(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157176
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/36 20060101AFI20231019BHJP
B60N 2/30 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B60N2/36
B60N2/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066920
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 京真
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 映一
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 真理
(72)【発明者】
【氏名】井上 勝允
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
3B087CA02
3B087CA12
(57)【要約】
【課題】乗物用シートの前脚の振動を抑制する。
【解決手段】車内フロア70の段差71を跨いで配置されて、段上に固定される後脚40に比べて、段下に固定される前脚20が長い乗物用シート12である。前脚20は、車幅方向に間隔をあけて配置される2つの前脚要素22を含み、2つの前脚要素22はそれぞれ、シートクッション14の下部から車内フロア70に向かって延びて、シートクッション14の下部と車内フロア70に固定されている。乗物用シート12は、2つの前脚要素22の間を連結する連結部50を含み、連結部50は、各前脚要素22の車両前後方向の中心位置Cよりも車両前方にオフセットした位置に設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内フロアの段差を跨いで配置されて、段上に固定される後脚に比べて、段下に固定される前脚が長い乗物用シートであって、
前記前脚は、車幅方向に間隔をあけて配置される2つの前脚要素を含み、
2つの前記前脚要素はそれぞれ、シートクッションの下部から前記車内フロアに向かって延びて、前記シートクッションの下部と前記車内フロアに固定されており、
前記乗物用シートは、2つの前記前脚要素の間を連結する連結部を含み、
前記連結部は、前記各前脚要素の車両前後方向の中心位置よりも車両前方にオフセットした位置に設けられている、
ことを特徴とする乗物用シート。
【請求項2】
請求項1に記載の乗物用シートにおいて、
前記各前脚要素の上端は、前記シートクッションの下部に回動可能に固定されており、
前記各前脚要素の下端は、前記車内フロアに回動可能に固定されており、
前記乗物用シートは、
前記シートクッションに向かってシートバックを倒し、前記後脚の前記車内フロアとの固定を解除し、前記シートクッションの車両後方側部分を車両上方かつ前方に移動させることで、前記各前脚要素が前記シートクッションおよび/または前記車内フロアの回動軸を中心に車両前方に旋回し、
前記シートクッションをさらに車両前方に移動させて、前記シートクッションと前記シートバックを車両前方にある前記段下に落とし込むことで、シート格納状態を形成可能である、
ことを特徴とする乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関し、特に、車内フロアの段差を跨いで配置されるシートの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の室内に設けられて、車内フロアの段差を跨いで配置されるセカンドシート、サードシート等のリアシートが知られている。リアシートは、段上に後脚が固定され、段下に前脚が固定される。また、リアシートを折り畳んで前方に移動させることで、車内後部のラゲージスペースを広くする構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車内フロアの段差を跨いで配置されるシートは、段上に固定される後脚に比べて、段下に固定される前脚が長くなる。このようなシートでは、車両が走行した際に、後脚を軸として前脚が左右に振動しやすく、シートに座った乗員の車両乗り心地が悪化する虞がある。
【0005】
本発明の目的は、車内フロアの段差を跨いで配置されるシートに関し、シートに座った乗員の車両乗り心地を改善できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗物用シートは、車内フロアの段差を跨いで配置されて、段上に固定される後脚に比べて、段下に固定される前脚が長い乗物用シートであり、前記前脚は、車幅方向に間隔をあけて配置される2つの前脚要素を含む。2つの前記前脚要素はそれぞれ、シートクッションの下部から前記車内フロアに向かって延びて、前記シートクッションの下部と前記車内フロアに固定されている。前記乗物用シートは、2つの前記前脚要素の間を連結する連結部を含み、前記連結部は、前記各前脚要素の車両前後方向の中心位置よりも車両前方にオフセットした位置に設けられている、ことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る乗物用シートにおいて、前記各前脚要素の上端は、前記シートクッションの下部に回動可能に固定されており、前記各前脚要素の下端は、前記車内フロアに回動可能に固定されている。前記乗物用シートは、前記シートクッションに向かってシートバックを倒し、前記後脚の前記車内フロアとの固定を解除し、前記シートクッションの車両後方側部分を車両上方かつ前方に移動させることで、前記各前脚要素が前記シートクッションおよび/または前記車内フロアの回動軸を中心に車両前方に旋回し、前記シートクッションをさらに車両前方に移動させて、前記シートクッションと前記シートバックを車両前方にある前記段下に落とし込むことで、シート格納状態を形成可能である、としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シートの後脚から遠い位置(各前脚要素の中心位置よりも車両前方にオフセットした位置)に連結部が設けられて、その位置の質量が大きくなっているので、車両走行によるシートの後脚を軸とする前脚の振動を抑制することができる。また、シートの後脚から遠く、振動により変形が生じやすい部位の剛性が連結部により高まるので、前脚の振動を抑制することができる。これにより、シートに座った乗員の車両乗り心地が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態に係るシートの下部の正面側斜視図である。
【
図4】左側の前脚要素と連結部の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、本発明は、ここに記載される実施形態に限定されるものではない。全ての図面において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0011】
以下の説明において、特段の断りがない限り、前後左右上下等の方向および向きを表す語句は、車両に関する方向および向きを表す。各図において、矢印FRの向きが車両前方、矢印UPの向きが車両上方、矢印RHの向きが車両右方を表す。
【0012】
図1は、実施形態に係るシート12の左側面図であり、
図2は、シート12の下部の正面側斜視図であり、
図3は、シート12の平面図である。シート12は、車両に搭載されたリアシートである。リアシートは、車幅方向に並べて2つ配置されているが、以下説明する各図には、車両左側に配置されたリアシート(シート12)のみが示されている。
【0013】
シート12は、折り畳み可能な構造を有し、展開状態(
図1参照)と格納状態(
図7参照)を形成可能である。
図1~3には、展開状態のシート12が示されている。シート12は、
図1に示すように、展開状態において段差71を跨いで配置される。シート12は、段上に固定される後脚40に比べて、段下に固定される前脚20が長くなっている。シート12は、シートクッション14と、シートクッション14の後部上側に配置されたシートバック16と、シートクッション14の後部下側に配置された後脚40と、シートクッション14の前部下側に配置された前脚20とを備える。
【0014】
後脚40は、
図2に示すように、車幅方向に間隔をあけて配置された2つの後脚要素42を備える。2つの後脚要素42は同様の構造を有する。後脚要素42の上端は、シートクッション14(具体的にはクッションフレーム)に固定されており、後脚要素42の下端は、
図2の吹き出し内の斜視図に示すように、車内フロア70に設けられた凹部74内のストライカ76に着脱可能に固定されている。なお、後脚要素42の先端に設けられた凹みにストライカ76が入り込み、後脚要素42のロック部46(詳細構造は不図示)によって後脚要素42がストライカ76に係脱可能としている。
【0015】
前脚20は、
図2に示すように、車幅方向に間隔をあけて配置された2つの前脚要素22を備える。2つの前脚要素22は同様の構造を有する。前脚要素22は、シートクッション14(具体的にはクッションフレーム)の下部から車内フロア70に向かって延びている。
【0016】
図4は、シート12に組み付ける前の左側の前脚要素22と連結部50の一部を示す斜視図である。前脚要素22は、上端部24、張出部25、および下端部26を備える。張出部25は、上端部24と下端部26の間にあり、上端部24と下端部26よりも前方に張り出している。前脚要素22は、内側壁53、前壁54、および外側壁55により形成されている。前脚要素22の張出部25は、
図4のA-A断面に示すように、内側壁53、前壁54、および外側壁55により断面コ字状を有している。
【0017】
前脚要素22の上端部24は、前壁54が切り欠かれて、2つの側壁53、55の上部末端にそれぞれ、孔28が形成されている。
図2に示すように、前脚要素22の上端部24の中央(前壁54の切り欠かれた部分)には、シートクッション14(具体的にはクッションフレーム)に設けられた固定部60が入り込む。上端部24の2つの孔28(
図4参照)と、シートクッション14の固定部60に設けられた孔(不図示)にピンが通されることで、前脚要素22の上端部24が、シートクッション14の下部に回動可能に固定されている。
【0018】
前脚要素22の下端部26は、前壁54が切り欠かれて、2つの側壁53、55(
図4参照)の下部末端にそれぞれ、孔29が形成されている。
図2に示すように、前脚要素22の下端部26の中央(前壁54の切り欠かれた部分)には、車内フロア70に設けられた固定部62が入り込む。下端部26の2つの孔29(
図4参照)と、車内フロア70の固定部62に設けられた孔(不図示)にピンが通されることで、前脚要素22の下端部26が、車内フロア70に対して回動可能に固定されている。
【0019】
シート12は、
図2に示すように、2つの前脚要素22の間を連結する連結部50を備える。連結部50は、2つの板状の連結要素52を備える。2つの連結要素52は同様の構造を有する。連結要素52は、
図4に示すように、短手方向の両端に膨らみを有する短冊状のシート補強部材である。連結要素52は、質量が大きい方が望ましく、例えば金属製である。
【0020】
一つの連結要素52は、
図4に示すように、左側の前脚要素22の張出部25の内側壁53上部に結合されて、右下に向かって延びて、右側の前脚要素22(
図2参照)の張出部25の内側壁下部に結合されている。もう1つの連結要素52は、
図4に示すように、左側の前脚要素22の張出部25の内側壁53下部に結合されて、右上に向かって延びて、右側の前脚要素22(
図2参照)の張出部25の内側壁上部に結合されている。
図2に示すように、2つの連結要素52が交わる部分で、それらがボルト等により締結されており、締結部57が形成されている。
【0021】
図1には、左側の前脚要素22に対する2つの連結要素52の結合位置が破線で示されている。2つの連結要素52は、左側の前脚要素22の前後方向の中心位置Cよりも車両前方にオフセットした位置に結合されている。また、図示されていないが、右側の前脚要素22に対する2つの連結要素52の結合位置も同様である。
【0022】
ここで、シート12を展開状態(
図1参照)から格納状態(
図7参照)に変形する方法について説明する。まず、シートバック16の車両外側の肩口に設けられたリクライニングノブ80を引き上げる。これにより、シートバック16の背もたれ角度の固定状態が解かれて、
図5に示すように、シートバック16をシートクッション14の上面部に畳み込むことができる。次に、シートクッション14の後部に設けられたストラップ、レバー等の解除手段82を操作する。これにより、シートクッション14の2つの後脚要素42において、後脚要素42の先端に設けられたロック部46(
図2参照)が動作し、後脚要素42のロック部46と、車内フロア70の凹部74内のストライカ76との係合が解除される。次に、
図6に示すように、シートクッション14の後部を車両上方かつ前方に移動させる。これにより、2つの前脚要素22がシートクッション14の回動軸(前脚要素22と固定部60の結合部(孔28に設けられたピン))および/または車内フロア70の回動軸(前脚要素22と固定部62の結合部(孔29に設けられたピン))を中心に車両前方に旋回する。そして、シートクッション14をさらに車両前方に移動させて、
図7に示すように、シートクッション14とシートバック16を車両前方にある段下に落とし込む。これにより、シート12の格納状態を形成することができる。なお、シート12を展開状態に戻すには、上記とは逆の操作を行えばよい。
【0023】
次に、本実施形態のシート12の作用効果について説明する。
【0024】
本実施形態のシート12は、車内フロア70の段差71を跨いで配置されて、段上に固定される後脚40に比べて、段下に固定される前脚20が長くなっている。このようなシートでは、車両が走行した際に、
図3の太線矢印で示すように、シートクッションと車内フロアとの距離が短いシート後部(後脚)を軸として、シート前部(前脚)が左右に共振しやすくなる。
【0025】
しかし、以上説明した実施形態のシート12によれば、シート12の後脚40から遠く、振動の振幅が大きくなりやすい位置(各前脚要素22の前後方向の中心位置Cよりも車両前方にオフセットした位置)に連結部50が設けられて、その位置の質量が大きくなっているため、車両走行によるシート12の後脚40を軸とする2つの前脚要素22の振動を抑制することができる。また、シート12の後脚40から遠く、振動により変形が生じやすい部位の剛性が連結部50により高くなっているので、2つの前脚要素22の振動を抑制することができる。これにより、シート12に座った乗員の車両乗り心地を改善することができる。
【0026】
なお、以上説明した実施形態では、前脚要素22が断面コ字状を有していたが、前脚要素22は、筒状や中実の構造であってもよい。
【0027】
また、以上説明した実施形態では、連結部50が2つの連結要素52から構成されていたが、連結部50は、1つ、または、3つ以上の連結要素52から構成されてもよい。例えば、1つまたは複数の板状の連結要素52を車幅方向と平行に、或いは、クロスして、2つの前脚要素22の間に配置するとよい。また、連結要素52は、筒状、円柱状、角柱状等であってもよい。
【0028】
上記実施形態の乗物用シートは、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば、鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用できる。
【符号の説明】
【0029】
12 シート、14 シートクッション、16 シートバック、20 前脚、22 前脚要素、24 上端部、25 張り出し部、26 下端部、28,29 孔、40 後脚、42 後脚要素、46 ロック部、50 連結部、52 連結要素、53 内側壁(側壁)、54 前壁、55 外側壁(側壁)、57 締結部、60,62 固定部、70 車内フロア、71 段差、74 凹部、76 ストライカ、80 リクライニングノブ、82 解除手段。