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特開2023-157406ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157406
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20231019BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231019BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20231019BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20231019BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/26
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067303
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】進藤 涼平
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131AA03
3D131BA18
3D131BB11
3D131BC12
3D131BC18
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC071
4J002AC081
4J002BB151
4J002DA036
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DE237
4J002DG056
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002FA027
4J002FA047
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】氷雪路面では、一般路面に比べて摩擦係数が低下し、滑りやすくなる。そこで従来、スタッドレスタイヤの氷上性能を向上させるために数多くの手法が提案されているが、さらに氷上性能を高めることが求められている。
【解決手段】ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物によって上記課題を解決した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および平均粒径が1~100μmの炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部
配合してなることを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記炭酸カルシウム凝集体のアスペクト比が2以上であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記炭酸カルシウム凝集体の形状がイガグリ状またはウニ状であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムの一次粒子径の寸法が、長径(L)0.3~6.0μm、短径(W)0.04~0.5μm、かつアスペクト比(L/W)2~50である請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムが30質量部以上を占めることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のゴム組成物を使用したスタッドレスタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関するものであり、詳しくは、優れた氷上性能を有するゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
氷雪路面では、一般路面に比べて摩擦係数が低下し、滑りやすくなる。そこで従来、スタッドレスタイヤの氷上性能(氷上での制動性)を向上させるために数多くの手法が提案されている。例えば、スタッドレスコンパウンドに硬質異物や中空ポリマーを配合し、これによりゴム表面にミクロな凹凸を形成することによって氷の表面に発生する水膜を除去し、氷上摩擦を向上させる手法が知られている(例えば特許文献1参照)。また、スタッドレスコンパウンドに鉱物等を配合し、トレッド表面に粗さを付与する等の手法もある。
現在、トレッド表面の粗さをさらに効率良く付与する手法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-35736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、優れた氷上性能を有するゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、ジエン系ゴムに、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を配合するとともに、炭酸カルシウム凝集体を特定量でもって配合したゴム組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0006】
すなわち本発明は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および平均粒径が1~100μmの炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および平均粒径が1~100μmの炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなることを特徴としているので、優れた氷上性能を備えたゴム組成物およびそれを用いたスタッドレスタイヤを提供することができる。
【0008】
本発明における炭酸カルシウム凝集体は、タイヤトレッド表面に粗さを効率的に付与することができ、これにより路面に対する高い引っ掻き効果が発現し、氷上性能を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴムは、ゴム組成物に配合することができる任意のジエン系ゴムを用いることができ、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、エチレン-プロピレン-ジエンターポリマー(EPDM)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
また、氷上性能を向上させるという観点から、ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムが30質量部以上、好ましくは40質量部以上を占めることが好ましく、また天然ゴムを併用する形態がさらに好ましい。
また、ジエン系ゴムは、ガラス転移温度(Tg)が-50℃以下であることが好ましい。このようにTgを規定することにより、氷上性能が向上する。
なおジエン系ゴムが複数種類含まれる場合において、本明細書で言うTgは、各ゴムのガラス転移温度に、各ゴムの重量分率を乗じた積の合計、すなわち加重平均に基づき算出される値とする。なお計算時には各成分の重量分率の合計を1.0とする。本発明で言うガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により20℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、転移域の中点の温度を指すものとする。
さらに好ましい前記平均Tgは、-60℃以下である。
【0010】
(カーボンブラックおよび/または白色充填剤)
本発明に使用されるカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、カーボンブラックは、氷上性能向上の観点から、窒素吸着比表面積(NSA)が10~300m/gであるのが好ましく、50~150m/gであるのがさらに好ましい。
なお窒素吸着比表面積(NSA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0011】
本発明に使用される白色充填剤としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、氷上性能がより良好となる理由から、シリカが好ましい。
【0012】
シリカとしては、具体的には、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
シリカは、氷上性能向上の観点から、CTAB吸着比表面積が50~300m/gであるのが好ましく、90~200m/gであるのがさらに好ましい。
なお、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0014】
(炭酸カルシウム凝集体)
本発明で使用される炭酸カルシウム凝集体は平均粒径が1~100μmである。本発明で使用される炭酸カルシウム凝集体は公知であり、例えば特開昭59-232916号公報に開示されている。
【0015】
前記公開公報に記載されているように、本発明で使用される炭酸カルシウム凝集体は、水酸化カルシウムと、特定のアラゴナイト質針柱状炭酸カルシウムを含有する結晶核炭酸カルシウムとを含有する水懸濁液に、特定条件下で炭酸ガス含有気体を導入し、炭酸化反応を行なうことにより、上記アラゴナイト質針柱状炭酸カルシウムの結晶成長および結晶粒子相互の結束がもたらされ、一次粒子たるこれらの結晶が三次元的に不規則に絡み合った形態として得られる。
さらに具体的には、結晶核となる長径0.2~4μm、短径0.035~0.35μm、アスペクト比1.5~40のアラゴナイト質針柱状炭酸カルシウムを55質量%以上含む結晶核炭酸カルシウムおよび該結晶核炭酸カルシウム100質量部に対し水酸化カルシウム10~500質量部を含有し、全固形分濃度3~30質量%、液温10~50℃の水懸濁液に、炭酸ガス濃度10容量%以上の炭酸ガス含有基体を、水酸化カルシウム1kgあたり毎分2~15リットルとなる割合で導入し、炭酸化反応を行うことにより、本発明で使用される炭酸カルシウム凝集体が得られる。
【0016】
このように調製された炭酸カルシウム凝集体は、長径(L)0.3~6.0μm、短径(W)0.04~0.5μm、かつアスペクト比(L/W)2~50を有する一次粒子が凝集し、平均粒径として1~100μm、好ましくは1~50μmを有し、好ましくはアスペクト比が2以上である。上記平均粒径は公知の測定方法に準じて測定でき、電子顕微鏡、レーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
なお、上記形状を有する炭酸カルシウム凝集体は、市販されているものを利用することができ、例えば白石工業株式会社製カルライト-SA(針柱形状)、シルバーW(紡錘形状)等が挙げられる。
【0017】
(ゴム組成物の配合割合)
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および前記炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなることを特徴とする。
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックおよび/または白色充填剤の配合量が30質量部未満では、ゴム組成物の機械的特性や耐摩耗性が悪化し、逆に100質量部を超えるとゴム組成物の低温柔軟性が低下して氷上性能が悪化する。
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記炭酸カルシウム凝集体の配合量が0.5質量部未満では、添加量が少な過ぎて本発明の効果を奏することができず、逆に30質量部を超えると機械的特性が低下する。
【0018】
前記カーボンブラックおよび/または白色充填剤の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、40~90質量部が好ましい。
前記炭酸カルシウム凝集体の配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、5~20質量部が好ましい。
【0019】
(その他成分)
本発明におけるゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤;加硫又は架橋促進剤;酸化亜鉛;老化防止剤;可塑剤;シランカップリング剤;熱膨張性マイクロカプセルなどのゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0020】
また本発明のタイヤは、本発明のゴム組成物を使用して調製することができ、空気入りタイヤであることが好ましく、空気、窒素等の不活性ガス及びその他の気体を充填することができる。また本発明のタイヤは、トレッド、とくにキャップトレッドに適用し、スタッドレスタイヤとするのがよい。
【実施例0021】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0022】
標準例、実施例1~4、比較例1
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、ゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を170℃、10分の条件でプレス加硫し、以下に示す試験法で物性を測定した。
【0023】
氷上性能:得られた加硫ゴム試験片を偏平円柱状の台ゴムに貼り付けたサンプルを作製した。氷上摩擦試験機を用いて、測定温度-1.5℃、荷重98N、路面速度20km/hの条件で氷上摩擦係数を測定した。得られた氷上摩擦係数を、標準例の値を100として指数で示した。指数が大きいほど氷上摩擦力が大きく氷上性能に優れることを意味する。
結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
*1:NR(RSS#3)
*2:BR(日本ゼオン株式会社製Nipol BR1220)
*3:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製シーストKHA)
*4:シリカ(ローディア社製Zeosil 1165MP、CTAB比表面積=159m/g)
*5:シランカップリング剤(エボニックデグッサ社製Si69、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
*6:オイル(昭和シェル石油株式会社製エキストラクト4号S)
*7:炭酸カルシウム(三共精粉社製SFT-2000、非凝集体)
*8:炭酸カルシウム凝集体1(白石工業株式会社製シルバーW、平均粒径=3.4μm、紡錘形状を有する。一次粒子径の寸法は長径(L)0.3~6.0μm、短径(W)0.04~0.5μm、かつアスペクト比(L/W)2~50の範囲内である)
*9:炭酸カルシウム凝集体2(白石工業株式会社製カルライト-SA、平均粒径=3.3μm、針柱形状かつイガグリ形状を有する。一次粒子径の寸法は長径(L)0.3~6.0μm、短径(W)0.04~0.5μm、かつアスペクト比(L/W)2~50の範囲内である)
*10:硫黄(鶴見化学工業株式会社製金華印油入微粉硫黄)
*11:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラーCZ-G)
【0026】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなるものであるので、標準例に比べて、氷上性能が向上している。
これに対し、比較例1は、非凝集体である炭酸カルシウムを配合した例であるので、標準例に比べ、氷上性能を向上させることができなかった。
【0027】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1]:ジエン系ゴム100質量部に対し、カーボンブラックおよび/または白色充填剤を30~100質量部、および平均粒径が1~100μmの炭酸カルシウム凝集体を0.5~30質量部配合してなることを特徴とするゴム組成物。
発明[2]:前記炭酸カルシウム凝集体のアスペクト比が2以上であることを特徴とする発明1に記載のゴム組成物。
発明[3]: 前記炭酸カルシウム凝集体の形状がイガグリ状またはウニ状であることを特徴とする発明1または2に記載のゴム組成物。
発明[4]: 前記炭酸カルシウムの一次粒子径の寸法が、長径(L)0.3~6.0μm、短径(W)0.04~0.5μm、かつアスペクト比(L/W)2~50である発明1~3のいずれかに記載のゴム組成物。
発明[5]:前記ジエン系ゴム100質量部中、ブタジエンゴムが30質量部以上を占めることを特徴とする発明1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
発明[6]:発明1~5のいずれかに記載のゴム組成物を使用したスタッドレスタイヤ。