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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157107
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】異臭検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20231019BHJP
   G08B 21/12 20060101ALI20231019BHJP
   G08B 21/14 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01N27/00 K
G08B21/12
G08B21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066795
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】林 亮治
(72)【発明者】
【氏名】木村 章紘
【テーマコード(参考)】
2G060
5C086
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB15
2G060AB26
2G060AE19
2G060AF07
2G060BD08
2G060HC15
2G060KA01
5C086AA02
5C086AA38
5C086BA17
5C086CB11
5C086DA08
5C086DA18
5C086EA11
(57)【要約】
【課題】監視する対象物の外部の環境を加味して、的確に異臭検知を行うことができる異臭検知装置を提供すること。
【解決手段】筐体SCの内側に設けられる内側ガスセンサ-10と、筐体SCの外側に設けられる外側ガスセンサ-20と、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との検知結果を比較して差異を検出し、該差異に基づいて筐体SC内における異臭発生の有無を判定する判定部30とを備え、筐体SCの外部環境を踏まえて、筐体SC内において異臭発生があったか否かを的確に判定できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の内側に設けられる内側ガスセンサ-と、
前記筐体の外側に設けられる外側ガスセンサ-と、
前記内側ガスセンサ-と前記外側ガスセンサ-との検知結果を比較して差異を検出し、該差異に基づいて前記筐体内における異臭発生の有無を判定する判定部と
を備える異臭検知装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記検知結果を比較して、変化率の差異が予め定められた閾値を超えたか否かによって、異臭発生の有無を判定する、請求項1に記載の異臭検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記検知結果を比較して、所定以上の差異が一定時間以上継続した場合に、異臭発生があったものと判定する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の異臭検知装置。
【請求項4】
換気を行うための吸気口と排気口とを備え、
前記判定部は、換気時における前記検知結果に基づき判定を行う、請求項1に記載の異臭検知装置。
【請求項5】
前記内側ガスセンサ-は、換気に伴って生じる気体の流路について、前記筐体内にある監視対象よりも下流側に位置する、請求項4に記載の異臭検知装置。
【請求項6】
前記内側ガスセンサ-は、前記筐体の内側のうち、前記排気口に設置されている、請求項5に記載の異臭検知装置。
【請求項7】
前記外側ガスセンサ-は、前記筐体の外側のうち、前記吸気口に設置されている、請求項4~6のいずれか一項に記載の異臭検知装置。
【請求項8】
前記内側ガスセンサ-と前記外側ガスセンサ-とは、同一のセンサーである、請求項1に記載の異臭検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視する対象物から異臭が発生しているか否かを検知する異臭検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、キュービクルの保安点検を自動化する保安システムとして、臭気を検知する臭気検知部(臭気検知センサー)を有し、監視対象であるキュービクル内の異常を臭気検知センサーの値から検知するものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1では、キュービクルを設置した外部の環境が異臭検知に影響するような場合に、キュービクル内での異臭検知を的確に行うことができなくなってしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-64384号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、監視する対象物の外部の環境を加味して、的確に異臭検知を行うことができる異臭検知装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するための異臭検知装置は、筐体の内側に設けられる内側ガスセンサ-と、筐体の外側に設けられる外側ガスセンサ-と、内側ガスセンサ-と外側ガスセンサ-との検知結果を比較して差異を検出し、該差異に基づいて筐体内における異臭発生の有無を判定する判定部とを備える。
【0007】
上記異臭検知装置では、内側ガスセンサ-による筐体の内側における検知結果と、外側ガスセンサ-による筐体の外側における検知結果とを比較して検出される差異に基づいて筐体内における異臭発生の有無を判定することで、監視する対象物を含む筐体の外部環境を踏まえて、筐体内において異臭発生があったか否かを的確に判定できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、判定部は、検知結果を比較して、変化率の差異が予め定められた閾値を超えたか否かによって、異臭発生の有無を判定する。この場合、変化率の差異に基づき、迅速かつ的確な判定が可能になる。
【0009】
本発明の別の側面では、判定部は、検知結果を比較して、所定以上の差異が一定時間以上継続した場合に、異臭発生があったものと判定する。この場合、確実な異臭発生の検知ができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、換気を行うための吸気口と排気口とを備え、判定部は、換気時における検知結果に基づき判定を行う。この場合、換気の影響を加味して的確な異臭検知が可能になる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、内側ガスセンサ-は、換気に伴って生じる気体の流路について、筐体内にある監視対象よりも下流側に位置する。この場合、監視対象から発生する異臭を、内側ガスセンサ-において確実に検知できる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、内側ガスセンサ-は、筐体の内側のうち、排気口に設置されている。この場合、内側ガスセンサ-を気体の流路の最下流に配置できるので、筐体内で発生している異臭を、確実に検知できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、外側ガスセンサ-は、筐体の外側のうち、吸気口に設置されている。この場合、筐体の外側から内側に進入する気体について、外側ガスセンサ-において的確に測定できる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、内側ガスセンサ-と外側ガスセンサ-とは、同一のセンサーである。この場合、内側ガスセンサ-と外側ガスセンサ-とでの検知結果を比較して差異を検出するに際して、より精密な測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の異臭検知装置及び監視システムの一構成例について概要を示す概念図である。
図2】(A)及び(B)は、異臭検知装置内の換気の様子を説明するための概念図である。
図3】異臭検知装置の外部環境について説明するための概念図である。
図4】(A)~(C)は、異臭検知の態様について説明するための概念的なグラフである。
図5】異臭検知装置について一構成例を示すブロック図である。
図6】異臭検知装置における一連の動作を説明するためのフローチャートである。
図7】異臭検知装置におけるより具体的な動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図8】異臭検知装置におけるより具体的な動作の別の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】異臭検知装置を利用したキュービクルの収納物を監視対象とする保安点検について一例を説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1等を参照して、一実施形態に係る異臭検知装置について、一例を説明する。図1は、本実施形態の異臭検知装置100及び異臭検知装置100を含む監視システム500の一構成例について、概要を示す概念図である。
【0017】
図1に示すように、異臭検知装置100は、筐体SCの内部について異臭検知を行うべく、筐体SCの各所に各部を取り付けて構成されている。具体的には、異臭検知装置100は、筐体SCの内側に設けられる内側ガスセンサ-10と、筐体SCの外側に設けられる外側ガスセンサ-20と、異臭検知に関する各種処理を行う現場端末TIとを備える。特に、現場端末TIは、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との検知結果を比較して差異を検出し、該差異に基づいて筐体SC内における異臭発生の有無を判定する判定部30を備える、あるいは、判定部30として機能する。また、筐体SCの内部に収納される備品等が、異臭検知における臭いの発生源となり、図中の一例においては、これを、筐体SCの内部に存在する監視対象MOとしている。なお、筐体SCや監視対象MOについてのより具体的な一例について詳しくは後述するが、例えば、各種電源設備が設けられて変電等を行うキュービクル等が想定される。キュービクルについてであれば、キュービクルの外装部材が筐体SCに相当し、外装部材に収納される各種電源設備が監視対象MOに相当する。この場合、監視対象MOとしての各種電源設備において、熱が発生することに伴って、焦げ等に起因する臭いが発生する可能性がある。
【0018】
また、図示の一例における異臭検知装置100は、上記のほか、筐体SC内の換気を行うための設備として、吸気口(通気口)IPと排気口EPとを有している。
【0019】
内側ガスセンサ-10は、典型的には、臭気計測器・臭気センサーで構成され、筐体SCの内部において揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)が発生した場合にこれを検知すべく、センシングを行う。
【0020】
外側ガスセンサ-20は、筐体SCの外部(周辺)において発生するVOCを検知すべく、センシングを行うものであり、典型的一例としては、内側ガスセンサ-10と同一の臭気計測器・臭気センサーで構成することが想定される。
【0021】
現場端末TIは、例えばPC等で構成され、異臭検知に関する各種処理を行うべく、内側ガスセンサ-10や外側ガスセンサ-20に接続されており、これらにおけるセンシング結果を検知結果として受け取って、各種情報処理を行う。ここでは既述のように、判定部30での判定として、内側ガスセンサ-10における検知結果のみならず、外側ガスセンサ-20における検知結果を利用する態様となっている。これにより、異臭検知装置100では、筐体SC内において異臭発生があったか否かについて、より的確な判定ができるようになっている。また、図示の一例では、現場端末TIは、例えば排気口EPとも接続されており、排気口EPが動作中であるか否か、すなわち換気が行われているか否かについても把握できるものとなっている。
【0022】
排気口EPは、詳しい図示を省略するが、例えばファン(換気扇)や排気用ダクト等で構成され、筐体SCの内部の空気を筐体SCの外へ排出する。一方、吸気口IPについては、例えばファン(換気扇)等を設ける構造としてもよいが、これに限らず、壁や天井とに設けた孔のようなものすなわち通気口のようなものまで含めることとする。以上の場合、例えば排気口EPによる排気動作に伴い、吸気口IPから、外部の空気が筐体SCの内部へ進入することで、換気が行われる。換気が行われることで、例えば筐体SCの内部が熱や湿気等を持つような場合に、これを排除又は抑制できる。また、以上のような換気に際して、例えば図2(A)又は図2(B)において矢印AA1に示すような気体の流路が発生することになる。
【0023】
内側ガスセンサ-10は、上記のような換気に伴って生じる気体の流路について、筐体SC内にある監視対象MOよりも下流側に位置し、特に図示の一例では、筐体SCの内側のうち、排気口EPに設置されている。これにより、例えば図2(B)に示すように、監視対象MOにおいて煙MKとともに臭いが発生すると、監視対象MOよりも下流側に位置する内側ガスセンサ-10において、これが検知されるものとなる。
【0024】
一方、外側ガスセンサ-20は、筐体SCの外側のうち、吸気口(通気口)IPに設置されている。この場合、外側ガスセンサ-20は、外部から筐体SCの内部へと進入する気体に含まれる臭気について、確実に検知ができる。言い換えると、この場合、外側ガスセンサ-20は、筐体SCの外部で発生した臭いであって筐体SC内へ入り込もうとする臭い成分を、確実に捉えることができる。
【0025】
判定部30は、既述のように、内側ガスセンサ-10のみならず、外側ガスセンサ-20での検知結果を利用して、異臭検知に関する判定を行う。典型的一例としては、判定部30は、排気口EP等が動作する換気時において、内側ガスセンサ-10での検知結果と、外側ガスセンサ-20での検知結果とを比較し、比較結果に応じて判定を行うことで、検知された異臭が内部に起因するものか、外部から進入したものかを的確に判別できるようにすることが想定される。
【0026】
図1に戻って、監視システム500は、上記のような構成の異臭検知装置100と、中央管理システムMSとで構成されている。監視システム500において、中央管理システムMSは、異臭検知装置100からの情報(検知結果)を、無線又は有線通信を介して受け付けることで、少なくとも、監視対象(ここでは、筐体SCとその内部)についての異臭検知の結果に基づく異常発生の有無についての監視を可能としている。
【0027】
ここで、筐体SCの内部について異臭検知を行う上記以外の態様として、筐体SCの内部についてだけセンシングを行う、つまり外側ガスセンサ-20を設けず、内側ガスセンサ-10のみとし、これにより異臭検知を行えば足りる、という考え方も想定される。しかしながら、図3において典型的一例として示すように、筐体SCが例えば屋外に設置されるような場合には、外部環境により誤検知が生じてしまう可能性がある。より具体的に説明すると、筐体SCの近隣(周辺)において、例えば焚火BFが行われていたり、外壁塗装等のペンキ塗りPAが行われていたりする等の場合に、これらから揮発性のガスが発生し、発生したガスが流入気体IGに混ざって、吸気口IPから筐体SCの内部に進入し、矢印AA1に示すような気体の流路に沿って筐体SCの内部を通過し、排出気体EGとして排気口EPから排出される、といったことになる可能性がある。このような場合、筐体SCの内部では異常が発生していないにもかかわらず、内側ガスセンサ-10において、屋外の発生源に起因する異臭が筐体SCの内部のものとして検知されてしまうことになる(臭気検知)。つまり、仮に、内側ガスセンサ-10のみで異臭検知を行うと、異常判定において、外部環境に基づく誤判定(誤検知)が生じる可能性がある。特に、上記のような換気設備を利用した場合には、誤判定の可能性が高まると考えられる。そこで、本実施形態では、内側ガスセンサ-10に加え、外側ガスセンサ-20を設け、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との検知結果を比較した上で判定を行う態様とすることで、かかる事態を回避している。すなわち、図3に例示したような態様であれば、焚火BFやペンキ塗りPA等に起因する異臭発生が、外側ガスセンサ-20においても検知されることになる(臭気検知)。このような場合に、判定部30において、当該臭気検知は、筐体SCの内部で発生したものではなく、筐体SCの外で発生したものとして取り扱うことが可能となる。
【0028】
以下、図4(A)~図4(C)として示すグラフを参照して、内側ガスセンサ-10及び外側ガスセンサ-20におけるセンシング(異臭検知の態様)について、一例を説明する。
【0029】
まず、図4(A)は、異臭が検知されない通常時の場合と、異臭が検知された異臭発生時となる場合とについて一例を示すものである。各グラフにおいて、横軸は、時間であり、縦軸は、センサーによる出力値の大きさ(センサー出力)を示すものである。
【0030】
センサー出力については、種々のものが想定されるが、例えば、センサーにおいて電流を流し、その際の電流の抵抗値を出力値とすることが想定される。この場合、センサーの検査可能範囲内にある空気が清浄な状態であれば、電流が流れにくくなり、抵抗値(出力値)は大きくなるが、空気中にVOCが含まれてくると、電流が流れやすくなり、抵抗値(出力値)は小さくなる。図に示す例のうち、状態α1では、実線で示すグラフの曲線C1が、所定以上の値を維持しており、このような状態であれば、異臭が発生していない通常の状態であることになる。一方、状態β1では、グラフの曲線C1が、破線で示す通常時と比べて、所定以下の値となる時間が一定以上継続しており、このような場合、異臭が発生しているものとして検知されることになる。なお、異臭発生であるか否かについては、上記のような抵抗値や継続時間について予め閾値を設定し、これに基づき判定する、といった態様とすることが想定される。
【0031】
本実施形態では、例えば図4(B)及び図4(C)に示すように、内側すなわち内側ガスセンサ-10での測定結果が変化した場合に、外側すなわち外側ガスセンサ-20での測定結果の変化の様子を確認し、これらの間での差異を比較して、差異の大小に基づいて、筐体SCの内部で異臭が発生しているか否かを検知している。より具体的に説明すると、まず、図4(B)に示すように、内側ガスセンサ-10において、状態α2から状態β2に変化して、異臭発生が検知された場合に、外側ガスセンサ-20においては、状態α3から状態β3に示すように変化が見られない場合、内側ガスセンサ-10の状態β2と外側ガスセンサ-20の状態β3との間で検知結果に大きな差異が生じていることになる。このような場合には、判定部30は、筐体SCの内部で異臭が発生したものとして取り扱い、異常ありと判定する。これに対して、図4(C)に示す一例では、内側ガスセンサ-10において、状態α4から状態β4に変化して、異臭発生が検知された場合に、外側ガスセンサ-20においても、状態α5から状態β5のような変化があり、内側ガスセンサ-10の状態β4と外側ガスセンサ-20の状態β5との間で、検知結果に差異が生じないか、あるいはあっても小さなものとなっている。このような場合には、筐体SCの内部ではなく、外部において異臭が発生したものとして取り扱い、異常判定をしないものと判定することができる。なお、上記のような出力値(抵抗値)の差異について予め設定した閾値に基づき判定することができる。また、何をもって差異があるとするかについては、種々の態様が想定されるが、例えば検知結果としての出力値(抵抗値)についての比較として、変化率(変化態様)の差異について予め閾値を定めておき、判定部は、検知結果を比較して、変化率の差異が予め定められた閾値を超えたか否かによって、異臭発生の有無を判定する、といった態様とすることができる。例えば内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20とについて同一のセンサーを採用した場合であっても、例えばセンサーごとの個体差(感度の差)等に起因して、出力値(例えば抵抗値)について差異を生じる可能性があるが、異臭発生が検知される場合とされない場合とでの変化率(変化態様)については、同様となると考えられる。そこで、変化率(変化態様)の差異を判定基準とすることで、より的確な判定が可能になると考えられる。
【0032】
以下、図5として示すブロック図を参照して、上記のような判定を行うための一構成例について説明する。特に、ここでは、判定部30を備える、あるいは、判定部30として機能する現場端末TIの一構成例について詳しく説明する。
【0033】
図示のように、また、既述のように、判定部30を含む現場端末TIは、筐体SCに設けられた内側ガスセンサ-10や外側ガスセンサ-20、さらには排気口EPと接続され、これらの動作状況を把握し、また、必要に応じて、これらの動作制御を行う。具体的には、例えば内側ガスセンサ-10や外側ガスセンサ-20に対しては、定期的にセンシング動作に対応する検知結果を出力させ、また、排気口EPについては、稼働中であるか否かを確認可能としている。このため、現場端末TIは、各部からの情報を受け付けるとともに、必要に応じて各種指令信号を出力するインタフェース部IFを有する。
【0034】
また、現場端末TIは、例えばPC等で構成され、上記のほか、主制御部50と、検知データ格納部DD1と、閾値データ格納部DD2と、外部通信部60とを備える。
【0035】
主制御部50は、CPU等で構成され、上記各部と接続され、必要なデータやプログラム等を読み出して、各種動作処理を行う。ここでは、主制御部50が判定部30としても機能し、また、判定部30においては、上述した内側ガスセンサ-10における検知結果と外側ガスセンサ-20における検知結果とに基づき筐体SCの内側と外側とでの差異を比較する内外差比較部31を含むものとする。
【0036】
検知データ格納部DD1や閾値データ格納部DD2については、例えば各種ストレージデバイス等で構成され、検知データ格納部DD1には、内側ガスセンサ-10や外側ガスセンサ-20における検知結果に関するデータ(検知データ)が格納される。閾値データ格納部DD2には、上述した予め設定されている各種閾値に関するデータ(閾値データ)が格納されている。すなわち、閾値データ格納部DD2には、内側ガスセンサ-10あるいは外側ガスセンサ-20の設置箇所周辺で異臭が発生しているか否か、さらに、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との間で検知結果に差異があるか否か、についての判定基準となる閾値の情報が格納されている。
【0037】
外部通信部60は、外部設備に対して、情報送信を行うためのものであり、ここでは、図1に例示した中央管理システムMSに対して、判定結果についての情報を送信する。
【0038】
上記態様の現場端末TIでは、まず、インタフェース部IFを介して、内側ガスセンサ-10及び外側ガスセンサ-20からセンシングについての検知結果を取得すると、主制御部50は、これらを検知データ格納部DD1に格納するとともに、判定部30として、さらには内外差比較部31として、必要に応じて出力値についての比較を行う。この際、閾値データ格納部DD2に格納された各種閾値を参照し、判定部30は、当該閾値に基づいて異臭発生の有無や、異常ありの判定とすべきか否かを決定する。
【0039】
主制御部50は、判定部30での判定結果について、外部通信部60を介して、外部へ送信する。
【0040】
なお、上記のような判定を行うに際して、主制御部50は、排気口EPが動作しているか否かすなわち換気が行われているか否かを加味するものとしてもよい。
【0041】
ここで、以上に関して、現場端末TIとなるべきPCに、例えば上記のような一連の動作を行うためのプログラムを組み込んでおく、つまり、上記プログラム等に相当するPCアプリをインストールすることで、当該PCを現場端末TIとして構成することができる。
【0042】
以下、図6として示すフローチャートを参照して、異臭検知装置100における一連の動作について、概要を説明する。
【0043】
まず、現場端末TIの主制御部50により、必要に応じて、筐体SCに設けた内側ガスセンサ-10及び外側ガスセンサ-20に対して指令がなされる等により、外側ガスセンサ-20から外側ガスセンサ-20の周辺についての環境に応じた値が出力され(ステップS1a)、また、内側ガスセンサ-10の周辺についての環境に応じた値が出力される(ステップS1b)。
【0044】
次に、ステップS1a及びステップS1bにおいて出力された値をインタフェース部IF介して受けた主制御部50は、判定部30の内外差比較部31において、これらの出力値を比較する(ステップS2)。なお、ステップS1a及びステップS1bの動作については、ステップS2以後の動作状況に関わらず、一定の間隔で継続的に行われる。
【0045】
ステップS2での比較から、出力値の差が予め定めた閾値以下である場合、主制御部50において、判定部30は、筐体SC内で異臭は発生していないと判定し、引き続き筐体SCに関する監視を続ける(ステップS3)。すなわち、ステップS1a及びステップS1bによる出力値に基づく監視が継続される。
【0046】
一方、ステップS2での比較から、出力値の差が予め定めた閾値よりも大きい場合、主制御部50において、判定部30は、外部通信部60を介して、筐体SC内で異臭が発生したと判定し、その旨を中央管理システムMSに通知する(ステップS4)。なお、通知後、判定部30は、ステップS3の場合と同様、引き続き筐体SCに関する監視を続ける。
【0047】
以下、図7として示すフローチャートを参照して、異臭検知装置100におけるより具体的な動作の一例を説明する。ここでは、判定部30における処理動作を中心に、一連の処理について説明する。ここでは、一例として、まず筐体SC内で異臭発生が検知されたか否かを確認し、筐体SC内で異臭発生が検知されたと判断された場合に、筐体SCの外部状況との比較を行う、という態様とする場合について説明する。
【0048】
まず、判定部30は、センシングによる検知結果のうち、内側ガスセンサ-10における出力値について、所定以上の変化があったか否かを検知する(ステップS101)。すなわち、判定部30は、図4に例示したような出力値の大きな変化(数値の低下)つまり異臭の発生が内側ガスセンサ-10においてあったか否かを確認する。
【0049】
ステップS101において、出力値の変化が確認されない場合(ステップS101:No)、判定部30は、特段の処理を行うことなく、引き続きステップS101の確認動作を繰り返す。
【0050】
一方、ステップS101において、出力値の変化が確認された場合(ステップS101:Yes)、判定部30は、センシングによる検知結果のうち、外側ガスセンサ-20における出力値を確認し(ステップS102)、内側ガスセンサ-10での検知結果と、外側ガスセンサ-20での検知結果とについて、差異があるか、つまり変化率に予め定められた閾値以上の差が生じているか否かを確認する(ステップS103)。
【0051】
ステップS103において、閾値以上の差が無ければ(ステップS103:No)、判定部30は、筐体SC内での異臭発生ではないものとして取り扱い、特段の処理を行うことなく、ステップS101からの確認動作に戻り、これを繰り返す。
【0052】
一方、ステップS103において、閾値以上の差があった場合(ステップS103:Yes)、判定部30は、筐体SCの外ではなく筐体SC内で異臭発生があったものとして取り扱い、さらに、上記のような差のある状態が、一定時間以上経過しているか否かを確認する(ステップS104)。
【0053】
ステップS104において、一定時間以上経過していなければ(ステップS104:No)、ステップS101からの動作に戻って監視を続け、ステップS104において、一定時間以上経過していれば(ステップS104:Yes)、判定部30は、異常判定として取り扱う(ステップS105)。つまり、判定部30は、検知結果を比較して、所定以上の差異が一定時間以上継続した場合に、異臭発生があったものと判定する。この場合、主制御部50は、外部通信部60を介して、異常判定となった旨を外部へ出力する(ステップS106)。
【0054】
なお、以上については、一例であり、これに限らず種々の変形態様が可能であり、例えばステップS104における一定時間については、検知において種々の要因で生じ得るタイムラグや一時的な異臭の発生等に基づいて適宜定められるが、一定時間をゼロとするすなわちステップS104を設けない態様とすることも考えられる。
【0055】
以下、図8として示すフローチャートを参照して、異臭検知装置100におけるより具体的な動作の別の一例を説明する。ここでは、排気口EP等により筐体SCの内部について換気を行うか否かを加味して、異臭発生についての判定を行う場合の一態様について説明する。換気を行うことで、筐体SCの内部における温度や湿度の変化を抑えられ、例えばセンシングの性能を維持できる等の効果が期待される反面、図3等を参照して説明したように外気が進入することに伴う外部環境に起因する異臭発生の影響が大きくなるおそれがある。見方を変えると、排気口EPによる換気を行っていない間は、外部環境による影響が無いあるいは少なく、内側ガスセンサ-10での検知結果のみに依存した判定を行う態様とすることも可能な場合があり得ると考えられる。そこで、ここでは、判定部30が、換気時における検知結果に基づき判定を行う態様について一例を説明する。より具体的には、主制御部50において、排気口EPが動作をしているか否かを確認し、排気口EPが動作をしている間において、判定部30が、内側ガスセンサ-10での検知結果と、外側ガスセンサ-20での検知結果とに基づいて判定を行う場合について、一動作例を説明する。
【0056】
前提として、ここでは、内側ガスセンサ-10でのセンシングによる検知結果については常に利用するのに対して、外側ガスセンサ-20でのセンシングによる検知結果については、必要に応じて、利用を開始または終了するものとする。以上において、まず、主制御部50は、排気口EPの動作開始について、確認をする(ステップS201)。
【0057】
ステップS201において、動作開始が確認されない場合(ステップS201:No)、つまり、換気がなされていない場合、判定部30は、内側ガスセンサ-10でのセンシングによる検知結果に基づき、筐体SCの内部における異常判定を行う。つまり、図7のうちステップS103のように、閾値以上の差があったか否かに基づいて筐体SC内で異臭発生があったか否かを判断し、この判断結果をもって、異常判定について決定する処理を行う(ステップS202)。主制御部50は、当該判定を行いつつ、ステップS201における確認動作を続ける。
【0058】
一方、ステップS201において、動作開始が確認された場合(ステップS201:Yes)、つまり、換気がなされている場合、判定部30は、外側ガスセンサ-20でのセンシングによる検知結果について利用を開始し(ステップS203)、内側ガスセンサ-10でのセンシングによる検知結果のみならず、これと外側ガスセンサ-20でのセンシングによる検知結果とに基づき、筐体SCの内部における異常判定を行う(ステップS204)。典型的には、図7を参照して説明した一連の処理を行う。なお、この際、ステップS202における処理がなされていた場合には、これを中断する。主制御部50は、当該判定を行いつつ、今度は、排気口EPの動作終了について、確認をする(ステップS205)。
【0059】
ステップS205において、排気口EPの動作終了が確認されなければ(ステップS205:No)、判定部30によるステップS204の異常判定処理が継続される。
【0060】
一方、ステップS205において、排気口EPの動作終了が確認されると(ステップS205:Yes)、判定部30は、ステップS204の異常判定処理を終了すべく、外側ガスセンサ-20でのセンシングによる検知結果について利用を終了し(ステップS206)、ステップS201における確認動作に戻る。
【0061】
なお、以上については、一例であり、これに限らず種々の変形態様が可能であり、例えばステップS203及びステップS206における外側ガスセンサ-20でのセンシングによる検知結果について利用の開始及び終了に伴って外側ガスセンサ-20での動作自体についての開始及び終了を行うものとしてもよい。
【0062】
以下、図9を参照して、異臭検知装置100の一適用例として、異臭検知装置100を利用したキュービクルの収納物を監視対象とする保安点検について一例を説明する。図示の一例では、筐体SCは、キュービクルを構成する各部のうち、外装部材であり、筐体SCには開閉用の扉DRや天井部CEが設けられている。また、破線で囲った範囲A1に示すように、筐体SCの内部には、変電等を行うための各種電源設備が、監視対象MOとして収納されている。各種電源設備には、回路基板やケーブル類等が含まれており、例えば落雷や絶縁不良、ネズミ等の生き物の進入といった種々の要因により、監視対象MOの一部が焦げる等した場合に、異臭が発生する。本実施形態では、異臭検知装置100によりかかる異臭の発生すなわち火災の予兆的事態を迅速に捉えることで、筐体SCの内部において火災が発生する前に、異常として検知することを可能としている。
【0063】
なお、図示のように、筐体SCの扉DRには、窓WNのほか、換気のための通気口IPが設けられている。通気口IPには、筐体SCの外側から外側ガスセンサ-20が取り付けられている。また、筐体SCの天井部CEには、排気口EPが設けられている。排気口EPには、破線で囲った範囲A2に示すように、筐体SCの内側から内側ガスセンサ-10が設けられている。
【0064】
図示の一例では、複数(3つ)の筐体SC(筐体SC1,SC2,SC3)が1つの現場端末TI(判定部30)に接続されている。つまり、判定部30は、3つの筐体SC1,SC2,SC3についてそれぞれ判定を行うものとなっており、筐体SC1,SC2,SC3の内部に関する判定結果について、監視システム500を構成する中央管理システムMSに出力する。なお、中央管理システムMSは、単数の異臭検知装置100からの情報(判定結果)を受け付ける場合のみならず、図示のように、複数の異臭検知装置100からの情報(判定結果)を受け付け、これらを一括管理する態様としてもよい。
【0065】
以上のように、本実施形態の異臭検知装置100は、筐体SCの内側に設けられる内側ガスセンサ-10と、筐体SCの外側に設けられる外側ガスセンサ-20と、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との検知結果を比較して差異を検出し、該差異に基づいて筐体SC内における異臭発生の有無を判定する判定部30とを備える。上記異臭検知装置100では、内側ガスセンサ-10による筐体SCの内側における検知結果と、外側ガスセンサ-20による筐体SCの外側における検知結果とを比較して検出される差異に基づいて筐体SC内における異臭発生の有無を判定することで、監視する対象物を含む筐体SCの外部環境を踏まえて、筐体SC内において異臭発生があったか否かを的確に判定できる。
【0066】
〔その他〕
この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0067】
まず、上記において、さらに、湿度や温度に関するセンシングを行い、これらの情報を加味するものとしてもよい。湿度や温度が変化すると、臭気についての感度にも差異が生じる可能性がある。したがって、湿度や温度が変化を抑えるべく、例えば筐体SCの内側と外側とで湿度や温度の差が一定以上となる場合に、これを抑えるべく排気口EP等を利用した換気を開始するものとしてもよい。また、湿度や温度の状況に応じて、判定に採用する閾値データを変更するものとしてもよい。また、この場合、上記について、PCアプリに組み込んでおくことで、1種類のアプリで種々の状況に対応できるものとしてもよい。
【0068】
また、上記では、臭気検知のセンシングにおける出力値をセンサーにおいて流す電流の抵抗値としているが、これに限らず、センサーの種類等に応じて、種々変更することができ、出力値の種類によっては、値が大きくなる場合に異臭発生と判定する態様等も生じ得る。さらに、複数種類の臭気センサーを組み合わせて判定を行う態様とすることも考えられる。
【0069】
また、上記では、VOCを対象とし、種々の揮発性物質に反応する場合について説明しているが、異臭検知に際して対象となるガスを、特定のものとする態様も考えられる。
【0070】
また、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20との検知結果を比較して差異を検出するに際して、上記では、当該差異を検出するものとして、出力値の変化率つまり変化した割合についての差異を確認するものとしているが、適切に差異を検出できれば、これに限らず種々のデータ(パラメーター)を比較や検証における対象とすることができる。
【0071】
また、上記では、異臭検知装置100による異臭検知を行う対象の一例として、キュービクルを例示したが、異臭検知装置100は、これに限らず、例えば各種電気機器を収納する種々の設備において異臭検知を行うことで、火災の予兆検知等ができる。
【0072】
また、上記では、一例として、内側ガスセンサ-10と外側ガスセンサ-20とを、同一のセンサーで構成する場合について説明したが、必用に足りる適切な精度で比較が可能であれば、同一でないものを使用するものとしてもよい。
【0073】
また、上記では、筐体SC内で異臭が発生したと判定した場合に、その旨を外部装置としての中央管理システムMSに通知するものとしているが、異臭が発生していない正常な場合にも、その旨を報知する対象としてもよい。また、例えば筐体SCの内部ではなく外部での異臭発生であるため正常であると判断した場合に、その旨を併せて通知(報知)するものとしてもよい。さらに、中央管理システムMSまで含めて異臭検知装置100であると捉える、すなわち監視システム500を、異臭検知装置100であるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…内側ガスセンサ-、20…外側ガスセンサ-、30…判定部、31…内外差比較部、50…主制御部、60…外部通信部、100…異臭検知装置、500…監視システム、AA1…矢印、BF…焚火、C1…曲線、CE…天井部、DD1…検知データ格納部、DD2…閾値データ格納部、DR…扉、EG…排出気体、EP…排気口、IF…インタフェース部、IG…流入気体、IP…吸気口(通気口)、MK…煙、MO…監視対象、MS…中央管理システム、PA…ペンキ塗り、SC,SC1,SC2,SC3…筐体、TI…現場端末、WN…窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9