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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157353
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】超音波探傷装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067215
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】有光 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂尻 博章
(72)【発明者】
【氏名】森本 誠司
(72)【発明者】
【氏名】松浦 健成
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA07
2G047AB01
2G047BA03
2G047BB02
2G047BC09
2G047CA01
2G047CB01
2G047EA10
2G047GA03
2G047GA15
(57)【要約】
【課題】水圧鉄管表面に沿って伝播する超音波を用いて、外部から固定台内部の損傷状況を容易かつ正確に把握できる超音波探傷装置を提供する。
【解決手段】送信用探触子4aは、斜角用ウェッジ5aに取り付けられ、ホルダ本体31aに取り付け固定されている。ホルダ本体31aと枠体32aは回動自在に固定されている。枠体32aと車輪33は、連結プレート35a及び連結プレート35bを介して連結されている。送信用探触子4bは、斜角用ウェッジ5bに取り付けられ、ホルダ本体31bに取り付け固定されている。ホルダ本体31bと枠体32bは回動自在に固定されている。枠体32bと車輪34は、連結プレート35c及び連結プレート35dを介して連結されている。枠体32aと枠体32bは、ヒンジ部60により回動自在に接続される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
斜角2探触子を用いて管構造物の欠陥を横波SV波で検査する装置において、
超音波送信用探触子と斜角用ウェッジからなる送信部と、
超音波受信用探触子と斜角用ウェッジからなる受信部と、
前記送信部の基台であり、前記管構造物の表面とのギャップを確保する機構を有する送信用探触子ホルダと、
前記受信部の基台であり、前記管構造物の表面とのギャップを確保する機構を有する受信用探触子ホルダと、
前記送信用探触子ホルダを軸部材により回動自在に支持する送信用枠体と、
前記受信用探触子ホルダを軸部材により回動自在に支持する受信用枠体と、
前記送信用枠体と前記受信用枠体とを連結するヒンジ機構、
を備えたことを特徴とする超音波探傷装置。
【請求項2】
前記管構造物の表面とのギャップを確保する機構は、複数のボールローラから成ることを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項3】
前記送信用枠体は、連結プレートを介して車輪軸と連結され、
前記車輪軸の両端に、磁石性の車輪が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項4】
前記斜角用ウェッジは、内部に液体が充填され、充填される液体を交換可能としたことを特徴とする請求項1に記載の超音波探傷装置。
【請求項5】
前記超音波送信用探触子と前記超音波受信用探触子は、振動子への印加電圧が800ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の超音波探傷装置。
【請求項6】
前記超音波送信用探触子と前記超音波受信用探触子は、振動子への印加電圧が800ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子であり、
前記斜角用ウェッジは、ウェッジから管構造物へ入射する横波SV波の入射角が82~88°であることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の超音波探傷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水圧鉄管等の構造物の健全性を評価するための超音波探傷装置の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発電所などに使用される水圧鉄管等の構造物の平均年齢は50年を超過しており、設備の老朽化が大きな問題となっている。水圧鉄管の固定台内部の腐食・摩耗により、水圧鉄管が損傷すると、第三者への影響および長期停電による溢水電力が発生する。水圧鉄管の固定台内部の板厚を測定するには、発電を停止し、水圧鉄管内部を流れる水を止めた後、水圧鉄管の固定台に仮設足場を設置して、水圧鉄管内部より検査する。
しかしながら、急傾斜での作業となるため、非常に危険が伴うという問題があり、また、固定台内部において多くの損傷事象が発生しているのが実情である。
一般に、水圧鉄管の露出管の定期検査は、3~12年に1回の頻度で実施されており、応力度評価に使用する鉄管の板厚は管外面から測定可能な代表測線で計測し、その結果を用いて水圧鉄管全体を評価している。そのため、固定台内部の板厚は、外部からの測定可能な手法がなく、未計測であり、不具合発生が懸念される。そこで、鉄管充水中でも容易に鉄管内部を探傷できる装置が望まれている。
【0003】
超音波を用いて探傷する技術としては、例えば、SV波(Shear Vertical Wave)の回折現象を利用して超音波探傷検査を行う方法が知られている(特許文献1を参照)。SV波による斜角探傷法では、探傷面に対して斜め方向に超音波ビームを入射し、検査対象の構造物内部へ伝搬させ、得られる反射エコーの時間と強度から、構造物内部の欠陥・腐食などのダメージ部を推測するというものである。この方法では斜角探触子が用いられ、振動子によって生成された縦波の超音波は探傷面において屈折し、臨界角以上で全反射され横波の超音波に変換される。変換された横波の超音波のみが、構造物内部を伝搬する。
特許文献1に開示される超音波探傷検査方法では、屈折角が78~88°の範囲内に設定された探触子を探傷面に配置し、探触子の先端を、探傷面と、探傷面よりも上方へ延在する厚肉部との境界部分の始端の位置などに合わせた状態で超音波を送信し、厚肉部内を拡がりながら進行する回折波を利用して、探傷面よりも上方に位置する反射源からの反射エコーを含む受信信号を取得するものである。そして、送信用探触子及び受信用探触子の音軸の開き角や、屋根角の角度につき好ましい範囲を開示している。
【0004】
しかしながら、水圧鉄管の内部を検査する場合は、鉄管表面に探触子を配置するが、特許文献1の超音波探傷検査方法では、鉄管表面の曲率に合わせて、探触子と鉄管の間に一定のギャップを確保することが困難であるという問題があった。
また、鉄管表面の曲率に合わせて、探触子と鉄管の間に一定のギャップを確保することができたとしても、検査対象材料への、超音波屈折角を変えるために、ウェッジを取り換える必要がある構造であると、操作が煩雑になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-151501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況に鑑みて、本発明は、水圧鉄管などの管構造物表面に沿って伝播する超音波(SV波)を用いて、外部から固定台内部の損傷状況を容易に、かつ、正確に把握できる超音波探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく、本発明の超音波探傷装置は、斜角2探触子を用いて管構造物の欠陥を横波SV波で検査する装置において、超音波送信用探触子と斜角用ウェッジからなる送信部と、超音波受信用探触子と斜角用ウェッジからなる受信部と、送信部の基台であり、管構造物の表面とのギャップを確保する機構を有する送信用探触子ホルダと、受信部の基台であり、管構造物の表面とのギャップを確保する機構を有する受信用探触子ホルダと、送信用探触子ホルダを軸部材により回動自在に支持する送信用枠体と、受信用探触子ホルダを軸部材により回動自在に支持する受信用枠体と、送信用枠体と受信用枠体とを連結するヒンジ機構を備える。管構造物の表面とのギャップを確保する機構を有する送信用探触子ホルダ及び受信用探触子ホルダによって、探触子と水圧鉄管など管構造物の間に一定のギャップを確保して、管構造物の表面に倣わすことができる。具体的には、接触媒質にゲルを使用した場合においても、探触子の操作でゲルをそぎ取らないようにできる。また、送信用と受信用のそれぞれの探触子ホルダを軸部材により回動自在に支持する送信用枠体及び受信用枠体と、それらを連結するヒンジ機構によって、管構造物の周方向に配置された送信用探触子と受信用探触子の位置を安定させ、管構造物の軸方向に沿った超音波探傷の感度を向上する。
【0008】
探触子と管構造物の間に確保される一定のギャップは、0.3~0.7mmであることが好ましく、より好ましくは0.5mmである。
斜角2探触子の角度は、82~88°であることが好ましく、より好ましくは84~86°であり、更に好ましくは85°である。その際の周波数は、0.05~15MHzであることが好ましく、より好ましくは、0.1~2MHzであり、更に好ましくは、0.5MHzである。
なお、本発明を、斜角2探触子を用いた装置における発明としているのは、本発明では周波数が低い長波長の超音波が用いられるところ、1探触子を用いた装置の場合は、当該探触子から発せられた超音波が探触子の中に残ってしまい、探触子前方近傍の探傷が困難になることを避けるためである。
【0009】
本発明の超音波探傷装置において、管構造物の表面とのギャップを確保する機構は、複数のボールローラから成ることが好ましい。
【0010】
本発明の超音波探傷装置において、送信用枠体は、連結プレートを介して車輪軸と連結され、車輪軸の両端に、磁石性の車輪が設けられたことが好ましい。磁石性の車輪が水圧鉄管の周囲にくっ付くことで、水圧鉄管の周囲での検査の操作性を向上できる。
【0011】
本発明の超音波探傷装置において、斜角用ウェッジは、内部に液体が充填され、充填される液体を交換可能としたことでもよい。斜角用ウェッジの内部に液体が充填され、充填される液体の密度を異なるものに替えることによって、ウェッジの形状を変えることなく(ウェッジを取り換えることなく)、任意の角度で斜角探傷が可能となる。
【0012】
本発明の超音波探傷装置において、超音波送信用探触子と超音波受信用探触子は、振動子への印加電圧が800ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子であることが好ましく、より好ましくは、1000ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子であり、更に好ましくは、1500ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子である。高電圧に耐える超音波探触子を用いることにより、ハイパワーの超音波を送信することが可能で、探傷距離を延ばすことができる。
【0013】
本発明の超音波探傷装置において、超音波送信用探触子と超音波受信用探触子は、振動子への印加電圧が800ボルト以上の高電圧に耐える超音波探触子であり、斜角用ウェッジは、ウェッジから管構造物へ入射する横波SV波の入射角が82~88°であることが好ましい。斜角用ウェッジから管構造物へ入射する横波SV波の入射角が82~88°になるように、斜角ウェッジの斜角やウェッジ内部の密度を調整する。ウェッジから管構造物へ入射する横波SV波の入射角が82~88°であれば、測定箇所から欠陥箇所まで距離があっても、反射エコーを捉えることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の超音波探傷装置によれば、鉄管表面の曲率に合わせて、探触子と鉄管の間に一定のギャップを確保でき、外部から固定台内部の損傷状況を容易かつ正確に把握できるといった効果がある。また、液体が充填されたウェッジを用いることで、ウェッジを取り換えることなく、超音波屈折角を変えることができ、利便性が向上するといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1の超音波探傷装置の正面図
図2】実施例1の超音波探傷装置の平面図
図3】実施例1の超音波探傷装置の底面図
図4】超音波探傷装置の使用イメージ図
図5】実施例2の超音波探触子の説明図
図6】ウェッジ内部に各種液体を用いた場合のシミュレーション結果
図7】水圧鉄管健全性検査の説明図
図8】従来技術の超音波探傷装置の説明図
図9】超音波探傷装置の送信と受信の説明図
図10】実施例1の超音波探傷装置における探触子の感度を示すグラフ
図11】実施例1の超音波探傷フロー図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例0017】
図1は、実施例1の超音波探傷装置の正面図を示している。図1に示すように、超音波探傷装置1は、検出部(2a,2b)及び探触子ホルダ3で構成され、検出部(2a,2b)が探触子ホルダ3に取り付け固定されている。検出部2aは、送信用探触子4a及び斜角用ウェッジ5aから成り、検出部2bは、受信用探触子4b及び斜角用ウェッジ5bから成る。斜角用ウェッジ(5a,5b)は、材質のバラつきが少なく、加工が比較的容易な高密度ポリスチレンで形成される。
【0018】
図2は、実施例1の超音波探傷装置の平面図を示している。また、図3は、実施例1の超音波探傷装置の底面図を示している。
図1~3に示す送信用探触子4aは超音波探触子であり、図3に示すように、1000Vの高電圧に耐えることができる高耐圧の1-3コンポジット振動子7aが設けられている。送信用探触子4aには、コネクタ90aを介して探触子ケーブル9aが接続されている。送信用探触子4aは、留め具(6a~6d)を用いて斜角用ウェッジ5aに取り付けられ、検出部2aは、図1~3に示すように、ホルダ本体31aに取り付け固定されている。また、ホルダ本体31aと枠体32aの間には間隙が設けられ、ホルダ本体31aと枠体32aは、軸部材(63a,63b)により回動自在に固定されている。
車輪33は、車輪軸33aの長手方向の両端部に車輪(33b,33c)が設けられたものである。図2に示すように、枠体32aと車輪33は、連結プレート(35a,35b)を介して連結されている。具体的には、枠体32aと連結プレート35aは留め具61aにより、枠体32aと連結プレート35bは留め具61bにより、回動自在に固定されている。また、車輪33と連結プレート35aは留め具62aにより、車輪33と連結プレート35bは留め具62bにより、回動自在に固定されている。
【0019】
図1~3に示す受信用探触子4bは超音波探触子であり、図3に示すように、高耐圧の1-3コンポジット振動子7bが設けられている。受信用探触子4bには、コネクタ90bを介して探触子ケーブル9bが接続されている。受信用探触子4bは、留め具(6e~6h)を用いて斜角用ウェッジ5bに取り付けられ、検出部2bは、図1~3に示すように、ホルダ本体31bに取り付け固定されている。また、ホルダ本体31bと枠体32bの間には間隙が設けられ、ホルダ本体31bと枠体32bは、軸部材(63c,63d)により回動自在に固定されている。
車輪34は、車輪軸34aの長手方向の両端部に車輪(34b,34c)が設けられたものである。図2に示すように、枠体32bと車輪34は、連結プレート(35c,35d)を介して連結されている。具体的には、枠体32bと連結プレート35cは留め具61cにより、枠体32bと連結プレート35dは留め具61dにより、回動自在に固定されている。また、車輪34と連結プレート35cは留め具62cにより、車輪34と連結プレート35dは留め具62dにより、回動自在に固定されている。
【0020】
図3に示すように、枠体32aと枠体32bは、ヒンジ部60により回動自在に接続されている。また、図2に示すように、枠体32aと枠体32bは、連結プレート(36a,36b)によっても連結されている。具体的には、枠体32aと連結プレート36aは留め具61eにより、枠体32aと連結プレート36bは留め具61gにより、回動自在に固定されている。また、枠体32bと連結プレート36aは留め具61fにより、枠体32bと連結プレート36bは留め具61hにより、回動自在に固定されている。
また、図1に示すように、連結プレートの一部には、長円形状の貫通孔が設けられている。具体的には、連結プレート35bには貫通孔11a、連結プレート35dには貫通孔11b、連結プレート36bには貫通孔11cがそれぞれ設けられている。連結部に長円形状の貫通孔が設けられることにより、固定箇所が回動するだけでなく、長円形状の範囲で留め具の固定位置が移動し、鉄管の形状に追従して可動できることとなる。なお、図示しないが、連結プレート(35a,35c,36a)にも同様の機構が備わっている。
本実施例では、留め具(61a~61h)として六角穴付ボルトを用い、留め具(62a~62d)として六角袋ナットを用いているが、かかる部材に限られず、公知の幅広い留め具を利用可能である。
【0021】
このように、枠体(32a,32b)と車輪部(33,34)が可動するだけではなく、枠体(32a,32b)とホルダ本体(31a,31b)が可動し、更には枠体32aと枠体32bが可動する構造となっている。これにより、検出部(2a,2b)がそれぞれ独立して可動する構造となり、検査対象となる鉄管12の曲率に合わせて円周方向のプローブ(探触子)角度を変化させることができる。
また、図3に示すように、ホルダ本体31aの裏面には、プランジャ機能付き(図示せず)の大型のボールローラ(8a~8d)が設けられ、ホルダ本体31bの裏面にも同様のボールローラ(8e~8h)が設けられている。ボールローラ(8a~8h)が設けられることにより、送信用探触子4a及び受信用探触子4bの高さを調整でき、鉄管12との間での適正なギャップを調整可能である。
【0022】
図7は、水圧鉄管健全性検査の説明図を示している。図7に示すように、鉄管12において、固定台14が設けられた箇所の内部には、損傷部15のような損傷事象が発生していることが多い。そこで、実施例1の超音波探傷装置1を用いた水圧鉄管の健全性の検査においては、鉄管12の固定台14の内部の損傷状況を、水圧鉄管表面に沿って伝播する超音波13(SV波)を用いて、外部から検査する。具体的には、超音波探傷装置1は、検出部2aから超音波13aが発せられ、その反射エコー13bを検出部2bにおいて検知する。
【0023】
図4は、超音波探傷装置の使用イメージ図であり、(1)は実施例の超音波探傷装置、(2)は従来技術の超音波探傷装置の場合を示している。
また、図8は、従来技術の超音波探傷装置の外観図であり、(1)は正面図、(2)は平面図を示している。図8(1)又は(2)に示すように、従来技術の超音波探傷装置100は、検出部(2a,2b)や車輪部(33,34)、連結プレート(35a,35b)、留め具(61a~61d,62a~62d)については、実施例1の超音波探傷装置1と同様である。しかしながら、従来技術の超音波探傷装置100では、実施例1の超音波探傷装置1と異なり、探触子ホルダ300において、ホルダ本体310が可動しない構造となっている。
そのため、図4(2)に示すように、従来技術の超音波探傷装置100の場合は、鉄管12の曲率変化に伴い、検出部(2a,2b)と鉄管12表面のギャップを、一定に保つことができない。これに対して、実施例1の超音波探傷装置1では、枠体(32a,32b)、ホルダ本体(31a,31b)及びボールローラ(8a~8h)が可動するため、鉄管12の曲率変化に伴い、検出部(2a,2b)と鉄管12表面のギャップを、一定に保つことが可能となっている。
【0024】
前述の通り、送信用探触子4a及び受信用探触子4bには、1.5KVの高耐圧の1-3コンポジット振動子(7a,7b)が用いられている。この1-3コンポジット振動子(7a,7b)には、0.5MHz共振周波数を持つ圧電素子が使用されている。従来、1-3コンポジット圧電素子の耐圧は0.5KV程度であり、高耐圧の場合にはセラミック圧電素子が用いられていた。圧電素子は、分極電圧以下で使用するものであり、分極電圧を超えると極性がなくなるため、分極電圧が高いセラミック圧電素子が使用されてきた。
本発明の超音波探傷装置では、振動子電極の接着が強化された(具体的には乾燥時間の延長や、高強度の接着剤を使用)ことにより、振動子電極の接着が強化され、1.5KVの高耐圧の1-3コンポジット振動子(7a,7b)の採用を実現している。
【0025】
また、送信用探触子4a及び受信用探触子4bに接続された探触子ケーブル(9a,9b)の他端は、超音波パルサー/レシーバ(図示せず)に接続される。超音波パルサー/レシーバについても、高耐圧の構造とするための工夫がなされている。例えば、高電圧を得るため高速、高電圧、絶縁型のDC-DCコンバーターが採用され、印加電圧は、0V~1000Vまで無段階で調整可能である。各コンデンサは高耐圧(1500V)を使用している。
【0026】
送信用探触子4aと受信用探触子4bは、1.5KVの高耐圧の1-3コンポジット振動子(7a,7b)の採用し、斜角用ウェッジ(5a,5b)は、ウェッジから管構造物へ入射する横波SV波の入射角が82~88°になるように調整している。振動子7aから出た超音波が斜角用ウェッジ5aを介して管構造物(鉄管12)へ入射する横波SV波の入射角が82~88°になるように、斜角ウェッジの斜角やウェッジ内部の密度を調整する。これにより、測定箇所から欠陥箇所までの探傷距離を延ばすことができ、欠陥からの反射エコーを捉えることが可能となる。
【0027】
図9は、斜角2探触子を用いて管構造物の欠陥を横波SV波で検査する超音波探傷装置において、超音波送信用探触子と超音波受信用探触子のそれぞれの音軸の交差角が固定のものと、本発明の超音波探傷装置のように、鉄管12の曲率に応じてそれぞれの音軸の交差角が可変のものについて、超音波の送信路と受信路について説明するものである。
図9(1)は、平らな面を探傷する場合であって、検出部2aと検出部2bが並行で音軸の交差角が固定であり、検出部2aから出射した横波SV波13aが、損傷部15で反射され、検出部2bに入射する横波SV波(反射エコー)13bを示したものである。実際、反射エコー13bは、波紋を拡げながら検出部2bに戻ってくる。
図9(2)は、図9(1)と同じ探傷装置(検出部2aと検出部2bが並行で音軸の交差角が固定のもの)で、曲率がある鉄管12の表面を探傷する場合を示している。この場合、反射エコー13bのルートが変わり、検出部2bで検出される信号強度は低減することになる。
図9(3)は、実施例1の超音波探傷装置(鉄管12の曲率に応じて検出部2aと検出部2bの音軸の交差角が可変のもの)で、曲率がある鉄管12の表面を探傷する場合を示している。図9(2)の場合と異なり、検出部2bで検出される信号強度を図9(1)と同程度に保った状態で信号を検出することができる。
【0028】
図10は、超音波探傷装置における探触子の感度を示すグラフであり、(1)は比較例の探触子(0.8MHz)、(2)は実施例の探触子(0.5MHz)の感度を示している。何れも実際の水圧鉄管で、250mm離れたリベットを探傷した場合の波形を示している。図10(1)に示すように、比較例の0.8MHzの探触子では、80.2dBであったが、本実施例の0.5MHzの探触子では、62.8dBであり、0.5MHz探触子の方が17.4dB(約7.4倍)感度が高いことが分かる。
【0029】
従来は特定の周波数フィルターなどを設定した状態で探傷試験を実施するため、最適なフィルターは、データ採取終了後に再度条件を探して最適条件を探していた。図11は、実施例1の超音波探傷フロー図を示している。図11に示すように、まず、レシーバで波形を受信する(ステップS01)。超音波波形を送受信する場合、例えば1秒間に500回の信号を送受信するのであれば、0.1秒間に50回の信号になるため、平均化して信号処理する。例えば0.1秒間の一定時間受信(ステップS02)を行った結果で、ノイズが多く乗っているなど受信波形データの平均化が必要な場合(ステップS03)は、平均化処理を行う(ステップS04)。平均化処理とは、本実施例の探傷を行う際には、一般的な非破壊検査で使う感度の領域より高くなる場合があり、ランダムノイズ(外来、内部電子ノイズ)を平均化することで、SN比を向上することである。
【0030】
平均化処理後の信号波形データ、又は平均化処理不要の信号波形データに対して、フィルター処理が必要な場合(ステップS05)は、高帯域信号を遮断(ローパスフィルター)処理し(ステップS06)、更に、低帯域信号を遮断(ハイパスフィルター)処理する(ステップS07)。すなわち、信号の帯域を狭くして反射エコー信号を特定するウィンドウ処理を行う。ステップS06とステップS07の順序は逆でもよいし、同時的に行ってもよい。フィルター処理が必要な場合は、フィルター処理済みの信号波形データを取得し、フィルター処理が不要な場合は、そのままの信号波形データを取得する(ステップS08)。フィルター処理とは、超音波が材料中を伝搬する際には、欠陥反射エコーはビーム路程や材料内部の影響を受け、送信した周波数より低下する傾向がある。信号エコーの識別向上のため広帯域のバンドパスフィルターが必要になる場合がある。本実施例の超音波探傷装置では、リアルタイムで広帯域のフィルター処理を行うことが可能である。
次の波形データを取得する必要がある場合は、再度、レシーバで波形を受信する(ステップS01)。これに対して、次の波形データを取得する必要がない場合は、超音波探傷は終了となる(ステップS09)。
【実施例0031】
図5は、実施例2の探触子の説明図であり、送信用の検出部200について、図5(1)は右側面からのイメージ図、図5(2)は右側面からの平面イメージ図を示している。ここでは受信用の検出部については図示しないが、各部材の配置等は送信用の検出部200と同様である。
図5(1)又は(2)に示すように、液体ウェッジ500は斜角用ウェッジであり、アクリル樹脂製のケース50の内部に、液体51が充填されたものである。送信用探触子4は超音波探触子であり、高耐圧の1-3コンポジット振動子7が設けられ、留め具6を用いて液体ウェッジ500に取り付け固定されている。また、送信用探触子4には、コネクタ90を介して、探触子ケーブル9が接続されている。液体ウェッジ500のケース50内には、液体51が充填されているため、ウェッジを取り替えることなく任意の角度で斜角探傷が可能である。ケース50内に充填される液体51としては、水、アルコール、又はエタノールなどを利用可能である。
【0032】
図6は、ウェッジ内部に各種液体を用いた場合のシミュレーション結果(鋼中の屈折角の違い)であり、液体として(1)は水、(2)はアルコール、(3)はエタノールを用いた場合を示している。シミュレーションには、送信用と受信用の計2個の超音波探触子を用いた。また、設定条件として入射角は、何れも20.5°で固定した。
図6(1)に示すように、ケース50内を水にした場合は、鋼中の横波SV波の屈折角が48.3°であった。図6(2)に示すように、ケース50内をアルコールにした場合は、横波SV波の屈折角が69.0°であった。また、図6(3)に示すように、ケース50内をエタノールにした場合は、横波SV波の屈折角が87.2°であった。したがって、横波SV波の屈折角について、水を用いた場合は約45°、アルコールを用いた場合は約70°、エタノールを用いた場合は水圧鉄管の表面近くを伝搬していくことがわかる。
【0033】
液体ウェッジ500を用いることにより、ウェッジ(くさび)内部の液体51中で、横波SV波が発生しなくなるため、ウェッジ内部で発生する超音波のモード変換で起こる雑エコーが消去できることで、探傷時の受信波形が明確になる。また、内部の液体を音速の違ったものに変えることで、ウェッジを取り換えなくても、検査対象材料への、超音波屈折角(入射角一定)を変えることができるため、ウェッジを含む探触子ホルダは、同じ構造のものを使用することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、水圧鉄管や余水管などの健全性を検査する技術に有用である。
【符号の説明】
【0035】
1,100 超音波探傷装置
2a,2b,200 検出部
3,300 探触子ホルダ
4,4a 送信用探触子
4b 受信用探触子
5a,5b 斜角用ウェッジ
6,6a~6h,61a~61h,62a~62d 留め具
7,7a,7b 1-3コンポジット振動子
8a~8h ボールローラ
9,9a,9b 探触子ケーブル
11a~11c 貫通孔
12 鉄管
13,13a 超音波(横波SV波)
13b 反射エコー
14 固定台
15 損傷部
31a,31b,310 ホルダ本体
32a,32b 枠体
33,34 車輪部
33a,34a 車輪軸
33b,33c,34b,34c 車輪
35a~35d,36a,36b 連結プレート
50 ケース
51 液体
60 ヒンジ部
63a~63d 軸部材
90,90a,90b コネクタ
500 液体ウェッジ
図1
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図11