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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157287
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】調光装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/13 20060101AFI20231019BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20231019BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20231019BHJP
   G02F 1/133 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G02F1/13 505
G02F1/1337
G02F1/1334
G02F1/133 505
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067095
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】黒川 裕香
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
2H193
2H290
【Fターム(参考)】
2H088EA34
2H088GA02
2H088GA10
2H088HA02
2H088HA03
2H088HA06
2H088JA04
2H088KA26
2H088MA01
2H088MA20
2H189AA04
2H189AA05
2H189CA08
2H189HA16
2H189JA04
2H189LA03
2H189LA05
2H189MA15
2H193ZA27
2H193ZB51
2H193ZP03
2H193ZP04
2H193ZQ13
2H193ZR18
2H290AA33
2H290CB32
2H290DA01
2H290DA03
(57)【要約】
【課題】取付対象に対して透明および不透明に加えてさらなる装飾を加えることを可能とした調光装置を提供する。
【解決手段】第1調光装置10Nは、第1調光シート11Nと、第1調光シート11Nに電圧を印加する駆動部12とを備える。第1電圧VN1を印加したときの第1調光シート11Nのヘイズが80%以上であり、第2電圧VN2を印加したときの第1調光シート11Nのヘイズが10%未満である。第1調光シート11Nにおいて、第2電圧VN2の印加時と第3電圧VN3の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、第2電圧VN2の印加時と第3電圧VN3の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層を備える調光シートと、
前記調光シートに電圧を印加する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、第1電圧、第2電圧、および、第3電圧を前記調光シートに印加し、前記第1電圧において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との電位差がゼロであり、前記第3電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさであり、
前記第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、前記第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが10%未満であり、
前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である
調光装置。
【請求項2】
前記調光シートにおいて、
前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記明度指数Lの差分値が90以上であり、
前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記色座標aの差分値が1.5以下であり、
前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記色座標bの差分値が3.0以下である
請求項1に記載の調光装置。
【請求項3】
前記調光シートにおいて、前記色座標aおよび前記色座標bが、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさを有した電圧において極大値を有する
請求項1または2に記載の調光装置。
【請求項4】
第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層と、前記第1透明電極層と前記調光層との間に位置する第1配向層と、前記第2透明電極層と前記調光層との間に位置する第2配向層とを備える調光シートと、
前記調光シートに電圧を印加する駆動部と、を備え、
前記駆動部は、第1電圧、第2電圧、および、第3電圧を前記調光シートに印加し、前記第2電圧において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との電位差がゼロであり、前記第3電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさであり、
前記第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、前記第1電圧は、前記調光シートのヘイズが80%以上となる電圧値における最小値であり、
前記第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが15%以下であり、
前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である
調光装置。
【請求項5】
前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける前記色座標bの差分値が、30以上である
請求項4に記載の調光装置。
【請求項6】
前記調光シートにおいて、
前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上であり、
前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記明度指数Lの差分値が20以上であり、
前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上である
請求項4または5に記載の調光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
調光シートの型式は、ノーマル型またはリバース型である。ノーマル型の調光シートは、第1透明電極層と、第2透明電極層と、第1透明電極層と第2透明電極層との間に位置する調光層とを備えている。調光層は、ポジ型の液晶分子を含んでいる。リバース型の調光シートは、ノーマル型に対して第1配向層と第2配向層とをさらに備えている。第1配向層は、調光層と第1透明電極層との間に位置し、かつ、第2配向層は、調光層と第2透明電極層との間に位置している。
【0003】
ノーマル型の調光シートを備える調光装置では、透明電極層間に電位差が生じていないときに、調光シートが不透明を呈する一方で、透明電極層間に電位差が生じてるときに、調光シートが透明を呈する。これに対して、リバース型の調光シートを備える調光装置では、透明電極層間に電位差が生じていないときに、調光シートが透明を呈する一方で、透明電極層間に電位差が生じているときに、調光シートが不透明を呈する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-9187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、調光シートは、各種の建物が備える窓、オフィスに設置されたパーティション、および、店舗に設置されたショーウインドウなどが備える透明部材に取り付けられる。近年では、調光シートは、車両および航空機などの移動体が備える窓が備える透明部材にも適用されつつある。このように調光シートの取り付けられる対象が拡張されることに伴って、調光シートには、取付対象に対して透明および不透明に加えて更なる装飾を加えられることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための調光装置は、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層を備える調光シートと、前記調光シートに電圧を印加する駆動部と、を備える。前記駆動部は、第1電圧、第2電圧、および、第3電圧を前記調光シートに印加し、前記第1電圧において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との電位差がゼロであり、前記第3電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさである。前記第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、前記第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが10%未満である。前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である。
【0007】
上記調光装置によれば、調光シートに対して第3電圧を印加することによって、第2電圧を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧を印加したときとは異なる色を調光シートが呈することが可能である。
【0008】
上記調光装置では、前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記明度指数Lの差分値が90以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記色座標aの差分値が1.5以下であり、前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記色座標bの差分値が3.0以下であってもよい。
【0009】
上記調光装置によれば、調光シートに第2電圧を印加した際に、第1電圧を印加した際に比べて調光シートを明るくしながらも、調光シートが、第1電圧が印加されたときに調光シートが呈する色に対してずれの小さい色を呈することが可能である。
【0010】
上記調光装置では、前記調光シートにおいて、前記色座標aおよび前記色座標bが、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさを有した電圧において極大値を有してもよい。この調光装置によれば、各色座標a,bが極大値を呈する電圧を調光シートに印加することによって、いずれかの色座標a,bにおいて、調光シートが呈する色を第1電圧または第2電圧が調光シートに印加されたときに調光シートが呈する色に対するずれを最も大きくすることが可能である。
【0011】
上記課題を解決するための調光装置は、第1透明電極層と、第2透明電極層と、前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層と、前記第1透明電極層と前記調光層との間に位置する第1配向層と、前記第2透明電極層と前記調光層との間に位置する第2配向層とを備える調光シートと、前記調光シートに電圧を印加する駆動部と、を備える。前記駆動部は、第1電圧、第2電圧、および、第3電圧を前記調光シートに印加し、前記第2電圧において前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との電位差がゼロであり、前記第3電圧は、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさである。前記第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、前記第1電圧は、前記調光シートのヘイズが80%以上となる電圧値における最小値であり、前記第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが15%以下である。前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である。
【0012】
上記調光装置によれば、調光シートに対して第3電圧を印加することによって、第2電圧を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧を印加したときとは異なる色を調光シートが呈することが可能である。
【0013】
上記調光装置では、前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける前記色座標bの差分値が、30以上であってもよい。この調光装置によれば、調光シートに第3電圧が印加された際に、調光シートに第2電圧を印加されたときとはより顕著に異なる色を調光シートが呈することが可能である。
【0014】
上記調光装置では、前記調光シートにおいて、前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける前記明度指数Lの差分値が20以上であり、前記第2電圧の印加時と前記第1電圧の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上であってもよい。
【0015】
上記調光装置によれば、調光シートが、調光シートに第2電圧が印加されたときと第3電圧が印加されたときとの両方において、第1電圧が印加されたときとは異なる色を呈することが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、調光シートが、第1電圧と第2電圧との間の大きさである第3電圧が印加されたときに、第2電圧が印加されたときとは異なる色を呈することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】調光装置の第1例であるノーマル型の第1調光シートを備える調光装置の構造を示す断面図である。
図2】調光装置の第2例であるリバース型の第2調光シートを備える調光装置の構造を示す断面図である。
図3】L表色系によって定められる色区間を示す模式図である。
図4】実施例1‐1の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図5】比較例1‐1の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図6】比較例1‐2の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図7】実施例2‐1の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図8】実施例2‐2の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図9】実施例2‐3の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
図10】比較例2‐1の調光装置における駆動電圧と調光シートの光学特性との関係を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1から図10を参照して、調光装置の一実施形態を説明する。本開示の調光装置が備える調光シートの型式は、ノーマル型でもよいし、リバース型でもよい。以下では、図1を参照して、ノーマル型の第1調光シートと駆動部とを備える第1調光装置を説明し、図2を参照して、リバース型の第2調光シートと駆動部とを備える第2調光装置を説明する。
【0019】
なお、調光シートは、例えば、住宅、駅、空港などの各種の建物が備える窓ガラス、オフィスに設置されたパーティション、および、店舗に設置されたショーウインドウなどが備える透明部材に取り付けられる。あるいは、調光シートは、車両および航空機などの移動体が備える窓が備える透明部材に取り付けられる。調光シートの形状は、平面状であってもよいし、曲面状であってもよい。
【0020】
[第1調光装置]
図1が示すように、第1調光装置10Nは、ノーマル型の第1調光シート11Nと、駆動部12とを備えている。第1調光シート11Nは、第1透明電極層21、第2透明電極層22、および、調光層23を備えている。第1調光シート11Nは、さらに、第1透明電極層21を支持する第1透明基材24、および、第2透明電極層22を支持する第2透明基材25を備えている。
【0021】
第1調光シート11Nは、第1透明電極層21の一部に取り付けられた第1電極21Eと、第2透明電極層22の一部に取り付けられた第2電極22Eとを備えている。第1調光シート11Nはさらに、第1電極21Eに接続された配線26と、第2電極22Eに接続された配線26とを備えている。第1電極21Eは、配線26によって駆動部12に接続されている。第2電極22Eは、配線26によって駆動部12に接続されている。
【0022】
第1透明電極層21および第2透明電極層22は、調光層23を透明と不透明とに切り替える電圧を調光層23に印加する。各透明電極層21,22は、可視光を透過する光透過性を有する。第1透明電極層21の光透過性は、第1調光シート11Nを通した物体の視覚認識を可能にする。第2透明電極層22の光透過性は、第1透明電極層21の光透過性と同様、第1調光シート11Nを通した物体の視覚認識を可能にする。
【0023】
各透明電極層21,22を形成するための材料は、例えば、酸化インジウムスズ、フッ素ドープ酸化スズ、酸化スズ、酸化亜鉛、カーボンナノチューブ、および、ポリ(3,4‐エチレンジオキシチオフェン)から構成される群から選択されるいずれか1つであってよい。
【0024】
調光層23は、透明高分子層と液晶組成物とを備えている。透明高分子層は、液晶組成物が充填される空隙を有している。液晶組成物は、透明高分子層が有する空隙に充填されている。空隙の形状は、球形状、楕円体状、あるいは、不定形状である。なお、第1調光シート11Nの厚さ方向に沿う断面において、空隙が円形状を有する場合、空隙径は、空隙の直径である。第1調光シート11Nの厚さ方向に沿う断面において、空隙が楕円形状を有する場合、空隙径は、空隙の長径である。第1調光シート11Nの厚さ方向に断面において、空隙が不定形状を有する場合、空隙径は、空隙に外接する円の直径である。空隙径は、例えば0.5μm以上5.0μm以下であってよく、好ましくは1.5μm以上3.0μm以下であってよい。
【0025】
液晶組成物の保持型式は、高分子ネットワーク型、高分子分散型、および、カプセル型から構成される群から選択されるいずれか1つである。高分子ネットワーク型は、3次元の網目状を有した透明な高分子ネットワークを備え、互いに連通した網目の空隙のなかに液晶組成物を保持する。高分子ネットワークは、透明高分子層の一例である。高分子分散型は、孤立した多数の空隙を透明高分子層のなかに備え、透明高分子層に分散した空隙のなかに液晶組成物を保持する。カプセル型は、カプセル状を有した液晶組成物を透明高分子層のなかに保持する。これにより、透明高分子層には、液晶組成物が充填される空隙が形成される。
【0026】
液晶組成物は、液晶分子を含んでいる。液晶分子の一例は、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、ビフェニル系、ターフェニル系、安息香酸エステル系、トラン系、ピリミジン系、ピリダジン系、シクロヘキサンカルボン酸エステル系、フェニルシクロヘキサン系、ビフェニルシクロヘキサン系、ジシアノベンゼン系、ナフタレン系、ジオキサン系から構成される群から選択される少なくとも1種である。液晶組成物は、液晶分子として、誘電異方性が正であるポジ型のネマチック液晶を含んでいる。
【0027】
透明高分子層は、光重合性化合物の硬化体である。光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物でもよいし、電子線硬化性化合物でもよい。光重合性化合物は、液晶組成物と相溶性を有する。空隙の寸法制御性を高める場合には、光重合性化合物は、紫外線硬化性化合物であることが好ましい。紫外線硬化性化合物の一例は、分子構造の末端に重合性不飽和結合を含む。あるいは、紫外線硬化性化合物は、分子構造の末端以外に重合性の不飽和結合を含む。光重合性化合物は、1種の重合性化合物、あるいは2種以上の重合性化合物の組み合わせである。
【0028】
紫外線硬化性化合物は、アクリレート化合物、メタクリレート化合物、スチレン化合物、チオール化合物、および、各化合物のオリゴマーからなる群から選択される少なくとも一種である。
【0029】
アクリレート化合物は、モノアクリレート化合物、ジアクリレート化合物、トリアクリレート化合物、テトラアクリレート化合物を含む。アクリレート化合物の一例は、ブチルエチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートである。メタクリレート化合物の一例は、ジメタクリレート化合物、トリメタクリレート化合物、テトラメタクリレート化合物である。メタクリレート化合物の一例は、N,N‐ジメチルアミノエチルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレートである。チオール化合物の一例は、1,3-プロパンジチオール、1,6‐ヘキサンジチオールである。スチレン化合物の一例は、スチレン、メチルスチレンである。
【0030】
透明高分子層と液晶組成物との総量に対する透明高分子層の含有量の下限値は30質量%であってよく、より好ましい含有量の下限値は40質量%であってよい。透明高分子層と液晶組成物との総量に対する透明高分子層の含有量の上限値は70質量%であってよく、より好ましい含有量の上限値は60質量%であってよい。
【0031】
透明高分子層の含有量の下限値および上限値は、光重合性化合物の硬化過程において、液晶組成物からなる液晶粒子が光重合性化合物の硬化体から相分離する範囲である。透明高分子層の機械的な強度を高めることを要する場合には、透明高分子層の含有量の下限値が高いことが好ましい。液晶分子の駆動電圧を低めることを要する場合には、透明高分子層の含有量の上限値が低いことが好ましい。
【0032】
本実施形態において、液晶組成物は、二色性色素を含んでもよい。二色性色素は、細長い形状を有している。二色性色素の分子における長軸方向での可視領域の吸光度が、分子の短軸方向における可視領域の吸光度よりも大きい。二色性色素は、長軸方向が、光の入射方向に対して平行または略平行な場合にほぼ透明を呈する。これに対して、二色性色素は、長軸方向が、光の入射方向に対して垂直または略垂直な場合に所定の色を呈する。
【0033】
そのため、二色性色素は、調光層における第1透明電極層21との接触面、および、調光層23における第2透明電極層22との接触面の法線方向に対して、長軸方向が平行または略平行であるように配向されたときに、透明を呈する。これに対して、二色性色素は、調光層23における第1透明電極層21との接触面、および、調光層23における第2透明電極層22との接触面の法線方向に対して、長軸方向が垂直または略垂直であるように配向されたときに所定の色を呈する。二色性色素が呈する色は、黒色または黒色に近い色であることが好ましい。二色性色素は、液晶分子をホストとしたゲストホスト型式によって駆動され、これによって、二色性色素は呈色する。
【0034】
二色性色素は、ポリヨウ素、アゾ化合物、アントラキノン化合物、ナフトキノン化合物、アゾメチン化合物、テトラジン化合物、キノフタロン化合物、メロシアニン化合物、ペリレン化合物、ジオキサジン化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。二色性色素は、1種の色素、あるいは、2種以上の色素の組み合わせであってよい。二色性色素の耐光性を高める観点、および、二色比を高める観点では、二色性色素は、アゾ化合物およびアントラキノン化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。二色性色素は、アゾ化合物であることがより好ましい。
なお、液晶組成物は、上述した液晶分子および二色性色素以外に、例えば透明高分子層を形成するためのモノマーを含んでもよい。
【0035】
各透明基材24,25を形成する材料は、合成樹脂または無機化合物であってよい。合成樹脂は、例えば、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、および、ポリオレフィンなどである。ポリエステルは、例えばポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートなどである。ポリアクリレートは、例えばポリメチルメタクリレートなどである。無機化合物は、例えば、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、および、窒化ケイ素などである。各透明基材24,25の厚さは、例えば250μm以下であってよい。
【0036】
各電極21E,22Eは、例えばフレキシブルプリント基板(FPC : Flexible Printed Circuit)である。FPCは、支持層、導体部、および、保護層を備えている。導体部が、支持層と保護層とに挟まれている。支持層および保護層は、絶縁性の合成樹脂によって形成されている。支持層および保護層は、例えばポリイミドによって形成される。導体部は、例えば金属薄膜によって形成されている。金属薄膜を形成する材料は、例えば銅であってよい。各電極21E,22Eは、FPCに限らず、例えば金属製のテープであってもよい。
【0037】
なお、各電極21E,22Eは、図示外の導電性接着層によって、各透明電極層21,22に取り付けられている。各電極21E,22Eのうち、導電性接着層に接続される部分では、導体部が保護層または支持層から露出している。
【0038】
導電性接着層は、例えば、異方性導電フィルム(ACF : Anisotropic Conductive Film)、異方性導電ペースト(ACP : Anisotropic Conductive Paste)、等方性導電フィルム(ICF : Isotropic Conductive Film)、および、等方性導電ペースト(ICP : Isotropic Conductive Paste)などによって形成されてよい。第1調光装置10Nの製造工程における取り扱い性の観点から、導電性接着層は、異方性導電フィルムであることが好ましい。
各配線26は、例えば、金属製のワイヤーと、金属製のワイヤーを覆う絶縁層とによって形成されている。ワイヤーは、例えば銅などによって形成されている。
【0039】
駆動部12は、第1透明電極層21と第2透明電極層22との間に交流電圧を印加する。駆動部12は、矩形波状を有した交流電圧を一対の透明電極層21,22間に印加することが好ましい。言い換えれば、駆動部12は、矩形波の電圧信号を出力することが好ましい。
【0040】
調光層23に対して電圧が印加されていない状態では、液晶分子は、長軸方向の配向に所定の規則を有しない。すなわち、液晶分子は、空隙内において不規則に配向している。これにより、調光層23、ひいては第1調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加されていない状態において不透明である。言い換えれば、第1調光シート11Nは、相対的に高いヘイズ値を有する。
【0041】
調光層23に対して電圧が印加されている状態では、液晶分子は、電界に対して平行に配向する。第1調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加された際に、液晶分子の長軸方向が、上述した接触面に対して垂直であるように構成されている。すなわち、液晶分子は垂直配向する。そのため、調光層23、ひいては第1調光シート11Nは、調光層23に対して電圧が印加されている状態において透明である。これにより、第1調光シート11Nは、相対的に低いヘイズ値を有する。
【0042】
[第1調光シートの光学特性]
第1調光装置10Nは、以下の条件1‐1から条件1‐4を満たす。
(条件1‐1)駆動部12が第1調光シート11Nに第1電圧VN1を印加したときの第1調光シート11Nのヘイズが80%以上である。
【0043】
(条件1‐2)駆動部12が第1調光シート11Nに第2電圧VN2を印加したときの第1調光シート11Nのヘイズが10%未満である。
(条件1‐3)第1調光シート11Nにおいて、第2電圧VN2の印加時と第3電圧VN3の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上である。
【0044】
(条件1‐4)第1調光シート11Nにおいて、第2電圧VN2の印加時と第3電圧VN3の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である。
【0045】
駆動部12が第1調光シート11Nに印加する第1電圧VN1、第2電圧VN2、および、第3電圧VN3のうち、第1電圧VN1において第1透明電極層21と第2透明電極層22との電位差がゼロであり、第3電圧VN3は、第1電圧VN1と第2電圧VN2との間の大きさである。第1電圧VN1が第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは不透明を呈する。第2電圧VN2が第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは透明を呈する。第3電圧VN3第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは、透明と不透明との間の中間調を呈する。
【0046】
なお、第1調光シート11Nのヘイズ値は、JIS K 7136:2000「プラスチック-ヘーズの求め方」に準拠した方法によって求められる。また、第1調光シート11Nにおける明度指数L、色座標a、および、色座標bは、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976L色空間」に準拠した方法によって求められる。
【0047】
第1調光装置10Nが条件1‐1から条件1‐4を満たすから、第1調光シート11Nに対して第3電圧VN3を印加することによって、第2電圧VN2を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧VN2を印加したときとは異なる色を第1調光シート11Nが呈することが可能である。
【0048】
また、本開示の第1調光装置10Nによれば、液晶組成物が二色性色素を含まずとも第1調光シート11Nが第2電圧VN2を印加したときとは異なる色を呈することが可能である。そのため、二色性色素の光分解による色の変化が生じないから、第1調光シート11Nの光による退色を抑えることが可能である。
【0049】
第1調光装置10Nは、以下に記載の条件のうち、少なくとも1つをさらに満たしてもよい。すなわち、第1調光装置10Nは、以下に説明する条件1‐5または条件1‐6を満たしてもよいし、条件1‐5と条件1‐6との両方を満たしてもよい。
【0050】
(条件1‐5)第1調光シート11Nにおいて、第2電圧の印加時と第1電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が90以上であり、第2電圧の印加時と第1電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が1.5以下であり、第2電圧の印加時と第1電圧の印加時とにおける色座標bの差分値が3.0以下である。
【0051】
(条件1‐6)第1調光シート11Nにおいて、色座標aおよび色座標bが、第1電圧と第2電圧との間の大きさを有した電圧において極大値を有する。
【0052】
第1調光装置10Nが条件1‐5を満たすことによって、第1調光シート11Nに第2電圧VN2を印加した際に、第1電圧VN1を印加した際に比べて第1調光シート11Nを明るくしながらも、第1調光シート11Nが、第1電圧VN1が印加されたときに第1調光シート11Nが呈する色に対してずれの小さい色を呈することが可能である。また、第1調光装置10Nが条件1‐6を満たすことによって、各色座標a,bが極大値を呈する電圧を第1調光シート11Nに印加することによって、いずれかの色座標a,bにおいて、第1調光シート11Nが呈する色を第1電圧VN1または第2電圧VN2が第1調光シート11Nに印加されたときに第1調光シート11Nが呈する色に対するずれを最も大きくすることが可能である。
【0053】
なお、色座標aおよび色座標bが極大値を有する電圧値は、第3電圧VR3と同一であってもよいし、異なってもよい。
【0054】
[第2調光装置]
図2が示すように、第2調光装置10Rは、リバース型の第2調光シート11Rと駆動部12とを備えている。第2調光シート11Rは、第1調光シート11Nが備える層に加えて、第1配向層27および第2配向層28を備えている。調光層23は、第1配向層27と第2配向層28との間に位置している。第1配向層27は、調光層23と第1透明電極層21との間に位置し、かつ、調光層23に接している。第2配向層28は、調光層23と第2透明電極層22との間に位置し、かつ、調光層23に接している。
【0055】
第1配向層27および第2配向層28を形成するための材料は、有機化合物、無機化合物、および、これらの混合物である。有機化合物は、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルアルコール、および、シアン化化合物などである。無機化合物は、シリコン酸化物、酸化ジルコニウムなどである。なお、配向層27,28を形成するための材料は、シリコーンであってもよい。シリコーンは、無機性の部分と有機性の部分とを有する化合物である。
【0056】
第1配向層27および第2配向層28は、例えば垂直配向層である。垂直配向層は、第1透明電極層21に接する面とは反対側の面、および、第2透明電極層22に接する面とは反対側の面に対して垂直であるように、液晶分子の長軸方向を配向させる。このように、配向層27,28は、調光層23が含む複数の液晶分子における配向を規制する。
【0057】
調光層23は、第1調光シート11Nが備える調光層23と同様に、空隙を含む透明高分子層、および、空隙に充填された液晶組成物を含んでいる。液晶組成物は、液晶分子を含んでいる。なお、液晶組成物は、液晶分子として、誘電異方性が負であるネガ型のネマチック液晶を含んでいる。液晶組成物は、第1調光シート11Nが備える液晶組成物と同様に、二色性色素およびモノマーの少なくとも一方を含んでよい。
【0058】
調光層23に対して電圧が印加されていない状態では、液晶分子は、配向層27,28の配向規制力によって、上述した接触面に対して垂直に配向する。そのため、調光層23、ひいては第2調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加されていない状態において透明である。これにより、第2調光シート11Rは、相対的に低いヘイズ値を有する。
【0059】
調光層23に対して電圧が印加されている状態では、液晶分子は、電界に対して垂直に配向する。第2調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加された際に、液晶分子の長軸方向が、上述した接触面に対して平行であるように構成されている。すなわち、液晶分子は水平配向する。そのため、調光層23、ひいては第2調光シート11Rは、調光層23に対して電圧が印加されている状態において、不透明である。これにより、第2調光シート11Rは、相対的に高いヘイズ値を有する。
【0060】
[第2調光シートの光学特性]
第2調光装置10Rは、以下の条件2‐1から条件2‐4を満たす。
(条件2‐1)第1電圧VR1を印加したときの第2調光シート11Rのヘイズが80%以上であり、第1電圧VR1は、第2調光シート11Rのヘイズが80%以上となる電圧値における最小値である。
【0061】
(条件2‐2)第2電圧VR2を印加したときの第2調光シート11Rのヘイズが15%以下である。
(条件2‐3)第2電圧VR2の印加時と第3電圧VR3の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上である。
【0062】
(条件2‐4)第2電圧VR2の印加時と第3電圧VR3の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である。
【0063】
駆動部12は、第1電圧VR1、第2電圧VR2、および、第3電圧VR3を第2調光シート11Rに印加し、第2電圧VR2において第1透明電極層21と第2透明電極層22との電位差がゼロであり、第3電圧VR3は、第1電圧VR1と第2電圧VR2との間の大きさである。第1電圧VR1が第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは不透明を呈する。第2電圧VR2が第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは透明を呈する。第3電圧VR3第1調光シート11Nに印加されたとき、第1調光シート11Nは、透明と不透明との間の中間調を呈する。
【0064】
なお、第2調光シート11Rのヘイズ値は、JIS K 7136:2000「プラスチック-ヘーズの求め方」に準拠した方法によって求められる。また、第2調光シート11Rにおける明度指数L、色座標a、および、色座標bは、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976L色空間」に準拠した方法によって求められる。
【0065】
第2調光シート11Rに対して第3電圧VR3を印加することによって、第2電圧VR2を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧VR2を印加したときとは異なる色を第2調光シート11Rが呈することが可能である。また、本開示の第2調光装置10Rによれば、液晶組成物が二色性色素を含まずとも第2調光シート11Rが第2電圧VR2を印加したときとは異なる色を呈することが可能である。そのため、二色性色素の光分解による色の変化が生じないから、第2調光シート11Rの光による退色を抑えることが可能である。
【0066】
第2調光装置10Rは、以下に記載の条件のうち、少なくとも1つをさらに満たしてもよい。すなわち、第2調光装置10Rは、以下に説明する条件2‐5または条件2‐6を満たしてもよいし、条件2‐5と条件2‐6との両方を満たしてもよい。
【0067】
(条件2‐5)第2電圧VR2の印加時と第3電圧VR3の印加時とにおける色座標bの差分値が、30以上である。
(条件2‐6)第2電圧VR2の印加時と第3電圧VR3の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上であり、第2電圧VR2の印加時と第1電圧VR1の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、第2電圧VR2の印加時と第1電圧VR1の印加時とにおける色座標bの差分値が20以上である。
【0068】
第2調光装置10Rが条件2‐5を満たすことによって、第2調光シート11Rに第3電圧VR3が印加された際に、第2調光シート11Rに第2電圧VR2を印加されたときとはより顕著に異なる色を第2調光シート11Rが呈することが可能である。また、第2調光装置10Rが条件2‐6を満たすことによって、第2調光シート11Rが、第2調光シート11Rに第2電圧VR2が印加されたときと第3電圧VR3が印加されたときとの両方において、第1電圧VR1が印加されたときとは異なる色を呈することが可能である。
【0069】
[実施例]
[実施例1‐1]
透明高分子層を形成するためのモノマーとしてアクリレート化合物を準備した。また、液晶分子として、以下に列記する式(1)から式(12)に示すポジ型のネマチック液晶のうちの複数種を用いた。これにより、液晶分子の混合物において、屈折率異方性Δnが1.6であるように混合物の屈折率異方性Δnを調整した。そして、50質量部の液晶分子と、50質量部のモノマーとを含む塗液を調整した。なお、以下に列記する化学式において、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシ基、炭素数2から12のアルケニル基、炭素数2から12のアルケニルオキシ基、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル基、フッ素、または、シアノ基である。
【0070】
【化1】
【0071】
【化2】
【0072】
【化3】
【0073】
【化4】
【0074】
【化5】
【0075】
【化6】
【0076】
【化7】
【0077】
【化8】
【0078】
【化9】
【0079】
【化10】
【0080】
【化11】
【0081】
【化12】
【0082】
20nmの厚さを有したITO層と、125μmの厚さを有したポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える透明フィルムを2枚準備した。そして、一方の透明フィルムが備えるITO層上に、硬化後の厚さが10μmであるように、塗液を塗布することによって塗膜を形成し、次いで、他方の透明フィルムが備えるITO層を塗膜に接触させた。これにより、一対の透明フィルムによって塗膜を挟んだ。
【0083】
そして、一対の透明フィルムを挟むように一対の紫外線ランプを配置し、次いで、一対のランプを用いて塗膜に紫外線を照射した。この際に、紫外線の強度を10mW/cmに設定し、かつ、紫外線の照射時間を100秒に設定した。紫外線の照射によって塗膜中において相分離を生じさせ、これにより、空隙径における平均値が0.5μmである調光層を形成した。結果として、実施例1‐1の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0084】
[比較例1‐1]
実施例1‐1において、30質量部の液晶分子と、70質量部のモノマーとを含む塗液に変更した以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、比較例1‐1の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0085】
[比較例1‐2]
実施例1‐1において、紫外線の強度を1mW/cmに設定し、空隙径における平均値が5.5μmである調光層を形成するように変更した以外は、実施例1‐1と同様の方法によって、比較例1‐2の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0086】
[実施例2‐1]
透明高分子層を形成するためのモノマーとしてアクリレート化合物を準備した。また、液晶分子として、以下に列記する式(13)から式(23)に示すネガ型のネマチック液晶のうちの複数種を用いた。これにより、液晶分子の混合物において、屈折率異方性Δnが1.6であるように混合物の屈折率異方性Δnを調整した。そして、50質量部の液晶分子と、50質量部のモノマーとを含む塗液を調整した。なお、以下に列記する化学式において、R1およびR2は独立して、炭素数1から12のアルキル基、炭素数1から12のアルコキシ基、炭素数2から12のアルケニル基、炭素数2から12のアルケニルオキシ基、または、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル基である。
【0087】
【化13】
【0088】
【化14】
【0089】
【化15】
【0090】
【化16】
【0091】
【化17】
【0092】
【化18】
【0093】
【化19】
【0094】
【化20】
【0095】
【化21】
【0096】
【化22】
【0097】
【化23】
【0098】
20nmの厚さを有したITO層と、125μmの厚さを有したポリエチレンテレフタレートフィルムとを備える透明フィルムを2枚準備した。各ITO層上に、100nmの厚さを有するポリイミド製の配向層を形成した。
【0099】
そして、一方の透明フィルムが備える配向層上に、硬化後の厚さが5μmであるように、塗液を塗布することによって塗膜を形成し、次いで、他方の透明フィルムが備える配向層を塗膜に接触させた。これにより、一対の透明フィルムによって塗膜を挟んだ。
【0100】
そして、一対の透明フィルムを挟むように一対の紫外線ランプを配置し、次いで、一対のランプを用いて塗膜に紫外線を照射した。この際に、紫外線の強度を10mW/cmに設定し、かつ、紫外線の照射時間を100秒に設定した。紫外線の照射によって塗膜中において相分離を生じさせ、これにより、空隙径における平均値が2μmである調光層を形成した。結果として、実施例2‐1の調光装置が備える第2調光シートを得た。
【0101】
[実施例2‐2]
実施例2‐1において、硬化後の厚さが10μmとなるよう塗液を塗布することによって塗膜を形成した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐2の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0102】
[実施例2‐3]
実施例2‐1において、紫外線の強度を20mW/cmに変更し空隙径における平均値が1.5μmとなるよう変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、実施例2‐3の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0103】
[比較例2‐1]
実施例2‐1において、30質量部の液晶分子と、70質量部のモノマーとを含む塗液を調整し、紫外線の強度を5mW/cmに設定し、空隙径における平均値が5.5μmとなるように変更した以外は、実施例2‐1と同様の方法によって、比較例2‐1の調光装置が備える第1調光シートを得た。
【0104】
[評価方法]
各調光装置が備える調光シートについて、3以上の異なる駆動電圧が印加された際の光学特性を評価した。調光シートの光学特性として、ヘイズ、La色空間における明度指数Lおよび色座標a,b、および、黄色度YIを求めた。上述したように、JIS K 7136:2000「プラスチック-ヘーズの求め方」に準拠した方法によってヘイズ値を求め、また、JIS Z 8781-4:2013「測色-第4部:CIE 1976L色空間」に準拠した方法によって明度指数Lおよび色座標a,bを求めた。また、JIS K 7373:2006「プラスチック-黄色度及び黄変度の求め方」に準拠した方法によって、黄色度YIを求めた。
【0105】
なお、ヘイズ値を求める際には、ヘーズメーター(NDH7000(II)、日本電色工業(株)製)を用いた。また、明度指数L、色座標a,b、および、黄色度YIを求める際、を求める際には、分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いた。
【0106】
なお、実施例1‐1および比較例1‐1では、駆動電圧が100Vであるときの各値を基準として、黄変度ΔYI、明度差ΔL、色座標差Δa,Δbを算出した。比較例1‐2では、駆動電圧が48Vであるときの各値を基準として、黄変度ΔYI、明度差ΔL、色座標差Δa,Δbを算出した。実施例2‐1、実施例2‐2、比較例2‐1、および、比較例2‐2では、駆動電圧が0Vであるときの各値を基準として、黄変度ΔYI、明度差ΔL、色座標差Δa,Δbを算出した。
【0107】
[評価結果]
図3から図10を参照して、各実施例および各比較例の評価結果を説明する。なお、各図は、各調光装置が備える調光シートに印加される駆動電圧と調光シートの光学特性との評価結果を示している。また、図4は実施例1‐1の調光装置における評価結果を示し、図5は比較例1‐1における評価結果を示し、かつ、図6は比較例1‐2における評価結果を示している。図7は実施例2‐1の調光装置における評価結果を示し、図8は実施例2‐2の調光装置における評価結果を示し、図9は実施例2‐3の調光装置における評価結果を示し、かつ、図10は比較例2‐1の調光装置における評価結果を示している。
【0108】
図3は、L色空間を模式的に示している。
図3が示すように、L色空間において、明度指数Lが100に近付くほど物体の色は白色Wに近付く一方で、明度指数Lが0に近付くほど物体の色は黒色BKに近付く。また、色座標aでは、正の方向に大きくなるほど赤色Rに近付く一方、負の方向に大きくなるほど緑色Gに近付く。また、色座標bでは、正の方向に大きくなるほど黄色Yに近付く一方、負の方向に大きくなるほど青色BLに近付く。
【0109】
図4が示すように、実施例1‐1の調光装置では、第1調光シートにおいて、駆動電圧が18Vであるときに、明度差ΔLが45.3であり、色座標差Δbが-23.0であることが認められた。また、第1調光シートにおいて、駆動電圧が12Vであるときに色座標aが極大値を有し、かつ、駆動電圧が18Vであるときに色座標bが極大値を有することが認められた。また、駆動電圧が0Vであるときの明度差ΔLが91.5である一方で、色座標差Δaが-1.0であり、かつ、色座標差Δbが2.7であることが認められた。
【0110】
これに対して図5が示すように、比較例1‐1の調光装置では、第1調光シートが、明度差ΔLが20以上であり、かつ、色座標差Δaが15以上であること、あるいは、色座標差Δbが20以上であることを満たす駆動電圧を有しないことが認められた。
【0111】
また、図6が示すように、比較例1‐2の調光装置では、第1調光シートが、明度差ΔLが20以上であり、かつ、色座標差Δaが15以上であること、あるいは、色座標差Δbが20以上であることを満たす駆動電圧を有しないことが認められた。
【0112】
図7が示すように、実施例2‐1の調光装置では、第2調光シートにおいて、駆動電圧が12Vであるときに、明度差ΔLが44.7であり、色座標差Δaが16.4であることが認められた。また、第2調光シートにおいて、駆動電圧が24Vであるときに、明度差ΔLが45.9であり、色座標差Δbが31.2であり、駆動電圧が48Vであるときに、明度差ΔLが45.2であり、色座標差Δbが32.7であることが認められた。
【0113】
図8が示すように、実施例2‐2の調光装置では、第2調光シートにおいて、駆動電圧が48Vであるときに、明度差ΔLが24.0であり、色座標差Δbが-25.3であることが認められた。また、第2調光シートにおいて、駆動電圧が100Vであるときに、明度差ΔLが26.5であり、色座標差Δbが-28.7であることが認められた。
【0114】
図9が示すように、実施例2‐3の調光装置では、第2調光シートにおいて、駆動電圧が48Vであるときに、明度差ΔLが33.2であり、色座標差Δbが-31.5であることが認められた。また、第2調光シートにおいて、駆動電圧が100Vであるときに、明度差ΔLが41.8であり、色座標差Δbが-37.5であり、駆動電圧が135Vであるときに、明度差ΔLが43.0であり、色座標差Δbが-28.0であることが認められた。
【0115】
図10が示すように、比較例2‐1の調光装置では、第2調光シートが、明度差ΔLが20以上であり、かつ、色座標差Δaが15以上であること、あるいは、色座標差Δbが20以上であることを満たす駆動電圧を有しないことが認められた。
【0116】
以上説明したように、調光装置の一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)第1調光シート11Nに対して第3電圧VN3を印加することによって、第2電圧VN2を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧VN2を印加したときとは異なる色を第1調光シート11Nが呈することが可能である。
【0117】
(2)第1調光シート11Nに第2電圧VN2を印加した際に、第1電圧VN1を印加した際に比べて第1調光シート11Nを明るくしながらも、第1調光シート11Nが、第1電圧VN1が印加されたときに第1調光シート11Nが呈する色に対してずれの小さい色を呈することが可能である。
【0118】
(3)各色座標a,bが極大値を呈する電圧を第1調光シート11Nに印加することによって、いずれかの色座標a,bにおいて、第1調光シート11Nが呈する色を第1電圧VN1または第2電圧VN2が第1調光シート11Nに印加されたときに第1調光シート11Nが呈する色に対するずれを最も大きくすることが可能である。
【0119】
(4)第2調光シート11Rに対して第3電圧VR3を印加することによって、第2電圧VR2を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧VR2を印加したときとは異なる色を第2調光シート11Rが呈することが可能である。
【0120】
(5)第2調光シート11Rに第3電圧VR3が印加された際に、第2調光シート11Rに第2電圧VR2を印加されたときとはより顕著に異なる色を第2調光シート11Rが呈することが可能である。
【0121】
(6)第2調光シート11Rが、第2調光シート11Rに第2電圧VR2が印加されたときと第3電圧VR3が印加されたときとの両方において、第1電圧VR1が印加されたときとは異なる色を呈することが可能である。
【0122】
なお、上述した実施形態は、以下のように変更して実施することができる。
[制御部]
・調光装置は、調光シート11N,11Rの明度差ΔLおよび色座標差Δa,Δbを複数の階調で変更する制御部をさらに備えることも可能である。制御部は、調光装置10N,10Rが備える駆動部12の駆動を制御する。制御部は、例えば、互いに異なる明度差ΔLを駆動電圧に変換するためのテーブルなどの情報を備えてよい。制御部は、外部の操作機器などから指定される明度差ΔLに対応づけられた駆動電圧を駆動部に印加させる。
【0123】
あるいは、制御部は、互いに異なる色座標差Δaを駆動電圧に変換するためのテーブルなどの情報を備え、外部の操作機器などから指定される色座標差Δaに対応付けられた駆動電圧を駆動部に印加させる。あるいは、制御部は、互いに異なる色座標差Δbを駆動電圧に変換するためのテーブルなどの情報を備え、外部の操作機器などから指定される色座標差Δbに対応付けられた駆動電圧を駆動部に印加させる。
【0124】
これらの制御部を備える調光装置によれば、調光装置10N,10Rの使用者が所望とする調光シート11N,11Rの明度差ΔL、あるいは、色座標差Δa,Δbに応じて、調光シート11N,11Rが呈する外観を制御することが可能である。
【0125】
[付記]
上述した実施形態および変更例から導き出される技術的思想を以下に付記する。
[付記1]
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層を備え、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間の電位差がゼロである第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、
第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが10%未満であり、
前記第2電圧の印加時と、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさである第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、
前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である
調光シート。
【0126】
[付記2]
第1透明電極層と、
第2透明電極層と、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間に位置し、複数の空隙を含む透明高分子層と、前記空隙内に充填された液晶組成物と、を含む調光層と、
前記第1透明電極層と前記調光層との間に位置する第1配向層と、
前記第2透明電極層と前記調光層との間に位置する第2配向層と、を備え、
第1電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが80%以上であり、前記第1電圧は、前記調光シートのヘイズが80%以上となる電圧値における最小値であり、
前記第1透明電極層と前記第2透明電極層との間の電位差がゼロである第2電圧を印加したときの前記調光シートのヘイズが15%以下であり、
前記第2電圧の印加時と、前記第1電圧と前記第2電圧との間の大きさである第3電圧の印加時とにおける明度指数Lの差分値が20以上であり、
前記第2電圧の印加時と前記第3電圧の印加時とにおける色座標aの差分値が15以上、または、色座標bの差分値が20以上である
調光シート。
【0127】
付記1,2の調光シートによれば、調光シートに対して第3電圧を印加することによって、第2電圧を印加したときよりも暗く、かつ、色座標aまたは色座標bにおいて第2電圧を印加したときとは異なる色を調光シートが呈することが可能である。
【符号の説明】
【0128】
10N…第1調光装置
10R…第2調光装置
11N…第1調光シート
11R…第2調光シート
21…第1透明電極層
22…第2透明電極層
23…調光層
27…第1配向層
28…第2配向層
図1
図2
図3
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図8
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図10