(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157432
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
C08L69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067354
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】首藤 弘
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CG011
4J002CG012
4J002GC00
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供する。
【解決手段】粘度平均分子量20000~40000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)10~90重量部と粘度平均分子量15000~30000の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)90~10重量部とをブレンドしてなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度平均分子量20000~40000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)10~90重量部と粘度平均分子量15000~30000の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)90~10重量部とをブレンドしてなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項2】
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであり、かつ分岐剤含有率が0.50モル%以上1.50モル%以下である請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項3】
300℃、荷重1.2kgf(×9.8N)で測定したMVRが2.5cm3/10min以下である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項4】
シャルピー衝撃強度が67kJ/m2以上である請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスフェノールA等から製造される直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐熱性、機械特性に優れ、幅広い用途で使用されている。しかし、該直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等の用途に用いた場合は、溶融張力が低いため成形品に厚みむらが生じたり、ドローダウンを生じたりして満足な成形品が得られない場合がある。これを解決する方法としては、重合時に3個以上の官能基を有する分岐剤を添加して得た分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を用いる方法が開示されている(特許文献1)。
しかしながら、この方法により得られた分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は衝撃強度が低下するという課題があった。
また、直鎖状芳香族ポリカーボネートにおいてもドローダウン性を改善するために分子量を大きくしていくとシャルピー衝撃強度が低下するという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定範囲の分子量を有する直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂と特定範囲の分子量を有する分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂とを特定の比率でブレンドすることにより、低い溶融粘度を維持したままシャルピー衝撃強度を改善できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明によれば、下記(構成1)~(構成4)が提供される。
【0006】
(構成1)
粘度平均分子量20000~40000の直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)10~90重量部と粘度平均分子量15000~30000の分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)90~10重量部とをブレンドしてなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成2)
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであり、かつ分岐剤含有率が0.50モル%以上1.50モル%以下である構成1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成3)
300℃、荷重1.2kgf(×9.8N)で測定したMVRが2.5cm3/10min以下である構成1または2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成4)
シャルピー衝撃強度が67kJ/m2以上である構成1~3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
(構成5)
構成1~4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から形成された成形品。
【発明の効果】
【0007】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れているため、押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等従来公知の方法で成形して、成形品を得ることができ、例えば、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、その他の各種分野において幅広く有用である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
<直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)>
本発明で用いる直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノールとカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0009】
ここで用いる二価フェノールの具体例としては、例えば2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-tert-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等があげられる。
【0010】
これら二価フェノールは単独で用いても、二種以上併用してもよい。前記二価フェノールのうち、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を主たる二価フェノール成分とするのが好ましく、特に全二価フェノール成分中、70モル%以上、特に80モル%以上がビスフェノールAであるものが好ましい。最も好ましいのは、二価フェノール成分が実質的にビスフェノールAである直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂である。
【0011】
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段を簡単に説明する。カーボネート前駆体としてホスゲンを用いる溶液法では、通常酸結合剤および有機溶媒の存在下に二価フェノール成分とホスゲンとの反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンや第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることができ、分子量調節剤として例えばフェノールやp-tert-ブチルフェノールのようなアルキル置換フェノール等の末端停止剤を用いることが望ましい。反応温度は通常0~40℃、反応時間は数分~5時間、反応中のpHは10以上に保つのが好ましい。
【0012】
カーボネート前駆体として炭酸ジエステルを用いるエステル交換法(溶融法)は、不活性ガスの存在下に所定割合の二価フェノール成分と炭酸ジエステルとを加熱しながら撹拌し、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法である。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応させる。また反応を促進するために通常のエステル交換反応触媒を用いることができる。このエステル交換反応に用いる炭酸ジエステルとしては例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等があげられ、特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0013】
本発明で用いる直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で表して20,000~40,000であり、23,000~39,000が好ましく、25,000~38,500がより好ましく、28,000~38,000がさらに好ましく、35,000~37,500が特に好ましい。上記範囲内であると、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂とブレンドした芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れる。
【0014】
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、まず、次式にて算出される比粘度(ηSP)を20℃で塩化メチレン100mlに直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂材料0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出したものである。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0015】
<分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)>
本発明で用いる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂は、二価フェノール、分岐剤およびカーボネート前駆体を反応させて得られる芳香族ポリカーボネート樹脂である。
ここで用いる二価フェノールの具体例としては、上述した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂で用いられる二価フェノールと同様のものが挙げられる。
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する基本的な手段は、分岐剤を使用する以外は、上述した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法と同様である。
【0016】
(分岐剤)
本発明で使用される分岐剤は、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが好ましい。分岐剤は、固形物および/または溶融物を、あるいは固形物および/または溶融物をアルカリ水溶液または有機溶媒に溶解して用いることができる。
【0017】
(分岐剤含有率)
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂中の分岐剤含有率は、好ましくは0.50モル%以上1.50モル%以下であり、より好ましくは0.60モル%以上1.45モル%以下であり、さらに好ましくは0.70モル%以上1.40モル%以下である。分岐剤含有率は、二価フェノール化合物の総モル数に対する分岐剤のモル数(分岐剤のモル数/二価フェノール化合物の総モル数×100モル%で表す)を意味する。分岐剤含有率が上記範囲内であると、ドローダウンを生じ難く、分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂が架橋し難く、ゲルが発生せず、満足な分岐特性が得られ、且つ耐衝撃性や透明性に優れるため好ましい。
【0018】
本発明で用いる分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、粘度平均分子量で表して15,000~30,000であり、17,000~29,000が好ましく、18,000~28,000がより好ましく、19,000~27,000がさらに好ましく、20,000~26,000が特に好ましい。上記範囲内であると、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂とブレンドした芳香族ポリカーボネート樹脂組成物において、ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れる。
【0019】
分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、上述した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量の測定方法と同様の方法で測定される。
【0020】
<芳香族ポリカーボネート樹脂組成物>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、上述した直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)10~90重量部と分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)90~10重量部とをブレンドしてなる芳香族ポリカーボネート樹脂組成物である。なお、直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)の重量部は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)との合計量100重量部に対する重量部を意味する。
【0021】
直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)とのブレンド比は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)/分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B)=15~85/85~15(重量部)が好ましく、20~80/80~20(重量部)がより好ましく、25~75/75~25(重量部)がさらに好ましい。上記範囲内の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物はドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れる。
【0022】
(MVR)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、300℃、荷重1.2kgf(×9.8N)で測定したMVRが2.5cm3/10min以下であることが好ましく、2.3cm3/10min以下であることがより好ましく、2.1cm3/10min以下であることがさらに好ましく、2.0cm3/10min以下であることが特に好ましく、1.9cm3/10min以下であることがもっとも好ましい。上記範囲内であるとドローダウン性に優れる。MVRが小さすぎると成形性に劣るため、0.5cm3/10min以上が好ましい。
【0023】
(衝撃強度)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ISO179に準拠して測定したシャルピー衝撃強度が67kJ/m2以上であることが好ましく、70kJ/m2以上であることがより好ましく、75kJ/m2以上であることがさらに好ましく、80kJ/m2以上であることが特に好ましい。上記範囲内であると耐衝撃性に優れる。シャルピー衝撃強度は100kJ/m2以下で十分に性能を発揮できる。
【0024】
(添加剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、さらに酸化防止剤、離型剤(脂肪酸エステル等)、耐候剤(紫外線吸収剤)、核剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、増白剤、抗菌剤、着色剤(顔料、染料等)、充填剤、強化剤、他樹脂やゴム等の重合体、難燃剤等の改質改良剤を適宜添加して用いることができる。シート分野で建材用途として用いる場合は耐候剤を配合することが望ましい。また発泡シートでは、核剤を配合することが望ましい。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、透明性、耐衝撃性およびドローダウン性に優れるので、種々の用途に好適に使用される。具体的には、射出成形、押出成形やブロー成形などの成形加工に好適である。かかる用途としては例えば、導光板、プリズムシート、照明機器などの電気・電子部品を挙げることができる。
【0025】
(紫外線吸収剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、紫外線吸収剤を使用することができる。紫外線吸収剤としては、例えば2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ベンジロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-ソジウムスルホキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタンなどに代表されるベンゾフェノン系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0026】
また紫外線吸収剤としては例えば2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-ドデシル-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3”,4”,5”,6”-テトラフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、メチル-3-[3-tert-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニルプロピオネート-ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を挙げることができる。
【0027】
さらに紫外線吸収剤としては例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、2-(4,6-ビス-(2,4-ジメチルフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノールなどに代表されるヒドロキシフェニルトリアジン系化合物や2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類のクラリアントジャパン社製 Hostavin PR-25やクラリアントジャパン社製 Hostavin B-CAPなどに代表されるマロン酸エステル系化合物を挙げることができる。
【0028】
紫外線吸収剤の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.01~5重量部であり、より好ましくは0.02~1重量部であり、さらに好ましくは0.05~0.5重量部であり、特に好ましくは0.1~0.3重量部である。
【0029】
(熱安定剤)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、熱安定剤を使用することができる。熱安定剤としては、リン系熱安定剤やヒンダードフェノール系熱安定剤が使用される。
【0030】
リン系熱安定剤としては、亜燐酸エステル系の熱安定剤が好ましい。亜燐酸エステル系の熱安定剤としてはトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシル-ホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブチルフェニル)ホスファイトおよびトリス(ヒドロキシフェニル)ホスファイト等が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)2-エチルヘキシル-ホスファイトおよびテトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが特に好ましい。
【0031】
リン系熱安定剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.001~0.5重量部が好ましく、0.005~0.3重量部がより好ましく、0.01~0.2重量部がさらに好ましい。
【0032】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシアルキルエステル(アルキルは炭素数7~9で側鎖を有する)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、3,3’,3”,5,5’,5”-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a”-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが挙げられる。その中でも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましく使用される。
【0033】
ヒンダードフェノール系熱安定剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.001~0.5重量部の範囲が好ましく、0.005~0.3重量部の範囲がより好ましく、0.01~0.2重量部の範囲がさらに好ましい。
【0034】
熱安定剤合計の配合量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.001~0.5重量部の範囲が好ましく、0.005~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.01~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0035】
<離型剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には離型剤を配合することができる。離型剤としては飽和脂肪酸エステルが好ましく、例えばステアリン酸モノグリセライド等のモノグリセライド類、ステアリン酸ステアレート等の低級脂肪酸エステル類、セバシン酸ベヘネート等の高級脂肪酸エステル類、ペンタエリスリトールテトラステアレート等のエリスリトールエステル類が挙げられる。
【0036】
離型剤の配合量としては、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.05~0.5重量部の範囲が好ましく、0.1~0.4重量部の範囲がより好ましく、0.12~0.3重量部の範囲がさらに好ましい。
【0037】
<ブルーイング剤>
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中には、芳香族ポリカーボネート樹脂や紫外線吸収剤に基づくレンズの黄色味を打ち消すためにブルーイング剤を配合することができる。ブルーイング剤としては芳香族ポリカーボネート樹脂に使用されるものであれば、特に支障なく使用することができる。一般的にはアンスラキノン系染料が入手容易であり好ましい。
【0038】
具体的なブルーイング剤としては、例えば一般名Solvent Violet13[CA.No(カラーインデックスNo)60725;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレットB」、三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーG」、住友化学工業(株)製「スミプラストバイオレットB」]、一般名Solvent Violet31[CA.No 68210;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンバイオレットD」]、一般名Solvent Violet33[CA.No 60725;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーJ」]、一般名Solvent Blue94[CA.No 61500;商標名 三菱化学(株)製「ダイアレジンブルーN」]、一般名SolventViolet36[CA.No 68210;商標名 バイエル社製「マクロレックスバイオレット3R」]、一般名Solvent Blue97[商標名バイエル社製「マクロレックスブルーRR」]および一般名SolventBlue45[CA.No 61110;商標名 サンド社製「テトラゾールブルーRLS」]が代表例として挙げられる。これらブルーイング剤は通常0.3~5.0ppmの濃度で芳香族ポリカーボネート樹脂組成物中に配合される。あまりに多量のブルーイング剤を配合するとブルーイング剤の吸収が強くなり、視感透過率が低下する。
【0039】
ブルーイング剤の配合量は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物100重量部に対して、0.00001~0.0001重量部が好ましく、0.000015~0.00005重量部がより好ましい。上記範囲内では、黄変の抑制に効果があり、成形品の外観が良好となるため好ましい。
【0040】
<成形品>
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から形成される成形品を製造するには、任意の方法が採用される。例えば該ポリカーボネート樹脂組成物を押出機、バンバリーミキサーまたはロール等で混練した後、押出成形、ブロー成形、射出成形、真空成形等従来公知の方法で成形して、成形品を得ることができる。
【0041】
成形品の具体的な用途しては、例えば、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、その他の各種分野において幅広く有用であり、特に導光板、プリズムシート、照明機器などの電気・電子部品として有用である。
【実施例0042】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
以下の実施例と比較例で使用した原料は次の通りである。
【0043】
(直鎖状芳香族ポリカーボネート樹脂(A))
帝人(株)製パンライトC-1400WP(粘度平均分子量37,500)
帝人(株)製パンライトK-1300WP(粘度平均分子量30,000)
帝人(株)製パンライトL-1250WQ(粘度平均分子量25,100)
帝人(株)製パンライトL-1250WX(粘度平均分子量19,700)
帝人(株)製パンライトCM-1000 (粘度平均分子量15,200)
(分岐状芳香族ポリカーボネート樹脂(B))
帝人(株)製パンライトL-1250WB(粘度平均分子量25,000;分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであり、分岐剤含有率が1.0モル%である)
帝人(株)製パンライトL-1225WB(粘度平均分子量20,000;分岐剤が1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンであり、分岐剤含有率が1.0モル%である)
【0044】
(1)シャルピー衝撃強度
得られたペレットから、(株)日本製鋼所製J180ADS射出成形機を用い、シリンダー温度280~350℃、金型温度70~90℃で、幅10mm、長さ80mm、厚み4mmの曲げ試験片を成形し、ISO179に準拠して測定した。シャルピー衝撃強度は大きいほど好ましい。
【0045】
(2)粘度平均分子量(Mv)の測定は下記の方法により行った。
得られたペレット0.7gを20℃で塩化メチレン100mlに溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出した。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0046】
(3)メルトボリュームレート(MVR)
得られたペレットを120℃で4時間、熱風循環式乾燥機にて乾燥し、セミオートメルトインデックサ[東洋精機製作所社製3A]を用いてISO1133に従い、メルトボリュームフローレート(MVR)を測定した。
【0047】
[実施例1~18及び比較例1~19]
表1~表10に示す割合で各原料パウダーをブレンドした後、スクリュー径30mmの(株)日本製鋼所製ベント付き二軸押出機TEX30αによりシリンダー温度280~320℃で溶融混錬し、ストランドカットによりペレット化した。該ペレットを120℃で5時間乾燥した後、前記の条件で評価用試験片を成形し、前記の評価を行い評価結果について表1~表10に示した。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、ドローダウン性に優れ、且つシャルピー衝撃強度に優れているため、例えば、住宅設備用途、建材用途、生活資材用途、インフラ設備用途、自動車用途、OA・EE用途、その他の各種分野において幅広く有用である。