(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157283
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】遊離脂肪酸の回収方法、回収システム
(51)【国際特許分類】
C12P 7/6409 20220101AFI20231019BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20231019BHJP
C12M 1/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C12P7/6409
C12M1/00 D
C12M1/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067088
(22)【出願日】2022-04-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「カーボンリサイクル実現を加速するバイオ由来製品生産技術の開発 産業用物質生産システム実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲史
【テーマコード(参考)】
4B029
4B064
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB02
4B029CC01
4B029DG06
4B064AD87
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE11
(57)【要約】
【課題】遊離脂肪酸生産微生物が生産した遊離脂肪酸の簡便な回収方法を提供すること。
【解決手段】遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、陰イオン交換樹脂を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有する、遊離脂肪酸の回収方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、陰イオン交換樹脂を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有することを特徴とする、遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項2】
前記陰イオン交換樹脂が、弱塩基性であることを特徴とする請求項1に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項3】
前記遊離脂肪酸が、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から分離膜を通じて培養液外に移行したものであることを特徴とする請求項1または2に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項4】
前記分離膜が、中空糸状であることを特徴とする請求項3に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
【請求項5】
遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽と、
前記遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる分離膜と、
陰イオン交換樹脂を含む吸着材が充填されたカラムと、
前記カラムに前記分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ラインと、
前記カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒を通水する洗浄ラインと、
を有する遊離脂肪酸の回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が生産した遊離脂肪酸を回収する方法と、回収システムに関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料依存からの脱却を目指して、エネルギー物質の持続可能な生産技術の開発が世界中で進められている。その中で、遺伝子組み換え微生物を用いた遊離脂肪酸(FFA、Free Fatty Acid)の細胞外生産系が注目されている。細胞外生産系では、生産されたFFAが菌体外に放出され、細胞を破壊することなくFFAを取り出すことができるため、生産量を飛躍的に増加できると期待されている。そのため、これまでに大腸菌、酵母、シアノバクテリアといった様々な微生物を材料にして、FFAを細胞外へと放出する遺伝子組み換え株が作製されている(非特許文献1~3)。
【0003】
しかしながら、培養液中からFFAを回収する技術に関する研究例は少なく、効率的なプロセスは構築されていない。例えば、特許文献1には、微粒子吸着体を培養液中に添加する、または、固定床カラムに詰めて培養液を通水することによりFFAを除去する方法が提案されているが、微粒子吸着体の回収方法や培養液の移送方法に課題が残っている。別の方法として、細胞毒性を示さない有機溶媒を培地に重相しながら培養する二相培養法が報告されているが(非特許文献4)、使用されている有機溶媒の物理化学的な性質がFFAに非常に近いために、有機溶媒からFFAを抽出することが不可能である。さらに、FFA濃度が高まると、遊離脂肪酸を生産する微生物自体に悪影響を及ぼし、死滅する場合がある(非特許文献5)。
そのため、より実用的な培養液からのFFAの回収方法の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Rebecca M. Lennen., Drew J. Braden., Ryan M. West., James A.Dumesic., Brian F. Pfleger. (2010) A Process for Microbial Hydrocarbon Synthesis: Overproduction of Fatty Acids in Escherichia coli and Catalytic Conversion toAlkanes. Biotechnol Bioeng. June 1; 106(2)
【非特許文献2】Yongjin J. Zhou1., Nicolaas A. Buijs1., Zhiwei Zhu., Jiufu Qin., Verena Siewers., Jens Nielsen. (2016) Production of fatty acid-derived oleochemicals and biofuels by synthetic yeast cell factories. Nat. Commun. 7:11709
【非特許文献3】Liu, X., Sheng, J. and Curtiss, R. (2011) Fatty acid production in genetically modified cyanobacteria.Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 108: 6899-6904.
【非特許文献4】Kato, A., Takatani, N., Ikeda, K., Maeda, S., Omata, T. (2017) Removal of the product from the culture medium strongly enhances free fatty acid production by genetically engineered Synechococcus elongatus. Biotechonologyfor Biofuels Vol. 10, 141
【非特許文献5】Kato, A., Use, K., Takatani, N., Ikeda, K., Matsuura, M., Kojima, K., Aichi, M., Maeda, S., Omata, T. (2016) Modulation of the balance of fatty acid production and secretion is crucial for enhancement of growth and productivity of the engineered mutant of the cyanobacterium Synechococcus elongatus. Biotechonology for Biofuels Vol. 9, 91
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が生産した遊離脂肪酸の簡便な回収方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の課題を解決するための手段は以下の通りである。
1.遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、陰イオン交換樹脂を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有することを特徴とする、遊離脂肪酸の回収方法。
2.前記陰イオン交換樹脂が、弱塩基性であることを特徴とする1.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
3.前記遊離脂肪酸が、遊離脂肪酸生産微生物の培養液から分離膜を通じて培養液外に移行したものであることを特徴とする1.または2.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
4.前記分離膜が、中空糸状であることを特徴とする3.に記載の遊離脂肪酸の回収方法。
5.遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽と、
前記遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる分離膜と、
陰イオン交換樹脂を含む吸着材が充填されたカラムと、
前記カラムに前記分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ラインと、
前記カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒を通水する洗浄ラインと、
を有する遊離脂肪酸の回収システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明の回収方法は、遊離脂肪酸を陰イオン交換樹脂を含む吸着材に吸着させた後、特定の溶媒で洗浄するという非常に簡便な方法で、遊離脂肪酸を回収することができる。本発明の回収方法は、遊離脂肪酸が吸着材に吸着して濃縮されるため、遊離脂肪酸を効率的に回収することができる。
遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸を、培養液から分離膜を通じて培養液外に移行することにより、培養液中の遊離脂肪酸濃度が高くなることによる遊離脂肪酸生産微生物の培養への悪影響と、遊離脂肪酸生産微生物が吸着材に付着することによる悪影響とを防止することができる。
本発明の回収システムは、遊離脂肪酸を特定の吸着材に吸着させた後、特定の溶媒で洗浄するという非常に簡便な方法で、遊離脂肪酸を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の遊離脂肪酸の回収方法を実施する回収システムの一実施態様例の構成図。
【
図4】実験4における遊離脂肪酸の回収率の測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、遊離脂肪酸生産微生物が分泌した遊離脂肪酸の回収方法と、回収システムに関する。
培養する遊離脂肪酸生産微生物(以下、微生物ともいう)としては、遊離脂肪酸を生産できるものであれば特に制限されず、大腸菌、酵母、シアノバクテリア等の中から、遊離脂肪酸を生産できるように遺伝子組み換えされた株を用いることができる。これらの中で、光合成を行う微生物が、二酸化炭素から遊離脂肪酸を直接生合成できるため好ましい。微生物が生産する遊離脂肪酸も特に制限されず、例えば、C12~C18の飽和、不飽和脂肪酸等を挙げることができる。
また、微生物の培養方法も特に制限されず、培養する微生物の種類に応じて、培地の組成、温度、pH、光照射の有無、照射する光の波長、酸素濃度、二酸化炭素濃度等を調整すればよい。
【0011】
・回収方法
本発明の回収方法は、微生物が分泌した遊離脂肪酸を、陰イオン交換樹脂を含む吸着材に吸着する吸着工程、
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄し、遊離脂肪酸を脱着する脱着工程、
を有する。
【0012】
「吸着工程」
吸着材は、陰イオン交換樹脂を含む。陰イオン交換樹脂としては、陰イオン交換基としてアミノ基を有する弱塩基性のものが、培養液への影響が少ないため好ましい。吸着剤としては、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素のうち少なくとも一種の酸化物又は水酸化物、例えば、活性白土、珪藻土、ゼオライト、シリカゲル、ベントナイト、パーライト、Mg-Al系ハイドロタルサイト系吸着材、シリカ-マグネシア系吸着材、酸性白土、活性アルミナ、アルミニウムシリケート等の無機系の吸着剤を併用することもできる。
【0013】
吸着材は、遊離脂肪酸を含む水層と接触させるだけで、遊離脂肪酸を吸着する。吸着材は、微生物の培養液と直接、接触させることもできるが、吸着材の表面に微生物が付着して、吸着性能が低下する場合がある。また、微生物が表面に付着した吸着材を回収、洗浄すると、培養系における微生物の菌体量が減少してしまう。そのため、培養液から、分離膜を通じて遊離脂肪酸を培養液外に移行させて微生物と分離し、この遊離脂肪酸を吸着材と接触、吸着させることが好ましい。遊離脂肪酸を培養液外に移行することにより、培養液中の遊離脂肪酸濃度を低く保つことができ、遊離脂肪酸による微生物培養への悪影響を抑えることができる。
【0014】
分離膜としては、微生物を通さず、遊離脂肪酸を通すものであれば特に制限することなく使用することができ、透析膜、濾過膜等を用いることができる。透析膜を用いる場合、分画分子量が5kDa以上のものが好ましく、10kDa以上のものがより好ましく、25kDa以上のものがさらに好ましい。また、透析膜は、分画分子量が300kDa以下のものが好ましく、200kDa以下のものがより好ましい。濾過膜を用いる場合、孔径0.1μm以上のものが好ましく、0.3μm以上のものがより好ましい。また、濾過膜は、孔径2μm以下のものが好ましく、1μm以下のものがより好ましい。分離膜を通過できる大きさが大きくなるほど遊離脂肪酸を効率的に移行させることができるが、遊離脂肪酸以外の化合物の移行も増えてしまうため、回収した遊離脂肪酸を精製する際の手間が大きくなる場合がある。
分離膜としては、強度が強いろ過膜が好ましく、微生物が付着しにくいためフッ素系樹脂からなるろ過膜がより好ましい。また、ろ過膜は、遊離脂肪酸を培養液外へ移行させて取り出すことができるため中空糸状であることがさらに好ましい。
【0015】
「脱着工程」
遊離脂肪酸を吸着した吸着材を、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄するだけで、吸着材から遊離脂肪酸を脱着することができる。
オクタノール-水分配係数が-0.85~0.8の範囲内である溶媒としては、メタノール(-0.82、括弧内の数字はオクタノール-水分配係数である)、アセトニトリル(-0.34)、エタノール(-0.31)、アセトン(-0.24)、イソプロパノール(0.05)、酢酸エチル(0.73)、フェノール(1.46)、クロロホルム(1.97)等が挙げられる。また、オクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内であれば、混合溶媒を用いることもできる。これらの中で、メタノールが、脱着性に優れ、かつ、脱着した遊離脂肪酸をそのままメチルエステル化することができるため好ましい。
洗浄時間としては、1分以上であることが好ましく、5分以上であることがより好ましく、10分以上であることが更に好ましい。また、180分以下であることが好ましく、120分以下であることがより好ましく、60分以下であることが更に好ましい。
洗浄に使用する溶媒量は、吸着材1gに対して、3ml以上であることが好ましく、5ml以上であることがより好ましい。また、15ml以下であることが好ましく、10ml以下であることがより好ましい。
そして、吸着材から脱着して溶媒に移行した遊離脂肪酸は、減圧濃縮等の公知の方法で回収することができる。また、洗浄後の吸着材は、吸着工程に再利用することができる。
【0016】
・回収システム
図1に、本発明の遊離脂肪酸の回収システムの一実施態様例の構成図を示す。
図1に示す回収システムは、遊離脂肪酸生産微生物の培養を行う培養槽1と、微生物が分泌した遊離脂肪酸を培養液外へ移行させる中空糸状の分離膜2と、吸着材が充填されたカラム3と、カラムに分離膜を通過した遊離脂肪酸を通水する吸着ライン4と、カラムにオクタノール-水分配係数が-0.85~2.5の範囲内である溶媒を通水する洗浄ライン5と、を有する。この回収システムにより、遊離脂肪酸生産微生物の培養と遊離脂肪酸の回収を同時に行うことができる。
なお、
図1に示す回収システムは一例であり、例えば、2本以上のカラムを並列に設け、吸着ラインと洗浄ラインを各カラムと接続するように分岐し、少なくとも一本のカラムでのFFAの脱着工程と、少なくとも一本のカラムでの吸着工程を同時に行うこと、吸着ラインのカラムより下流に栄養塩類等を添加する装置を設けること等もできる。
【実施例0017】
「実験1」
無機塩培地25mLに、表1に示すイオン交換樹脂を1g添加し、120rpmで一晩振とうした。
その後、0.45μmのフィルターでろ過して培地を分取し、pHと培地中のイオン濃度を測定した。結果を表2に示す。
【0018】
【0019】
【0020】
強酸性の陽イオン交換樹脂では、陽イオンの吸着による濃度減少と、プロトンイオンの放出による酸性化が確認された。特に、植物の肥料の三要素である窒素、リン、カリウムのうち、窒素を含むアンモニウムイオンとカリウムイオンが吸着して濃度が低下しており、藻類の培養への悪影響が懸念される。
強塩基性の陰イオン交換樹脂では、塩化物イオンの増加と、硫酸イオン・リン酸イオンの減少が確認された。特に、植物の肥料の三要素の一つであるリンを含むリン酸イオンの濃度低下による、藻類の培養への悪影響が懸念される。
一方、弱塩基性の陰イオン交換樹脂では、硫酸イオンがわずかに減少したのみで、他の培地成分への大きな影響は見られなかった。
【0021】
「実験2」
FFAの溶解液は、両性界面活性剤であるCHAPS(3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]propanesulfonate)とFFAの試薬を用いて作製した。
1%(w/w)CHAPS溶液200mLに、パルミチン酸(16:0)を1g添加して室温で一晩撹拌した。溶け残ったパルミチン酸をメンブレンフィルター(ADVANTEC社、親水性PTFEタイプ、孔径0.2μm)で濾過して取り除き、濾液をFFA溶解液として分取した。
表1に示す3種の陰イオン交換樹脂を、事前に蒸留水中に一晩浸漬し、洗浄したものを用いた。
【0022】
100mLの三角フラスコに、FFA溶解液50mLと、各陰イオン交換樹脂2gを添加し、120rpmで6時間振とうした。振とう前後のFFA濃度をFree Fatty Acid Quantification Kit(Biovision)で測定した。結果を
図2に示す。
塩基の強さに依らず、いずれのイオン交換樹脂も、パルチミン酸の吸着が確認された。
【0023】
「実験3」
FFAとして、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)を用い、実験2と同様にしてFFA溶解液を作製した。
弱塩基性の陰イオン交換樹脂と、上記各種FFA溶解液を使用した以外は、実験2と同様にして、FFA濃度を測定した。結果を
図3に示す。
いずれのFFAも弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着することができた。
【0024】
「実験4」
実験2と同様にして、パルミチン酸のFFA溶解液を作製した。
100mLの三角フラスコに、FFA溶液25mLと弱塩基性陰イオン交換樹脂1gを添加し、120rpmで6時間振とうし、弱塩基性陰イオン交換樹脂にFFAを吸着した。振とう前後のFFA濃度をFree Fatty Acid Quantification Kit(Biovision)で測定した。
吸着試験後の陰イオン交換樹脂と上清をメンブレンフィルター(ADVANTEC社、親水性PTFEタイプ、孔径10μm)で濾過することで、弱塩基性陰イオン交換樹脂のみを分離した。
回収した陰イオン交換樹脂0.5gと各種有機溶媒12.5mLとを100mL容量の三角フラスコに入れて120rpmで一晩振とうし、FFAを脱着した。有機溶媒としては、メタノール(-0.82)、エタノール(-0.31)、アセトン(-0.24)、酢酸エチル(0.73)、クロロホルム(1.97)及びヘキサン(3.9)を用いた。抽出後の有機溶媒1mLをガラスバイアルに分取して窒素ガスで乾固し、Free Fatty Acid Quantification Kit(Biovision)の付属のBuffer 1mLで再溶解したもののFFA濃度を測定した。
【0025】
吸着試験で陰イオン交換樹脂に吸着されたFFA量と、脱着試験により回収されたFFA量とを用いてFFAの回収率を算出した。結果を
図4に示す。
オクタノール-水分配係数が、-0.85~2.5の範囲内である溶媒で洗浄することにより、塩基性陰イオン交換樹脂から約60%以上の遊離脂肪酸を回収することができた。特に、メタノールが回収率に優れていた。
それに対し、水、ヘキサン(3.9)では、遊離脂肪酸の回収率が低かった。