(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157155
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】洗浄水の製造システムおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
B65B 3/04 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B65B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066883
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000114891
【氏名又は名称】ヤマト科学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山口 義二
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 八州
(72)【発明者】
【氏名】池田 政樹
(72)【発明者】
【氏名】豊 洋次郎
(72)【発明者】
【氏名】芳川 豊史
(72)【発明者】
【氏名】伊達 洋至
【テーマコード(参考)】
3E118
【Fターム(参考)】
3E118AA07
3E118AB17
3E118BA06
3E118CA16
3E118EA10
(57)【要約】
【課題】オゾンが溶存するウルトラファインバブル水を簡単、かつ、安全に製造でき、長期保存もできるようにする。
【解決手段】オゾンUFB水生成槽20内にオゾンガスを供給するオゾンガス発生装置40と、シリンジ33とプランジャ34とを有する注射器型のUFB発生部30と、プランジャ34を駆動させる駆動部10と、駆動部10を制御してプランジャ34を連続的に往復駆動させ、オゾンUFB水生成槽20内に貯留されたオゾンUFB水27を一旦はUFB発生部30のシリンジ33内に取り込むとともに、シリンジ33内に取り込んだオゾンUFB水27を再びオゾンUFB水生成槽20へと移動させることを繰り返すことによって、オゾンUFB水27の製造を行うコントロール部15と、オゾンUFB水生成槽20に貯留されたオゾンUFB水27を輸液バッグUBに充填させるボトリング部50と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内にオゾンガスを供給するオゾンガス発生装置と、
前記貯留槽に配管を介して接続され、外筒と押し子とを有する注射器型のバブル発生装置と、
前記バブル発生装置の前記押し子を駆動させる駆動装置と、
前記駆動装置を制御して前記押し子を連続的に往復駆動させ、前記貯留槽内に貯留された前記液体を一旦は前記バブル発生装置の前記外筒内に取り込むとともに、前記外筒内に取り込んだ前記液体を再び前記貯留槽へと移動させることを繰り返すことによって、前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水の製造を行う制御装置と、
前記貯留槽に貯留された前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水を保存用バッグに充填させる充填装置と、
を備えることを特徴とする洗浄水の製造システム。
【請求項2】
前記充填装置は、切替りバルブを介して前記配管に接続され、
当該充填装置による、前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水の前記保存用バッグへの充填が、前記切替りバルブの切替えに応じて、前記駆動装置によって前記バブル発生装置の前記押し子を駆動させることによって行われることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項3】
前記充填装置は、減圧ブース化されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項4】
前記配管の、前記貯留槽と前記バブル発生装置との間には、前記配管内に気体を取り込むための取込口を備えた気液混合ユニット部が接続されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項5】
前記バブル発生装置は、前記外筒の先端部分に、前記貯留槽からの前記液体を前記外筒内に取り込む減圧吸水室を備えることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項6】
前記バブル発生装置の前記外筒の筒先部分には、前記貯留槽からの前記液体を加速および加圧するための、前記液体の導入径が異なる液加速加圧部が交換可能に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項7】
前記バブル発生装置の前記外筒が、ステンレス、または、フッ素樹脂加工が施された金属によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項8】
前記保存用バッグは、医療的処置を施す現場に持ち込まれ、当該現場において、患部の洗浄・消毒に用いられることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項9】
前記オゾンガス発生装置は、建屋内の酸素ラインからの酸素の供給に応じて前記オゾンガスを発生させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄水の製造システム。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の洗浄水の製造システムを用いて洗浄水を製造する洗浄水の製造方法であって、
制御装置によって駆動装置を制御して、外筒と押し子とを有する注射器型のバブル発生装置の前記押し子を連続的に往復駆動させ、
貯留槽内に貯留された液体を一旦は前記バブル発生装置の前記外筒内に取り込むとともに、前記外筒内に取り込んだ前記液体を再び前記貯留槽へと移動させることを繰り返すことによって、オゾンガス発生装置より供給されるオゾンガスを含むウルトラファインバブル水を製造した後、
充填装置によって、前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水を保存用バッグに充填させて保存可能としたことを特徴とする洗浄水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水としてのオゾンガスを含むウルトラファインバブル(UFB)水の長期保存を可能とする洗浄水の製造システムおよび製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点滴静脈注射を用いて、気体をマイクロバブルとして含んだ輸液を患者の静脈に注入する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年では、体腔内消毒として、例えば、オゾンを溶存させたバブル水(オゾン水)を使って、膿胸などの体腔内感染に対する治療も試みられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の、マイクロバブルを含んだオゾン水は、バブル数の減少が著しく、一般的に寿命が短いという課題があった。即ち、オゾン水を予め製造(調製)して保存する場合には、適切な濃度管理が難しく、オゾン水としての品質を保証するのが困難であるなどの理由から、長期的な保存には適さないものであった。
【0006】
また、オゾンとは、3つの酸素原子からなる酸素の同素体であって、活性酸素の一種であり、強い殺菌力を有する半面、特に高濃度なオゾンは人体にとって有害であり、オゾン水を調製する際の調製者の安全性を確保する必要があるなどの問題もあった。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、オゾンが溶存するウルトラファインバブル水を簡単、かつ、安全に製造でき、長期保存も可能な洗浄水の製造システムおよび製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため、本発明の一態様は、液体を貯留する貯留槽と、前記貯留槽内にオゾンガスを供給するオゾンガス発生装置と、前記貯留槽に配管を介して接続され、外筒と押し子とを有する注射器型のバブル発生装置と、前記バブル発生装置の前記押し子を駆動させる駆動装置と、前記駆動装置を制御して前記押し子を連続的に往復駆動させ、前記貯留槽内に貯留された前記液体を一旦は前記バブル発生装置の前記外筒内に取り込むとともに、前記外筒内に取り込んだ前記液体を再び前記貯留槽へと移動させることを繰り返すことによって、前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水の製造を行う制御装置と、前記貯留槽に貯留された前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水を保存用バッグに充填させる充填装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の態様は、一態様に記載の洗浄水の製造システムを用いて洗浄水を製造する洗浄水の製造方法であって、制御装置によって駆動装置を制御して、外筒と押し子とを有する注射器型のバブル発生装置の前記押し子を連続的に往復駆動させ、貯留槽内に貯留された液体を一旦は前記バブル発生装置の前記外筒内に取り込むとともに、前記外筒内に取り込んだ前記液体を再び前記貯留槽へと移動させることを繰り返すことによって、オゾンガス発生装置より供給されるオゾンガスを含むウルトラファインバブル水を製造した後、充填装置によって、前記オゾンガスを含むウルトラファインバブル水を保存用バックに充填させて保存可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、オゾンが溶存するウルトラファインバブル水を簡単、かつ、安全に製造でき、長期保存も可能な洗浄水の製造システムおよび製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るオゾンUFB水製造システムの構成例を示す概略図である。
【
図2】
図1のオゾンUFB水製造システムのボトリング部の構成例を示す概略図である。
【
図3】
図1に示したオゾンUFB水製造システムの動作(オゾンUFB水の製造方法)を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1のオゾンUFB水製造システムによって製造されたオゾンUFB水の保存方法を例示する輸液バッグの概略図である。
【
図5】オゾンUFB水製造システムのボトリング部の他の構成例を示す概略図である。
【
図6】オゾンUFB水製造システムのボトリング部のさらに別の構成例を示す概略図である。
【
図7】輸液バッグの使用方法を例示する概略図である。
【
図8】オゾンUFB水製造システムによって製造されたオゾンUFB水の特性について、生理食塩水と対比して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
一実施形態
図1は、本発明の一実施形態に係る洗浄水の製造システムが適用されるオゾンUFB水製造システム1の構成例を示すものである。
【0013】
図1に示すように、このオゾンUFB水製造システム1は、洗浄水となるオゾンUFB水(液体/溶液)27を貯留するオゾンUFB水生成槽(貯留槽/バス/タンク)20と、オゾンUFB水生成槽20に導水路(配管)21a,21b,21cを介して接続された注射器型のUFB発生部30と、UFB発生部30のプランジャ(押し子/ピストン)34を駆動させる駆動部(駆動装置)10と、駆動部10を制御するコントロール部(制御装置)15と、オゾンUFB水生成槽20に医療ガスとしてのオゾンガス(O
3 )を供給するオゾンガス発生装置40と、オゾンUFB水生成槽20に貯留されたオゾンUFB水27を輸液バッグ(保存用バッグ/ソフトバッグ)UBに充填させるボトリング部(充填装置)50と、を備えている。
【0014】
本実施形態のオゾンUFB水製造システム1においては、オゾンUFB水生成槽20に充填された溶液が、UFB発生部30とオゾンUFB水生成槽20との間を繰り返し移動させられることによって徐々に高濃度化され、最終的に濃度調整されたオゾンUFB水27が生成される。
【0015】
UFB発生部30は、例えば減圧式(加圧溶解減圧開放型)のバブル発生装置であって、ステンレス(SUS)またはフッ素樹脂加工が施された金属によって形成されたシリンジ(外筒)33と、シリンジ33内を往復駆動されるプランジャ34と、を有している。
【0016】
シリンジ33とプランジャ34とからなるUFB発生部30は、例えば、プランジャ34の先端側にシリンジ33の内径との間にすき間がないように設けられたガスケット35と、ガスケット35の表側にネジ37などにより交換可能に取り付けられたパッキン部材36と、を有している。このガスケット35とパッキン部材36との多重構造により、バブル発生時に、シリンジ33内において、オゾンUFB水27がガスケット35を超えて漏れ出すのを抑制でき、例えば、オゾンUFB水27の調製時においても調製者の安全性の確保(安全な調製)が可能となる。
【0017】
パッキン部材36とシリンジ33の先端部分との間には、オゾンUFB水生成槽20からのオゾンUFB水27をシリンジ33内に取り込む減圧吸水室38が形成されるようになっている。この減圧吸水室38は、プランジャ34のシリンジ33に対する位置に応じて、その容積が変化される。
【0018】
ここで、シリンジ33としては、例えば、筒体部分の内径(直径)が15mm以上で、長さ(筒長)が50mm以上、筒先部分の内径が2mm以上で、筒体部分の内径と筒先部分の内径との差が10mm以上となるように形成するのが望ましい。
【0019】
また、UFB発生部30において、導水路21cがつながるシリンジ33の筒先部分には、例えばベンチュリー効果により、オゾンUFB水生成槽20からのオゾンUFB水27を加速および加圧する液加速加圧部31が設けられている。この液加速加圧部31は、例えばRC接続ネジ加工技術により、ハーフジョイント部39のシリンジ33との装着端側に交換可能に設けられている。
【0020】
即ち、本実施形態においては、液加速加圧部31の交換によりオゾンUFB水27の導入径を異ならせることが可能となっている。これにより、液加速加圧部31のオゾンUFB水27の導入径に応じて、オゾンUFB水27の流速を変更することが可能とされている。
【0021】
駆動部10は、例えば電気モータまたはエア駆動機構などを備えるとともに、UFB発生部30を支持・固定するホルダ部11と、UFB発生部30のプランジャ34の基端側を保持する保持部14と、プランジャ34がシリンジ33の筒方向(図示矢印X方向)に往復駆動されるように保持部14をスライドさせるスライド部12と、を備えている。
【0022】
コントロール部15は、例えば、プランジャ34の減圧速度(往時移動速度)制御、加圧速度(復時移動速度)制御、位置維持時間(インターバル時間)制御、および、回数(往復駆動回数)制御のためのプログラムなどを備えている。そして、作業者の設定入力に基づいて、駆動部10をプログラムにしたがって制御(プログラム運転)することにより、発生させるバブルのサイズ(気泡の粒径)や量(気泡の個数)、時間などをコントロールすることが可能とされている。
【0023】
オゾンUFB水生成槽20には、気体吸込部22を介して、オゾンガスの供給が行われるオゾンガス発生装置40が接続されるとともに、溶存気体生成部としてのオゾンUFB水生成槽20内の余剰ガスを外部(例えば、ボトリング部50)に排気する、内部圧力放出口としての内部ガス放出部28が設けられている。
【0024】
なお、減圧脱気や超音波脱気などにより、溶液としての、例えば生理食塩水を脱気させるようにしても良い。
【0025】
オゾンガス発生装置40は、酸素取込口40aを介して、例えば院内などの建屋内の酸素ライン(ボンベ)より酸素を取り込み、所定の濃度のオゾンガスを発生させるものである。
【0026】
また、オゾンUFB水生成槽20には、配管42a,42bを介して、貯留するオゾンUFB水27のオゾン濃度を計測する溶存オゾンガス計(溶存オゾン濃度計)42が接続されている。
【0027】
オゾンUFB水生成槽20に設けられた導水路21aの一端はオゾンUFB水27内に浸され、他端は、例えば気液混合ユニット部23に接続されている。気液混合ユニット部23は、開閉用つまみ24を操作して気体取込口を開状態とすることによって、気体取込口より自吸した気体を、オゾンUFB水27中に溶解(混合)させるものである。
【0028】
なお、気体取込口の開口径に応じて、溶解させる気体の気泡サイズを変化させることが可能である。
【0029】
気液混合ユニット部23には、導水路21bを介して、自動切替バルブ51が接続されている。自動切替バルブ51は、導水路21cを介して、UFB発生部30のシリンジ33の筒先部分(ハーフジョイント部39)に接続されるとともに、導水路51aを介して、ボトリング部50と接続されている。
【0030】
ボトリング部50には、導水路50aを介して、オゾンの余剰ガスを除去するためのオゾン除去フィルタ44が接続されている。オゾン除去フィルタ44には、配管44aを介して、減圧式の排気ポンプ46が接続されており、オゾン除去フィルタ44によって余剰なオゾンが除去されたガスを、配管46aを介して、外部に排気するようになっている。
【0031】
図2は、ボトリング部50の概略構成例を示すもので、ここでは、ウォーターサーバータイプを例示している。
【0032】
ボトリング部50は、例えば、オゾンUFB水生成槽20に貯留されたオゾンUFB水27を、減圧状態下において、市販の輸液バッグUBなどの試料用バッグにボトリングするためのものであって、いわゆる、オゾン曝露対策が施された減圧充填ブースである。
【0033】
即ち、このボトリング部50は、固定式の供給口51bや充填時に輸液バッグUBを保持する固定治具52のほか、いずれも図示していない、供給口51bからのオゾンUFB水27の充填操作を行うコック、漏れたオゾンUFB水27をトラップするトラップ槽、および、滅菌用のUVランプなどを備えている。
【0034】
本実施形態のボトリング部50は、調製者による図示せぬコックの操作により、供給口51bから流れ出た設定量分のオゾンUFB水27を輸液バッグUBの注ぎ口部分より充填させることから、ウォーターサーバータイプと呼称されている。
【0035】
なお、ボトリング部50としては、例えば、ボトリングするオゾンUFB水27に希釈用の生理食塩水を供給する生食水供給部(図示省略)を備えるようにしても良いし、濃度調整(自動希釈調整)のために、所定量の生理食塩水が予め貯留されている輸液バッグUBへのボトリングも可能である。
【0036】
また、本実施形態においては、UFB発生部30を自動切替バルブ51と連動させることにより、プランジャ34の往復駆動によって、オゾンUFB水27の輸液バッグUBへのボトリングが可能となっている。
【0037】
図3は、本実施形態に係るオゾンUFB水製造システム1によるオゾンUFB水27の製造方法を説明するために示すフローチャートである。
【0038】
図3において、まずは、オゾンUFB水生成槽20にオゾンガスを供給するオゾンガス発生装置40のオゾン発生器が、調製者によって開栓される(ステップS11)。
【0039】
次いで、調製者によって、オゾンUFB水生成槽20内に、オゾンUFB水27を製造するための溶液(例えば、生理食塩水などの原水)が投入される(ステップS01)。
【0040】
また、コントロール部15において、プランジャ34の駆動速度と駆動回数とを設定するための入力が行われる(ステップS02)。
【0041】
次いで、オゾンUFB水生成槽20内の余剰ガスなどをボトリング部50に放出させるために、内部ガス放出部28が開放される(ステップS12)。
【0042】
この後、自動切替バルブ51がUFB発生部30側に設定された状態において、所定のプログラムが起動されて、コントロール部15が調製者による設定入力に基づいて駆動部10を制御することにより、スライド部12による保持部14の反復運動が開始される(ステップS03)。
【0043】
そして、この保持部14の反復運動は、調製者によって設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて繰り返される(ステップS04)。
【0044】
即ち、この保持部14の反復運動に伴って、ホルダ部11に固定されたUFB発生部30のプランジャ34が、設定入力された駆動速度と駆動回数とに応じて、シリンジ33内を往復駆動させられる。
【0045】
ここで、オゾンUFB水生成槽20内に貯留された溶液は、陰圧時に、気体吸込部22より吸い込まれたオゾンガスが溶存されて、オゾンガスを含んだものとされる。そして、オゾンガスを含んだ溶液は、UFB発生部30において、プランジャ34がシリンジ33内より引き抜かれる方向に移動(往時移動)される際に、オゾンUFB水生成槽20内より吸い出される。さらに、導水路21aを介して気液混合ユニット部23へと送られ、気体取込口より取り込まれる気体と混合される。
【0046】
この後、気体が混合された溶液は、一旦は、導水路21cを介してUFB発生部30へと送られる。そして、液加速加圧部31を経た後、シリンジ33内の減圧吸水室38に取り込まれる。この減圧吸水室38への取り込み時に、溶液中には、液加速加圧部31の導入径やプランジャ34の駆動速度(減圧速度)に応じた数のバブルが発生される。
【0047】
即ち、プランジャ34の往時の移動によりシリンジ33内が減圧され、常圧から減圧への環境の変化により、溶解している気体が気泡となり、さらに、気泡が徐々に粉砕されて微細化されて、最終的にはナノレベルのオゾンUFBを含有したオゾンUFB水27となる。
【0048】
一方、UFB発生部30にて生成されたオゾンUFB水27は、設定入力された駆動速度(加圧速度)に応じて、プランジャ34がシリンジ33内に押し込まれる方向に移動(復時移動)される際に、減圧吸水室38内より押し出される。そして、導水路21c,21bを介して気液混合ユニット部23へと送られ、再び、気体取込口より取り込まれる気体と混合される。
【0049】
その後、オゾンUFB水27は、導水路21b,21aを介して、オゾンUFB水生成槽20内へと送られて、そこで一時的に貯留される。こうして、設定入力された駆動回数に達するまで、上記の動作が繰り返される(以上、ステップS05)。
【0050】
このようにして、オゾンUFB水生成槽20内に貯留された溶液が、UFB発生部30とオゾンUFB水生成槽20との間の移動を設定回数ほど繰り返すことにより、最終的には、オゾンUFB水生成槽20内に、ナノレベルの粒径を有し、目的濃度以上のオゾンが溶存された、多量(例えば、5L以上)のオゾンUFB水27が貯留される。
【0051】
こうして製造されたオゾンUFB水27は、溶存オゾンガス計42によってオゾンガス濃度が計測され(ステップS13)、目的値以上の濃度が自己分解によって目的濃度に達したことが確認された後(ステップS14)、自動切替バルブ51の切替えに連動してボトリング部50へと送られて、輸液バッグUBへの充填が行われる(ステップS15)。
【0052】
即ち、オゾンUFB水生成槽20内に貯留されたオゾンUFB水27は、自動切替バルブ51の切換えに伴って、UFB発生部30のプランジャ34がシリンジ33側より引き抜かれる方向に移動(往時移動)される際に、オゾンUFB水生成槽20内より吸い出される。そして、オゾンUFB水生成槽20内より吸い出されたオゾンUFB水27は、今度は、UFB発生部30のプランジャ34がシリンジ33側へ押し込まれる方向に移動(復時移動)される際にボトリング部50へと送られた後、コック操作に応じて供給口51bより流出されて、設定量分のオゾンUFB水27が輸液バッグUB内へと充填される。
【0053】
その一方で、オゾンUFB水生成槽20およびボトリング部50からのガスは、余剰なオゾンがオゾン除去フィルタ44によって除去された後、排気ポンプ46により外部へと排気される(ステップS16)。
【0054】
輸液バッグUBに充填されたオゾンUFB水27は、例えば
図4に示すように、調製者によって輸液バッグUBの注ぎ口部分にゴム栓UBG付きのキャップUBCが取り付けられるとともに、吊下げ孔UBaによって吊下げられた状態で、もしくは、横積みされた状態で、温度管理された暗所などにおいて保管(冷蔵)される。
【0055】
本実施形態によれば、オゾンが溶存するオゾンUFB水を簡単、かつ、安全に製造できるとともに、オゾンUFB水の長期保存も可能となる。
【0056】
即ち、オゾンをUFB化するとともに、輸液バッグ内に保存させることで、従来よりも、バブル数の減少を抑えつつ、適切な濃度(バブル数)を維持したまま、長寿命化(例えば、1か月以上保管)することが可能となる。
【0057】
しかも、院内などの酸素ラインからの酸素の供給に応じてオゾンガスを発生させるとともに、ボトリングするオゾンUFB水のオゾン濃度をガス計により計測し、自己分解後に、輸液バッグへのボトリングを行うようにしている。
【0058】
これにより、多量のオゾンUFB水をバッチ製造することが可能となり、オゾンUFB水の安定的な製造が安全に行えるようになるとともに、オゾンUFB水のハンドリング性をも向上できるようになる。
【0059】
特に、バブル発生時にオゾンUFB水が漏れ出すのを抑制したり、ボトリングをオゾン曝露対策減圧充填ブース内で行うようにすることによって、製造時の調製者の安全性をも容易に確保可能となる。
【0060】
したがって、オゾンUFB水の製造において、高品質なオゾンUFB水を簡単に製造できるとともに、長期的な保存が可能であり、より安全なシステムとすることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態においては、オゾンUFB水27の輸液バッグUBへの充填を、自動切替バルブ51の切替えに伴って、UFB発生部30のプランジャ34の往復駆動に連動させて行うようにしたが、これに限定されないことは勿論である。
【0062】
また、オゾンUFB水27の製造後においては、例えば、ライン洗浄などによる純水により、オゾンや生理食塩水によるシステムの腐食や劣化を防止するようにしても良い。
【0063】
ボトリング部50の他の構成例
また、オゾンUFB水27の輸液バッグUBへの充填は、ウォーターサーバータイプによらず、例えば
図5に示すように、ノズル挿入タイプのボトリング部50を用いて行うことも可能である。
【0064】
即ち、このノズル挿入タイプのボトリング部50は、例えば固定治具53を上下方向(図示矢印Y方向)に昇降可能とし、充填時には、輸液バッグUBを上昇させて、供給口51bの先端側を輸液バッグUBの注ぎ口部分より挿入させた状態で、オゾンUFB水27のボトリングを行うようになっている。
【0065】
なお、供給口51bには、例えば、2本の充填ノズル(長ノズル)と1本の排気ノズル(短ノズル)とが用意されている。
【0066】
このノズル挿入タイプのボトリング部50によれば、充填時のオゾンUFB水27の飛散による汚染を抑え、より安全なバッグ充填(ボトリング)が可能となる。
【0067】
また、輸液バッグUBの昇降によらず、供給口51bを昇降動作可能な構成とすることも可能である。
【0068】
ボトリング部50のさらに別の構成例
さらに、オゾンUFB水27の充填(保存)は、例えば
図6に示すように、ノズル付き輸液バッグUBを用いて行うことも可能である。
【0069】
この場合、ボトリング部50は、例えば、オゾンUFB水27の供給口51bを上下方向(図示矢印Y方向)に昇降可能とし、充填時には、供給口51bを降下させて、輸液バッグUBのノズルUBNと接続させた状態で、オゾンUFB水27のボトリングを行うように構成されている。
【0070】
なお、ノズルUBNには、例えば、2本の充填ノズル(長ノズル)と1本の注出ノズル(短ノズル)とが用意されている。
【0071】
また、供給口51bの昇降によらず、輸液バッグUBを昇降動作可能な構成とすることも可能である。
【0072】
このように、オゾンUFB水27の保存には、各種の輸液バッグUBを適用することが可能であり、またソフトバッグに限らず、ボトルなどを用いることもできる。
【0073】
いずれの場合においても、オゾンUFB水27の輸液バッグUBへの充填は、自動化することが可能である。
【0074】
適用例
図7は、上述したオゾンUFB水製造システム1により製造された、オゾンUFB水27が充填された輸液バッグUBの使用方法を例示する概略図である。
【0075】
ここでは、オゾンUFB水27が充填された輸液バッグUBを用いて、例えば、膿胸を患った患者を治療(胸腔ドレナージ)する場合について説明する。
【0076】
膿胸とは、黄色ブドウ球菌などによる細菌感染症などにより、肺の表面を覆う臓側胸膜と胸壁の内側を覆う壁側胸膜との間の胸膜腔に膿が溜まった状態をいう。
【0077】
膿胸の患者に胸腔ドレナージを行う場合、まずは、治療を行う院内の処置室などの現場において、保管中の輸液バッグUBが準備されるとともに、充填されているオゾンUFB水27を洗浄水として用いるために、生理食塩水による希釈が行われて、消毒能を有する安全域のオゾン濃度が担保される。
【0078】
そして、治療時には、オゾンUFB生食水化された輸液バッグUBの吊下げ孔UBaを点滴スタンド61に吊下げ、輸液バッグUBのキャップUBCの部分のゴム栓UBGに輸液ライン62を繋ぐことによって、ドレナージする吸引器60の排液管60aを介して、オゾンUFB生食水が患者の患部に供給されて、オゾンUFB生食水による患部の洗浄が行われる。
【0079】
図8は、胸腔ドレナージに用いたオゾンUFB生食水の特性について、生理食塩水の場合と対比して示す図である。
【0080】
ここでは、生菌数が1-5×10 8/ml程度の黄色ブドウ球菌(ATCC29213)を植え付けられた膿胸ラットを対象とし、介入実験を行った。
【0081】
図8において、縦軸は、黄色ブドウ球菌のコロニー形成数(CFU/sample)であり、横軸は、洗浄回数であり、四頭の膿胸ラット(A)~(D)に対し、うち二頭(C),(D)には生理食塩水を洗浄水とし、残りの二頭(A),(B)にはオゾンUFB生食水(希釈前のオゾン濃度が、例えば0.4±0.05mg/L)を洗浄水として、胸腔内を洗浄した結果である。
【0082】
この図からも明らかなように、オゾンUFB生食水を洗浄水として患部の洗浄を行った膿胸ラット(A),(B)において、いずれも洗浄5回目以降について、顕著なオゾンUFB生食水による殺菌の効果(黄色ブドウ球菌のコロニー数の減少)が認められた。
【0083】
このように、膿胸などの体腔内感染といった局所に対する治療においては、洗浄による殺菌(体腔内消毒)の効果が期待できるなど、特に、有用である。
【0084】
上記したように、オゾンをUFB化し、輸液バッグを用いて保存することで、オゾンUFB水の長期保存が可能となる結果、例えば医療の現場において、予め製造し、保管しておいた輸液バッグの持ち込みによる治療が可能となる。
【0085】
しかも、院内にて簡単に製造・保管することが可能であるといったメリットもある。
【0086】
なお、黄色ブドウ球菌(ATCC29213)に限らず、緑膿菌(ATCC27853)やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)(臨床分離株)、および、嫌気性菌であるpeptostreptococcus anaerobius(ATCC27337)に対する殺菌の効果も確認できた。
【0087】
また、洗浄水としては、体腔内感染の治療に限らず、処置室などの室内や医療機器、外傷などの患部の殺菌・消毒などにも適用可能である。
【0088】
さらには、院内で使用する場合に限らず、例えば、災害地や救命救急などの現場に輸液バッグを持ち込んで使用することもできるため、汎用性に優れる。
【0089】
また、オゾンUFB水製造システム1としては、患部洗浄などに用いられるホースを備えた構成としても良い。
【0090】
以上、いくつかの実施形態を例示して本発明の態様について説明したが、各実施形態は一例であり、特許請求の範囲に記載される発明の範囲は、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更できるものである。
【符号の説明】
【0091】
1…オゾンUFB水製造システム
10…駆動部(駆動装置)
15…コントロール部(制御装置)
20…オゾンUFB水生成槽(貯留槽/バス/タンク)
23…気液混合ユニット部
27…オゾンUFB水(液体/溶液)
30…UFB発生部(バブル発生装置)
33…シリンジ(外筒)
34…プランジャ(押し子/ピストン)
38…減圧吸水室
40…オゾンガス発生装置
42…溶存オゾンガス計
44…オゾン除去フィルタ
46…排気ポンプ
50…ボトリング部(充填装置)
51…自動切替バルブ
UB…輸液バッグ(保存用バッグ/ソフトバッグ)