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2023-157419スクリーン及びその製造方法、並びに金型
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157419
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】スクリーン及びその製造方法、並びに金型
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/60 20140101AFI20231019BHJP
   G02B 5/09 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B5/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067329
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一夫
(72)【発明者】
【氏名】工藤 泰之
(72)【発明者】
【氏名】播磨 龍哉
(72)【発明者】
【氏名】土井 克浩
(72)【発明者】
【氏名】野田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小川 康一
【テーマコード(参考)】
2H021
2H042
【Fターム(参考)】
2H021AA03
2H021BA02
2H021BA10
2H042DA02
2H042DA04
2H042DA05
2H042DA11
2H042DA16
2H042DC02
2H042DC03
2H042DD04
2H042DD09
(57)【要約】
【課題】正面輝度が高く、外光制御及び加工性に優れ、視野角の拡大を実現できるスクリーン、前記スクリーンの製造に用いられる金型、及びスクリーンの製造方法の提供。
【解決手段】立設されて、投射される光を受光面に受光して反射するスクリーンであって、前記受光面を有してなり、前記受光面が、多数の鏡Aが第1の方向に配列された鏡列Aと、前記第1の方向と交差する第2の方向に位置し、かつ多数の鏡Bが前記第1の方向に配列された鏡列Bとを有してなり、前記受光面において、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜しているスクリーンである。
【選択図】図5

【特許請求の範囲】
【請求項1】
立設されて、投射される光を受光面に受光して反射するスクリーンであって、
前記受光面を有してなり、
前記受光面が、
多数の鏡Aが第1の方向に配列された鏡列Aと、
前記第1の方向と交差する第2の方向に位置し、かつ多数の鏡Bが前記第1の方向に配列された鏡列Bとを有してなり、
前記受光面において、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している
ことを特徴とするスクリーン。
【請求項2】
前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、前記第1の方向における前記受光面の両端付近まで延設された、請求項1に記載のスクリーン。
【請求項3】
前記第2の方向において、
前記鏡列Aが一端側に位置し、前記鏡列Bが前記一端側とは反対に位置する他端側に位置するとしたとき、
前記鏡列Bにおける鏡Bの傾斜が、前記鏡列Aにおける鏡Aの傾斜よりも大きい、請求項1から2のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項4】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが、支持体の表面に鏡面が配されてなり、
前記受光面を前記第2の方向における他端側から見たとき、前記支持体が視認可能である、請求項1から2のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項5】
前記第1の方向において、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、両端側に位置する鏡が端側に傾斜しており、
前記受光面を前記第1の方向における一端側から見たとき、前記支持体が視認可能である、請求項4に記載のスクリーン。
【請求項6】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが矩形である、請求項1から5のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項7】
前記鏡A及び前記鏡Bが格子状に配列されている、請求項1から6のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項8】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが平面鏡、凹面鏡、及び凸面鏡のいずれかである、請求項1から7のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項9】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかの表面積が300μm以上4mm以下である、請求項1から8のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項10】
短焦点型プロジェクター用である、請求項1から9のいずれかに記載のスクリーン。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のスクリーンの製造に用いられる金型であって、
前記鏡Aを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Aを前記第1の方向に多数有してなる転写用面列Aと、
前記鏡Bを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Bを、前記第1の方向と交差する第2の方向に、多数有してなる転写用面列Bと、を有してなり、
前記転写用面Aと前記転写用面Bとが同じ方向に傾斜している
ことを特徴とする金型。
【請求項12】
ロール形状であり、前記第1の方向が軸方向であり、前記第2の方向が円周方向である、請求項11に記載の金型。
【請求項13】
請求項11から12のいずれかに記載の金型を基材表面に転写することを含むことを特徴とするスクリーンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン及びスクリーンの製造方法、並びに金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、投影距離が数十cm程度の短焦点型プロジェクターが実用化されており、大画面表示が実現できるようになってきている。このような短焦点型プロジェクターは、光源とスクリーンの画面内における任意の箇所との距離が場所によって異なり、一般的な光源では画面端部ほど反射光が少なくなるため電気的な補正が不可欠となり、周囲への光線漏れが発生するという問題がある。光源として拡散性の小さいレーザー光源などを使えば改善が期待できるが、入射角が大きく変化するため、その影響が避けられない。
【0003】
一方、大画面のディスプレイ装置においては、正面輝度と同様に、視野角の拡大を図ることも重要な課題である。拡散面や拡散層を使用した方法では視野角は広くなるものの、正面輝度が犠牲になってしまう。そこで、短焦点型プロジェクター用スクリーンでは正面輝度を確保するために、光源位置を焦点としたフレネルミラーを使用している。
このようなフレネルミラーとしては、例えば、反射面をフレネルミラー状に加工して正面輝度を改善すると共に、外光対策を実施している反射型スクリーンが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この提案では、フレネルミラーの焦点位置に光源を設置し、光源から発せられた光を平行光に変換している。また外光対策としては、フレネルミラーの非反射面を使用し、前記非反射面に当たった光が正面に戻らないように工夫している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6272013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案のフレネルミラーは、図1に示すように、点Cを中心として単位レンズ131が同心円状に複数配列されている形状であるため、円周方向の加工により作製されるのが通常である。このような円周方向の加工では周方向に異種の形状を付与することはできても、周方向以外の方向に異種の形状を付与することは極めて困難である。また、上記提案のフレネルミラーでは、正面輝度と水平方向の視野角の拡大とを両立することは難しいので、図2に示すように、レンズ層13及び反射層12の観察者側(映像源側)に拡散層141を設けることで視野角の拡大に対応している。しかし、拡散層141を設けると、光が入射時と反射時の2回拡散されるので、光線の利用効率が低下すると共に、層構成が複雑となりスクリーンの設計の自由度が低下してしまうという課題がある。
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、正面輝度が高く、外光制御及び加工性に優れ、視野角の拡大を実現できるスクリーン、前記スクリーンの製造に用いられる金型、及びスクリーンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 立設されて、投射される光を受光面に受光して反射するスクリーンであって、
前記受光面を有してなり、
前記受光面が、
多数の鏡Aが第1の方向に配列された鏡列Aと、
前記第1の方向と交差する第2の方向に位置し、かつ多数の鏡Bが前記第1の方向に配列された鏡列Bとを有してなり、
前記受光面において、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している
ことを特徴とするスクリーンである。
<2> 前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、前記第1の方向における前記受光面の両端付近まで延設された、前記<1>に記載のスクリーンである。
<3> 前記第2の方向において、
前記鏡列Aが一端側に位置し、前記鏡列Bが前記一端側とは反対に位置する他端側に位置するとしたとき、
前記鏡列Bにおける鏡Bの傾斜が、前記鏡列Aにおける鏡Aの傾斜よりも大きい、前記<1>から<2>のいずれかに記載のスクリーンである。
<4> 前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが、支持体の表面に鏡面が配されてなり、
前記受光面を前記第2の方向における他端側から見たとき、前記支持体が視認可能である、前記<1>から<2>のいずれかに記載のスクリーンである。
<5> 前記第1の方向において、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、両端側に位置する鏡が端側に傾斜しており、
前記受光面を前記第1の方向における一端側から見たとき、前記支持体が視認可能である、前記<4>に記載のスクリーンである。
<6> 前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが矩形である、前記<1>から<5>のいずれかに記載のスクリーンである。
<7> 前記鏡A及び前記鏡Bが格子状に配列されている、前記<1>から<6>のいずれかに記載のスクリーンである。
<8> 前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが平面鏡、凹面鏡、及び凸面鏡のいずれかである、前記<1>から<7>のいずれかに記載のスクリーンである。
<9> 前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかの表面積が300μm以上4mm以下である、前記<1>から<8>のいずれかに記載のスクリーンである。
<10> 短焦点型プロジェクター用である、前記<1>から<9>のいずれかに記載のスクリーンである。
<11> 前記<1>から<10>のいずれかに記載のスクリーンの製造に用いられる金型であって、
前記鏡Aを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Aを前記第1の方向に多数有してなる転写用面列Aと、
前記鏡Bを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Bを、前記第1の方向と交差する第2の方向に、多数有してなる転写用面列Bと、を有してなり、
前記転写用面Aと前記転写用面Bとが同じ方向に傾斜している
ことを特徴とする金型である。
<12> ロール形状であり、前記第1の方向が軸方向であり、前記第2の方向が円周方向である、前記<11>に記載の金型である。
<13> 前記<11>から<12>のいずれかに記載の金型を基材表面に転写することを含むことを特徴とするスクリーンの製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、正面輝度が高く、外光制御及び加工性に優れ、視野角の拡大を実現できるスクリーン、前記スクリーンの製造に用いられる金型、及びスクリーンの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、従来のフレネルミラーのレンズ層を背面側正面方向から見た概略図である。
図2図2は、従来のフレネルミラーの概略断面図である。
図3図3は、本発明のスクリーンの一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明のスクリーンの反射角度を説明する模式図である。
図5図5は、本発明のスクリーンの一例を示す概略斜視図である。
図6A図6Aは、本発明のスクリーンにおける表反射の一例を示す概略斜視図である。
図6B図6Bは、本発明のスクリーンにおける裏反射の一例を示す概略斜視図である。
図7A図7Aは、本発明のスクリーンにおける鏡の配列態様の一例を示す概略図である。
図7B図7Bは、本発明のスクリーンにおける鏡の配列態様の他の一例を示す概略図である。
図8A図8Aは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の一例を示す概略図である。
図8B図8Bは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8C図8Cは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8D図8Dは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8E図8Eは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8F図8Fは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8G図8Gは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図8H図8Hは、本発明のスクリーンにおける鏡の平面形状の他の一例を示す概略図である。
図9A図9Aは、本発明のスクリーンにおける鏡の断面形状の一例を示す概略図である。
図9B図9Bは、本発明のスクリーンにおける鏡の断面形状の他の一例を示す概略図である。
図9C図9Cは、本発明のスクリーンにおける鏡の断面形状の他の一例を示す概略図である。
図10A図10Aは、本発明のスクリーンの側面形状の一例を示す概略図である。
図10B図10Bは、本発明のスクリーンの側面形状の他の一例を示す概略図である。
図10C図10Cは、本発明のスクリーンの側面形状の他の一例を示す概略図である。
図11図11は、本発明のロール形状の金型の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(スクリーン)
本発明のスクリーンは、立設されて、投射される光を受光面に受光して反射するスクリーンであって、前記受光面を有してなり、前記受光面が、多数の鏡Aが第1の方向に配列された鏡列Aと、前記第1の方向と交差する第2の方向に位置し、かつ多数の鏡Bが前記第1の方向に配列された鏡列Bとを有してなり、前記受光面において、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している。
【0011】
本発明のスクリーンは、立設されて、投射される光を受光面で受光して反射する機能を有する。
前記「投射される光を受光面に受光して反射するスクリーン」であるとは、いわゆる「反射型スクリーン」を意味する。
前記受光面に投射される光は、特に制限はなく、受光面に対して下方から投射してもよく、受光面に対して上方から投射してもよく、また受光面に対して左右方向から投射してもよい。なお、下方から光を投射する場合には、光源の設置が容易であるという利点がある。
【0012】
前記光は光源から出射される。前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ランプ、レーザーなどが挙げられる。前記レーザーとしては、青色、緑色、及び赤色のそれぞれのレーザーを準備してもよいし、蛍光体に青色レーザーを照射することにより黄色、緑色、及び赤色を生じさせてもよい。
前記光源は、短焦点型プロジェクター用スクリーンの場合には、スクリーンに向かって映像を構成する映像光を投射するプロジェクターと呼ばれる映像光投射装置である。
前記光としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、短焦点型プロジェクター用スクリーンの場合には、光源としてのプロジェクターから出射される映像を構成する映像光である。また、反射鏡用スクリーンの場合には、太陽光、照明等の人工光である。
【0013】
前記受光面としては、投射される光を受光することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、短焦点型プロジェクター用スクリーンの場合には、表示画面である。また、反射鏡用スクリーンの場合には、通常の反射面である。
【0014】
本発明のスクリーンは、支持体と、前記支持体上に多数の鏡Aが第1の方向に配列された鏡列Aと、前記第1の方向と交差する第2の方向に位置し、かつ多数の鏡Bが前記第1の方向に配列された鏡列Bとを有し、更に必要に応じてその他の層を有する。
前記多数の鏡Aは、加工性の観点から直線状に配列されていることが好ましい。また、加工性の観点から前記第1の方向と第2の方向とは、直交していることが好ましい。更に、前記多数の鏡Bは、加工性の観点から前記第1の方向に直線状に配列されていることが好ましい。
【0015】
ここで、本発明のスクリーンを含むプロジェクション装置は、図3に示すように、立設されているスクリーン1と、スクリーン1に映像光を投射する光源としてのプロジェクター20とを備えている。プロジェクター20は短焦点型プロジェクターであり、スクリーン1の受光面2から例えば数十cm離れた、スクリーン1の下方の位置に設置されている。例えば、100インチ相当の画面において下方から投射した例では、スクリーンの幅Lは2,154mm、スクリーンの高さHは1,346mm、光源と受光面の距離Dは300mm、光源とスクリーンとの距離DVは300mmである。
【0016】
図5は、本発明のスクリーンの一例を示す概略斜視図である。この図5のスクリーン1は、支持体4の表面に多数の鏡3(鏡A、鏡B)が配され受光面2を形成している。なお、図5中、5はスクリーンの上方側から受光面を見ると支持体4が露出している第1の露出部、6はスクリーンの側方から受光面を見ると支持体4が露出している第2の露出部である。7は光源である。
【0017】
<鏡A、鏡B>
鏡A及び鏡Bは、支持体の表面に多数配される。
前記鏡A及び鏡Bの形状、大きさ、数、配列、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかの平面の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、円形、楕円形、三角形、四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等の多角形、矩形、長方形、正方形、菱形、台形、ランダムな不定形などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、切削加工が容易である観点から矩形が好ましい。
前記鏡A及び前記鏡Bとしては、具体的には、図8A図8Hに示すような平面形状を用いることができ、これらを適宜組合せて使用しても構わない。
【0018】
前記鏡列Aにおける鏡A及び前記鏡列Bにおける鏡Bのそれぞれの数は、特に制限はなく、スクリーンの大きさなどに応じて適宜選択することができるが、100個以上が好ましく、1,000個以上がより好ましく、2,000個以上が更に好ましく、5,000個以上が特に好ましい。前記鏡列Aにおける鏡A及び前記鏡列Bにおける鏡Bのそれぞれの数の上限値は、特に制限はなく、スクリーンの大きさなどに応じて適宜選択することができるが20,000個以下が好ましい。
【0019】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかは、加工性の観点から図9Aに示す平面鏡であることが好ましい。表面が平坦な平面鏡であると、表面に拡散効果を持つ形状を付与しやすい。また、形状の加工方向と拡散形状の方向が直交又は平行となるため、加工が容易である。
図9Aに示す平面鏡以外にも、図9Bに示す凸面鏡又は図9Cに示す凹面鏡であっても構わない。
図9Bに示す凸面鏡(かまぼこ形状)は、水平方向に特徴的に光を拡散できる観点から好ましい。
【0020】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかは、図9A図9Cに示すように、最表面に反射層9を有している。
反射層9は、反射性の高い材料を、例えば、電解めっき、無電解めっき、塗布又は蒸着、スパッタリング、あるいは金属箔を転写する方法などにより形成される。
前記反射性の高い材料としては、可視光域の反射率が高い材料が用いられ、例えば、アルミニウム、銀、金、白金、ビスマス、ニッケル、錫、又はこれらの合金などが挙げられる。
なお、本発明のスクリーンは、主として反射面として使用する領域以外の面は反射層を形成しなくてもよい。このようにスクリーンが反射層を形成しない面を有することによって投影すべき光以外の入射光を透過させることができ、外光による光散乱抑制が可能となる。
【0021】
前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかの表面積は300μm以上4mm以下が好ましく、0.003mm以上0.05mm以下がより好ましい。
前記表面積は、例えば、鏡A及び鏡Bを光学顕微鏡で観察し、寸法を求めることにより測定することができる。
【0022】
多数の鏡A及び多数の鏡Bは、図6Aに示すように正面輝度を向上させるためにスクリーン1の最表面に配置される(表反射)。一方、多数の鏡A及び多数の鏡Bは、図6Bに示すようにスクリーン1の表面形状を保護するために透過すべき光の波長に対して透明な樹脂から形成される透過性の支持体4を介して裏面に配置しても、正面輝度を向上させることができる(裏反射)。
なお、図6Bに示す裏反射の場合、支持体4は、投影する画像に対して光学的に透明であればよく、視聴者に向けて反射すべきでない光を吸収するように着色されていてもよい。可視光線透過率としては、90%以上が好ましい。なお、図6Aに示す表反射の場合には、支持体4は光が透過しなくてもよいので、透明性は問われず、不透明又は着色されていても構わない。
【0023】
図3に示すように、多数の鏡A及び鏡Bが直線状に配列する第1の方向とは、スクリーン1の幅方向Lを意味する。前記第1の方向と直交する第2の方向とは、スクリーン1の高さ方向Hを意味する。
「鏡列A」における「鏡A」と「鏡列B」における「鏡B」とは、図7Aに示すように格子状に配列されていることが好ましいが、図7Bに示すように「第1の方向」(スクリーンの幅方向)には直線状に配列されているが、「第2の方向」(スクリーンの高さ方向)には直線状に配列されていない態様も含まれる。
前記鏡列Aと前記鏡列Bとは隣接して配置されていてもよく、所定の間隔を空けて離間させて配置してもよい。
前記スクリーンにおける鏡列の数は、特に制限はなく、スクリーンの大きさなどに応じて適宜選択することができるが、50以上が好ましく、100以上がより好ましく、500以上が更に好ましく、1,000以上が特に好ましい。
スクリーンにおける鏡列数の上限値は、特に制限はなく、スクリーンの大きさなどに応じて適宜選択することができるが、20,000以下が好ましい。
【0024】
本発明のスクリーンは、多数の鏡A及び多数の鏡Bの集合体から構成され、前記受光面において、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している。これにより、適切な角度に設定された一つの巨大な反射面を有するスクリーンが形成されるので、光源から出射された様々な入射角の光を視聴者側の正面に高輝度で反射することができる。
ここで、「前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している」とは、前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に所定の角度で傾斜していること、即ち、前記鏡Aと前記鏡Bとが水平及び垂直方向に所定の角度で傾斜していることを意味する。
前記「前記鏡Aと前記鏡Bとが同じ方向に傾斜している」ことは、スクリーンの正面方向から平行光線をスクリーンに入射したとき、所定の焦点位置(つまり光源位置)に集光されることを確認する方法、及び光源位置に設置したビーム状光線をスクリーンに照射したとき、画面全体で反射光が狭い受光角の条件で画面正面のみで観察されることを確認する方法、の少なくともいずれかにより確認することができる。
前記鏡A及び前記鏡Bの「傾斜」の角度は、図4に示すように、スクリーン1は下方から角度αで入射した光線を正面に反射するとき、垂直方向は角度αが45度~78度なので、斜面角度βは67.5度~51度の範囲となる。また、水平方向は角度αが0度~74度の範囲なので、斜面角度βは90度~53度の範囲となる。
【0025】
本発明のスクリーンは、光源と受光面の相対位置が固定され、多数の鏡Aと鏡Bの受光面内の位置が決まると、入射光の水平方向及び垂直方向の入射角が決まる。入射角が決まると、その光線を正面に反射する面の角度が決まる。スクリーン面を直交座標で分割し、多数の鏡Aと多数の鏡Bの反射面の角度を決定すると、多数の鏡Aと多数の鏡Bの集合体を光源からの反射面として有するスクリーンが得られる。
【0026】
<支持体>
支持体の材質、色、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記支持体の材質としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、オレフィン樹脂、セルロース樹脂、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、メチルメタクリレート-スチレン(MS)樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記支持体の材質としては、硬化性樹脂等の硬質材料のみならず、軟質材料を使用することができる。スクリーンの材質として軟質材料を使用するとフレキシブルスクリーンとすることができる。
【0027】
前記支持体の色としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無色透明、有色透明、有色不透明などが挙げられる。これらの中でも、無色透明が好ましい。
【0028】
前記支持体の形状及び大きさとしては、スクリーンの形状及び大きさなどに応じて適宜選択することができる。
前記支持体の平均厚さは、25μm以上10,000μm以下が好ましく、50μm以上500μm以下がより好ましい。フレキシブルスクリーンとして用いる場合、支持体の平均厚さは25μm以上200μmが好ましい。
【0029】
<その他の層>
前記その他の層としては、必要に応じて、例えば、保護層、反射防止層、光拡散層、光吸収層などが挙げられる。
【0030】
本発明の一態様において、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、前記第1の方向における前記受光面の両端付近まで延設されている。即ち、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかは、前記受光面のスクリーンの幅方向(第1の方向)の全面に亘って存在していることが受光面の全面で投射光を反射することができ、反射効率が向上する点から好ましい。
【0031】
本発明の一態様において、第2の方向において、前記鏡列Aが一端側に位置し、前記鏡列Bが前記一端側とは反対に位置する他端側に位置するとしたとき、前記鏡列Bにおける鏡Bの傾斜が、前記鏡列Aにおける鏡Aの傾斜よりも大きいことが好ましい。即ち、スクリーンの高さ方向(第2の方向)の鏡列A(下方側)と、鏡列B(上方側)とにおける鏡の傾斜は鏡列B(上方側)の方が大きいことが好ましい。
この態様によると、スクリーンの高さ方向の上方に向かって、鏡列の傾斜が大きくなるので、正面輝度を大きくすることができる。
【0032】
本発明の一態様において、前記鏡A及び前記鏡Bの少なくともいずれかが、支持体の表面に鏡面が配されてなり、前記受光面を前記第2の方向における他端側から見たとき、前記支持体が視認可能である。この態様によると、スクリーンを立設した際、鏡が下方側に傾斜している結果、スクリーンの上方側から受光面を見ると、支持体が露出した第1の露出部によって上方向からの外光を吸収し、光散乱抑制が可能となる。
例えば、図5に示すように、受光面2をスクリーン1の高さ方向(第2の方向)における他端側から見たとき、第1の露出部5により支持体4が視認可能となっている。第1の露出部5には、鏡3が配されていないので、外光等を吸収することができ、光散乱を抑制することができる。
【0033】
本発明の一態様において、第1の方向において、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、両端側に位置する鏡が端側に傾斜しており、前記受光面を前記第1の方向における一端側から見たとき、前記支持体が視認可能である。例えば、図10Cに示すように、前記鏡列A及び前記鏡列Bの少なくともいずれかが、両端側に位置する鏡が前記端側に傾斜して凸状の受光面2を形成すると、図10Aの平坦な受光面2及び図10Bの凹状の受光面2に比べて視野角を拡大することができる。
また、スクリーンを立設した際、両端部側に位置する鏡が端部側に傾斜しているので、視野角を拡大可能であると共に、スクリーンの側方から受光面を見ると支持体が露出した第2の露出部によって外光等を吸収し、側方からの光散乱抑制が可能となる。例えば、図5に示すように、受光面2をスクリーンの幅方向(第1の方向)における他端側から見たとき、第2の露出部6により支持体4が視認可能となっている。第2の露出部6には、鏡が配されていないので、外光等を吸収することができ、光散乱を抑制することができる。
【0034】
本発明のスクリーンは、短焦点型プロジェクター用であることが好ましい。前記短焦点型プロジェクターは、光源の出光面からスクリーンの観察者側の面までの水平方向距離を短くすることができるので、設置場所を大きく取る必要がなく利便性が高い。
【0035】
(金型)
本発明の金型は、本発明のスクリーンの製造に用いられる金型であって、前記鏡Aを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Aを前記第1の方向に多数有してなる転写用面列Aと、
前記鏡Bを表面に配置させるための面を転写形成可能な転写用面Bを、前記第1の方向と交差する第2の方向に、多数有してなる転写用面列Bと、を有してなり、
前記転写用面Aと前記転写用面Bとが同じ方向に傾斜している。
前記転写用面Aにより、本発明のスクリーンにおける鏡Aが形成される。
前記転写用面Bにより、本発明のスクリーンにおける鏡Bが形成される。
前記転写用面列Aは、加工性の観点から直線状に配列されていることが好ましい。また、加工性の観点から前記第1の方向と第2の方向とは、直交していることが好ましい。更に、前記転写用面列Bは、加工性の観点から前記第1の方向に直線状に配列されていることが好ましい。
【0036】
前記転写用面Aと前記転写用面Bは、例えば、切削工具(バイト)、レーザー照射、イオンミリングなどにより作製することができる。これらの中でも、切削工具(バイト)が好ましい。
前記切削工具の材質としては、例えば、ダイヤモンド、超硬合金、ハイスピード工具鋼、立方晶窒化ホウ素(CBN)などが挙げられる。
【0037】
本発明の金型で作製される本発明のスクリーンは、長方形の画面に対して、水平方向及び垂直方向に分割された平面で構成されているので、スクリーン形状のもととなる原版加工が容易である。
【0038】
前記金型の材質、形状、大きさなどについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記金型の材質としては、例えば、鉄、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などが挙げられる。金型の表面には、ニッケルリン(Ni-P)めっき、又は銅(Cu)めっき等からなる表面層を形成することが好ましい。
前記金型の大きさは、特に制限はなく、製造するスクリーンの大きさに応じて適宜選択することができる。
前記金型の形状としては、例えば、平型、スタンパー、ロール形状などが挙げられる。これらの中でも、前記金型がロール形状であり、第1の方向が軸方向であり、第2の方向が円周方向であることが好ましい。ロール形状の金型を用いることにより、Roll to Roll方式により、高い量産性で、高品質のスクリーンを製造することができる。
【0039】
ここで、図11は、ロール形状の金型の一例を示す概略斜視図である。この図11のロール形状の金型101は、図示を省略しているが、多数の転写用面A及び多数の転写用面Bが表面に設けられている。図11中102はロール基体、103は表面層、104は軸である。
【0040】
(スクリーンの製造方法)
本発明のスクリーンの製造方法は、転写工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0041】
<転写工程>
転写工程は、本発明の前記金型を基材表面に転写する工程である。
前記基材表面への転写は、1枚ずつであってもよく、ロール形状の金型を用いたロール転写による連続成型であってもよい。
前記基材の材質、形状、大きさ、構造などについては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記基材の材質としては、スクリーンにおける支持体の材質と同じものを用いることができ、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、オレフィン樹脂、セルロース樹脂、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、メチルメタクリレート-スチレン(MS)樹脂、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記基材の材質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線硬化樹脂又は熱硬化型樹脂であって、加工収縮が小さいものが好ましい。
【0042】
前記基材の形状としては、例えば、シート状、平板状などが挙げられる。
前記基材の大きさとしては、特に制限はなく、製造するスクリーンの大きさなどに応じて適宜選定することができる。
前記基材の構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、単層構造であっても複数層構造であっても構わない。
【0043】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硬化工程、搬送工程、乾燥工程などが挙げられる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更しても差支えない。
【符号の説明】
【0045】
1 スクリーン
2 受光面
3 鏡
4 支持体
5 第1の露出部
6 第2の露出部
7 光源
8 鏡列
9 反射層
20 プロジェクター

図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図8H
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11