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特開2023-157426電子部品被覆用樹脂組成物シート、硬化物、及び半導体装置
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  • 特開-電子部品被覆用樹脂組成物シート、硬化物、及び半導体装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157426
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】電子部品被覆用樹脂組成物シート、硬化物、及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231019BHJP
   C08G 59/00 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231019BHJP
   H01L 23/06 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
C08G59/00
H01L23/30 B
H01L23/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067343
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松元 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】村上 雄太
(72)【発明者】
【氏名】清水 宙夫
【テーマコード(参考)】
4F100
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4F100AA19A
4F100AA19B
4F100AA19H
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK25G
4F100AK27A
4F100AK27B
4F100AK27J
4F100AK33A
4F100AK33B
4F100AK33H
4F100AK53A
4F100AK53B
4F100AK53G
4F100AK53H
4F100AK55A
4F100AK55B
4F100AK55H
4F100AL05A
4F100AL05B
4F100AT00
4F100CA02A
4F100CA02B
4F100CA02H
4J036AC03
4J036AD08
4J036AH02
4J036AH07
4J036AK11
4J036DC40
4J036DD05
4J036DD07
4J036FA01
4J036FA05
4J036FB05
4J036FB07
4J036FB12
4J036GA28
4J036HA12
4J036JA07
4M109AA02
4M109BA04
4M109DB06
4M109DB17
4M109EA02
4M109EA11
4M109EB02
4M109EB04
4M109EB12
(57)【要約】
【課題】良好な中空構造を有する水晶デバイスを提供すると共に、高温高圧でのモールド封止時にも破れが発生せずに中空構造を維持することが可能な電子部品被覆用樹脂組成物シートを提供すること。
【解決手段】
層1と層2を有する樹脂組成物シートであって、
前記層1は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、硬化触媒、及び無機粒子を含み、
前記層1の全体100質量%において、前記バインダーポリマーの含有量が40質量%以上90質量%以下であって、
前記層2は、無機粒子を含み、
前記層2の全体100質量%における無機粒子の含有量が、前記層1の全体100質量%における無機粒子の含有量よりも多い事を特徴とする、電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
層1と層2を有する樹脂組成物シートであって、
前記層1は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、硬化触媒、及び無機粒子を含み、
前記層1の全体100質量%において、前記バインダーポリマーの含有量が40質量%以上90質量%以下であって、
前記層2は、無機粒子を含み、
前記層2の全体100質量%における無機粒子の含有量が、前記層1の全体100質量%における無機粒子の含有量よりも多い事を特徴とする、電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項2】
前記層2が、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、及び硬化触媒を含み、
前記層2の全体100質量%において、前記無機粒子の含有量が40質量%以上であり、
前記層2中のエポキシ樹脂として、単一分子内に3つ又は4つのエポキシ基を含有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、請求項1記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項3】
前記層2中の熱硬化性樹脂が、官能基としてアミノ基を有することを特徴とする、請求項2に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項4】
前記層1の170℃で2時間加熱硬化後の170℃の貯蔵弾性率が1GPa以下であり、
前記層2の170℃で2時間加熱硬化後の170℃の貯蔵弾性率が3GPa以上であり、
前記層2の170℃で2時間加熱硬化後のガラス転移温度(Tg)が200℃以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項5】
前記層2の80℃の溶融粘度(H1)が50000Pa・s以下であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項6】
前記層2の80℃の溶融粘度(H1)と、前記層2を80℃で5分の加熱をした後の80℃の溶融粘度(H2)の比率H2/H1が、2以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項7】
前記層1の80℃の引張破断伸度が700%以上であることを特徴とする、請求項1に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シートを加熱硬化させた硬化物。
【請求項9】
基板、前記基板上に形成された半導体チップ、並びに、前記半導体チップを覆うように積層された請求項8に記載の硬化物を有しており、
前記基板と前記半導体チップとの間に中空構造が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品被覆用樹脂組成物シート、硬化物、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水晶振動子やSAWフィルタに代表される水晶デバイスを用いた電子部品が、スマートフォンを始めとする通信機器やMEMS(MICRO ELECTRO MECHANICAL SYSTEMS)等に多く搭載されている。これら電子部品は、水晶デバイスの圧電現象を電気回路に応用する仕組みを持っており、各種ICの同期基準信号、時計用、圧力センサや加速度センサ、通信回路のノイズフィルタ等に活用されている。水晶デバイスは電気信号を物理振動へ、または物理振動を電気信号へ変換するため、素子のアクティブ面に中空空間が存在しなければならず、これらの素子は中空構造を持ったパッケージ携帯である必要がある。従来は素子を外部環境から保護するため、素子エンボス加工された積層セラミック内に配置し、素子と電極とをワイヤボンディングで接続し、金属溶接で蓋をする金属封止が実施されていたが、スマートフォンに代表される通信機器の小型化・薄膜化に伴い、素子のアクティブ面とパッケージ基板とをフリップチップ接続し、素子―バンプ―パッケージ基板により形成された空間部分を維持する方法や、シート状の樹脂材料を電子部品実装により形成された凹凸を埋め込み、電子部品を被覆・保護する方法などが提案されている。(特許文献1,2)
一方、水晶デバイスの小型化要求は更に進みつつあり、素子―素子間の距離が小さくなり、従来500um~1mm程度であった素子間の距離が300um未満となっており、従来提案されていた方法での樹脂封は困難になってきた。
【0003】
具体的には素子の小型化が進む一方、素子表面のアクティブ面の面積の小型化には限界があるため、素子―素子間の距離は小さくなり、上述のシート状材料を凹凸形状に追従させる方法では凹部まで十分追従しなかったり、シート状材料が破れてしまったりしてうまく封止できないという問題があった。
【0004】
これに対して、伸張性の高いシート材料で狭ギャップを覆う方法や、溶融性を制御した封止樹脂層でチップを埋め込む方法が提案されている。(特許文献3、4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6757787号
【特許文献2】特許第4730652号
【特許文献3】特許第06089567号
【特許文献4】特許第5101931号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
伸張性の高いシート材料を適用する場合、樹脂シートで保護をした電子部品は、良伸張性の薄いシートでチップを保護しただけであり、物理的な衝撃への耐性、水蒸気透過性などといった面で信頼性が不足するため、めっき等の金属膜で補強をしたり、別の封止樹脂層で回りを保護する工程を追加し、信頼性を向上させる必要があった。
【0007】
溶融性を制御した封止層でチップを埋め込む方法の場合は、チップが均等に配列している場合は良好に封止加工が可能であるが、チップの配列間隔が複数種類ある場合には封止加工に課題があった。具体的には、2つのチップを1セットとしたデバイスを製造する場合、この2つのチップの配列間隔は、デバイス小型化のために極力小さく配置され、デバイス間はダイシングにて個片化するために間隔が大きく配置される。(図1)この場合、チップ間の狭ギャップ部分へは樹脂が流動しやすくなるため中空部分まで樹脂浸入してデバイスの誤作動の原因になったり(図2)、デバイス間については広ギャップのため樹脂が埋め込まれにくくなる傾向にあるため(図3)、チップ間とデバイス間を同一条件で良好に封止することが困難であるといった課題があった。このように中空部分に樹脂が浸入するとデバイス特性が低下し、デバイス間への樹脂封止量が不足すると、ダイシング時にデバイス封止樹脂が剥離する原因となる。
【0008】
さらに、近年は個別に製造した水晶デバイスを別の電子部品と一体化させた機能性電部品モジュールが提案されており、この機能性電子部品モジュールの製造過程では全電子部品を一括して封止する工程(モジュール封止)が追加される。モジュール封止は、製造コストの観点から安価なコンプレッションモールド方式などが採用されており、高温高圧でモールド樹脂を印加する。デバイス封止用の封止樹脂は、加工性に特化するために、高温での貯蔵弾性率やガラス転移点(Tg)が低く、モールド封止時にデバイス封止樹脂が変形したり破れたりすることで、モールド封止樹脂が中空部分に浸入するといった課題があった。
【0009】
本発明の目的は、伸張性のある層1と、硬化後貯蔵弾性率と硬化後ガラス転移点の高い層2を組み合わせることにより、狭ギャップに配置されたチップ間への樹脂流動を抑制しつつ、広ギャップに配置されたデバイス間への樹脂流動を向上させ、良好な中空構造を有する水晶デバイスを提供する(図4)と共に、高温高圧でのモールド封止時にも破れが発生せずに中空構造を維持することが可能な電子部品被覆用樹脂組成物シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明は、以下である。
(1)
層1と層2を有する樹脂組成物シートであって、
前記層1は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、硬化触媒、及び無機粒子を含み、
前記層1の全体100質量%において、前記バインダーポリマーの含有量が40質量%以上90質量%以下であって、
前記層2は、無機粒子を含み、
前記層2の全体100質量%における無機粒子の含有量が、前記層1の全体100質量%における無機粒子の含有量よりも多い事を特徴とする、電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(2)
前記層2が、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、及び硬化触媒を含み、
前記層2の全体100質量%において、前記無機粒子の含有量が40質量%以上であり、
前記層2中のエポキシ樹脂として、単一分子内に3つ又は4つのエポキシ基を含有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とする、前記(1)記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(3)
前記層2中の熱硬化性樹脂が、官能基としてアミノ基を有することを特徴とする、前記(2)に記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(4)
前記層1の170℃で2時間加熱硬化後の170℃の貯蔵弾性率が1GPa以下であり、
前記層2の170℃で2時間加熱硬化後の170℃の貯蔵弾性率が3GPa以上であり、
前記層2の170℃で2時間加熱硬化後のガラス転移温度(Tg)が200℃以上であることを特徴とする、前記(1)~(3)のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(5)
前記層2の80℃の溶融粘度(H1)が50000Pa・s以下であることを特徴とする、前記(1)~(4)のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(6)
前記層2の80℃の溶融粘度(H1)と、前記層2を80℃で5分の加熱をした後の80℃の溶融粘度(H2)の比率H2/H1が、2以上であることを特徴とする、前記(1)~(5)のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(7)
前記層1の80℃の引張破断伸度が700%以上であることを特徴とする、前記(1)~(7)のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シート。
(8)
前記(1)~(7)のいずれかに記載の電子部品被覆用樹脂組成物シートを加熱硬化させた硬化物。
(9)
基板、前記基板上に形成された半導体チップ、並びに、前記半導体チップを覆うように積層された前記(8)に記載の硬化物を有しており、
前記基板と前記半導体チップとの間に中空構造が形成されていることを特徴とする、半導体装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートを用いて水晶デバイスを封止加工することにより、複数の素子が配置され、その距離が異なる場合であっても、破れや凹凸形状への追従不十分といった問題を解決し、加工工程での歩留まりを向上させ、信頼性に優れた電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の樹脂組成物シートで保護するデバイスの模式図である。
図2】本発明以外の樹脂を使用し、中空部分に樹脂が浸入した場合の模式図である。
図3】本発明以外の樹脂を使用し、デバイス間が埋め込み不良になった場合の模式図である。
図4】本発明の樹脂組成物シートを用いて図1を良好に封止した場合の模式図である。
図5】本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートを適用した場合の水晶デバイスを示す断面図である。
図6】本発明以外の電子部品被覆用樹脂組成物シートを適用した場合の水晶デバイスを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートは、層1と層2を有する樹脂組成物シートであって、前記層1は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、硬化触媒、及び無機粒子を含み、前記層1の全体100質量%において、前記バインダーポリマーの含有量が40質量%以上90質量%以下であって、前記層2は、無機粒子を含み、 前記層2の全体100質量%における無機粒子の含有量が、前記層1の全体100質量%における無機粒子の含有量よりも多い事を特徴とする、電子部品被覆用樹脂組成物シートである。
【0014】

<層1>
<バインダポリマー>
層1はバインダーポリマーを含む。そして層1に適用されるバインダーポリマーは、層1の伸張性、可撓性、熱応力の緩和、チップへの凹凸追従性を付与するために機能し、またその機能を有するものであれば特に限定されない。層1中のバインダーポリマーとして、例えば、アクリロニトリルーブタジエン共重合体(NBR)、アクリロニトリルーブタジエンゴムースチレン樹脂(ABS)、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレンーブタジエンーエチレン樹脂(SEBS)、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルを必須共重合成分とする共重合体(アクリル樹脂)、ポリビニルブチラール、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミドおよびポリウレタン等を例示することができる。
【0015】
また、これらのバインダーポリマーは、熱硬化性化合物の官能基と反応が可能な官能基を有していてもよい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基およびシラノール基等の官能基が挙げられる。バインダーポリマーがこれらの官能基を有することにより、熱硬化性化合物とバインダーポリマーとの結合が強固になり、膜強度やリフロー耐熱性が向上し、凹凸追従加工の際の破れ耐性も向上する。
【0016】
これらのバインダーポリマーの中でも、層1の引張破断伸度を向上させるために、炭素数1~8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルを必須共重合成分とする共重合体が特に好ましく使用できる。また、これらの共重合体についても、後述の熱硬化性樹脂との反応が可能な官能基を有していてもよい。具体的には、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、水酸基、メチロール基、イソシアネート基、ビニル基、シラノール基等が挙げられる。後述する層1中に含有される成分であるエポキシ樹脂との相溶性、反応性の観点から、特にエポキシ基を有することが好ましい。さらに、バインダーポリマーの構成モノマー単位100モル%中に、アクリロニトリル単位を30モル%以上、好ましくは35モル%以上含有することが好ましい。アクリルニトリル単位を含有することで、層1の可撓性を損なうことなく引張破断強度を向上させることができ、凹凸追従加工時の破れを抑制することができる。
【0017】
また層1中のバインダーポリマーの重量平均分子量は特に限定されないが、重量平均分子量は50万~200万であることが好ましく、さらには重量平均分子量が60万~200万であることが好ましい。このことにより、層1の伸張性が向上し、凹凸を持った素子への追従性が向上し、追従するべき素子の高さが高くなった場合でも層1が破れることなく、またその素子の際まで追従することができる。
【0018】
本発明における層1のバインダーポリマーの含有量は、層1全体100質量%に対して40質量%以上90質量%以下であり、より好ましくは50質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは55質量%以上80質量%以下である。層1全体100質量%に対するバインダーポリマーの含有量を40質量%%以上にすることで、層1の引張破断伸度が向上し、破れることなく素子の凹凸に追従させることができる。また、層1の貯蔵弾性率を低くすることができるため、層1のクラックの発生を抑制することができる。また、層1全体100質量%に対するバインダーポリマーの含有量を90質量%以下にすることで、樹脂組成物シートの貯蔵弾性率を向上させ、基板との接着力を向上させることができる。
【0019】

<エポキシ樹脂>
層1はエポキシ樹脂を含む。そして本発明で層1に好ましく使用されるエポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものが好ましく、これらの具体例としては、たとえばクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらのエポキシ樹脂の中で、本発明において特に好ましく用いられるものは、含有塩素量が少なく、低軟化点であり柔軟性のある2官能成分の多いエポキシ樹脂であるビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂である。もちろんこれらエポキシ樹脂を混合して用いてもよい。
【0020】
本発明で層1に好ましく使用されるエポキシ樹脂の量としては、層1全体100質量%に対して5質量%以上40質量%以下が好ましい。エポキシ樹脂の含有量を5質量%以上にすることで、層1と素子、層1と基板の接着力を高めることができ、デバイスのダイシング加工時やサーマルサイクル試験などの信頼性試験、調湿下で実施される信頼性試験などの際に層1の剥離を抑制することができる。また、エポキシ樹脂の含有量を40質量%以下にすることで、バインダーポリマーの可撓性、伸張性を損なうことがなく、素子の凹凸への追従性を向上することができる。
【0021】

<熱硬化性樹脂>
層1は熱硬化性樹脂を含む。そして本発明の層1に好ましく使用される熱硬化性樹脂は、前述のエポキシ樹脂と熱反応を起こし、架橋構造を形成するものであれば特に限定されない。これらの具体例としては、例えばフェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAやレゾルシンから合成される各種ノボラック樹脂、無水マレイン酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物およびジアミノジフェニルスルホンなどの芳香族アミンが挙げられる。これら熱硬化性樹脂の中で、好ましく用いられるものは、耐熱性、耐湿性の点から、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジアミノジフェニルスルホンである。
【0022】
熱硬化性樹脂の含有量は、使用するエポキシ樹脂との反応の観点から適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.4~1.0範囲であることが好ましい。H/Eが上記の範囲になることで、エポキシ樹脂の架橋反応が効率的に進行し、層1の膜強度が向上し、凹凸追従加工時の層1の破れを抑制することができる。
【0023】

<硬化触媒>
層1は硬化触媒を含む。そして本発明の層1に好ましく使用される硬化触媒としては、硬化反応を促進するものであれば特に限定されず、その具体例としては、例えば2-エチルー4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾールおよび2-ヘプタデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-[2‘-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2‘-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物などのイミダゾール化合物、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α-メチルベンジルジメチルアミン、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7などの3級アミン化合物、トリフェニルスルフォン、トリエチルスルフォン、トリブチルスルフォンなどの有機スルフォン化合物が好ましく、特にイミダゾール化合物、トリフェニルスルフォン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7などが好ましく用いられる。
【0024】
なお、これら硬化触媒は、用途によっては2種類以上を併用してもよく、その層1中の含有量は、層1中の熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1~30質量部、より好ましくは1~25質量部の範囲が好ましい。硬化触媒の量をこの範囲にすることで、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂の反応を促進し、層1の膜強度を向上させて凹凸追従加工時の破れを抑制することができると共に、室温での反応性を抑制し保存安定性を向上することができる。
【0025】

<無機粒子>
層1は無機粒子を含む。そして本発明における層1に好ましく使用される無機粒子としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、窒化珪素、酸化チタンなどが挙げられるが、その線膨張係数が低いことから溶融シリカが好ましく用いられる。ここでいう溶融シリカとは、真比重が2.3以下の非晶性シリカを意味する。この溶融シリカの製造方法においては必ずしも溶融状態を経る必要はなく、任意の製造方法を用いることができ、たとえば結晶性シリカを溶融する方法および各種原料から合成する方法などで製造することができる。
【0026】
本発明に用いる溶融シリカの粒径は、層1の厚みや搭載される部品間距離に影響を与えるサイズのものでなければ特に限定されないが、通常、その平均粒径が20μm以下のものが用いられる。さらに好ましくは無機粒子の中位径D50は、層1の厚みに対して1/5以下であることが好ましく、1/10以下であることが更に好ましい。中位径が層1の厚みの1/5以下であることにより、層1の破断伸びが大きくなり、破れなく凹凸形状に追従させる事が可能となる。ここでいう中位径D50とは、レーザ回折式粒子径分布測定装置等で測定された粒子の分布曲線において、積算体積が50%となる粒子径を指す。
【0027】
また、本発明の層1に適用される無機粒子と、層1に用いられる樹脂組成物中の有機成分とのぬれ性を向上させるために、無機粒子をシランカップリング剤で表面処理しても良い。シランカップリング剤の具体例としては3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1、3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが特に限定されるものではない。シランカップリング剤は単独で使用しても、上記のシランカップリング剤を混合して使用しても良く、処理に使用する量は、無機粒子100質量部に対して0.3~1質量部が好ましい。
【0028】
また、本発明の層1に使用される無機粒子の含有量は、層1全体100質量%に対して5質量%~40質量%であることが好ましい。層1全体100質量%中に無機粒子を5質量%以上含有することで、層1の膜強度が向上し、素子の凹凸追従加工時の破れを抑制することができる。また、層1全体100質量%中に無機粒子を40質量%以下含有することで、バインダーポリマーの可撓性、伸張性を損なうことなく、凹凸への追従性を向上することができる。
【0029】

<その他>
本発明の層1用いられる樹脂組成物には、上記の成分以外に、樹脂組成物の特性を損なわない範囲で、酸化防止剤、イオン捕捉剤などの有機成分・無機成分を添加することができる。有機成分としては、スチレン、NBRゴム、アクリルゴムおよびポリアミド等の架橋ポリマーが例示される。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系やアミン系の一次酸化防止剤、イオウ系やリン系の二次酸化防止剤、が挙げられる。イオン捕捉剤としては、三酸化アンチモンや五酸化アンチモン、ハイドロタルサイト系の化合物等が挙げられる。これらを単独または2種類以上混合しても良い。
【0030】
本発明の樹脂組成物シートにおいて、層1の厚みは特に限定されないが、10μm~100μmであることが好ましく、より好ましくは10μm~50μmであり、さらに好ましくは15μm~30μmである。デバイスのさらなる小型化、低背化のためには層1は破れが発生しない範囲において薄い方が好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物シート中の層1は、170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃貯蔵弾性率が1GPa以下であることが好ましく、また1MPa以上であることが好ましい。層1を170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃での貯蔵弾性率が1GPa以下である場合、デバイスに熱がかかり、素子や基板に膨張や収縮が発生した際に、層1と接する電子部品の変形に追従することができ、応力を緩和することができるため、層1のクラックや剥離を抑止することができる。特にサーマルサイクルなどの熱負荷試験を実施する際にクラックや剥離を抑制することができる。層1の170℃2時間加熱硬化後の貯蔵弾性率を1GPa以下にするには、層1の全体100質量%中のバインダーポリマーの含有量を40質量%以上にすること、無機粒子の含有量を40質量%以下にすること、エポキシ樹脂を2官能のものを用いることなどにより達成することができる。
【0032】

本発明の層1の80℃における引張破断伸度は700%以上であることが好ましく、より好ましくは700%以上3000%以下であり、さらに好ましくは800%以上2500%以下であり、特に好ましくは1000%以上2000%以下である。層1は、後述する通り層2との積層体にした後、水晶デバイスの凹凸に追従させる役割を有するが、層1の80℃における引張破断伸度が700%以上であれば、デバイス間の凹凸形状に破れることなく追従することができる。また、層1の80℃における引張破断伸度が3000%以下であれば、層1がデバイスの中空部分まで伸長して入り込むことを抑制することができる。
【0033】
層1の80℃における引張破断伸度を700%以上にするためには、バインダーポリマーの含有量を層1全体100質量%に対して40質量%以上にすることやバインダーポリマーの種類を炭素数1~8の側鎖を有するアクリル酸および/またはメタクリル酸エステルを必須共重合成分とする共重合体を用いることで達成できる。
【0034】
また層1の80℃における引張破断伸度を3000%以下にするには、バインダーポリマーの添加量を層1全体に対して90質量%以下にすること、無機粒子の添加量を層1全体に対して40%以下にすることで達成することができる。
【0035】

<層2>
本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートは、層1と層2を有する。つまり本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートは、層1に更に無機粒子を含む層(以下、層2という)を積層した構成を有する。層1に対して層2を積層することで、複数の素子が基板上に配置されることにより形成された凹凸形状に対し、電子部品被覆用樹脂組成物シートを追従させる工程で層2が軟化し、層1を押すことで凹凸形状への追従をより容易にするとともに、層2を熱硬化させることで、凹凸形状に電子部品被覆用有機樹脂組成物シートが密着、被覆、保護され、更にその外側を熱硬化性樹脂組成物である層2で保護された優れた信頼性を持つ電子部品を提供することが出来る。
【0036】
層1と層2を有する、本発明の電子部品被覆用有機樹脂組成物シートを、電子部品を被覆する用途で用いる際には、電子部品と層1の側とを相対させるような態様で被覆することが好ましい。
【0037】
本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シート中の層2は、無機粒子を含む。そして層2の全体100質量%における無機粒子の含有量は、層1の全体100質量%における無機粒子の含有量よりも多い。無機粒子を多く含有する層2は、その貯蔵弾性率や膜強度が高く、層1に対して水晶デバイスの反対側に配置することで、層1が水晶デバイスの凹凸形状に追従して封止保護した構造を補強することができるため、水晶デバイスの信頼性が向上する。
【0038】
本発明の層2は、バインダーポリマー、エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂、および硬化触媒を含有していてもよい。
【0039】

<無機粒子>
本発明の層2で用いられる無機粒子は、前述の層1中の無機粒子と同じ組成のものを用いることができる。
【0040】
本発明の層2で用いられる無機粒子の平均粒径は、樹脂組成物シートの厚みや搭載される部品間への樹脂組成物シートの追従性に影響を与えるサイズのものでなければ特に限定されないが、0.2~20μm、より好ましくは0.2~10μmである。無機粒子の平均粒径を20μm以下にすることでデバイス凹凸に層2を埋め込んだ際に無機粒子が樹脂の流れ込み性を阻害することがない。また、0.2μm以上にすることで、無機粒子の樹脂組成物への分散性が向上し、層2の流動性も向上するため、チップ間を層2の樹脂で良好に埋め込むことができる。
【0041】
また、本発明の層2に使用される無機粒子は、2種類以上の平均粒子径を有するものを混合することに何ら制限を受けない。2種類以上の平均粒径を有する無機粒子を併用することで、層2の流動性を向上し、素子の凹凸間への樹脂流動を向上することができる。中でも平均粒径3μm以上の無機粒子、および平均粒径2μm以下の無機粒子を併用することが好ましく、平均粒径3μm以上の溶融球状シリカおよび平均粒径2μm以下の溶融球状シリカを95/5~30/70の重量比で混合して用いることがさらに好ましい。上記の平均粒径を持つ無機粒子を上記の配合で使用することで、層2の樹流動性を向上させることができる。
【0042】

また、本発明の層2に使用される無機粒子は、層2全体100質量%に対して、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%~90質量%、さらに好ましくは50質量%~90質量%、特に好ましくは60質量%~85質量%である。層2全体100質量%中の無機粒子の含有量を40質量%以上にすることで、層2の熱硬化後の貯蔵弾性率を向上することができ、無機粒子の含有量を85質量%以下にすることで、樹脂組成へ無機粒子を良好に分散することができるため、電子部品被覆用樹脂組成物シートの可撓性を損なうことなくシート状としての形状を維持することができ、100μm以下の薄いシート状にすることができる。
【0043】
さらに、本発明の層2で使用される無機粒子は、樹脂組成物への分散性を向上させるために、無機粒子表面をシランカップリング剤等で表面処理することに何ら制限を受けない。好ましく使用されるシランカップリング剤は、無機粒子の表面に存在する水酸基等の官能基と反応し、その他添加樹脂との親和性を高めるものであれば特に限定されず、これらの具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル―3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、またそれらのトリエトキシシランなどが挙げられる。本発明の層2において、上記シランカップリング剤の配合量は、無機充填材の比表面積に対して用いられるシランカップリング剤の最小被覆面積(m/g)の割合が通常0.4~3.0、さらに好ましくは0.8~2.0である。
【0044】

<バインダポリマー>
本発明の層2は、バインダーポリマーを含むことが好ましい。本発明の層2に好ましく使用されるバインダーポリマーは、層2にシート形状を付与し、可撓性を付与することができるものであれば何ら制限を受けるものではなく、前述の層1に用いるものと同一のバインダーポリマーを好適に用いることができる。
【0045】

本発明の層2中に含有するバインダーポリマーの含有量は、層2全体に対して2質量%~25質量%であることが好ましい。バインダーポリマーを2質量%以上にすることで、樹脂組成物をシート化した際の形状が安定する。さらには水蒸気の透過性を低くすることができるため、層1と層2の積層体をデバイスに封止加工した後のデバイスの信頼性を向上させることができる。また、バインダーポリマーを25質量%以下にすることで、層2の流動性を向上させ、素子の凹凸に層1を押し込む役割を充分に果たせるようすることができる。
【0046】

<エポキシ樹脂>
本発明の層2は、エポキシ樹脂を含むことが好ましい。層2中のエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂でありさえすれば特に限定されないが、エポキシ樹脂として、単一分子内に3つ又は4つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。単一分子内にエポキシ基が3個もしくは4個あれば、特に限定されるものではないが、たとえば、テトラキスフェノールエタン型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、ジフェニルジアミノメタン型、アミノフェノール型、フェノールノボラック型などのエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に熱硬化性樹脂との反応性の観点から、テトラキスフェノールエタン型、ジフェニルジアミノメタン型、アミノフェノール型のエポキシ樹脂を使用することがより好ましい。単一分子内に3個もしくは4個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を使用することで、架橋密度が高くなり、硬化後の電子部品被覆用樹脂組成物シートの貯蔵弾性率とガラス転移点を上昇させ、モジュール封止時の耐圧性を向上することができる。
【0047】

また前述の通り本発明の層2は、単一分子内に3つ又は4つのエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましいが、その他のエポキシ樹脂、つまり単一分子内に1つ、2つ、又は5つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含有することも特に制限されるものではない。
【0048】

さらに、本発明の層2に使用されるエポキシ樹脂は、室温で固体のエポキシ樹脂と室温で液体のエポキシ樹脂を混合して用いることが好ましい。室温での形状が異なるエポキシ樹脂を混合することで、室温での電子部品被覆用樹脂組成物シート表面のタック性を任意に制御することができ、またデバイス素子への封止加工時の溶融性を制御し、良好な封止加工をすることができるようになる。
【0049】

<熱硬化性樹脂>
本発明の層2は、熱硬化性樹脂を含む事が好ましい。層2で好ましく使用される熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂と反応して硬化するものから選定され、耐熱性、耐湿製、エポキシ基との反応性の点から、官能基としてアミノ基を有する熱硬化性樹脂が好ましく、官能基としてアミノ基を有する熱硬化性樹脂として具体的には、ジアミノジフェニルスルホンなどのジアミノ系芳香族アミンが挙げられる。層2が官能基としてアミノ基を含有する熱硬化性樹脂を含有する事で、エポキシ基との架橋が効率的に進むため、層2の硬化後貯蔵弾性率や硬化後ガラス転移点を向上させることができる。
【0050】

本発明の層2に好ましく使用される熱硬化性樹脂の含有量は、使用するエポキシ樹脂との反応の観点から適宜調整することができ、特に限定されるものではないが、熱硬化性樹脂中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eが0.5~1.5の範囲であることが好ましい。H/Eが上記の範囲になることで、エポキシ樹脂の架橋反応が効率的に進行し、硬化後の貯蔵弾性率やガラス転移点を高くすることができる。また、加熱硬化時に架橋反応が速やかに進行するため、硬化時層2の形状が変形することなく硬化させることができる。
【0051】

<硬化触媒>
本発明の層2は、硬化触媒を含むことが好ましい。層2に好ましく使用される硬化触媒は特に限定されず、前述の層1中の無機粒子と同じ組成のものを用いることができる。
【0052】
硬化触媒の含有量は、熱硬化性樹脂100質量部に対して0.1~30質量部、より好ましくは5~25質量部の範囲が好ましい。これにより、保存安定性が向上しつつ、加熱硬化中に変形なく硬化させることができ、また硬化後の貯蔵弾性率やガラス転移点を向上させ、モールド封止耐性を付与することができる。
【0053】

<その他>
本発明の層2には、さらに各種添加剤を含有させてもよい。例えばハロゲン化合物、リン化合物などの難燃剤、カーボンブラック、オレフィン系共重合体、変性ニトリルゴム、変性ブタジエンゴム、変性ポリブタジエンゴムなどの各種エラストマー、チタネート系カップリング剤などの充填材表面処理剤、ハイドロタルサイト類などのイオン捕捉剤などを挙げることができる。
【0054】
本発明の層2は、170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃の貯蔵弾性率が3GPa以上、ガラス転移点が200℃以上であることが好ましく、より好ましくは170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃貯蔵弾性率が4GPa以上12GPa以下、ガラス転移点が210℃以上270℃以下、更に好ましくは170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃貯蔵弾性率が5GPa以上、ガラス転移点が220℃以上260℃以下である。層2を170℃で2時間加熱硬化させた後の170℃での貯蔵弾性率が3GPa以上、ガラス転移点が200℃以上である場合、モジュール封止時の際に高温・高圧の力が加わっても層2の変形を抑制することができ、かつ、モジュール封止樹脂が中空部分へ流動するのをことができる。さらに、ガラス転移点が200℃以上であることにより、サーマルサイクル性やリフロー耐性が向上し、本発明の層2を用いた水晶デバイスの信頼性が向上する。
【0055】
170℃で2時間加熱硬化させた後の層2の170度の貯蔵弾性率を3GPa以上、ガラス転移点を200℃以上にするためには、層2全体100質量%中の無機粒子の含有量を40質量%以上とし、層2中のエポキシ樹脂として、単一分子内に3つ又は4つのエポキシ基を有するものを適用し、層2中の熱硬化性樹脂として、アミノ基を有する熱硬化性樹脂を適用することで達成される。
【0056】

本発明の層2の80℃での溶融粘度(H1)は、50000Pa・s以下であることが好ましく、50Pa・s以上10000Pa・s以下であることがより好ましく、100Pa・s以上5000Pa・s以下であることであることがさらに好ましい。溶融粘度を低くすることにより、デバイスの素子間のギャップに層2と層1の積層体が入り込み、素子の封止を良好に行うことができる。
【0057】
層2の80℃での溶融粘度(H1)を50000Pa・s以下にするためには、無機粒子の表面処理を行うこと、また異なる粒径の無機粒子を適用すること、バインダーポリマーの添加量をで達成することができる。
【0058】

本発明の層2の80℃での溶融粘度(H1)と、層2を80℃で5分間加熱した後の80℃溶融粘度(H2)の比率H2/H1は、2以上であることが好ましく、2以上5以下であることがより好ましい。比率H2/H1を2以上とすることにより、80℃で5分間加熱した際に、架橋反応が進行して溶融粘度が上昇することにより、電子部品被覆用樹脂組成物シートを水晶デバイスに対して加工する際の圧力からが開放された際に、樹脂組成物シートが変形することを抑制することができる。また、80℃で5分の加熱条件で架橋が進む場合は、最適な硬化反応進行度になるよう、加工温度、加工時間を調整することができる。H2/H1が2より小さい場合は、水晶デバイスの凹凸に追従するように引き延ばされた層1が元の形状に戻ろうとする力が働き層2の形状が変形する。
【0059】
H2/H1を2以上とするためには、熱硬化性樹脂中の活性水素の総モル数Hとエポキシ樹脂中のエポキシ基の総モル数Eの比H/Eを0.5~1.5の範囲内で適宜変更すること、硬化触媒の種類と添加量を調整することで達成することができる。
【0060】

本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートは、層1と層2を有する積層体である本発明の樹脂組成物シートは、保護フィルムをさらに有する事ができる。このような保護フィルムは、電子部品被覆用樹脂組成物シートの片面のみに有していてもよいし、両面に有していてもよい。保護フィルムの具体例としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、銅やアルミなどの金属箔等が挙げられる。また、保護フィルムを加工工程の途中で剥離する場合は、電子部品被覆用樹脂組成物シートの表面に跡が残らない程度の剥離力になるよう、シリコーンやフッ素化合物、アルキド化合物などの離型層を備えたフィルム基材であってもよい。また、両面の保護フィルムを剥離するのであれば、所定のフィルム基材を剥離できるよう、剥離力差をつけることに何ら制限は受けない。
【0061】

本発明の硬化物は、本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートを加熱硬化させた硬化物である。
【0062】
また本発明の半導体装置は、基板、前記基板上に形成された半導体チップ、並びに、前記半導体チップを覆うように積層された本発明の硬化物を有するものであり、基板と半導体チップとの間に中空構造が形成されていることを特徴とする。前記半導体チップを覆うように本発明の電子部品被覆用樹脂組成物シートを積層した後、加熱によりその電子部品被覆用樹脂組成物シートを硬化させることで製造することができるものであり、基板と半導体チップの間に中空構造が形成されていることを特徴とする。
【0063】
前記電子部品被覆用樹脂組成物シートを用いて、前記半導体装置を製造することで、前記半導体装置を封止樹脂の浸入なく封止することが可能であり、さらに加工した前記半導体装置は、耐モールド性、耐リフロー性、耐サーマルサイクル性を有する。
【実施例0064】
以下に本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、各実施例において略号で示した原料の詳細を以下に示す。
【0065】
<バインダーポリマー>
バインダーポリマー1:アクリル系共重合体
混合機及び冷却器を備えた反応器に窒素雰囲気下にて、アクリロニトリル(和光純薬社製、特級)106g(2.00モル)、ブチルアクリレート(和光純薬社製、特級)231g(1.80モル)、グリシジルメタクリレート(和光純薬社製、特級)28g(0.20モル)、溶媒としてメチルエチルケトン(和光純薬社製、一級)を2900g入れ、大気圧(1013hPa)下、85℃に加熱し、さらに連鎖移動剤として2―エチルヘキシルメルカプトアセテート(和光純薬社製)を0.001g、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬社製、V-60)を0.002g加え、重量平均分子量が70万となるまで重合した。重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法(装置:東ソー社製GELPERMEATION CHROMATOGRAPH、カラム:東ソー社製TSK-GEL GMHXL7.8×300mm)により測定し、ポリスチレン換算で算出した。
これにより、モル比がアクリロニトリル:ブチルアクリレート:グリシジルメタクリレート=50:45:5(重量平均分子量70万)のアクリル系共重合体1を得た。
【0066】
バインダーポリマー2:カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(重量平均分子量400000、PNR-1H,JSR株式会社製)
バインダーポリマー3:フェノキシ樹脂(重量平均分子量:50000、東都化成株式会社製フェノトートYP-50)
<エポキシ樹脂>
エポキシ樹脂1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-1001、エポキシ当量:475、三菱ケミカル株式会社製、単一分子内のエポキシ基数:2、室温で固体)
エポキシ樹脂2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(jER-828、エポキシ当量:190、三菱ケミカル株式会社製、単一分子内のエポキシ基数:2、室温で液状)
エポキシ樹脂3:ジフェニルジアミノメタン型エポキシ樹脂(jER604、エポキシ当量:120、三菱ケミカル株式会社製、単一分子内のエポキシ基数:4、室温で液状)
エポキシ樹脂4:テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂(jER1031S、エポキシ当量:200、三菱ケミカル株式会社製、単一分子内のエポキシ基数:4、室温で固体)
エポキシ樹脂5:アミノフェノール型エポキシ樹脂(jER630、エポキシ当量:96、三菱ケミカル株式会社製、単一分子内のエポキシ基数:3、室温で液状)
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂1:4,4‘-ジアミノジフェニルスルホン(セイカキュアS、アミン当量:62、和歌山精化工業株式会社製)
熱硬化性樹脂2:ノボラックフェノール(H-1、水酸基当量:106、明和化成株式会社製)

<硬化触媒>
硬化触媒1:2-ヘプタデシルイミダゾール(c17z、四国化成株式会社製)
硬化触媒2:2,4-ジアミノ-6-[2‘-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン(c11Z-A、四国化成株式会社製)
硬化触媒3:トリフェニルホスフィン(TPP、東京化成工業株式会社製)
<無機粒子>
無機粒子1:SO-C1(平均粒径0.25μm、株式会社アドマテックス製)
無機粒子2:FB-3D(平均粒径3μm、電気化学工業株式会社製)
無機粒子3:SO-C2(平均粒径0.5μm、株式会社アドマテックス製)
無機粒子4:FB-20D(平均粒径22μm、電気化学工業株式会社製)

<シランカップリング剤>
シランカップリング剤1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM-573、信越シリコーン株式会社製)
シランカップリング剤2;フェニルトリメトキシシラン(KBM-103、信越シリコーン)
<その他添加剤>
イオン補足剤:ハイドロタルサイト類化合物(DHT-4A、協和化学工業株式会社製)
カーボンブラック:MA100(平均粒径24nm、三菱ケミカル株式会社製)
<層1用塗料溶液の作成>
以下に一例として実施例1-1の樹脂組成物の調合方法を示す。
【0067】
バインダーポリマー1(アクリル系共重合体)45g、エポキシ樹脂1(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、jER-1001、エポキシ当量:475、三菱ケミカル株式会社製)32g、熱硬化性樹脂1(4,4‘-ジアミノジフェニルスルホン、セイカキュアS、アミン当量:62、和歌山精化工業株式会社製)2.1g、無機粒子1(SO-C1、平均粒径0.25μm、株式会社アドマテックス製)20g、硬化触媒1(2-ヘプタデシルイミダゾール、c17z、四国化成株式会社製)0.1g、イオン補足剤(ハイドロタルサイト類化合物、DHT-4A、協和化学工業株式会社製)1gを配合し、固形分濃度20質量%となるように、DMF/MIBK混合溶媒を加え、40℃で攪拌、溶解して層1用塗料溶液を作製した。
【0068】
実施例1-2~1-6、比較例1-1~1-3は、各組成の種類、配合量は、表1に記載の通り変更した以外は実施例1-1と同様にして、層1用塗料溶液を作製した。
【0069】

<層2用塗料溶液の作成>
以下に一例として実施例2-1の樹脂組成物の調合方法を示す。
無機粒子3(SO-C2、平均粒径0.5μm、株式会社アドマテックス製)59.70gをミキサーに入れ、その中にシランカップリング剤1(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、KBM-573、信越シリコーン株式会社製)0.6gを霧吹きで噴霧し、ミキサー内で攪拌し、無機粒子の表面処理を行った。表面処理後の無機粒子に固形分濃度60質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え、30℃で攪拌後、ホモミキサーで処理をしてスラリーを作製した。作製したスラリーにバインダーポリマー2(カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム、重量平均分子量400000、PNR-1H,JSR株式会社製)5g、エポキシ樹脂313.4g、エポキシ樹脂413.4g、熱硬化性樹脂8.1g、硬化触媒10.1g、カーボンブラック0.3gを加え、混合物の固形分濃度が65質量%になるようにメチルイソブチルケトンを加え、40℃で攪拌、溶解して、層2用塗料溶液を作製した。
【0070】
実施例2-2~2-12、比較例2-1~2-2の各組成の種類、配合量は、表2-1、表2-2に記載の通り変更した以外は実施例2-1と同様にして、層2用塗料溶液を作製した。
【0071】

<層1、層2用塗料溶液のシート化加工>
層1、層2用塗料溶液をバーコータで、シリコーン離型剤付き厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック株式会社製PET38)に乾燥後の厚みが層1は20μm、層2は10~50μmになるように塗布し、110℃で5分間乾燥し、保護フィルム(藤森工業(株)製“フィルムバイナ”GT)を貼り合わせて、シリコーン離型剤付き厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(リンテック株式会社製PET38)、電子部品被覆用樹脂組成物シートおよび保護フィルム(藤森工業(株)製“フィルムバイナ”GT)がこの順に積層された積層体を作製した。
【0072】
続いて、層2は表2に示した樹脂組成物厚みになるように、ロールラミネーターを用いて積層した。積層条件は80℃0.5m/mimとした。
【0073】
<層2シート化膜評価>
上記方法にて、表2記載の実施例、比較例の組成を50μmになるようにシート化し、外観を評価した。目視で膜表面を観察した際に、ピンホールやコートムラ、凹凸が確認される場合は×、顕微鏡観察にて樹脂のムラが確認される場合は△、それ以外を〇とした。
【0074】
<層の溶融粘度測定方法>
作成した層2を、ラミネートロール温度 70℃、ラミネート圧力0.3MPa、ラミネート速度1m/minの条件で積層し、厚み約500μmのサンプルを作製した。その積層サンプルをφ15mmの円形に切り抜き 、TAインスツルメンツ製粘弾性測定装置(AR-G2)を用いて、剪断速度50s-1 、歪量1%、昇温速度5℃/分の条件で80℃まで温度を上昇させた後、80℃で5分温度を保持させる昇温条件で溶融粘度を測定し、80℃に到達した時点での溶融粘度|η*|を読み取りH1とし、80℃で5分経過後の溶融粘度|η*|を読み取りH2とした。
【0075】

<引張破断伸度測定方法>
電子部品被覆用樹脂組成物シートをチャック間サンプル長40mm、幅5mmの条件で引張試験器(UCT100型、(株)オリエンテック製)にて50mm/minの速度で引張り試験を行ない、破断に至るまでの応力ひずみ曲線を記録し、80℃での引張破断伸度(5)を求めた。
【0076】

<貯蔵弾性率、ガラス転移温度 測定方法>
樹脂組成物シートを複数枚積層し、200μm厚の試験片を作成し、この試験片を用いて評価を実施した。なお、樹脂組成物シートが積層構成の場合には、ラミネートロール温度 70℃、ラミネート圧力0.3MPa、ラミネート速度1m/minの積層条件を用い、層1、層2のそれぞれを複数枚積層して試験片を作成し、この試験片をオーブンにて170℃2時間加熱し硬化物を得た。評価は、SII製動的粘弾性装置DMS6100を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分の条件下で170℃における貯蔵弾性率及びガラス転移点を求めた。ガラス転移点は動的粘弾性装置で測定されるtanδ=損失弾性率÷貯蔵弾性率が極大値を取る温度とした。
【0077】
<被覆性評価>
複数の電子部品が実装された基板の表面を電子部品被覆用有機樹脂組成物シートで被覆する際の被覆性につき、以下の手順で評価した。
【0078】
複数の電子部品が実装された基板として、アルミナ基板上に幅0.9mm×長さ1.1mm×高さ0.3mmの評価用Siチップを高さ0.04mmの半田バンプを介してフリップチップ実装した基板を用いた。Siチップは10cm×10cmのアルミナ基板上の中心部分に5行×6列実装され、実装されたSiチップの間隔につき1列目と2列目、3列目と4列目、及び5列目と6列目の間隔を0.05mm、2列目と3列目、4列目と5列目の間隔を0.25mmとした。上記の複数の電子部品が実装された基板上に片面に保護フィルムの付いた状態の樹脂組成物シートを保護フィルムの無い面を基板と相対するように置いた。(工程1)なお、使用する樹脂組成物シートが層1と層2の積層構造の場合、層1の側の保護フィルムを剥離し、層1の側が基板と相対するように置いた。また、層2の厚みは200μmになるようにラミネートロール温度 70℃、ラミネート圧力0.3MPa、ラミネート速度1m/minの条件で積層した。
【0079】
次いで、残っている保護フィルムを剥がし、 平滑なアルミ板の上に上記基板を樹脂組成物シートが置かれた面を上になる様に置き、その上に離型層付の0.025mm以上の厚さのPETフィルムを、離型層と樹脂組成物シートが接するように置き、これを真空引き時間30秒、温度80℃、真空加圧0.5MPaの条件で株式会社名機製作所製MVLPを用いて真空ラミネートを実施した。(工程2)
次に、樹脂組成物シートで被覆された基板をエアオーブン中で170℃2時間加熱硬化処理を行った。(工程3)
樹脂組成物シートよる被覆後の外観につき以下の基準で判定を行った。
【0080】
(a)Siチップ0.05mm間隔部分の樹脂組成物シート被覆性評価
樹脂組成物シートがアルミナ基板上にSiチップ実装により形成された凹凸に追従しているかを、該当の行間20か所を顕微鏡観察により観察し判定した。樹脂組成物シートが破れず、かつ層2上部が平坦な形状をしているものを合格と判定した。樹脂組成物シートの層1が破れていたり、層2が層1よりもSiチップ側に流入しているものは不合格と判定し、観察した20か所のうち合格と判定された箇所数を表3に示した。
【0081】
(b)Siチップ0.25mm間隔部分の樹脂組成物シート被覆性評価
樹脂組成物シートの外観につき、樹脂組成物シートを被覆した構成体の断面について顕微鏡観察により判定した。具体的には、基板とSiチップを接続するバンプと、被覆した樹脂組成物シートの最短距離を測定し、0~20μmであった場合を◎、20~40μmであった場合を〇、40μm以上の場合を×とした。
【0082】

<硬化後チップ間樹脂変形>
被覆性評価と同じ方法でSiチップを封止し、170℃2時間加熱硬化した後、試験片の断面観察を行い、チップ間部分について顕微鏡で観察した。結果、硬化前の形状と比較して、樹脂に変形があったかどうかを判定した。
【0083】

<モールド封止材>
モールド封止材として、ビフェニルエポキシ樹脂11.67重量%、フェノールノボラック樹脂6.5wt%、硬化促進剤0.53重量%、溶融シリカ80重量%をシランカップリング剤0.7重量%で処理したもの、カーボンブラック0.3重量%、カルナウバワックス0.3重量%を溶融混練したもの用いた。
【0084】

<耐モールド封止試験>
被覆性評価にて、(a)で合格判定が15/20以上であり、(b)の判定で◎、もしくは〇の判定になった水準について、耐モールド封止試験を実施した。具体的には、コンプレッションモールド封止試験機にモールド封止材をセットし、170℃、3MPa、もしくは5MPa、もしくは8MPaにて封止を行い、その後チップの断面を観察した。モールド樹脂が基板とSiチップの間の中空構造に流入しているものの数を表3に示した。各モールド圧力条件で5個の試験片を観察し、モールド樹脂の流入チップ数が0~1個/5個の場合、そのモールド圧力条件について合格と判定した。また、各モールド圧力条件結果について、以下で判定を行った。
◎:3、5、8MPaの全てで合格
〇:3、5MPaで合格
△:3MPaのみ合格
×:全ての条件で不合格
<耐リフロー試験>
被覆性評価にて、(a)で合格判定が15/20以上であり、(b)の判定で◎、もしくは〇の判定になった水準について、耐リフロー試験を実施した。具体的には、各試験片を30℃70%RHの条件下、168hr吸湿させた後、速やかに再考温度260℃、10秒のIRリフローにかけ、その剥離・クラック状態を観察した。試験片の断面についての顕微鏡観察において、樹脂組成物シートやSiチップのバンプ部分について、剥離やクラックが見られる場合は×、見られない場合は〇と判定した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2-1】
【0087】
【表2-2】
【0088】
表1、2において、含有量の単位は質量%である。
【0089】
【表3-1】
【0090】
【表3-2】
【0091】
【表3-3】
【符号の説明】
【0092】
1:基板
2:チップ
3:バンプ
4:チップ間ギャップ
5:デバイス間ギャップ
6:デバイス封止樹脂
7:層1
8:層2
9:モジュール封止
図1
図2
図3
図4
図5
図6