(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157270
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】滅菌装置
(51)【国際特許分類】
A61L 2/24 20060101AFI20231019BHJP
A61L 2/20 20060101ALI20231019BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20231019BHJP
B01J 3/02 20060101ALI20231019BHJP
A61L 101/10 20060101ALN20231019BHJP
A61L 101/22 20060101ALN20231019BHJP
【FI】
A61L2/24
A61L2/20 100
A61L2/20 106
B01J3/00 M
B01J3/02 L
A61L101:10
A61L101:22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067068
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福住 昌宏
【テーマコード(参考)】
4C058
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB07
4C058DD02
4C058DD04
4C058DD06
4C058DD13
4C058JJ14
4C058JJ16
4C058JJ28
(57)【要約】
【課題】滅菌ガスの結露を抑制すること。
【解決手段】滅菌装置100は、滅菌対象が配置される内部空間を有するチャンバ11と、内部空間から気体を排出する真空ポンプ41を有し、内部空間を減圧する減圧ユニット40と、減圧ユニット40により減圧された内部空間を復圧する復圧ユニット50と、滅菌対象の滅菌処理において内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニット20,30と、滅菌処理の前の滅菌対象の予熱処理において、滅菌対象が配置された内部空間が減圧された後に復圧されるように、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する制御装置61と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌対象が配置される内部空間を有するチャンバと、
前記内部空間から気体を排出する真空ポンプを有し、前記内部空間を減圧する減圧ユニットと、
前記減圧ユニットにより減圧された前記内部空間を復圧する復圧ユニットと、
前記滅菌対象の滅菌処理において前記内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットと、
前記滅菌処理の前の前記滅菌対象の予熱処理において、前記滅菌対象が配置された前記内部空間が減圧された後に復圧されるように、前記減圧ユニット及び前記復圧ユニットを制御する制御装置と、を備える、
滅菌装置。
【請求項2】
前記復圧ユニットは、前記チャンバの外部空間の空気を前記内部空間に導入して、前記内部空間を復圧する、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記復圧において前記内部空間が前記滅菌対象の耐熱温度以下になるように、前記内部空間の圧力を調整する、
請求項2に記載の滅菌装置。
【請求項4】
前記復圧ユニットは、前記外部空間から前記内部空間に導入される空気が流れる導入ラインと、前記導入ラインにおける前記空気の流量を調整するバルブと、を有し、
前記制御装置は、前記バルブを制御して、前記内部空間の圧力を調整する、
請求項3に記載の滅菌装置。
【請求項5】
前記内部空間の温度を検出する温度センサを備え、
前記制御装置は、前記温度センサの検出データに基づいて、前記バルブを制御する、
請求項4に記載の滅菌装置。
【請求項6】
前記制御装置は、減圧と復圧とが複数回繰り返されるように、前記減圧ユニット及び前記復圧ユニットを制御する、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記内部空間が復圧された後に前記予熱処理を終了し、前記滅菌処理の開始において、減圧された前記内部空間に前記滅菌ガスが供給されるように前記滅菌ガス供給ユニットを制御する、
請求項6に記載の滅菌装置。
【請求項8】
前記内部空間の温度を調整する加温ユニットを備え、
前記予熱処理において、前記制御装置は、前記加温ユニットにより前記内部空間を加温する、
請求項1に記載の滅菌装置。
【請求項9】
前記予熱処理において、前記制御装置は、前記内部空間が設定温度に維持されるように前記加温ユニットを制御した状態で、前記減圧ユニット及び前記復圧ユニットを制御する、
請求項8に記載の滅菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、滅菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
滅菌装置に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような滅菌装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
滅菌ガスで滅菌対象を滅菌する場合、滅菌ガスが結露すると滅菌対象が適正に滅菌されない可能性がある。
【0005】
本明細書で開示する技術は、滅菌ガスの結露を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、滅菌装置を開示する。滅菌装置は、滅菌対象が配置される内部空間を有するチャンバと、内部空間から気体を排出する真空ポンプを有し、内部空間を減圧する減圧ユニットと、減圧ユニットにより減圧された内部空間を復圧する復圧ユニットと、滅菌対象の滅菌処理において内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットと、滅菌処理の前の滅菌対象の予熱処理において、滅菌対象が配置された内部空間が減圧された後に復圧されるように、減圧ユニット及び復圧ユニットを制御する制御装置と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、滅菌ガスの結露が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る滅菌装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る滅菌装置の動作を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る予熱処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る予熱処理における滅菌対象の温度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
[滅菌装置]
図1は、実施形態に係る滅菌装置100を模式的に示す図である。滅菌装置100は、滅菌ガスで滅菌対象を滅菌する。実施形態において、滅菌ガスは、過酸化水素ガス(H
2O
2)及びオゾンガス(O
3)を含む。
【0011】
滅菌対象として、医療器具が例示される。医療器具として、鉗子、攝子、又は剪刃のような鋼製品、及びチューブのような樹脂製品が例示される。
【0012】
滅菌装置100は、チャンバユニット10と、過酸化水素供給ユニット20と、オゾン供給ユニット30と、減圧ユニット40と、復圧ユニット50と、制御ユニット60とを備える。
【0013】
チャンバユニット10は、ドア12を含むチャンバ11と、加温ユニット13と、圧力センサ14と、温度センサ15とを有する。
【0014】
チャンバ11は、滅菌対象が配置される内部空間を有する。ドア12は、チャンバ11に設けられた開口を開閉する。滅菌対象は、チャンバ11の開口を介してチャンバ11の内部空間に搬入される。ドア12が閉じられることにより、チャンバ11の内部空間が密閉される。
【0015】
加温ユニット13は、チャンバ11に接続される。加温ユニット13は、チャンバ11の内部空間の温度を調整する。
【0016】
圧力センサ14は、チャンバ11に接続される。圧力センサ14は、チャンバ11の内部空間の圧力を検出する。
【0017】
温度センサ15は、チャンバ11に接続される。温度センサ15は、チャンバ11の内部空間の温度を検出する。
【0018】
過酸化水素供給ユニット20は、滅菌対象の滅菌処理において、チャンバ11の内部空間に滅菌ガスとして過酸化水素ガスを供給する。過酸化水素供給ユニット20は、滅菌対象の滅菌処理においてチャンバ11の内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットとして機能する。過酸化水素供給ユニット20は、ボトル21と、抽出ライン22と、チューブポンプ23と、貯蔵部24と、蒸発器26と、ヒータ29とを有する。
【0019】
ボトル21は、過酸化水素の水溶液を収容する。
【0020】
抽出ライン22は、ボトル21と貯蔵部24とを接続する。ボトル21から抽出された過酸化水素の水溶液は、抽出ライン22を介して貯蔵部24に供給される。
【0021】
チューブポンプ23は、抽出ライン22に配置される。チューブポンプ23は、過酸化水素の水溶液がボトル21から貯蔵部24に供給されるように作動する。
【0022】
貯蔵部24は、ボトル21から抽出された規定量の過酸化水素の水溶液を一旦貯蔵する。実施形態においては、貯蔵部24の周囲の空気(大気)がフィルタ25を介して貯蔵部24に導入される。貯蔵部24の圧力は、大気圧である。フィルタ25として、HEPAフィルタが例示される。
【0023】
蒸発器26は、供給ライン27を介して貯蔵部24に接続される。蒸発器26は、貯蔵部24から供給された過酸化水素の水溶液を蒸発させて、過酸化水素ガスを生成する。
【0024】
供給ライン27にバルブ70が配置される。バルブ70として、電磁弁が例示される。バルブ70が開くことにより、貯蔵部24の過酸化水素の水溶液は、減圧された蒸発器26に吸い込まれる。上述のように、貯蔵部24の周囲の空気(大気)がフィルタ25を介して貯蔵部24に導入される。バルブ70が開くことにより、蒸発器26には、過酸化水素の水溶液とともに空気(大気)も吸い込まれる。
【0025】
蒸発器26は、注入ライン28a及び注入ライン28bを介してチャンバ11に接続される。注入ライン28aにバルブ71が配置され、注入ライン28bにバルブ72が配置される。バルブ71及びバルブ72として、電磁弁が例示される。蒸発器26において過酸化水素ガスが生成され、蒸発器26の圧力が高くなった状態で、バルブ71又はバルブ72が開くことにより、過酸化水素ガスがチャンバ11の内部空間に供給される。蒸発器26に圧力センサ39が接続される。圧力センサ39の検出データに基づいて、規定量の過酸化水素ガスがチャンバ11に供給されたか否かが判定される。
【0026】
ヒータ29は、蒸発器26の温度を調整する。ヒータ29は、蒸発器26を所定温度に維持する。
【0027】
オゾン供給ユニット30は、滅菌対象の滅菌処理において、チャンバ11の内部空間に滅菌ガスとしてオゾンガスを供給する。オゾン供給ユニット30は、滅菌対象の滅菌処理においてチャンバ11の内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットとして機能する。オゾン供給ユニット30は、酸素発生装置31と、オゾン発生装置32と、オゾン濃度センサ33と、バッファタンク34と、圧力センサ35とを有する。
【0028】
酸素発生装置31は、オゾンの原料となる酸素(O2)を生成する。酸素発生装置31の方式として、空気中の窒素をゼオライト等の吸着剤に吸着させて高濃度の酸素を生成するPSA(Pressure Swing Adsorption)方式が例示される。酸素発生装置31とオゾン発生装置32とを接続する接続ラインにバルブ73が配置される。バルブ73として、電磁弁が例示される。バルブ73の開閉により、オゾン発生装置32に供給される酸素の量が調整される。
【0029】
オゾン発生装置32は、酸素発生装置31が生成した酸素からオゾンガスを生成する。オゾン発生装置32の方式として、高周波の高電圧を酸素に印加して放電・分解させることでオゾンを生成する無声放電方式が例示される。実施形態において、オゾン供給ユニット30は、2つのオゾン発生装置32を有する。オゾン発生装置32は、供給ライン36を介してバッファタンク34に接続される。
【0030】
オゾン濃度センサ33は、供給ライン36に配置される。オゾン濃度センサ33は、オゾン発生装置32で生成されたオゾンガスの濃度を検出する。
【0031】
オゾン濃度センサ33とバッファタンク34との間の供給ライン36にバルブ74が配置される。バルブ74として、電磁弁が例示される。オゾン濃度センサ33とバルブ74との間の供給ライン36は、バルブ75を含む配管系Xを介して減圧ユニット40と接続される。バルブ75として、電磁弁が例示される。バルブ74が閉じてバルブ75が開くと、オゾン発生装置32からのオゾンガスは、減圧ユニット40に供給される。
【0032】
バッファタンク34は、オゾン発生装置32で生成されたオゾンガスを一旦貯蔵する。バッファタンク34は、供給ライン37を介して蒸発器26に接続される。供給ライン37にバルブ76が配置される。バルブ76として、電磁弁が例示される。バルブ76が閉じた状態でバッファタンク34にオゾンガスが供給されると、バッファタンク34の圧力が高くなる。
【0033】
圧力センサ35は、バッファタンク34に接続される。圧力センサ35は、バッファタンク34の圧力を検出する。圧力センサ35の検出データに基づいて、バッファタンク34に既定の圧力までオゾンが供給されているか否かが判定されたり、オゾン漏れ又は詰まりが発生しているか否かが判定されたりする。
【0034】
バッファタンク34から供給されたオゾンガスは、蒸発器26を介してチャンバ11に供給される。
【0035】
減圧ユニット40は、チャンバ11の内部空間から気体を排出する。また、減圧ユニット40は、チャンバ11の内部空間から気体を排出することにより、チャンバ11の内部空間を減圧する。減圧ユニット40は、真空ポンプ41と、第1触媒槽42と、第2触媒槽43と、第1ヒータ44と、第2ヒータ45とを有する。
【0036】
真空ポンプ41は、排気ライン38を介してチャンバ11に接続される。真空ポンプ41は、チャンバ11の内部空間から気体が排出されるように作動する。排気ライン38にバルブ77が配置される。チャンバ11の内部空間を減圧する場合、チャンバ11の内部空間の圧力が既定値に到達したときに、バルブ77が閉じられ、真空ポンプ41が停止する。
【0037】
第1触媒槽42は、真空ポンプ41の上流側に配置される。第2触媒槽43は、真空ポンプ41の下流側に配置される。触媒は、例えば二酸化マンガンを主成分として、過酸化水素とオゾンとを分解する。
【0038】
第1ヒータ44は、第1触媒槽42を保温する。第2ヒータ45は、第2触媒槽43を保温する。
【0039】
復圧ユニット50は、減圧ユニット40により減圧されたチャンバ11の内部空間を復圧する。復圧ユニット50は、チャンバ11の外部空間の空気(大気)をチャンバ11の内部空間に導入して、チャンバ11の内部空間を復圧する。復圧ユニット50は、フィルタ51と、導入ライン52とを有する。
【0040】
フィルタ51は、チャンバ11の内部空間に導入される空気(大気)から異物を回収する。フィルタ51として、不織布フィルタ又はHEPAフィルタが例示される。
【0041】
導入ライン52は、チャンバ11の内部空間と外部空間とを接続する。チャンバ11の外部空間からチャンバ11の内部空間に導入される空気(大気)は、導入ライン52を流れる。チャンバ11の外部空間の空気(大気)は、フィルタ51を介してチャンバ11の内部空間に導入される。
【0042】
導入ライン52にバルブ78が配置される。バルブ78として、電磁弁が例示される。バルブ78は、導入ライン52における空気の流量を調整する。バルブ78が開くことにより、チャンバ11の外部空間の空気(大気)が導入ライン52を介してチャンバ11の内部空間に導入される。バルブ78が閉じることにより、チャンバ11の内部空間に対する空気(大気)の導入が停止される。
【0043】
制御ユニット60は、滅菌装置100の構成要素を制御する。制御ユニット60は、制御装置61と、入力装置62と有する。制御装置61は、コンピュータシステムを含む。入力装置62として、タッチパネル又はコンピュータ用キーボードが例示される。制御装置61は、例えば入力装置62を介して入力された入力データに基づいて、滅菌装置100の構成要素を制御することができる。
【0044】
[滅菌装置の動作]
図2は、実施形態に係る滅菌装置100の動作を示すフローチャートである。実施形態において、滅菌装置100は、予熱処理SAと、滅菌処理SBとを実施する。予熱処理SAは、滅菌処理SBの前に実施される。予熱処理SAは、滅菌処理SBの前に滅菌対象を予め加熱する処理である。
【0045】
予熱処理SAは、滅菌処理SBにおいて滅菌ガスの結露を抑制するために実施される。滅菌対象の温度が低い状態で滅菌処理SBが開始されると、チャンバ11の内部空間に供給された滅菌ガスが結露する可能性がある。滅菌ガスが結露すると、チャンバ11の内部空間において滅菌ガス濃度が低下し、その結果、滅菌対象が適正に滅菌されない可能性がある。予熱処理SAにおいて滅菌対象の温度が高められることにより、滅菌処理SBにおいて滅菌ガスの結露が抑制される。
【0046】
予熱処理SAにおいて、制御装置61は、滅菌対象が配置されたチャンバ11の内部空間が減圧された後に復圧されるように、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する。ドア12が閉じられることにより、滅菌対象が配置されたチャンバ11の内部空間は密閉される。密閉されたチャンバ11の内部空間が減圧された後に復圧されることにより、断熱圧縮の原理により、チャンバ11の内部空間の温度が上昇する。これにより、滅菌対象は効率良く加熱される。
【0047】
実施形態において、制御装置61は、減圧と復圧とが複数回繰り返されるように、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する。実施形態においては、減圧と復圧とが繰り返される回数を適宜、パルス回数、と称する。
【0048】
予熱処理SAにおいて、制御装置61は、加温ユニット13によりチャンバ11の内部空間を加温する。予熱処理SAにおいて、制御装置61は、チャンバ11の内部空間が設定温度に維持されるように加温ユニット13を制御した状態で、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する。設定温度は、滅菌ガスの結露が抑制される温度、且つ、滅菌対象の耐熱温度を上回らない温度に設定される。
【0049】
[予熱処理]
図3は、実施形態に係る予熱処理SAを示すフローチャートである。滅菌装置100の使用者は、チャンバ11の開口を介して滅菌対象をチャンバ11の内部空間に搬入する。チャンバ11の内部空間に滅菌対象が配置された後、使用者は、ドア12を閉じる。ドア12が閉じられることにより、チャンバ11の内部空間が密閉される。
【0050】
使用者は、入力装置62を操作して、パルス回数を制御装置61に入力する。使用者は、パルス回数を任意に定めることができる。パルス回数は、1回でもよいし複数回でもよい。制御装置61は、入力装置62を介して入力された入力データに基づいて、パルス回数を設定する。実施形態においては、パルス回数が4回に設定されることとする(ステップSA1)。
【0051】
次に、使用者は、入力装置62を操作して、加温ユニット13の設定温度を制御装置61に入力する。設定温度は、滅菌ガスの結露が抑制される温度、且つ、滅菌対象の耐熱温度を上回らない温度に設定される。制御装置61は、入力装置62を介して入力された入力データに基づいて、加温ユニット13の設定温度を設定する。実施形態においては、加温ユニット13の設定温度は55℃であることとする(ステップSA2)。
【0052】
パルス回数及び設定温度が設定された後、制御装置61は、加温ユニット13を起動する(ステップSA3)。
【0053】
加温ユニット13が起動されることにより、チャンバ11の内部空間が加温ユニット13により加温される。
【0054】
制御装置61は、チャンバ11の内部空間が設定温度に維持されるように加温ユニット13を制御した状態で、チャンバ11の内部空間が減圧されるように、減圧ユニット40を制御する(ステップSA4)。
【0055】
すなわち、制御装置61は、バルブ77を開いた状態で、真空ポンプ41を起動する。真空ポンプ41が起動することにより、チャンバ11の内部空間から気体が排出され、チャンバ11の内部空間が減圧される。実施形態において、制御装置61は、規定の減圧時間が経過するまで、真空ポンプ41の駆動を継続する。なお、制御装置61は、圧力センサ14の検出データに基づいて、チャンバ11の内部空間の圧力が規定圧力以下になったと判定するまで、真空ポンプ41の駆動を継続してもよい。
【0056】
制御装置61は、真空ポンプ41を起動した時点から減圧時間が経過したか否かを判定する(ステップSA5)。
【0057】
ステップSA5において、減圧時間が経過していないと判定した場合(ステップSA5:No)、制御装置61は、ステップSA4の処理に戻り、真空ポンプ41の駆動を継続する。
【0058】
ステップSA5において、減圧時間が経過すると判定した場合(ステップSA5:Yes)、制御装置61は、バルブ77を閉じて真空ポンプ41を停止した後、チャンバ11の内部空間が設定温度に維持されるように加温ユニット13を制御した状態で、チャンバ11の内部空間が復圧されるように、復圧ユニット50を制御する(ステップSA6)。
【0059】
すなわち、制御装置61は、チャンバ11の外部空間の空気が導入ライン52を介してチャンバ11の内部空間に導入されるように、バルブ78を開く。チャンバ11の外部空間の空気が導入ライン52を介してチャンバ11の内部空間に導入されることにより、チャンバ11の内部空間が復圧される。
【0060】
チャンバ11の内部空間が復圧され、チャンバ11の内部空間の圧力が上昇することにより、断熱圧縮の原理により、チャンバ11の内部空間の温度が上昇する。
【0061】
チャンバ11の内部空間は、大気圧まで復圧されてもよいし、大気圧よりも低い圧力まで復圧されてもよい。復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力とチャンバ11の内部空間の温度とは、1対1で対応する。復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力が高くなるほど、チャンバ11の内部空間の温度が高くなる。復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力が低いほど、チャンバ11の内部空間の温度が低くなる。制御装置61は、チャンバ11の内部空間の圧力を調整することにより、復圧におけるチャンバ11の内部空間の温度を調整することができる。
【0062】
制御装置61は、バルブ78を制御して、チャンバ11の内部空間の圧力を調整することができる。バルブ78は、導入ライン52を介してチャンバ11の外部空間からチャンバ11の内部空間に導入される空気の流量を調整することができる。制御装置61は、バルブ78を制御して、チャンバ11の内部空間に導入される空気の流量を調整することにより、チャンバ11の内部空間の圧力を調整することができる。チャンバ11の内部空間の圧力が調整されることにより、復圧におけるチャンバ11の内部空間の温度が調整される。
【0063】
実施形態において、制御装置61は、復圧においてチャンバ11の内部空間の温度が滅菌対象の耐熱温度以下になるように、チャンバ11の内部空間の圧力を調整する。滅菌対象の耐熱温度は、既知データである。
【0064】
制御装置61は、温度センサ15の検出データに基づいて、チャンバ11の内部空間の温度が滅菌対象の耐熱温度を上回るか否かを判定する(ステップSA7)。
【0065】
ステップSA7において、耐熱温度を上回っていないと判定した場合(ステップSA7:No)、制御装置61は、ステップSA6の処理に戻り、チャンバ11の外部空間からチャンバ11の内部空間への空気の導入が継続されるように、バルブ78を制御する。
【0066】
ステップSA7において、耐熱温度を上回ると判定した場合(ステップSA7:Yes)、制御装置61は、バルブ78を閉じた後、減圧と復圧とが繰り返された回数がステップSA1で設定したパルス回数に到達したか否かを判定する(ステップSA8)。
【0067】
ステップSA8において、パルス回数に到達していないと判定した場合(ステップSA8:No)、制御装置61は、減圧と復圧とが繰り返された回数がステップSA1で設定したパルス回数に到達するまで、ステップSA4からステップSA7の処理を繰り返す。
【0068】
ステップSA8において、パルス回数に到達したと判定した場合(ステップSA8:Yes)、制御装置61は、予熱処理SAを終了する。実施形態において、制御装置61は、チャンバ11の内部空間が復圧された後に予熱処理SAを終了する。
【0069】
予熱処理SAが終了した後、
図2に示したように、滅菌処理SBが開始される。滅菌処理SBの開始において、制御装置61は、減圧ユニット40によりチャンバ11の内部空間を減圧する。チャンバ11の内部空間が減圧された後、減圧されたチャンバ11の内部空間に滅菌ガスである過酸化水素ガス及びオゾンガスが供給されるように、過酸化水素供給ユニット20及びオゾン供給ユニット30を制御する。
【0070】
[効果]
以上説明したように、実施形態において、滅菌装置100は、滅菌対象が配置される内部空間を有するチャンバ11と、チャンバ11の内部空間から気体を排出する真空ポンプ41を有し、チャンバ11の内部空間を減圧する減圧ユニット40と、減圧ユニット40により減圧されたチャンバ11の内部空間を復圧する復圧ユニット50と、滅菌対象の滅菌処理SBにおいてチャンバ11の内部空間に滅菌ガスを供給する滅菌ガス供給ユニットである過酸化水素供給ユニット20及びオゾン供給ユニット30と、滅菌処理SBの前の滅菌対象の予熱処理SAにおいて、滅菌対象が配置されたチャンバ11の内部空間が減圧された後に復圧されるように、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する制御装置61と、を備える。
【0071】
実施形態によれば、チャンバ11の内部空間が減圧された後に復圧されるので、断熱圧縮の原理により、チャンバ11の内部空間の温度が上昇する。これにより、滅菌対象が加熱される。予熱処理SAにおいて滅菌対象の温度が高められることにより、滅菌処理SBにおいて滅菌ガスの結露が抑制される。滅菌ガスの結露が抑制されるので、滅菌処理SBにおいてチャンバ11の内部空間の滅菌ガス濃度の低下が抑制される。滅菌ガス濃度の低下が抑制されるので、滅菌対象は、適正に滅菌される。
【0072】
図4は、実施形態に係る予熱処理SAにおける滅菌対象の温度の一例を示す図である。
図4に示すグラフにおいて、横軸は予熱処理SAが開始されてから経過した時間を示し、縦軸は滅菌対象の温度を示す。減圧期間においては、チャンバ11の内部空間が設定温度である55℃に維持されるように加温ユニット13が制御されても、滅菌対象の温度は55℃に到達しない場合がある。加温ユニット13はチャンバ11の壁面を加熱し、滅菌対象はチャンバ11の壁面からの輻射熱により加熱されるので、減圧期間においては、滅菌対象の温度が十分に上昇しないと考えられる。
【0073】
図4に示すように、実施形態においては、チャンバ11の内部空間が減圧された後に復圧される。加温ユニット13により加温された状態で例えば実質的に真空状態になるまで減圧されたチャンバ11の内部空間が復圧されることにより、断熱圧縮の原理により、チャンバ11の内部空間の温度が上昇する。これにより、滅菌対象の温度が55℃以上に加熱される。予熱処理SAにおいて滅菌対象の温度が十分に高められることにより、滅菌処理SBにおいて滅菌ガスの結露が抑制される。
【0074】
図4に示すように、実施形態において、制御装置61は、減圧と復圧とが複数回繰り返されるように、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する。これにより、滅菌対象の狭隘部及びチャンバ11の狭隘部まで十分に加熱される。
【0075】
復圧ユニット50は、チャンバ11の外部空間の空気をチャンバ11の内部空間に導入して、チャンバ11の内部空間を復圧する。すなわち、実施形態においては、チャンバ11の内部空間を復圧するための加圧装置は設けられず、バルブ78を開くだけでチャンバ11の内部空間に大気が導入されてチャンバ11の内部空間が復圧される。加圧装置が不要であり、滅菌装置100の構造の複雑化が抑制されるので、滅菌装置100のコストが抑制される。
【0076】
制御装置61は、復圧においてチャンバ11の内部空間が滅菌対象の耐熱温度以下になるように、チャンバ11の内部空間の圧力を調整する。上述のように、復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力とチャンバ11の内部空間の温度とは、1対1で対応する。復圧においてチャンバ11の内部空間が滅菌対象の耐熱温度以下になるように、チャンバ11の内部空間の圧力が調整されることにより、熱による滅菌対象の劣化が抑制される。
【0077】
復圧ユニット50は、チャンバ11の外部空間からチャンバ11の内部空間に導入される空気が流れる導入ライン52と、導入ライン52における空気の流量を調整するバルブ78とを有する。制御装置61は、バルブ78を制御して、チャンバ11の内部空間の圧力を調整することができる。チャンバ11の内部空間に導入される空気の流量が多いほど、復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力が高くなり、その結果、チャンバ11の内部空間の温度が高くなる。チャンバ11の内部空間に導入される空気の流量が少ないほど、復圧においてチャンバ11の内部空間の圧力が低くなり、その結果、チャンバ11の内部空間の温度が低くなる。
【0078】
チャンバ11の内部空間の温度が温度センサ15により検出される。制御装置61は、温度センサ15の検出データに基づいて、復圧においてチャンバ11の内部空間が滅菌対象の耐熱温度以下になるように、バルブ78を制御することができる。
【0079】
制御装置61は、チャンバ11の内部空間が復圧された後に予熱処理SAを終了し、滅菌処理SBの開始において、減圧されたチャンバ11の内部空間に滅菌ガスが供給されるように、滅菌ガス供給ユニットである過酸化水素供給ユニット20及びオゾン供給ユニット30を制御する。滅菌ガスの結露が抑制された状態で、滅菌対象が滅菌処理される。
【0080】
予熱処理SAにおいて、制御装置61は、加温ユニット13によりチャンバ11の内部空間を加温する。これにより、復圧において、滅菌対象が効果的に加熱される。
【0081】
予熱処理SAにおいて、制御装置61は、チャンバ11の内部空間が設定温度に維持されるように加温ユニット13を制御した状態で、減圧ユニット40及び復圧ユニット50を制御する。これにより、復圧において、滅菌対象が効果的に加熱される。
【0082】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、バルブ78が開かれることによりチャンバ11の内部空間に大気が導入されてチャンバ11の内部空間が復圧されることとした。復圧ユニット50は、チャンバ11の内部空間に空気を注入する加圧装置を備えてもよい。例えば加圧装置からチャンバ11の内部空間に圧縮空気が供給されることにより、チャンバ11の内部空間が復圧されてもよい。なお、加圧装置は設けられてもよいし設けられなくてもよい。
【0083】
上述の実施形態においては、滅菌装置100が滅菌ガスとして過酸化水素ガス及びオゾンガスを用いる過酸化水素滅菌装置であることとした。滅菌装置100は、滅菌ガスとして水蒸気を使用する蒸気滅菌装置でもよいし、滅菌ガスとして酸化エチレンガス(EOG)を使用するEOG滅菌装置でもよい。蒸気滅菌装置又はEOG滅菌装置においては、滅菌ガスが結露すると、滅菌処理の後の乾燥処理において、滅菌対象の乾燥不良が発生する可能性がある。蒸気滅菌装置又はEOG滅菌装置において、滅菌対象が十分に予熱され、滅菌ガスの結露が抑制されることにより、滅菌対象の乾燥不良の発生が抑制される。
【符号の説明】
【0084】
10…チャンバユニット、11…チャンバ、12…ドア、13…加温ユニット、14…圧力センサ、15…温度センサ、20…過酸化水素供給ユニット、21…ボトル、22…抽出ライン、23…チューブポンプ、24…貯蔵部、25…フィルタ、26…蒸発器、27…供給ライン、28a…注入ライン、28b…注入ライン、29…ヒータ、30…オゾン供給ユニット、31…酸素発生装置、32…オゾン発生装置、33…オゾン濃度センサ、34…バッファタンク、35…圧力センサ、36…供給ライン、37…供給ライン、38…排気ライン、39…圧力センサ、40…減圧ユニット、41…真空ポンプ、42…第1触媒槽、43…第2触媒槽、44…第1ヒータ、45…第2ヒータ、50…復圧ユニット、51…フィルタ、52…導入ライン、60…制御ユニット、61…制御装置、62…入力装置、70…バルブ、71…バルブ、72…バルブ、73…バルブ、74…バルブ、75…バルブ、76…バルブ、77…バルブ、78…バルブ、100…滅菌装置。