(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157367
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】代理人認証システム及び代理人認証方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 40/02 20230101AFI20231019BHJP
【FI】
G06Q40/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067247
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕也
(72)【発明者】
【氏名】野口 典子
【テーマコード(参考)】
5L055
【Fターム(参考)】
5L055BB04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】代理人側及び銀行側の負担を軽減しながら、代理人が現金を出金する取引を安全に実現する。
【解決手段】代理人認証システム100では、案件管理システム110が、代理人取引の案件ごとに、責任者10からの入力に基づいて代理人取引情報を生成及び登録し、代理人取引情報の案件識別情報を帳票161に出力し、現金自動取引装置120が、帳票161及び本人確認書類を提示した操作者に対して本人確認を行い、本人確認が成功した場合に、帳票161から取得した案件識別情報及び本人確認書類から取得した氏名情報を案件管理システム110に送信し、案件管理システム110が、案件識別情報と氏名情報との組合せを有する案件が代理人取引情報に存在する場合に、操作者が代理人20であるとして代理人認証を成功と判断し、当該案件の取引内容による取引の許可を現金自動取引装置120に通知し、現金自動取引装置120が通知に従って取引を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
責任者から指定された代理人による代理人取引において代理人認証を行う代理人認証システムであって、
前記代理人取引に関する所定項目の情報からなる代理人取引情報を管理する案件管理システムと、
操作者に対する本人確認の機能を有する現金自動取引装置と、
を備え、
前記案件管理システムが、前記代理人取引の案件ごとに、前記責任者からの入力に基づいて前記代理人取引情報を生成及び登録し、前記登録した代理人取引情報の案件識別情報を帳票に出力し、
前記現金自動取引装置が、前記帳票及び本人確認書類を提示した前記操作者に対して本人確認を行い、前記本人確認が成功した場合に、前記帳票から取得した案件識別情報及び前記本人確認書類から取得した氏名情報を前記案件管理システムに送信し、
前記案件管理システムが、前記現金自動取引装置から受信した前記案件識別情報と前記氏名情報との組合せに基づいて前記代理人取引情報を検索し、当該組合せを有する案件が前記代理人取引情報に存在する場合に、前記操作者が前記代理人であるとして代理人認証を成功と判断し、前記代理人取引情報に登録された当該案件の取引内容による取引の許可を前記現金自動取引装置に通知し、
前記現金自動取引装置が、前記案件管理システムからの通知に従って取引を実行する
ことを特徴とする代理人認証システム。
【請求項2】
前記代理人取引情報には、少なくとも、前記責任者の氏名、当該責任者が指定する前記代理人の氏名、及び取引の出金金額を示す情報が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の代理人認証システム。
【請求項3】
前記案件管理システムは、前記代理人取引情報に含まれる情報のうち、取引内容を示す情報以外の情報について、前記帳票への出力を許可する
ことを特徴とする請求項1に記載の代理人認証システム。
【請求項4】
前記帳票には、暗号化された前記案件識別情報を示す二次元バーコードが出力される
ことを特徴とする請求項3に記載の代理人認証システム。
【請求項5】
前記現金自動取引装置は、前記操作者を撮影するカメラを有し、
前記現金自動取引装置は、前記操作者が提示した前記本人確認書類の真贋判定に成功し、かつ、当該本人確認書類から取得した顔画像と前記カメラで撮影した前記操作者の顔画像との比較による本人判定に成功した場合に、前記本人確認が成功したと判断する
ことを特徴とする請求項1に記載の代理人認証システム。
【請求項6】
前記案件管理システムは、前記代理人取引で出金される口座のインターネットバンキングとは別に独立して構成され、当該インターネットバンキングを経由して前記責任者からの操作を受け付ける
ことを特徴とする請求項1に記載の代理人認証システム。
【請求項7】
前記案件管理システムは、前記責任者の氏名と前記代理人の氏名を同一とする前記代理人取引情報の登録を拒絶する
ことを特徴とする請求項2に記載の代理人認証システム。
【請求項8】
前記案件管理システムは、前記代理人取引を行う店舗の識別情報と前記代理人の識別情報とを所定のタイミングで前記代理人取引情報に登録可能とし、
前記帳票の紛失が前記責任者から前記案件管理システムに通知された場合、
前記店舗の識別情報に合致する店舗に設置された前記現金自動取引装置が、本人確認書類を提示した前記操作者に対して本人確認を行うとともに、前記代理人の識別情報の入力を前記操作者に要求し、前記本人確認が成功した場合に、前記操作者が入力した前記代理人の識別情報と前記本人確認書類から取得した氏名情報とを前記案件管理システムに送信し、
前記案件管理システムが、前記現金自動取引装置から受信した前記代理人の識別情報と前記氏名情報との組合せに基づいて前記代理人取引情報を検索し、当該組合せを有する案件が前記代理人取引情報に存在する場合に、前記操作者が前記代理人であるとして代理人認証を成功と判断し、前記代理人取引情報に登録された当該案件の取引内容による取引の許可を前記現金自動取引装置に通知し、
前記現金自動取引装置が、前記案件管理システムからの通知に従って取引を実行する
ことを特徴とする請求項2に記載の代理人認証システム。
【請求項9】
前記案件管理システムは、前記代理人取引情報に有効期限を登録可能であり、前記有効期限の期間外に前記現金自動取引装置が操作された場合には、対象案件の代理人取引を許可しない
ことを特徴とする請求項2に記載の代理人認証システム。
【請求項10】
責任者から指定された代理人による代理人取引において代理人認証システムが代理人認証を行う代理人認証方法であって、
前記代理人認証システムは、前記代理人取引に関する所定項目の情報からなる代理人取引情報を管理する案件管理システムと、操作者に対する本人確認の機能を有する現金自動取引装置と、を有し、
前記案件管理システムが、前記代理人取引の案件ごとに、前記責任者からの入力に基づいて前記代理人取引情報を生成及び登録する登録ステップと、
前記案件管理システムが、前記登録ステップで登録した代理人取引情報の案件識別情報を帳票に出力する帳票出力ステップと、
前記現金自動取引装置が、前記帳票及び本人確認書類を提示した前記操作者に対して本人確認を行い、前記本人確認が成功した場合に、前記帳票から取得した案件識別情報及び前記本人確認書類から取得した氏名情報を前記案件管理システムに送信する本人確認ステップと、
前記案件管理システムが、前記本人確認ステップで前記現金自動取引装置から受信した前記案件識別情報と前記氏名情報との組合せに基づいて前記代理人取引情報を検索し、当該組合せを有する案件が前記代理人取引情報に存在する場合に、前記操作者が前記代理人であるとして代理人認証を成功と判断し、前記代理人取引情報に登録された当該案件の取引内容による取引の許可を前記現金自動取引装置に通知する代理人認証ステップと、
前記現金自動取引装置が、前記代理人認証ステップによる通知に従って取引を実行する取引実行ステップと、
を備えることを特徴とする代理人認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、代理人認証システム及び代理人認証方法に関し、代理人による現金自動取引装置を利用した銀行預金の出金の際に当該代理人の認証を行う代理人認証システム及び代理人認証方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
現在、キャッシュレスやインターネットバンキング(IB:Internet Banking)の浸透により現金を取扱う機会は年々減少している一方で、現金を出金するニーズは健在である。
【0003】
例えば法人が保有する銀行口座について、法人が利用しているインターネットバンキング(いわゆるエレクトロニックバンキング(EB:Electronic Banking))を使うと、オンライン上で残高確認や振り込み等を行うことができるが、現金が欲しい場合には、人が銀行窓口に赴き、窓口で出金する必要がある。そして、法人における現金出金処理は、出金に対する責任を有する責任者(経営者)ではなく、代理人(例えば事務員)が行うことが一般的である。代理人が現金出金処理を行う場合、代理人(例えば事務員)が、免許証等の本人確認書類、印鑑(社印)、及び法人通帳等を用意して窓口に赴き、窓口の行員によって取引時確認や本人確認が行われた後に、法人の銀行口座から現金を出金することができる。
【0004】
ここで、例えば特許文献1には、効率的に本人確認を行うことを目的とした伝票生成システムが開示されている。特許文献1に記載された伝票生成システムは、顧客からの入力を受け付ける電子記帳機と、顧客の本人確認に係る情報の少なくとも一部を取得する取得部と、取得部により取得された情報に基づき、社会的リスクに係る情報を含むデータベースに対し、顧客の社会的リスクに係る情報を検索する検索部と、を備え、電子記帳機による入力受付処理の少なくとも一部と、検索部による検索処理の少なくとも一部とが併行して実行されることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の代理人による現金出金の方法は、代理人が法人の印鑑や通帳等の貴重品を銀行の窓口に持参し、銀行の窓口の行員が取引時確認や本人確認を行う必要があることから、法人(代理人)や窓口行員の双方の負担が大きいという課題があった。また、窓口を利用した現金出金では、簡単にEBと連携することができないという課題もあった。なお、別の現金出金方法として、法人カードを代理人に持たせて、現金自動取引装置(ATM:Automatic Teller Machine)から現金を出金する方法があるが、法人カードの暗証番号を代理人に教えることになるため、セキュリティ管理上のリスクがあり、一般的ではない。そしてこのような課題は、特許文献1に開示された伝票生成システムでも解消することができなかった。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、代理人側及び銀行側の負担を軽減しながら、代理人が現金を出金する取引を安全に実現することが可能な代理人認証システム及び代理人認証方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明においては、責任者から指定された代理人による代理人取引において代理人認証を行う代理人認証システムであって、前記代理人取引に関する所定項目の情報からなる代理人取引情報を管理する案件管理システムと、操作者に対する本人確認の機能を有する現金自動取引装置と、を備え、前記案件管理システムが、前記代理人取引の案件ごとに、前記責任者からの入力に基づいて前記代理人取引情報を生成及び登録し、前記登録した代理人取引情報の案件識別情報を帳票に出力し、前記現金自動取引装置が、前記帳票及び本人確認書類を提示した前記操作者に対して本人確認を行い、前記本人確認が成功した場合に、前記帳票から取得した案件識別情報及び前記本人確認書類から取得した氏名情報を前記案件管理システムに送信し、前記案件管理システムが、前記現金自動取引装置から受信した前記案件識別情報と前記氏名情報との組合せに基づいて前記代理人取引情報を検索し、当該組合せを有する案件が前記代理人取引情報に存在する場合に、前記操作者が前記代理人であるとして代理人認証を成功と判断し、前記代理人取引情報に登録された当該案件の取引内容による取引の許可を前記現金自動取引装置に通知し、前記現金自動取引装置が、前記案件管理システムからの通知に従って取引を実行することを特徴とする代理人認証システムが提供される。
【0009】
また、かかる課題を解決するため本発明においては、責任者から指定された代理人による代理人取引において代理人認証システムが代理人認証を行う代理人認証方法であって、前記代理人認証システムは、前記代理人取引に関する所定項目の情報からなる代理人取引情報を管理する案件管理システムと、操作者に対する本人確認の機能を有する現金自動取引装置と、を有し、前記案件管理システムが、前記代理人取引の案件ごとに、前記責任者からの入力に基づいて前記代理人取引情報を生成及び登録する登録ステップと、前記案件管理システムが、前記登録ステップで登録した代理人取引情報の案件識別情報を帳票に出力する帳票出力ステップと、前記現金自動取引装置が、前記帳票及び本人確認書類を提示した前記操作者に対して本人確認を行い、前記本人確認が成功した場合に、前記帳票から取得した案件識別情報及び前記本人確認書類から取得した氏名情報を前記案件管理システムに送信する本人確認ステップと、前記案件管理システムが、前記本人確認ステップで前記現金自動取引装置から受信した前記案件識別情報と前記氏名情報との組合せに基づいて前記代理人取引情報を検索し、当該組合せを有する案件が前記代理人取引情報に存在する場合に、前記操作者が前記代理人であるとして代理人認証を成功と判断し、前記代理人取引情報に登録された当該案件の取引内容による取引の許可を前記現金自動取引装置に通知する代理人認証ステップと、前記現金自動取引装置が、前記代理人認証ステップによる通知に従って取引を実行する取引実行ステップと、を備えることを特徴とする代理人認証方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、代理人側及び銀行側の負担を軽減しながら、代理人が現金を出金する取引を安全に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る代理人認証システム100の構成例を示す図である。
【
図2】本人確認機能付き現金自動取引装置(ATM)120の構成例を示す図である。
【
図3】代理人認証システム100を利用した現金出金取引の手順例を示すフローチャートである。
【
図4】案件管理システム110に登録される代理人取引情報の一例を示す図である。
【
図5】第4の変形例で案件管理システム110に登録される代理人取引情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0013】
以下の説明では、「テーブル」、「表」、「リスト」、「キュー」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。データ構造に依存しないことを示すために「XXテーブル」、「XXリスト」等を「XX情報」と呼ぶことがある。各情報の内容を説明する際に、「識別情報」、「識別子」、「名」、「ID」、「番号」等の表現を用いるが、これらについてはお互いに置換が可能である。
【0014】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号又は参照符号における共通番号を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、その要素の参照符号を使用又は参照符号に代えてその要素に割り振られたIDを使用することがある。
【0015】
また、以下の説明では、プログラムを実行して行う処理を説明する場合があるが、プログラムは、少なくとも1以上のプロセッサ(例えばCPU)によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えばメモリ)及び/又はインターフェースデバイス(例えば通信ポート)等を用いながら行うため、処理の主体がプロセッサとされてもよい。同様に、プログラムを実行して行う処理の主体が、プロセッサを有するコントローラ、装置、システム、計算機、ノード、ストレージシステム、ストレージ装置、サーバ、管理計算機、クライアント、又は、ホストであってもよい。プログラムを実行して行う処理の主体(例えばプロセッサ)は、処理の一部又は全部を行うハードウェア回路を含んでもよい。例えば、プログラムを実行して行う処理の主体は、暗号化及び復号化、又は圧縮及び伸張を実行するハードウェア回路を含んでもよい。プロセッサは、プログラムに従って動作することによって、所定の機能を実現する機能部として動作する。プロセッサを含む装置及びシステムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0016】
プログラムは、プログラムソースから計算機のような装置にインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布サーバ又は計算機が読み取り可能な記憶メディアであってもよい。プログラムソースがプログラム配布サーバの場合、プログラム配布サーバはプロセッサ(例えばCPU)と記憶資源を含み、記憶資源はさらに配布プログラムと配布対象であるプログラムとを記憶してよい。そして、プログラム配布サーバのプロセッサが配布プログラムを実行することで、プログラム配布サーバのプロセッサは配布対象のプログラムを他の計算機に配布してよい。また、以下の説明において、2以上のプログラムが1つのプログラムとして実現されてもよいし、1つのプログラムが2以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0017】
(1)構成
まず、
図1及び
図2を参照しながら、本発明の一実施形態に係る代理人認証システム100の構成、及びその関連構成について説明する。
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係る代理人認証システム100の構成例を示す図である。
図2は、本人確認機能付き現金自動取引装置(ATM)120の構成例を示す図である。
【0019】
図1に示すように、代理人認証システム100は、案件管理システム110及び本人確認機能付き現金自動取引装置(ATM)120を備える。また、
図1には、代理人認証システム100の関連構成として、インターネットバンキング130、勘定系システム140、端末150、及びプリンタ160が示されている。
【0020】
また、
図1には、取引(本例では出金)に対する責任を有する責任者10と、実際に現金の出金を行う代理人20とが示されている。責任者10は、インターネットバンキング130の銀行口座を管理している責任者であり、例えば法人企業の経営者等である。代理人20は、責任者10からの依頼に従って代理人として現金の出金を行う人物であり、例えば法人企業の事務員である。
【0021】
なお、
図1において、構成間の矢印等に対して付与された符号(S11~S20)は、後述する
図3のフローチャートにおけるステップS11~S20の処理に対応する。
【0022】
案件管理システム110は、代理人20が行う代理人取引を管理するシステムであって、例えばクラウド等のサーバによって実現される。案件管理システム110は、法人向けのインターネットバンキング130とは独立して構成される。この理由は、各銀行は独自のインターネットバンキング130のサーバを持っており、このようなインターネットバンキング130に案件管理システム110を導入しようとすると、大規模な改修が必要となり、多額のコストと多くの時間が掛かってしまうためである。したがって、本実施形態では、案件管理システム110をクラウド等の独立したサーバとし、当該サーバのインタフェース部をAPI(Application Programming Interface)で提供することにより、各銀行が保有する独自の法人向けインターネットバンキング130のサーバを改修するよりも小規模な改修で、代理人認証システム100の実現を可能にしている。
【0023】
案件管理システム110は、主に、表示、登録、更新、及び認証の機能を有する。例えば、案件管理システム110は、代理人取引に関する情報(代理人取引情報)を登録するための入力画面を責任者10の端末150に表示し、責任者10による入力操作に応じて、代理人取引情報を生成あるいは更新し、保持する。代理人取引情報の詳細は、
図4を参照しながら後述する。また、案件管理システム110は、責任者10からの依頼を受けた代理人20が代理人としてATM120から現金を出金しようとするとき、自身が保持する代理人取引情報と、ATM120で行われた代理人20に対する本人確認処理の結果と、に基づいて、代理人20が代理人取引情報に登録された代理人であるかを判断する代理人認証を行う。
【0024】
本人確認機能付き現金自動取引装置(ATM)120は、
図2に示すように、カメラ部121、本人確認部122、及び現金自動取引部123を有して構成される。
【0025】
インターネットバンキング130は、法人向けのネットバンキング(いわゆるエレクトロニックバンキング(EB)である。
【0026】
勘定系システム140は、銀行の勘定処理を実行する業務システムである。勘定系システム140は、インターネットバンキング130を提供する銀行ごとに構築され、本例では、責任者10が所属する法人の銀行口座を管理している。
【0027】
端末150は、責任者10が使用する情報処理端末であって、インターネットバンキング130のネットワークに接続可能である。端末150は、具体的には、パーソナルコンピュータやスマートフォン等、ネットワークへの接続機能を有する情報処理端末であればよい。
【0028】
プリンタ160は、端末150と直接的または間接的に接続されたプリンタである。プリンタ160は、端末150がインターネットバンキング130を経由して案件管理システム110に接続されているときに、端末150からの操作に応じて、帳票161を出力する。但し、帳票161の出力は、案件管理システム110によって制御される。具体的には、責任者10を責任者とする案件の代理人取引情報が登録済みである場合に、案件管理システム110は、責任者10が使用する端末150からの操作に応じて、当該案件の帳票161の出力を許可する。このような制御を行うことにより、責任者10以外の者が代理人取引の帳票161を発行することを抑制できる。
【0029】
帳票161は、例えば二次元バーコードであり、具体的な取引内容を示す情報を含まず、代理人取引情報に登録された案件管理番号を暗号化した情報が印刷される。帳票161に出力される情報は、案件管理システム110によって制御される。なお、帳票161は、二次元バーコードに限定されるものではなく、具体的な取引内容を示す情報を含まず、代理人20が携帯可能な形態であれば、他の出力形式(例えば、画像や電子データ等)であってもよい。
【0030】
(2)代理人出金手順
次に、
図3等を参照しながら、
図1及び
図2に示した代理人認証システム100において、責任者10からの依頼を受けて代理人20がATM120から現金を出金する手順を詳しく説明する。
【0031】
図3は、代理人認証システム100を利用した現金出金取引の手順例を示すフローチャートである。
【0032】
図3によればまず、責任者10が、端末150を操作してインターネットバンキング130のログイン画面を表示し、このログイン画面においてIDとパスワードを入力することにより、インターネットバンキング130にログインする(ステップS11)。IDとパスワードは、責任者10の本人(もしくは法人企業の責任者)しか知りえない情報であり、ログインに成功したことにより、責任者10の本人(もしくは法人企業責任者)がログインしたものとみなす。
【0033】
次に、責任者10は、ステップS11のログイン成功によって端末150に表示されるインターネットバンキング130のメニューの中から、所望する取引を選択する。具体的には本例では、代理人によって現金を出金する取引を意味する「代理人出金」を選択する(ステップS12)。
【0034】
ステップS12で「代理人出金」が選択されると、インターネットバンキング130が案件管理システム110に接続する(ステップS13)。以後、端末150と案件管理システム110との間のやりとりは、全てインターネットバンキング130を経由して行われる。ステップS13において案件管理システム110に接続されると、端末150には、代理人取引情報の登録画面が表示される。
【0035】
次に、責任者10が端末150を操作して、代理人取引に関する所定の情報を入力する。この入力操作を受けて、案件管理システム110は、代理人取引情報を登録する(ステップS14)。ステップS14で行われる代理人取引情報の登録を、
図4の代理人取引情報210を用いて説明する。
【0036】
図4は、案件管理システム110に登録される代理人取引情報の一例を示す図である。
図4に示した代理人取引情報210は、案件管理システム110が保持する代理人取引情報の全体テーブルの一例である。本説明では、簡便のため、案件管理システム110に接続されたときに、
図4に示す代理人取引情報210のテーブルが端末150に表示され、責任者10がこのテーブルの空欄にデータを入力することによって代理人取引情報210が案件管理システム110に登録されるとするが、実際には、端末150における代理人取引情報の表示態様と、案件管理システム110が保持する代理人取引情報のデータ構造は同じでなくてもよい。
【0037】
図4の代理人取引情報210は、責任者10が登録する代理人取引の案件ごとにレコードを有し、各レコードは項目211~216のデータ項目を有して構成される。なお、
図4のデータ構成は一例であって、他にも例えば、出金元の法人口座(インターネットバンキング130でログインしている口座)の口座番号が自動的に登録されたりしてもよい。
【0038】
項目211の「案件管理番号」欄には、代理人取引として登録される案件の管理番号が登録される。項目212の「出金金額」欄には、当該案件において出金する金額が登録される。項目213の「出金責任者氏名」欄には、当該案件を登録した責任者10の名前が登録される。項目214の「出金代理人氏名」欄には、当該案件において実際に出金を行う代理人20の名前が登録される。項目215の「案件登録日時」欄には、当該案件の登録日時が登録される。項目216の「ATM取引完了日時」欄には、当該案件における代理人取引(すなわちATMにおける出金)が完了した日時が登録される。
【0039】
図4の代理人取引情報210を用いて
図3のステップS14の処理を詳しく説明する。まず、ログイン済みの端末150から接続された案件管理システム110は、代理人取引情報210の新たなレコードを生成し、ログイン情報に基づいて責任者10の氏名を当該レコードの項目213に設定する。次に、案件管理システム110は、GUI(Graphical User Interface)等のインタフェースを用いて当該レコードを示す登録画面を端末150に表示する。次に、責任者10が、端末150に表示された登録画面において、項目212に出金する金額を入力し、項目213に代理人の氏名を入力し、入力を確定する操作(登録ボタンの押下)を行う。登録ボタンの押下を受けて、案件管理システム110は、自身が保持する代理人取引情報210を更新し、上記の入力情報を設定したレコードを登録する。なお、項目216のデータは、後述するステップS20で記録される。
【0040】
図3の説明に戻る。代理人取引情報を登録した後、責任者10は、案件管理システム110から提示される所定の画面において所定の操作を行う(具体的には例えば、登録完了画面において登録情報を出力する「印刷」ボタンを押下する等)ことより、端末150に接続されたプリンタ160から、帳票161を出力する。帳票161は、例えば2次元バーコードである。帳票161には、ステップS14で登録された代理人取引情報210の具体的な取引内容が分かる情報は示されず、例えば、項目211の「案件管理番号」のみが、暗号化された状態で印刷される。
【0041】
次に、代理人20が、ステップS15で出力された帳票161(二次元バーコード)を所持して、ATM120に赴く。ATM120は、帳票161に記録された情報(本例では暗号化された二次元バーコードの情報)を取得可能なスキャナ等の装置を有する。この装置を用いて、ATM120は、代理人20が提示した帳票161から、暗号化された案件管理番号を読み取り、復号することによって案件管理番号を取得する(ステップS16)。
【0042】
次に、ATM120(本人確認部122)は、代理人20に対する本人確認処理を行う(ステップS17)。本人確認処理には、代理人20が所持する顔写真付きの本人確認書類(例えば免許証)を利用する。
【0043】
本人確認処理ではまず、カメラ部121が免許証の写真と代理人20の顔とを撮影する。次に、本人確認部122が、免許証の真贋を判定する(真贋判定)。真贋判定の手法には、免許証等の本人確認書類に対する既知の真贋判定の手法を利用可能であり、詳細な説明を省略する。一例を挙げると、本人確認部122に設けた光源から特殊な光を免許証に照射して反射状態を確認する等が想定される。さらに、本人確認部122は、カメラ部121が撮影した画像を用いて顔認証を行うことにより、本人確認機能付きATM120を操作している人物(代理人20)が免許証に示された人物と同一であるかを判定する(本人判定)。この本人判定では、操作者に所定の動きを指示して生体認証を行うようにしてもよく、これにより、第三者が免許証に示された人物になりすますことを防止できる。そして、本人確認部122は、真贋判定で免許証が本物であると判定し、かつ、本人判定で代理人20が免許証に示された人物であると判定した場合に、免許証に記載された氏名を文字データで取り扱う。当該文字データは、カメラ部121が撮影した免許証の画像にOCR(Optical Character Recognition)等の画像処理を実施することによって取得できる。本人確認処理で代理人20が免許証の本人であると確認できたことにより、ATM120は、当該文字データを代理人20の氏名情報として取り扱うことができる。
【0044】
次に、ATM120(本人確認部122)は、ステップS16で取得した案件管理番号とステップS17の本人確認処理を経て得られた本人確認書類(例えば免許証)の氏名の文字データとを、案件管理システム110に送信する。そして、案件管理システム110は、受信した案件管理番号をキーとして、自身が保持する代理人取引情報210から該当する案件を検索し、該当する案件レコードにおける項目204の「出金代理人氏名」と受信した氏名の文字データとを突き合わせ、両者が一致するか否かを判定する(ステップS18)。
【0045】
ステップS18で行われる突合の結果がOKである、すなわち、出金代理人氏名と免許証の氏名とが一致する場合(ステップS18のYES)、案件管理システム110は代理人20の認証に成功したと判断する。この場合、案件管理システム110は、ステップS18で検索した案件レコードにおいて項目212の「出金金額」に登録された金額の出金を許可する旨をATM120に通知し、通知を受け取ったATM120は、勘定系システム140と通信し、法人の銀行口座から上記金額を出金する(ステップS19)。勘定系システム140は、出金の記録をインターネットバンキング130にも通知する。そしてATM120は、ステップS19の出金処理が完了すると、その取引完了日時を案件管理システム110に通知する。最後に、案件管理システム110が、ATM120から通知された取引完了日時を上記案件レコードの項目216の「ATM取引完了日時」に登録し(ステップS20)、代理人出金処理を完了する。代理人取引情報210にATM取引完了日時が記録されることにより、責任者10は、登録した代理人取引がいつ完了したか、あるいは未完了であるか等を、代理人取引情報210から確認することができる。
【0046】
一方、ステップS18で行われる突合の結果がNGである、すなわち、出金代理人氏名と免許証の氏名とが一致しない場合(ステップS18のNO)、代理人20の認証に失敗したと判断する。この場合、案件管理システム110は、ATM120に代理人20による出金が許可されない旨を通知し、代理人出金処理を完了する。このとき、ATM120は、自身の表示画面(不図示)等を用いて、代理人認証が失敗したことや代理人20による現金の出金が許可できないことを代理人20に通知するようにしてもよい。
【0047】
上記のような代理人取引によれば、以下の効果が得られる。
【0048】
第1に、本実施形態に係る代理人認証システム100では、帳票161に印刷される情報が暗号化されていることから、代理人取引を行うために必要となる帳票161(二次元バーコード)を紛失しても、帳票161を入手した第三者による悪用を防止できる。特に、帳票161には、責任者10や代理人20の氏名、及び銀行の口座番号等の個人情報(またはそれに類する情報)は印刷されておらず、仮に復号化されたとしても案件管理番号しか示されないため、情報漏洩や不正出金といった被害をより確実に防止することができる。
【0049】
第2に、本実施形態に係る代理人認証システム100では、代理人20に対する本人確認処理において本人確認部122が、ATM120の操作者を撮影した画像と本人確認書類に付された写真とを用いて本人判定を行うことから、出金代理人である代理人20が帳票161及び本人確認書類(免許証)の盗難にあったとしても、窃盗犯を撮影した画像と本人確認書類の写真とが一致しないために窃盗犯が本人判定をクリアすることはできず、窃盗犯が代理人になりすまして出金することができない。また仮に、窃盗犯が自身の免許証等を用いて本人判定をクリアしたとしても、案件管理システム110における代理人認証において、免許証等に記載された氏名情報が代理人取引情報210の出金代理人氏名とは一致しないために代理人認証に失敗することになり、なりすまし出金を防止することができる。
【0050】
第3に、本実施形態に係る代理人認証システム100において、案件管理システム110が代理人認証を行うためにATM120から案件管理システム110に送信されるデータは、氏名情報の文字データだけであることから、案件管理システム110とATM120との間の回線負荷を少なく構築することができる。代理人認証全体でみても、案件管理システム110とATM120との間でやり取りされるその他のデータも、代理人認証の成否の通知やATM取引完了日時の通知等であり、軽微なデータ量ですむことから、案件管理システム110とATM120との間の回線負荷を少なく構築することができる。
【0051】
第4に、本実施形態に係る代理人認証システム100によれば、代理人取引を行う際、代理人20は、責任者10から渡される帳票161と自身の本人確認書類だけをATM120に持っていけばよいことから、代理人20の負担を軽減することができる。また、ATM120においても特段に複雑な操作は要求されない点も、代理人20の負担を軽減する。また、銀行窓口の行員を介することなくATM120で代理人取引が完遂することから、銀行側の負担も軽減することができる。さらに、代理人取引情報に登録した金額でしか出金が行われないことから、不正出金等のリスクが低く、責任者10の管理負担も低減することができる。
【0052】
(3)変形例
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。以下に、いくつかの変形例を提示し、その特徴を説明する。
【0053】
(3-1)第1の変形例
上記した実施形態の場合、代理人20の氏名を代理人認証におけるキーの1つとしているため、企業内に同姓同名の人物が存在した場合に、なりすまし出金ができてしまう可能性がある。このような状況を考慮して、代理人認証システム100は、以下の第1の変形例のように構成されてもよい。
【0054】
第1の変形例では、案件管理システム110が、第三者からは知り得ない、代理人20を一意に特定可能な識別情報(例えば社員番号)を含む形態で、代理人取引情報を保持する。具体的には例えば、
図4に示した代理人取引情報210に「出金代理人社員番号」の項目を追加したデータ構成とする。代理人取引情報における「出金代理人社員番号」の項目は、責任者10による代理人取引情報210の登録時(
図3のステップS14)に、責任者10が指定する代理人20の社員番号が入力され、登録される。社員番号は、企業内で社員を一意に識別可能な情報である。
【0055】
第1の変形例では、帳票161を所持した代理人20がATM120で本人確認処理(
図3のステップS17)を受けた後、本人確認部122がATM120の表示画面に「社員番号」の入力を追加で促すように構成する。そして、本人確認処理で代理人20の本人確認が完了した後、ATM120(本人確認部122)が、案件管理番号、本人確認書類から読み取った氏名の文字データ、及び社員番号を入力キーとして案件管理システム110に送信し、案件管理システム110が、これらの入力キーの情報と代理人取引情報220とを突合することによって代理人認証を行う。
【0056】
このような手順で代理人認証を行うことにより、第1の変形例では、代理人20と同姓同名の人物が企業内に存在したとしても、当該人物によるなりすまし出金を防止することができ、よりセキュアな代理人認証システムを提供することができる。
【0057】
なお、本例では、代理人20の社員番号を追加の情報として用いたが、代理人20を確実に識別可能にする方法であれば、利用可能な情報は社員番号に限定されない。具体的には例えば、代理人取引情報220において、項目221の「出金代理人社員番号」の代わりに、または追加して、代理人20及び責任者10しか把握していない秘密のパスワード等を登録するようにしてもよい。この場合、代理人20によるATM120の操作時に、代理人取引情報に登録されたパスワード等の入力が求められ、案件管理システム110が、このパスワード等を入力キーの1つとして代理人認証を行えばよい。
【0058】
(3-2)第2の変形例
第2の変形例として、上述した実施形態または第1の変形例に係る代理人認証システム100を、現金の出金に対する企業内の相互牽制にも活用することができる。
【0059】
第2の変形例では、案件管理システム110が、責任者10による代理人取引情報210の登録の際に、項目214(出金代理人氏名)に項目213(出金責任者氏名)と同じ名前を設定できないように制限する。
【0060】
このような第2の変形例によれば、責任者10が自分自身を代理人20に指定することを禁止できるため、責任者10が単独で法人の銀行口座から出金できないようにする相互牽制を実現できる。
【0061】
(3-3)第3の変形例
上述した実施形態または変形例に係る代理人認証システム100の場合、第三者がインターネットバンキング130の責任者ID及びパスワードを奪取してログインし、代理人を自身に設定した場合には、当該第三者による出金が可能となってしまう。このような事態を防止するために、代理人認証システム100の第3の変形例が考えられる。
【0062】
第3の変形例では、責任者10が使用する端末150をインターネットバンキング130に事前に登録し、端末150からインターネットバンキング130に接続するときにはワンタイムパスワードの入力を必要とするように構成すればよい。このように構成することで、責任者10がID及びパスワードを奪取されても、不正出金のリスクを低減することができる。
【0063】
(3-4)第4の変形例
上述した実施形態または変形例に係る代理人認証システム100では、代理人20が帳票161を紛失した場合、前述した通り取引情報が流出するリスクはないが、代理人20は再び責任者10の元に戻って帳票161の再発行をしてもらう必要が生じるため、利便性が損なわれるおそれがある。このような問題を解決するために、代理人認証システム100の第4の変形例が考えられる。
【0064】
第4の変形例に係る代理人認証システム100は、案件管理システム110が「紛失フラグ」のチェック情報が追加された代理人取引情報210を保持し、紛失フラグにチェックが入った場合に、後述する紛失時手順に対応できるよう構成される。
【0065】
図5は、第4の変形例で案件管理システム110に登録される代理人取引情報の一例を示す図である。
図5には、紛失時手順開始前の代理人取引情報220と、紛失時手順開始後の代理人取引情報230とが例示されている。代理人取引情報220は、
図4の代理人取引情報210のデータ構成に項目221(紛失フラグ)が追加されている。代理人取引情報230は、
図4の代理人取引情報210のデータ構成に項目231(出金店舗)及び項目232(出金代理人社員番号)が追加されている。
【0066】
項目221の「紛失フラグ」欄には、帳票161の紛失に関するチェックフラグが示され、紛失が発生していない状況ではチェック無しの状態で登録される。帳票161を紛失した代理人20がその旨を責任者10に連絡すると、責任者10は、案件管理システム110にログインして当該案件の案件管理番号を選択する。次に、責任者10は、選択した案件管理番号に対応する代理人取引情報220のレコードにおいて、項目221の紛失フラグにチェックを入れる。
【0067】
代理人取引情報220において紛失フラグがチェックされると、案件管理システム110は、当該案件について、代理人取引情報230に示すような登録画面を表示し、項目231,232への入力を責任者10に要求する。なおこのとき、項目211~216の値は、当該案件の代理人取引情報220における同項目の値が引き継がれる。
【0068】
項目231の「出金店舗」欄には、取引を行う銀行の店舗の識別情報(例えば店舗コード等)が登録される。項目232の「出金代理人社員番号」欄には、責任者10が指定する代理人20の社員番号が登録される。社員番号は、企業内で社員を一意に識別可能な情報である。
【0069】
責任者10によって項目231,232が入力されると、案件管理システム110は代理人取引情報230を登録し、以後の紛失時手順では、この代理人取引情報230を使用して代理人認証を行う。なお、本例では説明を簡便にするために代理人取引情報220と代理人取引情報230とを分けて示したが、1つに統合して管理されてもよい。また、責任者10の手間は増えるが、項目231,232の情報は、最初に本案件のレコードが作成されるときに事前に登録されるようにしてもよい。
【0070】
紛失フラグにチェックが入れられて、案件管理システム110において代理人取引情報230に所定の情報(項目231,232)が追加登録された後、代理人20は、責任者10が項目231に登録した店舗に赴き、ATM120で、帳票161を紛失した場合のために用意された所定の手続きボタンを押下する。この手続きボタンが押下されると、ATM120の本人確認部122は、紛失時手順を開始する。
【0071】
紛失時手順において、本人確認部122は、まず、通常の代理人取引の際と同様に、代理人20の本人確認書類(以下、免許証)を使って真贋判定及び本人判定を行う。さらに、本人確認部122は、紛失時手順に特有の手順として、代理人20に本人の社員番号を入力させる。そして、本人確認部122は、真贋判定で免許証が本物であると判定し、かつ、本人判定で代理人20が免許証に示された人物であると判定した場合に、免許証から読み取った氏名の文字データと、ATM120が設置された店舗の識別情報(店舗コード)と、代理人20が入力した社員番号と、を案件管理システム110に送信する。
【0072】
次いで、案件管理システム110は、ATMか受信した「店舗コード」、「社員番号」及び「氏名の文字データ」をキーとして、自身が保持する代理人取引情報230から、該当する案件レコードの案件管理番号(項目211)を探索する。この探索の結果、案件管理番号が存在した場合には、案件管理システム110は代理に20の認証に成功したと判断する。この場合、案件管理システム110は、上記該当する案件レコードで項目212の「出金金額」に登録された金額の出金を許可する旨をATM120に通知し、通知を受け取ったATM120は、勘定系システム140と通信し、法人の銀行口座から上記金額を出金する。
【0073】
以上のように紛失時手順が行われることにより、第4の変形例では、代理人20が帳票161を紛失した場合に、責任者10の元に戻って帳票161を再発行してもらうことなく、代理人認証を経て代理人取引を遂行することができる。したがって、第4の変形例に係る代理人認証システム100は、機密性及び利便性の高い代理人取引を提供することができる。
【0074】
なお、第4の変形例に係る代理人認証システム100は、案件管理番号の代わりに代理人20の識別情報(上記説明では社員番号)を利用して、代理人認証を行うことができるよう構成されたものである、したがって、さらなる変形例として、案件管理システム110が、紛失時手順に対応する代理人取引情報230を通常時から保持するようにすれば、紛失時でない通常時から、帳票161(例えば二次元バーコード)を出力しなくても、事前登録された情報(代理人取引情報)、本人確認書類の情報、及び代理人20による入力情報に基づいて、代理人認証及び代理出金が可能となる。
【0075】
また、上記の実施形態及び各変形例においては、さらに他の情報も代理人取引情報に登録可能とすることができる。例えば、取引を行う店舗の指定の他に、取引の「有効期限」を指定して代理人取引情報に事前に登録できるようにしてもよい。有効期限は、特定の時間帯を指定可能としてもよい。有効期限が代理人取引情報に登録されている場合は、案件管理システム110による代理人認証の際に、現在日時も検索キーとして、有効期限の条件を満たしているかを判断すればよい。代理人取引情報に有効期限を登録可能にすることで、代理人取引をより安全に実現することができる。また、有効期限は「取引内容を示す情報に含まれない」情報といえることから、帳票161に出力してもよい。帳票161に有効期限を出力する際は、二次元バーコード等のなかに埋め込むようにしてもよいが、二次元バーコードとは別の領域に印刷して代理人20が認識し易いようにしてもよい。代理人20が有効期限を認識できれば、利便性を高めることができる。また、帳票161に有効期限が出力される場合には、ATM120による本人確認等の段階で有効期限を読み取り、現在日時が有効期限の条件を満たさない場合には取引を中断するようにしてもよい。このように構成することで、案件管理システム110側への通信機会を削減することができるため、回線負荷を低減する効果が得られる。
【0076】
以上、上記した実施形態及び変形例は、本発明を分かりやすく説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、実施形態や変形例の中で説明された特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明が実施形態に制限されることは無く、本発明の思想に合致するあらゆる応用例が本発明の技術的範囲に含まれる。本発明は、当業者であれば本発明の範囲内で様々な追加や変更等を行うことができる。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0077】
また、本発明は、本人確認機能を有する現金自動取引装置を利用した現金の出金取引全般に適用可能である。さらに言えば、本発明は、法人口座からの代理人取引といった法人向けに限定されるものではなく、後見人と被後見人の関係等のように、依頼に基づく代理取引全般にも適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 責任者
20 代理人
100 代理人認証システム
110 案件管理システム
120 本人確認機能付き現金自動取引装置(ATM)
121 カメラ部
122 本人確認部
123 現金自動取引部
130 インターネットバンキング
140 勘定系システム
150 端末
160 プリンタ
161 帳票
210,220,230 代理人取引情報