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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157427
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】窒素発生装置および窒素発生方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 3/04 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
F25J3/04 103
F25J3/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067344
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 献児
(72)【発明者】
【氏名】永田 大祐
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB02
4D047BA07
4D047CA03
4D047CA04
4D047CA19
4D047DA04
4D047DA14
4D047EA00
4D047EA03
(57)【要約】
【課題】製品窒素ガスの供給圧力の変化に対応して、ブースターエキスパンダーを従来よりも効率的に制御できる窒素発生装置を提供する。
【解決手段】窒素発生装置100は、主熱交換器1と、窒素精留塔2と、少なくとも1つの窒素凝縮器と、圧縮機6と、膨張タービン7と、前記圧縮機6と前記膨張タービン7とを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御部8と、製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測部91と、予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定部91で計測された圧力値を入力し、前記回転軸の回転数を演算し、前記回転制御部8に指令を行う最適回転数演算指令部9とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料空気が導入される主熱交換器と、
前記主熱交換器から導出された原料空気がその下部に導入される窒素精留塔と、
前記窒素精留塔の塔頂部から導出される窒素ガスを凝縮する少なくとも1つの窒素凝縮器と、
前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第一ガスが導入される圧縮機と、
前記圧縮機で圧縮された第一ガスを前記主熱交換器の一部を通過し前記第一精留塔の下部へ導入する第一ガスリサイクル配管と、
前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第二ガスが前記主熱交換器の一部を通過した後で導入される膨張タービンと、
前記膨張タービンで使用された第二ガスを前記主熱交換器を通過させて排出するための第二ガス導出配管と、
前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御部と、
前記窒素精留塔の塔頂部あるいは上部精留部から導出される窒素ガスを前記主熱交換器を通過させた後、製品窒素ガスを取り出す製品窒素ガス取出配管と、
前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または前記製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測部と、
予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定部で計測された圧力値を用いて、前記回転軸の回転数を演算し、前記回転制御部に指令を行う最適回転数演算指令部と、
を備える、窒素発生装置。
【請求項2】
前記主熱交換器よりも上流の原料空気の供給圧力を制御するための原料空気圧縮機と、
前記製品窒素ガスの要求圧力値あるいは前記圧力計測部で計測された圧力値に基づいて、前記原料空気圧縮機の吐出圧力設定値を制御する原料空気供給圧力制御部と、
を備える請求項1に記載の窒素発生装置。
【請求項3】
前記窒素精留塔の底部にある酸素富化液の量を計測する液位計測部と、
前記最適回転数演算指令部および/または前記回転制御部は、
前記液位計測部で計測された液量が、予め設定されている設定幅内になるように、回転数を制限する、
請求項1または2に記載の窒素発生装置。
【請求項4】
前記製品窒素ガス取出配管の主熱交換器より上流側または下流側に設けられ、製品窒素ガスの流量値を計測する流量計測部を備え、
前記最適回転数演算指令部は、前記流量計測部で計測された流量に応じて、前記回転数演算関数によって求められた回転数を調整する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の窒素発生装置。
【請求項5】
主熱交換器と、窒素精留塔と、少なくとも1つの窒素凝縮器と、圧縮機と、膨張タービンとを少なくとも備えて窒素を発生する方法であって、
前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御工程と、
前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測工程と、
予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定工程で計測された圧力値を用いて、前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸の回転数を演算し、前記回転制御工程に対し指令を行う最適回転数演算指令工程と、を含む、窒素発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、原料空気から窒素を発生する窒素発生装置および窒素発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
深冷空気分離法による窒素発生装置は、大量に高純度の窒素を製造することに適している。このような窒素発生装置は、不活性ガス供給や、アンモニア合成等向けの窒素原料供給に適用されている。窒素発生装置には、精留塔を1塔のみ備える単式精留方式(例えば、特許文献1)と、2塔以上備える複式精留方式のものがある(例えば、特許文献2)。
【0003】
製品窒素ガス供給圧力は、供給先の窒素ガス利用状況に応じて、最適圧力が変化する。複式精留方式の場合、製品窒素ガスが低圧精留塔から供給されることから、製品窒素ガスを製品窒素圧縮機によって供給圧力まで圧縮するので、製品窒素圧縮機の吐出圧力制御によって需要圧力変化に応じて最適化することが可能である。一方、単式精留方式の場合、製品窒素ガス供給に必要な圧力で精留塔を運転することで、窒素圧縮機を使用せずに窒素ガスを供給することができる。しかし、供給先の需要圧力変化に追随しようとすると、精留塔の運転圧力をその都度変更する必要が生じる。精留塔の運転圧力が変化するとき、それに見合うように原料空気圧力を上昇させることは、例えば、原料空気圧縮機の吐出圧力制御値を変更する等の操作も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,711,167号公報
【特許文献2】米国特許第4,222,756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1に記載のコールドブースターエキスパンダーを備えた窒素発生装置の場合、精留塔の運転圧力変化に伴って、窒素凝縮器の運転圧力も変化することから、ブースターエキスパンダーの運転圧力条件が変化する。さらに、精留塔の運転圧力は窒素の分離効率にも影響を及ぼし、結果的に窒素回収率にも影響を与えるため、製品窒素ガス製造量を保つためには、ブースターエキスパンダーの処理流量も制御しなければならない。しかしながら、任意の供給圧力に応じて逐次プロセス圧力および流量バランスを計算検討し制御値を再設定することは、複雑で費用がかさむため現実的ではない。その結果、比較的低圧で製品窒素ガスを供給できる場合においても、窒素発生装置からの製品窒素ガス供給圧力は、期待される圧力需要の最大値に設定されたままで、結果的に需要圧と供給圧の差分はエネルギーの損失となっていた。
【0006】
本開示は、製品窒素ガスの供給圧力の変化に対応して、圧縮機(ブースター)と膨張タービン(エキスパンダー)を従来よりも効率的に制御できる窒素発生装置および窒素発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、シミュレーション及び実機における鋭意検討により、製品窒素ガス量を一定とした場合に、精留塔の運転圧と、ブースターエキスパンダーの回転数に正の相関があることが明らかになった。
表1に、原料空気27300Nm/hを投入して、製品窒素ガス17000Nm/hを発生させる場合における、製品窒素ガス圧力毎の最適ブースター運転条件を示す。
【0008】
【表1】
【0009】
製品窒素ガス圧力が上昇するに従い、最適リサイクル空気モル流量は上昇する。これは、精留塔の運転圧力が上昇するに伴い、精留の効率が低下するため、製品窒素ガスの純度を維持するためには蒸気流を増やす必要性があるからである。リサイクル空気の発生源は、精留塔上部の窒素ガスと熱交換して蒸発する酸素富化液であるが、ブースター吸入におけるリサイクル空気の温度は、窒素ガスの凝縮点より窒素凝縮器の温度差分低い温度となり、リサイクル空気の圧力はその温度における平衡圧力となるから、製品窒素ガスの圧力が上がる分、ブースター吸入におけるリサイクル空気の温度と圧力は上昇する。リサイクル空気のモル流量とブースター吸入における温度圧力を総括し、体積流量で評価すると、窒素ガス圧力上昇に伴ってリサイクル空気体積流量が比例して増加することが分かった。これは、精留塔の圧力を変数とした関数を用いることによって、最適なブースターエキスパンダー回転数を推測することが可能となり、複雑な検討を行うことなしにプロセスバランスの最適化が可能となる。
【0010】
これは、原理的には以下のように解釈することができる。精留塔圧力が上昇した場合、精留塔の回収率が低減するため、製品窒素ガス量を確保しようとすると、原料空気量またはリサイクル空気量を増量する必要が生じるが、原料空気量を増量することは消費エネルギー削減に反するので、リサイクル空気量の増量が望ましい。ブースターエキスパンダーにおけるリサイクル空気量は、ブースターのインペラの体積流量処理能力と、ブースターの回転軸の回転数の積算によって決定される。該インペラの構造はプロセス条件操作においては不変なので、回転数制御が肝要となる。
プロセス圧力毎の最適なリサイクル空気量は自明ではないので、精留塔とブースターエキスパンダーを含む同一の装置において、一定の圧力範囲で検討した結果、精留塔圧力とリサイクル空気の体積流量の間に多項式で容易に再現できる正の相関(線形あるいは非線形の多項式で示せる相関関係)を見出すことができた。つまり、リサイクル空気の体積流量は、前述の通りインペラの体積流量処理能力と回転数の積算として計算できるので、精留塔圧力を変数とした関数で最適なリサイクル空気体積流量およびブースターエキスパンダーの回転数設定値を決めることができ、ブースターエキスパンダーの制御点を決定できることが明らかとなった。
【0011】
正の相関(線形相関関係)を表すための回転数演算関数として以下の式(1)を見出した。
y=a×x+b (1)
回転数設定値:y
係数 :a
製品窒素ガス圧力(熱交換器の上流あるいは下流の配管での圧力、窒素精留塔の任意箇所での圧力):x
補正値 :b
また、原料空気圧力設定値を求めるための演算関数として以下の式(2)を見出した。
z=d×x+e (2)
原料空気圧力設定値:z
係数 :d
製品窒素ガス圧力:x
補正値 :e
また、回転数演算関数で求められた回転数設定値を以下の式(3)で調整することを見出した。
y′=w×y (3)
調整後の回転数設定値:y′
回転数設定値:y
係数 :w(製品窒素ガスの流量値)
装置の器機仕様に応じたシミュレーション結果から各係数、補正値は設定される。
【0012】
回転数演算関数として、非線形関数であってもよい。式11はその一例である。
y=a×x+a×x + a×x +b (11)
回転数設定値:y
係数 :a、a、a
製品窒素ガス圧力(熱交換器の上流あるいは下流の配管での圧力、窒素精留塔の任意箇所での圧力):x
補正値 :b
また、原料空気圧力設定値を求めるための演算関数として以下の式(12)を見出した。
z=d×x+e (12)
原料空気圧力設定値:z
係数 :d
製品窒素ガス圧力(熱交換器の上流あるいは下流の配管での圧力、窒素精留塔の任意箇所での圧力):x
補正値 :e
また、回転数演算関数で求められた回転数設定値を以下の式(13)で調整することを見出した。
y′=w×y (13)
調整後の回転数設定値:y′
回転数設定値:y
係数 :w(製品窒素ガスの流量値)
装置の器機仕様に応じたシミュレーション結果から各係数、補正値は設定される。
【0013】
本開示の窒素発生装置は、原料空気がその下部から導入される精留塔の上部から高純度窒素が導出され製品窒素ガスとして取り出すことができる構成である。
【0014】
本開示の窒素発生装置(100)は、
原料空気(Feed Air)が導入される主熱交換器(1)と、
前記主熱交換器(1)から導出された原料空気がその下部(22)に導入される窒素精留塔(2)と、
前記窒素精留塔(2)の塔頂部(24)から導出される窒素ガスを凝縮する少なくとも1つの窒素凝縮器(第一窒素凝縮器(3)、第二窒素凝縮器(4))と、
前記窒素凝縮器(3、4)の塔頂部(32、42)から導出される第一ガスが導入される圧縮機(6)と、
前記圧縮機(6)で圧縮された第一ガスを前記主熱交換器(1)の一部を通過し前記第一精留塔(2)の下部へ導入する第一ガスリサイクル配管(L42)と、
前記窒素凝縮器(3、4)の塔頂部(32、42)から導出される第二ガスが前記主熱交換器(1)の一部を通過した後で導入される膨張タービン(7)と、
前記膨張タービン(7)で使用された第二ガスを前記主熱交換器(1)を通過させて排出するための第二ガス導出配管(L32)と、
前記圧縮機(6)と前記膨張タービン(7)とを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御部(オイルブレーキ(8))と、
前記窒素精留塔(2)の塔頂部(24)あるいは上部精留部(23)から導出される窒素ガスを前記主熱交換器(1)を通過させた後、製品窒素ガスを取り出す製品窒素ガス取出配管(L24)と、
前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または前記製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測部(91)と、
予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定部(91)で計測された圧力値を用いて、前記回転軸の回転数を演算し、前記回転制御部(8)に指令を行う最適回転数演算指令部(9)と、
を備える。
前記圧力計測部(91)は、前記製品窒素ガス取出配管(L24)の主熱交換器(1)の上流側あるいは下流側に設けられ、製品窒素ガスの圧力値を計測してもよい。
前記圧力計測部(91)は、前記窒素精留塔の塔頂部、精留部、底部の任意の箇所の圧力値を計測してもよい。
【0015】
前記圧縮機(6)と前記膨張タービン(7)は、オイルブレーキを備えたブースターエキスパンダー、膨張タービン一体型圧縮機などで構成されていてもよい。また、ブースターエキスパンダーは、制御用のノズルやバイパスを備えてもよい。
【0016】
前記最適回転数演算指令部(9)は、回転制御部(オイルブレーキ(8))へオイルを供給するためのオイル導入配管に設けられた流量制御弁(94)を制御し、オイルの供給量を制御してもよい。流量制御弁(94)のモータの回転角度を計測する回転角度計測部(93)が設けられていてもよい。前記最適回転数演算指令部(9)は、回転角度計測部(94)で計測された回転角度を読み取り、回転数演算関数によって求められた回転数になるように制御(フィードバック制御)をしてもよい。
【0017】
前記窒素発生装置(100)は、
前記回転軸の回転数を計測する回転計測部(92)を備え、
前記最適回転数演算指令部(9)および/または前記回転制御部(8)は、前記回転計測部(92)で計測された回転数が、前記回転数演算関数によって求められた回転数になるように制御(フィードバック制御)されてもよい。
【0018】
前記窒素発生装置(100)は、
前記主熱交換器(1)よりも上流の原料空気の供給圧力を制御するための原料空気圧縮機(5)と、
前記製品窒素ガスの要求圧力値あるいは前記圧力計測部(91)で計測された圧力値に基づいて、前記原料空気圧縮機(5)の吐出圧力設定値を制御する、原料空気供給圧力制御部(95)と、を備えていてもよい。
【0019】
前記窒素発生装置(100)は、
前記窒素精留塔(2)の底部(21)にある酸素富化液の量を計測する液位計測部(211)と、
前記最適回転数演算指令部(9)および/または前記回転制御部(8)は、
前記液位計測部(211)で計測された液量が、予め設定されている設定幅内(上限および下限値)になるように、回転数を制限してもよい。
【0020】
前記窒素発生装置(100)は、
前記製品窒素ガス取出配管(L24)の主熱交換器(1)の上流側または下流側に設けられ、製品窒素ガスの流量値を計測する流量計測部(97)を備え、
前記最適回転数演算指令部(9)は、前記流量計測部(97)で計測された流量に応じて、前記回転数演算関数によって求められた回転数を調整してもよい。
【0021】
窒素精留塔(2)やその他の精留塔(不図示)には、圧力計、温度計などが設けられていてもよい。
製品窒素ガス取出配管(L24)、循環配管(L21)、第一ガスリサイクル配管(L42)、第二ガス導出配管(L32)、他の各種配管には、仕切弁、流量制御弁、膨張弁などが設けられていてもよい。
製品窒素ガス取出配管(L24)、循環配管(L21)、第一ガスリサイクル配管(L42)、第二ガス導出配管(L32)、他の各種配管には、流量計、圧力計、温度計などが設けられていてもよい。
【0022】
本開示の窒素発生方法は、
主熱交換器と、窒素精留塔と、少なくとも1つの窒素凝縮器と、圧縮機と、膨張タービンとを少なくとも備えて窒素を発生する方法であって、
前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御工程と、
前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測工程と、
予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定工程で計測された圧力値を用いて、前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸の回転数を演算し、前記回転制御工程に対し指令を行う最適回転数演算指令工程と、を含む。
前記窒素精留塔は、前記主熱交換器から導出された原料空気がその下部に導入されてもよい。
前記窒素凝縮器は、前記窒素精留塔の塔頂部から導出される窒素ガスを凝縮してもよい。
前記圧縮機は、前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第一ガスが導入されてもよい。
前記膨張タービンは、前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第二ガスが前記主熱交換器の一部を通過した後で導入されてもよい。
前記回転制御工程は、前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御部によって実行されもよい。
前記圧力計測工程は、前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または前記製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測部によって実行されてもよい。
前記最適回転数演算指令工程は、予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定部で計測された圧力値を用いて、前記回転軸の回転数を演算し、前記回転制御部に指令を行う最適回転数演算指令部によって実行されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、実施形態1の窒素発生装置(空気分離装置)の構成例である。
図2図2は、実施形態2の窒素発生装置(空気分離装置)の構成例である。
図3図3は、実施形態3の窒素発生装置(空気分離装置)の構成例である。
図4図4は、実施形態4の窒素発生装置(空気分離装置)の構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明のいくつかの実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の一例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0025】
(用語の定義)
この明細書において、「上流」及び「下流」とは、ガス(例えば、原料空気、第一ガス、第二ガス、窒素ガス)の流れを基準とする。
この明細書において、「窒素精留塔の任意部位の圧力値」とは、例えば、窒素精留塔の塔頂部や窒素精留塔の精留部、底部の圧力値のことを意味する。
【0026】
(実施形態1)
図1に示す実施形態1の窒素発生装置100は、単式精留方式の空気分離装置である。
窒素発生装置100は、主熱交換器1、窒素精留塔2、第一窒素凝縮器3、第二窒素凝縮器4、リサイクルガス圧縮機6、膨張タービン7を基本構成として備える。
主熱交換器1は、原料空気(Feed Air)と他のガスとの間で熱交換が行われる。主熱交換器1から導出された原料空気は、窒素精留塔2の下部22に導入される。窒素精留塔2は、底部21、下部精留部22、上部精留部23と、塔頂部24を有する。窒素精留塔2の塔頂部24から導出される窒素ガスは、第一窒素凝縮器3および第二窒素凝縮器4のそれぞれに送られ、酸素富化液の冷熱によって冷却されたのち、窒素精留塔2へ戻る。窒素精留塔2の底部21から導出される酸素富化液は、循環配管L21を介して第二凝縮器4へ導入され冷熱源として利用され、第二凝縮器4から第一凝縮器3へ送られ、冷熱源として利用される。
【0027】
本実施形態において、リサイクルガス圧縮機6と膨張タービン7は、共通の回転軸で連動しており、該回転軸の制動を行うためのオイルブレーキ8を備えたブースターエキスパンダーとして構成されている。オイルブレーキ8は、回転軸に対する回転を制御する機能(回転制御機能)を有する。
【0028】
第一窒素凝縮器3の塔頂部32から導出される第二ガスは、第二ガス導出配管L32を介し、主熱交換器1の一部を通過した後で膨張タービン7へ送られ利用された後で再び主熱交換器1へ通過し、廃ガス(Waste gas)として排出される。
第二窒素凝縮器4の塔頂部42から導出される第一ガス(リサイクルガス)は、第一ガスリサイクル配管L42を介し、リサイクルガス圧縮機6へ送られて圧縮された後、主熱交換器1の一部を通過し、窒素精留塔2の下部精留部22へ送られる。
【0029】
窒素精留塔2の塔頂部24あるいは上部精留部23から導出される窒素ガスは、製品窒素ガス取出配管L24を介して、主熱交換器1へ送られ熱交換された後、製品窒素ガスとして、供給ポイントへ供給される。
【0030】
圧力計測部91は、製品窒素ガス取出配管L24の主熱交換器1の下流側に設けられ、製品窒素ガスの圧力値を計測する。そして、最適回転数演算指令部9は、予め設置されている回転数演算関数に、圧力測定部91で計測された圧力値を入力し、ブースターエキスパンダーの回転軸の回転数を演算し、オイルブレーキ8に指令を行う。本実施形態では、最適回転数演算指令部9は、オイルブレーキ8へオイルを供給するためのオイル導入配管に設けられた流量制御弁94を制御し、オイルの供給量を制御する。流量制御弁94のモータの回転角度を計測する回転角度計測部93が設けられており、最適回転数演算指令部9は、回転角度計測部93で計測された回転角度を読み取り、回転数演算関数によって求められた回転数になるように制御(フィードバック制御)をしてもよい。
別実施形態として、圧力計測部91は、製品窒素ガス取出配管L24の主熱交換器1の上流側に設けられ、製品窒素ガスの圧力値を計測してもよく、窒素精留塔2の塔頂部、精留部の任意の箇所の圧力値を計測してもよい。
【0031】
回転数演算関数は、不図示のメモリに記憶されている。
本実施形態において、回転数演算関数は、以下の式(1)である。
y=a×x+b (1)
回転数設定値:y
係数 :a
製品窒素ガス圧力:x
補正値 :b
器機仕様に応じたシミュレーション結果および装置の実施実験から係数a、補正値bは予め設定されている。回転数演算関数は、式(1)に限定されず、非線形関数の多項式であってもよく、装置仕様に対応して設定される。
【0032】
(実施形態2)
図2に示す実施形態2の窒素発生装置100は、実施形態1の構成に追加して、原料空気圧縮機5を備える。同じ構成の符号は同じ機能を示し、特に追加の機能を有する構成について説明をする。
【0033】
原料空気圧縮機5は、主熱交換器1よりも上流の原料空気の供給圧力を制御する。原料空気供給圧力制御部95は、製品窒素ガスの要求圧力値あるいは圧力計測部91で計測された圧力値に基づいて、原料空気圧縮機5の吐出圧力設定値を制御する。
本実施形態では、製品窒素ガス圧力に応じて原料空気供給圧力を最適化することができ、原料空気圧縮に係るエネルギー使用量を最適化することができる。具体的には、例えば、原料空気圧縮機5の吐出圧力設定値を変更することで、原料空気圧縮機5に与える動力を調整する。原料空気圧縮機5と主熱交換器1との間に、空気清浄装置(93)が設けられていてもよい。
【0034】
最適回転数演算指令部9または原料空気供給圧力制御部95が、吐出圧力設定値を求めてもよい。吐出圧力設定値は、以下の演算式(2)で求めてもよい。
z=d×x+e (2)
原料空気圧力設定値:z
係数 :d
製品窒素ガス圧力:x
補正値 :e
器機仕様に応じたシミュレーション結果および装置の実施実験から係数d、補正値eは予め設定されている。
【0035】
(実施形態3)
図3に示す実施形態3の窒素発生装置100は、実施形態2の構成に追加して、液位計測部211を備える。同じ構成の符号は同じ機能を示し、特に追加の機能を有する構成について説明をする。
【0036】
液位計測部211は、窒素精留塔2の底部21にある酸素富化液の量を計測する。最適回転数演算指令部9は、液位計測部211で計測された液量が、予め設定されている設定幅内(上限値および下限値)になるように、回転数を制限する。
これにより、窒素精留塔2の底部21の液面によってブースターエキスパンダー(6,7)の回転数制御に調整を加えることができる。ブレーキングシステムによって、プロセスガスからエンタルピーが熱や電力といった媒体で外部に排出されるので、その分プロセスガスは冷却されることになる。このことを、プロセスガスに寒冷が供給されると呼ぶ。窒素発生装置100のような深冷式空気分離装置にとっては、還流液として液化空気を得ることが重要であって、そのためには寒冷を十分供給することが必須である。通常、窒素発生装置の運転維持のために、多少の液化空気を装置中に維持することが望ましいので、例えば、窒素精留塔2の底部21の空間に多少の液位を維持している。一方、本実施形態における製品窒素ガスの圧力変化に伴って、ブースターエキスパンダーの回転数制御を変化させる場合、プロセスに供給される寒冷が不足する場合が(例えば回転数を上昇させる場合に)懸念される。そのため、本実施形態のように、あらかじめ運転管理液面を設定しておき、その管理範囲を逸脱しないよう制御回転数の変移幅を制限する構成とした。そうすることで、より大きな需要圧力変化に対しても、寒冷を不足させることなく、装置の継続運転を維持することが可能となる。
【0037】
(実施形態4)
図4に示す実施形態4の窒素発生装置100は、実施形態3の構成に追加して、流量計測部97を備える。同じ構成の符号は同じ機能を示し、特に追加の機能を有する構成について説明をする。
【0038】
流量計測部97は、製品窒素ガス取出配管L24の主熱交換器1の下流側に設けられ、製品窒素ガスの流量値を計測する。最適回転数演算指令部9は、流量計測部97で計測された流量に応じて、回転数演算関数によって求められた回転数を調整する。
本実施形態によれば、製品窒素ガスの圧力から求められた回転数に対し、製品窒素ガスの流量に応じて(比例して)回転数を調整できる。
【0039】
回転数演算関数で求められた回転数設定値を以下の演算式(3)で調整する。
y′=w×y (3)
調整後の回転数設定値:y′
回転数設定値:y (上記式(1)で求められる)
係数 :w(製品窒素ガスの流量値による調整係数)
器機仕様に応じたシミュレーション結果および装置の実施実験から係数wは予め設定されている。
【0040】
最適回転数演算指令部9、原料空気供給圧力制御部95は、プロセッサーおよびメモリを備えるコンピュータとメモリに保存されたソフトウエアプログラムとの協働作用で実現されてもよく、専用回路、ファームウエアなどで実現されていてもよく、入出力インターフェース、出力部を備えていてもよい。
【0041】
(窒素発生方法)
窒素発生方法は、上記窒素発生装置を使用して窒素を発生してもよく、他の機器において実行されてもよい。
本開示の窒素発生方法は、
主熱交換器と、窒素精留塔と、少なくとも1つの窒素凝縮器と、圧縮機と、膨張タービンとを少なくとも備えて窒素を発生する方法であって、
前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御工程と、
前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測工程と、
予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定工程で計測された圧力値を用いて、前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸の回転数を演算し、前記回転制御工程に対し指令を行う最適回転数演算指令工程と、を含む。
前記窒素精留塔は、前記主熱交換器から導出された原料空気がその下部に導入されてもよい。
前記窒素凝縮器は、前記窒素精留塔の塔頂部から導出される窒素ガスを凝縮してもよい。
前記圧縮機は、前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第一ガスが導入されてもよい。
前記膨張タービンは、前記窒素凝縮器の塔頂部から導出される第二ガスが前記主熱交換器の一部を通過した後で導入されてもよい。
前記回転制御工程は、前記圧縮機と前記膨張タービンとを接続する回転軸に対する回転を制御する回転制御部によって実行されもよい。
前記圧力計測工程は、前記窒素精留塔の任意部位の圧力値または前記製品窒素ガスの圧力値を計測する圧力計測部によって実行されてもよい。
前記最適回転数演算指令工程は、予め設置されている回転数演算関数に、前記圧力測定部で計測された圧力値を用いて、前記回転軸の回転数を演算し、前記回転制御部に指令を行う最適回転数演算指令部によって実行されてもよい。
製品窒素ガス取出配管は、前記窒素精留塔の塔頂部あるいは上部精留部から導出される窒素ガスを前記主熱交換器を通過させた後、製品窒素ガスを取り出す配管であってもよい。
第一ガスリサイクル配管は、前記圧縮機で圧縮された第一ガスを前記主熱交換器の一部を通過し前記第一精留塔の下部へ導入してもよい。
第二ガス導出配管は、前記膨張タービンで使用された第二ガスを前記主熱交換器を通過させて排出するための配管であってもよい。
前記窒素発生方法は、前記最適回転数演算指令工程および/または前記回転制御工程において、前記回転軸の回転数を計測する回転計測部で計測された回転数が、前記回転数演算関数によって求められた回転数になるように制御(フィードバック制御)されてもよい。
前記窒素発生方法は、前記製品窒素ガスの要求圧力値あるいは前記圧力計測工程で計測された圧力値に基づいて、前記主熱交換器よりも上流の原料空気の供給圧力を制御するための原料空気圧縮機の吐出圧力設定値を制御する、原料空気供給圧力制御工程を、含んでいてもよい。
前記窒素発生方法は、
前記最適回転数演算指令工程および/または前記回転制御工程において、前記窒素精留塔の底部にある酸素富化液の量を計測する液位計測部で計測された液量が、予め設定されている設定幅内(上限および下限値)になるように、回転数を制限してもよい。
前記窒素発生方法は、
前記最適回転数演算指令工程において、主熱交換器の上流側または下流側の製品窒素ガスの流量値を計測する流量計測部で計測された流量に応じて、前記回転数演算関数によって求められた回転数を調整してもよい。
【0042】
(別実施形態)
(1)窒素発生装置は、液化空気を精留する第一精留塔(高圧精留塔)と、第一窒素凝縮器と、前記高圧精留塔から高沸点成分(例えばメタンなど)が除去された粗酸素を導出してさらに精留する第二精留塔(低圧精留塔)を備えていてもよい。前記高圧精留塔は、窒素製造精留塔であってもよい。窒素製造精留塔から窒素を取り出すことができる。前記低圧精留塔は、酸素製造精留塔であってもよい。
(2)実施形態1から4では、オイルブレーキを利用して回転数を調整したがこれに制限されず、膨張タービンに接続された発電機を駆動し、電気エネルギーとして回収させることで実質的に回転数を制御してもよい。
【符号の説明】
【0043】
100 窒素発生装置(空気分離装置)
1 主熱交換器
2 窒素精留塔
3 第一凝縮器
4 第二凝縮器
5 原料空気圧縮機
6 圧縮機
7 膨張タービン
8 回転制御部(オイルブレーキ)
9 最適回転数演算指令部
91 原料空気圧縮機
93 空気清浄装置
95 原料空気供給圧力制御部
97 流量計測部
211 液位計測部
L21 循環配管
L24 製品窒素ガス取出配管
L32 第二ガス導出配管
L42 第一ガスリサイクル配管
図1
図2
図3
図4