(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157278
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】判定装置、選別装置、及び判定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G01N21/85 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067081
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(71)【出願人】
【識別番号】591133321
【氏名又は名称】トヨキン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】高浪 裕智
(72)【発明者】
【氏名】神ノ田 茂紀
(72)【発明者】
【氏名】本郷 明裕
(72)【発明者】
【氏名】倉島 一輝
(72)【発明者】
【氏名】西尾 祥一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB20
2G051CA04
2G051CB01
2G051EA16
2G051EB01
2G051EB02
2G051EC02
(57)【要約】
【課題】破砕片の添加金属の含有割合の判定精度が高く、かつ学習及び判定に係る処理が単純な判定装置を提供する。
【解決手段】判定装置は、カメラと、制御装置と、を備える。カメラは、金属の破砕片を撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成する。制御装置は、カメラが生成した破砕片画像に基づいて、破砕片画像に写っている破砕片の添加金属の含有割合について判定する。制御装置は、学習用の破砕片画像と、当該破砕片画像に写っている破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを有している。制御装置は、カメラが生成した破砕片画像を判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、破砕片の添加金属の含有割合について判定する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の破砕片を撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成するカメラと、
前記カメラが生成した前記破砕片画像に基づいて、前記破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、学習用の破砕片画像と、当該破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを有しており、
前記制御装置は、前記カメラが生成した前記破砕片画像を前記判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の判定装置であって、
前記破砕片の前記添加金属の含有割合に応じて複数の段階が設定されており、
前記制御装置は、前記破砕片画像に写っている前記破砕片が何れの段階に属するかを判定する判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の判定装置であって、
前記判定モデルが出力する前記出力結果は、前記破砕片画像に写っている前記破砕片が前記段階に属する確度の高さを示すスコアである判定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の判定装置であって、
前記段階には閾値が設定されており、
前記制御装置は、前記スコアが前記閾値を超えた場合に、前記段階に属すると判定する判定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の判定装置であって、
前記制御装置は、オペレータから入力された情報に基づいて、前記閾値を変更する判定装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の判定装置であって、
前記判定モデルは、少なくとも、入力層、中間層、及び出力層を含むニューラルネットワークで構築されており、
前記出力層では、活性化関数を用いた処理が行われており、
前記活性化関数への入力値が前記スコアとして用いられる判定装置。
【請求項7】
請求項4又は5に記載の判定装置であって、
前記判定モデルは、畳み込みニューラルネットワークで構築されており、少なくとも、畳み込み層、プーリング層、及び全結合層を含み、
前記全結合層の出力値が前記スコアとして用いられる判定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の判定装置と、
前記判定装置の判定結果に基づいて、前記破砕片を選別する選別部と、
を備える選別装置。
【請求項9】
金属の破砕片をカメラで撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成し、
前記カメラが生成した前記破砕片画像に基づいて、前記破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合について判定を行う判定方法において、
前記判定は、学習用の破砕片画像と、当該破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを用いて行われており、
生成された前記破砕片画像を前記判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、主として、破砕片の添加金属の含有割合について判定する判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、破砕片の再利用を目的として、破砕片の添加金属の含有割合について判定する技術が知られている。特許文献1はこの種の装置を開示する。
【0003】
特許文献1には、破砕片の表面の3次元形状を測定することで、破砕片の表面の凹凸が変化する回数に関する指標である表面微分パラメータを算出することが記載されている。特許文献1には、表面微分パラメータ、重量及び体積等をパラメータとして学習することにより、識別アルゴリズムを生成することが記載されている。そして、識別アルゴリズムを用いて、破砕片が炭素鋼由来の破砕片か特殊鋼由来の破砕片かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された方法では、3次元形状を測定して表面微分パラメータを算出する処理に加え、破砕片の重量及び体積等も算出又は測定する必要がある。そのため、識別アルゴリズムの生成及び破砕片を判定する処理が複雑になる。また、特許文献1には、破砕片を画像処理によって外観の違いによって選別する方法では、色調や形状が似通っているため、選別精度が不十分になることが記載されている。
【0006】
本出願は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、破砕片の添加金属の含有割合の判定精度が高く、かつ学習及び判定に係る処理が単純な判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本出願の観点によれば、以下の構成の判定装置が提供される。即ち、判定装置は、カメラと、制御装置と、を備える。前記カメラは、金属の破砕片を撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成する。前記制御装置は、前記カメラが生成した前記破砕片画像に基づいて、前記破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する。前記制御装置は、学習用の破砕片画像と、当該破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを有している。前記制御装置は、前記カメラが生成した前記破砕片画像を前記判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する。
【0009】
本出願の観点によれば、以下の判定方法が提供される。即ち、金属の破砕片をカメラで撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成する。前記カメラが生成した前記破砕片画像に基づいて、前記破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合について判定を行う。前記判定は、学習用の破砕片画像と、当該破砕片画像に写っている前記破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを用いて行われている。生成された前記破砕片画像を前記判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、前記破砕片の添加金属の含有割合について判定する。
【発明の効果】
【0010】
本出願によれば、破砕片の添加金属の含有割合の判定精度が高く、かつ学習及び判定に係る処理が単純な判定装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図6】判定モデルを用いて低含有グループと高含有グループの何れに属するか判定する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本出願の実施形態を説明する。
【0013】
図1に示す選別装置1は、対象物である破砕片を添加金属の含有割合に応じて選別する装置である。破砕片は、例えばリサイクル用の金属を破砕機等で処理することで得られる。選別装置1の上流側には破砕機が配置されており、選別装置1に破砕片が供給される。なお、破砕機は、選別装置1とは別の工場等に配置されていてもよい。この場合、この破砕機で生成された破砕片が運搬されて選別装置1に供給される。
【0014】
本実施形態に記載の技術内容は、添加金属の含有割合についての判定のみを行って選別を行わない装置にも適用できる。選別を行わない装置とは、例えば、破砕片を測定又は検査する装置である。
【0015】
図1に示すように、選別装置1は、搬送装置10と、カメラ12と、照明器13と、制御装置14と、選別部15と、を備える。また、選別装置1は、搬送装置10に載せられた破砕片を識別する判定装置2を含んでいる。判定装置2は、カメラ12と、照明器13と、制御装置14と、により構成されている。
【0016】
搬送装置10の上流側には、複数の破砕片を順次供給する供給源がある。搬送装置10は、その供給源から供給された破砕片を下流側へ搬送する。本実施形態の搬送装置10はベルトコンベアであるが、搬送装置10は破砕片を搬送可能であれば別の搬送装置を用いることができる。別の搬送装置は、例えばローラコンベアである。
【0017】
カメラ12は、搬送装置10の上方に配置されている。カメラ12は、搬送装置によって搬送される破砕片を撮影して、破砕片が含まれる画像を生成する。以下では、破砕片が含まれる画像を破砕片画像と称する。本実施形態のカメラは、撮影領域が矩形である。これに代えて、撮影領域が線形のラインカメラを用いてもよい。
【0018】
照明器13は、カメラ12によって撮像される破砕片に照明光を照射する。破砕片に照明光を照射することにより、カメラ12が取得する破砕片の画像を鮮明にすることができる。照明器13は、搬送装置10の上方であって、カメラ12よりも搬送方向の下流の位置に配置されている。照明器13の配置は一例であり、例えば、カメラ12よりも搬送方向の上流の位置に照明器13を配置してもよい。
【0019】
選別装置1は、添加金属の含有割合に応じて破砕片を2つの段階に選別する。以下では、添加金属の含有割合が高い方の段階のグループを高含有グループと称し、添加金属の含有割合が低い方の段階のグループを低含有グループと称する。なお、グループ分けは2段階に限られず、3段階以上にグループ分けしてもよい。例えば破砕片が鋼であって、マンガン又はクロム等の添加金属が多く含まれている場合、リサイクル用途として鋳鉄に用いることが好ましくない場合がある。例えば、マンガン又はクロムの含有量が多い鋼は、鋳造における凝固時に黒鉛が析出しにくくなったり、チルと称される脆い組織が生成されることがある。従って、添加金属の含有割合に応じて破砕片を選別することにより、リサイクル用途に適した鋼と、リサイクル用途に適していない鋼と、に分けることができる。破砕片の組成は鋼に限られず、他の合金であってもよい。他の合金は、例えば、鋼以外の鉄合金又はアルミニウム合金である。添加金属はマンガン又はクロムに限られず、例えばニッケルであってもよい。
【0020】
制御装置14は、FPGA、ASIC、又はCPU等の演算装置と、SSD又はフラッシュメモリ等の記憶装置と、を備える。演算装置は、記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して実行することで、選別装置1に関する様々な処理を実行する。制御装置14は、例えば、破砕片画像に基づいて破砕片が高含有グループに属するか低含有グループに属するかを判定する。なお、この判定の詳細は後述する。制御装置14は、更に、搬送装置10及び選別部15を制御する。
【0021】
選別部15は、搬送装置10によって搬送される破砕片を、第1搬送装置16を介して第1回収部21に送るか、第2搬送装置17を介して第2回収部22に送るかを切換可能に構成されている。第1回収部21は、主として低含有グループの破砕片を回収する容器である。第2回収部22は、主として高含有グループの破砕片を回収する容器である。選別部15は、破砕片に向けて圧縮空気を噴射することにより、破砕片を第1搬送装置16に送ることができる。選別部15が圧縮空気を噴射しない場合、破砕片は自然落下して第2搬送装置17に送られる。選別部が圧縮空気を噴射する位置及び噴射するタイミングは、制御装置14によって制御されている。
【0022】
選別部15は、高含有グループの破砕片に圧縮空気を噴射して選別してもよい。また、選別部15は圧縮空気を噴射する機械に限られない。例えば、選別部15はアームロボットであってもよい。アームロボットは、破砕片をピックアップして、破砕片が高含有グループか低含有グループかに応じて、収容先を異ならせる。
【0023】
次に、破砕片画像に基づいて、破砕片画像に写っている破砕片を高含有グループと低含有グループに分類する処理について説明する。
【0024】
制御装置14は、予め機械学習を行うことにより構築された判定モデルを有している。
図2に示すように、判定モデルは、学習用データと正解データを機械学習させることにより構築されている。本実施形態の学習用データは破砕片画像であり、正解データは破砕片が高含有グループか低含有グループの何れに属するかである。この機械学習は正解データを提示するため、教師あり学習に該当する。
【0025】
学習用データに用いる破砕片画像は、選別装置1を用いて生成した破砕片画像であることが好ましい。これにより、判定モデルの構築時と選別装置1の稼動時とで撮影条件を揃えることができるので、判定精度が高くなる。ただし、選別装置1とは異なる環境やカメラで学習用データを生成してもよい。また、ある破砕片画像を学習用データとして用いるとともに、この破砕片画像を回転させた画像を別途学習用データとして用いてもよい。これにより、簡単な処理で多くの学習用データを準備できる。
【0026】
正解データは、破砕片の添加金属の含有割合を示す指標であればよく、高含有グループ又は低含有グループに限られない。例えば、添加金属の含有割合に応じて破砕片を3グループ以上に選別する場合、正解データも3グループ以上に区分することが好ましい。また、添加金属の含有割合の推定値又は計測値を正解データとしてもよい。
【0027】
本実施形態の機械学習は深層学習であるため、破砕片画像から特徴量を抽出して入力する必要はなく、破砕片画像そのものを入力するだけでよい。この判定モデルを用いて妥当性のある結論を得るためには、破砕片画像と添加金属の含有割合に相関性があることが前提となる。そのため、以下では、破砕片画像に基づいて添加金属の含有割合について判定できることを説明する。
【0028】
添加金属は、鉄合金等の強度を向上させるために添加される。従って、添加金属の含有割合が高い破砕片は、相対的に強度が高く、破砕機によって処理された場合に変形しにくい。逆に、添加金属の含有割合が低い破砕片は、相対的に強度が低く、破砕機によって処理された場合に変形し易い。具体的には、添加金属の含有割合が低い鋼板ほど、破砕機に投入された際に丸みを帯びるように折り曲げられ易くなり、その結果、破砕片の表面に皺が現れ易くなる。
【0029】
従って、破砕片の表面のうち皺が生じている部分の割合である皺割合と、添加金属の含有割合と、の間には相関性がある。具体的には、皺割合が高いほど添加金属の含有割合が少なくなる。また、破砕片画像には皺が表れるため、破砕片画像に基づいて添加金属の含有割合について判定することは可能である。
【0030】
ただし、破砕片の大きさ及び表面形状は様々であり、更に光の当たり具合も一定ではないため、予め定めた演算を用いて皺割合を正確に判定することは困難である。この点、上述した判定モデルを用いることにより、高含有グループの破砕片の皺の程度と低含有グループの破砕片の皺の程度の傾向の違い等を柔軟に考慮できるので、高い判定精度を実現できる。
【0031】
次に、判定モデルについて更に詳細に説明する。
図3に示すように、判定モデルは、入力層と中間層と出力層とを含んでいる。また、本実施形態の判定モデルは、畳み込みニューラルネットワークで構築されている。そのため、中間層は、畳み込み層とプーリング層と全結合層を含んでいる。判定モデルは畳み込みニューラルネットワークに限られず、他のニューラルネットワークで構築されていてもよい。
【0032】
入力層には破砕片画像が入力される。畳み込み層では、フィルタを用いて画像の特定の特徴を抽出することにより、特定の特徴を抽出した画像を生成する。なお、フィルタに応じて抽出される特徴の種類が異なる。プーリング層は、特定の特徴を抽出した画像についてダウンサンプリングを行って情報を圧縮する。判定モデルは、複数組の畳み込み層及びプーリング層を含んでおり、それらの層を経ることで、様々な特徴が抽出される。
【0033】
全結合層には、各プーリング層からの出力値が入力される。全結合層は、各プーリング層からの出力に基づいて最終特徴量値を出力する。出力層には最終特徴量値が入力される。最終特徴量値は、低含有グループに属する確度を数値化した第1要素と、高含有グループに属する確度を数値化した第2要素と、を含む。
【0034】
図4には、最終特徴量値の第1要素と第2要素の度数分布が示されている。上のグラフは最終特徴量値の第1要素に関するものであり、横軸が第1要素の値であり、縦軸が度数である。下のグラフは最終特徴量値の第2要素に関するものであり、横軸が第2要素の値であり、縦軸が度数である。閾値に関しては後述する。
【0035】
出力層では活性化関数を用いた処理が行われる。活性化関数は例えばsoftmax関数である。活性化関数を用いた処理が行われることにより、最終特徴量値が最終出力値に変換される。最終出力値は、低含有グループに属する確率を示す第1要素と、高含有グループに属する確率を示す第2要素と、を含む。
【0036】
図5には、最終出力値の第1要素と第2要素の度数分布が示されている。上のグラフは最終出力値の第1要素に関するものであり、横軸が第1要素の値であり、縦軸が度数である。下のグラフは最終出力値の第2要素に関するものであり、横軸が第2要素の値であり、縦軸が度数である。
【0037】
ここで、選別装置1の稼動後において、破砕片の高含有グループと低含有グループの境界を変更したいというニーズが存在する。例えば、破砕片の種類が変更されたり、リサイクル品の納入先が変更されたり、低含有グループに分類される破砕品を増加させたい等の事情があったりした場合に、境界の変更が望まれることがある。
【0038】
本実施形態の判定モデルは、最終特徴量又は最終出力値を算出するため、これらの値に閾値を設定することにより、高含有グループと低含有グループの境界を変更できる。ただし、
図5に示すように、最終出力値は一定の区間に分布が集中しているため、閾値を変更しても実質的な境界は殆ど変更されない。これに対し、
図4に示すように、最終特徴量値は広い範囲に分布が分散しているため、閾値を変更することにより、高含有グループと低含有グループの境界を変更できる。閾値は、例えばオペレータが制御装置又は制御装置と通信可能な装置等を操作して閾値を入力すること等により変更可能である。
【0039】
そのため、本実施形態では、全結合層が出力する最終特徴量値をスコアとして取り出し、スコアに基づいて高含有グループか低含有グループの何れに属するかを判定する。第1要素と第2要素の何れをスコアとして用いてもよいが本実施形態では、第1要素をスコアとして用いる。
【0040】
次に、
図6を参照して、制御装置14が行う処理について説明する。
【0041】
制御装置14は、カメラ12が破砕片を撮影することで生成した破砕片画像を、カメラ12から取得する(S101)。次に、制御装置14は、破砕片画像を判定モデルに入力して、低含有グループに属する確度を示すスコアを取得する(S102)。上述したように、スコアは、最終特徴量値の第1要素であり、低含有グループに属する確度が高いほどスコアは大きい値を示す。
【0042】
次に、制御装置14は、スコアと閾値を比較する(S103)。制御装置14は、スコアが閾値より大きいと判定した場合(S104)、破砕片画像に写っている破砕片が低含有グループに属する破砕片と判定する(S105)。制御装置14は、スコアが閾値以下と判定した場合(S104)、破砕片画像に写っている破砕片が高含有グループに属する破砕片と判定する(S106)。
【0043】
次に、制御装置14は判定結果を記憶する(S107)。その後、制御装置14は、低含有グループと判定した破砕片が選別部15を通過するタイミングで、選別部15に圧縮空気を噴射させる。以上により、添加金属の含有割合に応じて破砕片を選別できる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態の判定装置2は、以下の特徴1を有する。即ち、判定装置2は、カメラ12と、制御装置14と、を備え、以下の判定方法を行う。カメラ12は、金属の破砕片を撮影して、破砕片が含まれる破砕片画像を生成する。制御装置14は、カメラ12が生成した破砕片画像に基づいて、破砕片画像に写っている破砕片の添加金属の含有割合について判定する。制御装置14は、学習用の破砕片画像と、破砕片画像に写っている破砕片の添加金属の含有割合を示す指標と、を機械学習することにより構築された判定モデルを有している。制御装置14は、カメラ12が生成した破砕片画像を判定モデルに入力して得られる出力結果に基づいて、破砕片の添加金属の含有割合について判定する。
【0045】
機械学習によって構築された判定モデルを用いることにより、破砕片の添加金属の含有割合と破砕片画像との間の関連性や傾向を考慮した出力結果を得ることができる。従って、判定モデルを用いない場合と比較して、高い判定精度を実現できる。また、破砕片画像を用いることにより、機械学習及び判定に係る処理を単純にすることができる。
【0046】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴2を有する。即ち、破砕片の添加金属の含有割合に応じて複数の段階が設定されている。制御装置14は、破砕片画像に写っている破砕片が何れの段階に属するかを判定する。
【0047】
これにより、添加金属の含有割合に応じて破砕片を分類できるので、例えば添加金属の含有割合に応じて破砕片に異なる処理を実施できる。
【0048】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴3を有する。即ち、判定モデルが出力する出力結果は、破砕片画像に写っている破砕片が段階に属する確度の高さを示すスコアである。
【0049】
スコアを用いることにより、破砕片がある段階に高確率で属するか低確率で属するかを区別できる。
【0050】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴4を有する。即ち、段階には閾値が設定されている。制御装置14は、スコアが閾値を超えた場合に、段階に属すると判定する。
【0051】
閾値を用いることにより、破砕片がある段階に属するか否かを簡単に判定できる。
【0052】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴5を有する。即ち、制御装置14は、オペレータから入力された情報に基づいて、閾値を変更する。
【0053】
閾値を変更することにより、例えば判定装置2の設置先の要望に応じて、各段階の判定基準を調整できる。
【0054】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴6を有する。即ち、判定モデルは、少なくとも、入力層、中間層、及び出力層を含むニューラルネットワークで構築されている。出力層では、活性化関数を用いた処理が行われている。前記活性化関数への入力値がスコアとして用いられる。
【0055】
活性化関数に入力される値は、活性化関数の出力値と比較して広い範囲に値を取るため、閾値に応じた破砕片の分類を適切に行うことができる。
【0056】
本実施形態の判定装置2は、以下の特徴7を有する。即ち、判定モデルは、畳み込みニューラルネットワークで構築されており、少なくとも、畳み込み層、プーリング層、及び全結合層を含む。全結合層の出力値がスコアとして用いられる。
【0057】
全結合層の出力値は、活性化関数の出力値と比較して広い範囲に値を取るため、閾値に応じた破砕片の分類を適切に行うことができる。
【0058】
上述した特徴1から特徴7は矛盾が生じない限り、適宜組み合わせることができる。例えば、特徴3には、特徴1,2の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴4には、特徴1から3の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴5には、特徴1から4の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴6には、特徴1から5の少なくとも1つを組み合わせることができる。特徴7には、特徴1から6の少なくとも1つを組み合わせることができる。
【0059】
以上に本出願の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0060】
上記実施形態で示した判定モデルには活性化関数を用いた処理を行う出力層が含まれているが、この出力層を省略してもよい。
【0061】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。例えば、低含有グループに属する確度ではなく、高含有グループに属する確度をスコアとして用いて処理を行ってもよい。また、低含有グループ又は高含有グループと判定する処理を省略し、スコアを記憶してもよい。
【0062】
本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するように構成又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路又は処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路又は回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、又は手段は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、又は、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであっても良いし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラム又は構成されているその他の既知のハードウェアであっても良い。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、又はユニットはハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサの構成に使用される。
【符号の説明】
【0063】
1 選別装置
2 判定装置
10 搬送装置
12 カメラ
13 照明器
14 制御装置
15 選別部