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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157430
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】分散型免震装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/34 20060101AFI20231019BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20231019BHJP
   F16F 7/00 20060101ALI20231019BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20231019BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
E02D27/34 B
E04H9/02 331E
F16F7/00 F
F16F15/02 M
F16F7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067347
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】504451690
【氏名又は名称】半澤 薫和
(74)【代理人】
【識別番号】100142550
【弁理士】
【氏名又は名称】重泉 達志
(72)【発明者】
【氏名】半澤 薫和
(72)【発明者】
【氏名】半澤 和夫
【テーマコード(参考)】
2D046
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2D046DA12
2E139AA01
2E139AC19
2E139CA21
2E139CC02
3J048AA04
3J048AC06
3J048BD01
3J048DA01
3J048EA38
3J066AA29
3J066BA03
3J066BB04
3J066BE03
3J066BF07
3J066BF12
3J066BF14
(57)【要約】
【課題】部品点数を削減して製造コストの低減を図ることのできる分散型免震装置を提供する。
【解決手段】建築物の基礎11と土台12の間に介挿される分散型免震装置30において、土台12と接触する上側平板40と、基礎11と接触し上面が上側平板40の下面と密着する下側平板50と、上側平板40の下面及び下側平板50の上面の一方に形成される突出部と、上側平板40の下面及び下側平板50の上面の他方に形成され突出部を受容する受容部と、を備え、上側平板40及び下側平板50に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると突出部が破断され、上側平板40及び下側平板50の相対的な水平方向の移動が可能となるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎と土台の間に介挿される分散型免震装置において、
前記土台と接触する上側平板と、
前記基礎と接触し、上面が前記上側平板の下面と密着する下側平板と、
前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の一方に形成される突出部と、
前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の他方に形成され、前記突出部を受容する受容部と、を備え、
前記上側平板及び前記下側平板に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると前記突出部が破断され、前記上側平板及び前記下側平板の相対的な水平方向の移動が可能となる分散型免震装置。
【請求項2】
前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の少なくとも一方に形成され、平面視にて前記突出部を包囲する塵埃収容溝を備えた請求項1に記載の分散型免震装置。
【請求項3】
前記上側平板及び前記下側平板の少なくとも一方は、プラスチックからなり、成形時に使用したゲートの痕跡の凸部を有し、
前記凸部は、前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の間に、前記塵埃収容溝により画成される空間に配置される請求項2に記載の分散型免震装置。
【請求項4】
前記下側平板の下面の外縁に形成され、内側へ向かって下るよう傾斜するテーパ部を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載の分散型免震装置。
【請求項5】
前記上側平板及び前記下側平板は、平面視円形を呈し、
前記突出部及び前記受容部は、前記上側平板及び前記下側平板の中心に配置される請求項4に記載の分散型免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎と土台の間に介挿される分散型免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の基礎と土台の間に介挿される分散型免震装置として、上段に位置し土台に接触する上側平板と、基礎に接触する下側平板と、を有し、上側平板及び下側平板の重ね合わされる面を平滑としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の分散型免震装置では、上側平板の上面及び下側平板の下面に2本の溝部が形成されており、各溝部にそれぞれリング状合成ゴムを嵌入することにより、上側平板と下側平板が組み合わせられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7018550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の分散型免震装置では、2つのリング状合成ゴムを設けていることから、部品点数が多くなり、製造コストが嵩むという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、部品点数を削減して製造コストの低減を図ることのできる分散型免震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、
建築物の基礎と土台の間に介挿される分散型免震装置において、
前記土台と接触する上側平板と、
前記基礎と接触し、上面が前記上側平板の下面と密着する下側平板と、
前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の一方に形成される突出部と、
前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の他方に形成され、前記突出部を受容する受容部と、を備え、
前記上側平板及び前記下側平板に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると前記突出部が破断され、前記上側平板及び前記下側平板の相対的な水平方向の移動が可能となる分散型免震装置が提供される。
【0007】
この分散型免震装置によれば、上側平板の下面及び下側平板の上面の一方に形成された突出部を、他方に形成された受容部に受容させることにより、上側平板及び下側平板を組み合わせて固定することができる。
また、上側平板及び下側平板に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると突出部が破断されるので、地震により基礎及び土台が相対的に水平方向へ移動して上側平板及び下側平板に所定の負荷を超える負荷が加わると、上側平板及び下側平板の相対的な水平方向の移動が可能となる。そして、上側平板の下面と下側平板の上面とで水平方向の滑りを生じさせることにより、地震エネルギーを費消させることができる。
【0008】
また、上記分散型免震装置において、前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の少なくとも一方に形成され、平面視にて前記突出部を包囲する塵埃収容溝を備えてもよい。
【0009】
また、上記分散型免震装置において、
前記上側平板及び前記下側平板の少なくとも一方は、プラスチックからなり、成形時に使用したゲートの痕跡の凸部を有し、
前記凸部は、前記上側平板の前記下面及び前記下側平板の前記上面の間に、前記塵埃収容溝により画成される空間に配置されてもよい。
【0010】
また、上記分散型免震装置において、前記下側平板の下面の外縁に形成され、内側へ向かって下るよう傾斜するテーパ部を備えてもよい。
【0011】
また、上記分散型免震装置において、前記上側平板及び前記下側平板は、平面視円形を呈し、前記突出部及び前記受容部は、前記上側平板及び前記下側平板の中心に配置されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の分散型免震装置によれば、部品点数を削減して製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態を示すアンカーボルトと分散型免震装置の協働機構の概略側面説明図である。
図2】アンカーボルト及び貫通孔の拡大側面説明図である。
図3】上側平板の平面図である。
図4】上側平板の底面図である。
図5】上側平板の断面図である。
図6】下側平板の平面図である。
図7】下側平板の底面図である。
図8】下側平板の断面図である。
図9】本発明の第2の実施形態を示す分散型免震装置の側面図である。
図10】上側平板の平面図である。
図11】上側平板の底面図である。
図12】上側平板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図8は本発明の第1の実施形態であり、図1はアンカーボルトと分散型免震装置の協働機構の概略側面説明図、図2はアンカーボルト及び貫通孔の拡大側面説明図、図3は上側平板の平面図、図4は上側平板の底面図、図5は上側平板の断面図、図6は下側平板の平面図、図7は下側平板の底面図、図8は下側平板の断面図である。
【0015】
図1に示すように、このアンカーボルト及び分散型免震装置の協働機構は、建築物の基礎11に埋設されて土台12を固定する複数のアンカーボルト21と、各アンカーボルト21間の基礎11と土台12の間に介挿される分散型免震装置30と、を備えている。本実施形態においては、建築物は、木造であり、基礎11はコンクリート、土台12は木材により構成される。アンカーボルト及び分散型免震装置の協働機構は、アンカーボルト21に螺入して基礎11に土台12を固定する丸座付きナット22を有し、丸座付きナット22は、長ナット部22aの先端に丸座22bを有している。
【0016】
また、図2に示すように、アンカーボルト及び分散型免震装置の協働機構は、アンカーボルト21が挿入され土台12を貫通する貫通孔13を有し、締付後のアンカーボルト21及び丸座付きナット22の天端は、土台12の表面と同一レベルとなっている。尚、締付後のアンカーボルト21及び丸座付きナット22の天端は、土台12の表面より低くともよい。貫通孔13は、土台12の表面から順に小径部13a及び大径部13bを有する。小径部13aは、直径が大径部13bより小さく、軸方向長さが丸座付きナット22の長ナット部22aより長い。尚、貫通孔13等の構成は任意に変更することができ、例えば、貫通孔13は長手方向にわたって一定の径で形成されていてもよく、丸座付きナット22の細部構成も必要に応じて変更することができる。
【0017】
分散型免震装置30は、土台12に接する上側平板40と、上側平板40と密着し基礎11に接する下側平板50と、を有する。本実施形態においては、分散型免震装置30は、土台12上の柱14の直下に配置される。本実施形態においては、上側平板40及び下側平板50は、プラスチックからなり、エンジニアリングプラスチックを用いることが好ましい。エンジニアリングプラスチックとして、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマー等を挙げることができる。また、上側平板40及び下側平板50を、プラスチックを母材とし、ガラス繊維、カーボン繊維等により強化された繊維強化プラスチックとすることもできる。本明細書では、「プラスチック」は、繊維強化プラスチックも含むものとする。尚、上側平板40及び下側平板50を、例えば金属等のようなプラスチック以外の材料とすることもできる。また、上側平板40及び下側平板50は、同じ材料であっても、異なる材料であってもよく、必要な摩擦抵抗等に応じて各平板40,50の材料を選定することができる。例えば、各平板40,50の一方を金属、他方をプラスチックとしたり、各平板40,50の両方を同種の合金として、合金中に含まれる元素の配合比率を異なるようにしてもよい。
【0018】
上側平板40及び下側平板50は、それぞれ平面視円形に形成され、互いに平面視で中心が一致するよう配置される。本実施形態においては、上側平板40の直径は、土台12の幅と略同一であり、下側平板50の直径よりも大きい。尚、上側平板40の直径を、土台12の幅と異なるようにしたり、下側平板50の直径以下の大きさとすることもできる。さらに、上側平板40及び下側平板50を、平面視円形以外の形状とすることもできる。
【0019】
図3に示すように、上側平板40の上面41は、平坦に形成され、複数の上面突起42が形成される。各上面突起42は、上方へ向かって先端が細くなるよう形成される。本実施形態においては、各上面突起42は、上面41における所定の径方向位置で周方向に並んで配置される。具体的に、各上面突起42は、上面41の周縁寄りと中心寄りの2つの径方向位置で、周方向に並んで配置される。また、上側平板40は、中心位置で上下方向に延びる受容部としてのピン受容孔43を有している。
【0020】
図4に示すように、上側平板40の下面44は、平坦に形成された滑り面44aと、滑り面44aの径方向外側に形成され径方向外側へ向かって上側に傾斜する傾斜面44bと、滑り面44aの径方向内側に形成された塵埃収容溝44cと、塵埃収容溝44cの径方向内側に形成された中心平坦面44dと、を有する。図5に示すように、塵埃収容溝44cは、平坦部44c1と、平坦部44c1の径方向内側に形成され径方向内側へ向かって下方へ傾斜する内側傾斜部44c2と、平坦部44c1の径方向外側に形成され径方向外側へ向かって下方へ傾斜する外側傾斜部44c3と、を有する。特に図示していないが、本実施形態においては、上側平板40の下面44及び下側平板50の上面51は、プラスチックの成形時に使用したゲートの痕跡の凸部を有しており、この凸部が平面視で塵埃収容溝44cと重なる位置に配置されている。そして、塵埃収容溝44cは、凸部の高さよりも深く形成されている。この結果、凸部は、上側平板40の下面44及び下側平板50の上面51の間に、塵埃収容溝44cにより画成される空間に配置されることとなる。
【0021】
図6に示すように、下側平板50の上面51は、平坦に形成され、中心に突出部としてのピン52が形成される。下側平板50の上面51は、滑り面をなし、上側平板40の下面44と密着する。ピン52がピン受容孔43に受容された状態で、上側平板40及び下側平板50に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると、ピン52が破断されるようになっている。ピン52が破断に至る負荷の大きさは任意に設定することができ、例えば、40N以上100N以下とすることができる。本実施形態においては、水平方向に60Nの力が加わると破断するよう設定されている。
【0022】
図7に示すように、下側平板50の下面53は、下面53の大部分をなす主平面53aと、主平面53aの径方向外側に形成されるテーパ面53bと、を有するとともに、複数の下面凸部54が形成される。図8に示すように、テーパ面53bは、下側平板50の下面53の外縁に形成されるテーパ部をなし、内側へ向かって下るよう傾斜している。尚、テーパ面53bの傾斜角度、形成範囲等は任意に変更することができ、必要に応じてテーパ面53bを省略することができる。各下面凸部54は、平面視円形に形成される。本実施形態においては、各下面凸部54は、下面53の中心に配置されるとともに、下面53における所定の径方向位置で周方向に並んで配置される。具体的に、各下面凸部54は、下面53の中心に配置されるとともに、4つの径方向位置で周方向に並んで配置される。
【0023】
以上のように構成された分散型免震装置30によれば、下側平板50のピン52を上側平板40のピン受容孔43に受容させることにより、上側平板40と下側平板50を組み合わせて固定することができる。従って、従来のように、上側平板及び下側平板を組み合わせるために、上側平板及び下側平板に溝部を形成し、リング状のゴムで上側平板及び下側平板を巻回する必要はない。これにより、上側平板40及び下側平板50の形状を単純にして成形しやすくするとともに、ゴムを廃止して部品点数を削減し、製造コストの低減を図ることができる。また、ピン52及びピン受容孔43は、平面視円形の上側平板40及び下側平板50の中心に配置されているので、任意の周方向位置で各平板40,50を組み合わせることができ、各平板40,50の固定作業を簡単容易に行うことができる。さらに、本実施形態の分散型免震装置30によれば、上側平板40及び下側平板50をプラスチックとしたので、亜鉛合金等とした場合と比較して、製造時の二酸化炭素の排出量の削減を図ることができる。
【0024】
ピン52及びピン受容孔43により上側平板40と下側平板50が組み合わされた分散型免震装置30は、基礎11の上面におけるアンカーボルト21間の所定位置に載置される。そして、貫通孔13が各アンカーボルト21を挿通するように、土台12が基礎11上に設置される。この後、アンカーボルト21に丸座付きナット22を螺入して分散型免震装置30の設置作業が完了する。このとき、上側平板40には各上面突起42が形成され、下側平板50には各下面凸部53が形成されているので、これらが土台12及び基礎11に食い込み、土台12及び基礎11と分散型免震装置30との間の滑りの発生が抑制される。本実施形態においては、木材からなる土台12の方が、コンクリートからなる基礎11よりも強度が弱いことを考慮し、上側平板40における土台12との接触面積が、下側平板50における基礎11との接触面積よりも大きくなるよう構成されている。基礎11と分散型免震装置30は、必要に応じて接着剤により接着される。
【0025】
次に、分散型免震装置30の地震時の作用について説明する。なお、図1は地震時に基礎11に対して土台12が左方向に動いたときの状態を示している。
地震時に基礎11及び土台12に水平方向の負荷が加わると、上側平板40及び下側平板50に相対的な水平方向の負荷が加わり、負荷によりピン52の基端部分が破断されると上側平板40及び下側平板50が相対的に移動可能となる。そして、上側平板40の下面44と下側平板50の上面51とで水平方向の滑りを生じさせることにより、地震エネルギーを費消させることができる。
【0026】
上側平板40と下側平板50は、破断されたピン52がピン受容孔43に受容された状態で滑動する。このとき、ピン52の基端部分の破断により生じた塵埃は、上側平板40の下面44及び下側平板50の上面51の間に塵埃収容溝44cにより画成された空間に収容され、滑り面44aまで到達することはない。これにより、ピン52の破断により生じた塵埃が滑り面44aに入り込んで、地震エネルギーの費消性能が損なわれることはない。また、ゲートの痕跡の凸部も塵埃収容溝44cにより画成される空間に配置されるので、凸部が地震エネルギーの費消性能に影響を及ぼすこともない。尚、ゲートの痕跡の凸部が、上側平板40の下面44及び下側平板50の上面51でない部分に形成されている場合も、凸部が地震エネルギーの費消性能に影響を及ぼすことはない。
【0027】
また、下側平板50の下面53の外縁にテーパ部を設けたので、下側平板50と基礎11が接着剤により接着されていたとしても、テーパ部と基礎11との間に工具等を差し込むことで、下側平板50を基礎11から簡単容易に取り外すことができる。従って、メンテナンス時の作業者の負担を軽減することができる。
【0028】
また、地震時に基礎11及び土台12に水平方向の負荷が加わると、アンカーボルト21に曲げ応力が働いてアンカーボルト21は曲がる。従って、地震エネルギーはアンカーボルト21に対する曲げ応力となることによっても費消される。本実施形態においては、アンカーボルト21は丸座付きナット22を介して小径部13aで掴持されているため大径部13b内で曲がりが生ずる。このように、アンカーボルト21と分散型免震装置30とが協働して地震エネルギーを費消する。
【0029】
図9から図12は本発明の第2の実施形態であり、図9は本発明の第2の実施形態を示す分散型免震装置の側面図、図10は上側平板の平面図、図11は上側平板の底面図、図12は上側平板の断面図である。図9に示すように、第2の実施形態では、分散型免震装置130の上側平板140が第1の実施形態と異なっている。
【0030】
図10に示すように、第2の実施形態の分散型免震装置130の上側平板140は、平面視円形の平板本体140aと、平板本体140aの外縁から上方へ延びる円筒状の外側円筒部140bと、外側円筒部140bの上端から径方向外側へ延びる外縁部140cと、を有している。また、上側平板140は、平板本体140aの径方向中央側から上方へ延びる円筒状の内側円筒部140dと、径方向へ延び内側円筒部140dと外側円筒部140bとを接続する複数の連結壁140eと、を有している。各連結壁140eは、周方向に等間隔に配置される。また、平板本体140aには、外側円筒部140b、内側円筒部140d及び各連結壁140eにより上方が包囲された空間に溜まる水を抜くための複数の水抜き孔140fが形成されている。
【0031】
外側円筒部140b、外縁部140c及び内側円筒部140dの上端は、連続的に平坦に形成され、上側平板140の上面141をなしている。上面141には、複数の上面突起142が形成される。各上面突起42は、上方へ向かって先端が細くなるよう形成される。本実施形態においても、各上面突起142は、上面141における所定の径方向位置で周方向に並んで配置される。具体的に、各上面突起142は、上面141における内側円筒部140dの位置と、外側円筒部140b上の位置で、周方向に並んで配置される。また、ピン受容孔143は、平板本体140aの中心位置で上下方向に延びて形成される。
【0032】
図11に示すように、上側平板140の下面144は、平坦に形成された滑り面144aと、滑り面144aの径方向内側に形成された塵埃収容溝144cと、塵埃収容溝144cの径方向内側に形成された中心平坦面144dと、を有する。図12に示すように、塵埃収容溝144cは、平坦部144c1と、平坦部144c1の径方向内側に形成され径方向内側へ向かって下方へ傾斜する内側傾斜部144c2と、平坦部144c1の径方向外側に形成され径方向外側へ向かって下方へ傾斜する外側傾斜部144c3と、を有する。本実施形態においては、成形時の金型の抜きやすさを考慮して、外側円筒部140bの内面と、内側円筒部140dの内面及び外面は、上方へ向かって内側に傾斜するよう形成される。また、平板本体140aにおける内側円筒部140dよりも径方向内側の領域は、平板本体140aに加わる曲げ応力を考慮して、径方向内側へ向かって厚くなるうよう形成される。また、特に図示していないが、本実施形態においても、上側平板140及び下側平板50は、ゲートの痕跡の凸部を有しており、凸部が塵埃収容溝144cにより画成される空間に配置されている。
【0033】
以上のように構成された分散型免震装置130においても、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0034】
尚、前記各実施形態においては、ピン52を下側平板50の上面51に形成し、ピン受容孔43を上側平板40の下面44に形成したものを示したが、下側平板の上面にピン受容孔を形成し、上側平板の下面にピンを形成してもよい。また、突出部及び受容部としてピン52及びピン受容孔43を採用したものを示したが、上側平板及び下側平板に相対的な水平方向への所定の負荷が加わると突出部が破断されるものであれば、突出部及び受容部の形状は任意に変更することができる。また、前記各実施形態においては、突出部と受容部が1組であるものを示したが、2組以上とすることもできる。また、各平板における突出部と受容部の位置も、任意に変更が可能である。
【0035】
さらに、前記各実施形態においては、塵埃収容溝44c,144cを上側平板40の下面44に形成したものを示したが、塵埃収容溝を下側平板の上面に形成してもよいし、上側平板の下面と下側平板の上面の両方に形成してもよい。
【0036】
以上、本発明の実施例を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0037】
11 基礎
12 土台
30 分散型免震装置
40 上側平板
43 ピン受容孔
44 下面
44c 塵埃収容溝
50 下側平板
51 上面
52 ピン
53b テーパ面
130 分散型免震装置
140 上側平板
143 ピン受容孔
144 下面
144c 塵埃収容溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12