(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157244
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】放射パネル及び放射式空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20231019BHJP
F24F 1/0093 20190101ALI20231019BHJP
【FI】
F24F5/00 101B
F24F1/0093
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067027
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】蔵永 真理
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】金子 智弥
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛
【テーマコード(参考)】
3L050
【Fターム(参考)】
3L050BC10
(57)【要約】
【課題】放射パネル内に配管を設けずに、温度むらを抑制しながら冷暖房を行なうための放射パネル及び放射式空調システムを提供する。
【解決手段】放射パネル20は、熱放射により室内を冷暖房する空調システムに用いられる。この放射パネル20は、内部空間に冷暖房を行なう熱媒体の流体を空調機から供給する供給管が接続される供給部27と、内部空間から流体を排出する排出管が接続される排出部28とが設けられる。更に、内部空間には、供給部27から排出部28までに続く所定の断面形状の流路s1が形成されている。この流路s1は、複数の下側仕切部材25及び上側仕切部材26と、熱媒体の熱を放射するための放射面部材29とを用いて形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱放射により室内を冷暖房する放射式空調システムに用いられる放射パネルであって、
内部空間に前記冷暖房を行なう熱媒体の流体を空調機から供給する供給管が接続される供給部と、前記内部空間から前記流体を排出する排出管が接続される排出部とが設けられ、
前記内部空間には、前記供給部から前記排出部までに続く予め定めた断面形状の流路が形成されており、
前記流路は、複数の仕切部材と、前記熱媒体の熱を放射するための放射面部材とを用いて形成されていることを特徴とする放射パネル。
【請求項2】
前記予め定めた断面形状は、前記流路の断面のアスペクト比を、1:4以下とした長方形状であることを特徴とする請求項1に記載の放射パネル。
【請求項3】
放射パネルの熱放射により、室内を冷暖房する放射式空調システムであって、
前記放射パネルには、この放射パネルの内部空間に前記冷暖房を行なう熱媒体の流体を空調機から供給する供給管が接続される供給部と、前記内部空間から前記流体を排出する排出管が接続される排出部とが設けられ、
前記内部空間には、前記供給部から前記排出部まで続く予め定めた断面形状の流路が形成されており、
前記流路は、複数の仕切部材と、前記熱媒体の熱を放射するための放射面部材とを用いて形成されていることを特徴とする放射式空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱放射により室内を冷暖房する放射パネル及びそれを用いた放射式空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内を適温にするために、放射パネルを用いた冷暖房を行なうことがある(例えば、特許文献1,2参照。)。特許文献1に記載の電磁遮蔽室の天井、側壁及び床等は、温度制御層を挟んだ二重壁構造で構成される。そして、温度制御層内に空調空気を通して、電磁遮蔽室内の空間に直接接触する内壁の裏側を温度制御して、間接的に電磁遮蔽室内の放射暖冷房を行なう。また、特許文献2に記載された天井放射パネルは、金属製の板状の放射部と、略正方形の放射パネル本体と、放射部の上面に設けられ、内部に空調媒体が流通可能な空調配管とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-87982号公報
【特許文献2】特開2020-85314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された放射パネルを用いた冷暖房では、冷風や温風を温度制御層に吹付けて供給する。従って、放射パネルの全面に、冷風や温風が均一に行き渡り難いため、温度むらが生じやすい。また、特許文献2に示す技術では、放射パネル内に空調配管を設ける配管作業が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する放射パネルは、熱放射により室内を冷暖房する放射式空調システムに用いられる放射パネルであって、内部空間に前記冷暖房を行なう熱媒体の流体を空調機から供給する供給管が接続される供給部と、前記内部空間から前記流体を排出する排出管が接続される排出部とが設けられ、前記内部空間には、前記供給部から前記排出部までに続く予め定めた断面形状の流路が形成されており、前記流路は、複数の仕切部材と、前記熱媒体の熱を放射するための放射面部材とを用いて形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、放射パネル内に配管を設けずに、温度むらを抑制しながら冷暖房を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における放射式空調システムを備えた構造物を説明する説明図である。
【
図2】実施形態における放射式空調システムに用いる放射パネルの構成を説明する概略縦断面図である。
【
図3】
図2における3-3線方向の概略断面図である。
【
図4】第1変更例における放射パネルの構成を説明する概略縦断面図である。
【
図5】第1変更例における放射パネルの流路形成部材の構成を説明する斜視図である。
【
図6】第2変更例における放射パネルの構成を説明する斜視図である。
【
図7】第2変更例における放射パネルの第1層を説明する平面図である。
【
図8】第2変更例における放射パネルの第1層を説明する平面図である。
【
図9】第2変更例における放射パネルの第2層を説明する平面図である。
【
図10】第2変更例における放射パネルの第3層を説明する平面図である。
【
図11】第2変更例における放射パネルの第4層を説明する平面図である。
【
図12】第3変更例における放射パネルの構成を説明する概略縦断面である。
【
図13】第4変更例における放射パネルの構成を説明する概略縦断面である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図3を用いて、放射式空調システム及び放射パネルを具体化した一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態の構造物10の斜視図、
図2は、構造物10に用いたられる放射パネル20の縦断面の概略図、
図3は、
図2における3-3線方向から見た平面断面図である。
【0009】
図1に示すように、本実施形態の構造物10は、居室11と機械室12とを備える。居室11は、例えば、オフィスの執務室や自宅の居間等であって、室内が冷暖房される空間である。居室11には、温度センサ(図示せず)が取り付けられている。機械室12は、居室11の室内を冷暖房する空調機15が配置される空間である。
【0010】
本実施形態の空調システムAC1は、放射パネル20、空調機15、供給管17及び排出管18を備える。
放射パネル20は、居室11の室内を構成する板状部材である。この放射パネル20は、居室11と機械室12との間に配置され、居室11と機械室12とを区画する壁部材である。放射パネル20は、居室11と機械室12とが接続される領域の長さL1で高さH1の板状の直方体形状を有して構成される。この放射パネル20の詳細については、後述する。
【0011】
空調機15には、熱放射を行なわせるための熱媒体を放射パネル20に供給して、居室11の冷暖房を行なう。本実施形態における熱媒体として、暖房の場合には暖気(暖かい空気)、冷房の場合には冷気(冷たい空気)を用いる。空調機15は、居室11の温度計の温度(計測値)を取得し、熱媒体の供給や停止を制御する制御部を備える。
【0012】
空調機15は、供給管17及び排出管18が接続されている。供給管17及び排出管18は、放射パネル20に接続される。供給管17は、熱媒体を放射パネル20に供給し、排出管18は、熱媒体を放射パネル20から排出して空調機15に戻す。
【0013】
図2は、放射パネル20を縦に切断して機械室12側から見た概略断面図である。この
図2において、放射パネル20は、居室11側が開口した直方体形状の筐体21と、この筐体21の開口側を面状に覆う放射面部材29とを備える。筐体21は、石膏ボード等の通常、壁を構成する部材で構成される。放射面部材29は、例えば、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料で構成される。
【0014】
更に、
図2の筐体21の機械室12側に位置する面状部23には、両側端の最下部に、供給部27及び排出部28が設けられている。供給部27は、供給管17が接続する部分であり、排出部28は、排出管18が接続する部分である。
【0015】
放射パネル20の筐体21内(放射パネル20の内部空間)には、供給部27から排出部28に向かって、分岐なく1本で続く流路s1が形成されている。
具体的には、筐体21内には、下側仕切部材25及び上側仕切部材26が交互に、一方の側部から他方の側部に配置される。各仕切部材(25,26)は、筐体21と同様な材料で構成される。下側仕切部材25は、筐体21の底面及び面状部23に固着され、上側仕切部材26は、筐体21の上面及び面状部23に固着される。下側仕切部材25及び上側仕切部材26は、それぞれ、筐体21の上面及び下面と、所定の距離を離して設けられる。ここでの所定の距離は、流路s1の横の長さd1と同じ大きさである。そして、筐体21内の流路s1は、面状部23、下側仕切部材25、上側仕切部材26及び放射面部材29によって、複数の直線流路を上端部及び下端部で繋げた形状で形成される。また、流路s1を流れる熱媒体が、放射面部材29と各仕切部材(25,26)との隙間から漏れないように、各仕切部材(25,26)を放射面部材29に固着したり、隙間にシール部材を設けたりしてもよい。
【0016】
図2における放射パネル20は、図の簡略化のために、2個の下側仕切部材25、1個の上側仕切部材26により、流路s1は3回折り返した形状である。放射パネル20の横の長さL1は、数m~十数m、高さH1は数mであるため、後述する流路s1のアスペクト比を満たす数で、下側仕切部材25及び上側仕切部材26を、筐体21内に配置する。
【0017】
図3に示すように、放射パネル20の筐体21内に区画される流路s1は、幅W1及び横の長さd1の長方形状の断面形状を有する。流路s1の幅W1は、筐体21の面状部23及び放射面部材29との厚みを、放射パネル20の厚みから減算した大きさを有する。なお、放射パネル20の厚みとしては、例えば、数cm程度である。
【0018】
更に、流路s1の直線部の断面の縦の長さと横の長さとの比率(アスペクト比)が、「1:4以下」となるように形成される。流路s1は、幅W1を「1」としたときに、1以上から4以下となる長さd1であって、筐体21の内部を均等に分割できる大きさの長方形状の断面を有して構成される。ここで、長方形状には正方形状も含まれる。本実施形態では、この長さd1は、「1:4以下」のアスペクト比で、かつほぼ均等に分割でき、直線部の数が少なくなるように(供給部27から排出部28までの流路s1の全長が短くなるように)設定する。
【0019】
(冷暖房方法)
次に、上述した空調システムAC1を用いた冷暖房方法について説明する。ここでは、冷気を流す冷房について説明する。なお、暖房の場合には、冷気の代わりに暖気を流すだけであり、他は同じであるため、その詳細な説明は省略する。
【0020】
まず、例えば居室11に居る操作者によって、空調システムAC1の稼働開始が指示される。この場合、空調機15の制御部は、稼働開始とともに目標温度を取得する。更に、この制御部は、居室11の温度センサを介して、室内の現在の温度を取得する。
【0021】
そして、空調機15の制御部は、現在の温度が目標温度より高いと判定した場合、供給管17を介して、放射パネル20に冷気の供給を開始する。
この場合、空調機15から供給管17を介して供給された冷気は、供給部27に供給される。そして、
図2の矢印に示すように、冷気は、供給部27から排出部28まで流路s1を流れる。この場合、冷気が、放射面部材29を介して、居室11からの熱放射を吸収するので、居室11を冷却する。
【0022】
また、現在の温度が目標温度となった場合には、空調機15の制御部は、冷気の供給を停止する。以上の処理を、空調システムAC1の稼働の停止が指示されるまで繰り返して実行する。
【0023】
(作用)
本実施形態では、居室11と機械室12との間に放射パネル20を配置する。放射パネル20は、筐体21の面状部23、仕切部材(25,26)及び放射面部材29により、流路s1が形成される。これにより、空調機15から供給部27に供給された冷気や暖気が、流路s1に沿って放射パネル20の内部全域を流れながら、放射面部材29を介して熱放射を行なう。
【0024】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態の放射パネル20は、折り畳まれた流路s1が内部に形成されている。これにより、冷気や暖気が流路s1に沿って流れるため、流路s1を構成する放射面部材29の全域を、満遍なく流れる。従って、放射面部材29の全面で熱放射を行なうので、温度むらを少なくして冷暖房を行なうことができる。また、放射パネル20内には配管を設ける必要がないため、配管作業を不要とすることができる。
【0025】
(2)本実施形態では、圧力損失が過大になることを避け、スムーズに冷気や暖気を流せるよう、アスペクト比を「4」より大きくしないように計画する。すなわち、本実施形態では、放射パネル20の流路s1は、幅W1及び横の長さd1のアスペクト比が「1:4以下」となる断面で形成する。これにより、スムーズに冷気や暖気を流すことができる。
【0026】
(3)本実施形態では、空調機15は、冷気、暖気を供給及び排気する供給管17及び排出管18に接続する供給部27及び排出部28を、放射パネル20の最下部に設けた。これにより、空調機15を機械室12内で安定して設置することができる。
【0027】
(4)本実施形態の放射パネル20は、長さL1を均等割りした長さd1の流路s1を有する。更に、下側仕切部材25及び上側仕切部材26は、筐体21の上面及び下面と長さd1と同じ距離分、離して設けられている。従って、流路s1において同じ断面部分を増やすことにより、冷気や暖気をよりスムーズに流すことができる。
【0028】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の放射パネル20は、石膏等で、下側仕切部材25及び上側仕切部材26を固着した筐体21を構成し、放射面部材29を、熱伝達率の高い材料で構成した。放射パネル20の材質や構成は、これに限定されない。例えば、モルタルを3次元(3D)プリンタで積層して流路s2を構成し、これに1対(2つ)の面部材を一体化した放射パネル30としてもよい。
【0029】
例えば、
図4に示す放射パネル30は、流路形成部材31と、1対の放射面部材39とを備える。1対の放射面部材39は、熱伝導率が高い材料で構成され、流路形成部材31の側面を挟むように流路形成部材31と一体化される。放射パネル30の一方の放射面部材39には、供給管17及び排出管18が、それぞれ接続される供給部37及び排出部38が設けられている。
【0030】
図5は、
図4の放射パネル30の流路形成部材31を示している。
図5に示すように、流路形成部材31は、内部に流路s2を形成するために、複数の下側仕切部材35及び上側仕切部材36を交互に配置するように形成される。この流路s2は、上記実施形態と同様に、供給部37及び排出部38に一方向に向かう通路であって、横の長さd2を有する。この長さd2は、上記実施形態と同様に、流路s2の幅に対して、縦横の長さの比率(アスペクト比)が、「1:4以下」で設定される。
【0031】
そして、
図5に示すように、この流路形成部材31は、特開2020-26099号公報等に記載された3Dプリンタを用いて形成される。この3Dプリンタにおいては、ノズルを移動させながらノズルから吐出されるモルタルを一筆書きで積層させて、流路形成部材31を構成する。この場合、流路形成部材31の下側仕切部材35及び上側仕切部材36は、ノズルから吐出されるモルタルによって構成される経路部を2つ当接させて構成する。この場合、流路形成部材31の外枠や仕切部材(35,36)の流路s2側の角部は、円弧で形成されるので、角部における圧力損失を抑制することができる。従って、流路s2を通過する冷気や暖気を、円滑に流すことができる。
【0032】
更に、放射パネル全体を、上述した3Dプリンタを用いて形成してもよい。
例えば、
図6に示す放射パネル40を、3Dプリンタを用いて形成する。放射パネル40は、上下が開口した4つの壁部41,42,43,44を有する。
【0033】
この
図6の斜視図では、放射パネル40は、手前の壁部42を省略して、放射パネル40の空間に突出して形成された仕切部45,46の形状を示している。放射パネル40の各壁部41~44は、外側部41a,42a,43a,44aと内側部41b,42b,43b,44bが一体化されて形成されている。そして、放射パネル40には、垂直面において、矢印R3で示すように流体が流れる経路が形成される。
【0034】
具体的には、下端部の領域A1においては、垂直方向(縦方向)に延在する離間した2つの仕切部45を有した部分が形成される。
本実施形態では、
図7に示すモルタル部L11を積層することによって、領域A1の部分が構成される。このモルタル部L11においては、壁部43の内側部43bの形成途中で、壁部44側に突出させることにより、仕切部45が形成されている。
【0035】
更に、ここで、
図8に示すように、仕切部45を、壁部43に対向する壁部44の内側部44bの形成途中で、壁部43側に突出されることにより形成するモルタル部L12と、モルタル部L11とを交互に積層してもよい。
【0036】
そして、
図6の領域A2は、
図9に示すモルタル部L2によって構成される。このモルタル部L2は、壁部43の内側部43bに続くように、2つの仕切部45と、これらの間に設けられる仕切部46とを形成している。
【0037】
図9に示すように、この領域A2における仕切部46は、その先端部46aが、積層数が多くなるに従って、壁部43から、対向する壁部44に向かって徐々に長く突出する。
そして、最終的には、
図10に示すモルタル部L3のように、仕切部46が壁部44に当接する。これにより、徐々に突出した部分が直上部を支持するので、吐出時の柔らかいモルタルによる仕切部46の先端部46aが自重で降下することを抑制することができる。
【0038】
図6に示す領域A2の直上の領域A3においては、モルタル部L3で構成される。このモルタル部L3は、壁部43の内側部43bに続くように仕切部45,46を形成している。この領域A3においても、領域A1と同様に、壁部43に対向する壁部44の形成途中で、壁部43側に突出することにより仕切部45,46を形成したモルタル部と、モルタル部L3とを交互に積層してもよい。
【0039】
更に、
図6の領域A4においては、壁部43の内側部43bには、仕切部45は形成せずに、仕切部46のみが形成される。
この場合、
図11に示すモルタル部L4で構成される。この領域A4においても、領域A1,A3と同様に、壁部43に対向する壁部44の形成途中で、壁部43側に突出することにより仕切部46を形成したモルタル部と、モルタル部L4とを交互に積層してもよい。
【0040】
以上のようにして、放射パネル40が形成された後、放射パネル40の下端部に供給部及び排出部を形成する。そして、供給部から排出部まで、矢印R3に従って、冷風や温風を流すことにより、放射パネル40の壁部43を介した熱放射を用いて、室内等の温度を調整する。この場合、放射面部材として機能する壁部43(44)はモルタルで構成されるが、実際の実験結果から、冷却が十分に行なえることが判明している。
【0041】
・上記実施形態の放射パネル20や
図4~
図6における放射パネル30,40において形成される流路s1,s2は、上下方向に直線状に延在する複数の流路を上端部及び下端部で繋げた折り畳まれた流路として構成した。流路の形状は、これに限られない。例えば、横方向に直線状に延在する複数の流路を右端部及び左端部で繋げた折り畳まれた流路として構成してもよいし、これらを直線形状の流路を端部で繋げて90度で折り曲げた流路としてもよい。
【0042】
例えば、
図12に示す放射パネル60は、開口した直方体形状の筐体61と、これに形成された供給部67及び排出部68とを有する。放射パネル60は、筐体21の右側面に固定された第1仕切部材65と、下側仕切部材66aと、この下側仕切部材66aに右端部が固定された複数の第2仕切部材66bとを備える。第1仕切部材65と第2仕切部材66bとは上下方向に交互に配置される。これにより、放射パネル60内には、供給部67から排出部68に続く流路s6が形成される。この流路s6は、水平方向に延在する直線部が端部で接続し、上端部の直線部の右側端府が上下方向に延在する直線部と接続して構成される。従って、供給部67から供給された冷風や温風は、放射パネル60の最下部から、横方向にジグザグに流れて最上部まで到着した後、更に右端部の部分を介して排出部68から排出される。
【0043】
更に、
図13に示す放射パネル70は、開口した直方体形状の筐体71と、これに形成された供給部77及び排出部78とを有する。放射パネル70は、第1仕切部材及び第2仕切部材を備える。第1仕切部材は、端部で固定されて略螺旋形状に配置される仕切部75a,75b,75c,75d,75e,75f,75gを備える。第2仕切部材は、第1仕切部材の内側において、端部で固定されて略螺旋形状に配置される仕切部76a,76b,76c,76d,76eを備える。これにより、放射パネル70内には、供給部77から排出部78に続く略螺旋形状の流路s7が形成される。
【0044】
・上記実施形態の放射パネル20、上記変更例における放射パネル30,60においては、供給部27,37,67及び排出部28,38,68を、両側端の最下部に、それぞれ配置した。放射パネル20に供給する冷気や暖気を供給する供給部や排出部の位置はこれらに限定されない。例えば、供給部及び排出部を放射パネルの上端部に設けてもよいし、供給部及び排出部の一方を上端部、下方を下端部に設けてもよい。
また、上記実施形態及び変更例における流路s1,s2,s6,s7は、供給部から排出部までほぼ同じ大きさの長方形状の断面を有する。放射パネルの内部空間に形成される流路は、放射パネルと仕切部材とを用いて形成できる流路であれば、他の断面形状、例えば、円形状であってもよい。また、供給部から排出部まで、ほぼ同じ大きさの形状の断面とすることにより、圧力損失を少なくすることができる。
更に、
図13に示すように、供給部及び排出部を右側の最下部に並んで設けてもよい。
【0045】
・上記実施形態の放射パネル20は、居室11に面した壁部材として設置した。放射パネルは、室内を冷暖房する面部材であれば、壁部材に限定されない。例えば、床部材や天井部材として用いてもよい。
【0046】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記放射パネルは、ノズルを移動させながら前記ノズルから吐出される造形材で形成される層を積み上げることにより積層させて形成される流路形成部材を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の放射パネル。
【0047】
(b)前記放射パネルは、前記室内と、前記空調機が配置された機械室とを仕切る壁であることを特徴とする請求項3に記載の放射式空調システム。
【符号の説明】
【0048】
A1,A2,A3,A4…領域、d1,d2,L1…長さ、H1…高さ、L11,L12,L3,L4…モルタル部、s1,s2,s6,s7…流路、W1…幅、AC1…空調システム、10…構造物、11…居室、12…機械室、15…空調機、17…供給管、18…排出管、20,30,40,60,70…放射パネル、21…筐体、23…面状部、25,35,66a…下側仕切部材、26,36…上側仕切部材、27,37,67,77…供給部、28,38,68,78…排出部、29,39…放射面部材、31…流路形成部材、41,42,43,44…壁部、41a,42a,43a,44a…外側部、41b,42b,43b,44b…内側部、45,46,75a,75b,75c,75d,75e,75f,75g,76a,76b,76c,76d,76e…仕切部、46a…先端部、65,75…第1仕切部材、66b,76…第2仕切部材。