(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157145
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】作業機械におけるブーム下降制御システム
(51)【国際特許分類】
E02F 3/43 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
E02F3/43 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066859
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】皆木 良太
(72)【発明者】
【氏名】喜安 浩一
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA01
2D003BB01
2D003CA02
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】ブームを含む作業アームの先端部に交換可能な作業アタッチメントが装着された作業機械において、作業アタッチメントを交換しても操作具操作量に応じた下降速度でブームを下降させるための制御を安定した状態で行えるようにする。
【解決手段】装着された作業アタッチメント8の重量に関する情報をコントローラ21に入力するモニタ装置22を設けるとともに、コントローラ21に、交換可能な作業アタッチメント8の重量とブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧との関係を示したマップ35を設け、該マップ35に基づいて装着された作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧推定値を求めるとともに、該保持圧推定値に基づいてコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積を制御する構成にした。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体本体に上下揺動自在に軸支されるブームを少なくとも含む作業アームと、該作業アームの先端部に装着される交換可能な作業アタッチメントと、ヘッド側油室への油供給で伸長しヘッド側油室からの油排出で縮小して前記ブームを上下揺動せしめるブームシリンダと、ブームシリンダのヘッド側油室からの排出流量を制御するメータアウト開口を有した制御弁と、該制御弁の作動を制御する制御手段と、ブームを上下動するべく操作される操作具とを備えてなる作業機械において、装着された作業アタッチメントの重量に関する情報を制御手段に入力する情報入力手段を設ける一方、制御手段は、交換可能な作業アタッチメントの重量とブームシリンダヘッド側油室の保持圧との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるとともに、ブーム下降時におけるブームシリンダヘッド側油室からの排出流量を操作具操作量に応じて設定される目標排出流量にするべく前記保持圧推定値に基づいて制御弁のメータアウト開口面積を制御することを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【請求項2】
請求項1において、制御手段は、マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、ブームシリンダヘッド側油室の保持圧のマップ値を該保持圧マップ値の大きさに応じて複数のグループにグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧マップ値が属するグループの保持圧代表値を、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値とすることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【請求項3】
請求項1において、制御手段は、マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、作業アタッチメントを該作業アタッチメントの重量の大きさに応じて複数のグループにグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメントが属するグループの保持圧代表値を、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値とすることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項において、マップは、ブームを機体本体に揺動自在に軸支する支軸回りのモーメントに基づいて作業アタッチメントの重量とブームシリンダヘッド側油室の保持圧との関係を線形関係で表したものであることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【請求項5】
請求項1において、作業アタッチメントの重量には、該作業アタッチメントを作業アームの先端部に取付けるために用いられるカプラーの重量を含むことを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【請求項6】
請求項1において、作業アームは、ブームと該ブームの先端部に揺動自在に軸支されるスティックとから構成され、作業アタッチメントは、ブームの先端部に取付けられるものとスティックの先端部に取付けられるものとがあり、マップは、作業用アタッチメントがブームの先端部に取付けられた場合のマップと、スティックの先端部に取付けられた場合のマップとで個別に設けられることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械におけるブーム下降制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械のなかには、機体本体に上下揺動自在に軸支されるブームや、該ブームの先端部に揺動自在に支持されるスティック等から構成される作業アームを備え、該作業アームの先端部に、バケットやブレーカ、破砕機等の作業アタッチメントを交換可能に装着するとともに、前記ブームの上下動を、ヘッド側油室への油供給で伸長しヘッド側油室からの油排出で縮小するブームシリンダの伸縮作動で行うように構成したものがある。このような作業機械では、作業アームや作業アタッチメントの重量がブームを下降させる力として作用するため、ブームシリンダのヘッド側油室の圧力は高圧となっており、このため、ブームの下降速度の制御は、通常、ブームシリンダヘッド側油室からの排出流量制御(メータアウト制御)によって行われる。この場合、例えば、ブームシリンダヘッド側油室からの排出油路にメータアウト開口を有した制御弁を設け、該制御弁のメータアウト開口面積をブーム用操作具の操作量に応じて増減制御することで、操作具操作量に応じたブーム下降速度となるように制御される。
しかるに、前述したようにブームシリンダヘッド側油室からの排出流量制御でブームの下降速度を制御する場合、ヘッド側油室からの排出流量は、制御弁のメータアウト開口の開口面積だけでなく、ブームシリンダヘッド側油室の圧力に応じて増減するとともに、該ブームシリンダヘッド側油室の圧力は、ブームを下降させる力として作用する作業アタッチメントの重量によって大きく変化する。このため、メータアウト開口の開口面積が同じ、つまりブーム用操作具の操作量が同じであっても、装着された作業アタッチメトンの重量によってブームの下降速度が変化してしまい、ブーム下降速度を正確にコントロールすることができず操作性に劣るという問題がある。
そこで従来、作業アタッチメントを交換しても、操作具操作量に応じたブーム下降速度を確保できるようにした技術として、例えば、ブームシリンダヘッド側油室からの排出流量を制御する制御弁(メータアウト制御弁)と、該制御弁を通過する流量を検出する流量検出手段と、外力によってブームシリンダに作用する保持圧を検出する圧力センサとを設け、これら検出された保持圧と流量とに基づいて保持圧に対抗する圧力が制御弁の入口側に発生するように制御弁の開口面積を制御するようにした技術(例えば、特許文献1参照。)や、ブームの下降時にブームシリンダのヘッド側油室からの排出油をロッド側油室に供給する再生回路に電磁比例減圧弁を設け、該電磁比例減圧弁の開度を、圧力センサにより検出されるヘッド側油室の圧力と、予め設定されるヘッド側油室の目標圧力値との差圧に基づいて制御するようにした技術(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-106304号公報
【特許文献2】特開2010-78035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1、2のものは、いずれも、圧力センサから随時入力されるブームシリンダヘッド側油室の圧力に基づいて、メータアウト制御弁の開口面積や電磁比例減圧弁の開度を制御する構成になっている。しかるに、圧力センサから随時入力される圧力は動的圧力であって、作業アタッチメントの使用状況によっては不安定で予測できない圧力値が入力される可能性があり、このような動的圧力を用いると制御弁や電磁比例減圧弁が不規則に動いて安定した制御を行うことができないという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体本体に上下揺動自在に軸支されるブームを少なくとも含む作業アームと、該作業アームの先端部に装着される交換可能な作業アタッチメントと、ヘッド側油室への油供給で伸長しヘッド側油室からの油排出で縮小して前記ブームを上下揺動せしめるブームシリンダと、ブームシリンダのヘッド側油室からの排出流量を制御するメータアウト開口を有した制御弁と、該制御弁の作動を制御する制御手段と、ブームを上下動するべく操作される操作具とを備えてなる作業機械において、装着された作業アタッチメントの重量に関する情報を制御手段に入力する情報入力手段を設ける一方、制御手段は、交換可能な作業アタッチメントの重量とブームシリンダヘッド側油室の保持圧との関係を示したマップを備え、該マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるとともに、ブーム下降時におけるブームシリンダヘッド側油室からの排出流量を操作具操作量に応じて設定される目標排出流量にするべく前記保持圧推定値に基づいて制御弁のメータアウト開口面積を制御することを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、制御手段は、マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、ブームシリンダヘッド側油室の保持圧のマップ値を該保持圧マップ値の大きさに応じて複数のグループにグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧マップ値が属するグループの保持圧代表値を、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値とすることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
請求項3の発明は、請求項1において、制御手段は、マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、作業アタッチメントを該作業アタッチメントの重量の大きさに応じて複数のグループにグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメントが属するグループの保持圧代表値を、装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値とすることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか一項において、マップは、ブームを機体本体に揺動自在に軸支する支軸回りのモーメントに基づいて作業アタッチメントの重量とブームシリンダヘッド側油室の保持圧との関係を線形関係で表したものであることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
請求項5の発明は、請求項1において、作業アタッチメントの重量には、該作業アタッチメントを作業アームの先端部に取付けるために用いられるカプラーの重量を含むことを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
請求項6の発明は、請求項1において、作業アームは、ブームと該ブームの先端部に揺動自在に軸支されるスティックとから構成され、作業アタッチメントは、ブームの先端部に取付けられるものとスティックの先端部に取付けられるものとがあり、マップは、作業用アタッチメントがブームの先端部に取付けられた場合のマップと、スティックの先端部に取付けられた場合のマップとで個別に設けられることを特徴とする作業機械におけるブーム下降制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、作業アタッチメントを交換しても、ブーム用操作具の操作量に応じた下降速度でブームを下降させるための制御を安定した状態で行えることになって、操作性の向上に大きく貢献できる。
請求項2、3の発明とすることにより、より安定したブーム下降制御を行えるとともに、チューニングにも優れる。
請求項4の発明とすることにより、様々な作業アタッチメントの重量に対応する保持圧マップ値を容易に求めることができる。
請求項5の発明とすることにより、カプラーの重量も加味して保持圧推定値が求められることになって、適切な保持圧推定値を得ることができる。
請求項6の発明とすることにより、作業アタッチメントが取付けられる作業アーム構成部材がブームであってもスティックであっても、それぞれ適切な保持圧推定値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】最大リーチ姿勢の油圧ショベルの概略側面図である。
【
図3】ブーム下降制御システムの制御ブロック図である。
【
図4】(A)はスティックマウント用マップ、(B)はブームマウント用マップを示す図である。
【
図5】作業アタッチメントのグループ分けを示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の作業機械の一例である油圧ショベル1の概略側面図であって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に支持される上部旋回体(本発明の機体本体に相当する)3、該上部旋回体3に装着されるフロント作業機4等の各部から構成されており、さらに該フロント作業機4は、基端部が上部旋回体3にブーム支軸5aを介して上下揺動自在に支持されるブーム5と、該ブーム5の先端部にスティック支軸6aを介して前後揺動自在に支持されるスティック6とから構成される作業アーム7、スティック6の先端部にアタッチメント支軸8aを介して用動自在に取付けられる作業アタッチメント8、スティック6を揺動させるべく伸縮作動するスティックシリンダ10、作業アタッチメント8を揺動させるべく伸縮作動するバケットシリンダ11、バケットシリンダ11の先端部とスティック6、作業アタッチメント8とをそれぞれ連結する第一、第二リンク12、13等の各種部材から構成されている。
【0009】
さらに、14はブーム5を上下揺動させるべく伸縮作動するブームシリンダであって、該ブームシリンダ14は、ヘッド側端部がヘッド側支軸14cを介して上部旋回体3の前部に揺動自在に支持され、ロッド側端部がロッド側支軸14dを介してブーム5の長さ方向中間部に揺動自在に支持されており、該ブームシリンダ14のヘッド側油室14a(
図1には図示せず)への油供給で伸長してブーム5を上昇せしめ、ヘッド側油室14aからの油排出で縮小してブーム5を下降せしめるように構成されている。
【0010】
ここで、前記
図1には、作業アーム7の先端部に取付けられる作業アタッチメント8としてバケットを図示したが、作業アーム7の先端部には、油圧ショベル1の行う作業内容等に応じて、ブレーカ(ハンマー)、コンパクタ、チルトバケット、クラムシェルバケット、サムバケット、グラップル、破砕機(いずれも図示せず)等の各種作業ツールを交換可能に装着できるようになっている。さらに、これら作業ツールを作業アーム7の先端部に取付ける場合に、
図1に示すバケットのようにカプラーを用いない場合もあるが、図示しない各種カプラー(ピン固定カプラー、クイックカプラー、フック付きカプラー、作業ツールを作業アームに対してチルトあるいは回転させることができるカプラー等)を用いる場合もあり、さらに、カプラーを用いる場合に作業ツールとカプラーとの組み合わせは、カプラーの機能等に応じて適宜選択できるようになっている。尚、本実施の形態において、カプラーを用いる場合には、作業ツールおよびカプラーを作業アタッチメント8とし、カプラーを用いない場合には、作業ツールを作業アタッチメント8とする。
また、
図1には、本発明の作業アーム7を構成するアーム部材としてブーム5およびスティック6を図示するとともに、スティック6の先端部に作業アタッチメント8が取付けられているが、前述したような各種作業アタッチメント8のなかにはブーム5の先端部に取付けられるものもあり、その場合には作業アーム7にスティック6は含まれない。また、作業アーム7は、機体本体に上下揺動自在に軸支されるブーム5を少なくとも含むが、該ブーム5に加えて作業アーム7を構成する他のアーム部材がある場合、該アーム部材は前記スティック6に限定されることなく、種々の形状、数のアーム部材が用いられていてもよい。
【0011】
次いで、前記ブームシリンダ14の油給排制御について、
図2の概略油圧回路図に基づいて説明すると、該
図2において、15はブームシリンダ14の油圧供給源となる油圧ポンプ、16はパイロット圧の供給源となるパイロットポンプ、17は油タンク、18はブームシリンダ14に対する油給排制御を行うコントロールバルブである。尚、油圧ショベル1の油圧回路には、ブームシリンダ14以外の他の油圧アクチュエータ(前記スティックシリンダ10やバケットシリンダ11、あるいは上部旋回体3を旋回せしめる旋回モータ(図示せず)、走行モータ(図示せず)等)に対する制御回路や、油圧ポンプの吐出流量制御用の回路等も設けられるが、それらについての図示、説明は省略する。
【0012】
前記コントロールバルブ(本発明の制御弁に相当する)18は、伸長側、縮小側パイロットポート18a、18bを有したパイロット作動式の三位置切換スプール弁であって、両パイロットポート18a、18bにパイロット圧が入力されていない状態では、ブームシリンダ14に対する油給排を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側パイロットポート18aにパイロット圧が入力されることにより伸長側位置Xに切換わって、油圧ポンプ15からの供給油を伸長側供給用開口18cを経由してブームシリンダ14のヘッド側油室14aに供給するとともに、ロッド側油室14bからの排出油を伸長側排出用開口18dを経由して油タンク17に流す一方、縮小側パイロットポート18bにパイロット圧が入力されることにより縮小側位置Yに切換わって、油圧ポンプ15からの供給油を縮小側供給用開口18eを経由してブームシリンダ14のロッド側油室14bに供給するとともに、ヘッド側油室14aからの排出油を縮小側排出用開口18f(本発明のメータアウト開口に相当する)を経由して油タンク17に流すようになっている。そして、前記伸長側供給用、排出用開口18c、18d、縮小側供給用、排出用開口18e、18fの開口面積は、伸長側、縮小側パイロットポート18a、18bに入力されるパイロット圧に応じて移動するスプールの移動ストロークによって増減制御されるようになっている。
【0013】
さらに、
図2において、19、20は伸長側、縮小側の電磁比例弁であって、これら伸長側、縮小側電磁比例弁19、20は、後述するコントローラ21から出力される制御信号に基づいて、前記コントロールバルブ18の伸長側、縮小側パイロットポート18a、18bにそれぞれパイロット圧を出力する。そして、該伸長側、縮小側電磁比例弁19、20から出力されるパイロット圧の増減によって、コントロールバルブ18のスプール移動ストロークが増減して前述した伸長側供給用、排出用開口18c、18d、縮小側供給用、排出用開口18e、18fの開口面積が増減制御されるようになっている。
【0014】
ここで、ブーム5を空中下降させる場合(作業アタッチメント8が接地していない状態でブーム5を下降させる場合)、フロント作業機4(作業アーム7や作業アタッチメント8等)の重量がブームシリンダ14を縮小させる力として作用するため、ブームシリンダ14のヘッド側油室14aの圧力はロッド側油室14bの圧力に比して十分に高圧になっている。このため、ブーム5の下降速度の制御は、ブームシリンダヘッド側油室14aからの排出流量制御(メータアウト制御)によって行われるようになっている。
【0015】
一方、前記コントローラ(本発明の制御手段に相当する)21は、各種油圧アクチュエータ用の操作具操作等に基づいて、各種油圧アクチュエータ用コントロールバルブの制御や、油圧ポンプ15の吐出流量制御等を行うが、該コントローラ21の行う制御のうち、ブーム5の下降制御に関する部分を
図3の制御ブロック図に基づいて説明すると、コントローラ21は、入力側に、モニタ装置22、ブーム5を上下動するべく操作されるブーム用操作具23a(本発明の操作具に相当する)の操作方向および操作量を検出するブーム操作検出手段23等が接続され、出力側に、前記縮小側電磁比例弁20が接続されるとともに、取付けアーム部材判定部25、作業アタッチメント重量計算部26、保持圧マップ部27、グループ分け部28、保持圧推定値設定部29、目標排出流量設定部30、開口面積計算部32、バルブ制御部33等の各部が設けられている。
【0016】
前記モニタ装置22は、本発明の情報入力手段に相当するものであって、本実施の形態では、上部旋回体3に搭載されるキャブ3a内に配設されており、交換可能な各種作業アタッチメント8の情報等を表示する表示画面(図示せず)や、キーボートやタッチパネル等の操作手段(図示せず)を有しているとともに、各種作業アタッチメント8の重量に関する情報が収納されている。そして、該モニタ装置22をオペレータが操作することで、装着された作業アタッチメント8の重量情報がコントローラ21に入力される。例えば、モニタ装置22の表示画面に交換可能な作業アタッチメント8の作業ツールT1~Tn、カプラーC1~Cnが表示され、これら作業ツールT1~Tn、カプラーC1~Cnのなかから装着された作業アタッチメント8の作業ツールTとカプラーC(カプラーが用いられている場合)とを操作手段で選択することで、装着された作業ツールT、カプラーCの重量Wt、Wcがコントローラ21に入力される。この場合に、重量物を運ぶ等の重負荷がかかる特定の作業ツールについては、作業ツールそのものの重量だけでなく、該作業ツールに対応した負荷重量(例えば最大推定負荷重量の1/2)の情報についてもモニタ装置22に収納されていて、作業ツールそのものの重量に上記負荷重量を加算した重量を、作業ツールの重量Wtとしてコントローラ21に出力する構成になっている。
さらに、モニタ装置22は、作業アタッチメント8がブーム5、スティック6の何れのアーム部材に取付けられているかの情報を操作手段で選択できるようになっており、該取付けアーム部材の情報もコントローラ21に入力されるようになっている。
尚、本実施の形態では、各種作業アタッチメント8の重量に関する情報がモニタ装置22に収納されている構成にしたが、これらの情報をコントローラ21に収納し、モニタ装置22では選択操作のみを行う構成にすることもできる。この場合であっても、モニタ装置22の操作に基づいて装着された作業アタッチメント8の重量に関する情報がコントローラ21に入力されることになる。
【0017】
次いで、前記コントローラ21の行うブーム5の下降制御について、前記
図3に基づいて説明すると、コントローラ21は、前記モニタ装置22から出力された情報を、取付けアーム部材判定部25および作業アタッチメント重量計算部26に入力する。
前記取付けアーム部材判定部25は、モニタ装置22から入力される情報に基づいて、作業アタッチメント8がブーム5、スティック6の何れに取付けられているかを判定し、該判定結果を保持圧マップ部27に出力する。
また、前記作業アタッチメント重量計算部26は、モニタ装置22から入力される情報に基づいて、作業アタッチメント8の重量Wを計算する。該作業アタッチメント8の重量Wの計算は、モニタ装置22により選択された作業ツールTの重量WtとカプラーCの重量Wcとを加算(W=Wt+Wc)することで行われる。そして、該計算された作業アタッチメント8の重量Wを、保持圧マップ部27に出力する。
【0018】
前記保持圧マップ部27には、装着可能な作業アタッチメント8の重量とブームシリンダ14のヘッド側油室14aの保持圧との関係を示したマップ35が予め備えられている。該マップ35は、作業アタッチメント8がブーム5の先端部に取付けられている場合のブームマウント用マップ35aと、スティック6の先端部に取付けられた場合のスティックマウント用マップ35bとが個別に設けられていて、取付けアーム部材判定部25の判定結果に基づいてブームマウント用マップ35a、スティックマウント用マップ35bの何れかが選択される。
そして、保持圧マップ部27は、選択されたブームマウント用マップ35aあるいはスティックマウント用マップ35bを用いて、前記作業アタッチメント重量計算部26で計算された作業アタッチメント8の重量Wに対応する保持圧のマップ値Pmを求める。そして、該保持圧マップ値Pmを、グループ分け部28に出力する。
【0019】
ここで、前記マップ35(ブームマウント用マップ35a、スティックマウント用マップ35b)は、作業アタッチメント8の重量Wとブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧Pとの関係を線形関係で表したものであるが、該マップ35の作成方法について、以下、交換可能な作業アタッチメント8がスティック6の先端部に取付けられた場合のスティックマウント用マップ35bを例にとって説明する。
前記
図1には、スティック6の先端部にアタッチメント支軸8aを介して作業アタッチメント8(バケット)を取付けるとともに、作業アーム7(ブーム5およびスティック6)の姿勢を、アタッチメント支軸8aの軸心高さがブーム支軸5aの軸心高さと同高さとなり(同水平線H上に位置し)、かつ、アタッチメント支軸8aの軸心がブーム支軸5aの軸心から最遠位置となる最大リーチ姿勢にしたときの油圧ショベル1を示しているが、該最大リーチ姿勢は、フロント作業機4の重量によるブーム支軸5a回りのモーメントMが最大となる姿勢であって、該最大リーチ姿勢におけるフロント作業機4の重量によるモーメントMは、以下の式(1)で求められる。
M=(W×L×g)+Σ(Wi×Li×g) ・・・(1)
上記式(1)および下記の式(3)、(4)において、Wは作業アタッチメント8の重量、Lは最大リーチ姿勢におけるブーム支軸5aの軸心位置から作業アタッチメント8の重心位置までの水平距離、Wi(i=1、2、3、・・・x)はフロント作業機4を構成する作業アタッチメント8以外の各部材A1、A2、A3、・・・Ax(
図1に示すフロント作業機4では、ブーム5、スティックシリンダ10、スティック6、バケットシリンダ11、第一リンク12、第二リンク13等)の重量、Li(i=1、2、3、・・・x)は前記最大リーチ姿勢におけるブーム支軸5aの軸心位置から作業アタッチメント8以外の各部材A1、A2、A3、・・・Axの重心位置までの水平距離、gは重力加速度である。尚、
図1に、ブーム支軸5aの軸心位置から作業アタッチメント8、ブーム5、スティックシリンダ10、スティック6、バケットシリンダ11、第一リンク12、第二リンク13の軸心位置までの水平距離L、L1、L2、L3、L4、L5、L6を示す。
一方、ブームシリンダ14のヘッド側油室14aの保持圧Pによるブーム支軸5a回りのモーメントMは、以下の式(2)で求められる。
M=P×S×R ・・・(2)
上記式(2)および下記の式(3)、(4)において、Pはブームシリンダ14のヘッド側油室14aの保持圧、Sはブームシリンダ14のピストンのヘッド側受圧面積、Rはモーメントアームであって、該モーメントアームRは、ブーム支軸5aの軸心からブームシリンダ14の作用線(ブームシリンダ14のヘッド側支軸14cとロッド側支軸14dとを結ぶ直線)に至る垂線の長さである。
そして、前記フロント作業機4の重量によるブーム支軸5a回りのモーメントMと、ブームシリンダ14のヘッド側油室14aの保持圧Pによるブーム支軸5a回りのモーメントMとの釣り合い式から、フロント作業機4の最大リーチ姿勢におけるブームシリンダ14のヘッド側油室14aの保持圧Pは、以下の式(3)で表される。
P={(W×L×g)/(S×R)}+{Σ(Wi×Li×g)/(S×R)} ・・・(3)
そして、前記式(3)における「Σ(Wi×Li×g)/(S×R)」は、作業アタッチメント8以外の要素であって装着される作業アタッチメント8に関係なく一定の値({Σ(Wi×Li×g)/(S×R)}=b:定数)であり、さらに、作業アタッチメント8を交換してもブーム支軸5aの軸心位置から作業アタッチメント8の重心位置までの水平距離Lを一定とみなした場合には、前記式(3)における「(L×g)/(S×R)」も一定の値({(L×g)/(S×R)}=a:定数)となるから、式(3)は以下の式(4)のように表すことができる。
P=(a×W)+b ・・・(4)
そして、前記式(4)の「a」および「b」を、フロント作業機4を構成する各部材およびブームシリンダ14の既知のデータあるいは測定データに基づいて演算して求めることで、作業アタッチメント8の重量Wとブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧Pとの関係を線形関係で表したスティックマウント用マップ35b(
図4(A)参照)が作成される。
また、作業アタッチメント8がブーム5の先端部に取付けられている場合には、前記式(4)の「a」、「b」の値は異なるが、同様にして作業アタッチメント8の重量Wとブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧Pとの関係を線形関係で表したブーム用マップ35a(
図4(B)参照)が作成される。この場合、アタッチメント支軸8aはブーム5の先端部に設けられるとともに、最大リーチ姿勢は、アタッチメント支軸8aの軸心高さがブーム支軸5aの軸心高さと同高さとなり(同水平線上に位置し)、かつ、アタッチメント支軸8aの軸心がブーム支軸5aの軸心から最遠位置となる姿勢である。
【0020】
そして、前述したように、前記マップ35(ブームマウント用マップ35aまたはスティックマウント用マップ35b)を用いて、保持圧マップ部27において装着された作業アタッチメント8の重量Wに対応する保持圧のマップ値Pmが求められるとともに、該保持圧マップ値Pmは、グループ分け部28に出力されるが、該グループ分け部28では、保持圧のマップ値Pmを該保持圧マップ値Pmの大きさに応じて複数のグループ(本実施の形態では、第一、第二、第三グループG1、G2、G3の三つのグループ)にグループ分けする。この場合に、閾値設定部28aにおいてグループ数と同数の保持圧閾値Pt(本実施の形態では、第一、第二、第三保持圧閾値Pt1、Pt2、Pt3(Pt1≦Pt2≦Pt3)を設定し、該保持圧閾値を用いてグループ分けする。本実施の形態では、保持圧マップ値Pmが第一保持圧閾値Pt1以下(Pm≦Pt1)の場合には第一グループG1とし、第一保持圧閾値Pt1を超えて第二保持圧閾値Pt2以下(Pt1<Pm≦Pt2)の場合には第二グループG2とし、第二保持圧閾値Pt2を超えて第三保持圧閾値Pt3以下(Pt2<Pm≦Pt3)の場合には第三グループG3とする。これら保持圧閾値の値は、油圧ショベル1の大きさや仕様等に応じて、例えば前記モニタ装置22等の外部入力手段を用いて適宜変更することができる。そして、グループ分け部28は、グループ分けの結果、つまり、保持圧マップ値Pmが第一、第二、第三の何れのグループに属するかを保持圧推定値設定部29に出力する。
【0021】
ここで、
図5に、交換可能な種々の種類、大きさの作業ツールT1~T25(バケット、ブレーカ(ハンマー)、コンパクタ、チルトバケット、クラムシェルバケット、サムバケット、グラップル、破砕機等)を、カプラー無しあるいは作業ツールT1~T25と組み合わせ可能なカプラーC1~C9を介して、スティック6あるいはブーム5の先端部に取付けた各場合において、マップ35(ブームマウント用マップ35aまたはスティックマウント用マップ35b)を用いて作業アタッチメント8(作業ツールTおよびカプラーC)の重量Wに対応する保持圧マップ値Pmを求め、保持圧マップ値Pmをグループ分け(第一、第二、第三グループG1、G2、G3)した結果例を示す。
【0022】
一方、前記保持圧推定値設定部29は、グループ分け部28から保持圧マップ値Pmが属するグループが入力されると、各グループ毎に予め設定された保持圧代表値を装着された作業アタッチメント8に対応する保持圧推定値Pとして設定し、該保持圧推定値Pを開口面積計算部32に出力する。本実施の形態では、各グループの保持圧代表値は、該グループの最大保持圧マップ値Pm、つまり、第一グループG1は第一保持圧閾値Pt1、第二グループG2は第二保持圧閾値Pt2、第三グループG3は第三保持圧閾値Pt3にそれぞれ設定されており、これら第一、第二、第三保持圧閾値Pt1、Pt2、Pt3が、それぞれ第一、第二、第三グループG1、G2、G3に属する作業アタッチメント8の保持圧推定値Pとなる。
【0023】
一方、前述したように、コントローラ21の入力側には、ブーム用操作具23aの操作を検出するブーム操作検出手段23が接続されているが、該ブーム操作検出手段23から出力された操作信号は、コントローラ21の目標排出流量設定部30に入力される。該目標排出流量設定部30は、ブーム操作検出手段23からブーム下降側の操作信号が入力された場合に、ブーム用操作具23aの操作量に応じたブーム下降速度にするべく、ブーム用操作具23aの操作量に応じてブームシリンダ14のヘッド側油室14aからの目標排出流量Qtを設定する。そして、該目標排出流量Qtを開口面積計算部32に出力する。
【0024】
前記開口面積計算部32は、前記保持圧推定値設定部29から入力される保持圧推定値Pと、目標排出流量設定部30から入力される目標排出流量Qtとに基づき、下記に示すオリフィスの式(5)から導いた式(6)を用いて、コントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積を計算する。
Q=C×A×√(ΔP/ρ) ・・・(5)
A=(√ρ/C)×(Qt/√P) ・・・(6)
上記式(5)において、Qはオリフィスの通過流量、Aはオリフィスの開口面積、ΔPはオリフィスの前後差圧、Cは流量係数、ρは流体密度である。
また、上記(6)において、Aはコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積、Qtは目標排出流量設定部30で設定された目標排出流量、Pは保持圧推定値設定部29で設定された保持圧推定値、Cは流量係数、ρは流体密度である。尚、式(6)では、縮小側排出用開口18fの下流側の圧力(タンク圧)を「0(ゼロ)」とみなしている。また、式(6)における「√ρ/C」の値は定数とみなすとともに、該「√ρ/C」の値は、例えば前記モニタ装置22等の外部入力手段を用いて定数設定部32aで設定されて開口面積計算部32に入力される。
そして、前記式(6)を用いて計算されたコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積は、バルブ制御部33に出力される。
【0025】
前記バルブ制御部33は、前記開口面積計算部32から入力される縮小側排出用開口18fの開口面積に基づいて、該開口面積となるコントロールバルブ18のスプール移動ストロークを求める。さらに、該ストロークまでスプールを移動させるための縮小側パイロットポート18bへの入力パイロット圧を求め、さらに該パイロット圧を出力するための縮小側電磁比例弁20への電流指令値を求めて、該電流指令値を制御信号として縮小側電磁比例弁20に出力する。これにより、コントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fは、前記開口面積計算部32で計算された開口面積となるように制御される。そして、このようにコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積を制御することで、ブームシリンダ14のヘッド側油室14aからの排出流量を、ブーム用操作具23aの操作に応じて設定された目標排出流量Qtとなるように制御できることになる。
【0026】
叙述の如く構成された実施の形態において、油圧ショベル1は、上部旋回体(機体本体)に上下揺動自在に軸支されるブーム5を少なくとも含む作業アーム7と、該作業アーム7の先端部に装着される交換可能な作業アタッチメント8と、ヘッド側油室14aへの油供給で伸長しヘッド側油室14bからの油排出で縮小してブーム5を上下揺動せしめるブームシリンダ14と、ブームシリンダ14のヘッド側油室14aからの排出流量を制御する縮小側排出用開口(メータアウト開口)18fを有したコントロールバルブ(制御弁)18と、該コントロールバルブ18の作動を制御するコントローラ(制御手段)21と、ブーム5を上下動するべく操作されるブーム用操作具23aとを備えているが、さらに油圧ショベル1には、装着された作業アタッチメント8の重量に関する情報をコントローラ21に入力するモニタ装置(情報入力手段)22が設けられている。そして、前記コントローラ21は、交換可能な作業アタッチメント8の重量とブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧との関係を示したマップ35を備えており、該マップ35に基づいて装着された作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧推定値を求めるとともに、ブーム5の下降時におけるブームシリンダヘッド側油室14aからの排出流量をブーム用操作具23aの操作量に応じて設定される目標排出流量にするべく前記保持圧推定値に基づいてコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積を制御することになる。
【0027】
このように本発明の実施の形態にあっては、ブーム5下降時におけるコントロールバルブ18の縮小側排出用開口18fの開口面積を、作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧推定値に基づいて制御することで、作業アタッチメント8の交換に伴い作業アタッチメント8の重量が変更しても、ブームシリンダ14からの排出流量をブーム用操作具23aの操作量に応じて設定される目標排出流量となるように、つまりブーム5の下降をブーム用操作具23aの操作量に応じた下降速度で行えるように制御できることになるが、この場合に、前記保持圧推定値は、コントローラ21に設けられたマップ35に基づき装着された作業アタッチメント8の重量に対応して求められる固定値であるから、圧力センサから随時入力されるブーシリンダヘッド側油室14aの圧力検出値を保持圧として排出流量制御を行う場合のように、縮小側排出用開口18fの開口面積が圧力検出値に応じて不規則に変化して制御が不安定になってしまうような不具合がなく、安定した排出流量制御を行えることになる。この結果、作業アタッチメント8を交換しても、ブーム用操作具23aの操作量に応じた下降速度でのブーム5下降を安定した状態で行えることになって、操作性の向上に大きく貢献できる。
【0028】
さらにこのものにおいて、コントローラ21は、マップ35に基づいて装着された作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、ブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧のマップ値を該保持圧マップ値の大きさに応じて複数のグループ(本実施の形態では第一、第二、第三グループG1、G2、G3の三つのグループ)にグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値(本実施の形態では第一、第二、第三保持圧閾値Pt1、Pt2、Pt3)を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧マップ値が属するグループの保持圧代表値を、装着された作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧推定値としているが、このように保持圧マップ値をグループ分けし、各グループの保持圧代表値を排出流量制御に用いる保持圧推定値とすることで、より安定したブーム下降制御を行えるとともに、チューニングにも優れる。
【0029】
さらに、前記マップ35は、ブーム5を機体本体に揺動自在に軸支する支軸(ブーム支軸5a)回りのモーメントに基づいて作業アタッチメント8の重量とブームシリンダヘッド側油室14aの保持圧との関係を線形関係で表したものであり、このように線形関係で表したマップ35を用いることで、様々な作業アタッチメント8の重量に対応する保持圧マップ値を容易に求めることができる。
【0030】
また、このものにおいて、作業アタッチメント8の重量には、該作業アタッチメント8を作業アーム7の先端部に取付けるために用いられるカプラーの重量を含む構成になっている。これにより、カプラーを用いる場合であっても、該カプラーの重量も加味して保持圧推定値が求められることになって、適切な保持圧推定値を得ることができる。
【0031】
また、本実施の形態において、作業アーム7は、ブーム5と該ブーム5の先端部に揺動自在に軸支されるスティック6とから構成される一方、作業アタッチメント8は、ブーム5の先端部に取付けられるものとスティック6の先端部に取付けられるものとがあり、そして、交換可能な作業アタッチメント8の重量と保持圧との関係を示したマップ35は、作業用アタッチメント8がブーム5の先端部に取付けられた場合のマップ(ブームマウント用マップ35a)と、スティック6の先端部に取付けられた場合のマップ(スティックマウント用マップ35b)とが個別に設けられている。このように、作業アタッチメント7が取付けられる作業アーム構成部材(ブーム5、スティック6)に応じて個別にマップ35を設けることで、作業アタッチメント8が取付けられる作業アーム構成部材がブーム5であってもスティック6であっても、それぞれ適切な保持圧推定値を得ることができる。
【0032】
尚、本実施の形態は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、マップに基づいて装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値を求めるにあたり、作業アタッチメントを該作業アタッチメントの重量の大きさに応じて複数のグループにグループ分けし、各グループ毎に保持圧の代表値を予め設定するとともに、装着された作業アタッチメントが属するグループの保持圧代表値をマップを用いて求め、該保持圧代表値を装着された作業アタッチメントの重量に対応する保持圧推定値とする構成にすることもできる。このようにグループ分けして保持圧代表値を保持圧推定値とすることで、上記実施の形態の場合と同様に、より安定したブーム下降制御を行えるとともに、チューニングにも優れる。
また、上記実施の形態において、コントローラ21の開口面積計算部32で縮小側排出用開口(メータアウト開口)18fの開口面積を計算する場合、前述したように式(6)を用いて計算しているが、この計算に、コントロールバルブ18や油圧配管の圧力損失を考慮した補正値を追加することで、より正確な開口面積制御を行うことができる。
さらにまた、上記実施の形態では、作業アタッチメントの重量とブームシリンダヘッド側油室の保持圧との関係を示すマップは、作業アームが最大リーチ姿勢のときを想定して作成されている。これは、最大リーチ姿勢のときに保持圧が最も高くなると仮定するとともに、保持圧が最も高くなったときを想定して制御を行うことで、ブーム下降速度が予想速度よりも速くなってしまうことを確実に回避できるようにしたものであるが、作業機械の行う作業内容によっては保持圧がより高くなる場合もあると考えられ、このような場合に備えてマップに補正値を追加することもできる。
また、本発明は、油圧ショベルに限定されることなく、ブームを含む作業アームの先端部に交換可能な作業アタッチメトンが装着された各種作業機械のブーム下降制御システムに実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械において、作業アタッチメントを交換した場合のブーム下降制御システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
5 ブーム
5a ブーム支軸
6 スティック
7 作業アーム
8 作業アタッチメント
14 ブームシリンダ
14a ヘッド側油室
18 コントロールバルブ
18f 縮小側排出用開口
21 コントローラ
22 モニタ装置
23a ブーム用操作具
27 保持圧マップ部
28 グループ分け部
30 目標排出流量設定部
32 開口面積計算部
35 マップ
35a ブームマウント用マップ
35b スティックマウント用マップ