起P、及び、内径側に突出する中心軸線C方向に延在する複数の線状の突起Lを有する場合(図5(c)-(f)参照)には、パイロット弁本体40-2,40-3とプランジャチューブ10とを、ろう付けRにより接合する際に、ろう材が、中心軸線C方向に沿った毛細管現象により、延伸部42Bを越えて、ガイド部42Aの内部まで浸透拡散するため、ろう溜め領域(接合部)RAを中心軸線C方向に拡大させ、両部材をより堅固に接合させることができる。
【0058】
(第1の実施形態の変形例2)
次に、図6を用いて、第1の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブ10-1について説明する。先程説明したように、第1の実施形態の変形例1では、内径側に突出する複数の突起をガイド部42Aに設けているのに対し、第1の実施形態の変形例2では、外径側に突出する複数の突起Pをプランジャチューブ10-1に設けている点で相違する。なお、ガイド部42A及び延伸部42Bの内径を同一に設定するなど、その他の基本構成は第1の実施形態の変形例1と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0059】
第1の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブ10-1は、パイロット弁本体40と接合する際に、ガイド部42Aに対向する位置に、外径側に突出する複数の突起Pを設けている。なお、第1の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブ10-1は、外径側に突出する複数の突起Pを設けるものであるが、これに限らず、例えば、第1の実施形態の変形例1(図5参照)と同様に、外径側に突出する環状の突起B、外径側に突出する中心軸線C方向に延在する複数の線状の突起Lを設けることもできる。この際、中心軸線Cに対する、環状の突起B、複数の突起Pからなる仮想円、及び、線状の突起Lからなる仮想円のそれぞれの外径は、ガイド部42Aの内径との間隙が小さくなるように設定すればよいため、加工コストを抑えることができる。なお、複数の突起Pを設ける場合には、図6(a)-(b)に示すように、円周方向に少なくとも3つ以上均等配置するとともに、中心軸線C方向に少なくとも2か所以上離間して配置することにより、また、環状の突起Bを設ける場合は、中心軸線C方向に少なくとも2か所以上離間して配置することにより、さらに、複数の線状の突起Lを設ける場合には、円周方向に少なくとも3つ以上均等配置することにより、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10-1の軸芯合わせをそれぞれ自律的に行うことができる。
【0060】
さらに、特に、第1の実施形態の変形例2において、プランジャチューブ10-1が、外径側に突出する複数の突起P(図6(a)-(b)参照)、及び、外径側に突出する中心軸線C方向に延在する複数の線状の突起Lを設ける場合には、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10-1とを、ろう付けRにより接合する際に、ろう材が、中心軸線C方向に沿った毛細管現象により、延伸部42Bを越えて、ガイド部42Aの内部まで浸透拡散するため、ろう溜め領域(接合部)RAを中心軸線C方向に拡大させ、両部材をより堅固に接合させることができる。
【0061】
(第1の実施形態の変形例3)
ここで、図7を用いて、第1の実施形態の変形例3におけるパイロット弁本体40-4,40-5,40-6について説明する。この第1の実施形態の変形例3におけるパイロット弁本体40-4,40-5,40-6は、段差部43に、中心軸線Cを中心とした放射線状に延在する複数の溝G、中心軸線Cの方向に開くV字形の溝G、複数の凸部Pを設けている点で、第1の実施形態におけるパイロット弁本体40と相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0062】
第1の実施形態におけるパイロット弁本体40では、プランジャ20が段差部43に当接する際に、プランジャ20と段差部43との間に、所定量以上の冷凍機油が存在していると、プランジャ20と段差部43とが張り付いてしまうおそれがあった。
【0063】
これに対し、第1の実施形態の変形例3におけるパイロット弁本体40-4,40-5,40-6は、段差部43に、放射線状に延在する複数の溝G、中心軸線Cの方向に開く複数のV字形の溝G、複数の凸部Pを設けている。このため、プランジャ20が段差部43に当接する際に、プランジャ20と段差部43との間に介在する冷凍機油は、内周側と連通した、複数の溝G、複数のV字形の溝G、複数の凸部Pの間に形成される凸部間隙Dを介して、中心軸線Cに向けて積極的に排出される。これにより、プランジャ20と段差部43との張り付きを抑制することができる。なお、本実施形態においては、当接面に放射線状に延在する複数の溝Gなどを設けるものとしたが、当接面の内周側と連通するものであれば、いかなる形態でもよいため、例えば、当接面に平行な複数の溝を設けるものや、放射線状の溝G、V字形の溝G、複数の凸部P、及び、平行な溝などを組み合わせて設けるものであってもよい。
【0064】
<パイロット弁本体の突出部とD継手管との取り付け構成について>
図3に示すように、パイロット弁本体40は、ステンレス鋼の薄板をプレス加工(深絞り加工)により成形したものであるため、切削加工により形成したものと比べ、剛性が低くなっている。ここで、パイロット弁本体40と、E継手管1E、S継手管1S及びC継手管1Cとの取り付けは、剛性の高い弁座50を介して行われることから、接合強度に問題は生じない。一方、パイロット弁本体40と、D継手管1Dとの取り付けは、他の部材を介さず、直接行われている。よって、D継手管1Dをパイロット弁本体40に接続する際の接続部ガイド長さ(=薄板の肉厚)が短いのでD継手管1Dが傾き易い。仮に、D継手管1Dが、パイロット弁本体40の上方側周壁に対して傾いた状態で、ろう付けが施されると、周方向に沿って不均一に接合されるため、接合強度が局所的に低くなるおそれがあった。
【0065】
この問題を解消するために、第1の実施形態におけるパイロット弁本体40は、図4(c)に示すように、パイロット弁本体40の上方側周壁に、パイロット弁本体40の径方向(中心軸線Cに対して垂直な方向)の外側に突出し略円筒形状からなる突出部44を形成し、この突出部44を介して、D継手管1Dを取り付けるものである。
【0066】
具体的には、D継手管1Dは、基部1DAと、基部1DAの内径よりも大きい内径を有する取付部1DBと、基部1DAと取付部1DBとの間に形成される傾斜部1DCと、を有する。なお、取付部1DBの内径は、突出部44の外径と略同一に設定される。
【0067】
ここで、パイロット弁本体40の突出部44に、D継手管1Dを取り付ける際、まず、取付部1DB及び傾斜部1DCにストレーナSを収容した後、取付部1DBの内周面が、突出部44の外周面により、ガイドされることにより、取付部1DBが、突出部44に対して、中心軸線Cに対して垂直な方向に沿って圧入される。そして、取付部1DBの先端が、パイロット弁本体40の上方側周壁に当接した状態で、取付部1DB及び突出部44に対して、ろう付けを行い、D継手管1Dをパイロット弁本体40の突出部44に固定する。このように、D継手管1Dが、突出部44の外周面により、ガイドされることにより、突出部44とD継手管1Dとの径方向への軸芯合わせが自律的に行われる。よって、薄板により成形されたパイロット弁本体40であっても、D継手管1Dを傾きなく取り付けることができるため、周方向への均一なろう付けにより、堅固な接合強度を有することができる。また、パイロット弁本体40の突出部44とD継手管1Dとを取り付けるのと同時に、突出部44の突出端部44AとD継手管1Dの傾斜部1DCとの間に、ストレーナSを挟持しているため、ストレーナSの固定手段を特別に設けることなく、D継手管1D内にストレーナSを容易に固定することができる。
【0068】
第1の実施形態においては、パイロット弁本体40の突出部44に、D継手管1Dを圧入した後に、ろう付けを行い、両部材を固定するものであるが、これに限らず、例えば、パイロット弁本体40の突出部44に、D継手管1Dを嵌合してもよいし、嵌合した後に、カシメ加工でD継手管1Dの仮止め及びろう付けの順で施し、両部材を固定してもよい。
【0069】
<スライド式切換弁の動作について>
図3及び図8を用いて、スライド式切換弁100Aの動作について説明する。ここで、パイロット弁本体40の突出部44、弁座50における貫通孔51E、貫通孔51S、貫通孔51Cは、それぞれ、流体経路における、第1ポート44、第2ポート51E、第3ポート51S、第4ポート51Cとして機能する。
【0070】
スライド弁体30が、プランジャ20により、中心軸線C方向に沿って、往復移動することにより、弁座50に対するスライド弁体30の窪み部30Aの位置を切り換える。これにより、弁座50における隣接する3つのポート(第2ポート51E、第3ポート51S、第4ポート51C)のうちの2つのポートが選択的に連通される。
【0071】
まず、図3に示すように、スライド式切換弁100Aがコイル非通電状態である場合には、プランジャ20は、コイルばね61の付勢力により、プランジャ20の肩部23は、パイロット弁本体40の段差部43に当接する一方、スライド弁体30は、弁座50に対して左側位置に移動する。この際、スライド弁体30の窪み部30Aを介して、第2ポート51Eと第3ポート51Sとが連通し、E継手管1EからS継手管1Sに流体が流れるとともに、第1ポート44と第4ポート51Cとが連通し、D継手管1DからC継手管1Cに流体が流れる。
【0072】
次に、図8に示すように、スライド式切換弁100Aがコイル通電状態である場合には、プランジャ20の右端部は、磁力により、吸引子60に引き寄せられ当接する一方、スライド弁体30は、弁座50に対して右側位置に移動する。この際、スライド弁体30の窪み部30Aを介して、第4ポート51Cと第3ポート51Sとが連通し、C継手管1CからS継手管1Sに流体が流れるとともに、第1ポート44と第2ポート51Eとが連通し、D継手管1DからE継手管1Eに流体が流れる。
【0073】
このように、第1の実施形態におけるスライド式切換弁100Aは、直動式電磁スライド弁であるため、外部の駆動制御部からの応答性を向上させ、流路経路の切り換えを素早く行うことができる。
【0074】
以上のように、スライド式切換弁100Aがコイル非通電状態である場合には、E継手管1EからS継手管1Sに流体が流れるとともに、D継手管1DからC継手管1Cに流体が流れることにより、パイロット式の四方切換弁200内の一対のピストン220A,220Bが右側位置に移動する。よって、冷凍サイクルシステム1は、圧縮機300、室外熱交換機400、絞り装置600、室内熱交換機500の順で冷媒が流れる冷房運転状態に移行する。一方、スライド式切換弁100Aがコイル通電状態である場合には、C継手管1CからS継手管1Sに流体が流れるとともに、D継手管1DからE継手管1Eに流体が流れることにより、パイロット式の四方切換弁200内の一対のピストン220A,220Bが左側位置に移動する。よって、冷凍サイクルシステム1は、圧縮機300、室内熱交換機500、絞り装置600、室外熱交換機400の順で冷媒が流れる暖房運転状態に移行する。
【0075】
(第2の実施形態)
<スライド式切換弁について>
図9を用いて、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bについて説明する。第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bは、主に、プランジャ20’、スライド弁体30の付勢手段である弁ばね31’、プランジャ20’の中心軸線C方向への移動を規制するストッパリング11’、及び、パイロット弁本体40の突出部44’が、第1の実施形態に係るスライド式切換弁100Aとそれぞれ相違するが、その他の基本構成は第1の実施形態と略同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する一方、異なる部材には、「’」を付して説明を行う。
【0076】
第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bは、プランジャチューブ10、プランジャ20’、スライド弁体30、パイロット弁本体40、弁座50、吸引子60、電磁コイルユニット70、から主に構成される。
【0077】
プランジャ20’は、磁性を帯びたステンレス鋼からなり、中心軸線Cに沿って互いに連通する、連通路24A,24Bと、凹部24D’と、を備える。この連通路24Bの内径は、連通路24Aの内径よりも大きく設定され、連通路24Aと連通路24Bとの間には、コイルばね支持部24Cが形成される。また、プランジャ20’は、中心軸線C方向に延在する円柱形状の円柱部(摺動部)21’と、中心軸線C方向の左側に面する先端面22’と、先端面22’に接続する開口縁23’と、を備える。ここで、プランジャ20’が、プランジャチューブ10内を中心軸線C方向に摺動可能に案内されるように、円柱部21’の外径が、プランジャチューブ10の内径より僅かに小さく設定されている。
【0078】
さらに、プランジャ20’には、連結ロッド25’が固定される。具体的には、プランジャ20’の凹部24D’に、連結ロッド25’の一端を収容し、カシメ加工により、開口縁23’を変形させることにより、連結ロッド25’を固定する。この連結ロッド25’の一端には、金属からなる弁ばね31’の一端が、リベットなどの連結具26’により、連結される。また、連結ロッド25’の他端には、スライド弁体30をスライド可能に収容する開口部25A’が形成される。このスライド弁体30は、付勢手段である弁ばね31’の他端により、弁座50の上面に対して、所定の荷重で付勢される。
【0079】
<パイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成について>
ここで、図10(a)及び図10(b)を用いて、第2の実施形態における、円環形状のストッパリング11’を介した、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10との具体的な取り付け構成について説明する。このストッパリング11’は、プランジャチューブ10の外径に略等しい外径と、プランジャ20’の円柱部21’の外径より小さい内径と、を有する。
【0080】
まず、パイロット弁本体40をプランジャチューブ10に取り付けるために、パイロット弁本体40のフランジ部42Cを介して、ストッパリング11’及びプランジャチューブ10の先端部10Aを延伸部42Bに挿入させる。そして、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10の中心軸線C方向の相対距離を近接させる。その後、パイロット弁本体40のガイド部42Aの内径に、ストッパリング11’及びプランジャチューブ10のそれぞれの外径がガイドされながら圧入され、最終的に、ストッパリング11’は、プランジャチューブ10の先端部10Aと、パイロット弁本体40の段差部43との間に挟持される。
【0081】
第2の実施形態では、プランジャ20の中心軸線C方向への移動を規制するストッパとして機能させるものを、第1の実施形態におけるパイロット弁本体40の段差部43に代えて、ストッパリング11’を採用するものである。これにより、第2の実施形態では、ストッパリング(ストッパ)11’をプランジャ20の先端面22’に当接させるために、ストッパリング11’の内径を、プランジャ20’の円柱部21’の外径より小さく設定すればよい。つまり、第2の実施形態における段差部43は、単に、ストッパリング11’を保持しさえすればよいため、第1の実施形態と比べて、段差部43における内径差を極めて小さくすることができる(特に、図4(b)及び図10(b)参照)。これにより、パイロット弁本体40をプレス加工(深絞り加工)により成形する際に、急激な曲げが段差部43に生じることを抑制することができるため、段差部43における残留加工応力を低減させ、結果、応力腐食割れによる外部への作動流体のリークを防ぐことができる。
【0082】
このように、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bは、第1の実施形態に係るスライド式切換弁100Aと比較して、プランジャ20’の円柱部(摺動部)21’とパイロット弁本体40との間に、空間を設けることができる。このため、第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bでは、プランジャ20の中心軸線C方向への移動を規制するストッパとして、第1の実施形態におけるパイロット弁本体40の段差部43に代えて、ストッパリング11’を採用することができる。これにより、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(接合部の芯ずれ及び接合部の強度不足)を解消することができる。さらに、第2の実施形態では、この効果に加え、段差部43における残留加工応力を低減させ、応力腐食割れによる外部への作動流体のリークを防ぐことができる。なお、本実施形態では、ストッパリング11’をパイロット弁本体40のガイド部42Aの内径に圧入したが、これに限らず、嵌合としてもよい。
【0083】
(第2の実施形態の変形例)
ここで、図11を用いて、第2の実施形態の変形例におけるストッパリング11’について説明する。この第2の実施形態の変形例におけるストッパリング11’は、プランジャ20との当接面に、中心軸線Cを中心として、放射線状に延在する複数の溝Gを設けている点で、第2の実施形態におけるストッパリング11’と相違するが、その他の基本構成は第2の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0084】
第1の実施形態の変形例3(図7参照)での説明と同様に、第2の実施形態におけるストッパリング11’に、プランジャ20が当接する際に、プランジャ20とストッパリング11’との間に、所定量以上の冷凍機油が存在していると、プランジャ20とストッパリング11’とが張り付いてしまうおそれがあった。
【0085】
これに対し、第2の実施形態の変形例におけるストッパリング11’は、プランジャ20との当接面に、放射線状に延在する複数の溝Gを設けている。なお、第2の実施形態の変形例におけるストッパリング11’は、プランジャ20との当接面に、放射線状に延在する複数の溝Gを設けるものであるが、これに限らず、例えば、第1の実施形態の変形例3(図7参照)と同様に、中心軸線Cの方向に開く複数のV字形の溝G、複数の凸部P、平行な複数の溝G、及び、これらの組み合わせたものを設けることもできる。これにより、プランジャ20がストッパリング11’に当接する際に、プランジャ20とストッパリング11’との間に介在する冷凍機油は、内周側と連通した、複数の溝G、複数のV字形の溝G、複数の凸部Pの間に形成される凸部間隙Dを介して、中心軸線Cに向けて積極的に排出される。これにより、プランジャ20とストッパリング11’との張り付きを抑制することができる。
【0086】
<パイロット弁本体の突出部とD継手管との取り付け構成について>
第1の実施形態に係るスライド式切換弁100Aでは、突出部44の突出端部44AとD継手管1Dの傾斜部1DCとの間に、ストレーナSを挟持している。このストレーナSの下側は、突出部44の突出端部44Aと、円形状に線接触しているため、ストレーナSには、局所的に大きな集中応力が生じ、望ましいストレーナSの網目構造から変形してしまうおそれがあった。
【0087】
例えば、望ましいストレーナSの網目構造が、部分的に大きな網目となってしまう場合には、許容範囲外の大きな異物が、流体経路を循環し、冷凍サイクルシステム1を構成する各機器の故障の原因となるおそれがあった。また、これとは反対に、望ましいストレーナSの網目構造が、全体的に小さな網目となってしまう場合には、流路抵抗が比較的大きくなるため、パイロット式の四方切換弁200の応答性が低下し、冷房・暖房運転の切り換えがスムーズに行えなくなるおそれがあった。またストレーナSの下端を保持する突出端部44Aの幅(薄板肉厚)が小さいので、仮に流体の流れの影響でストレーナSが径方向にずれた場合、突出端部44Aから外れ異物がパイロット弁本体40内に流入するおそれがあった。
【0088】
この新たな問題を解消するために、第2の実施形態における突出部44’の突出端部44A’は、突出部44’の径方向内側に折り曲げて形成される折り曲げ部を有する。これにより、突出部44の突出端部44A’とD継手管1Dの傾斜部1DCとの間に、ストレーナSを挟持する際に、ストレーナSの下側は、折り曲げ部を有する突出部44’の突出端部44A’と、円環形状に面接触している。よって、ストレーナSには、局所的に大きな集中応力が生じず、望ましいストレーナSの網目構造から変形することを抑制することができ、冷凍サイクルシステム1を構成する各機器の故障の原因や、パイロット式の四方切換弁200の応答性が低下などを抑制することができる。また折り曲げ部により、ストレーナSの下端を保持する突出端部44A’の幅が大きくなるので、仮に流体の流れの影響でストレーナSが径方向にずれても、ストレーナSは突出端部44A’から外れないので、異物がパイロット弁本体40内に流入することを抑制することができる。
【0089】
なお、第2の実施形態も第1の実施形態と同様に、パイロット弁本体40の突出部44’に、D継手管1Dを圧入した後に、ろう付けを行い、両部材を固定するものであるが、これに限らず、例えば、パイロット弁本体40の突出部44’に、D継手管1Dを嵌合してもよいし、嵌合した後に、カシメ加工でD継手管1Dの仮止め及びろう付けの順で施し、両部材を固定してもよい。
【0090】
また、パイロット弁本体40の突出部44’において、折り曲げ部を有する突出端部44A’の内径ΦAは、D継手管1Dにおける基部1DAの内径ΦB以上に設定される。これにより、冷凍サイクルシステム1の冷房運転時又は暖房運転時に、D継手管1DからC継手管1C又はE継手管1Eに流体が流れる際に、折り曲げ部を有する突出端部44A’における圧力損失の増加を抑制することができる。
【0091】
このように、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果、つまり、突出部44’とD継手管1Dとの接合強度を堅固なものとすることができ、また、D継手管1D内にストレーナSを容易に固定することができる。さらに、第2の実施形態では、この効果に加え、望ましいストレーナSの網目構造から変形することと、ストレーナSの径方向のずれによる異物侵入を抑制することにより、冷凍サイクルシステム1を構成する各機器の故障の原因や、パイロット式の四方切換弁200の応答性が低下などを抑制することができ、さらに、圧力損失の増加を抑制することができる。
【0092】
(第3の実施形態)
<スライド式切換弁について>
図12及び図13(a)を用いて、第3の実施形態に係るスライド式切換弁100Cについて説明する。第3の実施形態におけるプランジャチューブ10’’は、第2の実施形態におけるストッパリング11’及びプランジャチューブ10を一体化した点で相違するが、その他の基本構成は第2の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する一方、異なる部材には、「’’」を付して説明を行う。
【0093】
<パイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成について>
第2の実施形態に係るスライド式切換弁100Bでは、パイロット弁本体40をプランジャチューブ10’に取り付ける際に、ストッパリング11’を、プランジャチューブ10の先端部10Aにより支持しながら、パイロット弁本体40内に圧入させる。この際、プランジャチューブ10の先端部10Aによる接触が周方向に沿って均一に行われ、ストッパリング11’が安定的に支持されている。しかしながら、仮に、ストッパリング11’が周方向に沿って均一に支持されない場合には、ストッパリング11’が中心軸線C方向から傾いた状態で圧入されることなる。これにより、ストッパリング11’とガイド部42Aとの間にかじり現象が生じ、所望の圧入深さまで、圧入を行うことができなくなるおそれがある。また、ストッパリング11’のかじり現象が、ガイド部42Aの右側端部で生じる場合には、ストッパリング11’と同様に、プランジャチューブ10も中心軸線C方向から傾いた状態となるため、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10’との軸芯合わせができなくなるおそれがあった。
【0094】
この新たな問題を解消するために、第3の実施形態では、第2の実施形態における、別体であるストッパリング11’及びプランジャチューブ10に代えて、円環部10A’’を一体化させたプランジャチューブ10’’を採用するものである。具体的には、第3の実施形態におけるプランジャチューブ10’’は、図13(a)に示すように、中心軸線C方向の端部が、径方向内側に折り曲げて形成される円環部10A’’を有する。この円環部10A’’の内径は、プランジャ20’の円柱部(摺動部)21’の外径より小さく設定される。
【0095】
まず、パイロット弁本体40をプランジャチューブ10’’に取り付けるために、パイロット弁本体40のフランジ部42Cを介して、プランジャチューブ10’’の円環部10A’’を延伸部42Bに挿入させる。そして、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10’’の中心軸線C方向の相対距離を近接させる。その後、パイロット弁本体40のガイド部42Aの内径に、プランジャチューブ10’’の外径がガイドされながら圧入され、プランジャチューブ10’’の円環部10A’’が、パイロット弁本体40の段差部43に当接する。このように、円環部10A’’は、プランジャチューブ10’’と一体であるため、円環部10A’’が中心軸線C方向から傾いた状態で圧入されることはなく、所望の圧入深さへと容易に圧入することができるとともに、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10’’との軸芯合わせをより確実に行うことができる。
【0096】
このように、第3の実施形態では、第2の実施形態における、別体であるストッパリング11’及びプランジャチューブ10に代えて、円環部10A’’を一体化させたプランジャチューブ10’’を採用するものである。これにより、第3の実施形態は、第2の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(接合部の芯ずれ及び接合部の強度不足)を解消するとともに、応力腐食割れによる外部への作動流体のリークを防ぐことができる。また、第3の実施形態では、この効果に加え、所望の圧入深さへと容易に圧入することができるとともに、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10’’との軸芯合わせをより確実に行うことができる。さらに、第3の実施形態では、プランジャチューブ10’’に円環部10A’’を一体化させることにより、部品点数を少なくでき、在庫管理の労力を低減させることができる。
【0097】
また、図13(a)に示すように、プランジャチューブ10’’に一体化させた円環部(ストッパ)10A’’が、プランジャ20の先端面22’と当接し、ストッパとして機能することにより、プランジャ20の中心軸線C方向への移動を規制する。よって、第3の実施形態では、プランジャ20が円環部10A’’に当接する毎に、この円環部10A’’を介して、ろう溜め領域RAに対して、接合部を引き剥がそうとする方向にせん断力がパイロット弁本体40に直接負荷されることはない。これにより、第3の実施形態では、第2の実施形態と比べ、接合部に求められる接合強度を低く設定することができる。
【0098】
(第3の実施形態の変形例1)
<スライド式切換弁について>
図13(b)を用いて、第3の実施形態の変形例1に係るスライド式切換弁100Cについて説明する。第3の実施形態の変形例1におけるプランジャチューブ10’’’は、第3の実施形態におけるプランジャチューブ10’’に絞り部10B’’’をさらに一体的に設けた点で相違するが、その他の基本構成は第3の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する一方、異なる部材には、「’’’」を付して説明を行う。
【0099】
<パイロット弁本体とプランジャチューブとの取り付け構成について>
第3の実施形態に係るスライド式切換弁100Cにおいて、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10’’のろう付けRによる接合をより強固にするために、ろう溜め領域RA、つまり、パイロット弁本体40の延伸部42Bの中心軸線C方向長さをより大きくすることが考えられる。ここで、図12に示すように、パイロット弁本体40は全体的に複雑な形状を有していることから、仮に、延伸部42Bの中心軸線C方向長さをより大きくするように設計変更すると、これに伴い、加工コストも高くなるおそれがあった。
【0100】
これに対し、パイロット弁本体40全体の中心軸線C方向長さを変化させずに、ガイド部42Aの一部を延伸部42Bとすることにより、ろう溜め領域RAにおける中心軸線C方向長さを大きくすること(図13(a)及び図13(b)に示される42A,42Bのみ参照)も考えられるが、所望の圧入深さを得ることができなくなるおそれがあった。
【0101】
この新たな問題を解消するために、第3の実施形態の変形例1におけるプランジャチューブ10’’’は、第3の実施形態における円環部10A’’に、一体的に設けられる絞り部10B’’’を採用するものである。具体的には、第3の実施形態の変形例1におけるプランジャチューブ10’’’は、図13(b)に示すように、円環部10A’’を介して、中心軸線C方向の左側へと縮径される絞り部10B’’’を一体的に備える。なお、絞り部10B’’’の外径は、小径部41の内径と略同一に設定され、小径部41の内径にガイドされる。これにより、第3の実施形態の変形例1の圧入深さは、図13(b)に示すように、ガイド部42Aと、絞り部10B’’’が圧入される小径ガイド部41A’’’とを加えた中心軸線C方向長さとなり、図13(a)に示す、第3の実施形態におけるガイド部42Aの中心軸線C方向長さと同等の長さを確保することができる。
【0102】
また、第3の実施形態の変形例1では、ガイド部42Aの内径とプランジャチューブ10’’’の外径との間の圧入代と、小径ガイド部41A’’’の内径と絞り部10B’’’の外径との間の圧入代は、略同一とするものであるが、これに限らず、例えば、それぞれの圧入代を異ならせてもよい。この場合、ガイド部の径が大きいガイド部42Aの内径とプランジャチューブ10’’’の外径との間の圧入代を、小径ガイド部41A’’’の内径と絞り部10B’’’の外径との間の圧入代に比べ大きくした方が、接合部における芯ずれを抑制し易いとともに、パイロット弁本体40にプランジャチューブ10’’’を組込み易くなるので好ましい。
【0103】
このように、第3の実施形態の変形例1におけるプランジャチューブ10’’’は、第3の実施形態における円環部10A’’に、一体的に設けられる絞り部10B’’’を採用するものである。これにより、第3の実施形態の変形例1は、第3の実施形態と同様の効果、つまり、従来の問題点(接合部の芯ずれ及び接合部の強度不足)を解消し、応力腐食割れによる外部への作動流体のリークを防ぐとともに、部品点数を少なくした上で、所望の圧入深さへと容易に圧入でき、また、接合部に求められる接合強度を低く設定することができる。さらに、第3の実施形態の変形例1では、この効果に加え、パイロット弁本体40全体の中心軸線C方向長さを変化させず、また、パイロット弁本体40とプランジャチューブ10’’’との圧入深さを維持したままで、ろう溜め領域RA、つまり、パイロット弁本体40の延伸部42Bの中心軸線C方向長さを大きくし、パイロット弁本体40及びプランジャチューブ10’’’とのろう付けRによる接合をより強固にすることができる。
【0104】
(第3の実施形態の変形例2)
ここで、図14を用いて、第3の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブ10’’-1について説明する。この第3の実施形態の変形例2におけるプランジャチューブ10’’-1は、円環部10A’’のプランジャ20との当接面に、中心軸線Cを中心として、放射線状に延在する複数の溝Gを設けている点で、第3の実施形態におけるプランジャチューブ10’’と相違するが、その他の基本構成は第3の実施形態と同一である。ここで、同一部材には同一符号を付して、重複する説明は省略する。
【0105】
第1の実施形態の変形例3(図7参照)及び第2の実施形態の変形例(図11参照)での説明と同様に、第3の実施形態における円環部10A’’に、プランジャ20が当接する際に、プランジャ20と円環部10A’’との間に、所定量以上の冷凍機油が存在していると、プランジャ20と円環部10A’’とが張り付いてしまうおそれがあった。
【0106】
これに対し、第3の実施形態の変形例2における円環部10A’’は、プランジャ20との当接面に、放射線状に延在する複数の溝Gを設けている。なお、第3の実施形態の変形例2における円環部10A’’は、プランジャ20との当接面に、放射線状に延在する複数の溝Gを設けるものであるが、これに限らず、例えば、第1の実施形態の変形例3(図7参照)と同様に、中心軸線Cの方向に開く複数のV字形の溝G、複数の凸部P、平行な複数の溝G、及び、これらの組み合わせたものを設けることもできる。これにより、プランジャ20が円環部10A’’に当接する際に、プランジャ20と円環部10A’’との間に介在する冷凍機油は、内周側と連通した、複数の溝G、複数のV字形の溝G、複数の凸部Pの間に形成される凸部間隙Dを介して、中心軸線Cに向けて積極的に排出される。これにより、プランジャ20と円環部10A’’との張り付きを抑制することができる。
【0107】
<その他>
本実施形態のスライド式切換弁100,100A,100B,100Cは、例示する冷凍サイクルシステム1だけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0108】
1 冷凍サイクルシステム
1C C継手管
1D D継手管
1DA 基部
1DB 取付部
1DC 傾斜部
1E E継手管
1S S継手管
10,10-1,10’’,10’’-1,10’’’ プランジャチューブ
10A 先端部
10A’’ 円環部
10B’’’ 絞り部
11’,11’-1 ストッパリング(ストッパ)
20,20’ プランジャ
21 突出部
21’ 円柱部(摺動部)
22 拡径部(摺動部)
22’ 先端面
23 肩部
23’ 開口縁
24A,24B 連通路
24C コイルばね支持部
24D’ 凹部
25 弁ばね収容孔
25’ 連結ロッド
25A’ 開口部
26 弁体ガイド孔
26’ 連結具
30 スライド弁体
30A 窪み部
31,31’ 弁ばね
40,40-1~40-6 パイロット弁本体(弁本体)
40A 弁座取付孔
41 小径部
41A’’’ 小径ガイド部
42 大径部
42A ガイド部
42B 延伸部
42C フランジ部
43 段差部
44,44’ 突出部(第1ポート)
44A,44A’ 突出端部
50 弁座
51E,51S,51C 貫通孔(第2ポート,第3ポート,第4ポート)
60 吸引子
60A 雌ネジ孔
61 コイルばね
70 電磁コイルユニット
71 モールドコイル部
72 ケーシング
72A 取付孔
73 リード線
74 小ネジ
100,100A,100B,100C スライド式切換弁
200 パイロット式の四方切換弁
300 圧縮機
400 室外熱交換機
500 室内熱交換機
600 絞り装置(膨張弁)

B 環状の突起
C 中心軸線
D 凸部間隙
F ろう付けフィレット
G 溝
L 線状の突起
P 複数の凸部
R ろう付け
RA ろう溜め領域(接合部)
S ストレーナ
X 軸線
ΦA 突出端部の内径
ΦB D継手管における基部の内径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14