(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157368
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】コンロバーナおよびガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/06 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
F23D14/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067248
(22)【出願日】2022-04-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一浩
【テーマコード(参考)】
3K017
【Fターム(参考)】
3K017AB04
3K017AD12
(57)【要約】
【課題】煮零れ汁がバーナヘッドに掛かっても燃焼状態が悪化しないコンロバーナを提供する。
【解決手段】バーナヘッド(110)の天井部(111)の底面の外縁から円筒形状の外筒壁(112)を下方に向けて立設し、外筒壁よりも内側には円筒形状の内筒壁(113)を下方に向けて立設する。また、外筒壁の下端面には複数の炎口溝(112a)を形成する。更に、バーナヘッドの天井部の底面または上面には、外筒壁よりも内側で且つ内筒壁よりも外側の位置に、天井部の周方向に延びる周突条(114)を形成する。また、煮零れは、大きな煮零れよりも小さな煮零れの方が高い頻度で発生し、小さな煮零れでは大きな煮零れとは異なる態様でバーナヘッドが変形するが、バーナヘッドの天井部に周突条を形成すれば、小さな煮零れ発生時の変形を効果的に抑制できる。このため、半径方向の突条を形成する従来の方法に比べて燃焼状態の悪化を確実に抑制できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスコンロに搭載されて調理容器内の調理物を加熱調理するために用いられ、燃料ガスと空気との混合ガスが供給されるバーナボディと、バーナボディの上に載置されたバーナヘッドとを有すると共に、前記バーナボディに供給した前記混合ガスを、前記バーナヘッドの外周側面に形成された複数の炎口から流出させることによって、前記混合ガスを燃焼させるコンロバーナであって、
前記バーナボディは、
前記バーナヘッドが載置される円環形状の載置面が形成された外側筒体と、
前記外側筒体の内側に形成された内側筒体と
を備え、
前記外側筒体と前記内側筒体との間の空間に前記混合ガスが供給されるようになっており、
前記バーナヘッドは、
円板形状または円環形状に形成された天井部と、
前記天井部の底面の外縁から下方に向けて立設された円筒形状の外筒壁と、
前記外筒壁よりも内側の位置で、前記天井部の前記底面から下方に向けて立設されて前記バーナボディの前記内側筒体に嵌合する円筒形状の内筒壁と
を備え、
前記外筒壁の下端面には、前記外筒壁を半径方向に貫通する複数の炎口溝が形成されている
前記コンロバーナにおいて、
前記バーナヘッドの前記天井部の前記底面または上面には、前記外筒壁よりも内側で且つ前記内筒壁よりも外側の位置に、前記天井部の周方向に延びる周突条が形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記バーナヘッドの前記天井部の前記底面または上面には、前記外筒壁よりも内側で且つ前記内筒壁よりも外側の位置に、前記天井部の半径方向に延びる半径突条が形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンロバーナにおいて、
前記バーナヘッドは、前記コンロバーナが前記ガスコンロに搭載された時に前記ガスコンロの五徳爪と向き合うこととなる五徳爪対向位置では、前記五徳爪と向き合わない非対向位置に比べて、前記炎口溝の形成密度が小さくなっており、
前記半径突条は、前記五徳爪対向位置に向かって形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項4】
請求項1に記載のコンロバーナにおいて、
前記周突条は、前記天井部の前記底面から下方に向けて突設されており、
前記周突条の下端の位置は、前記外筒壁の下端面から前記炎口溝の高さの半分だけ上方の位置よりも更に上方の位置となっている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項5】
請求項1に記載のコンロバーナであって、
前記バーナヘッドは、
前記バーナボディの前記載置面の上に載置される下バーナヘッドと、
前記下バーナヘッドの上に載置される上バーナヘッドと
を備え、
前記下バーナヘッドは、
円環形状に形成された中間天井部と、
前記中間天井部の底面の外縁部分から下方に向けて立設されて、前記載置面の上に載置される円筒形状の下筒壁と、
前記中間天井部の上面の外縁部分から上方に向けて立設された円筒形状の上筒壁と
を備え、
前記下筒壁の下端面には、前記下筒壁を半径方向に貫通する複数の下筒炎口溝が形成されており、
前記上筒壁の上端面には、前記上筒壁を半径方向に貫通する複数の上筒炎口溝が形成されており、
前記上バーナヘッドは、
前記天井部、前記外筒壁、および前記内筒壁を備えると共に、前記下バーナヘッドの前記上筒壁の上端面に載置されており、
前記天井部の前記底面または上面には、前記外筒壁よりも内側で且つ前記内筒壁よりも外側の位置に、前記天井部の周方向に延びる周突条が形成されている
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項6】
請求項5に記載のコンロバーナにおいて、
前記上バーナヘッドを前記下バーナヘッドに載置すると、前記上バーナヘッドの前記外筒壁に形成された複数の前記炎口溝の底面は、前記下バーナヘッドの前記上筒壁の前記上端面で塞がれた状態となり、前記下バーナヘッドの前記上筒壁に形成された複数の前記上筒炎口溝の上面は、前記上バーナヘッドの前記外筒壁の前記下端面で塞がれた状態となる
ことを特徴とするコンロバーナ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の何れか一項に記載のコンロバーナを備えるガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに搭載されて、燃料ガスと空気との混合ガスを燃焼させるコンロバーナ、およびコンロバーナを搭載したガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
調理容器内の調理物を加熱調理する際には、ガスコンロが用いられることが一般的である。ガスコンロにはコンロバーナが搭載されており、コンロバーナで燃料ガスを燃焼させることによって調理容器内の調理物を加熱調理する。コンロバーナは燃料ガスと空気とを混合させた混合ガスを燃焼させるようになっており、このためコンロバーナは、燃料ガスを空気と混合させて混合ガスを生成する混合通路を備えている。混合通路はバーナボディに接続されており、バーナボディの上にはバーナヘッドが載置されている。バーナヘッドの外周には円筒形状の筒状壁が下方に向かって突設されており、筒状壁の下端面には複数の炎口溝が放射状に形成されている。バーナボディの上にバーナヘッドを載置した状態で、混合通路からバーナボディに混合ガスを供給すると、バーナヘッドに形成された複数の炎口溝とバーナボディとの間に形成された複数の炎口から混合ガスが流出する。そして、この混合ガスに点火プラグなどで点火することで、混合ガスを燃焼させるようになっている。
【0003】
コンロバーナは次のような状態でガスコンロに搭載されている。先ず、ガスコンロの上面には天板が設置されているが、天板にはコンロバーナの上部(すなわち、バーナヘッドおよびバーナボディの上部)が挿通可能な大きさの開口部が形成されている。そしてコンロバーナは、天板の開口部から上部を突出させた状態で、天板の下方に搭載されている。また、天板上には、開口部から突出したコンロバーナの上部を囲むようにして、円環形状の五徳が載置されている。このため、五徳上に調理容器を置いてコンロバーナで混合ガスを燃焼させることにより、調理容器内の調理物を加熱調理することが可能となる。
【0004】
コンロバーナで混合ガスを燃焼させるとバーナヘッドが高温となる。このため、加熱調理中に煮零れが生じると、煮零れ汁が掛かった部分のバーナヘッドが冷やされてバーナヘッドが変形する。その結果、バーナヘッドの筒状壁の下端面がバーナボディから浮いてしまい、バーナヘッドの炎口から混合ガスを適切に流出させることができなくなって、燃焼状態が悪化することがある。そこで、バーナヘッドの上面の複数箇所に半径方向の突条を設けることで、バーナヘッドの変形を抑えて燃焼状態の悪化を抑制しようとするコンロバーナが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、提案されている従来のコンロバーナでは、煮零れ汁がバーナヘッドに掛かった時に燃焼状態が悪化する現象を、十分には抑制できないという問題があった。
【0007】
この発明は、従来の技術における上述した課題を解決するためになされたものであり、煮零れ汁がバーナヘッドに掛かった場合でも燃焼状態が悪化することを十分に抑制することが可能なコンロバーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明のコンロバーナは次の構成を採用した。すなわち、
ガスコンロに搭載されて調理容器内の調理物を加熱調理するために用いられ、燃料ガスと空気との混合ガスが供給されるバーナボディと、バーナボディの上に載置されたバーナヘッドとを有すると共に、前記バーナボディに供給した前記混合ガスを、前記バーナヘッドの外周側面に形成された複数の炎口から流出させることによって、前記混合ガスを燃焼させるコンロバーナであって、
前記バーナボディは、
前記バーナヘッドが載置される円環形状の載置面が形成された外側筒体と、
前記外側筒体の内側に形成された内側筒体と
を備え、
前記外側筒体と前記内側筒体との間の空間に前記混合ガスが供給されるようになっており、
前記バーナヘッドは、
円板形状または円環形状に形成された天井部と、
前記天井部の底面の外縁から下方に向けて立設された円筒形状の外筒壁と、
前記外筒壁よりも内側の位置で、前記天井部の前記底面から下方に向けて立設されて前記バーナボディの前記内側筒体に嵌合する円筒形状の内筒壁と
を備え、
前記外筒壁の下端面には、前記外筒壁を半径方向に貫通する複数の炎口溝が形成されている
前記コンロバーナにおいて、
前記バーナヘッドの前記天井部の前記底面または上面には、前記外筒壁よりも内側で且つ前記内筒壁よりも外側の位置に、前記天井部の周方向に延びる周突条が形成されている
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明のコンロバーナにおいては、バーナヘッドの天井部の底面の外縁から円筒形状の外筒壁が下方に向けて立設されており、外筒壁よりも内側には円筒形状の内筒壁が下方に向けて立設されている。更に、外筒壁の下端面には複数の炎口溝が形成されている。このため、バーナヘッドの内筒壁をバーナボディの内側筒体に嵌合させることによってバーナヘッドをバーナボディに対して位置決めした状態で、外筒壁をバーナボディの載置面に載置すると、複数の炎口溝の底面側が塞がれることによって、バーナヘッドの外周側面に複数の炎口が形成されるようになっている。そして、バーナヘッドの天井部の底面または上面には、外筒壁よりも内側で且つ内筒壁よりも外側の位置に、天井部の周方向に延びる周突条が形成されている。
【0010】
加熱調理中に生じる煮零れには、煮零れ汁がバーナヘッドの上面の例えば半分近くの広い範囲に掛かるような大きな煮零れと、バーナヘッドの上面の一部に掛かる小さな煮零れとが存在しており、大きな煮零れが発生する頻度よりも小さな煮零れが発生する頻度の方が高くなる。また、詳細には後述するが、大きな煮零れの発生時と小さな煮零れの発生時とでは、煮零れ汁によってバーナヘッドが変形する態様が異なっており、大きな煮零れが発生した場合には、バーナヘッドが下向きに凸の態様で反り返るように変形する。これに対して、小さな煮零れ汁が発生した場合は、バーナヘッドが反り返る態様の変形ではなく、煮零れ汁が掛かった部分の下方で炎口溝と炎口溝との間の隔壁が、バーナヘッドの半径方向に倒れるような態様で変形する。そして、炎口溝の隔壁が倒れる態様の変形は、従来のコンロバーナで提案されている方法、すなわち、バーナヘッドの複数個所に半径方向の突条を設けることによっては、バーナヘッドの変形を十分に抑制することができない。上述したように、小さな煮零れは大きな煮零れよりも高い頻度で発生するから、小さな煮零れが発生した時のバーナヘッドの変形を十分に抑制することができなければ、煮零れが発生した時に、かなりの確率で燃焼状態の悪化を抑制できないことになる。これに対して本発明のコンロバーナでは、バーナヘッドの天井部の底面または上面に周突条が形成されているので、炎口溝の間の隔壁が倒れる態様の変形を抑制して、燃焼状態の悪化を抑制することができる。その結果、従来のコンロバーナよりも確実に燃焼状態の悪化を抑制することが可能となる。
【0011】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、バーナヘッドの天井部の底面または上面に、外筒壁よりも内側で且つ内筒壁よりも外側の位置に、天井部の半径方向に延びる半径突条を形成してもよい。
【0012】
こうすれば、大きな煮零れが発生した場合に、バーナヘッドが反り返る態様で変形することも抑制できる。その結果、大きな煮零れが発生したことによるバーナヘッドの変形も抑制することができるので、煮零れによって燃焼状態が悪化することをより確実に抑制することが可能となる。
【0013】
また、上述の本発明のコンロバーナにおいては、バーナヘッドを次のようなバーナヘッドとしてもよい。すなわち、コンロバーナがガスコンロに搭載された時に、ガスコンロの五徳爪と向き合うこととなる五徳爪対向位置では、五徳爪と向き合わない非対向位置に比べて、小さな密度で炎口溝が形成されたようなバーナヘッドとしてもよい。そして、このようなバーナヘッドでは、五徳爪対向位置に向かう方向には半径突条を形成するが、非対向位置に向かう方向には半径突条を形成しないようにしてもよい。
【0014】
バーナヘッドに五徳爪対向位置と非対向位置とを形成した場合、非対向位置に向かう混合ガスの流れよりも、五徳爪対向位置に向かう混合ガスの流れの方が小さくなる。従って、五徳爪対向位置に向かう方向には半径突条を形成するが、非対向位置に向かう方向には半径突条を形成しないようにしておけば、混合ガスの流れが小さい部分にだけ半径突条を形成することになる。このため、半径突条を形成した影響で、混合ガスが炎口から流出し難くなって、コンロバーナの最大火力が低下する事態を防止することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のコンロバーナにおいては、天井部の底面から下方に向けて周突条を突設する場合、周突条の下端の位置を次のような位置としてもよい。すなわち、外筒壁の下端面からは上方に向かって炎口溝が穿設されているが、外筒壁の下端面から炎口溝の高さの半分だけ上方の位置よりも、周突条の下端の位置の方が上方となるようにしてもよい。
【0016】
こうすれば、天井部の底面から下方に向けて周突条を立設しても、炎口溝に向かう混合ガスの流れを邪魔することがない。その結果、コンロバーナの最大火力が低下する事態を防止することが可能となる。
【0017】
また、上述の本発明のコンロバーナにおいては、バーナボディの載置面の上に載置される下バーナヘッドと、下バーナヘッドの上に載置される上バーナヘッドとによってバーナヘッドを形成してもよい。そして、下バーナヘッドには、円環形状に形成された中間天井部の底面の外縁部分から、下方に向けて円筒形状の下筒壁を立設させると共に、下筒壁の下端面には、下筒壁を半径方向に貫通する複数の下筒炎口溝を形成する。また、中間天井部の上面の外縁部分からは、上方に向けて円筒形状の上筒壁を立設させると共に、上筒壁の上端面には、上筒壁を半径方向に貫通する複数の上筒炎口溝を形成してもよい。更に、上バーナヘッドには、上述した天井部や、外筒壁や、内筒壁を形成すると共に、下バーナヘッドの上筒壁の上端面に載置する。そして、上バーナヘッドの天井部の底面または上面に、外筒壁よりも内側で且つ内筒壁よりも外側の位置に、周方向に延びる周突条を形成するようにしてもよい。
【0018】
こうすれば、バーナヘッドが上バーナヘッドと下バーナヘッドとに分割可能なコンロバーナでも、煮零れ汁が掛かって上バーナヘッドが変形して、燃焼状態が悪化する事態を確実に抑制することが可能となる。
【0019】
また、バーナヘッドが上バーナヘッドと下バーナヘッドとに分割可能な本発明のコンロバーナにおいては、上バーナヘッドを下バーナヘッドに載置した時に、上バーナヘッドの外筒壁に形成された炎口溝の底面側が、下バーナヘッドの上筒壁の上端面で塞がれた状態となり、且つ、下バーナヘッドの上筒壁に形成された上筒炎口溝の上面が、上バーナヘッドの外筒壁の下端面で塞がれた状態となるようにしてもよい。
【0020】
このようなコンロバーナでは、上バーナヘッドの外筒壁に形成された炎口溝と、下バーナヘッドの上筒壁に形成された上筒炎口溝とが、バーナヘッドの周方向に向かって互い違いの位置に形成されることになる。そして、このような場合、小さな煮零れが発生して上バーナヘッドの炎口溝の間の隔壁が倒れる態様で変形すると、上バーナヘッドの炎口溝と下バーナヘッドの上筒炎口溝とが簡単に繋がってしまうので、混合ガスの燃焼状態が悪化する。しかし、このようなコンロバーナでも、上バーナヘッドに周突条を形成しておけば、小さな煮零れが生じた時に、上バーナヘッドの炎口溝の間の隔壁が倒れる態様で変形することを抑制できるので、燃焼状態が悪化する事態を抑制することが可能となる。
【0021】
また、上述した本発明のコンロバーナをガスコンロに搭載してもよい。
【0022】
こうすれば、加熱調理中に煮零れが生じても混合ガスの燃焼状態が悪化することのないガスコンロを実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施例のコンロバーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
【
図2】本実施例のコンロバーナ10の大まかな形状を示した説明図である。
【
図3】バーナボディ11と、バーナボディ11の上に載置される下バーナヘッド120と、下バーナヘッド120の上に載置される上バーナヘッド110とについての詳細な形状を示す分解組立図である。
【
図4】本実施例の上バーナヘッド110を斜め下方から見ることによって、上バーナヘッド110の底面側に形成された周突条114および半径突条115の形状を示す説明図である。
【
図5】本実施例の上バーナヘッド110を真下から見ることによって、上バーナヘッド110の半径突条115と、五徳爪対向位置116aとの位置関係を示した説明図である。
【
図6】本実施例の上バーナヘッド110を縦方向に切断することによって得られる断面図である。
【
図7】大きな煮零れの発生時に上バーナヘッド110が変形して燃焼状態が悪化する理由を示す説明図である。
【
図8】小さな煮零れの発生時に上バーナヘッド110が変形して燃焼状態が悪化する理由を示す説明図である。
【
図9】他の態様の周突条114を備える本実施例の上バーナヘッド110についての説明図である。
【
図10】第1変形例のコンロバーナ10についての説明図である。
【
図11】第2変形例のコンロバーナ10についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本実施例のコンロバーナ10を搭載したガスコンロ1の外観形状を示した斜視図である。
図1に例示したガスコンロ1は、図示しないシステムキッチンのカウンタートップに嵌め込んで設置されるビルトインタイプのガスコンロ1であり、箱形状のコンロ本体2と、コンロ本体2の開口した上面を覆って設置される天板3とを備えている。
【0025】
コンロ本体2の内部には2つのコンロバーナ10が左右に並べて搭載されており、それぞれのコンロバーナ10の上部は、天板3に形成された開口部から突出した状態となっている。また、天板3上には、コンロバーナ10の上部が突出した箇所に円形の五徳4が搭載されており、五徳4からは複数箇所(図示した例では6箇所)からコンロバーナ10に向かって五徳爪4aが延設されている。このため、五徳4の五徳爪4a上に鍋などの調理容器を置くことで、調理容器を下方からコンロバーナ10で加熱することが可能となっている。更に、コンロバーナ10には、中央を貫通した状態で温度センサ5が内蔵されている。温度センサ5は図示しない付勢バネによって上方に付勢されており、温度センサ5の上部がコンロバーナ10の上面中央から突出した状態となっている。そして、五徳4に調理容器を置くと、調理容器の底面が温度センサ5を押し下げることで温度センサ5の上端が調理容器の底面に当接した状態となって、調理容器の温度を検出することが可能となる。
【0026】
また、ガスコンロ1の前面にはグリル扉7が設けられており、グリル扉7の奥には図示しないグリル庫やグリルバーナが搭載されている。グリル扉7の右方には、2つのコンロバーナ10に対応して2つのコンロ操作ボタン8が設けられており、ガスコンロ1の使用者は何れかのコンロ操作ボタン8を操作することによって、対応するコンロバーナ10に点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。また、グリル扉7の左方には、グリル操作ボタン9が設けられており、使用者はグリル操作ボタン9を操作することによって、グリルバーナに点火したり、消火したり、火力を調節したりすることができる。
【0027】
図2は、本実施例のコンロバーナ10の大まかな形状を示した説明図である。図示されるように、本実施例のコンロバーナ10は、板金製のバーナボディ11の上に、鋳物製あるいはダイカスト製のバーナヘッド100が載置された構造となっている。バーナボディ11は略円筒形状に形成されており、側方からは2本の混合通路11a,11bが形成されている。また、バーナヘッド100は、上バーナヘッド110と下バーナヘッド120とに分割されており、バーナボディ11の上に下バーナヘッド120を載置して、その下バーナヘッド120の上に、上バーナヘッド110を載置するようになっている。
【0028】
上バーナヘッド110の外側面は略円筒形状となっており、この外側面には複数の上段炎口110aが開口している。同様に、下バーナヘッド120の外側面も略円筒形状となっており、この外側面にも複数の上段炎口120aが形成されている。更に、詳細には後述するが、下バーナヘッド120の下面側(バーナボディ11に載置される側)には、放射状に複数本の溝が形成されている。このため、下バーナヘッド120をバーナボディ11の上に載置すると、下バーナヘッド120とバーナボディ11との間にも複数の下段炎口120bが開口するようになっている。また、下バーナヘッド120の外側面からは、点火ターゲット120tが突設されており、点火ターゲット120tの下方の位置には、点火ターゲット120tに向けて火花放電するための点火プラグ20が設けられている。更に、点火プラグ20に隣接する位置には、炎検知センサ30も設けられている。
【0029】
混合通路11aは一端側がバーナボディ11に接続されているが、他端側は開口端11cとなっており、開口端11cを臨む位置には図示しない噴射ノズルが設けられている。同様に、混合通路11bも一端側はバーナボディ11に接続されているが、他端側は開口端11dとなっており、開口端11dを臨む位置には図示しない噴射ノズルが設けられている。開口端11cの噴射ノズル(図示は省略)には下流側ガス配管41aが接続され、開口端11dの噴射ノズル(図示は省略)には下流側ガス配管41bが接続されており、これら下流側ガス配管41aおよび下流側ガス配管41bの上流側は、1つの上流側ガス配管40から分岐している。そして、上流側ガス配管40の途中には元弁42が介在されており、下流側ガス配管41aの途中には流量調節弁43aが介設され、下流側ガス配管41bの途中には流量調節弁43bが介設されている。
【0030】
コンロバーナ10は次のように動作する。先ず、元弁42を開状態として、流量調節弁43aは閉状態とし、流量調節弁43bは開状態とすると、上流側ガス配管40からの燃料ガスが下流側ガス配管41bから混合通路11bに流入し、混合通路11bの内部で燃料ガスと空気とが混合して混合ガスが形成される。また、バーナボディ11の内部は二重構造となっており、混合通路11bはバーナボディ11の内部で下段炎口120bと連通している。このため、混合通路11bからバーナボディ11に混合ガスを供給すると、下段炎口120bから混合ガスが流出する。そして下段炎口120bから流出する混合ガスに、点火プラグ20から火花を飛ばして点火すると、下段炎口120bで混合ガスの燃焼が開始される。流量調節弁43aで燃料ガスの流量を調節すれば、下段炎口120bの燃焼火力を調節することができる。
【0031】
下段炎口120bで混合ガスを燃焼させている状態で、それまで閉状態であった流量調節弁43aを開状態とすると、下流側ガス配管41aからも燃料ガスが混合通路11aに流入し、混合通路11aの内部で混合ガスが形成される。混合通路11aはバーナボディ11の内部で上段炎口110aおよび上段炎口120aと連通している。このため、混合通路11bからバーナボディ11に混合ガスを供給すると、上段炎口110aおよび上段炎口120aから混合ガスが流出する。この混合ガスに、下段炎口120bでの燃焼による炎が火移りすることによって、上段炎口110aおよび上段炎口120aでの燃焼が開始されるようになっている。
【0032】
図3は、バーナボディ11と、バーナボディ11の上に載置される下バーナヘッド120と、下バーナヘッド120の上に載置される上バーナヘッド110とについての詳細な形状を示す分解組立図である。図示されるように、バーナボディ11は、板金製で円筒形状に形成された外側筒体12と、外側筒体12の内側で円筒形状に形成された板金製の内側筒体13とを備えており、外側筒体12と内側筒体13との間の空間が、混合ガスが流入する混合室15となっている。また、内側筒体13よりも外側で、且つ外側筒体12よりも内側となる位置には、板金製で円筒形状の中間筒体14が立設されており、このため混合室15は、中間筒体14によって、混合室15aと混合室15bとに分割されている。混合室15bは混合通路11bと連通し、混合室15aは混合通路11aと連通している。また、外側筒体12の上端は、半径方向内側に向かって斜め下方に折り曲げ加工されることによって、円環形状の載置面12sが形成されている。更に、中間筒体14の上端は、半径方向内側に向かって折り曲げ加工された後、更にその先端側が下向きに折り曲げ加工されることによって、短い円筒形状の位置決め部14aが形成されている。
【0033】
下バーナヘッド120は略円筒形状の部材であり、幅の狭い円環形状に形成された中間天井部121の内縁部分には、下方に向けて円筒形状の隔筒壁122が立設されている。また、中間天井部121の底面側の外縁部分からは、下方に向けて円筒形状の下筒壁123が立設されており、中間天井部121の上面側の外縁部分からは、上方に向けて円筒形状の上筒壁124が立設されている。そして、下筒壁123の下端面には、下筒壁123を半径方向に貫通する複数本の下筒炎口溝123aが上向きに穿設されている。その結果、複数本の下筒炎口溝123aが下筒壁123の外周側面に開口した位置には、複数の下段炎口120b(
図2参照)が形成されている。また、上筒壁124の上端面には、上筒壁124を半径方向に貫通する複数本の上筒炎口溝124aが下向きに穿設されている。その結果、複数本の上筒炎口溝124aが上筒壁124の外周側面に開口した位置には、複数の上段炎口120aが形成されている。更に、上筒壁124の外側面からは、半径方向外側に向かって点火ターゲット120tが突設されている。
【0034】
このような下バーナヘッド120は、バーナボディ11の中間筒体14の上端に形成された円筒形状の位置決め部14aで、隔筒壁122の外側面を位置決めしながら、バーナボディ11の上に載置される。すると、下バーナヘッド120から下方に向けて立設された下筒壁123の下端面がバーナボディ11の載置面12sに当接する。また、下バーナヘッド120をバーナボディ11の上に載置した状態では、隔筒壁122の外側部分は前述した混合室15bと連通している。このため、混合通路11bで形成された混合ガスは混合室15bを経由して、下バーナヘッド120の下段炎口120bから流出することになる。
【0035】
上バーナヘッド110は略円環形状の部材であり、温度センサ5を挿通させるための貫通孔111aが中央に形成された円環形状の天井部111と、天井部111の底面側の外縁部分から下方に向けて立設された円筒形状の外筒壁112と、外筒壁112よりも内側の位置で天井部111の底面から下方に向けて立設された円筒形状の内筒壁113とを備えている。外筒壁112の直径は、下バーナヘッド120の上筒壁124の直径とほぼ同じ大きさに設定されており、外筒壁112の下端面には、外筒壁112を半径方向に貫通する複数本の炎口溝112aが穿設されている。このため、複数本の炎口溝112aが外筒壁112の外側面に開口した位置には、複数の上段炎口110aが形成されている。尚、貫通孔111aから温度センサ5を突出させないコンロバーナ10の場合は、天井部111の貫通孔111aは不要となる。従って、この場合は、天井部111は円環形状ではなく、円板形状としてもよい。
【0036】
上バーナヘッド110を下バーナヘッド120の上に載置する際には、天井部111の底面側から立設された内筒壁113を、バーナボディ11の内側筒体13に挿入することによって、上バーナヘッド110を下バーナヘッド120およびバーナボディ11に対して位置決めした状態で、上バーナヘッド110の外筒壁112を下バーナヘッド120の上筒壁124の上に載置する。また、下バーナヘッド120の上筒壁124に穿設された上筒炎口溝124aと、上バーナヘッド110の外筒壁112に穿設された炎口溝112aとは、周方向に互い違いとなる位置に穿設されている。このため、外筒壁112の下端面を上筒壁124の上端面に当接させると、上筒壁124の上端面に穿設された上筒炎口溝124aの上方が、外筒壁112の下端面で塞がれることによって通路が形成され、この通路が上筒壁124の外周側面に開口する位置に上段炎口120aが形成される。また、外筒壁112の下端面に穿設された炎口溝112aの下方が、外筒壁112の下端面で塞がれることによって通路が形成され、この通路が外筒壁112の外側面に開口する位置に上段炎口110aが形成される。
【0037】
更に、バーナボディ11の上に下バーナヘッド120を載置して、その下バーナヘッド120の上に上バーナヘッド110を載置すると、下バーナヘッド120の隔筒壁122よりも内側で、内側筒体13よりも外側の部分は、前述した混合室15aに接続された状態となる。このため、混合通路11aで形成された混合ガスは混合室15aを経由して、上段炎口110aおよび上段炎口120aから流出するようになる。
【0038】
図4は、本実施例の上バーナヘッド110を斜め下方から見ることによって、上バーナヘッド110の底面側の形状を示した斜視図である。図示されるように、上バーナヘッド110の天井部111の中央からは円筒形状の内筒壁113が下方に向けて立設されており、内筒壁113の内側には貫通孔111aが形成されている。また、天井部111の外縁部分の底面側からは円筒形状の外筒壁112が下方に向けて立設されており、外筒壁112の下端面には、複数の炎口溝112aが放射状に形成されている。
【0039】
外筒壁112と内筒壁113との間には、外筒壁112および内筒壁113と同軸で円形の突条(以下、周突条114)が下方に向けて突設されている。更に、外筒壁112と内筒壁113との間には、半径方向に延びる突条(以下、半径突条115)が下方に向けて突設されている。尚、
図4では、周突条114および半径突条115が天井部111の底面側に形成されているものとしている。しかし、周突条114または半径突条115の少なくとも一方を、天井部111の上面側から上方に向けて形成してもよい。
【0040】
本実施例では半径突条115が天井部111の底面から下方に向けて突設されており、半径突条115の半径方向外側の端部は、外筒壁112の内壁面に接続され、半径突条115の半径方向内側の端部は、内筒壁113の外壁面に接続されている。このため、上バーナヘッド110は、外筒壁112と内筒壁113とが半径突条115によって6箇所で接続された剛性の高い構造となっている。
【0041】
また、
図4に示されるように、外筒壁112には炎口溝112aが等間隔で形成されている部分と、炎口溝112aが形成されていない部分とが存在する。炎口溝112aが形成されていない部分は、コンロバーナ10がガスコンロ1に搭載された状態での、五徳爪4aとの位置関係によって決められている。
【0042】
図5は、本実施例の上バーナヘッド110を真下から見た状態を示した説明図である。図中には、コンロバーナ10がガスコンロ1に搭載された時の五徳爪4aの位置を破線で表示している。
図1を用いて前述したように、本実施例のガスコンロ1の五徳4は6つの五徳爪4aを備えているため、コンロバーナ10をガスコンロ1に搭載すると、五徳爪4aは6つの方向からコンロバーナ10に向かって延設されていることになる。ここで、五徳爪4aが近付いてくる箇所に炎口(上段炎口110aおよび上段炎口120a)を形成すると、それらの炎口で形成された炎は、調理容器ではなく五徳爪4aを加熱することになってしまうので、コンロバーナ10の加熱効率が低下する。そこで、加熱効率が低下することを避けるため、コンロバーナ10をガスコンロ1に搭載した時に、上バーナヘッド110が五徳爪4aと向き合うこととなる位置(以下、五徳爪対向位置116a)では外筒壁112に炎口溝112aを形成せず、五徳爪4aと向き合うこととはならない位置(以下、非対向位置116b)の外筒壁112には炎口溝112aを形成するようになっている。そして、半径突条115は、非対向位置116bに向かう方向には形成せずに、五徳爪対向位置116aに向かう方向に形成されている。また、五徳爪対向位置116aは6箇所に存在するから、半径突条115の数は6つとなる。
【0043】
尚、本実施例の上バーナヘッド110は、五徳爪対向位置116aには炎口溝112aが形成されていないものとしている。しかし、非対向位置116bよりも少ない密度であれば、五徳爪対向位置116aにも炎口溝112aを形成してもよい。また、本実施例のコンロバーナ10は、下バーナヘッド120についても、ガスコンロ1に搭載した時に五徳爪4aと向き合うこととなる位置(五徳爪対向位置)には、上筒炎口溝124aが形成されていない(
図3参照)。しかし、五徳爪4aと向き合うこととならない位置(非対向位置)よりも少ない密度であれば、下バーナヘッド120の五徳爪対向位置にも上筒炎口溝124aを形成してもよい。
【0044】
図6は、上バーナヘッド110を縦方向に切断して得られる断面図である。切断位置は、
図5中に示したA-A位置である。図示されているように、天井部111の外縁部分から下方に向けて立設された外筒壁112には、下端から上方に向けて炎口溝112aが穿設されている。この炎口溝112aの高さをHとすると、周突条114の下端の位置は、外筒壁112の下端からH/2だけ高い位置よりも、更に高い位置となっている。尚、本実施例では、半径突条115の下端の位置と、周突条114の下端の位置とが同じとなっている。
【0045】
以上のような周突条114を上バーナヘッド110に形成しておけば、たとえ加熱調理中に煮零れが発生して煮零れ汁が上バーナヘッド110に掛かっても、コンロバーナ10の燃焼状態が悪化することを十分に抑制することができる。この理由は次のようなものである。
【0046】
図7は、加熱調理中のバーナヘッド100に煮零れ汁が掛かることによって、コンロバーナ10の燃焼状態が悪化することがある理由を示した説明図である。
図7では、バーナボディ11の上に載置されたバーナヘッド100が単純化した状態で表示されている。また、
図2および
図3を用いて前述したように、本実施例のバーナヘッド100は、バーナボディ11に載置される下バーナヘッド120と、下バーナヘッド120に載置される上バーナヘッド110とによって形成されている。
【0047】
図7(a)には、加熱調理中に上バーナヘッド110の天井部111に煮零れ汁が掛かった状態が示されている。加熱調理中の上バーナヘッド110は高温となっており、煮零れ汁の温度は上バーナヘッド110の温度よりも低いから、煮零れ汁が掛かった部分の天井部111は上面が冷却されて収縮しようとする。
図7(a)に示した例では、天井部111の左側の半分以上の領域に煮零れ汁が掛かっているので、左側の半分以上の領域で天井部111の上面が収縮することになる。
【0048】
その結果、
図7(b)に示したように、上バーナヘッド110が下向きに凸となるように反り返るように変形する。
図7(b)中で天井部111の上面に表示された太い実線の矢印は、天井部111の上面が収縮していることを表している。このように、上バーナヘッド110が反り返るような態様で変形すると、上バーナヘッド110から下方に立設された外筒壁112の下端面112dが、下バーナヘッド120から上方に立設された上筒壁124の上端面124tから離間する。その結果、上バーナヘッド110に形成された上段炎口110aと、下バーナヘッド120に形成された上段炎口120aとが繋がってしまう。
図7(b)には、上段炎口110aと上段炎口120aとが繋がっている部分が、黒塗りの矢印で示されている。このような状態では、それぞれの上段炎口110a,120aで形成される炎に対して、燃焼に必要な空気を十分に供給することができなくなって燃焼状態が悪化する。
【0049】
これに対して、本実施例のコンロバーナ10の上バーナヘッド110には、
図4および
図5を用いて前述したように、半径方向に延びる複数の半径突条115が形成されているので、上バーナヘッド110が反り返るように変形することを抑制することができる。その結果、上述した理由で燃焼状態が悪化する事態を抑制することができる。加えて、それぞれの半径突条115は一端側が外筒壁112に接続され、他端側が内筒壁113に接続されており、外筒壁112と内筒壁113と半径突条115とが強固な骨組み構造を形成しているため、上バーナヘッド110の剛性を大きく上げている。このため、上バーナヘッド110が反り返るような変形を効果的に抑制することができるので、燃焼状態が悪化する事態を、より一層効果的に抑制することができる。
【0050】
もっとも、加熱調理中に煮零れが生じても、天井部111の半分近く(あるいはそれ以上)の領域に煮零れ汁が掛かるような大きな煮零れが生じるとは限らない。むしろ、天井部111の一部にしか煮零れ汁が掛からないような小さな煮零れの方が、大きな煮零れよりも頻繁に発生すると考えられる。そして、本願の発明者は、小さな煮零れが生じた場合は、大きな煮零れが生じた場合とは異なった態様で上バーナヘッド110が変形することに気が付いた。以下ではこの点について詳しく説明する。
【0051】
図8は、小さな煮零れが生じた場合に、上バーナヘッド110が変形する様子を示した説明図である。
図8でも、バーナボディ11の上に載置された下バーナヘッド120や、下バーナヘッド120に載置された上バーナヘッド110が単純化した状態で表示されている。
図8(a)には、上バーナヘッド110の天井部111の一部に煮零れ汁が掛かった状態が示されており、
図8(b)には、その結果として上バーナヘッド110が変形する様子が示されている。
【0052】
小さな煮零れが生じた場合でも、煮零れ汁が掛かった部分では天井部111の上面が収縮しようとする。
図8(b)中で天井部111の上面に表示した太い実線の矢印は、天井部111の上面が収縮しようとしていることを表している。天井部111の一部にしか煮零れ汁が掛からなかった場合は、天井部111の一部でしか収縮が起こらないので、上バーナヘッド110が反り返るような変形は生じない。その代わり、煮零れ汁が掛かった部分では天井部111の上面が収縮する結果、煮零れ汁が掛かった部分の下方では、上段炎口110aと上段炎口110aとを隔てる隔壁112b(上段炎口110aと上段炎口110aとの間に外筒壁112が残った部分)が上バーナヘッド110の半径方向に倒れるような態様で変形することになる(
図8(b)参照)。
【0053】
そして、以上のような態様で上バーナヘッド110が変形した場合でも、
図8(b)中に黒塗りの矢印で示したように、上バーナヘッド110に形成された上段炎口110aと、下バーナヘッド120に形成された上段炎口120aとが繋がってしまう。その結果、このような部分では、上段炎口110a,120aで形成される炎に対して十分に空気を供給することができなくなって燃焼状態が悪化する。
【0054】
このような態様の変形(上バーナヘッド110の隔壁112bが半径方向に倒れるような変形)は、上バーナヘッド110の半径方向に延びる半径突条115を形成しても抑制することができない。しかし、本実施例のコンロバーナ10の上バーナヘッド110には、外筒壁112の内側に、周方向に延びる周突条114が形成されている(
図4および
図5参照)。このため、上バーナヘッド110の隔壁112bが半径方向に倒れるように変形することも抑制することができ、燃焼状態の悪化を抑制することができる。そして、小さな煮零れが生じる頻度は大きな煮零れが生じる頻度よりも高いから、周方向の周突条114を形成すれば、半径方向の半径突条115を形成した場合よりも、煮零れに伴う燃焼状態の悪化を抑制することができる。加えて、本実施例のコンロバーナ10では、上バーナヘッド110に半径突条115と周突条114とが形成されているので、小さな煮零れが生じた場合に限らず、大きな煮零れが生じた場合でも、燃焼状態が悪化する事態も確実に抑制することが可能となる。
【0055】
また、
図6を用いて前述したように、周突条114の下端の位置は、外筒壁112の下端から、炎口溝112aの高さHの半分だけ高い位置よりも、更に高い位置となっている。このため、バーナボディ11から炎口溝112aに向かう混合ガスの流れが、周突条114によって妨げられることがないので、コンロバーナ10の最大火力が低下する事態も防止することができる。
【0056】
加えて、周突条114は、外筒壁112と内筒壁113との中間の位置に形成されている。周突条114の位置が外筒壁112に近づく程、隔壁112bが倒れる変形を抑制することができるが、その一方で、炎口溝112aに向かう混合ガスの流れの邪魔になる。従って、外筒壁112と内筒壁113との中間の位置に周突条114を形成することで、炎口溝112aに向かう混合ガスの流れに影響を与えない範囲で、隔壁112bが倒れる変形を抑制することが可能となる。
【0057】
また、
図5を用いて前述したように、本実施例のコンロバーナ10では、半径突条115が非対向位置116bの方向には形成されておらず、五徳爪対向位置116aの方向に形成されている。五徳爪対向位置116aは、非対向位置116bに比べて炎口溝112aの形成密度が小さいので、非対向位置116bに向かって流れる混合ガスの流量に比べると、五徳爪対向位置116aに向かって流れる混合ガスの流量は小さくなっている。このため、半径突条115を形成することによって混合ガスの流れを邪魔する事態も最小限に抑制することができるので、コンロバーナ10の最大火力が低下する事態も防止することができる。
【0058】
また、本実施例のコンロバーナ10では、五徳爪対向位置116aの方向に半径突条115を形成しているので、半径突条115の本数は五徳爪対向位置116aの数(従って、五徳爪4aの数。本実施例では6つ)に制限されることになる。半径突条115の数が6本というのは、
図7(b)に示した上バーナヘッド110が反り返る態様の変形を抑制する観点からすると、必ずしも十分とは限らない。
【0059】
しかし、本実施例のコンロバーナ10では、
図4および
図5に示したように、半径突条115と周突条114とが一体に形成されており、半径突条115と半径突条115との間の部分を周突条114が補強する構造となっている。このため、隣接する半径突条115の間隔が空いたために、半径突条115と半径突条115との間で上バーナヘッド110が反り返る態様の変形が生じた場合でも、その変形を周突条114によって抑制することができる。その結果、半径突条115を形成する本数が五徳爪対向位置116aの数によって制限されるにも拘わらず、煮零れによって燃焼状態が悪化する事態を抑制することが可能となっている。
【0060】
尚、上述した本実施例では、
図4および
図5に示すように、周突条114が連続した円形状となっているものとして説明した。しかし、
図9に例示したように、周突条114が複数に分割されていてもよい。このような周突条114でも、隔壁112bが半径方向に倒れる態様の変形を抑制することができるので、煮零れ発生時に燃焼状態が悪化することを抑制することが可能となる。
【0061】
本実施例のコンロバーナ10には、幾つかの変形例が存在する。以下では、これらの変形例について、本実施例との相違点を中心として簡単に説明する。
【0062】
図2あるいは
図7および
図8を用いて前述したように、本実施例のコンロバーナ10は、上バーナヘッド110に形成された炎口溝112aと、下バーナヘッド120に形成された上筒炎口溝124aとが、互い違いの位置に形成されており、従って、上バーナヘッド110の上段炎口110aと、下バーナヘッド120の上段炎口120aとが別々の炎口を形成しているものとして説明した。しかし、上バーナヘッド110に形成された炎口溝112aと、下バーナヘッド120に形成された上筒炎口溝124aとを、互いに向かい合う位置に形成することにより、上バーナヘッド110の上段炎口110aと下バーナヘッド120の上段炎口120aとが1つの炎口を形成するようにしてもよい。
【0063】
このような第1変形例のコンロバーナ10でも、小さな煮零れが生じると、
図10に示したように、上バーナヘッド110の隔壁112bが半径方向に倒れるような態様で変形する。その結果、
図10中に黒塗りの矢印で示したように、隣の炎口との間に隙間ができてしまう。そして、この隙間からも少量の混合ガスが漏れ出すが、混合ガスが少量なので空気に対する比率が低いため、燃焼させることが困難となる。また、両側の炎口の炎によって何とか燃焼させることができたとしても、その燃焼によって空気を消費してしまうので、今度は両側の炎口での燃焼に使用する空気が不足する。このため、隙間から漏れ出した混合ガスが燃焼するか否かに拘わらず、燃焼状態が悪化してしまう。
【0064】
しかし、
図4および
図5を用いて前述したように、上バーナヘッド110に周突条114を形成しておけば、小さな煮零れが生じた場合に隔壁112bが倒れる態様の変形を抑制することができるので、上述した燃焼状態の悪化を抑制することが可能となる。加えて、半径突条115を形成しておけば、上バーナヘッド110が反り返る態様の変形(
図7(b)参照)も抑制することができるので、大きな煮零れが生じた場合でも、燃焼状態の悪化を抑制することが可能となる。
【0065】
また、上述した本実施例あるいは第1変形例のコンロバーナ10では、バーナヘッド100が上バーナヘッド110と下バーナヘッド120とによって形成されているものとして説明した。しかし、下バーナヘッド120を備えておらず、上バーナヘッド110と同様な形状のバーナヘッド100が、バーナボディ11の上に載置されたようなコンロバーナ10であってもよい。
【0066】
このような第2変形例のコンロバーナ10でも、小さな煮零れが生じると、
図11に示したように、バーナヘッド100の隔壁112bが半径方向に倒れるように変形する。このため、図中に黒塗りの矢印で示したように、隣の炎口との間に隙間ができてしまい、混合ガスの燃焼状態が悪化してしまう。しかし、
図4および
図5を用いて前述したように、バーナヘッド100の底面(あるいは上面)に周突条114を形成しておけば、小さな煮零れが生じた場合に隔壁112bが倒れる態様の変形を抑制することができるので、上述した燃焼状態の悪化を抑制することが可能となる。加えて、半径突条115を形成しておけば、バーナヘッド100が反り返る態様の変形(
図7(b)参照)も抑制することができるので、大きな煮零れが生じた場合でも、燃焼状態の悪化を抑制することが可能となる。
【0067】
以上、本実施例や各種変形例のコンロバーナ10について説明したが、本発明は上記の実施例や変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0068】
例えば、上述した本実施例や変形例では、周突条114および半径突条115が上バーナヘッド110の天井部111の底面から下方に向けて立設されているものとして説明した。しかし、周突条114や半径突条115の少なくとも一方を、天井部111の上面から上方に向けて立設させてもよい。また、上述した本実施例や変形例では、上バーナヘッド110の中央には貫通孔111aが形成されているものとして説明した。しかし、上バーナヘッド110は貫通孔111aが形成されていない上バーナヘッド110であっても構わない。
【符号の説明】
【0069】
1…ガスコンロ、 2…コンロ本体、 3…天板、 4…五徳、
4a…五徳爪、 5…温度センサ、 7…グリル扉、
8…コンロ操作ボタン、 9…グリル操作ボタン、 10…コンロバーナ、
11…バーナボディ、 11a…混合通路、 11b…混合通路、
11c…開口端、 11d…開口端、 12…外側筒体、 12s…載置面、
13…内側筒体、 14…中間筒体、 14a…位置決め部、
15…混合室、 15a…混合室、 15b…混合室、
16a…位置決め部、 20…点火プラグ、 30…炎検知センサ、
40…上流側ガス配管、 41a…下流側ガス配管、
41b…下流側ガス配管、 42…元弁、 43a…流量調節弁、
43b…流量調節弁、 100…バーナヘッド、 110…上バーナヘッド、
110a…上段炎口、 111…天井部、 111a…貫通孔、
112…外筒壁、 112a…炎口溝、 112b…隔壁、
112d…下端面、 113…内筒壁、 114…周突条、
115…半径突条、 116a…五徳爪対向位置、 116b…非対向位置、
120…下バーナヘッド、 120a…上段炎口、 120b…下段炎口、
120t…点火ターゲット、 121…中間天井部、 122…隔筒壁、
123…下筒壁、 123a…下筒炎口溝、 124…上筒壁、
124a…上筒炎口溝、 124t…上端面。