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特開2023-157130運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157130
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231019BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066826
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴雅
(72)【発明者】
【氏名】茶山 将慶
(72)【発明者】
【氏名】岡市 敦雄
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】エネルギー使用量を削減可能な運転計画作成装置等を提供する。
【解決手段】運転計画作成装置10は、需要家に設置されたエネルギーリソース30の運転計画を作成する運転計画作成装置であって、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得する係数取得部11と、エネルギーリソース30の電力に関する計測データを取得する計測データ取得部13と、計測データに基づいて、需要家が受電する電力の予測データを算出する予測部14と、電気換算係数および予測データに基づいて、運転計画を作成する運転計画作成部15とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する運転計画作成装置であって、
電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得する第1取得部と、
前記エネルギーリソースの電力に関する計測データを取得する第2取得部と、
前記計測データに基づいて、前記需要家が受電する電力の予測データを算出する予測部と、
前記電気換算係数および前記予測データに基づいて、前記運転計画を作成する運転計画作成部とを備える
運転計画作成装置。
【請求項2】
前記第1取得部は、さらに、一次エネルギー換算係数を取得し、
前記運転計画作成装置は、さらに、電気料金単価および一次エネルギー単価を取得する第3取得部を備え、
前記運転計画作成部は、さらに、前記一次エネルギー換算係数、前記電気料金単価および前記一次エネルギー単価に基づいて、前記運転計画を作成する
請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項3】
前記運転計画作成部は、前記電気換算係数、前記一次エネルギー換算係数、前記一次エネルギー単価および前記予測データに基づく第1の値と、前記電気料金単価および前記予測データに基づく第2の値とを算出し、算出された前記第1の値および前記第2の値の和に基づいて、前記運転計画を作成する
請求項2に記載の運転計画作成装置。
【請求項4】
前記第1取得部は、さらに、排出係数を取得し、
前記第3取得部は、さらに、CO単価を取得し、
前記運転計画作成部は、さらに、前記排出係数および前記CO単価に基づいて、前記運転計画を作成する
請求項2に記載の運転計画作成装置。
【請求項5】
前記運転計画作成部は、前記電気換算係数、前記一次エネルギー換算係数、前記一次エネルギー単価および前記予測データに基づく第1の値と、前記電気料金単価および前記予測データに基づく第2の値と、前記排出係数、前記CO単価および前記予測データに基づく第3の値とを算出し、算出された前記第1の値、前記第2の値および前記第3の値の和に基づいて、前記運転計画を作成する
請求項4に記載の運転計画作成装置。
【請求項6】
前記CO単価は、前記需要家にて設定される単価、市場で取引されるCO排出権の単価および前記市場で取引されるCO排出量に対する単価のうちのいずれかである
請求項4または5に記載の運転計画作成装置。
【請求項7】
さらに、前記電気換算係数に基づいて、前記エネルギーリソースの実績値を算出し、算出した前記実績値を出力する実績算出部を備える
請求項1~5のいずれか1項に記載の運転計画作成装置。
【請求項8】
さらに、前記排出係数に基づいて、前記エネルギーリソースの実績値を算出し、算出した前記実績値を出力する実績算出部を備える
請求項4または5に記載の運転計画作成装置。
【請求項9】
前記運転計画作成部は、前記運転計画および前記エネルギーリソースの実制御電力量のうち少なくとも一方を、電力の小売を行う第1の事業者および前記エネルギーリソースの制御を行う第2の事業者のうち少なくとも一方に送信する
請求項4または5に記載の運転計画作成装置。
【請求項10】
さらに、電力の小売を行う第1の事業者および前記エネルギーリソースの制御を行う第2の事業者のうち少なくとも一方から、前記エネルギーリソースの制御に関する指令を受信する受信部を備え、
前記第3取得部は、前記第1の事業者および前記第2の事業者のうち少なくとも一方との調整力提供に関する調整単価を取得し、
前記運転計画作成部は、さらに、前記調整単価および前記制御に関する指令に基づいて、前記エネルギーリソースの運転計画を作成する
請求項2~5のいずれか1項に記載の運転計画作成装置。
【請求項11】
請求項1~5のいずれか1項に記載の運転計画作成装置と、
需要家に設置されたコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記運転計画作成装置で作成された運転計画を取得する第4取得部と、
前記運転計画に基づいて前記需要家に設置されたエネルギーリソースを制御する制御部とを有する
エネルギーリソース制御システム。
【請求項12】
需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する運転計画作成方法であって、
電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得し、
前記エネルギーリソースの電力に関する計測データを取得し、
前記計測データに基づいて、前記需要家が受電する電力の予測データを算出し、
前記電気換算係数および前記予測データに基づいて、前記運転計画を作成する
運転計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、熱源機器および発電機などのエネルギーリソースの運転計画を作成するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-230099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、環境への配慮から需要家のエネルギー使用量を削減することが求められており、エネルギー使用量を削減可能なエネルギーリソースの運転計画が作成されることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、エネルギー使用量を削減可能な運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る運転計画作成装置は、需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する運転計画作成装置であって、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得する第1取得部と、前記エネルギーリソースの電力に関する計測データを取得する第2取得部と、前記計測データに基づいて、前記需要家が受電する電力の予測データを算出する予測部と、前記電気換算係数および前記予測データに基づいて、前記運転計画を作成する運転計画作成部とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係るエネルギーリソース制御システムは、上記の運転計画作成装置と、需要家に設置されたコントローラとを備え、前記コントローラは、前記運転計画作成装置で作成された運転計画を取得する第4取得部と、前記運転計画に基づいて前記需要家に設置されたエネルギーリソースを制御する制御部とを有する。
【0008】
本発明の一態様に係る運転計画作成方法は、需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する運転計画作成方法であって、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得し、前記エネルギーリソースの電力に関する計測データを取得し、前記計測データに基づいて、前記需要家が受電する電力の予測データを算出し、前記電気換算係数および前記予測データに基づいて、前記運転計画を作成する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、エネルギー使用量を削減可能な運転計画作成装置等を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、エネルギー使用量の算定方法を説明するための図である。
図2図2は、実施の形態に係るエネルギーリソース制御システムの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態に係る各係数および単価を説明するための図である。
図4図4は、実施の形態に係るエネルギーリソース制御システムの動作を示すシーケンス図である。
図5図5は、実施の形態に係る運転計画作成装置の動作を示すフローチャートである。
図6A図6Aは、需要シフトを説明するための第1図である。
図6B図6Bは、需要シフトを説明するための第2図である。
図6C図6Cは、需要シフトを説明するための第3図である。
図6D図6Dは、需要シフトを説明するための第4図である。
図7図7は、実施の形態の変形例1に係るエネルギーリソース制御システムの機能構成を示すブロック図である。
図8図8は、実施の形態の変形例2に係るエネルギーリソース制御システムの機能構成を示すブロック図である。
図9図9は、実施の形態の変形例3に係るエネルギーリソース制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本発明に至った経緯)
本発明の説明に先立ち、本発明に至った経緯について図1を参照しながら説明する。図1は、エネルギー使用量の算定方法を説明するための図である(出典:経済産業省のホームページ、[令和4年3月24日検索]、インターネット<URL:https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/pdf/036_01_00.pdf>)。図1では、月ごとに最適化係数が変動する例を示している。なお、最適化係数の変動周期は月ごとであることに限定されない。
【0012】
日本国において、現行の「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(いわゆる省エネ法)では、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための換算係数が用いられている。この換算係数は、昼間、電気需要平準化時間帯、夜間ごとに一定の値(固定値)が採用されている。省エネ法の改正(2023年度施行予定の「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」)により、例えば、図1に示す「全電源平均係数」のように、商用系統から受電する電気には年間を通して固定の全電源平均値が採用されることがある。また、図1には図示していないが、自家発太陽光発電装置の発電電力には全電源平均係数より小さな値(以下、自家発再エネ係数と称する)が採用されることがある。さらに、省エネ法の改正により、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数が導入される。新たに導入される電気換算係数は、供給側の状況に応じて動的に変動し得る。この電気換算係数は、供給側の状況を踏まえ、公的機関などにより決定され、運転計画を作成する対象日より前(例えば、対象日の前々日)に公表される。なお、電気換算係数は、最適化係数とも称される。省エネ法の改正により、従来のエネルギー使用量に加え、この新たに導入される電気換算係数により算出されるエネルギー使用量(ある期間におけるエネルギー使用量の合計)が低い方が事業者としては評価されることになる。なお、これらエネルギー使用量を減らすことは環境負荷を減らすことにつながる。
【0013】
図1では、特定事業者AおよびB(エネルギー使用量(原油換算値)が合計して1500kl/年度以上である事業者)とも1年間(1月~12月)の合計電気使用量は1200kWhで同じであるが、特定事業者Aは最適化係数が低い月の電気使用量を増やしており、特定事業者Bは最適化係数に関わらず毎月一定の電気使用量である場合を示している。
【0014】
図1の場合、特定事業者AおよびBの合計電気使用量は同じであるが、最適化係数による電気使用量(つまり、エネルギー使用量)は、特定事業者Aの方が低い値となっている。具体的には、特定事業者Aのエネルギー使用量は、9500MJであり、特定事業者Bのエネルギー使用量は、10600MJである。この場合、省エネ法上、特定事業者Aの方が評価される。
【0015】
そのため、変動する電気換算係数に応じて需要家に設置されたエネルギーリソースを、エネルギー使用量が小さくなるように制御することが望まれる。特許文献1には、変動する電気換算係数を考慮してエネルギーリソースを制御することは開示されていない。
【0016】
そこで、本願発明者らは、変動する電気換算係数などが用いられる場合において、エネルギー使用量を削減することが可能な運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法について鋭意検討を行い、以下に示すエネルギー使用量を削減することが可能な運転計画作成装置、エネルギーリソース制御システムおよび運転計画作成方法を創案した。
【0017】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0018】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0019】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0020】
また、本明細書において、一致などの要素間の関係性を示す用語、並びに、数値および数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度(例えば、10%程度)の差異をも含むことを意味する表現である。
【0021】
(実施の形態)
以下、本実施の形態に係る運転計画作成装置などについて、図2図6Dを参照しながら説明する。
【0022】
[1-1.エネルギーリソース制御システムの構成]
まず、本実施の形態に係るエネルギーリソース制御システムの構成について、図2および図3を参照しながら説明する。図2は、本実施の形態に係るエネルギーリソース制御システム1の機能構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、エネルギーリソース制御システム1は、運転計画作成装置10とエネルギーリソース側の装置100とを備える。
【0024】
運転計画作成装置10は、需要家に設置されたエネルギーリソースの運転計画を作成する。エネルギーリソースは、需要家に導入される分散型のエネルギーリソースであり、蓄電池(車載用蓄電池)を搭載する電動車両もしくは定置用蓄電池などの充電または充放電可能な装置、太陽光発電設備、燃料電池などの発電設備またはヒートポンプ給湯機などの負荷装置などであるが、これらに限定されない。電動車両は、電気を動力として走行可能な車両を指し、電気だけを動力とする車両(いわゆる電気自動車:EV)、電気とそれ以外のエネルギー源(例えば、ガソリンなどの燃料)とを動力とする車両(いわゆるハイブリッド自動車:HV)、外部充電機能を備えたハイブリッド自動車(いわゆるプラグインハイブリッド自動車:PHV)などが含まれる。また、需要家は、一般需要家(一般家庭)であってもよいし、工場、施設(例えば、病院、学校など)であってもよい。
【0025】
運転計画作成装置10は、係数取得部11と、単価取得部12と、計測データ取得部13と、予測部14と、運転計画作成部15とを備える。運転計画作成装置10は、プロセッサ、メモリ等を含むコンピュータまたはスマートフォンにより実現される。具体的には、運転計画作成装置10は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って動作することにより、各機能構成を実現する。運転計画作成装置10は、例えば、サーバ装置により実現されるが、需要家のそれぞれに配置された情報端末により実現されてもよい。
【0026】
係数取得部11は、外部システム(例えば、外部のサーバ装置)などから、動的に変動する電気換算係数を少なくとも取得する。電気換算係数は、所定の期間または時間ごとに設定、配信される所定の時間ごと(時間帯別)の係数である。設定、配信に係る所定の期間または時間と、値変更に係る所定の期間または時間とは一致していなくてもよい。本実施の形態では、係数取得部11は、電気換算係数および一次エネルギー換算係数を取得する。係数取得部11は、第1取得部として機能する。なお、ここでの所定の期間は、例えば、1日より長い時を意味し、所定の時間は、例えば、1日以下の比較的短い時を意味する。例えば、図3の「設定の周期」に示す1日は所定の時間の一例であり、1か月は所定の期間の一例である。
【0027】
単価取得部12は、外部システム(例えば、外部のサーバ装置)などから、電気料金単価および一次エネルギー単価を取得する。例えば、単価取得部12は、小売電気事業者が管理する外部システムから電気料金単価を取得する。単価取得部12は、第3取得部の一例である。なお、運転計画作成装置10は、単価取得部12を備えていなくてもよい。
【0028】
計測データ取得部13は、エネルギーリソースの電力に関する計測データを取得する。計測データ取得部13は、エネルギーリソースが充放電可能な装置である場合、エネルギーリソースの充放電量、現在の充電量および空き容量などを計測データとして取得し、エネルギーリソースが発電設備である場合、発電量などを計測データとして取得し、エネルギーリソースが負荷装置である場合、消費電力量などを計測データとして取得する。計測データ取得部13は、エネルギーリソースが複数ある場合、複数のエネルギーリソースのそれぞれの計測データを取得する。
【0029】
また、計測データ取得部13は、例えば、需要家に設置された電力メータ(例えば、通信機能を有する電力メータ(いわゆるスマートメータ))から計測データを取得してもよい。当該メータはガスを計測するガスメータであってもよいし、他のメータが計測した計測データを収集して送信するようなメータであってもよい。計測データ取得部13は、需要家における実質電力需要に関するデータを計測データとして取得してもよい。例えば、計測データ取得部13は、需要家において消費された電力のデータ、需要家が受電した(購入した)電力のデータおよび作成された運転計画に対して実際に制御された機器制御量(実制御電力量)を計測データとして取得してもよい。さらに、計測データ取得部13は、一次エネルギーの使用量、エネルギーリソースの稼働スケジュールなどを計測データとして取得してもよい。計測データ取得部13は、第2取得部の一例である。
【0030】
予測部14は、計測データに基づいて、需要家が受電する電力の予測データを算出する。予測部14は、例えば、運転計画を作成する対象日の所定の時間ごと(例えば、30分ごと48コマ)の発電設備などの発電量と、電気の使用量とを予測し、予測した発電量および使用量から予測データを算出する。予測部14は、所定の時間ごとのそれぞれにおいて、当該時間における発電量および使用量の差分(使用量-発電量)である需要電力量を算出する。需要電力量=max(使用量-発電量,0)とする。予測データは、所定の時間ごとの需要電力量を含む。需要電力量は、需要家が受電する必要がある電力量の予測値であり、予測部14は需要電力量を直接予測してもよい。
【0031】
なお、予測部14における発電量の予測方法は特に限定されないが、発電量を予測する時間帯または日時における気象予報に基づいて、当該時間帯または日時における発電量が予測されてもよいし、位置、気温、季節、天候などの少なくとも1つが一致または類似するときの過去の発電量のデータに基づいて、当該時間帯または日時における発電量が予測されてもよい。また、予測部14における使用量の予測方法は特に限定されないが、使用量を予測する時間帯または日時における位置、気温、季節、天候などの少なくとも1つが一致または類似するときの過去の使用量のデータに基づいて、当該時間帯または日時における使用量が予測されてもよい。
【0032】
運転計画作成部15は、少なくとも電気換算係数および予測データに基づいて、エネルギーリソースiの運転計画を作成する。充放電可能なエネルギーリソースの運転計画は、所定の時間tごとのエネルギーリソースの運転モードおよび充放電電力/充放電電力量の少なくとも一方を含む。運転計画作成部15は、例えば、以下の(式1)が最小となるように運転計画を作成してもよい。
【0033】
最小化 Σ全電源平均係数×(需要電力量-Σ機器制御量it)+Σ自家発再エネ係数×min(使用量-Σ機器制御量it,発電量)+Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it) ・・・(式1)
【0034】
制約条件 Σ機器制御量it≦定格出力量
Σ機器制御量it≧定格入力量
Σ機器制御量it≦需要電力量
【0035】
(式1)は、「Σ全電源平均係数×(需要電力量-Σ機器制御量it)」と「Σ自家発再エネ係数×min(使用量-Σ機器制御量it,発電量)」と「Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)」との合計を最小化することを示す。また、「min(使用量-Σ機器制御量it,発電量)」は、「使用量-Σ機器制御量it」および「発電量」のうち最小の値が使用されることを示す。(式2)以降においても、同様である。
【0036】
機器制御量は、エネルギーリソースの制御量を示し、需要電力量を下げる方向を正とする。機器制御量は、例えば、電動車両または定置用蓄電池の場合は放電電力/放電量または充電電力/充電量を示す。運転計画作成部15は、(式1)の最適化問題を解くことで、所定の時間ごとに電気換算係数と(需要電力量-機器制御量)とを掛けた値(エネルギー使用量)を所定の期間分(例えば、1日分)足し合わせた値が最小となるように、所定の時間ごとの機器制御量を決定する。そして、運転計画作成部15は、決定した機器制御量に応じた運転計画を作成する。
【0037】
なお、以下では、運転計画作成部15は、電気換算係数および予測データに加えて、一次エネルギー換算係数、電気料金単価および一次エネルギー単価に基づいて、運転計画を作成する例を説明する。以下、(式2)以降は、簡易化のため、制約条件および目的関数のうち、全電源平均係数、自家発再エネ係数を省略する。運転計画作成部15は、例えば、電気換算係数、一次エネルギー換算係数、一次エネルギー単価および予測データに基づいて第1の値を算出し、電気料金単価および予測データに基づいて第2の値を算出し、算出された第1の値および第2の値の和に基づいて、運転計画を作成してもよい。運転計画作成部15は、例えば、以下の(式2)を用いて運転計画を作成する。
【0038】
最小化 w1×Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)×一次エネルギー換算係数×一次エネルギー単価+w2×Σ(需要電力量-Σ機器制御量it)×電気料金単価 ・・・(式2)
【0039】
(式2)の第1項は、エネルギー使用量を原油価格に換算した価格を示しており、動的に変動する電気換算係数に応じた価格(第1の値の一例)となる。(式2)の第2項は、需要家が自家発電などからの不足分の電力を購入するときの価格(第2の値の一例)を示しており、動的に変動する電気料金単価に応じた価格となる。運転計画作成部15は、(式2)を用いて、エネルギー使用量および電気料金が最小となる所定の時間ごとの機器制御量に応じた運転計画を作成する。なお、w1およびw2は重み付け変数であり、予め設定されている。重み付け変数w1およびw2は予め設定された値から動的に変更されてもよい。
【0040】
ここで、上記に記載した係数および単価について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施の形態に係る各係数および各単価を説明するための図である。図3は、変数と、変数の概要と、変数における所定の時間の例と、設定の周期と、変数の取得方法の例とが対応付けられたテーブルである。設定の周期は、公表値、各種価格などが設定される時間間隔である。なお、図3に示す情報はあくまで一例であり、省エネ法の改正内容、市場ルール変更などにより変化し得る。また、図3では、実施の形態の各変形例で用いられる係数および価格も図示している。各変形例で用いられる係数および価格は、該当する変形例において説明する。
【0041】
電気換算係数(MJ/kWh)は、電気使用量(kWh)からエネルギー使用量(MJ)を算出するための係数である。電気換算係数は、例えば、時別(例えば、1時間ごと)または月別(例えば、1か月ごと)に公的機関などにより決定され、当該公的機関により通知される公表値である。なお、電気換算係数は一次エネルギー換算係数、熱量換算係数、換算係数などと称されることもある。
【0042】
電気換算係数は、例えば、再エネ出力制御時には再エネ係数(火力平均係数より小さな設定値)が使用され、それ以外の時間帯には火力平均係数が使用され、需給逼迫時には火力平均に重み付けした係数(火力平均係数に係数を乗算した、火力平均係数より大きな設定値)が使用されるが、これに限定されない。なお、再エネ出力制御とは、発電量が需要量を上回らないように、または系統容量(送電線や変圧器の容量)の上限を超えないよう、一般送配電事業者等が再生可能エネルギーによる発電を抑える制御のことである。
【0043】
一次エネルギー変換係数(kl/GJ)は、一次エネルギー換算(原油換算係数)であり、エネルギー使用量(GJ)の一次エネルギー換算(原油換算)量を算出するための係数である。一次エネルギー変換係数は、例えば、0.0258(kl/GJ)などである。
【0044】
一次エネルギー単価(円/バレル)は、原油価格(原油単価)であり、例えば、5分別(5分ごと)に原油市場から取得される。
【0045】
電気料金単価(円/kWh)は、小売電気事業者などが設定する単価であり、例えば、30分ごとに設定される。電気料金単価は、JEPX(一般社団法人 日本卸電力取引所)における卸電力取引市場での市場価格(市場単価)に応じた単価などであり、例えば、小売電気事業者から通知される。市場価格は、JEPX価格とも称される。卸電力取引市場は、例えば、一日前市場(スポット市場)であってもよいし、当日市場(時間前市場)であってもよい。
【0046】
なお、図3に示すように、所定の時間は係数または単価の種類に応じて異なる。本明細書において、「所定の時間」との記載は、その係数または単価の種類に応じて決まる期間を意味する。
【0047】
[1-2.エネルギーリソース制御システムの動作]
続いて、上記のように構成されるエネルギーリソース制御システム1の動作について、図4および図5を参照しながら説明する。図4は、本実施の形態に係るエネルギーリソース制御システム1の動作を示すシーケンス図である。なお、図4では、運転計画作成装置10がサーバ装置により実現され、需要家に対して運転計画を作成する例を説明する。また、エネルギーリソース側の装置100(需要家側の装置)として、コントローラ20とエネルギーリソース30とを有する例について説明する。
【0048】
コントローラ20は、運転計画作成装置10およびエネルギーリソース30と通信可能であり、エネルギーリソース30の動作を制御可能な情報端末である。コントローラ20は、運転計画作成装置10で作成された運転計画を取得する取得部(第4取得部の一例)と、運転計画に基づいて需要家に設置されたエネルギーリソース30を制御する制御部とを有する。コントローラ20は、プロセッサ、メモリ等を含むコンピュータまたはスマートフォンにより実現される。具体的には、コントローラ20は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って動作することにより、各機能構成を実現する。
【0049】
図4に示すように、運転計画作成装置10は、外部システム200から電気換算係数および一次エネルギー変換係数と、電気料金単価および一次エネルギー単価と、計測データとを取得する(S11~S13)。外部システム200は、電気換算係数を管理するサーバ装置、電気料金単価を管理するサーバ装置および計測データを管理するサーバ装置の少なくとも1つを含む。なお、運転計画作成装置10は、計測データをコントローラ20から取得してもよい。
【0050】
次に、運転計画作成装置10は、取得した電気換算係数と、一次エネルギー変換係数と、電気料金単価と、一次エネルギー単価と、計測データとに基づいて、エネルギーリソース30の運転計画を作成する(S21)。運転計画作成装置10は、例えば、上記の(式2)を用いて運転計画を作成する。
【0051】
なお、ステップS11~S13において電気換算係数および計測データのみが取得された場合または(式2)の重みw2がゼロである場合、運転計画作成装置10は、上記の(式1)の値が最小となる機器制御量(所定の時間ごとの機器制御量)を算出し、算出した機器制御量に応じた運転計画を作成する。また、需要家が特定事業者ではない場合、運転計画作成装置10は、w1を0とすることで、電気料金が最小となる機器制御量(所定の時間ごとの機器制御量)を算出し、算出した機器制御量に応じた運転計画を作成する。
【0052】
次に、運転計画作成装置10は、作成した運転計画をコントローラ20に送信し、コントローラ20は運転計画を取得する(S22)。コントローラ20は、取得した運転計画に基づいて、エネルギーリソース30を制御する制御指令を生成し、エネルギーリソース30に出力する(S31)。コントローラ20は、運転計画作成装置10から受信した運転計画を制御指令として生成してもよい。また、コントローラ20は、運転計画に基づく需要増加(例えば、充電、消費など)および需要低減(例えば、放電、発電など)の少なくとも一方を行わせる制御指令を生成する。制御指令は、例えば、運転モードを含む。また、制御指令は、例えば、エネルギーリソース30が電動車両または定置用蓄電池の場合の場合、所定の時間ごとの運転モードおよび電力/電力量の少なくとも一方を含む。電力/電力量には充電電力/充電量および放電電力/放電量の少なくとも一方が含まれる。電力/電力量は(式1)から求められる。一方、運転モードでは放電モード、充電モード、待機モード、停止モード等が指定される。また、運転モードを直接求めるような最適化問題に(式1)が変形されてもよいし、(式1)で求めた電力/電力量から運転モードに変換されてもよい。なお、需要家が複数のエネルギーリソース30を有し、電力/電力量を指定する場合、コントローラ20は、運転計画に含まれる充電電力/充電量および放電電力/放電量の少なくとも一方を達成するように、複数のエネルギーリソース30に充電電力/充電量および放電電力/放電量の少なくとも一方を振り分けてもよい。
【0053】
図5は、本実施の形態に係る運転計画作成装置10の動作を示すフローチャートである。図5に示す動作は、例えば、電気換算係数、電気料金単価などが決定した後に実行される。また、図5に示す動作は、例えば、運転計画を作成する対象日の前日までに実行される。なお、以下では、運転計画を作成する対象日を単に対象日とも記載する。
【0054】
図5に示すように、運転計画作成装置10の係数取得部11は、対象日の所定の時間ごとの電気換算係数および一次エネルギー換算係数を外部システム200から取得する(S101)。電気換算係数および一次エネルギー換算係数の取得周期は同じであってもよいし、異なっていてもよい。係数取得部11は、取得した電気換算係数および一次エネルギー換算係数を運転計画作成部15に出力する。ステップS101は、図4に示すステップS11に相当する。
【0055】
次に、運転計画作成装置10の単価取得部12は、対象日の所定の時間ごとの電気料金単価および一次エネルギー単価を外部システム200から取得する(S102)。電気料金単価および一次エネルギー単価の取得周期は同じであってもよいし、異なっていてもよい。単価取得部12は、取得した電気料金単価および一次エネルギー単価を運転計画作成部15に出力する。ステップS102は、図4に示すステップS12に相当する。
【0056】
次に、運転計画作成装置10の計測データ取得部13は、過去のエネルギーリソース30の計測データを取得する(S103)。各データの計測周期、取得周期は同じであってもよいし、異なっていてもよい。計測データ取得部13は、取得した計測データを予測部14および運転計画作成部15に出力する。ステップS103は、図4に示すステップS13に相当する。
【0057】
なお、ステップS101~S103において、電気換算係数、一次エネルギー換算係数、電気料金単価、一次エネルギー単価および計測データの全てが取得される必要はなく、各係数および各単価の公表タイミング、計測データの計測タイミングに応じて、更新されるデータがあるもののみが取得されればよい。
【0058】
次に、運転計画作成装置10の予測部14は、計測データに基づいて、対象日における、発電設備の発電量および電気の使用量を予測する(S104)。予測部14は、例えば、気象予報または過去の発電設備の発電量の実績データに基づいて、対象日の所定の時間ごとの発電量を予測し、過去の電気の使用量の実績データに基づいて、対象日の所定の時間ごとの使用量を予測する。予測部14は、予測した発電量および使用量を運転計画作成部15に出力する。発電量の予測周期および使用量の予測周期は同じであってもよいし、異なっていてもよい。なお、発電量および使用量の予測方法は特に限定されず、既知のいかなる方法が用いられてもよい。
【0059】
また、予測部14は、対象日の所定の時間ごとのエネルギーリソース30の制御可能量(例えば、充電可能量、放電可能量など)を予測してもよい。計測データには、エネルギーリソース30の過去の制御可能量を示すデータが含まれており、予測部14は、当該データに基づいて、エネルギーリソース30の制御可能量を予測してもよい。予測部14は、予測した制御可能量を運転計画作成部15に出力する。なお、制御可能量の予測方法は特に限定されず、既知のいかなる方法が用いられてもよい。
【0060】
次に、運転計画作成装置10の運転計画作成部15は、電気換算係数と、一次エネルギー変換係数と、電気料金単価と、一次エネルギー単価と、発電量および使用量の予測データ(計測データに基づく情報)とに基づいて、エネルギーリソース30の運転計画を作成する(S105)。運転計画作成装置10は、上記の(式2)の値が最小となる機器制御量(所定の時間ごとの機器制御量)を算出し、算出した機器制御量に応じた運転計画を作成する。例えば、運転計画作成装置10は、30分ごとの48コマ分の機器制御量に応じた運転計画を作成する。ステップS104およびS105は、図4に示すステップS21に相当する。また、運転計画作成部15は、計測データ取得部13が取得した計測データも用いてエネルギーリソース30の運転計画を作成してもよい。例えば、エネルギーリソース30の制御可能量が0となった場合に、運転計画作成部15は、通常の作成周期よりも短い周期で運転計画を再作成してもよい。
【0061】
次に、運転計画作成部15は、作成した運転計画をコントローラ20に送信する(S106)。また、運転計画作成部15は、作成した運転計画を小売電気事業者(第1の事業者の一例)および特定卸供給事業者(アグリゲーター)(第2の事業者の一例)の少なくとも一方に送信してもよい。また、運転計画作成部15は、運転計画に替えてまたは運転計画とともにエネルギーリソース30の実制御電力量を小売電気事業者および特定卸供給事業者の少なくとも一方に送信してもよい。ステップS106は、図4に示すステップS22に相当する。なお、運転計画作成部15がコントローラ20に送信する運転計画は、運転計画作成部15の計画単位の情報を含んでいてもよいし、同じ運転計画が連続する場合には運転計画と継続時間とがセットとなった情報を含んでいてもよい。また、運転計画作成部15は作成した運転計画に変更がない場合はコントローラ20に運転計画を送信しないようにしてもよい。
【0062】
なお、特定卸供給事業者とは、特定卸供給事業(アグリゲーション)を行う事業者であり、需要家側のエネルギーリソース(発電設備、蓄電設備、需要設備を含む)、分散型エネルギーリソースなどを統合制御し、仮想発電所(バーチャルパワープラント(VPP))、デマンドレスポンス(DR)などのエネルギーサービスを提供する事業者である。
【0063】
なお、ステップS101~S103に示す取得処理と、ステップS104~S106に示す運転計画作成処理とは、連続して行われることに限定されない。取得処理と運転計画作成処理とは、異なるタイミングで実行されてもよい。
【0064】
[1-3.需要シフトおよび運転計画について]
図6A図6Dは、需要シフトを説明するための各図である。図6A図6Dの第1軸(左側の軸)は、電気換算係数(MJ/kWh)を示し、第2軸(右側の軸)は、電気料金単価(円/kWh)を示す。図6A図6Dでは、電気換算係数が時間ごとに変動する場合を示している。また、図6Aに示す時刻t1~t2、図6Bに示す時刻t3~t4および図6Cに示す時刻t5~t6は昼間の時間帯を示し、図6Dに示す時刻t7~t8は夕方の時間帯を示し、それ以前は朝または昼間の時間帯を示し、それ以降は夕方または夜間の時間帯を示す。
【0065】
図6Aは、昼間の時間帯の電気換算係数および電気料金単価に小さな値、夕方・夜間の時間帯の電気換算係数および電気料金単価に大きな値が設定された場合の電気換算係数および電気料金単価の1日の変動を示している。図6Aのように電気換算係数および電気料金単価が設定されることで、太陽光発電などにより供給量が増える昼間の電気の使用量を増やし、電気の需要量が増える夜間の電気の使用量を減らす効果がある。
【0066】
図6Aの場合、運転計画作成部15は、電気換算係数および電気料金単価が小さい時間帯に需要をシフトするように機器制御量を決定する。すなわち、運転計画作成部15は、昼間の時間帯の電気使用量を増やし(図中の「需要増の制御」)、特に夕方・夜間の時間帯の電気使用量を減らす(図中の「需要減の制御」)ように機器制御量を決定する。例えば、運転計画作成部15は、当該時間帯(時刻t1~t2の時間帯)において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、特に時刻t2以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画を作成することとなる。
【0067】
例えば、運転計画作成部15が(式1)または(式2)を用いて運転計画を作成する場合、特に時刻t1~t2の時間帯において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、特に時刻t2以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画が作成される。
【0068】
図6Bは、昼間の時間帯に小さな値の電気換算係数、夕方・夜間の時間帯に大きな値の電気換算係数が設定された場合の電気換算係数および電気料金単価の1日の変動を示している。電気料金単価は、1日中一定の値であるとする。
【0069】
図6Bの場合、運転計画作成部15は、電気換算係数および電気料金単価が小さい時間帯に需要をシフトするように機器制御量を決定する。すなわち、運転計画作成部15は、昼間の時間帯の電気使用量を増やし(図中の「需要増の制御」)、夕方・夜間の時間帯の電気使用量を減らす(図中の「需要減の制御」)ように機器制御量を決定する。例えば、運転計画作成部15は、当該時間帯(時刻t3~t4の時間帯)において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、当該時間帯以外、特に夕方・夜間において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画を作成することとなる。
【0070】
例えば、運転計画作成部15が(式1)または(式2)を用いて運転計画を作成する場合、時刻t3~t4の時間帯において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、時刻t4以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画が作成される。
【0071】
図6Cは、昼間の時間帯の電気料金単価に小さな値、夕方・夜間の時間帯の電気換算係数および電気料金単価に大きな値が設定された場合の電気換算係数および電気料金単価の1日の変動を示している。
【0072】
図6Cの場合、運転計画作成部15は、電気換算係数および電気料金単価の一方が小さい時間帯に需要をシフトするように機器制御量を決定する。すなわち、運転計画作成部15は、昼間の時間帯の電気使用量を増やし(図中の「需要増の制御」)、夕方・夜間の時間帯の電気使用量を減らす(図中の「需要減の制御」)ように機器制御量を決定する。例えば、運転計画作成部15は、当該時間帯(時刻t5~t6の時間帯)において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、特に時刻t6以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画を作成することとなる。
【0073】
例えば、運転計画作成部15が(式1)を用いて運転計画を作成する場合、時刻t6以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画が作成される。また、例えば、運転計画作成部15が(式2)を用いて運転計画を作成する場合、電気料金単価が小さい時間帯(時刻t5~t6の時間帯)において電気の購入量を増やし(つまり、上げ方向の機器制御量を大きくし)、時刻t6以降の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画が作成される。
【0074】
図6Dは、夕方の時間帯に大きな電気換算係数、夕方・夜間の時間帯に高い電気料金単価が設定された場合の電気換算係数および電気料金単価の1日の変動を示している。
【0075】
図6Dの場合、電気換算係数が低い時間帯と電気料金単価が低い時間帯とが対応していないので、運転計画作成部15は、目的関数の値に応じた機器制御量を実現するように運転計画を作成することとなる。例えば、運転計画作成部15が(式1)を用いて運転計画を作成する場合、時刻t7~t8の時間帯において電気の購入量を減らす(つまり、下げ方向の機器制御量を大きくする)ように運転計画が作成される。また、例えば、運転計画作成部15が(式2)を用いて運転計画を作成する場合、(式2)の値が最小となるように、各時間帯での機器制御量が決定される。
【0076】
[1-4.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る運転計画作成装置10は、需要家に設置されたエネルギーリソース30の運転計画を作成する運転計画作成装置であって、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得する係数取得部11(第1取得部の一例)と、エネルギーリソース30の電力に関する計測データを取得する計測データ取得部13(第2取得部の一例)と、計測データに基づいて、需要家が受電する電力の予測データを算出する予測部14と、電気換算係数および予測データに基づいて、運転計画を作成する運転計画作成部15とを備える。
【0077】
これにより、運転計画作成装置10は、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を用いて運転計画を作成するので、電気換算係数の変動に応じた運転計画を作成することができる。よって、運転計画作成装置10は、電気換算係数が所定の時間ごとに変動する場合でも、エネルギー使用量を削減可能である。
【0078】
また、係数取得部11は、さらに、一次エネルギー換算係数を取得し、運転計画作成装置10は、さらに、電気料金単価および一次エネルギー単価を取得する単価取得部12(第3取得部の一例)を備える。そして、運転計画作成部15は、さらに、一次エネルギー換算係数、電気料金単価および一次エネルギー単価に基づいて、運転計画を作成する。
【0079】
これにより、運転計画作成装置10は、エネルギー使用量および電気料金を用いて運転計画を作成するので、電気換算係数および電気料金単価の変動に応じた運転計画を作成することができる。よって、運転計画作成装置10は、さらに電気料金を削減可能である。
【0080】
また、運転計画作成部15は、電気換算係数、一次エネルギー換算係数、一次エネルギー単価および予測データに基づく第1の値と、電気料金単価および予測データに基づく第2の値とを算出し、算出された第1の値および第2の値の和に基づいて、運転計画を作成する。
【0081】
これにより、第1の値および第2の値の和を用いることで、電気換算係数および電気料金単価の変動に応じた運転計画を作成することができる。
【0082】
また、運転計画作成部15は、運転計画およびエネルギーリソース30の実制御電力量のうち少なくとも一方を、電力の小売を行う小売電気事業者(第1の事業者の一例)およびエネルギーリソース30の制御を行う特定卸供給事業者(第2の事業者の一例)のうち少なくとも一方に送信する。
【0083】
これにより、小売電気事業者または特定卸供給事業者が運転計画を参考に事業に関する計画を作成することで、作成される計画の精度が向上することが期待される。また、小売電気事業者または特定卸供給事業者が実制御電力量に基づいて実績評価を行い、作成する計画に実績評価を反映させることで、作成される計画の精度が向上することが期待される。
【0084】
また、本実施の形態に係るエネルギーリソース制御システム1は、運転計画作成装置10と、需要家に設置されたコントローラ20とを備える。コントローラ20は、運転計画作成装置10で作成された運転計画を取得する運転計画取得部(第4取得部の一例)と、運転計画に基づいて需要家に設置されたエネルギーリソース30を制御する制御部とを有する。
【0085】
これにより、上記の運転計画作成装置10により作成された運転計画に基づいてエネルギーリソース30が制御されるので、需要家におけるエネルギー使用量を自動で減らすことができる。
【0086】
また、本実施の形態に係る運転計画作成方法は、需要家に設置されたエネルギーリソース30の運転計画を作成する運転計画作成方法であって、電気使用量をエネルギー使用量に変換するための電気換算係数であって、所定の時間ごとに値が変動し得る電気換算係数を取得し(S101)、エネルギーリソース30の電力に関する計測データを取得し(S103)、計測データに基づいて、需要家が受電する電力の予測データを算出し(S104)、電気換算係数および予測データに基づいて、運転計画を作成する(S105)。
【0087】
これにより、上記の運転計画作成装置10と同様の効果を奏する。
【0088】
(実施の形態の変形例1)
以下では、本変形例に係る運転計画作成装置について、図7を参照しながら説明する。図7は、本変形例に係るエネルギーリソース制御システム1の機能構成を示すブロック図である。なお、以下では、実施の形態との相違点を中心に説明し、実施の形態と同一または類似の内容については説明を省略または簡略化する。本変形例に係る運転計画作成装置10の機能構成は実施の形態に係る運転計画作成装置10の機能構成と同じであってもよく、説明を省略する。
【0089】
図7に示すように、運転計画作成装置10の係数取得部11は、実施の形態の係数取得部11に加えて、運転計画を作成する対象日の所定の時間ごとの排出係数を取得し、取得した排出係数を運転計画作成部15に出力する。また、運転計画作成装置10の単価取得部12は、実施の形態の単価取得部12に加えて、運転計画を作成する対象日の所定の時間ごとのCO単価を取得し、取得したCO単価を運転計画作成部15に出力する。排出係数およびCO単価は、例えば、外部システム200から取得される。
【0090】
図3に示すように、排出係数は、温室効果ガス排出量を算定する際に用いる係数であり、例えば、CO排出係数である。排出係数は、年別に公表される公表値である。また、CO単価は、CO排出枠の売買における単価(CO単位量当たりの価格)であり、例えば、日別に設定される。CO単価は、排出権先物取引市場または排出量取引市場(キャップ&トレード方式)などの市場価格(市場単価)であってもよいし、クレジット単価(ベースライン方式)であってもよい。例えば、CO単価は、需要家にて設定される単価(インターナルカーボンプライス)、市場で取引されるCO排出権の単価(CO排出権取引単価)および市場で取引されるCO排出量に対する単価のうちのいずれかであってもよい。
【0091】
また、排出係数は、例えば、小売電気事業者の電気料金メニュー(例えば、供給される電力の発電種類)ごとに決まっている。小売電気事業者が再エネ由来の電力を需要家に供給する場合、排出係数は0または0に近い値であり、小売電気事業者が化石燃料由来の電力を需要家に供給する場合、0または0に近い値より大きな値となる。
【0092】
このように、本変形例に係る運転計画作成部15は、電気換算係数、一次エネルギー換算係数、一次エネルギー単価および予測データに加えて、排出係数およびCO単価に基づいて運転計画を作成する。運転計画作成部15は、例えば、第1の値および第2の値に加えて、排出係数、CO単価および予測データに基づいて第3の値を算出し、算出された第1の値、第2の値および第3の値の和に基づいて、運転計画を作成してもよい。運転計画作成部15は、例えば、以下の(式3)を用いて運転計画を作成する。
【0093】
最小化 w1×Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)×一次エネルギー換算係数×一次エネルギー単価+w2×Σ(需要電力量-Σ機器制御量it)×電気料金単価+w3×Σ排出係数×(需要電力量-Σ機器制御量it)×CO単価 ・・・(式3)
【0094】
(式3)の第1項および第2項は、(式2)と同じであり、第3項は、需要家が購入する電力を発電するためのCO排出量に応じた価格(第3の値の一例)となる。運転計画作成部15は、(式3)を用いて、エネルギー使用量、電気料金およびCO排出量が最小となる所定の時間ごとの機器制御量に応じた運転計画を作成する。なお、w3は重み付け変数であり、予め設定されているが、動的に変更されてもよい。また、別途非化石証書を調達する場合、例えば、第3項は、w3×Σ{排出係数×(需要電力量-機器制御量it-非化石証書調達量)×CO単価)+非化石証書調達量×非化石証書単価}となる。このとき、単価取得部12が非化石証書単価を取得する。
【0095】
以上のように、本変形例に係る運転計画作成装置10の係数取得部11(第1取得部の一例)は、さらに、排出係数を取得し、単価取得部12(第3取得部の一例)は、さらに、CO単価を取得する。そして、運転計画作成部15は、さらに、排出係数およびCO単価に基づいて、運転計画を作成する。
【0096】
これにより、運転計画作成装置10は、エネルギー使用量、電気料金およびCO単価を用いて運転計画を作成するので、さらにCO排出量を削減可能である。
【0097】
また、運転計画作成部15は、電気換算係数、一次エネルギー換算係数、一次エネルギー単価および予測データに基づく第1の値と、電気料金単価および予測データに基づく第2の値と、排出係数、CO単価および予測データに基づく第3の値とを算出し、算出された第1の値、第2の値および第3の値の和に基づいて、運転計画を作成する。
【0098】
これにより、第1の値~第3の値の和を用いることで、CO排出量を削減可能な運転計画を作成することができる。
【0099】
また、CO単価は、需要家にて設定される単価、市場で取引されるCO排出権の単価および市場で取引されるCO排出量に対する単価のうちのいずれかである。
【0100】
これにより、運転計画作成装置10は、需要家にて設定される単価、市場で取引されるCO排出権の単価および市場で取引されるCO排出量に対する単価のうちのいずれかを用いて、運転計画を作成することができる。
【0101】
(実施の形態の変形例2)
以下では、本変形例に係る運転計画作成装置について、図8を参照しながら説明する。図8は、本変形例に係るエネルギーリソース制御システム1aの機能構成を示すブロック図である。なお、以下では、実施の形態の変形例1との相違点を中心に説明し、実施の形態の変形例1と同一または類似の内容については説明を省略または簡略化する。本変形例に係る運転計画作成装置10aは、実施の形態の変形例1に係る運転計画作成装置10に加えて、実績算出部16を備える。なお、本変形例において、計測データ取得部13は、取得した計測データを実績算出部16にも出力する。
【0102】
実績算出部16は、取得した計測データに基づいて、エネルギーリソース30の実績値を算出する。省エネ法では、事業者のエネルギー使用量(原油換算値)が1500kl以上であった場合にエネルギーの使用状況などの定期報告が義務づけられており、実績算出部16は、例えば、当該定期報告に用いる実績値を算出する。実績算出部16は、例えば、電気換算係数に基づいて、需要家の事業所等のエネルギー使用量を実績値として算出してもよい。例えば、実績算出部16は、需要家における所定の時間ごとの電力の購入量(受電量)の実績値と、所定の時間ごとの電気換算係数とを演算することでエネルギーリソース30のエネルギー使用量の実績値を算出してもよい。実績算出部16は、全電源平均値または自家発再エネ係数に基づいて、需要家の事業所等のエネルギー使用量を実績値として算出してもよい。実績算出部16は、算出したエネルギー使用量からエネルギー消費原単位、業種別ベンチマーク、電気需要平準化評価原単位、電気需要最適化原単位などの実績値を算出してもよい。実績算出部16は、エネルギー消費原単位を算出する際に非化石エネルギーをエネルギー投入量(計測データ)から一部減算して算出するようにしてもよい。
【0103】
また、実績算出部16は、例えば、排出係数に基づいて、エネルギーリソース30のCO排出量(サプライチェーン排出量のScope1排出量またはScope2排出量)を実績値として算出してもよい。例えば、実績算出部16は、需要家における所定の時間ごとの電力の購入量(受電量)の実績値と、所定の時間ごとの排出係数とを演算することでエネルギーリソース30のCO排出量(サプライチェーン排出量のScope2排出量)の実績値を算出してもよい。
【0104】
また、実績算出部16は、運転計画作成装置10を管理する事業者または需要家に対して、機器制御量の調整により得られた利益を算出してもよい。
【0105】
以上のように、本変形例に係る運転計画作成装置10aは、さらに、電気換算係数に基づいて、エネルギーリソース30の実績値を算出し、算出した実績値を出力する実績算出部16を備えてもよい。また、本変形例に係る運転計画作成装置10aは、さらに、排出係数に基づいて、エネルギーリソース30の実績値を算出し、算出した実績値を出力する実績算出部16を備えてもよい。
【0106】
これにより、省エネ法改正により義務づけられる定期報告書を容易に作成することができる。
【0107】
(実施の形態の変形例3)
以下では、本変形例に係る運転計画作成装置について、図9を参照しながら説明する。図9は、本変形例に係るエネルギーリソース制御システム1bの機能構成を示すブロック図である。なお、以下では、実施の形態の変形例2との相違点を中心に説明し、実施の形態の変形例2と同一または類似の内容については説明を省略または簡略化する。
【0108】
特定卸供給事業者は、小売電気事業者などの事業者と調整力取引を行うことがある。例えば、特定卸供給事業者は、小売電気事業者、一般送配電事業者、発電事業者などの事業者からの要請に基づいて、需要家が有するエネルギーリソース30を当該要請に基づいた所望の制御条件で制御することがある。所望の制御条件は、例えば、デマンドレスポンス(DR)などの電力サービスに基づく条件である。本変形例に係る運転計画作成装置10bは、このような要請も考慮して運転計画を作成する。なお、調整力の許容範囲は、例えば、特定卸供給事業者と需要家との間の契約などにより予め設定されていてもよい。
【0109】
図9に示すように、本変形例に係る運転計画作成装置10bは、実施の形態の変形例2に係る運転計画作成装置10bに加えて、受信部17を備える。
【0110】
受信部17は、外部システム200からエネルギーリソース30の制御に関する指令を受信する。指令は、例えば、対象日の所定の時間ごとの、電気の使用量の調整量を含む。指令は、小売電気事業者および特定卸供給事業者の少なくとも一方から取得される。なお、指令には、電気の使用量を増やすことを示す上げ指令と、電気の使用量を減らすことを示す下げ指令とがある。指令の形態は契約または市場ルールの変更などにより変化し得る。
【0111】
また、運転計画作成装置10bの単価取得部12は、実施の形態の変形例2の単価取得部12に加えて、運転計画を作成する対象日の所定の時間ごとの調整単価を取得し、取得した調整単価を運転計画作成部15に出力する。調整単価は、例えば、外部システム200から取得される。
【0112】
図3に示すように、調整単価は、小売電気事業者および特定卸供給事業者の少なくとも一方との調整力の提供(調整力の売買)に関する単価であり、需要家と小売電気事業者との相対契約または需要家と特定卸供給事業者との相対契約における価格(単価)であってもよい。調整単価は、例えば、30分などの所定の時間ごとに決定される。調整単価は、例えば、需給調整市場などにおける市場価格(市場単価)に基づく価格であってもよく、5分、30分、3時間などの所定の時間ごとに決定される。調整単価は、指令に応じて調整した電力量に対して需要家に支払われる金額(インセンティブ)を算出するための単価であり、所定の時間ごとに設定されている。なお、調整単価には、電気の使用量を増やしたことに対して支払われる金額を算出するための上げ調整単価と、電気の使用量を減らしたことに対して支払われる金額を算出するための下げ調整単価とが存在する。
【0113】
本変形例に係る運転計画作成部15は、実施の形態の変形例2に加えて、指令および調整単価に基づいて運転計画を作成する。運転計画作成部15は、例えば、第1の値~第3の値に加えて、調整単価および予測データに基づいて第3の値を算出し、算出された第1の値、第2の値および第3の値の和に基づいて、運転計画を作成してもよい。運転計画作成部15は、例えば、以下の(式4)を用いて運転計画を作成する。
【0114】
最小化 w1×Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)×一次エネルギー換算係数×一次エネルギー単価+w2×Σ(需要電力量-Σ機器制御量it)×電気料金単価+w3×Σ排出係数×(需要電力量-Σ機器制御量it)×CO単価+w4×Σ(-Σ機器制御量it)×調整単価 ・・・(式4)
【0115】
(式4)の第1項~第3項は、(式3)と同じであり、第4項は、需要家による調整力の提供量に応じた価格(第4の値の一例)となる。運転計画作成部15は、(式4)を用いて、エネルギー使用量、電気料金およびCO排出量が最小となり、かつ、調整力の提供を最大化する所定の時間ごとの機器制御量に応じた運転計画を作成する。なお、w4は重み付け変数であり、予め設定されているが、動的に変更されてもよい。
【0116】
以上のように、本変形例に係る運転計画作成装置10bは、さらに、電力の小売を行う小売電気事業者(第1の事業者の一例)およびエネルギーリソースの制御を行う特定卸供給事業者(第2の事業者の一例)のうち少なくとも一方から、エネルギーリソース30の制御に関する指令を受信する受信部17を備え、単価取得部12(第3取得部の一例)は、小売電気事業者および特定卸供給事業者のうち少なくとも一方との調整力提供に関する調整単価を取得する。そして、運転計画作成部15は、さらに、調整単価および制御に関する指令に基づいて、エネルギーリソース30の運転計画を作成する。
【0117】
これにより、運転計画作成装置10bは、エネルギーリソース30の制御に関する指令(例えば、DR)に対応した運転計画を作成することができる。
【0118】
(その他の実施の形態)
以上、一つまたは複数の態様に係る運転計画作成装置等について、実施の形態等に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態等に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明に含まれてもよい。
【0119】
例えば、上記実施の形態等では、運転計画作成部は、(式1)~(式4)の値が最小となるように機器制御量を決定する例について説明したが、これに限定されず、例えば、需要家などが決定した基準値以下となるように機器制御量を決定してもよい。
【0120】
また、上記実施の形態等では、運転計画作成装置により作成された運転計画に基づいて、需要家のエネルギーリソースが制御される例について説明したが、作成された運転計画が需要家に提案されてもよい。運転計画作成装置は、例えば、需要家が管理する情報端末に作成した運転計画を送信してもよい。
【0121】
また、上記実施の形態等では、(式2)などに示すように、エネルギー使用量を価格に換算する場合に原油換算する例について説明したが、価格に換算できれば原油換算することに限定されない。例えば、一次エネルギー換算係数以外の公表されている換算係数が用いられてもよい。
【0122】
また、上記実施の形態の変形例1における(式3)において、第2項は含まれなくてもよい。運転計画作成部は、例えば、以下の(式5)を用いて運転計画を作成してもよい。
【0123】
最小化 w1×Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)×一次エネルギー換算係数×一次エネルギー単価+w3×Σ排出係数×(需要電力量-Σ機器制御量it)×CO単価 ・・・(式5)
【0124】
これにより、運転計画作成部は、エネルギー使用量およびCO排出量が最小となる所定の時間ごとの機器制御量に応じた運転計画を作成することができる。
【0125】
また、上記実施の形態の変形例3における(式4)において、第2項および第3項の少なくとも1つは含まれなくてもよい。運転計画作成部は、例えば、以下の(式6)を用いて運転計画を作成してもよい。
【0126】
最小化 w1×Σ電気換算係数×(使用量-Σ機器制御量it)×一次エネルギー換算係数×一次エネルギー単価+w4×Σ(-Σ機器制御量it)×調整単価 ・・・(式6)
【0127】
これにより、運転計画作成部は、エネルギー使用量を削減しつつ、DRに対応した運転計画を作成することができる。
【0128】
また、上記実施の形態等において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPUまたはプロセッサなどのプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリなどの記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0129】
また、フローチャートにおける各ステップが実行される順序は、本発明を具体的に説明するために例示するためのものであり、上記以外の順序であってもよい。また、上記ステップの一部が他のステップと同時(並列)に実行されてもよいし、上記ステップの一部は実行されなくてもよい。
【0130】
また、ブロック図における機能ブロックの分割は一例であり、複数の機能ブロックを一つの機能ブロックとして実現したり、一つの機能ブロックを複数に分割したり、一部の機能を他の機能ブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数の機能ブロックの機能を単一のハードウェアまたはソフトウェアが並列または時分割に処理してもよい。
【0131】
また、これらの全般的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の非一時的記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。プログラムは、記録媒体に予め記憶されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0132】
また、上記実施の形態等に係る運転計画作成装置は、単一の装置として実現されてもよいし、複数の装置により実現されてもよい。運転計画作成装置が複数の装置によって実現される場合、当該運転計画作成装置が有する各構成要素は、複数の装置にどのように振り分けられてもよい。例えば、運転計画作成装置の一部または全部の機能をコントローラが実現してもよい。運転計画作成装置が複数の装置で実現される場合、当該複数の装置間の通信方法は、特に限定されず、無線通信であってもよいし、有線通信であってもよい。また、装置間では、無線通信および有線通信が組み合わされてもよい。
【0133】
また、上記実施の形態等で説明した各構成要素は、ソフトウェアとして実現されても良いし、典型的には、集積回路であるLSIとして実現されてもよい。これらは、個別に1チップ化されてもよいし、一部または全てを含むように1チップ化されてもよい。ここでは、LSIとしたが、集積度の違いにより、IC、システムLSI、スーパーLSI、ウルトラLSIと呼称されることもある。また、集積回路化の手法はLSIに限るものではなく、専用回路(専用のプログラムを実行する汎用回路)または汎用プロセッサで実現してもよい。LSI製造後に、プログラムすることが可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)またはLSI内部の回路セルの接続若しくは設定を再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサを利用してもよい。更には、半導体技術の進歩または派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて構成要素の集積化を行ってもよい。
【0134】
システムLSIは、複数の処理部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータシステムである。ROMには、コンピュータプログラムが記憶されている。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムに従って動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0135】
また、本発明の一態様は、図4および図5のいずれかに示される運転計画作成方法に含まれる特徴的な各ステップをコンピュータに実行させるコンピュータプログラムであってもよい。
【0136】
また、例えば、プログラムは、コンピュータに実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明の一態様は、そのようなプログラムが記録された、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体であってもよい。例えば、そのようなプログラムを記録媒体に記録して頒布または流通させてもよい。例えば、頒布されたプログラムを、他のプロセッサを有する装置にインストールして、そのプログラムをそのプロセッサに実行させることで、その装置に、上記各処理を行わせることが可能となる。
【符号の説明】
【0137】
1、1a、1b エネルギーリソース制御システム
10、10a、10b 運転計画作成装置
11 係数取得部(第1取得部)
12 単価取得部(第3取得部)
13 計測データ取得部(第2取得部)
14 予測部
15 運転計画作成部
16 実績算出部
17 受信部
20 コントローラ
30 エネルギーリソース
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7
図8
図9