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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157326
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】液体吐出装置及びキャップユニット
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
B41J2/165 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067165
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角▲崎▼ 正太
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA21
2C056FA10
2C056JA09
2C056JA13
2C056JA17
(57)【要約】
【課題】キャップの壁部の変形を抑制すること。
【解決手段】本開示に係る液体吐出装置は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、キャップと、キャップを保持するベースと、キャップに収容される吸収材と、キャップに収容され吸収材の上面に配置される抑制部材とを備える。キャップは、挿通穴を有する底部と、前記底部の周縁を囲繞する壁部とを有し、前記壁部を前記ヘッドのノズル面に接触させて前記ノズル面を覆う。ベースは、前記キャップの前記挿通穴に挿通する突起を有する。キャップの挿通穴は、前記底部の外周部に設けられずに前記底部の中央部に設けられており、ベースの突起は、前記抑制部材の中央部に設けられた保持部を保持する先端部を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するノズルを有するヘッドと、
挿通穴を有する底部と、前記底部の周縁を囲繞する壁部とを有し、前記壁部を前記ヘッドのノズル面に接触させて前記ノズル面を覆うキャップと、
前記キャップを保持し、前記キャップの前記挿通穴に挿通する突起を有するベースと、
前記キャップに収容される吸収材と、
前記キャップに収容され、前記吸収材の上面に配置される抑制部材と、
を備え、
前記挿通穴は、前記底部の外周部に設けられずに前記底部の中央部に設けられており、
前記突起は、前記抑制部材の中央部に設けられた保持部を保持する先端部を有する、
液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記壁部の内壁面に、前記抑制部材の周縁を引っ掛ける引っ掛け部が設けられている、液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体吐出装置であって、
前記キャップが前記ノズル面を覆う状態で前記キャップの内部が負圧になった時に、前記底部の前記外周部が前記ノズル面に向かって変形する、液体吐出装置。
【請求項4】
底部と、前記底部の周縁を囲繞する壁部とを有し、前記壁部をヘッドのノズル面に接触させて前記ノズル面を覆うキャップと、
前記キャップを保持し、突起を有するベースと、
前記突起を挿通する挿通穴を有し、前記キャップの収容部に収容される吸収材と、
前記キャップの前記収容部に収容され、前記吸収材の上面に配置される抑制部材と、
を備え、
前記突起は、前記底部の外周部に設けられずに前記底部の中央部に設けられており、前記抑制部材の中央部に設けられた保持部を保持する先端部を有する、
キャップユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置及びキャップユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、インクを吐出するヘッドの下面をキャッピングするキャップユニットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-216913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャップがヘッドの下面をキャッピングした際に、キャップの内部空間を負圧にし、ノズルの吸引を行うことがある。但し、キャップの内部空間を負圧にしたときに、キャップの周縁の壁部が変形し、キャップ内の部材がノズル面に接触するおそれがある。
【0005】
本発明は、キャップの壁部の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、液体を吐出するノズルを有するヘッドと、挿通穴を有する底部と、前記底部の周縁を囲繞する壁部とを有し、前記壁部を前記ヘッドのノズル面に接触させて前記ノズル面を覆うキャップと、前記キャップを保持し、前記キャップの前記挿通穴に挿通する突起を有するベースと、前記キャップに収容される吸収材と、前記キャップに収容され、前記吸収材の上面に配置される抑制部材と、を備え、前記挿通穴は、前記底部の外周部に設けられずに前記底部の中央部に設けられており、前記突起は、前記抑制部材の中央部に設けられた保持部を保持する先端部を有する、液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、キャップの壁部の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、液体吐出装置1の外観の概略説明図である。
図2図2A及び図2Bは、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
図3図3は、キャップユニット50Aの斜視図である。
図4図4Aは、吸収材54及び抑制部材55を外した状態のキャップユニット50Aの斜視図である。図4Bは、抑制部材55の保持方法の説明図である。
図5図5は、キャップユニット50Aのバネ53の説明図である。
図6図6は、キャップユニット50Aの分解説明図である。
図7図7Aは、第1比較例のキャップユニット50Aの説明図である。図7Bは、第1比較例の抑制部材55の説明図である。
図8図8Aは、第1比較例のキャップ51の形状の説明図である。図8Bは、第2比較例のキャップ51の形状の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
===実施形態===
<基本構成>
図1は、液体吐出装置1の外観の概略説明図である。
【0011】
以下の説明では、キャリッジ21の移動方向を「走査方向」と呼ぶことがある。また、媒体Mの移動方向を「搬送方向」と呼び、媒体Mの供給側を「上流(上流側)」と呼び、媒体Mの排出側を「下流(下流側)」と呼ぶことがある。ヘッド41のノズル面42(図2B参照)に垂直な方向を「上下方向」と呼び、媒体Mから見てヘッド41の側を「上」と呼び、逆側を「下」と呼ぶことがある。なお、上下方向は、走査方向及び搬送方向に垂直な方向になる。
【0012】
液体吐出装置1は、媒体M(印刷用紙、印刷フィルムなど)に液体を吐出する装置である。ここでは、液体吐出装置1は、媒体Mに画像を印刷する装置(インクジェットプリンタ)である。但し、液体吐出装置1は、ヘッド41から液体を吐出する装置であれば、媒体Mに画像を印刷する装置でなくても良い。液体吐出装置1は、キャリッジユニット20と、搬送ユニット30と、ヘッドユニット40と、キャップ機構50とを有する。
【0013】
キャリッジユニット20は、キャリッジ21を走査方向に移動させるユニットである。キャリッジユニット20は、キャリッジ21と、キャリッジ21を走査方向に移動させるためのモーター(不図示)とを有する。キャリッジ21は、走査方向に往復移動する部材であり、ヘッド41(後述)を搭載する。走査方向の移動範囲の端部にキャリッジ21を移動させて、キャリッジ21を待機させることがある。キャリッジ21を待機させる位置のことを「ホームポジション」と呼ぶことがある。ホームポジションには、キャップ機構50が配置されている。
【0014】
搬送ユニット30は、媒体Mを搬送方向に搬送するユニットである。搬送対象となる媒体Mは、ロール紙のような長尺状の印刷媒体でも良いし、単票用紙でも良い。また、媒体Mは、紙に限られるものではなく、フィルムや布などでも良い。搬送ユニット30は、例えば搬送ローラー31と、搬送ローラー31を駆動するモーター(不図示)とを有する。搬送ローラー31は、回転することによって媒体Mを搬送方向に搬送する部材である。なお、搬送ユニット30は、搬送ローラー31を用いた構成に限られるものではない。例えば、搬送ユニット30は、搬送台(フラットベッド)を有し、この搬送台を移動させることによって媒体Mを搬送方向に搬送するように構成されても良い。
【0015】
図2A及び図2Bは、ヘッドユニット40の構成の説明図である。
【0016】
ヘッドユニット40は、媒体Mに液体を吐出するためのユニットである。ヘッドユニット40は、ヘッド41を有する。ここでは、ヘッドユニット40は1つのヘッド41を有するが、複数のヘッド41を有しても良い。ヘッド41は、液体を吐出する複数のノズル45を有する。液体は、ここではインクである。インクは、画像を構成するドットを媒体Mに形成するための液体である。但し、ヘッド41から吐出する液体は、インクに限られるものではなく、例えば処理液でも良い。ヘッド41は、複数のノズル列44を有する。複数のノズル列44は、走査方向に並んで配置されている。それぞれのノズル列44は、搬送方向に並ぶ複数のノズル45によって構成されている。ノズル45は、ヘッド41のノズル面42(下面)で開口しており、その開口から液体が吐出される。
【0017】
ヘッド41は、キャリッジ21の下面に配置されている。キャリッジ21が走査方向に移動することによって、ヘッド41も走査方向に移動する。キャリッジ21をホームポジションに移動させると、キャップ機構50によってヘッド41をキャッピングすることができる。
【0018】
キャップ機構50は、ヘッド41のノズル面42(下面)を覆うための機構である。ヘッド41のノズル面42を覆うことを「キャッピング」と呼ぶことがある。キャップ機構50は、ホームポジションに配置されている(図1参照)。キャップ機構50は、ヘッド41のノズル面42を覆うキャップユニット50A(後述;図3参照)と、キャップユニット50Aを上下方向に移動させるキャップ移動機構(不図示)と、キャップ51(図2Bの点線参照)の内部を負圧にするポンプ(不図示)とを有する。キャリッジ21がホームポジションに移動すると、キャップ移動機構(不図示)がキャップユニット50Aをヘッド41に接近させ、これにより、キャップユニット50Aがヘッド41のノズル面42を覆うことになる。
【0019】
図3は、キャップユニット50Aの斜視図である。図4Aは、吸収材54及び抑制部材55を外した状態のキャップユニット50Aの斜視図である。図4Bは、抑制部材55の保持方法の説明図である。図5は、キャップユニット50Aのバネ53の説明図である。図6は、キャップユニット50Aの分解説明図である。
【0020】
キャップユニット50Aは、キャップ51でヘッド41のノズル面42を覆うための構造体である。キャップユニット50Aは、キャップ51と、吸収材54と、抑制部材55と、ベース52と、バネ53と、ケース56と、を有する。
【0021】
キャップ51は、ヘッド41のノズル面42を覆う部材である。キャップ51がノズル面42を覆う時にキャップ51がノズル45に接触しないように、キャップ51は、凹状に構成されている。キャップ51は、ゴム製であり、変形可能である。キャップ51が柔軟なゴムで構成されることによって、キャップ51がノズル面42に密着し易くなる。キャップ51は、底部511と、壁部512とを有しており、底部511及び壁部512によって収容部513(収容空間)が構成される。
【0022】
底部511は、キャップ51の底を構成する部位である。底部511は、矩形状の板状の部位であり、上下方向に対して垂直な部位である。底部511は、キャップ51がノズル面42を覆う時にノズル面42に間隔をあけた状態でノズル面42に略平行に配置される。底部511は、吸収材54を支持する支持部としての機能も有する。底部511は、吸引穴511Aと、挿通穴511Bとを有する。吸引穴511Aは、キャップ51の内部空間を負圧にするためポンプ(不図示)に連通する貫通穴である。挿通穴511Bは、ベース52の突起521B(後述)を挿通させる貫通穴である。ここでは、挿通穴511Bは、底部511の中央(矩形状の底部511の対角線の交点の位置に相当)に配置されている。なお、挿通穴511Bの配置については後述する。挿通穴511Bは、パッキン514を収容可能な凹部を有する。パッキン514は、挿通穴511Bと突起521Bとの間の隙間を塞ぐ部材である。但し、パッキン514が設けられなくても良い
【0023】
壁部512は、キャップ51の側面を構成する部位である。壁部512は、矩形状の底部511の周縁から立ち上がる壁状の部位である。壁部512は、上下方向に略平行に構成されている。矩形状の底部511の周縁を囲繞するように壁部512が構成されることによって、凹状のキャップ51が構成されるとともに、収容部513(収容空間)が構成される。壁部512の上縁は、ヘッド41のノズル面42に接触する接触部となる。キャップ51がノズル面42を覆う時にヘッド41のノズル列44を囲繞するように、壁部512の上縁がヘッド41のノズル面42に接触する。
【0024】
壁部512は、引っ掛け部512Aを有する(図3の拡大図参照)。引っ掛け部512Aは、壁部512の内壁面から内側に突出した爪状の部位である。引っ掛け部512Aは、抑制部材55を引っ掛ける部位である。壁部512が引っ掛け部512Aを有することにより、抑制部材55が外れることを抑制できる。
【0025】
収容部513は、吸収材54及び抑制部材55を収容する部位である。底部511及び壁部512によって構成された空間(キャップ51の内部空間)に吸収材54及び抑制部材55が収容される。図4A及び図4Bに示すように、抑制部材55が吸収材54よりも上になるように、吸収材54及び抑制部材55が収容部513に収容される。なお、図2に示すように、収容部513に吸収材54及び抑制部材55が収容された時、壁部512は、抑制部材55よりも上側に突出する。これにより、キャップ51がノズル面42を覆う時に抑制部材55(及び突起521B)がヘッド41のノズル面42に接触することを抑制する。
【0026】
吸収材54は、液体を吸収する部材である。吸収材54は、上下方向に垂直な板状の部材である。ここでは、吸収材54は、多孔質焼結体で構成された部材である。但し、吸収材54は、多孔質焼結体に限られるものではなく、例えばスポンジのような発泡体で構成された多孔質体でも良い。吸収材54は、ベース52の突起521B(後述)を挿通させる挿通穴54Aを有する。ここでは、挿通穴54Aは、吸収材54の中央に配置されている。
【0027】
抑制部材55は、吸収材54を抑える部材である。抑制部材55は、吸収材54の上面に配置されている。抑制部材55は、上下方向に垂直な部材である。ここでは、抑制部材55は、金網で構成されている。但し、抑制部材55は、金属製でなくても良いし、網状の部材でなくても良い。
【0028】
抑制部材55は、保持部551と、枠部552と、リブ553とを有する。
【0029】
保持部551は、ベース52(詳しくは突起521Bの先端部)に保持される部位である。保持部551は、抑制部材55の中央に配置されている。ここでは、保持部551は、ベース52の突起521B(後述)を挿通させる挿通穴551Aを有する。図4Bに示すように、保持部551の挿通穴551Aに挿通した突起521Bの先端部を熱カシメすることによって、抑制部材55が突起521Bの先端部に拘束され、抑制部材55がベース52に保持され、抑制部材55が外れることが抑制される。但し、保持部551は、挿通穴551Aを有する形態に限られるものではなく、突起521Bに保持される形態であれば良い(例えば、後述するように、保持部551がピンを有しても良い)。
【0030】
枠部552は、抑制部材55の周縁を構成する部位である。枠部552は、矩形状の抑制部材55の4辺の周縁を構成する。抑制部材55をキャップ51の収容部513に収容すると、枠部552は、キャップ51の壁部512の内壁面に沿って配置される。
【0031】
リブ553は、抑制部材55を補強する部位である。ここでは、リブ553は、保持部551と枠部552とを連結する。なお、保持部551が複数ある場合には、リブ553は、保持部551と保持部551とを連結することもある。リブ553は、枠部552の各辺の中心に接続されている。これにより、リブ553の線量を抑制できる。図3の拡大図に示すように、引っ掛け部512Aは、リブ553と連結している枠部552の部位を引っ掛けることが望ましい。これにより、抑制部材55を安定的に保持できる。
【0032】
ベース52は、キャップ51を保持する部材である。ベース52は、キャップ51よりも硬質な材質で構成されており、ここでは樹脂製である。ベース52は、キャップ収容部521を有する。キャップ収容部521は、キャップ51を収容する凹状の部位である。キャップ51の底部511が矩形状であるため、キャップ収容部521の底面も矩形状である。図5に示すように、ベース52は、バネ53によって上側に向かって押圧されている。キャップ収容部521は、吸引口521Aと、突起521Bとを有する。
【0033】
吸引口521Aは、キャップ51の吸引穴511Aに挿入される部位であり、キャップ51の内部空間を負圧にするためポンプ(不図示)に連通する部位である。
【0034】
突起521Bは、上方に向かって突出する部位であり、抑制部材55を保持する部位である。突起521Bは、キャップ51、吸収材54及び抑制部材55に挿通される。突起521Bは、抑制部材55の保持部551を保持する先端部を有する。ここでは、図4Bに示すように、突起521Bの先端部は抑制部材55(保持部551)よりも上側に突出し、抑制部材55よりも上側に突出した突起521Bの先端部が熱カシメされることによって、抑制部材55がベース52に保持される。図4Bに示す突起521Bの先端部は、突起521Bの周面から外側に突出した爪部522を有し、この爪部522が抑制部材55の保持部551に引っ掛かることによって、保持部551を保持している。図4Bに示す爪部522は、突起521Bの先端部を熱カシメすることによって形成されており、突起521Bの全周面から突出するように形成されている。但し、爪部522は、突起521Bの全周面から突出していなくても良く、例えば、突起521Bの一部の周面から爪部522が突出しても良い(言い換えると、突起521Bの先端部がL字状(鉤状)に構成されても良い)。また、突起部521の先端部は、爪部522を有していなくても良い。例えば、突起521Bの先端部に凹状の穴部を形成し、抑制部材55の保持部551が挿通穴551Aの代わりに下向きに突出するピンを有しており、突起521Bの穴部に保持部551のピンを係合させることによって、突起521Bの先端部が抑制部材55を保持しても良い。また、突起521Bの先端部は、抑制部材55が外れないように保持していれば良く、抑制部材55を固定していなくても良い。例えば、抑制部材55が上下方向に垂直な方向に移動することを許容しつつ、突起521Bの先端部が抑制部材55を保持しても良い。
【0035】
なお、キャップ51の内部空間を負圧にするために、突起521Bがキャップ51の挿通穴511Bに挿通された状態で突起521Bとキャップ51との間の隙間は塞がれている。突起521Bとキャップ51との間の隙間は塞がれことによって、突起521Bとキャップ51とが密着し、これにより、キャップ51は挿通穴511Bの位置でベース52に対して拘束されることになる。
【0036】
バネ53は、ベース52を押圧する部材である(図5参照)。キャップ51がノズル面42を覆う時、バネ53が圧縮され、ベース52がケース56に対して下側に移動する。バネ53がベース52を押圧することによって、所定の押圧力でキャップ51をノズル面42に押圧できる。また、バネ53で押圧した状態のキャップ51をノズル面42に接触させるため、仮に接触前のキャップ51がノズル面42に対して傾いていても、キャップ51をノズル面42に密着させることができる。
【0037】
ケース56は、ベース52を保持する部材である。ケース56は、上側に向かって押圧されているベース52の上抜けを防止するように、ベース52を保持する。キャップ51がノズル面42を覆う時、キャップ51がノズル面42に押されることによって、ベース52がケース56に対して下側に移動する。ケース56は、上ケース56Aと、下ケース56Bとを有する。上ケース56Aは、ケース56の上部を構成する部材であり、ベース52の上抜けを防止する。下ケース56Bは、ケース56の下部を構成する部材であり、上ケース56Aを固定する部材である。
【0038】
<キャップ51の変形について>
本実施形態では、キャップ51の挿通穴511Bは、底部511の外周部には設けられずに、底部511の中央部に設けられる。ここでは、図6に示すように、キャップ51の挿通穴511Bは、底部511の中央のみに設けられている。これにより、後述するように、キャップ51の壁部512の高さ方向の変形を抑制することができる。
【0039】
なお、矩形状の部材(例えば底部511)の「中央」とは、矩形状の当該部材の対角線の交点の位置に相当する。また、矩形状の部材の「中央部」とは、当該部材の外縁よりも当該部材の中央(対角線の交点の位置)に近い領域に相当する。また、矩形状の部材の「外周部」とは、当該部材の中央よりも当該部材の外縁に近い領域に相当する。外周部は、中央部の外側を囲繞する領域になる。
【0040】
本実施形態において、キャップ51の挿通穴511Bの配置は、底部511の中央に限られるものではなく、底部511の中央部であれば良く、中央から少しずれた位置に挿通穴511Bが配置されても良い。また、キャップ51の挿通穴511Bの数は、1つに限らず、2以上でも良い。
【0041】
また、ベース52の突起521Bは、キャップ収容部521の外周部には設けられずに、キャップ収容部521の中央部に設けられる。ベース52の突起521Bは、キャップ51の挿通穴511Bに対応する位置に設けられる(言い換えると、キャップ51の挿通穴511Bは、ベース52の突起521Bに対応する位置に設けられる)。ここでは、図6に示すように、突起521Bは、キャップ収容部521の中央(矩形状のキャップ収容部521の対角線の交点の位置)のみに設けられている。なお、突起521Bの配置は、キャップ収容部521の中央に限られるものではなく、キャップ収容部521の中央部であれば良く、中央から少しずれた位置に突起521Bが配置されても良い。また、突起521Bの数は、1つに限らず、2以上でも良い。
【0042】
吸収材54の挿通穴54Aは、吸収材54の中央部に設けられる。吸収材54の挿通穴54Aは、キャップ51の挿通穴511Bやベース52の突起521Bに対応する位置に設けられる。ここでは、図6に示すように、吸収材54の挿通穴54Aは、吸収材54の中央のみに設けられている。なお、吸収材54の外周部に挿通穴54Aが設けられていても良い。但し、吸収材54の外周部の挿通穴54Aには突起521Bが挿通されない状態になる。
同様に、抑制部材55の保持部551(及び挿通穴551A)は、抑制部材55の中央部に設けられる。抑制部材55の保持部551は、キャップ51の挿通穴511Bやベース52の突起521Bに対応する位置に設けられる。ここでは、図6に示すように、抑制部材55の保持部551は、抑制部材55の中央のみに設けられている。なお、抑制部材55の外周部に挿通穴551Aが設けられていても良い。但し、抑制部材55の外周部の挿通穴551Aには突起521Bが挿通されない状態になる。
【0043】
図7Aは、第1比較例のキャップユニット50Aの説明図である。図7Bは、第1比較例の抑制部材55の説明図である。第1比較例のキャップ51の挿通穴511Bは、底部511の中央部だけでなく、底部511の外周部(壁部512の内壁面に近い領域)にも設けられている。また、ベース52の突起521Bは、キャップ収容部521の中央部だけでなく、キャップ収容部521の外周部にも設けられている。抑制部材55の保持部551は、抑制部材55の中央部だけでなく、抑制部材55の外周部(枠部552に近い領域)にも設けられている。ベース52の複数の突起521Bは、キャップ51、吸収材54及び抑制部材55のそれぞれの挿通穴551Aに挿通された状態で、突起521Bの先端部が熱カシメされることによって、抑制部材55の複数の保持部551にそれぞれ保持される。
【0044】
図8Aは、第1比較例のキャップ51の形状の説明図である。図中の上図は、キャップ51の内部を負圧にする前のキャップ51の形状の測定結果のグラフである。図中の下図は、キャップ51の内部を負圧にした時(負圧時)のキャップ51の形状の測定結果のグラフである。グラフの横軸は、上下方向に垂直な方向の位置を示している。グラフの縦軸は、キャップ51の上下方向の位置を示している。グラフのピークの位置(図中の三角印の位置)は、キャップ51の壁部512の端部の位置を示している。なお、キャップ51の内部を負圧にする時には、キャップ51の壁部512の端部は、ヘッド41のノズル面42に接触している。
【0045】
図8Bは、第2比較例のキャップ51の形状の説明図である。図8Aと同様に、図中の上図は、キャップ51の内部を負圧にする前のキャップ51の形状の測定結果のグラフである。図中の下図は、負圧時のキャップ51の形状の測定結果のグラフである。第2比較例では、単体のキャップ51の形状を測定している。このため、第2比較例では、キャップ51に吸収材54や抑制部材55は配置されておらず、キャップ51の挿通穴511Bには突起521Bが挿通されていない。つまり、第2比較例では、キャップ51の底部511は、突起521Bに拘束されていない。
【0046】
図8A及び図8Bに示される通り、下図のグラフのピークは、上図のグラフのピークよりも高さが低くなっている。つまり、第1比較例及び第2比較例のいずれにおいても、負圧時にキャップ51の壁部512が低くなる。これは、キャップ51の内部が負圧になることによって、キャップ51の壁部512がノズル面42の方向への力を受けて、壁部512が上下方向に潰れるように変形するためである。なお、負圧時に壁部512が低くなると、抑制部材55や突起521Bがヘッド41のノズル面42に接触するおそれがある。
【0047】
また、図8Aに示される通り、下図のグラフのピークの広がり(図中の左右方向の幅)は、上図と比べて広い。つまり、第1比較例では、キャップ51の内部を負圧にすると、キャップ51の壁部512が厚くなる方向(上下方向に垂直な方向;図中の紙面左右方向)に変形する。これは、キャップ51の壁部512をノズル面42に接触させた後にキャップ51の内部を負圧にするため、キャップ51の壁部512の端部がノズル面42に接触した状態で壁部512の端部が内側に引き込まれるように変形するためであると考えられる。第1比較例では、キャップ51の内部を負圧にすると、壁部512が上下方向に潰れるように変形するだけなく、壁部512が厚さ方向にも変形するので、壁部512の厚さ方向の変形に伴う上下方向の変形(ポアソン効果による変形)が加わるために、壁部512の上下方向の変形が比較的大きくなる。
【0048】
第2比較例では、第1比較例と比べて、壁部512が厚くなるように変形することが抑制されている。これは、第2比較例では、キャップ51の内部を負圧にするとキャップ51の底部511が上に向かって変形することに起因していると考えられる。すなわち、キャップ51の底部511が上に向かって変位することによって、キャップ51の壁部512が外側に向かって倒れるように変形するため、キャップ51の壁部512の端部がノズル面42に接触した状態で内側に引き込まれるように変形することが抑制され、壁部512が厚くなるように変形することが抑制されたものと考えられる。
【0049】
また、第2比較例では、第1比較例と比べて、壁部512の上下方向の変形が抑制されている。言い換えると、第2比較例では、第1比較例と比べて、負圧時の壁部512の高さが維持されている(壁部512の高さの減少が抑制されている)。これは、第2比較例では、第1比較例と比べて壁部512の厚さ方向の変形を抑制できるため(前述)、壁部512の厚さ方向の変形に伴う上下方向の変形(ポアソン効果による変形)が抑制されたためだと考えられる。
【0050】
一方、第2比較例では、キャップ51の底部511が上に向かって大きく変形するため、キャップ51に収容した抑制部材55や吸収材54がノズル面42に接触するおそれがある。なお、第1比較例では、第2比較例と比べると、キャップ51の底部511の変形は抑制されている。これは、第1比較例では、突起521Bがキャップ51や抑制部材55に挿通されることによって、キャップ51や抑制部材55がベース52に対して拘束されるためである。但し、上記の通り、第1比較例では、負圧時に壁部512が低くなることに起因して、抑制部材55や突起521Bがノズル面42に接触するおそれがある。
【0051】
そこで、本実施形態では、既に説明した通り、キャップ51の挿通穴511Bは、底部511の外周部には設けられずに、底部511の中央部に設けられる。また、ベース52の突起521Bの先端部は、抑制部材55の中央部に設けられた保持部551に保持される。これにより、本実施形態では、ベース52の突起521Bがキャップ51の挿通穴511Bに挿通されることによってキャップ51の中央部がベース52に対して拘束されるとともに、抑制部材55の中央部がベース52に対して拘束されるため、第2比較例と比べて、抑制部材55がノズル面42に接触することを抑制できる。また、本実施形態では、底部511の外周部には挿通穴511Bが設けられていないため、キャップ51の外周部はベース52に対して拘束されていないので、負圧時に底部511の外周部は上に向かって変形でき、底部511の変形に伴ってキャップ51の壁部512が外側に向かって倒れるように変形することができるので、この結果、第1比較例と比べて、壁部512が厚くなるように変形することを抑制でき(ポアソン効果による壁部512の高さの減少を抑制でき)、壁部512の上下方向の変形を抑制できる。
【0052】
===小括===
上記の液体吐出装置1(若しくはキャップユニット50A)は、ヘッド41と、キャップ51と、ベース52と、吸収材54と、抑制部材55とを有する。キャップ51は、挿通穴511Bを有する底部511と、底部511の周縁を囲繞する壁部512とを有し、壁部512をヘッド41のノズル面42に接触させてノズル面42を覆うことになる。ベース52は、キャップ51の挿通穴511Bに挿通する突起521Bを有する。また、吸収材54はキャップに収容されるとともに、抑制部材55は、吸収材54の上面に配置された状態でキャップに収容される。本実施形態では、キャップ51の挿通穴511Bは、底部511の外周部に設けられずに底部511の中央部に設けられており、ベース52の突起521Bは、抑制部材55の中央部に設けられた保持部551を保持する先端部を有する。これにより、抑制部材55がノズル面42に接触することを抑制しつつ、キャップ51の壁部512の変形を抑制することができる。
【0053】
図3の拡大図に示されるように、壁部512の内壁面に、抑制部材55の周縁(枠部552)を引っ掛ける引っ掛け部512Aが設けられている。壁部512の上縁は引っ掛け部512Aよりも上方にあるため、負圧時に底部511の外周部が上に変形すると、引っ掛け部512Aを軸として壁部512の引っ掛け部512Aよりも上の部位が外側に向かって倒れるように変形し易くなるので、壁部512が厚くなるように変形することを抑制でき、壁部512の上下方向の変形を抑制できる。但し、壁部512の内壁面に引っ掛け部512Aが設けられても良い。
【0054】
キャップ51がノズル面42を覆う状態でキャップ51の内部が負圧になった時に、底部511の外周部がノズル面42に向かって変形することが望ましい。これにより、負圧時に底部511の外周部が上に変形することに伴ってキャップ51の壁部512が外側に向かって倒れるように変形することができるので、この結果、壁部512が厚くなるように変形することを抑制でき、壁部512の上下方向の変形を抑制できる。
【0055】
===その他の実施形態===
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
1 液体吐出装置、
20 キャリッジユニット、21 キャリッジ、
30 搬送ユニット、31 搬送ローラー、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、
42 ノズル面、44 ノズル列、45 ノズル、
50 キャップ機構、50A キャップユニット、
51 キャップ、
511 底部、511A 吸引穴、511B 挿通穴、
512 壁部、512A 引っ掛け部、
513 収容部、514 パッキン、
52 ベース、521 キャップ収容部、
521A 吸引口、521B 突起、522 爪部、53 バネ、
54 吸収材、54A 挿通穴、
55 抑制部材、551 保持部、551A 挿通穴、
552 枠部、553 リブ、
56 ケース、56A 上ケース、56B 下ケース、
M 媒体
図1
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図8