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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157146
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】プリンタ、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/405 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H04N1/405
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066861
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】西村 美紀
(72)【発明者】
【氏名】澤田 和英
【テーマコード(参考)】
5C077
【Fターム(参考)】
5C077LL19
5C077NN08
5C077NN11
5C077NN19
5C077PP02
5C077PQ08
(57)【要約】
【課題】印刷対象の画像データに既に実行されたハーフトーン処理と、印刷時に実行されるハーフトーン処理によるモアレの発生を抑制しつつ、モアレが発生する可能性が低い場合には第1ハーフトーン処理を実行できるプリンタを提供すること。
【解決手段】
MFP11は、印刷対象の画像データ55を解析し、モアレの影響が大きいと判断した場合(S33:YES)、画像データ55に基づいて、誤差拡散処理を含む画像処理を実行して印刷する。また、MFP11は、印刷対象の画像データ55を解析し、モアレの影響が小さいと判断した場合(S33:NO)、パターンディザ処理を実行して印刷する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ハーフトーン処理と、第2ハーフトーン処理を実行することが可能であり、
画像データを取得することが可能であり、
取得した前記画像データを解析することで、前記画像データの特性を判断することが可能であり、
解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにあると判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、
解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにないと判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第1ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、
ように構成されている、プリンタ。
【請求項2】
前記第1ハーフトーン処理は、
前記第2ハーフトーン処理に比べて周期性が高いハーフトーン処理である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1ハーフトーン処理は、
前記第2ハーフトーン処理に比べて、画像処理の処理負荷が低いハーフトーン処理である、請求項2に記載のプリンタ。
【請求項4】
解析した結果、前記第1ハーフトーン処理であるパターンディザ処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにあると判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理である誤差拡散処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、
解析した結果、パターンディザ処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにないと判断した場合には、前記画像データに基づいて、パターンディザ処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、
ように構成されている、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記第2ハーフトーン処理は、
取得した前記画像データに対するスムージングを含む処理である、請求項1に記載のプリンタ。
【請求項6】
取得した前記画像データが第1規格の前記画像データである場合には、前記画像データ内の、前記第1規格で規定された情報を解析し、解析した情報に、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易いことを示すデータが含まれている場合に、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、
取得した前記画像データが第2規格の前記画像データである場合には、前記画像データ内の、前記第2規格で規定された情報を解析し、解析した情報に、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易いことを示すデータが含まれている場合に、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、
ように構成されている、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項7】
前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性は、
前記画像データが所定の解像度以上の高解像度である特性、前記画像データが所定の画像品質以上の高画像品質である特性、中間調ピクセルの割合が所定以上となる特性、前記
画像データがスキャナによって生成されたスキャン画像である特性のうち、少なくとも1つの特性である、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項8】
解析した結果、前記画像データが示す画像のサイズが、定型の用紙のサイズと一致しない場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、
解析した結果、前記画像データが示す画像のサイズが、定型の用紙のサイズと一致する場合には、前記画像データに基づいて、前記第1ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、
ように構成されている、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項9】
前記定型の用紙のサイズとして、前記プリンタが実行するプログラムに予めプログラミングされている用紙サイズを用いる、ように構成されている、請求項8に記載のプリンタ。
【請求項10】
前記定型の用紙のサイズとして、前記プリンタのメモリに記憶されている動作パラメータが示す用紙サイズを用いる、ように構成されている、請求項8に記載のプリンタ。
【請求項11】
解析した結果、印刷する用紙のサイズと、前記画像データが示す画像のサイズが一致しない場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、
解析した結果、印刷する用紙のサイズと、前記画像データが示す画像のサイズが一致する場合には、前記画像データに基づいて、前記第1ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、
ように構成されている、請求項1又は請求項2に記載のプリンタ。
【請求項12】
画像データに対し、第1ハーフトーン処理と、第2ハーフトーン処理を実行することが可能であるプリンタに対し前記画像データの印刷を実行させるプログラムであって、
前記プリンタは、
前記画像データを取得することが可能であり、
前記プログラムは、
前記プリンタが取得する前記画像データを解析することで、前記画像データの特性を判断することが可能であり、
解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにあると判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する処理を前記プリンタに実行させ、
解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにないと判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第1ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する処理を前記プリンタに実行させる、
ように構成されている、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像データのハーフトーン処理に係わる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ネットワークに接続された画像形成装置からサーバへ画像データを送信する画像形成システムに関する技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-27556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プリンタで画像データを印刷する際に、多階調データをドットデータに二値化するハーフトーン処理を実行する場合がある。このハーフトーン処理の中には、例えば、処理負荷が比較的低いパターンディザ処理がある。一方で、パターンディザ処理は処理結果の画像データに周期性が発生し易い。このため、印刷対象の画像データが、例えば、パターンディザ処理を実行して一度印刷した原稿を、スキャンした画像データである場合、スキャン画像に含まれるパターンディザ処理と、印刷時に実行するパターンディザ処理によってモアレ(干渉縞とも言う)が発生し、印刷物の品質が低下する虞がある。従って、画像データに応じてより適切なハーフトーン処理を実行する必要がある。
【0005】
そこで、本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、印刷対象の画像データに既に実行されたハーフトーン処理と、印刷時に実行されるハーフトーン処理によるモアレの発生を抑制しつつ、モアレが発生する可能性が低い場合には第1ハーフトーン処理を実行できるプリンタ、及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のプリンタは、第1ハーフトーン処理と、第2ハーフトーン処理を実行することが可能であり、画像データを取得することが可能であり、取得した前記画像データを解析することで、前記画像データの特性を判断することが可能であり、解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにあると判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第2ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷し、解析した結果、前記第1ハーフトーン処理によるモアレが発生し易い特性が前記画像データにないと判断した場合には、前記画像データに基づいて、前記第1ハーフトーン処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷する、ように構成されている。
【0007】
尚、本開示の技術は、種々の形態で実現可能であり、プリンタとしての実現に限らず、例えば、プリンタを備えるシステム、プログラム、プログラムを記録した記録媒体等の形態で実現することができる。
【発明の効果】
【0008】
本開示の技術では、印刷対象の画像データに既に実行されたハーフトーン処理と、印刷時に実行されるハーフトーン処理によるモアレの発生を抑制しつつ、モアレが発生する可能性が低い場合には第1ハーフトーン処理を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例に係わる画像形成システムのブロック図。
図2】第1実施例に係わる印刷処理のフローチャート。
図3】第1実施例に係わるモアレ影響判断処理のフローチャート。
図4】第1実施例に係わるスキャン画像判断処理のフローチャート。
図5】第1実施例に係わるJPEGスキャン画像判断処理のフローチャート。
図6】第1実施例に係わるPDFスキャン画像判断処理のフローチャート。
図7】第1実施例に係わるコンテンツ解析処理のフローチャート。
図8】第2実施例に係わる印刷処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のプリンタを具体化した第1実施例について説明する。図1は、第1実施例の画像形成システム10を示している。図1に示すように、画像形成システム10は、例えば、複数のMFP11を備えている。MFP11は、印刷機能、コピー機能、スキャナ機能を備える複合機である。MFP11は、本開示のプリンタの一例である。MFP11は、CPU21、メモリ22、印刷エンジン23、読取エンジン25、ユーザIF(インタフェースの略)27、LANIF29を備えている。これらの構成要素は、バス31を介して互いに通信可能とされている。
【0011】
印刷エンジン23は、シート(例えば、記録紙やOHPシートなど)に画像を印刷する。印刷エンジン23は、インクジェット方式で印刷する構成や、電子写真方式により印刷する構成を採用できる。読取エンジン25は、原稿から画像を読み取る読取センサ(例えば、CISやCCD)などを備え、読取センサを制御して原稿の画像を読取る。ユーザIF27は、例えば、タッチパネルや押しボタンスイッチ等を備え、ユーザの操作入力の受け付けや、ユーザへの情報の表示を実行する。LANIF29は、LAN規格に準じた通信を実行する通信インタフェースであり、ネットワーク15と接続されている。ネットワーク15には、複数の端末装置12、サーバ17が接続されている。ネットワーク15は、例えば、LANである。尚、ネットワーク15は、LANに限らず、インターネットなどのWANや、LANとWANを組み合わせたネットワークでも良い。また、ネットワーク15は、有線ネットワークでも良く、無線ネットワークでも良い。
【0012】
メモリ22は、例えば、RAM、ROM、NVRAM、HDDなどが組み合わされて構成されている。メモリ22には、CPU21が実行するプログラム33が記憶されている。プログラム33は、MFP11を制御し、印刷処理、スキャン処理などを実行する制御プログラムである。尚、プログラム33は、複数のプログラムの組み合わせでも良い。また、プログラム33を記憶する媒体は、MFP11に内蔵されるROM、RAM、HDD等に限らず、コンピュータが読取可能且つ書き込み可能なストレージ媒体でも良い。コンピュータが読取可能なストレージ媒体とは、non-transitoryな媒体である。non-transitoryな媒体には、上記の例の他に、CD-ROM、DVD-ROM等の記憶媒体も含まれる。また、non-transitoryな媒体は、tangibleな媒体でもある。一方、インターネット上のサーバなどからダウンロードされるプログラムを搬送する電気信号は、コンピュータが読取可能な媒体の一種であるコンピュータが読取可能な信号媒体であるが、non-transitoryなコンピュータが読取可能なストレージ媒体には含まれない。
【0013】
また、端末装置12は、例えばパーソナルコンピュータである。端末装置12は、MFP11に対して印刷指示を行う。尚、MFP11に対して印刷指示を行う装置は、パソコンに限らず、スマートフォン、タブレット端末などの他の情報処理が可能な装置でも良い。端末装置12は、CPU41、メモリ43、LCD44、入力IF45、LANIF49を備えている。これらの構成要素は、バス61を介して互いに通信可能とされている。
【0014】
メモリ43には、OS51、プリンタドライバ53が記憶されている。OS51は、端末装置12を統括的に制御するプログラムであり、例えば、プリンタドライバ53などのアプリケーションプログラムに基本的な機能やサービスを提供する。OS51は、例えば、Windows(登録商標)のオペレーティングシステムである。尚、OS51は、Windows(登録商標)のOSに限らず、MacOS(登録商標)、Linux(登録商標)、Android(登録商標)、iOS(登録商標)等のOSでも良い。
【0015】
また、プリンタドライバ53は、例えば、MFP11のベンダによって提供されるプログラムであり、MFP11に対する印刷指示やスキャン指示を実行するプログラムである。プリンタドライバ53は、本開示のプログラムの一例である。LCD44は、端末装置12の各種情報を表示する表示装置として機能する。尚、端末装置12の表示装置は、LCDに限らず、有機ELディスプレイなどの他の表示装置でも良い。入力IF45は、例えば、キーボードやマウスなどの入力装置である。尚、端末装置12の入力IF45は、キーボードやマウスに限らず、例えば、タッチパネルでも良い。
【0016】
サーバ17は、例えば、MFP11や端末装置12のユーザが利用するサーバである。サーバ17には、MFP11によって生成された画像データ55を記憶可能となっている。MFP11は、例えば、ユーザの指示に基づいて原稿をスキャンし、スキャンした画像データを、JPEG形式の画像データや、PDF(Portable Document
Formatの略)形式の画像データ55に変換し、サーバ17に送信する。JPEG規格は、本開示の第1規格の一例である。PDF規格は、本開示の第2規格の一例である。尚、端末装置12が、スキャナドライバを備えており、MFP11に原稿のスキャンを指示し、MFP11から送信されてきた画像データをJPEG形式やPDF形式に変換して、サーバ17に送信しても良い。
【0017】
次に、MFP11が実行する印刷処理について、図2図7を参照して説明する。第1実施例では、本開示の第1ハーフトーン処理としてパターンディザ処理を採用し、本開示の第2ハーフトーン処理として誤差拡散処理を採用した場合について説明する。MFP11は、例えば、ユーザの印刷指示に基づいて画像データ55を印刷する際に、2値化する印刷設定がなされた場合、パターンディザ処理又は誤差拡散処理を実行する。以下の説明では、多階調のカラーの画像データ55を2値化して印刷する場合について説明する。しかしながら、モノクロの画像データ55を印刷する場合についても、以下に説明するカラーの場合と同様の印刷処理を実行することで、モアレの発生を抑制した印刷を実行できる。
【0018】
また、図2以降のフローチャートの処理は、基本的に、プログラム33に記述された命令に従ったCPU21の処理を示す。即ち、以下の説明における「取得」、「判断」、「解析」、「解凍」等の処理は、CPU21の処理を示している。CPU21による処理はハードウェア制御も含む。以下の説明において、例えば、プログラム33に記述された命令に従ったCPU21の処理を、省略した文言で記載することがある。例えば、「MFP11が画像データ55を取得する」との記載は、「MFP11がCPU21でプログラム33を実行し、画像データ55を取得する」ことを意味する場合がある。
【0019】
また、本開示の「取得」は要求を必須とはしない概念で用いる。即ち、MFP11が要求することなくデータを受信するという処理も、「MFP11がデータを取得する」という概念に含まれる。また、本願中の「データ」とは、コンピュータに読取可能なビット列で表される。そして、実質的な意味内容が同じでフォーマットが異なるデータは、同一のデータとして扱われるものとする。本願中の「情報」についても同様である。また、「指示する」とは、指示していることを示す情報を相手に出力することを示す概念である。ま
た、指示していることを示す情報のことを、単に、「指示」とも記載する。また、MFP11による判断処理において、「AがBである場合」とは、「AがBであると判断した場合」を意味している。
【0020】
MFP11は、例えば、電源を投入されプログラム33をCPU21で実行してシステムを起動した後、ユーザから印刷指示を受け付けると、図2に示す処理を開始する。例えば、ユーザは、端末装置12を操作して、サーバ17に記憶された画像データ55の印刷をMFP11に指示する。端末装置12は、画像データ55を含む印刷ジョブをMFP11へ送信する。MFP11は、印刷ジョブを受信すると図2の処理を開始し、ステップ(以下、単にSと記載する)11において印刷ジョブに基づく画像データ55を取得し、取得した画像データ55についてS13以降の処理を実行する。尚、印刷対象の画像データ55を取得する方法は、上記した印刷ジョブを取得する方法に限らない。例えば、MFP11は、ユーザIF27の操作入力に基づいてサーバ17から画像データ55を取得し、図2の処理を実行しても良い。また、画像データ55の取得元は、サーバ17に限らず、端末装置12のメモリ43、端末装置12に接続された外部ストレージ、MFP11に接続された外部ストレージなどでも良い。
【0021】
S13において、MFP11は、S11で取得した画像データ55がJPEG形式のデータであるか否かを判断する。MFP11は、例えば、画像データ55のファイルの拡張子に基づいて、JPEG形式のデータであるか否かを判断できる。あるいは、MFP11は、例えば、画像データ55の先頭データに、JPEG形式のデータであることを示す所定のバイナリデータ(例えば、0xFF D8)が設定されているか否かで、データ形式を判断しても良い。
【0022】
MFP11は、取得した画像データ55がJPEG形式のデータである場合(S13:YES)、画像データ55のマーカを解析する(S15)。マーカは、例えば、JPEG規格により規定され、JPEG形式のデータの構造を記述するための情報である。MFP11は、例えば、JPEG規格で規定された「SOS(スキャン開始)マーカ」より前、即ち、イメージデータ(画像データのうち、拡張領域内のデータ、メタデータ、マーカなどを除いた、画像そのものを示すデータ)より前の各マーカのセグメントを解析し(S15)、画質に関するDQTマーカ等から解凍処理等に必要な情報を抽出する。また、後述するように、MFP11は、印刷時のハーフトーン処理によりモアレが発生しモアレの影響が大きい(以下、モアレ影響大という場合がある)か否かを、画像データ55の解像度や画像品質(圧縮率)に基づいて判断する。MFP11は、この判断において、JPEG規格で規定された所定のマーカの情報を用いる。このため、MFP11は、例えば、S15において、S17以降の処理に必要な情報を、各マーカのセグメントから抽出し、抽出した情報をメモリ22に記憶させる。尚、本願におけるモアレの影響が大きいとは、モアレが発生した場合に発生したモアレがより鮮明に見え印刷物に与える影響が大きいことだけを意味するのではなく、モアレが発生する可能性が高い意味も含んでいる。また、MFP11は、必要な情報をS15で予め抽出せずに、後述する解像度の判断処理等を実行する際に、その判断処理で必要なマーカの情報を適宜抽出しても良い。
【0023】
次に、MFP11は、抽出したマーカの情報に基づいて、SOSマーカより後のイメージデータを解凍し(S17)、印刷用の多値のラスタデータを生成する(S19)。MFP11は、例えば、S17で解凍したラスタ形式の画像データ55に対し、印刷設定の用紙サイズに合わせて拡大又は縮小する処理、不要な余白部分を削除する処理等を実行して、印刷用のラスタ形式の画像データ55を生成する。尚、説明の便宜上、処理の各段階のラスタデータを区別するため、「印刷用」と記載しているが、この印刷用のラスタ形式の画像データ55とは、そのまま印刷に用いられる印刷用のデータという意味ではなく、後述するように、色変換処理、ガンマ補正、ハーフトーン処理の対象となるデータであるこ
とを意味している。次に、MFP11は、モアレ影響判断処理(S21)を実行する。
【0024】
また、本実施例では、画像データ55は、JPEG形式又はPDF形式のデータとなっている。このため、S13において、MFP11は、画像データ55がJPEG形式のデータでない場合、即ち、PDF形式のデータである場合(S13:NO)、例えば、画像データ55の先頭から並ぶオブジェクトを順番に選択し、選択したオブジェクトを解析する(S23)。オブジェクトは、例えば、PDF規格により規定され、PDF形式のデータの構造を記述するための情報である。
【0025】
MFP11は、選択したオブジェクトがJPEG形式の画像を表示するイメージオブジェクトであるか否かを判断する(S25)。例えば、MFP11は、選択したオブジェクトのオブジェクト名が「XObject」で「subtype」が「Image」、「Filter」が「DCTDecode」である場合、肯定判断し(S25:YES)、オブジェクト名、「subtype」、「Filter」が上記した情報と異なる場合、否定判断する(S25:NO)。尚、JPEG形式の画像を表示するオブジェクトであるか判断する方法は、上記した方法に限らない。例えば、MFP11は、オブジェクト名が「XObject」のオブジェクトを検出した場合にS25で肯定判断しても良い。MFP11は、肯定判断すると(S25:YES)、上記したS15~S19と同様に、イメージオブジェクトが描画するJPEG形式の画像データのマーカを解析して印刷用のラスタデータを生成し(S27~S29)、S31を実行する。一方、MFP11は、選択したオブジェクトがJPEG形式の画像を表示するイメージオブジェクトでない場合、例えば、JPEG形式以外のイメージオブジェクトや他のオブジェクトである場合(S25:NO)、そのオブジェクトの情報に基づいたラスタライズを実行しラスタデータを生成して(S33)、S31を実行する。
【0026】
本実施例のPDF形式の画像データ55は、例えば、1ページ分のデータとなっている。このため、MFP11は、1ページの画像データ55に含まれる全てのオブジェクトについて処理を完了するまでの間(S31:NO)、解析対象のオブジェクトを変更してS23以降の処理を実行する。MFP11は、全てのオブジェクトの処理が完了すると(S31:YES)、それまで生成したラスタデータに基づいて、1ページ分のPDFデータを印刷するための印刷用の多値のラスタデータを生成し、S21を実行する。尚、画像データ55が複数ページのPDFデータの場合にも、上記した1ページの場合と同様に、各ページについて上記した処理を実行することで、各ページのオブジェクトを処理できる。
【0027】
図3に示すように、MFP11は、モアレ影響判断処理を開始すると、スキャン画像判断処理を実行する(S51)。図4に示すように、MFP11は、スキャン画像判断処理を開始すると、画像データ55がJPEG形式のデータである場合(S71:YES)、JPEGスキャン画像判断処理を実行し(S73)、PDF形式のデータである場合(S71:NO)、PDFスキャン画像判断処理を実行する(S75)。
【0028】
図5に示すように、MFP11は、JPEGスキャン画像判断処理を開始すると、画像の解像度を取得する(S81)。MFP11は、例えば、画像データ55に含まれるマーカのうち、「APP1」マーカのJFIF情報に基づいて、画像データ55の解像度を取得する。あるいは、MFP11は、「APP0」マーカのEXIF情報に基づいて解像度を取得しても良い。
【0029】
MFP11は、S81で取得した解像度が第2閾値解像度以上であるか否かを判断する(S83)。第2閾値解像度は、画像データ55がスキャン画像であるか否かを判断するための閾値であり、例えば、150dpiである。これは、スキャナの解像度が、一般的に150dpi以上に設定されている可能性が高いためである。尚、第2閾値解像度は、
150dpiに限らず、ユーザが使用するスキャナの性能等に応じて適宜変更しても良い。
【0030】
MFP11は、解像度が第2閾値解像度より低い場合(S83:NO)、画像データ55がスキャン画像である可能性が低いと判断する(S86)。MFP11は、例えば、判断結果をメモリ22に記憶し図5の処理を終了する。一方、MFP11は、解像度が第2閾値解像度以上である場合(S83:YES)、画像データ55が示す画像のサイズを取得する(S85)。MFP11は、例えば、画像データ55に含まれるマーカのうち、「SOF」マーカのセグメント内に設定された画像の高さ方向のピクセル数や幅方向のピクセル数と、解像度に基づいて画像サイズを演算する。尚、画像データ55の画像サイズを取得する方法は、上記したマーカの情報を用いる方法に限らず、例えば、画像解析によって画像サイズを取得しても良い。
【0031】
ここで、JPEG形式の画像データ55がスキャン画像である場合、画像データ55が示す画像のサイズは、スキャン対象の原稿のサイズや、読取設定で指定されたサイズである可能性が高い。即ち、画像サイズが定型の用紙サイズ(A4サイズやレターサイズなど)である可能性が高い。そこで、MFP11は、S85で取得した画像サイズが、所定の定型用紙サイズと一致する場合(S87:YES)、画像データ55がスキャン画像である可能性が高いと判断する(S89)。所定の定型用紙サイズは、例えば、JIS規格で規定された用紙サイズである。あるいは、所定の定型用紙サイズは、MFP11のトレーに収納する用紙サイズとして設定されたサイズでも良い。MFP11は、S87において、例えば、複数の定型用紙サイズのうち、何れか1つの用紙サイズと、取得した用紙サイズが一致した場合、肯定判断する(S87:YES)。一方、MFP11は、画像サイズが、所定の定型用紙サイズと一致しない場合(S87:NO)、S86を実行する。
【0032】
尚、上記したS87の判断処理の内容は、一例である。例えば、MFP11は、S87において、1つの定型用紙サイズの一致だけ、例えば、ユーザの使用頻度が高いA4サイズの一致だけを判断しても良い。あるいは、MFP11は、レターサイズの一致だけ判断しても良く、A4とレターサイズの一致だけ判断しても良い。また、判断する定型用紙サイズとしては、JIS規格のサイズ以外に、ISO規格のサイズでも良く、北米デファクトスタンダードサイズで規定されるサイズでも良い。従って、定型用紙サイズとしては、例えば、A4以下の、JIS規格で規定されたサイズの何れかを含んでも良く、A4以下の、ISO規格で規定されたサイズの何れかを含んでも良く、レター以下の、北米デファクトスタンダードサイズの何れかでも良く、リーガル以下の、北米デファクトスタンダードサイズの何れかでも良い。リーガル以下の、北米デファクトスタンダードサイズには、リーガル、フォリオ、クオート、レター、エグゼクティブ、ハーフレターを含んでも良い。
【0033】
また、このようなサイズのうちから、何れのサイズを所定の定型用紙サイズとするかは、例えば、予めプログラム33にプログラミングされていても良い。MFP11は、プログラム33に予めプログラミングされている用紙サイズを定型用紙サイズとして用いて、S87の判断処理を実行しても良い。この場合、プログラム33は、本開示におけるプログラムの一例である。これにより、スキャン画像を判断する定型用紙サイズを、プログラム33により予め指定できる。
【0034】
あるいは、MFP11は、所定の定型用紙サイズを示す動作パラメータを、ユーザIF27を介して受け付けても良く、LANIF29を介して端末装置12等から受け付けても良い。MFP11は、受け付けた動作パラメータをメモリ22に記憶する。そして、MFP11は、メモリ22に記憶した動作パラメータが示す用紙サイズを、定型用紙サイズとして用いてS87の判断処理を実行しても良い。これにより、ユーザが、使用環境に応
じた用紙サイズを、定型用紙サイズとして指定できる。
【0035】
また、MFP11は、図4のS75を実行すると、図6に示すように、PDF形式の画像データ55のオブジェクトを解析する(S91)。MFP11は、S91の解析結果に基づいて、画像データ55がJPEG形式の画像を表示するイメージオブジェクトを含むか否かを判断する(S93)。MFP11は、例えば、S25と同様に、「subtype」が「Image」のイメージオブジェクトを検出した場合(S93:YES)、S95を実行する。一方、MFP11は、JPEG形式の画像を表示するイメージオブジェクトを検出できない場合(S93:NO)、画像データ55がスキャン画像である可能性が低いと判断する(S103)。
【0036】
S95において、MFP11は、画像データ55のイメージオブジェクトがJPEG画像を配置するイメージ配置領域を取得する。イメージ配置領域の大きさは、画像データ55が表示する画像のサイズに相当する。MFP11は、例えば、イメージオブジェクト内の「Length」タグの値に基づいて、JPEG画像を描画する描画領域を、イメージ配置領域として取得する。次に、MFP11は、PDF形式の画像データ55に設定された用紙サイズを取得する(S97)。この用紙サイズは、例えば、画像データ55を印刷する際に、印刷用紙のサイズの初期値として設定される値である。MFP11は、例えば、イメージオブジェクト内の「MediaBox」タグの値に基づいて、用紙サイズを取得する。MFP11は、S95で取得したイメージ配置領域の大きさが、S97で取得した用紙サイズと一致するか否かを判断する(S99)。即ち、MFP11は、画像データ55が示す画像サイズと、印刷する用紙のサイズが一致するか判断する。
【0037】
PDF形式の画像データ55がスキャン画像である場合、ページの全体に画像が表示される可能性が高く、イメージ配置領域(表示画像)が用紙サイズと一致又はほぼ一致する可能性が高い。このため、MFP11は、S95において、イメージ配置領域の大きさが用紙サイズと一致する、又はほぼ一致する(例えば、用紙サイズに対するイメージ配置領域の比率が90%以上である)場合(S99:YES)、画像データ55がスキャン画像である可能性が高いと判断し(S101)、そうでない場合(S99:NO)、S103を実行する。
【0038】
図3に戻り、MFP11は、S51を実行した後、S51の判断結果を判断する(S53)。MFP11は、S51においてスキャン画像の可能性が高いと判断した場合(S53:YES)、S55を実行し、スキャン画像の可能性が低いと判断した場合(S53:NO)、S69を実行する。MFP11は、S69において、図3の処理の判断結果としてモアレの影響が小さい(以下、モアレ影響小という場合がある)と判断し、図3に示す処理を終了する。
【0039】
また、MFP11は、S55において、S81と同様に画像データ55の解像度を取得し、解像度が第1閾値解像度以上であるか否かを判断する(S57)。尚、画像データ55が、PDF形式の画像データである場合、MFP11は、画像データ55に含まれるJPEG画像のマーカの情報から解像度を取得し判断できる。第1閾値解像度は、画像データ55の解像度が高解像度であるか判断するための閾値であり、例えば、600dpiや300dpiである。これは、画像データ55がスキャン画像で且つ高解像度である場合、スキャンした原稿の印刷物に含まれるドットのパターン(原稿の印刷時に実行されたハーフトーン処理のパターン(ディザパターンなど))がより明確となり、その結果、スキャン後の画像データ55を印刷する際にパターンディザ処理のような周期性の高いハーフトーン処理を実行するとモアレが発生する可能性が高くなるためである。
【0040】
MFP11は、解像度が第1閾値解像度以上である場合(S57:YES)、画像デー
タ55の画像品質を取得し(S59)、取得した画像品質が閾値品質以上であるか否かを判断する(S61)。画像データ55は、圧縮率が低くなるほど、解凍後の画像品質が高くなる。そして、上記した解像度と同様に、画像データ55がスキャン画像で、且つ高画像品質(低圧縮率)である場合、スキャンした原稿の印刷物に含まれるドットのパターンが、圧縮の前後で残り易くなるため、モアレが発生し易くなる。従って、S61の閾値品質は、画像データ55の画像品質が所定の画像品質以上の高画像品質(低圧縮率)であるか否かを判断可能な閾値である。MFP11は、例えば、画像データ55がJPEG形式のデータである場合、「DQT」マーカのセグメント内の量子化テーブルの情報に基づいて、画像品質の情報を取得する。例えば、MFP11は、「DQT」マーカの情報が示す画像品質(例えば、IJG輝度 画質、IJG色差 画質)が、100を上限値として95以上の値を示している場合、S61で肯定判断し(S61:YES)、コンテンツ解析処理を実行する(S63)。また、MFP11は、画像データ55が高解像度でない場合(S57:NO)や、高画像画質でない場合(S61:NO)、S69を実行する。
【0041】
図7に示すように、MFP11は、コンテンツ解析処理を開始すると、画像データ55の画像のヒストグラムを生成する(S111)。ここで、例えば、画像データ55のスキャン元の原稿が、印刷時にパターンディザ処理などの周期性が高いハーフトーン処理を実行されて印刷された原稿である場合、スキャン後の画像データ55の印刷時に、周期性が高いハーフトーン処理を再度実行すると、画像データ55に含まれるパターン(パターンディザ処理のディザパターンなど)と干渉し合い、モアレが発生する。一般的に、ハーフトーンによる周期性は、100%濃度と0%濃度の間の色であるところの中間調ピクセルを多く含む画像において視認され易い、即ち、発生する可能性が高いという特徴がある。モアレも同様に中間調ピクセルを多く含む画像において発生する可能性が高い。画像データ55が示す画像全体のうち、テキストや、「イメージ」(画像データが示す画像のうち、例えば、写真、図形、描画された画像など、中間調ピクセルが発生しやすい画像という概念)などのコンテンツの量が増えるほど画像データ55に含まれる中間調ピクセルの数は増大する。コンテンツ量が増えるほど、コンテンツが印刷される合計領域が大きくなり、発生したモアレのパターンが印刷されたコンテンツに重なって、より干渉し合う可能性がある。コンテンツ量が増加した場合、例えば、印刷領域全体のうち「イメージ」を印刷する領域が占める割合が高くなる場合や、印刷領域全体に隙間なくテキストが印刷される場合など、画像データ55に含まれる中間調のピクセルの数は増大する。
【0042】
そこで、MFP11は、画像データ55のヒストグラムを生成し(S111)、生成したヒストグラムに基づいて、画像データ55が示す画像に含まれる全ピクセルのうち、所定の輝度値(画素値)の中間調ピクセルが占める割合を演算し(S113)、演算した割合が閾値割合以上であるか否かを判断する(S115)。輝度値を例えば最小0~最大255の256階調とした場合、MFP11は、例えば、全ピクセルにおける、輝度値が100~240の中間調ピクセルが占める割合が30%以上であるか否かを判断する(S115)。MFP11は、占める割合が30%以上の場合(S115:YES)、画像データ55が表示する画像がモアレ影響大のコンテンツであると判断し(S117)、占める割合が30%未満の場合(S115:NO)、画像データ55が表示する画像がモアレ影響小のコンテンツであると判断する(S119)。MFP11は、S117又はS119を実行すると、図7に示す処理を終了する。
【0043】
尚、上記した画像データ55に含まれるコンテンツの割合を判断する方法は一例である。例えば、MFP11は、中間調ピクセルとして、輝度値が100~200のピクセルの割合を判断しても良い。また、MFP11は、画像データ55に含まれるコンテンツ量をOCRにより判断しても良い。MFP11は、例えば、画像データ55に含まれるテキストの量をOCRで検出し、検出した量が閾値量以上であるか判断しても良い。
【0044】
図3に戻り、MFP11は、S63の処理の結果、モアレ影響大のコンテンツと判断した場合(S65:YES)、図3の判断結果としてモアレ影響大と判断し(S67)、モアレ影響小のコンテンツと判断した場合(S65:NO)、S69を実行し、図3に示す処理を終了する。
【0045】
図2に戻り、MFP11は、S21を実行した後、S21の判断結果としてモアレ影響大と判断したか否かを判断し(S33)、モアレ影響小と判断した場合(S33:NO)、画像データ55が示す画像に基づいて、パターンディザ処理を含む画像処理を実行する。尚、本開示におけるハーフトーン処理を含む画像処理とは、ハーフトーン処理のみを実行する画像処理でも良く、ハーフトーン処理と多の画像処理を実行する処理でも良い。
【0046】
MFP11は、S15以降の処理、又はS23以降の処理で生成した印刷用の多値のラスタデータ(画像データ55)を対象に、RGB形式の画像データ55を色変換処理して、色情報をCMYK形式にした画像データ55を生成する(S35)。MFP11は、色変換処理した画像データ55を対象に、濃度を使用環境などに応じて補正するガンマ補正(S37)を実行した後、多値のラスタデータの各色(CMYK)を2値化するパターンディザ処理を実行する(S39)。MFP11は、パターンディザ処理用の色変換処理(S37)及びガンマ補正(S39)を実行する。ここでいう、「パターンディザ処理用の処理」とは、例えば、色変換やガンマ補正に使用するルックアップテーブルとして、予めパターンディザ処理用に調整されたルックアップテーブルを用いる処理である。後述する誤差拡散処理用の色変換処理(S43)及びガンマ補正(S45)についても同様に、誤差拡散処理用に調整されたルックアップテーブルを用いる処理である。
【0047】
MFP11は、S39を実行すると、パターンディザ処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷を実行し(S41)、印刷処理を終了する。一方、MFP11は、S21の判断結果としてモアレ影響大と判断した場合(S33:YES)、印刷用のラスタデータを対象に、誤差拡散処理用の色変換処理(S43)、誤差拡散処理用のガンマ補正(S45)を実行した後、誤差拡散処理を実行し(S47)、誤差拡散処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷を実行する(S41)。
【0048】
以上、上記した第1実施例によれば、以下の効果を奏する。
MFP11は、印刷対象の画像データ55を解析し、モアレ影響大と判断した場合(S33:YES)、画像データ55に基づいて、誤差拡散処理を含む画像処理を実行して生成した印刷データを用いて印刷を実行する。これにより、画像データ55のスキャン対象となった原稿の印刷時にパターンディザ処理などの周期性が高いハーフトーン処理が実行されていた場合に、その画像データ55を印刷する際のハーフトーン処理として誤差拡散処理を実行する。誤差拡散処理により、画像データ55に含まれるディザパターンの濃淡を拡散することができ、モアレの発生を抑制できる。あるいは、発生するモアレを見えにくくしてモアレの影響を小さくできる。
【0049】
また、MFP11は、モアレ影響小と判断した場合(S33:NO)、パターンディザ処理を実行して印刷する。これにより、モアレが発生する可能性が少ないと判断できる場合には、処理負荷の低いパターンディザ処理を実行できる。例えば、第1実施例のように、複数のユーザが共用するサーバ17には、スキャン画像データである画像データ55だけでなく、端末装置12のアプリケーションプログラム(文書作成ソフト、画像作成ソフトなど)によって生成したJPEG形式のデータやPDF形式のデータが記憶される場合がある。このため、MFP11は、モアレが発生する可能性が高い画像データ55を印刷する場合や、発生する可能性が低いデータを印刷する場合がある。これに対し、上記した解析結果に応じてハーフトーン処理を切り替えることで、モアレの発生を抑制しつつ、モアレが発生する可能性が低い場合には、パターンディザ処理を実行して処理負荷を軽減で
きる。
【0050】
また、本実施例では、本開示の第1ハーフトーン処理として、誤差拡散処理に比べて周期性が高いパターンディザ処理を採用している。これにより、誤差拡散処理に比べてモアレが発生する可能性が高いパターンディザ処理の実行の有無を、解析結果に基づいて適切に判断できる。
【0051】
また、本実施例のパターンディザ処理は、誤差拡散処理に比べて、画像処理の処理負荷が低いハーフトーン処理である。このため、モアレ影響小と判断できる場合には、パターンディザ処理を優先的に実行することで、MFP11の印刷処理における処理負荷を軽減でき、印刷処理の実行に必要な時間を短縮できる。
【0052】
また、MFP11は、取得した画像データ55がJPEG形式の画像データである場合には、JPEG規格で規定されたマーカの情報を解析し、モアレの影響を判断し、PDF形式の画像データである場合には、PDF規格で規定されたオブジェクトの情報を解析し、モアレの影響を判断する。これにより、各規格に応じて、その規格で規定された情報を解析し、モアレの影響を適切に判断できる。
【0053】
また、MFP11は、モアレが発生し易い特性として、高解像度である特性(S57)、高画像品質である特性(S61)、中間調ピクセルの割合が所定以上となる特性(S115)、スキャン画像である特性(S87、S99)を判断している。これにより、各特性に基づいてモアレが発生する可能性を精度良く判断できる。
【0054】
また、MFP11は、画像データ55が示す画像サイズが、定型の用紙のサイズと一致しない場合(S87:NO)、誤差拡散処理を実行し、画像サイズが、定型の用紙のサイズと一致する場合(S87:YES)、パターンディザ処理を実行する。これにより、画像サイズと定型用紙サイズを比較し、スキャン画像であるか否かを判断して、適切なハーフトーン処理を実行できる。
【0055】
また、MFP11は、印刷する用紙サイズと、画像データ55が示す画像サイズが一致しない場合(S99:NO)、誤差拡散処理を実行し、用紙サイズと画像サイズが一致する場合(S99:YES)、パターンディザ処理を実行する。これにより、印刷用紙サイズと画像サイズを比較し、スキャン画像であるか否かを判断して、適切なハーフトーン処理を実行できる。
【0056】
次に、第2実施例について図8を参照しつつ説明する。尚、以下の説明では上記第1実施例と同様の内容については同一符号を付し、その説明を適宜省略する。第2実施例では、本願の第1ハーフトーン処理としてパターンディザ処理を採用し、第2ハーフトーン処理としてスムージング及びパターンディザ処理を採用した場合について説明する。従って、本開示におけるハーフトーン処理には、第1実施例のようなパターンディザ処理や誤差拡散処理などの1種類の画像処理だけでなく、スムージングなどの他の画像処理とハーフトーン処理を組み合わせた処理も含まれる。
【0057】
図8に示すように、第2実施例のMFP11は、S17で画像データ55を解凍した後、モアレ影響判断処理(S21)を実行し、モアレ影響大の場合(S33:YES)、解凍したJPEG形式の画像データ55を対象に、スムージングを実行する(S121)。スムージングは、例えば、画像データ55に含まれるピクセルの輝度値の変化を滑らかにする平滑化処理である。そして、MFP11は、第1実施例と同様に、スムージングした画像データ55に基づいて印刷用のラスタデータを生成して色変換等を実行した後、印刷を実行する(S19以降)。また、PDFの場合も同様に、MFP11は、PDFファイ
ルに含まれるJPEG画像についてS28で解凍した後、モアレ影響判断処理を実行し(S21)、モアレ影響大の場合(S33:YES)、スムージングを実行する(S123)。
【0058】
以上、上記した第2実施例によれば、第1実施例と同様の効果を奏する。
また、第2実施例では、本開示の第2ハーフトーン処理として、スムージングを含む画像処理を採用している。これにより、パターンディザ処理などによる周期性のあるパターン(ディザパターン)が画像データ55に含まれていても、スムージングを実行し画像を平滑化することで、画像に含まれるパターンの濃淡を減らして目立ちにくくすることができる。その結果、パターンディザ処理を実行する前にスムージングを実行し画像の先鋭性を低下させることでモアレの発生を抑制、あるいは発生するモアレを軽減できる。一方、モアレが発生する可能性が低い場合には、スムージングを実行しないことで(S33:NO)、ハーフトーン処理の処理負荷の軽減を図りつつ、印刷処理の実行時間を短縮できる。また、画像の先鋭性を維持して印刷できる。
【0059】
また、本開示の第1ハーフトーン処理としては、パターンディザ処理に限らず、例えば、周期性が高いAMスクリーンによるハーフトーン処理を採用しても良い。また、第2ハーフトーン処理として、周期性の低いFMスクリーンによるハーフトーン処理を採用しても良い。あるいは、第2ハーフトーン処理として、スムージングなどの画像を平滑化する処理を実施してからFMスクリーンを実施する処理を採用しても良い。
【0060】
また、本開示は、上記各実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記各実施例では、本開示のプリンタの一例として、MFP11を採用したが、これに限らない。本開示のプリンタは、MFP11のような多機能な画像形成装置ではなく、プリント機能だけを備える画像形成装置でも良い。
また、図1に示す画像形成システム10やネットワークの構成は、一例である。画像形成システム10は、MFP11を1台だけ備える構成でも良い。また、画像形成システム10は、スキャナと、プリンタをそれぞれ1台又は複数台備える構成でも良い。また、端末装置12は、1台でも良い。また、ネットワーク15にサーバ17が接続されていなくとも良い。
また、MFP11は、画像データ55を端末装置12に記憶しても良い。
画像データ55のファイル形式は、JPEG形式又はPDF形式に限らず、他の画像データを記憶可能な形式(JFIF形式など)でも良い。
【0061】
また、上記各実施例では、カラーの画像データ55について主に言及したが、モノクロの又はグレースケールの画像データ55についても同様に、ハーフトーン処理を切替えることで、モアレの発生を抑制できる。
また、上記各実施例では、MFP11は、画像データ55に含まれるデータに基づいて、モアレが発生する可能性を判断した。しかしながら、例えば、画像データ55と同一フォルダ内に、画像データ55のモアレの影響を示すテキストファイルが別途記憶されている場合、MFP11は、そのテキストファイルに基づいて、モアレの影響を判断しても良い。この場合、テキストファイルのファイル名として、画像データ55と関連があることを示す文字列、例えば、画像データ55のファイル名+「モアレ影響度」などの文字列を設定しても良い。従って、MFP11は、画像データ55とは別のデータに基づいて、モアレの発生を判断しても良い。
また、MFP11は、モアレが発生し易い特性として、高解像度である特性(S57)、高画像品質である特性(S61)、中間調ピクセルの割合が所定以上となる特性(S115)、スキャン画像である特性(S87、S99)を判断したが、何れか1つの特性だけを判断しても良い。例えば、MFP11は、図3のS55~S65を実行せず、スキャ
ン画像である特性(S53)のみを判断しても良い。
図2図8のプログラム33が実行した処理の一部、又は全部を、プリンタドライバ53が実行しても良い。具体的には、例えば、プリンタドライバ53が、図2のS11~S41まで、あるいは、S11~S47までの処理を実行して生成したデータ、いわばハーフトーン処理済データを、MFP11に送信し、MFP11が、ハーフトーン処理済データを用いて、S41を実行し印刷しても良い。
あるいは、プリンタドライバ53が、図2の、S11~S21までの処理を実行し、印刷用多値ラスタデータと共に、S21の判断結果を示すデータをMFP11に送信し、MFP11が、S21の結果を示すデータに従って、印刷用多値ラスタデータに対し、S33~S41を実行しても良い。
また、プリンタドライバ53が、図8のS11~S39までの処理を実行して生成したデータ、いわばハーフトーン処理済データを、MFP11に送信し、MFP11が、ハーフトーン処理済データを用いて、S41を実行しても良い。
また、プリンタドライバ53が、図8のS11~S13:YES~S17でJPEG解凍して得られたラスタデータを、MFP11に送信し、MFP11が、受信したラスタデータを用いて、S21~S41を実行しても良い。
また、プリンタドライバ53が、図8のS11~S13:YES~S121まで実行して生成したスムージング済みのラスタデータを、MFP11に送信し、MFP11が、受信したラスタデータを用いて、S19~S41を実行しても良い。
また、プリンタドライバ53が、図8のS11~S13:NO~S31:YESまでの処理を実行して生成した、印刷用多値ラスタデータを、MFP11に送信し、MFP11が、受信した印刷用多値ラスタデータを用いて、S35~S41を実行しても良い。
また、本開示のスキャナ、プリンタの制御装置は、CPU21に限らない。制御装置は、ASICや他の論理集積回路でも良く、CPU、ASIC、他の論理集積回路が協働する構成でも良い。
【符号の説明】
【0062】
11 MFP、33 プログラム、53 プリンタドライバ、55 画像データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8