(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157313
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067135
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角▲崎▼ 正太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA15
2C056EC22
2C056EC57
2C056FA10
2C056JA02
2C056JA04
2C056JA08
2C056JA13
2C056JA17
(57)【要約】
【課題】用途に応じてノズル面を適切に覆うことのできるキャップを備えた液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、弾性部材で形成された第1キャップと、弾性部材で形成され、前記第1キャップよりも硬度が低い第2キャップと、前記第1キャップ又は前記第2キャップと、前記ノズル面との間に形成される空間内を吸引する吸引ユニットと、前記第1キャップ及び前記第2キャップを搭載して回転する回転体と、前記回転体を回転させることにより、前記第1キャップが前記ノズル面と対向する第1状態と、前記第2キャップが前記ノズル面と対向する第2状態とを切り替える回転制御部と、を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、
弾性部材で形成された第1キャップと、
弾性部材で形成され、前記第1キャップよりも硬度が低い第2キャップと、
前記第1キャップ又は前記第2キャップと、前記ノズル面との間に形成される空間内を吸引する吸引ユニットと、
前記第1キャップ及び前記第2キャップを搭載して回転する回転体と、
前記回転体を回転させることにより、前記第1キャップが前記ノズル面と対向する第1状態と、前記第2キャップが前記ノズル面と対向する第2状態とを切り替える回転制御部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記第1状態であるときは、前記空間内を第1吸引力で前記吸引ユニットに吸引させ、
前記第2状態であるときは、前記空間内を前記第1吸引力よりも低い第2吸引力で前記吸引ユニットに吸引させる吸引制御部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記第1状態であるときに、前記第2キャップ内の液体を受け、
前記第2状態であるときに、前記第1キャップ内の液体を受ける液体受け部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記第1キャップは、前記第2キャップに対して、前記回転体の回転軸まわりに180度回転した位置に設けられていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記吸引ユニットは、
吸引ポンプと、
前記吸引ポンプに接続された第1チューブと、
前記第1チューブから分岐して、前記第1キャップに接続された第2チューブと、
前記第1チューブから分岐して、前記第2キャップに接続された第3チューブと、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記液体吐出装置の待機中は、前記第2状態であり、前記第2キャップが前記ノズル面に密着していることを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、キャリッジの移動方向である主走査方向と直交する副走査方向に、第1記録ヘッドと第2記録ヘッドをずらして配置した画像形成装置が記載されている。さらに、記録ヘッドの維持回復機構を副走査方向に移動可能とし、第1記録ヘッドと第2記録ヘッドに対して共通の維持回復機構(ワイパ部材や空吐出受け)を使用することで、部品点数及びスペースの削減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、維持回復機構として、記録ヘッドのノズル面を吸引キャップでキャッピングして吸引する機構が記載されている。ゴム等の弾性部材で形成されたキャップ(吸引キャップ)はノズル面に密着するので、キャップとノズル面との間に形成される空間が負圧となる。よって、ノズルから増粘した液体やゴミ等の異物が吸引排出され、ノズルの目詰まりを解消できる。
【0005】
但し、弾性部材で形成されたキャップの硬度が高いと、吸引時に変形し難いが、ノズル面への密着性が低い。そのため、例えば、弱い吸引力で吸引した場合に、キャップとノズル面との間に形成される空間が負圧になり難いという問題がある。一方、キャップの硬度が低いと、ノズル面への密着性は高いが、吸引時に変形しやすい。そのため、例えば、強い吸引力で吸引した場合に、キャップが変形してしまい、適切に吸引動作を行えないおそれがある。
【0006】
本発明は、用途に応じてノズル面を適切に覆うことのできるキャップを備えた液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、液体を吐出するノズル面を備えるヘッドと、弾性部材で形成された第1キャップと、弾性部材で形成され、前記第1キャップよりも硬度が低い第2キャップと、前記第1キャップ又は前記第2キャップと、前記ノズル面との間に形成される空間内を吸引する吸引ユニットと、前記第1キャップ及び前記第2キャップを搭載して回転する回転体と、前記回転体を回転させることにより、前記第1キャップが前記ノズル面と対向する第1状態と、前記第2キャップが前記ノズル面と対向する第2状態とを切り替える回転制御部と、を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、用途に応じてノズル面を適切に覆うことのできるキャップを備えた液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】
図3Aは、吸収材54及び抑制部材55を外した状態のキャップユニット50A,50Bの斜視図であり、
図3Bは、抑制部材55の固定方法の説明図である。
【
図4】キャップユニット50A,50Bの分解説明図である。
【
図6】
図6Aは、第1状態を説明する模式図であり、
図6Bは、第2状態を説明する模式図である。
【
図8】
図8Aは、ヘッド41の配置の変形例の説明図であり、
図8Bは、回転ユニット90の変形例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
===実施形態===
<<液体吐出装置1の基本構成>>
図1は、液体吐出装置1の外観の概略説明図である。
【0012】
以下の説明では、キャリッジ21の移動方向を「走査方向」と呼ぶことがある。また、媒体Mの移動方向を「搬送方向」と呼び、媒体Mの供給側を「上流(上流側)」と呼び、媒体Mの排出側を「下流(下流側)」と呼ぶことがある。ヘッド41のノズル面42(
図2B参照)に垂直な方向を「上下方向」と呼び、媒体Mから見てヘッド41の側を「上」と呼び、逆側を「下」と呼ぶことがある。なお、上下方向は、走査方向及び搬送方向に垂直な方向になる。
【0013】
液体吐出装置1は、媒体Mに液体を吐出する装置である。ここでは、液体吐出装置1は、媒体Mに画像を印刷する装置(インクジェットプリンタ)である。但し、液体吐出装置1は、ヘッド41から液体を吐出する装置であれば、媒体Mに画像を印刷する装置でなくても良い。液体吐出装置1は、キャリッジユニット20と、搬送ユニット30と、ヘッドユニット40と、キャップ機構50と、吸引ユニット60と、回転ユニット70と、制御部80を有する。
【0014】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21を走査方向に移動させるユニットである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジ21を走査方向に移動させるためのモーター(不図示)とを有する。キャリッジ21は、走査方向に往復移動する部材であり、ヘッド41(後述)を搭載する。走査方向の移動範囲の端部にキャリッジ21を移動させて、キャリッジ21を待機させることがある。キャリッジ21を待機させる位置のことを「ホームポジション」と呼ぶことがある。ホームポジションには、キャップ機構50と、吸引ユニット60と、回転ユニット70と、制御部80が配置されている。
【0015】
搬送ユニット30は、媒体Mを搬送方向に搬送するユニットである。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。搬送ユニット30は、例えば搬送ローラー31と、搬送ローラー31を駆動するモーター(不図示)とを有する。搬送ローラー31は、回転することによって媒体Mを搬送方向に搬送する部材である。なお、搬送ユニット30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、搬送ユニット30は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを搬送方向に搬送するように構成されても良い。
【0016】
図2A及び
図2Bは、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
ヘッドユニット40は、媒体Mに液体を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ここでは、ヘッドユニット40は1つのヘッド41を有するが、複数のヘッド41を有しても良い。ヘッド41は、液体を吐出する複数のノズル45を有する。液体は、ここではインクである。インクは、画像を構成するドットを媒体Mに形成するための液体である。但し、ヘッド41から吐出する液体は、インクに限られるものではなく、例えば処理液でも良い。ヘッド41は、複数のノズル列44を有する。複数のノズル列44は、走査方向に並んで配置されている。それぞれのノズル列44は、搬送方向に並ぶ複数のノズル45によって構成されている。ノズル45は、ヘッド41のノズル面42(下面)で開口しており、その開口から液体が吐出される。
【0017】
ヘッド41は、キャリッジ21の下面に配置されている。キャリッジ21が走査方向に移動することによって、ヘッド41も走査方向に移動する。キャリッジ21をホームポジションに移動させると、キャップ機構50によってヘッド41をキャッピングすることができる(
図2B参照)。
【0018】
印刷動作時には、ヘッド41がキャリッジ21によって走査方向に移動しながら液体を吐出する動作と、搬送ユニット30が媒体Mを搬送方向に搬送する動作とが繰り返される。これにより、媒体Mに画像が印刷される。
【0019】
<<キャップ機構50と周辺要素の構成>>
図3Aは、吸収材54及び抑制部材55を外した状態のキャップユニット50A,50Bの斜視図である。
図3Bは、抑制部材55の固定方法の説明図である。
図4は、キャップユニット50A,50Bの分解説明図である。
図5は、回転ユニット70の概略斜視図である。
図6Aは、第1状態を説明する模式図であり、
図6Bは、第2状態を説明する模式図である。
【0020】
(キャップ機構50)
キャップ機構50は、ホームポジションに配置されている(
図1参照)。キャップ機構50は、ヘッド41のノズル面42を覆うキャップユニット50A,50Bと、キャップユニット50A,50Bを上下方向に移動させるキャップ移動機構(不図示)を有する。
【0021】
キャップユニット50A,50Bは、1つのヘッド41に対して2つずつ設けられている。各ヘッド41に対応付けられる2つのキャップユニット50A,50Bを「第1キャップユニット50A」及び「第2キャップユニット50B」とも称す。以下では、説明の簡略化の為に、液体吐出装置1が備えるヘッド41の数が1つである場合を例示する。
【0022】
第1キャップユニット50Aは、高硬度キャップ51A(第1キャップ)と、吸収材54と、抑制部材55と、ベース52と、バネ53と、ケース56を有する。第2キャップユニット50Bは、第1キャップユニット50Aの高硬度キャップ51Aよりも硬度が低い低硬度キャップ51Bと、吸収材54と、抑制部材55と、ベース52と、バネ53と、ケース56を有する。
【0023】
第2キャップユニット50Bは、第1キャップユニット50Aの高硬度キャップ51Aの代わりに低硬度キャップ51Bを有し、それ以外の部品は、第1キャップユニット50Aが有する部品と共通である。また、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bの違いは硬度であり、形状は同じである。そのため、
図3Aや
図4を、第1キャップユニット50Aと第2キャップユニット50Bの共通の図面として使用する。また、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bを単にキャップ51A,51Bと呼ぶことがある。
【0024】
キャップ51A,51Bは、ヘッド41のノズル面42に密着して、ノズル面42を覆う部材である。キャップ51A,51Bは、底部511と、壁部512と、収容部513を有し、上方に開口した凹形状を成す。そのため、キャップ51A,51Bがノズル面42を覆う時に、キャップ51A,51Bがノズル45に接触することを抑制する。また、キャップ51A,51Bは、ゴムやエラストマー等の弾性部材で形成されており、ノズル面42に密着し易くなっている。
【0025】
底部511は、矩形状の板状の部位であり、上下方向に垂直な板状の部位である。また、底部511は、吸引穴511Aと、複数の挿通穴511Bを有する。吸引穴511Aは、吸引ポンプPに接続されたチューブ(後述)に連通する貫通孔である。挿通穴511Bは、ベース52の突起521B(後述)を挿通させる貫通孔である。挿通穴511Bは、パッキン514を収容可能な凹部を有する。パッキン514は、挿通穴511Bと突起521Bとの間の隙間を塞ぐ部材である。但し、パッキン514が設けられなくても良い
【0026】
壁部512は、キャップ51A,51Bの側面を構成し、底部511の周縁から立ち上がる壁状の部位である。壁部512は、上下方向に略平行に構成されている。壁部512の上縁は、ヘッド41のノズル面42に接触する接触部となる。キャップ51A,51Bがノズル面42を覆う時にヘッド41のノズル列44を囲繞するように、壁部512の上縁がヘッド41のノズル面42に接触する。
【0027】
収容部513は、底部511及び壁部512によって構成された空間であり、吸収材54及び抑制部材55が収容される。収容部513に収容された吸収材54及び抑制部材55よりも、壁部512は上側に突出する。これにより、キャップ51A,51Bがノズル面42を覆う時に抑制部材55(及び突起521B)がヘッド41のノズル面42に接触することを抑制する。
【0028】
吸収材54は、液体を吸収する部材である。吸収材54は、上下方向に垂直な板状の部材であり、ベース52の突起521Bを挿通させる挿通穴54Aを有する。吸収材54としては、多孔質焼結体で構成された部材や、スポンジのような発泡体で構成された多孔質体等を例示できる。
【0029】
抑制部材55は、吸収材54を抑える部材であり、吸収材54よりも上になるように、キャップ51A,51Bの収容部513に収容される。抑制部材55は、上下方向に垂直な部材であり、ベース52の突起521Bを挿通させる挿通穴55Aを有する。抑制部材55としては金網を例示するが、材質や形状等は特に限定されるものではない。
【0030】
ベース52は、キャップ51A,51Bを保持する部材である。ベース52は、キャップ51A,51Bよりも硬質な材質で構成されており、ここでは樹脂製である。ベース52は、キャップ収容部521を有する。キャップ収容部521は、キャップ51A,51Bを収容する凹状の部位である。
【0031】
ベース52の底部には、吸引穴521Aが設けられている。吸引穴521Aは、キャップ51A,51Bの吸引穴511Aに挿入される部位であり、吸引ポンプPに接続されたチューブに連通する貫通孔である。
【0032】
また、ベース52の底部には、上方に向かって突出する突起521Bが複数設けられている。突起521Bは、キャップ51A,51B、吸収材54及び抑制部材55に挿通される。そして、
図3Bに示すように、突起521Bの端部は抑制部材55よりも上側に突出し、その突出した突起521Bの端部が熱カシメされることによって、抑制部材55がベース52に固定される。その結果、吸収材54の位置ずれを抑制できる。
【0033】
ケース56は、ベース52を保持する部材であり、上ケース56Aと、下ケース56Bとを有する。下ケース56Bの内部空間にバネ53が収容されている。バネ53は、ベース52に圧縮されており、ベース52を上側に押圧する部材である。上ケース56Aによって、ベース52の上抜けを防止できる。また、キャップ51A,51Bがノズル面42を覆う時、キャップ移動機構によってキャップユニット50A,50Bを上方に移動させると共に、バネ53の押圧力によって、キャップ51A,51Bがノズル面42に密着する。
【0034】
下ケース56Bにも、吸引流路56B1が設けられている。吸引流路56B1は、ベース52の吸引穴521Aに挿入される部位であり、吸引ポンプPに接続されたチューブに連通する流路である。
【0035】
(吸引ユニット60)
吸引ユニット60は、ホームポジションに配置されている。吸引ユニット60は、キャップ51A,51Bと、ヘッド41のノズル面42との間に形成される空間内(収容部513内)を吸引して負圧にするためのユニットである。
図6A等に示すように、吸引ユニット60は、吸引ポンプPと、第1チューブ61と、第2チューブ62と、第3チューブ63と、廃液タンク64と、第1開閉バルブ651と、第2開閉バルブ652と、を有する。
【0036】
吸引ポンプPとしては、チューブポンプを例示できるが、特に限定されるものではない。また、第1チューブ61、第2チューブ62、及び、第3チューブ63は、吸引ポンプPによって吸引されたインク等の流路を形成する部材である。第1チューブ61、第2チューブ62、及び、第3チューブ63を構成する材質としては、可撓性を有する材質であることが好ましいが、特に限定されるものではない。
【0037】
第1チューブ61の一端は、吸引ポンプPの吸引口に接続されている。第1チューブ61の他端は、第2チューブ62、及び、第3チューブ63に接続されている。すなわち、第1チューブ61の流路から、第2チューブ62の流路と第3チューブ63の流路に分岐している。
【0038】
第2チューブ62は、第1キャップユニット50Aに接続されている。詳しくは、第2チューブ62は、第1キャップユニット50Aの下ケース56Bの吸引流路56B1に直接又は他の部材を介して接続され(
図4参照)、その吸引流路56B1は、ベース52の吸引穴521Aに接続され、そのベース52の吸引穴521Aは、高硬度キャップ51Aの吸引穴511Aに接続されている。
【0039】
つまり、第2チューブ62は、第1キャップユニット50Aの下ケース56B等を介して、間接的に、高硬度キャップ51Aに接続されている。ゆえに、吸引ポンプPが作動すると、高硬度キャップ51Aとノズル面42との間に形成される空間を負圧にすることができる。
【0040】
同様に、第3チューブ63は、第2キャップユニット50Bに接続されている。詳しくは、第3チューブ63は、第2キャップユニット50Bの下ケース56Bの吸引流路56B1に直接又は他の部材を介して接続され、その吸引流路56B1は、ベース52の吸引穴521Aに接続され、そのベース52の吸引穴521Aは、低硬度キャップ51Bの吸引穴511Aに接続されている。
【0041】
つまり、第3チューブ63は、第2キャップユニット50Bの下ケース56B等を介して、間接的に、低硬度キャップ51Bに接続されている。ゆえに、吸引ポンプPが作動すると、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間に形成される空間を負圧にすることができる。
【0042】
なお、
図3A及び
図4に例示するキャップユニット50A,50Bの構成は一例であり、これに限定されるものではない。例えば、第2チューブ62が直接的に高硬度キャップ51Aに接続されていたり、第3チューブ63が直接的に低硬度キャップ51Bに接続されていたりしてもよい。
【0043】
第1開閉バルブ651は、第2チューブ62の途中に設けられ、第2チューブ62の流路を開閉する。第1開閉バルブ651によって、高硬度キャップ51Aに連通する流路の吸引を制御(オン・オフ)できる。第2開閉バルブ652は、第3チューブ63の途中に設けられ、第3チューブ63の流路を開閉する。第2開閉バルブ652によって、低硬度キャップ51Bに連通する流路の吸引を制御(オン・オフ)できる。
【0044】
廃液タンク64は、吸引ポンプPの排出口側に設けられている。吸引ポンプPによって吸引されたインク等が廃液タンク64に貯留される。
【0045】
(回転ユニット70)
回転ユニット70は、ホームポジションに配置されている。回転ユニット70は、高硬度キャップ51Aを有する第1キャップユニット50A、及び、低硬度キャップ51Bを有する第2キャップユニット50Bを回転させるためのユニットである。
図5や
図6A等に示すように、回転ユニット70は、回転体71,72と、モーターMと、液体受け部73とを有する。回転体71,72は、モーターMの駆動によって回転し、筐体71と、回転軸72とを有する。
【0046】
筐体71は、一対の水平部711,712と、一対の側面部713,714とを有し、中空直方体形状の部材である。一対の水平部711,712は、上下方向に垂直な板状の部位であり、上下方向に間隔を空けて対向配置されている。一対の側面部713,714は、上下方向に沿う板状の部位であり、走査方向に間隔を空けて対向配置されている。
【0047】
一対の水平部のうち一方の水平部711には、第1キャップユニット50Aを嵌め込むために、上下方向に貫通した貫通孔711Aが設けられている。他方の水平部712には、第2キャップユニット50Bを嵌め込むために、上下方向に貫通した貫通孔712Aが設けられている。つまり、第1キャップユニット50A、及び、第2キャップユニット50Bは、180度反転した位置に設けられている。また、高硬度キャップ51A及び低硬度キャップ51Bが、上下方向の外側に露出し、かつ、筐体71よりも上下方向の外側に突出するように、第1キャップユニット50A及び第2キャップユニット50Bは筐体71に固定されて配置されている。
【0048】
一対の側面部713,714には、走査方向に貫通する回転軸72を挿通するための貫通孔713A,714Aが設けられている。また、一対の側面部のうち一方の側面部713には、第2チューブ62及び第3チューブ63を挿通するための貫通孔713Bが設けられている。
【0049】
回転軸72は、モーターMによって、走査方向を軸方向として回転する部材である。回転軸72は、モーターMとの間の不図示のギアを介して回転してもよい。筐体71は、回転軸72に固定されて配置されており、回転軸72と共に回転する。筐体71の回転によって、第1キャップユニット50A、及び、第2キャップユニット50Bも、走査方向を軸方向として回転する。なお、キャップユニット50A,50Bを上下方向に移動するキャップ移動機構(不図示)も筐体71や回転軸52に固定されて配置され、回転軸72と共に回転する構成であってもよい。
【0050】
回転体71,72を回転させることにより、
図5や
図6Aに示すように、高硬度キャップ51Aがノズル面42と対向する第1状態と、
図6Bに示すように、低硬度キャップ51Bがノズル面42と対向する第2状態とを、切り替えることができる。つまり、ヘッド41は、高硬度キャップ51Aとの間に負圧空間を形成することもでき、かつ、低硬度キャップ51Bとの間に負圧空間を形成することもできる。
【0051】
なお、本実施形態では、筐体71及び回転軸72(回転体)が走査方向を軸方向として回転する構成を例示したが、筐体71及び回転軸72が搬送方向を軸方向として回転する構成であってもよい。また、上記に説明した回転体71,72の形状等は一例であり、回転体は高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bを搭載して回転できるものであれば、その形状等は特に限定されるものではない。
【0052】
液体受け部73は、筐体71よりも下方に設けられ、ノズル面42と対向していない方のキャップ51A,51Bと対向する位置に設けられている。液体受け部73は、ノズル面42と対向していない方のキャップ51A,51Bから流れるインク等を受けられる部材であればよく、配置位置や形状や材質等は特に限定されるものではない。図示するようにキャップ51A,51Bから離間して配置されたトレイ状のものであってもよいし、キャップ51A,51Bに密着するものであってもよい。
【0053】
<<吸引動作と待機動作>>
図7は、吸引動作及び待機動作を示すフローである。
ノズル45から適切な量のインクが吐出されない吐出不良(目詰まり)が生じることがある。吐出不良が生じる原因としては、例えば、ノズル45から露出するインク面が乾燥していたり、ノズル45やその付近にゴミ等の異物が付着していたり、ノズル45に連通するインク貯留室に気泡や増粘インク等の異物が混入していたりすることが原因として考えられる。以下、吐出不良が発生しているノズル45を不良ノズルとも称す。
【0054】
液体吐出装置1は吸引動作を行うことによって、不良ノズルを回復させることができる。吸引動作とは、ノズル面42にキャップ51A,51Bを密着させた状態で吸引し、ノズル45やその付近の異物を強制的にキャップ51A,51Bに吐き出させる動作である。また、液体吐出装置1は、印刷動作を実行しない待機中において、待機動作を行う。待機動作とは、ノズル面42にキャップ51A,51Bを密着させた状態(キャッピングした状態)で待機する動作である。これにより、ノズル面42への異物の付着や、ノズル45内のインクの乾燥等を抑えることができ、不良ノズルの発生を抑制できる。
【0055】
また、液体吐出装置1は制御部80(
図1参照)を備える。制御部80は、液体吐出装置1が備える各部の動作を制御する装置であり、印刷動作に加えて、吸引動作や待機動作も制御する。
【0056】
制御部80の構成は特に限定されないが、マイクロコンピューター等を例示できる。例えば、制御部80は、液体吐出装置1と通信可能に接続された外部のコンピューターから印刷データ等を受信するインターフェイスや、制御プログラムの命令を実行するCPUや、ROMやRAM等を備える。
【0057】
以下、吸引動作と待機動作について説明する。まず、制御部80は、ユーザーや外部のコンピューター(プリンタードライバー)から吸引動作の指示を受け付けたり、吸引動作を実行するタイミングであると判断したりする(S01)。
【0058】
次に、制御部80は、高吸引動作を実行するか、或いは、低吸引動作を実行するかを判断する(S02)。高吸引動作とは、強い吸引力で、ノズル45やその付近の異物を吸引する動作である。低吸引動作とは、高吸引動作時よりも低い吸引力で、ノズル45やその付近の異物を吸引する動作である。
【0059】
例えば、ユーザーや外部のコンピューターは、実際に印刷した画像やノズル45の吐出不良検査に基づいて、不良ノズルの発生数が多い場合には、高吸引動作を指示でき、不良ノズルの発生数が少ない場合には、低吸引動作を指示できる。また、例えば、制御部80は、前回の印刷動作からの経過時間が長く、不良ノズルの発生確率が高い場合には、高吸引動作を実行すると判断でき、前回の印刷動作からの経過時間が短く、不良ノズルの発生確率が低い場合には、低吸引動作を実行すると判断できる。
【0060】
そして、制御部80は、高吸引動作を実行する場合、
図6Aに示すように、高硬度キャップ51Aがノズル面42と対向する第1状態にする。現在の状態が、
図6Bに示すように低硬度キャップ51Bがノズル面42と対向している場合、制御部80が有する回転制御部81は、モーターMを駆動し、回転軸72を回転させて、筐体71を180度回転させることで、第1状態にする。その後、キャップ移動機構(不図示)を用いて、第1キャップユニット50Aを上昇させて、高硬度キャップ51Aをノズル面42に密着させた状態にする(S03)。また、制御部80は、第1開閉バルブ651を開き、第2開閉バルブ652を閉じた状態とする。そうして、ノズル面42と密着している高硬度キャップ51Aに連通する流路内を吸引可能とし、ノズル面42と密着していない低硬度キャップ51Bに連通する流路内を吸引しないようにする。
【0061】
その後、制御部80が有する吸引制御部82は、高硬度キャップ51Aとノズル面42との間に形成される空間内を、強い吸引力(第1吸引力)で吸引するように、ポンプP(回転速度等)を制御する(S04)。そうすることで、高硬度キャップ51Aとノズル面42との間の空間に高い負圧が発生する。その結果、より多くの不良ノズルを回復させたり、不良度合の酷い不良ノズルを回復させたりすることができる。
【0062】
一方、制御部80は、低吸引動作を実行する場合、
図6Bに示すように、低硬度キャップ51Bがノズル面42と対向する第2状態にする。現在の状態が、
図6Aに示すように第1状態である場合、回転制御部81は、モーターMを駆動し、回転軸72を回転させて、筐体71を180度回転させることで、第2状態にする。その後、キャップ移動機構を用いて、第2キャップユニット50Bを上昇させて、低硬度キャップ51Bをノズル面42に密着させた状態にする(S05)。また、制御部80は、第2開閉バルブ652を開き、第1開閉バルブ651を閉じた状態とする。そうして、ノズル面42と密着している低硬度キャップ51Bに連通する流路内を吸引可能とし、ノズル面42と密着していない高硬度キャップ51Aに連通する流路を吸引しないようにする。
【0063】
その後、吸引制御部82は、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間に形成される空間内を、高吸引動作時よりも低い吸引力(第2吸引力)で吸引するように、ポンプPを制御する(S06)。そうすることで、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間の空間に低い負圧が発生する。その結果、不良ノズル45を回復させつつ、不要にインクを吸引してしまうことを防止できる。
【0064】
なお、制御部80は、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bを切り替えるために、回転体71,72を回転させる際に、前の回転動作にて回転させた方向と逆方向に回転体71,72を回転させるとよい。そうすることで、第2チューブ62と第3チューブ63が絡まり難くなる。或いは、第2チューブ62と第3チューブ63を、第1チューブ61に対して回転可能に接続するとよい。そうすることで、回転体71,72が回転しても、第2チューブ62と第3チューブ63が絡まり難くなる。
【0065】
また、回転体71,72を回転させる際に、筐体71がヘッド41と干渉してしまう場合、制御部80は、ヘッド41を走査方向に移動させてから回転体71,72を回転させたり、ヘッド41がホームポジションに移動してくる前に回転体71,72を回転させたりするように制御するとよい。
【0066】
上記のように吸引動作によって不良ノズルを回復させた後に、制御部80は、印刷動作を実行する(S07)。そうすることで、適切にインクを吐出可能なノズル45によって画像が印刷され、画像の画質劣化を抑制できる。
【0067】
制御部80は、印刷データが無くなるまで印刷動作を実行した後、待機動作を実行する(S08)。まず制御部80は、現在の状態が第1状態であるか、第2状態であるかを判断する。第1状態であるときは、回転制御部81が回転体71,72を回転させて、低硬度キャップ51Bがノズル面42と対向する第2状態にする。そして、制御部80は、キャップ移動機構を用いて、第2キャップユニット50Bを上昇させて、低硬度キャップ51Bをノズル面42に密着させて(キャッピングした状態で)待機する(S09)。
【0068】
<<変形例の回転ユニット90>>
図8Aは、ヘッド41の配置の変形例の説明図であり、
図8Bは、回転ユニット90の変形例の説明図である。
【0069】
液体吐出装置1は複数のヘッド41を備えていてもよい。その場合、
図8Bに示すように、各ヘッド41に対応するキャップユニット50A,50Bをまとめて1つの筐体91に搭載して回転させるとよい。具体的には、ヘッド41の配置(
図8A)に合わせて、キャップユニット50A,50Bを配置する。そうすることで、回転ユニット90の構成や回転制御部81による制御を簡素化できる。
【0070】
また、筐体91が有する一対の水平部のうち一方の水平部911に同じ種類のキャップユニット(例えば第1キャップユニット50A)を揃えて配置し、他方の水平部に別の同じ種類のキャップユニット(例えば第2キャップユニット50B)を揃えて配置するとよい。そうすることで、複数のヘッド41に対して同じ吸引動作を実行できる。
【0071】
しかし、上記に限らず、ヘッド41毎に、
図5に示す回転ユニット70を設けてキャップユニット50A,50Bを回転させてもよい。さらに、ヘッド41毎に吸引ポンプPを設けるとよい。そうすることで、ヘッド41毎に吸引動作を異ならせることができる。例えば、不良ノズルの数が多いヘッド41に対しては高吸引動作を実行でき、不良ノズルの数が少ないヘッド41に対しては低吸引動作を実行でき、吸引動作による不要なインク消費を抑えることができる。
【0072】
また、
図8Bに示すように、回転体である筐体91の搬送方向の長さと走査方向の長さが異なる場合、長い方の長さの方向を回転軸に沿う方向にするとよい。例えば、
図8Bの場合、走査方向を回転軸に沿う方向にするとよい。そうすることで、筐体91が回転する為に要する上下方向のスペースを小さくすることができ、筐体91が他の部材と干渉し難くなる。しかし、上記に限らず、筐体91の長さが短い方の方向(ここでは搬送方向)を回転軸に沿う方向にしてもよい。
【0073】
===小括===
態様1は、液体を吐出するノズル面42を備えるヘッド41と、弾性部材で形成された高硬度キャップ51A(第1キャップ)と、弾性部材で形成され、高硬度キャップ51Aよりも硬度が低い低硬度キャップ51B(第2キャップ)と、高硬度キャップ51A又は低硬度キャップ51Bと、ノズル面42との間に形成される空間内を吸引する吸引ユニット60と、高硬度キャップ51A及び低硬度キャップ51Bを搭載して回転する回転体71,72と、回転体71,72を回転させることにより、高硬度キャップ51Aがノズル面42と対向する第1状態と、低硬度キャップ51Bがノズル面42と対向する第2状態とを切り替える回転制御部82と、を有する液体吐出装置1である。
【0074】
高硬度キャップ51Aは、低硬度キャップ51Bに比べて、高い吸引力で吸引しても変形し難く、適切に吸引動作を行うことができる。一方、高硬度キャップ51Aは、低硬度キャップ51Bに比べて密着性は低下するが、高い吸引力で吸引動作を行うことで、ノズル面42との間に形成される空間内を強い負圧にでき、不良ノズルを解消できる。
逆に、低硬度キャップ51Bは、高硬度キャップ51Aに比べて変形しやすいが、低い吸引力で吸引動作を行うことで、低硬度キャップ51Bの変形を抑制できる。また、低硬度キャップ51Bは、高硬度キャップ51Aに比べて密着性が高いので、低い吸引力であっても、ノズル面42との間に形成される空間内をしっかりと負圧にでき、不良ノズルを解消できる。また、不要に高い吸引力で吸引動作を行わないことで、吸引動作によるインク消費を抑えることができる。
つまり、態様1の液体吐出装置1によれば、異なる吸引力に対して適切に吸引動作を行うことができる。
【0075】
その他、吸引動作時には、高硬度キャップ51Aを利用することで、高硬度キャップ51Aの変形を抑制できる。一方、待機動作時には、低硬度キャップ51Bを利用することで、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間の空間内の密閉性が高まり、インクの乾燥や異物の侵入による不良ノズルの発生を抑制できる。
【0076】
以上のように、液体吐出装置1が2種類の硬度のキャップ51A,51Bを備えることで、用途に応じたキャップ51A,51Bでノズル面42を適切に覆うことができる。
【0077】
また、吸引動作時のキャップ51A,51Bの変形としては、キャップ51A,51Bの内部が負圧となり、かつ、ノズル面42からキャップ51A,51Bが圧縮力を受けることで、キャップ51A,51Bの壁部512が上下方向に潰れる変形や、壁部512が内側に引き込まれるように撓む変形がある。このような変形により、キャップ51A,51Bの壁部512が上下方向に低くなると、キャップ51A,51Bとノズル面42との間の空間が負圧になり難くなる。さらに、キャップ51A,51Bの底部511に載置された抑制部材55や、抑制部材55を固定するベース52の突起部521B(熱カシメ)によって、ノズル面42を傷つけてしまうおそれがある。ゆえに、上記のように吸引動作時のキャップ51A,51Bの変形を抑制することで、ノズル面42の傷付きも抑制できる。
【0078】
また、態様1の液体吐出装置1では、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Aが回転軸72の回りに設けられ、回転によって入れ替わる。そのため、例えば高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bが平面方向に並んで設けられる場合に比べて、平面方向のスペースを削減でき、平面方向における装置の小型化を図ることができる。
【0079】
なお、キャップ51A,51Bの硬度の比較は、周知の方法で行うことができる。具体的には、JIS K6253のデュロメーター硬さ試験(タイプA)に準じて、各キャップ51A,51Bの硬度を測定でき、比較できる。
【0080】
上記の方法にて測定される高硬度キャップ51Aの硬度としては、80度程度を例示できる。この場合、例えば高硬度キャップ51Aとノズル面42との間の空間内が90kPaの負圧となる場合にも、高硬度キャップ51Aの変形を抑制できる。また、上記の方法にて測定される低硬度キャップ51Bの硬度としては、60度程度を例示できる。この場合、低硬度キャップ51Bがノズル面42にしっかりと密着できる。
【0081】
また、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bは硬度が異なればよく、同じ材質の弾性部材で形成されていてもよいし、異なる材質の弾性部材で形成されていてもよい。また、本実施形態では、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bの形状を同じにしているが、異なる形状であってもよい。また、弾性部材で形成されたキャップ51A,51Bとは、全てが弾性部材で形成されたものに限定されず、一部が別の部材で形成されたものも含まれる。但し、ノズル面42と密着するキャップ51A,51Bの壁部512(上端部)は少なくとも弾性部材で形成されるものとする。
【0082】
態様2は、第1状態であるときは、高硬度キャップ51Aとノズル面42との間に形成される空間内を高い吸引力(第1吸引力)で吸引ユニット60に吸引させ、第2状態であるときは、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間に形成される空間内を前記高い吸引力(第1吸引力)よりも低い吸引力(第2吸引力)で吸引ユニット60に吸引させる吸引制御部82を有する、態様1に記載の液体吐出装置1である。
【0083】
態様2の液体吐出装置1によれば、高硬度キャプ51Aに適した高吸引動作と、低硬度キャップ51Bに適した低吸引動作を実行できる。よって、不良ノズルの数や不良ノズルの不良度合い等に応じて、不良ノズルを確実に回復させつつ、不要にインク(液体)が消費されてしまうことを抑制できる。
【0084】
態様3は、第1状態(
図6A)であるときに、低硬度キャップ51B内の液体を受け、第2状態(
図6B)であるときに、高硬度キャプ51A内の液体を受ける液体受け部73を有する、態様1又は態様2に記載の液体吐出装置1である。
【0085】
高硬度キャプ51Aと低硬度キャップ51Bは回転によって入れ替わるので、使用していない方のキャップ51A,51Bは、水平面に対して傾いた状態となりやすい。そのため、使用していない方のキャップ51A,51Bから垂れるインクを液体受け部73で受けることで、装置内を汚してしまうことを防止できる。
【0086】
態様4は、高硬度キャプ51Aが、低硬度キャップ51Bに対して、回転体71,72の回転軸まわりに180度回転した位置に設けられている、態様1から態様3の何れかに記載の液体吐出装置1である。
【0087】
高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bが反転した位置に設けられることで、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bの間(ここでは上下方向)のスペースを確保しやすくなる。よって、キャップ51A,51Bの下方に設けられる部材(例えばケース56や不図示のキャップ移動機構)が干渉し難くなったり、第2チューブ62と第3チューブ63が絡み難くなったりする。
【0088】
ただし、上記に限定されず、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bが180度回転した位置よりも近い位置に設けられていてもよい。その場合、高硬度キャップ51Aと低硬度キャップ51Bを入れ替える際の回転体71,72の回転量(回転角度)小さくできる。
【0089】
態様5は、吸引ユニット60が、吸引ポンプPと、吸引ポンプPに接続された第1チューブ61と、第1チューブ61から分岐して、高硬度キャップ51Aに(直接に又は他の部材を介して間接的に)接続された第2チューブ62と、第1チューブ61から分岐して、低硬度キャップ51Bに(直接に又は他の部材を介して間接的に)接続された第3チューブ63と、を有する、態様1から態様4の何れかに記載の液体吐出装置1である。
【0090】
1つの吸引ポンプPで2つのキャップ51A,51Bの吸引動作を行うことで、それぞれのキャップ51A,51Bに吸引ポンプPが設けられる場合に比べて、省スペース化を図ることができる。
【0091】
ただし、上記に限定されず、各キャップ51A,51Bに吸引ポンプPが設けられていてもよい。その場合、例えば、第1開閉バルブ651や第2開閉バルブ652を省くことができる。
【0092】
態様6は、液体吐出装置1の待機中は、第2状態(
図6B)であり、低硬度キャップ51Bがノズル面42に密着している、態様1から態様5の何れかに記載の液体吐出装置1である。
【0093】
液体吐出装置1の待機中に、密着性の高い低硬度キャップ51Bでノズル面42を封じることで、低硬度キャップ51Bとノズル面42との間の空間内の密閉性が高まり、インクの乾燥や異物の侵入をより抑制できる。よって、不良ノズルの発生を抑制できる。
【0094】
ただし、上記に限定されず、液体吐出装置1の待機中に高硬度キャップ51Aをノズル面42に密着させてもよい。又は、待機動作の直前に、ノズル面42と対向している(上側に位置している)キャップ51A,51Bをノズル面42に密着させてもよい。その場合、待機動作の前に、キャップ51A,51Bの切り替えを行う必要がなくなる。
【0095】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
1 液体吐出装置、
20 キャリッジユニット、
30 搬送ユニット、
40 ヘッドユニット、
41 ヘッド、42 ノズル面、
44 ノズル列、45 ノズル、
50A 第1キャップユニット、
50B 第2キャップユニット、
51A 高硬度キャップ、
51B 低硬度キャップ、
52 ベース、53 バネ、
54 吸収材、55 抑制部材、
56 ケース、
60 吸引ユニット、
61 第1チューブ、62 第2チューブ、63 第3チューブ、
64 廃液タンク、
651 第1開閉バルブ、652 第2開閉バルブ、
70 回転ユニット、
71 筐体、72 回転軸、
73 液体受け部、
M モーター、
81 回転制御部、82 吸引制御部、