IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 井関農機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業車両 図1
  • 特開-作業車両 図2
  • 特開-作業車両 図3
  • 特開-作業車両 図4
  • 特開-作業車両 図5
  • 特開-作業車両 図6
  • 特開-作業車両 図7
  • 特開-作業車両 図8
  • 特開-作業車両 図9
  • 特開-作業車両 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157219
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   A01D 43/077 20060101AFI20231019BHJP
   A01D 43/063 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
A01D43/077
A01D43/063 115
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066985
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】栗田 和幸
【テーマコード(参考)】
2B083
【Fターム(参考)】
2B083FA17
(57)【要約】
【課題】集草した刈草が満杯になるタイミングを適切に管理するシステムを提供する。
【解決手段】走行しながら芝草を刈り取る刈取専用機1と、芝草を集めて回収する集草専用機2とを備え、刈取専用機1及び集草専用機2にはそれぞれ制御部100,200を設け、集草専用機2の収容部8内芝草の重量を検知する重量検知センサ211を設け、重量検知センサ211の値が排出重量値Pmaxに達したか否かを判定し、この所定値Pmaxに達すると満杯と判定するよう構成する満杯判定手段213を設ける。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行しながら芝草を刈り取る刈取専用機(1)と、芝草を集めて回収する集草専用機(2)とを備え、刈取専用機(1)及び集草専用機(2)にはそれぞれ制御部(100,200)を設け、集草専用機(2)の収容部(8)内芝草の重量を検知する重量検知センサ(211)を設け、重量検知センサ(211)の値が排出重量値(Pmax)に達したか否かを判定し、この所定の排出重量値(Pmax)に達すると収容部(8)満杯と判定する満杯判定手段(213)を設けることを特徴とする作業車両。
【請求項2】
それぞれ制御部(100,200)は互いに通信可能であって、刈取専用機(1)の制御部(100)は、刈取対象の芝草の平均高さ(K)、刈取手段(5)の刈幅(S)と刈高さ(Ka)、移動距離(L)によって刈り取る芝草量(Q)を演算する芝草刈取状況演算手段(111)を備え、満杯判定手段(213)は、この芝草量(Q)の理論芝草密度(ρt)による理論重量値(Pt)と前記重量検知センサ(211)による検出重量値(Pr)との比較に基づいて、排出重量値(Pmax)を補正する構成とした請求項1に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公園等を走行させて園内の芝草刈りを行う先行車両と集草を行う後続車両を備えた作業車両に係り、特にその制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両において、地面に拡散した刈草を進行方向に対して左右いずれか一方に寄せる集草作業機を備えた先行作業車両と、先行車両の走行軌跡に基づいて走行しながら集草された刈草をロール状に梱包する梱包作業機を備えた後続車両がそれぞれ自動運転により走行する作業車両の制御システムが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-105794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によると、集草した草の排出タイミングについて、ロール状に梱包する梱包作業機の場合はロールの大きさで適切な排出タイミングを検知できるものの、ロール状に梱包しないタイプの集草作業機では刈草を排出するタイミングを適切に判断することは難しい。
【0005】
本発明は、自動で草刈り作業と集草作業を行う作業車両において、集草した刈草を排出するタイミングを適切に管理できる作業車両の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、走行しながら芝草を刈り取る刈取専用機1と、芝草を集めて回収する集草専用機2とを備え、刈取専用機1及び集草専用機2にはそれぞれ制御部100,200を設け、集草専用機2の収容部8内芝草の重量を検知する重量検知センサ211を設け、重量検知センサ211の値が排出重量値Pmaxに達したか否かを判定し、この所定の排出重量値Pmaxに達すると収容部8満杯と判定する満杯判定手段213を設ける。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、それぞれ制御部(100,200)は互いに通信可能であって、刈取専用機1の制御部100は、刈取対象の芝草の平均高さK、刈取手段5の刈幅Sと刈高さKa、移動距離Lによって刈り取る芝草量Qを演算する芝草刈取状況演算手段111を備え、満杯判定手段213は、この芝草量Qの理論芝草密度ρtによる理論重量値Ptと前記重量検知センサ211による検出重量値Prとの比較に基づいて、排出重量値Pmaxを補正する構成とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、重量検知センサ211の排出重量値Pmax検知に基づいて集草作業中断の構成としたものであるから、その後の芝草排出処理のタイミングを適切に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、芝草密度ρが、気候、刈取作業時刻、芝草植立区域によって相違しても収容部8内へ供給する芝草量を調整でき作業の効率化が図れる。又重量検知センサ211による排出重量値Pmaxを適切に補正でき、集草作業中断ひいてはその後の芝草排出処理のタイミングを適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態にかかる作業車両の刈取専用機と集草専用機の概要を示す平面図である。
図2】同作業車両の刈取専用機と集草専用機の概要を示す側面図である。
図3】同作業車両の制御ブロック図である。
図4】同作業車両のフローチャートである。
図5】同作業車両のフローチャートである。
図6】同作業車両の別例の刈取専用機と集草専用機の概要を示す側面図である。
図7】同作業車両のフローチャートである。
図8】同作業車両の集草専用機と廃棄位置の概要を示す平面図である。
図9】(A)(B)同作業車両の芝草回収コンテナと集草専用機の側面図である。
図10】同作業車両の芝草回収コンテナと集草専用機の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すように、作業車両は、先行する刈取専用機1と、後続する集草専用機2とからなる。刈取専用機1は、前後左右の走行車輪3によって支持される車体4内に刈刃による刈取手段5を備えている。刈取手段5は公知の形態であって芝草等を所定刈高さに揃えて切断処理する構成としている。
【0012】
集草専用機2は、前後左右の走行車輪6に支持された車体7の前方には地面や圃場面に散乱する芝草Gを集めて車体7上部の収容部8に送り込む回転掻込み装置とブロア装置とからなる集草手段9を備えている。収容部8は車体7にダンプ手段10を介して設けられ、収容部8に順次送り込まれた芝草を廃棄場所において収容部8を反転させて排出する構成である。
【0013】
なお、刈取専用機1、集草専用機2ともに走行駆動手段、作業部駆動手段として電動モータ又はエンジンを備え、走行部、作業部をそれぞれ独立的に駆動できる構成としている。
【0014】
ついで、刈取専用機1の制御部100と集草専用機2の制御部200の構成及び機能について説明する。
【0015】
制御部100及び制御部200にはそれぞれ測位衛星システムからの測位信号を受信し現在位置を認識できる位置情報処理手段101,201を設けている。また、両制御部100,200は互いに通信手段300を介して通信可能に構成され、互いの情報を発信しまたは受信できるように構成されている。
【0016】
さて、刈取専用機1の制御部100には、走行車輪3に関する回転速度や左右回転数の相違による操舵を実行する走行制御部102を備え、あらかじめ入力する作業領域情報や往復行程経路情報に基づいて自律走行可能に構成している。また、オペレータからの発信信号や刈取専用機1車体3に設けるセンサ等の検知信号により障害物の有無を検知しながら走行経路を補正しつつ作業走行できるように構成している。なお、作業領域の走行行程が終了すると駆動力オフ出力し、作業中において各種情報に基づいて車速制御が行われる。
【0017】
刈取専用機1の制御部100には、作業制御部110を備える。作業制御部110には、刈取手段5の設置条件、芝草の植立状況、刈取専用機1の走行状態(速度)等の条件入力によって、刈取作業を演算する芝草刈取状況演算手段111を有する。具体的には、車体4の前方に撮像カメラ112の撮像結果に基づいて刈取対象の芝草高さ(丈)の平均高さKを演算し、位置情報処理手段101の情報に基づいて移動速度V及び移動距離Lを演算する。そして予め設定された刈取手段5に固有の刈幅Sと刈高さKaとによって、刈り取った芝草量(体積)Qを演算するものである。すなわち、Q=S×(K-Ka)×Lで表わされる。
【0018】
芝草刈取状況演算手段111は、更に、単位容積当りの芝草重量、つまり芝草密度ρtを乗ずることによって刈取処理した芝草重量Ptを演算できる。すなわち、Pt=ρt×Qである。ここで、ρtは予め記憶された理論値であり、芝草重量Ptも予測理論値である。この芝草刈取状況演算手段111の演算結果は、後続の集草専用機2の制御部200に送信される。
【0019】
集草専用機2の制御部200は、走行車輪6の回転速度や操舵制御を行う走行制御部202を備える。例えば、先行する刈取専用機1の走行制御部102は、刈取専用機1の走行軌跡Rを演算して集草専用機2の制御部200に送信する。そして制御部200の走行制御部202は走行軌跡Rに沿うように後続の集草専用機2の走行車輪6を回転制御する。また後述満杯判定手段の判定結果に基づいて、満杯に達すると芝草を廃棄場所へ移動するための排出移動制御手段214を備える。
【0020】
集草専用機2の制御部200には、作業制御部210を備える。この作業制御部210には収容部8の芝草の重量を検知する検知センサ211からの検知信号を入力している。また、集草手段9の回転送込み装置回転数やブロア装置の回転数を適宜に設定する集草作業演算手段212、この収容部8の芝草が所定重量に達したか否かを判定する満杯判定手段213等を備える。
【0021】
ここで、前記芝草刈取状況演算手段111の演算結果として通信された芝草重量Ptと前記重量検知手段211による検知重量Prとの関係と、処理について説明する。図4のフローチャートは、集草専用機2の芝草排出判定制御について一般的な制御を示すもので、集草専用機2は先行する刈取専用機1の走行軌跡に追従し集草作業を行う(S101,S102)。所定タイミングで芝草量すなわち体積Qを前記刈幅S、芝草高さK等に基づき演算する(S103)。そしてこの芝草量Qが、集草専用機2の収容部8容積の満杯に見合う量Qmaxであるか否かを判定する(S104)。なお、Qmax=Pmax/ρtで演算できるが、収容部8容積に見合うQmaxの値は予め設定できるので、S104は、重量検知センサ211の値が満杯重量値(以下排出重量値)Pmaxに達したか否かの判定に置き換えられる。S104でQmaxに達したと判定されると、集草作業機2は停止され集草作業は中断され、あらかじめ設定している芝草廃棄位置に向けて走行開始する(S105,S106)。廃棄位置に達して収容部8の芝草を排出すると集草作業機2は集草作業中断位置に向けて走行し、この中断位置において集草作業を再開する(S107~S111)。
【0022】
そして、芝草量Qの演算を再開し(S112)、満杯判定手段213による演算制御、つまりQmaxに達したか否かを判定する(S113)。
【0023】
満杯判定演算制御について、収容部8内芝草の重量検知センサ211の検出によって精度良い判定について、図5のフローチャートに基づき説明する。刈取専用機1の制御部100との通信によって、集草専用機2の制御部200は芝草密度ρt,予測重量Pt等を受信する(S201)。これら芝草密度ρtと予測重量Pt、及び予め設定された収容部8の満杯に見合う量Qmaxによって、満杯状態での芝草重量である排出重量値Pmaxが算出される(S202)。つまり排出重量値Pmax=ρt×Qmaxで算出される予測値である。
【0024】
ところで、所定タイミングで重量検知センサ211値Prを読み込むと共に、この実測重量Prと前記刈取専用機1の制御部100から通信される予測重量Ptを比較する(S203,S204)。実測重量Prが予測重量Ptより大の場合、当該刈取集草作業における芝草密度ρrは、通信された芝草密度ρtよりも大と判定でき(S205,S206)、QmaxはQmaxプラスαに置換できる(S207)。なお、S207で理論芝草密度ρtよりも実際の芝草密度ρrの方が大きいと判定されるとき、刈取作業機1の走行制御部102に速度低下の指令信号を促す情報を発信する(S208)ことで、刈取専用機1の過負荷を回避できる。一方、S205で、実測重量Prが予測重量Ptより小の場合、当該刈取集草作業における芝草密度ρrは、通信された芝草密度ρtよりも小と判定でき(S208)、QmaxはQmaxマイナスβに置換できる(S212)。なお、S209で理論芝草密度ρtよりも実際の芝草密度ρrの方が小さいと判定されるとき、刈取作業機1の走行制御部102に速度上昇の指令信号を促す情報を発信する(S211)ことで、刈取専用機1の作業効率ひいては集草作業機2の作業効率向上に寄与できる。S207及びS210の処理による置換後の満杯量Qmax´に基づき満杯判定できる(S212)。すなわち、重量センサ211による重量が排出重量値Pmax=ρt×Qmax´になると満杯と判定するのである。
【0025】
したがって、芝草密度ρが、気候、刈取作業時刻、芝草植立区域によって相違しても収容部8内へ供給する芝草量を調整でき作業の効率化が図れる。
【0026】
次いで、図7に基づき、さらに集草作業の精度を向上する満杯判定手段213における判定制御構成について説明する。集草作業機2の収容部8内には、堆積検知センサ215を設ける。堆積検知センサ215は、複数の検知部215a,215b,215cを上下に配設するもので、各検知部は堆積される芝草の圧力を受けて作動し得て、徐々に増加する芝草量を検知して制御部200に出力できる構成としている。なお、最上位の検知部215cが検知するときは収容部8が満杯を検知するもので、つまりこの場合の芝草量はQmaxである。図7のフローチャートは、堆積検知センサ212及び前記重量検知センサ211に基づいて芝草密度ρtを補正する補正演算制御に関する。
【0027】
図7において、集草専用機2が走行開始し集草作業を開始すると(S301)、刈取専用機1の制御部100との通信によって、集草専用機2の制御部200は芝草密度ρt,予測重量Pt等を受信する(S302)。堆積検知センサ215による検知を行いそのセンサ値Qrを順次読込むが、最上位の検知部215cが芝草を検知するQmaxに達すると同時に重量検知センサ211のセンサ値(排出重量値)Pmaxを読み込む(S303~S305)。そして芝草密度ρを演算する。ρ=Pmax/Qmaxで算出されるが、最初の芝草密度ρ1として記憶する(S306)。一旦集草作業を中断し適宜廃棄位置に移動して芝草排出処理を行う(S307)。その後、刈取集草作業予定領域内の作業中断位置に戻り作業再開し、S303~S307を繰り返し、Qmax毎に芝草密度ρ2,ρ3…を演算し記憶する。
【0028】
そして、予定領域の集草作業が終了すると(S309)、作業停止前に、当該集草作業で得た芝草密度ρ1,ρ2…ρnの平均芝草密度ρを算出し記憶する(S310)。平均ρ=(ρ1+ρ2+…+ρn)/nで算出できるが、この単純平均に限らず荷重平均その他算出の方法は任意である。算出された平均ρは、刈取専用機1の制御部100に送信され、位置情報や刈取集草日時等各種条件と共に新たな理論芝草密度ρtとして記憶される。
【0029】
S306で算出された芝草密度ρ1,ρ2…がS302で受信した理論芝草密度ρtよりも小さい場合は、先行する刈取作業機1における作業負荷が低いと判断される。よって作業速度を適宜に上昇すべく先行する刈取作業機1の走行制御部102に対して情報発信する構成とすれば作業効率を向上できる。
【0030】
図4のS106の廃棄位置への走行において、廃棄位置への移動経路に関しては未刈取領域を避けて集草専用機2車体を移動させる必要がある。このため最短ルートを辿るのではなく、廃棄位置に移動した経路を記憶しこの移動経路を逆に辿って中断位置に復帰することで未刈取領域への進入を防止できる。
【0031】
図8は、廃棄位置における刈草排出の例を示すもので、順次排出位置をずらせることにより、同一箇所に山積み傾向となるのを回避することができる。
【0032】
図9図10は廃棄位置に回収コンテナ20を設けるものである。集草専用機2はこの収容コンテナ20に接近位置してダンプシリンダ21を伸長することで収容部8をダンプ状態とすると、芝草は回収コンテナ20内に落下し回収される。なお、集草専用機2の後面に超音波型検知センサを設け、照射信号T1,T2…の授受によって、回収コンテナ20の存否及び回収コンテナ20との距離等の情報を認識できる構成とすることにより、回収コンテナ20の幅を認識するとともに当該検出された幅に対する適正排出位置の判断に利用できる。回収コンテナ20の存在しない箇所への落下排出といった不測の事態も避けられる。
【符号の説明】
【0033】
1 刈取専用機
2 集草専用機
5 刈取手段
8 収容部
100 制御部
200 制御部
211 重量検知センサ
213 満杯判定手段
K 平均高さ
L 移動距離
Pmax 排出重量値
Pr 検出重量値
Pt 理論重量値
Q 芝草量
S 刈幅
ρt 理論芝草密度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10