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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157093
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】金型搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/30 20060101AFI20231019BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20231019BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B29C33/30
B29C45/26
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066768
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596114635
【氏名又は名称】株式会社洲崎電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】尾川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柴田 修
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM15
4F202AR04
4F202CA11
4F202CB01
4F202CC01
4F202CR01
4F202CR10
4F206AM15
4F206AR04
4F206JA07
4F206JL05
4F206JQ06
4F206JT04
4F206JT21
4F206JT32
4F206JT39
(57)【要約】
【課題】背の高い金型であっても、搬送方向の前方端における浮き上がりを防ぎ安定したかつ高速な搬送を可能にする金型搬送装置を提供すること。
【解決手段】本発明の金型搬送装置(1)は、固定金型と可動金型を組み合わせてなる少なくとも一組の金型(DE)を搬送方向(X)に沿って搬送させる。金型搬送装置(1)は、底面を介して金型(DE)を載せながら金型(DE)を搬送方向(X)に搬送させる第1搬送機構(20)と、金型(DE)の底面から鉛直方向(V)に離れた位置に第2駆動力(P2)を与えながら金型(DE)を搬送方向(X)に搬送させる第2搬送機構(40A)と、を備える。金型搬送装置(1)は、第1搬送機構(20)と第2搬送機構(40A)を同時に駆動して、金型(DE)を移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型と可動金型を組み合わせてなる少なくとも一組の金型を搬送方向に沿って搬送させる金型搬送装置であって、
底面を介して前記金型を載せながら前記金型を前記搬送方向に搬送させる第1搬送機構と、
前記金型の前記底面から鉛直方向に離れた位置に第2駆動力を与えながら前記金型を前記搬送方向に搬送させる第2搬送機構と、を備え、
前記第1搬送機構と前記第2搬送機構を同時に駆動して、前記金型を搬送させる、
ことを特徴とする金型搬送装置。
【請求項2】
前記第1搬送機構は、
前記搬送方向に並び、前記金型が載せられる複数の自転する回転体を備える駆動機構からなり、
前記第2搬送機構は、
チェーン駆動機構または流体圧シリンダ駆動機構からなる、
請求項1に記載の金型搬送装置。
【請求項3】
前記第1搬送機構の駆動源である第1電動モータと前記第2搬送機構の駆動源である第2電動モータが、電気制御的にまたは機械的に同期する、請求項1または請求項2に記載の金型搬送装置。
【請求項4】
前記第2搬送機構は、
前記第1搬送機構による搬送の加速時または減速時に前記金型に生じ得るモーメントに対向する向きの荷重を与えながら前記金型を搬送させる、
請求項1または請求項2に記載の金型搬送装置。
【請求項5】
前記加速時において、
前記第1搬送機構による前記金型の第1-1駆動力P11と、
前記第2搬送機構による前記金型の第2-1駆動力P21とが、
P11>P21の関係を有し、
前記減速時において、
前記第1搬送機構による前記金型の第1-2駆動力P12と、
前記第2搬送機構による前記金型の第2-2駆動力P22とが、
P12≦P22の関係を有する、
請求項4に記載の金型搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば射出成形機に用いられる金型を交換する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、溶融された樹脂材料を予め定められた形状の成形品を得るために、一組の金型を備える。一組の金型の一方は射出成形機において位置が固定される固定盤に取り付けられるために固定金型と称され、一組の金型の他方は固定盤に対して進退移動する可動盤に取り付けられるために可動金型と称される。射出成形機において、作製したい成形品に応じた固定金型および可動金型が用いられる。したがって、成形品に応じて固定金型および可動金型を交換する必要がある。
【0003】
遊転ローラに載せられた金型を手動で搬送するそれまでの交換手法に対して、特許文献1は回転駆動手段により回転駆動される複数のスプロケットに加えて、金型の下端近傍部に装備される、スプロケットにより駆動されるラック部材を設けることを提案する。引用文献1の金型搬送装置は、回転駆動手段を動作させると、スプロケットの回転によりスプロケットに載る金型が搬送されるとともに、ラック部材が動作することによりラック部材と金型とが一体的に搬送される。特許文献1によれば、回転駆動手段により金型を移動させるため、金型移動速度を高めることができ、金型の停止位置精度を高めることができ、金型交換の所要時間を短縮することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-051601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
射出成形機に用いられる金型は寸法が多種多様であり、背の低いものから高いものまである。ここでいう背とは、鉛直方向(V)の寸法をいう。水平方向(H)に搬送のための力を受けると、背の高い金型は背の低い金型に比べて姿勢が不安定である。
【0006】
特許文献1の金型搬送装置は、搬送駆動力が伝達されるのはスプロケットに接する金型の底面(下面)およびラック部材が関わる金型の下端部近傍だけである。このように水平方向(H)に搬送の駆動力を金型の底面に加えると、この駆動力は金型の重心に対してモーメントとして作用する。特に、金型を高速で搬送しようとして大きな駆動力を金型の下回りに負荷すると、背の高い金型であれば作用するモーメントも大きくなる。特に、搬送の駆動力を負荷して加速した直後に、金型の搬送方向の前端面はスプロケットから浮き上がるおそれがある。または逆に搬送の制動力を負荷して減速した直後に、金型の搬送方向の後端面はスプロケットから浮き上がるおそれがある。浮き上がりは収まるが、浮き上がった金型の底面がスプロケットに着地すると衝突音が発生してしまう。また、金型が浮き上がると、前端部または後端部の下部が持ち上がり、金型とスプロケットの係合が外れると、搬送駆動力の伝達不良が発生してしまい、目的とする金型の搬送速度が得られなくなる。
【0007】
以上より、本発明は、背の高い金型であっても、加速時の搬送方向の前方端における浮き上がりまたは減速時の搬送方向の後方端における浮き上がりを防ぎ安定したかつ高速な搬送を可能にする金型搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金型搬送装置は、固定金型と可動金型を組み合わせてなる少なくとも一組の金型を搬送方向に沿って搬送させる。
金型搬送装置は、底面を介して金型を載せながら金型を搬送方向に搬送させる第1搬送機構と、金型の底面から鉛直方向に離れた位置に第2駆動力を与えながら金型を搬送方向に搬送させる第2搬送機構と、を備える。
金型搬送装置は、第1搬送機構と第2搬送機構を同時に駆動して、金型を搬送させる。
【0009】
本発明の金型搬送装置において、好ましい第1搬送機構は、搬送方向に並び、金型が載せられる複数の自転する回転体を備える駆動機構からなり、好ましい第2搬送機構は、チェーン駆動機構または流体圧シリンダ駆動機構からなる。
【0010】
本発明の金型搬送装置において、好ましくは、第1搬送機構の駆動源である第1電動モータと第2搬送機構の駆動源である第2電動モータが、電気制御的にまたは機械的に同期する。
【0011】
本発明の金型搬送装置において、好ましい第2搬送機構は、第1搬送機構による搬送の加速時または減速時に金型に生じ得るモーメントに対向する向きの荷重を与えながら金型を搬送させる。
【0012】
本発明の金型搬送装置において、加速時には、第1-1駆動力P11と、記第2搬送機構による金型の第2-1駆動力P21とが、好ましくは、P11>P21の関係を有する。また、減速時には、第1搬送機構による金型の第1-2駆動力P12と、第2搬送機構による金型の第2-2駆動力P22とが、好ましくは、P12≦P22の関係を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金型搬送装置によれば、第1搬送機構に加えて第2搬送機構を設けることにより、背の高い金型であっても、加速時の搬送方向の前方端における浮き上がりまたは減速時の搬送方向の後方端における浮き上がりを防ぎ安定したかつ高速な搬送を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る金型搬送装置を示す側面図である。
図2】第1実施形態に係る金型搬送装置を示す平面図である。
図3】第1実施形態に係る金型搬送装置により金型を搬送する過程を示す側面図である。
図4】第1実施形態に係る金型搬送装置により金型を搬送する過程を示す平面図である。
図5】第1実施形態に係る金型搬送装置の効果を説明する図であり、(a)は背の低い金型を示し、(b)は背の高い金型を示し、(c)は背の高い金型であって第2搬送機構による負荷を受けていることを示している。
図6】第2実施形態に係る金型搬送装置を示す側面図である。
図7】第2実施形態に係る金型搬送装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明における好ましい第1実施形態および第2実施形態という二つの実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態は、金型を搬送する第1搬送機構および第2搬送機構という二つの搬送機構を備えることにより、背の高い金型であっても、搬送方向の前方端(前面FS)または後方端(背面BS)における浮き上がりを防ぎ安定したかつ高速な搬送を可能にできる。また、第1実施形態および第2実施形態において、第1搬送機構の構成は共通するが、第2搬送機構の構成が異なっている。以下、第1実施形態、第2実施形態の順に説明する。
【0016】
〔第1実施形態:図1図2図3図4
第1実施形態に係る金型搬送装置1Aを、図1図4を参照しながら説明する。
金型搬送装置1Aは、例えば保管庫から金型DEの搬入・搬出位置19に搬入された新たに射出成形に供される金型DEを金型配置領域117に向けて搬送する。金型配置領域117まで搬送された金型DEは固定型盤111、可動型盤113に取り付けられ、射出成形を待つ。金型DEを金型配置領域117から搬出する際には、上記の搬入手順とは逆の手順にて搬送が行われる。
金型DEは、一組の固定金型DE1と可動金型DE2の組み合わせからなる。固定金型DE1と可動金型DE2を区別する必要がない場合には金型DEと総称する。
【0017】
金型搬送装置1Aの基本的な機能は以上の通りであるが、金型搬送装置1Aは搬送駆動力(以下、単に駆動力ということがある)を金型の底面に加える第1搬送機構20と金型の背面に負荷する第2搬送機構40Aとを備える。以下、射出成形機100の概要について説明した後に、金型搬送装置1Aを具体的に説明する。
【0018】
[射出成形機100]
金型搬送装置1Aが適用される射出成形機100の主要な構成要素を説明する。
射出成形機100は、型締装置110と射出装置120を備えている。
型締装置110は、固定金型DE1が取り付けられる固定型盤111と、可動金型DE2が取り付けられる可動型盤113と、を備える。固定型盤111に取り付けられる固定金型DE1と可動型盤113に取り付けられる可動金型DE2の間に成形品に対応するキャビティが形成され、このキャビティに射出装置120から溶融状態の樹脂を射出することにより成形品が得られる。射出成形の際に固定金型DE1と可動金型DE2の間に型締め力を与えるために、型締装置110は固定型盤111と可動型盤113を貫通する複数のタイバー115および油圧シリンダなどの図示を省略する駆動源を備えている。固定型盤111と可動型盤113の間には固定金型DE1および可動金型DE2が配置、固定される金型配置領域117が構成される。本実施形態においては、金型DEは固定金型DE1と可動金型DE2からなる一組の金型DEを例示するが、所謂ファミリーモールド成形等の複数のキャビティあるいは複数の金型を用いて成形を行うために、固定型盤111および可動型盤113に複数組の固定金型DE1と可動金型DE2からなる金型DEを取り付けてもよい。
【0019】
射出装置120は、固体状の樹脂原料を加熱および溶融する加熱シリンダ121と、加熱シリンダ121で得られる溶融状態の樹脂材料を固定金型DE1と可動金型DE2の間のキャビティに向けて吐出する射出ノズル123と、を備える。加熱シリンダ121の内部には、供給される樹脂原料を混錬、溶融するための図示が省略されるスクリュが設けられる。また、加熱シリンダ121の周囲には、内部に供給される樹脂原料を加熱するためのヒータが設けられる。ヒータにより樹脂原料を加熱するとともにスクリュを回転させることにより、固体状の樹脂原料は射出成形に供されるように加熱シリンダ121の内部で溶融される。金型搬送装置1Aが適用される対象は射出成形機100に限るものではなく、重量物としての金型の交換が必要なダイカストなどの鋳造装置、押出プレス装置に金型搬送装置1Aを適用できる。
【0020】
[金型搬送装置1Aの全体構成:図1図2
金型搬送装置1Aは、図1および図2に示すように、搬送テーブル10の搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて金型DEが搬送され、または、金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて金型DEが搬送される搬送テーブル10を備える。また、金型搬送装置1Aは、搬送テーブル10において、その底面SSを介して金型DEを載せながら搬送方向Xに駆動力を負荷して搬送する第1搬送機構20を備える。さらに、金型搬送装置1Aは、金型DEの底面SSから鉛直方向V(重力方向に対して逆方向)に離れた位置で金型DEに搬送方向Xに駆動力を負荷して搬送する第2搬送機構40Aを備える。なお、固定金型DE1と可動金型DE2を区別する必要がない場合には、両者が金型DEと総称される。
金型搬送装置1Aにおいて、図1および図2に示すように、搬送方向X、幅方向Yおよび高さ方向Zが定義される。本実施形態における方向とは、二つの向きを含む総称である。例えば、搬送方向Xは、搬入・搬出位置19から金型配置領域117への向き(X1)と金型配置領域117から搬入・搬出位置19への向き(X2)とを含む。
【0021】
[搬送テーブル10:図1図2
搬送テーブル10は、第1搬送機構20と第2搬送機構40Aを備える。金型搬送装置1Aは、第1搬送機構20と第2搬送機構40Aを同時に駆動させながら金型DEを協働して搬送テーブル10の上を搬送する。
【0022】
[第1搬送機構20:図1図2
第1搬送機構20は、駆動源により自転する回転体の一例であるローラに金型DEをその底面SSを介して載せながら金型DEを搬送する回転体駆動機構からなる。
第1搬送機構20は、図1および図2に示すように、搬送方向Xにそれぞれが間隔を空けて並ぶ搬送ローラ21と、それぞれの搬送ローラ21の幅方向Yの一方端に搬送ローラ21と同軸上に固定されるスプロケット23と、を備える。
それぞれの搬送ローラ21は、回転可能に搬送テーブル10にその両端が支持される。また、搬送ローラ21は、載せられる金型DEの荷重が負荷されても耐えられるように、材質、寸法が特定される。搬送ローラ21の一部を遊転ローラに置き換えることもできる。
【0023】
第1搬送機構20は、それぞれのスプロケット23に掛け渡される無端状のローラ駆動チェーン25と、ローラ駆動チェーン25を周回移動させる第1駆動源27と、を備える。
第1駆動源27は正転および逆転が可能な例えば電動モータ(第1電動モータ)から構成される。図1には矢印で示される第1駆動源27が正転される例が示されている。第1駆動源27が正転すると、第1搬送機構20は金型DEを金型配置領域117に向けて向きX1に搬送することができる。第1駆動源27が逆転すると、第1搬送機構20は金型DEを金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて向きX2に搬送することができる。いずれの搬送においても、金型DEは搬送ローラ21に載せられており、搬送ローラ21による駆動力がその底面SSに加えられる。
【0024】
金型DEが載せられる搬送ローラ21の外周面に大荷重が加わっても高剛性かつ回転が容易なローラ駆動機構を第1搬送機構20に採用することにより、大重量物である金型DEを重力方向から直に載せて支えていても、搬送ローラ21の回転に支障を及ぼすほどの屈曲変形が発生することはなく、金型DEの搬送方向への移動を容易に行うことができる。
なお本実施形態における搬送ローラ21は金型DEを載せる外周面が一例として平坦であるが、本発明におけるローラはこれに限らない。例えば、外周面に歯が形成されるチェーン駆動機構を構成するスプロケットのように、外周面に凹凸が形成されるローラを自転する回転体として用いてもよい。金型DEを搬送するローラが外周面に凹凸を有していれば、金型DEに備えられた図示しない断続的な溝または孔と外周面の凹凸が係止されることで搬送時の搬送ローラ21における金型DEの滑りを防止できる。
また、ここでは単純に搬送ローラ21に載せて他の機械的な手段で把持するなどの拘束をしないことを前提としているが、本発明における「載せる」とは金型DEが機械的に拘束される場合を含んでいる。例えば、金型DEの底面SSの浮き上がりを抑えるなどの鉛直方向Vに緩く拘束される場合などである。
【0025】
[第2搬送機構40A:図1図2
次に、第2搬送機構40Aは、駆動源により進退移動するスネークチェーンを用いて金型DEを搬送するチェーン駆動機構からなる。第2搬送機構40Aは、幅方向Yの中央において、搬送ローラ21に載せられる金型DEに駆動力を加える。本実施形態において第2搬送機構40Aはスネークチェーンを例示するが、スネークチェーンに限ることなく巻き取り可能で且つ軸方向に推力を伝達できる部材であれば支障ない。
【0026】
第2搬送機構40Aは、図1および図2に示すように、スネークチェーン41と、スネークチェーン41の一方端において関わりスネークチェーン41を進退移動させる第2駆動源47と、スネークチェーン41の他方端に設けられる金型DEに着脱自在な接合片49と、を備える。接合片49は、例えばボルト・ナットなどの締結手段により金型DEに対して接合される。なお、スネークチェーン41において第2駆動源47と関わる側を後といい、接合片49が設けられる側を前ということにする。
【0027】
スネークチェーン41は、図示を省略するチェーンガイドに沿って進退移動可能とする。スネークチェーン41の前側は第2駆動源47により回転可能とされるスプロケット46に掛け渡されている。スプロケット46が正転または逆転されると、掛け渡されているスネークチェーン41がスプロケット46に巻き出されまたは巻き取られる。この巻き出しまたは巻き取られに対応してスネークチェーン41が進退移動すると、スネークチェーン41が屈曲することなく第2駆動源47による推力が伝達され、重量物である金型DEを向きX1または向きX2に移動させることができる。
スネークチェーン41は、一例として、外リンク42と内リンク43の2種類のリンク要素を交互に組み合わせて連結されている。
【0028】
第2駆動源47は、前述した第1駆動源27と同様に、正転および逆転が可能な例えば電動モータ(第2電動モータ)から構成される。正転および逆転による第2駆動源47が金型DEを搬送する向きも第1駆動源27と同じである。つまり、第2駆動源47が正転すると、第2搬送機構40Aは金型DEを金型配置領域117に向けて搬送することができ、第2駆動源47が逆転すると、第2搬送機構40Aは金型DEを金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けて搬送することができる。いずれの向きX1、X2への搬送においても、搬送ローラ21に載せられている金型DEには、その背面BSであって搬送ローラ21から高さ方向Zに離れた位置に駆動力が、金型DEと脱着可能な接合片49を介して加えられる。なお、接合片49は幅方向Yおよび高さ方向Zに所定の面積を有しており、接合片49は金型DEの底面SSから高さ方向Zに離れた位置で金型DEに脱着可能に連結される。金型DEと接合片49の脱着手段は、ボルト・ナットなどの締結手段の他、爪や圧縮力による把持、あるいは磁力や吸引による吸着など既知の脱着手段が広く適用される。またスネークチェーン41は接合片49に連結されている。このとき、スネークチェーン41が接合片49に連結する位置は、接合片49の面積の中心が好ましい。
【0029】
[金型DEの搬送動作:図3図4]
次に、図3および図4を参照して、金型搬送装置1Aを用いて金型DEを搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて搬送する動作を説明する。なお、図3の上側の図は金型DEが搬入・搬出位置19に置かれ搬送が開始される状態を示し、図3の下側の図は金型DEが金型配置領域117までの搬送の途中の状態を示している。
【0030】
第1搬送機構20の第1駆動源27を正転させ、かつ、第2搬送機構40Aの第2駆動源47を正転させることによって、金型DEの搬送が開始される。第1搬送機構20と第2搬送機構40Aの二つの搬送機構を備え、かつ、第1搬送機構20による金型DEの搬送速度V20と第2搬送機構40Aによる金型DEの搬送速度V40を同期させる。ここで、第1駆動源27の正転により金型DEを搬送する駆動力をP1(P11,P12)、第2駆動源47の正転による金型DEを搬送する駆動力をP2(P21,P22)とする。駆動力P1および駆動力P2により金型DEは金型配置領域117に向けて搬送が続けられる。
【0031】
金型DEが目的とされる金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源27および第2駆動源47の駆動を停止する。ついで、第2搬送機構40Aの接合片49を金型DEから取り外し、かつ、接合片49が当初の搬入・搬出位置19まで移動するまで第2駆動源47を逆転させる。第1駆動源27および第2駆動源47は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0032】
以上の説明においては、一組の固定金型DE1と可動金型DE2の組み合わせからなる金型DEを搬送する例を説明したが、本実施形態において、固定金型DE1と可動金型DE2を個別に搬送してもよい。例えば、固定金型DE1を先行してあるとすれば、次の金型DEの搬送は搬入・搬出位置19から金型配置領域117に向けた可動金型DE2の搬送である。また、先行する金型DEの搬送が固定金型DE1および可動金型DE2の双方であれば、次の金型DEの搬送は所定数の射出成形を終えた金型DEの交換のための、固定金型DE1および可動金型DE2の金型配置領域117から搬入・搬出位置19に向けた搬送である。
【0033】
〔金型搬送装置1Aによる効果〕
次に、金型搬送装置1により得られる効果について説明する。
[搬送動作における金型DEの挙動に対する効果:図5
金型DEの搬送の過程において、図5(a),(b)に示すように、第1搬送機構20による第1-1駆動力P11または第1-2駆動力P12だけが加えられているものとすると、第1-1駆動力P11または第1-2駆動力P12が金型DEに伝達されるのは搬送ローラ21に接する金型DEの底面SSである。ここで、第1-1駆動力P11は加速時を示し、第1-2駆動力P12は減速時を示している。
【0034】
このように水平方向Hに第1-1駆動力P11を金型DEの底面SSに加えると、加速時においては第1-1駆動力P11が金型DEの重心Gに作用する荷重W11となって金型DEに図中の時計回りのモーメントM11が生じる。特に、金型DEを高速で搬送しようとして大きな第1-1駆動力P11を金型DEの底面SSに加えると、図5に示すように、背の低い金型DE(図5(a))よりも背の高い金型DE(図5(b))に作用するモーメントM11が大きくなる。特に、第1駆動源27の駆動を開始して第1-1駆動力P11を加えた直後の加速を伴う際に、または第1駆動源27の駆動中に加速するために駆動力P11を増大させる際に、金型DEの搬送方向Xの前面FSの側は搬送ローラ21から浮き上がるおそれがある。
【0035】
逆に減速時においては、第1-2駆動力P12は金型DEの重心Gに作用する加速時とは逆向きの荷重W12となって金型DEに反時計回りのモーメントM12が生じる。特に、高速で搬送中の金型DEを減速するために制動力として大きな第1-2駆動力P12を金型DEの底面SSに加えると、背の低い金型DE(図5(a))よりも背の高い金型DE(図5(b))に作用するモーメントM12が大きくなる。特に、第1駆動源27の減速駆動によって制動力として第1-2駆動力P12を加えた際に、金型DEの搬送方向Xの背面BSの側は搬送ローラ21から浮き上がるおそれがある。
【0036】
加速時または減速時における浮き上がりはいずれ収まるが、浮き上がった金型DEの底面SSが搬送ローラ21に着地すると衝撃が発生するとともに衝突音が発生してしまう。また、金型DEが着地したときの衝撃の程度によっては、金型DEの位置ずれや搬送ローラ21の破損を起こすことがある。
【0037】
ところが、金型搬送装置1Aは、第1搬送機構20に加えて第2搬送機構40Aを備える。第2駆動源47が正転している間において、図5(c)に示すように、第2搬送機構40Aの接合片49が金型DEの背面BSを第2-1駆動力P21により押す。この背面BSを押す第2-1駆動力P21により重心Gに作用する荷重W21は、第1-1駆動力P11により重心Gに作用する荷重W11とは逆向きである。したがって、荷重W21は時計回りのモーメントM11を打ち消す反時計回りのモーメントM21を生じさせる。そして、モーメントM21の発生要因である第2-1駆動力P21は、モーメントM11の発生要因である第1-1駆動力P11と同様に金型DEの搬送のためのものであるから、モーメントM11を打ち消して金型DEの前面FS(前端面)の浮き上がりを防止するに足りる大きさを有している。
図5(c)は加速時の例を示しているが、減速時には図5(c)と逆向きの荷重、駆動力およびモーメントが生じることにより、金型DEの背面BS(後端面)の浮き上がりを防止できる。
【0038】
図5(c)には三つの第2-1駆動力P21が記載されているが、いずれの位置の第2-1駆動力P21であってもモーメントM21を発生させることができる。モーメントM11に対向するだけであれば、金型DEの底面SSから最も離れる第2-1駆動力P21はその値を小さくできる。
一般的に金型DEは大重量物であるので、増速のための高加速度を得られるような大きな第1-1駆動力P11を負荷した際に発生するモーメントM11であっても、モーメントM11の大部分は金型DEの重量による慣性により打ち消される。このため打ち消されずに残ったモーメントM11に対向させる第2-1駆動力P21は大推力である必要はない。また、第2-1駆動力P21が第1-1駆動力P11よりも大きい場合、金型DEの搬送推力は第2-1駆動力P21が主となるため、スネークチェーン41に発生する金型DEからの反力が大きくなる。この場合、鋼製のスネークチェーン41の各ピン部で屈曲が生じ推力を低下させるおそれがあるため、加速時にはP11>P21であることが好ましい。P11>P21を前提として、P21=(0.1~0.3)×P11の範囲で浮き上がりを防止できる。この第1-1駆動力P11および第2-1駆動力P21の関係は、第2実施形態における加速時にも当てはまる。
【0039】
なお、高速で移動している金型DEを減速する場合、大重量物である金型DEは慣性が大きいため金型DEを減速するための制動力は大きな力が必要となる。また、金型DEを減速するために駆動力P2は金型DEの慣性力とは逆向き、つまり加速時とは逆向きの力が必要となる。つまり、スネークチェーン41は接合片49を介して金型DEと連結していることから、金型DEの慣性力によってスネークチェーン41には引張方向の力が作用することになる。この場合、スネークチェーン41は引き延ばされる状態となるため、鋼製のスネークチェーン41の各ピン部で屈曲が発生することはないので、第1-2駆動力P12よりも第2-2駆動力P22が大きくてもよい。また、高速からの急減速時は慣性力が大きいため制動力である大きな駆動力P12を減速側に負荷した際には、慣性力により金型DEが搬送される向きに倒れるような大きなモーメントM22が発生する。この大きなモーメントM22に打ち勝って金型DEの搬送方向の背面BSにおける浮き上がりを防ぐためには、P12≦P22であることが好ましい。この第1-2駆動力P12および第2-2駆動力P22の関係は、第2実施形態における減速時にも当てはまる。
【0040】
[搬送動作の高速化に対する効果]
射出成形機100により樹脂製品の生産について高い効率が求められるところ、金型DEの搬送および交換に要する時間を短くすることが求められる。これに対応するには金型DEの搬送を高速度化すればよいが、金型搬送装置1はこの搬送の高速度化に適している。
例えば、単一の搬送機構、例えば第1搬送機構20により金型DEを搬送するものとすると、搬送の高速度化を図るには、第1搬送機構20の第1駆動源27を高出力化する必要があり、そのためには第1駆動源27を大型化する必要がある。この大型化は設置スペースを増大させるため、設置スペースの増大に見合う敷地を確保しなければならない。また、第1駆動源27の大型化はその構成部材の大型化を招くが、大型の構成部材は市販のものが使えずに個別の注文が必要となるなど構成部材のコスト増大を招く。
【0041】
ところが、金型搬送装置1Bは、第1搬送機構20の第1駆動源27と第2搬送機構40Aの第2駆動源47という二つの駆動源を備え、金型DEの搬送時には第1駆動源27の駆動力P1と第2駆動源47の駆動力P2を同時に生じさせる。第1駆動源27および第2駆動源47が大型化されていない小型のものであっても両者が協働することによって、金型DEの搬送の高速度化を賄うことができる。しかも、第1駆動源27および第2駆動源47はそれぞれ、市販の部材を使用する小型のもので足りるため、部材コストや短期間での搬送装置の製造が可能となる。また、同時に設置スペースの増大を招くことがない。
【0042】
[金型DEの搬送精度の向上についての効果]
金型搬送装置1Aは、第1搬送機構20と第2搬送機構40Aの二つの搬送機構を備え、かつ、第1搬送機構20による金型DEの搬送速度V20と第2搬送機構40Aによる金型DEの搬送速度V40を前述したように同期させる。そうすることにより、金型DEが第1搬送機構20の搬送ローラ21の上で滑ることが防止され、搬送ローラ21による搬送力とスネークチェーン41の搬送力のそれぞれが損失することなく金型DEの搬送に費やされる。したがって、金型搬送装置1Aによれば、金型DEの搬送速度および搬送位置を高速に且つ高精度に制御することができる。
【0043】
[チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果]
第2搬送機構40Aにスネークチェーン41を用いることにより、第2搬送機構40Aの省スペース化することができる。スネークチェーン41は巻き取りまたは巻き出しが可能であることから、長尺物であるチェーンを丸めてコンパクトに納めることができる。またスネークチェーン41に代えて巻き取りまたは巻き出しが可能で且つ搬送方向Xに推力を伝達できる機構であっても同様の効果が得られる。
【0044】
[第2実施形態:図6図7
次に、第2実施形態に係る金型搬送装置1Bについて、図6を参照して説明する。金型搬送装置1Aの第2搬送機構40Aはチェーン駆動機構を用いて金型DEを進退移動させるのに対して、金型搬送装置1Bにおける第2搬送機構40Bは流体圧によるピストン・シリンダ機構を用いて金型DEを進退移動させる。第1搬送機構20については、金型搬送装置1Bと金型搬送装置1Aは同じ構成を備えており、図6および図7に、第1実施形態と同じ符号を付すことで説明を省略する。
【0045】
第2搬送機構40Bは、図6に示すように、搬送テーブル10に設けられるピストン・シリンダ機構50からなる。ピストン・シリンダ機構50は、シリンダ51、シリンダ51の内部を往復移動するピストン・ロッド53、シリンダ51の内部においてピストン・ロッド53の後端に接続されるピストン・ヘッド55と、を備える。ピストン・シリンダ機構50は、油圧または空気圧によりピストン・ロッド53およびピストン・ヘッド55が往復移動する流体圧式の駆動源である。ピストン・シリンダ機構50は、シリンダ51の外部においてピストン・ロッド53の先端に設けられる接合片57を備える。接合片57は、一例として金型DEを搬送する際に金型DEの背面BSに吸着する。接合片57と金型DEの連結手段は第1実施形態と同様の手段を適用できる。
【0046】
[金型DEの搬送動作:図7]
図7を参照して、金型搬送装置1Bを用いて金型DEを搬入・搬出位置19から射出成形機100の金型配置領域117に向けて搬送する動作を説明する。なお、図7の上側の図は金型DEが搬入・搬出位置19に置かれ搬送が開始される状態を示し、図7の下側の図は金型DEが金型配置領域117までの搬送の途中の状態を示している。
【0047】
第1搬送機構20の第1駆動源27を正転させ、かつ、第2搬送機構40Bのピストン・シリンダ機構50のピストン・ロッド53を前進させることによって、金型DEの搬送が開始される。
【0048】
金型DEが目的とされる金型配置領域117まで搬送されると、第1駆動源27およびピストン・シリンダ機構50の動作を停止する。ついで、第2搬送機構40Bの接合片57を金型DEから取り外し、かつ、接合片57が当初の搬入・搬出位置19まで移動するまでピストン・シリンダ機構50のピストン・ロッド53を後退させる。第1駆動源27およびピストン・シリンダ機構50は、次の金型DEの搬送まで駆動が停止される。
【0049】
〔金型搬送装置1Bによる効果〕
金型搬送装置1Bによれば、チェーン駆動機構により金型DEを搬送する効果を除いて、金型搬送装置1Aと同様の効果が奏されるのに加えて以下の効果が奏される。
第2搬送機構40Bにピストン・シリンダ機構50を用いることにより、金型DEの背面BSに作用させる金型搬送力を効率よく金型DEに負荷することができる。ピストン・シリンダ機構50は推力方向の剛性が高く、推力方向以外の方向(例えば推力方向に対して垂直方向)に屈曲するなどして油圧による推力を損失することがなく、金型DEに負荷することができる。
【0050】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、第1実施形態および第2実施形態において、第2搬送機構40A,40Bは、向きX1に金型DEを搬送する際に金型DEの背面BSを押す第2-1駆動力P21を加えるか、または、向きX2に金型DEの搬送速度を減速する際に金型DEの背面BSを引っ張る第2-2駆動力P22を加えるが、本発明はこれに限らない。つまり、向きX1に金型DEを搬送する際に金型DEの前面FSに接合片49,57を取り付けて引っ張る第2-1駆動力P21を加えるか、または、向きX2に金型DEの搬送速度を減速する際に金型DEの前面FSに接合片49,57を取り付けて押す第2-2駆動力P22を加えることもできる。
【0051】
また、第2搬送機構について、チェーン駆動機構、流縦圧駆動機構に限らず、ボールネジ機構や台形ねじ機構などモータ回転を直線方向に変換する機構を用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B 金型搬送装置
10 搬送テーブル
19 搬入・搬出位置
20 第1搬送機構
21 搬送ローラ
23 スプロケット
25 ローラ駆動チェーン
27 第1駆動源
40A,40B 第2搬送機構
41 スネークチェーン
42 外リンク
43 内リンク
46 スプロケット
47 第2駆動源
49 接合片
49,57 接合片
50 ピストン・シリンダ機構
51 シリンダ
53 ピストン・ロッド
55 ピストン・ヘッド
100 射出成形機
110 型締装置
111 固定型盤
113 可動型盤
115 タイバー
117 金型配置領域
120 射出装置
121 加熱シリンダ
123 射出ノズル
DE 金型
DE1 固定金型
DE2 可動金型
FS 前面
BS 背面
SS 底面
G 重心
M11,M12,M21 モーメント
P11 第1-1駆動力
P12 第1-2駆動力
P21 第2-1駆動力
W11,W12,W21 荷重
V 鉛直方向
H 水平方向
X 搬送方向
Y 幅方向
Z 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7