(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157435
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231019BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20231019BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20231019BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 J
H01M8/0438
H01M8/04746
H01M8/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067358
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和憲
(72)【発明者】
【氏名】山形 匡史
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA58
5H127BA59
5H127BA60
5H127DB02
5H127DC03
5H127DC08
(57)【要約】
【課題】必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】本開示の一態様は、FCスタック11と、FCスタック11に燃料を供給する燃料供給通路12と、燃料供給通路12に設けられるエゼクタ13と、FCスタック11から排出されるオフガスをエゼクタ13に循環させる循環通路16と、を有し、エゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給する燃料電池システム1において、エゼクタ13を介さずに燃料をFCスタック11に供給するバイパス通路21と、バイパス通路21における燃料の流量を調整するバイパス流量調整弁22と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給通路と、
前記燃料供給通路に設けられるエゼクタと、
前記燃料電池から排出される未使用の前記燃料を前記エゼクタに循環させる循環通路と、
を有し、
前記エゼクタを介して前記燃料供給通路から前記燃料を前記燃料電池に供給する
燃料電池システムにおいて、
前記エゼクタを介さずに前記燃料を前記燃料電池に供給するバイパス通路と、
前記バイパス通路における前記燃料の流量を調整するバイパス流量調整部と、
を有すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1の燃料電池システムにおいて、
前記エゼクタは、
前記燃料を噴射するノズルとして、
第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも多くの流量の前記燃料を噴射可能な第2ノズルと、を
備え、
要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第1ノズルの使用時の最大流量である第1の流量またはその付近の流量となるまでの第1供給領域では、前記第1ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給し、
要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第1供給領域よりも多くなったときに、前記第2ノズルの使用時に前記エゼクタの循環効率が最大値となるときの流量である第2の流量またはその付近の流量となるまでの第2供給領域では、前記第1ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給するとともに、前記バイパス通路から前記燃料を前記燃料電池に供給し、
要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第2供給領域よりも多くなった第3供給領域では、前記第2ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
燃料電池と、
前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給通路と、
前記燃料供給通路に設けられるエゼクタと、
前記燃料電池から排出される未使用の前記燃料を前記エゼクタに循環させる循環通路と、
を有し、
前記エゼクタを介して前記燃料供給通路から前記燃料を前記燃料電池に供給する
燃料電池システムにおいて、
前記エゼクタは、
前記燃料を噴射するノズルとして、
第1ノズルと、
前記第1ノズルよりも多くの流量の前記燃料を噴射可能な第2ノズルと、を
備え、
使用するノズルを前記第1ノズルから前記第2ノズルに切り替えるときに、所定時間、前記第1ノズルと前記第2ノズルの両方のノズルを使用すること、
を特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池から排出される未使用の燃料であるオフガスを、燃料供給通路内に還流させるエゼクタを有する燃料電池システムが開示されている。そして、エゼクタには、噴射可能な燃料の流量が異なる複数のノズルとして、径の小さい小ノズルと、径の大きい大ノズルとが、同軸に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される燃料電池システムのエゼクタにおいて、使用するノズルを小ノズルから大ノズルに切り替えるときに、エゼクタに供給される燃料の流速が低下して、燃料電池から排出されるオフガスを吸引するための負圧が大きく低下するおそれがある。そうすると、エゼクタに循環されるオフガスの流量が低下して、エゼクタを介して燃料電池へ供給される燃料の流量が少なくなって、必要な流量の燃料を燃料電池に供給できないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、安定して必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、燃料電池と、前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給通路と、前記燃料供給通路に設けられるエゼクタと、前記燃料電池から排出される未使用の前記燃料を前記エゼクタに循環させる循環通路と、を有し、前記エゼクタを介して前記燃料供給通路から前記燃料を前記燃料電池に供給する燃料電池システムにおいて、前記エゼクタを介さずに前記燃料を前記燃料電池に供給するバイパス通路と、前記バイパス通路における前記燃料の流量を調整するバイパス流量調整部と、を有すること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、エゼクタを介して燃料供給通路から燃料電池へ供給される燃料の流量が必要な流量に対して不足する場合に、エゼクタを介さずにバイパス通路から燃料電池へ燃料を供給することにより、安定して必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる。そのため、燃料電池の制御性を向上させることができる。
【0008】
上記の態様においては、前記エゼクタは、前記燃料を噴射するノズルとして、第1ノズルと、前記第1ノズルよりも多くの流量の前記燃料を噴射可能な第2ノズルと、を備え、要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第1ノズルの使用時の最大流量である第1の流量またはその付近の流量となるまでの第1供給領域では、前記第1ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給し、要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第1供給領域よりも多くなったときに、前記第2ノズルの使用時に前記エゼクタの循環効率が最大値となるときの流量である第2の流量またはその付近の流量となるまでの第2供給領域では、前記第1ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給するとともに、前記バイパス通路から前記燃料を前記燃料電池に供給し、要求される前記燃料電池への前記燃料の供給流量が、前記第2供給領域よりも多くなった第3供給領域では、前記第2ノズルを使用して前記燃料を前記燃料電池に供給すること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、第1ノズルを使用して燃料を燃料電池に供給している状況下で、要求される燃料電池への燃料の供給流量が、第1供給領域よりも多くなったときに、第2の流量またはその付近の流量となるまでの第2供給領域では、第1ノズルを使用して燃料を燃料電池に供給することを継続したまま、バイパス通路から燃料を燃料電池に供給する。そして、このようにして、第2ノズルよりもエゼクタの循環効率が高くなる第1ノズルを継続して使用する。
【0010】
これにより、要求される燃料電池への燃料の供給流量が第1ノズル領域よりも多くなったときにすぐに第1ノズルから第2ノズルに切り替えて第2ノズルを使用して燃料を燃料電池に供給する場合と比較して、エゼクタの循環効率を向上させることができる。そのため、エゼクタへの未使用の燃料の循環流量を確保しながらエゼクタを介して燃料供給通路から燃料を燃料電池に供給するとともに、バイパス通路から燃料を燃料電池に供給するので、より確実に、安定して必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる。
【0011】
また、第1供給領域では第1ノズルを使用し、第2供給領域では第1ノズルとバイパス通路を使用し、第3供給領域では第2ノズルを使用することにより、要求される燃料電池への燃料の供給流量の全ての領域について、安定して必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる。
【0012】
上記課題を解決するためになされた本開示の他の形態は、燃料電池と、前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給通路と、前記燃料供給通路に設けられるエゼクタと、前記燃料電池から排出される未使用の前記燃料を前記エゼクタに循環させる循環通路と、を有し、前記エゼクタを介して前記燃料供給通路から前記燃料を前記燃料電池に供給する燃料電池システムにおいて、前記エゼクタは、前記燃料を噴射するノズルとして、第1ノズルと、前記第1ノズルよりも多くの流量の前記燃料を噴射可能な第2ノズルと、を備え、使用するノズルを前記第1ノズルから前記第2ノズルに切り替えるときに、所定時間、前記第1ノズルと前記第2ノズルの両方のノズルを使用すること、を特徴とする。
【0013】
この態様によれば、エゼクタにて使用するノズルを第1ノズルから第2ノズルに切り替えたときの初期の燃料の流量不足を第1ノズルで補うことができるので、エゼクタの循環効率が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の燃料電池システムによれば、必要な流量の燃料を燃料電池に供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1,2実施形態の燃料電池システムの構成図である。
【
図2】第1,2実施形態のエゼクタの構成図である。
【
図3】第1実施形態における要求供給流量とエゼクタの循環効率との関係図である。
【
図4】第1実施形態で行われる制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図5】第1実施形態で行われる制御の一例を示すタイムチャート図である。
【
図6】第2実施形態で行われる制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図7】オーバラップ制御の内容を示すフローチャート図である。
【
図8】第2実施形態で行われる制御の一例を示すタイムチャート図である。
【
図9】従来技術における要求供給流量とエゼクタの循環効率との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の燃料電池システムの実施形態について説明する。
【0017】
〔第1実施形態〕
まず、第1実施形態について説明する。
【0018】
<燃料電池システムの概要>
本実施形態の燃料電池システム1は、
図1に示すように、FCスタック11と、燃料供給通路12と、エゼクタ13と、小流量調整弁14と、大流量調整弁15と、循環通路16と、減圧弁17と、パージバルブ18と、制御部19などを有する。
【0019】
FCスタック11は、水素を燃料として発電を行う燃料電池である。燃料供給通路12は、FCスタック11に燃料(例えば、水素(H2))を供給する通路である。
【0020】
エゼクタ13は、燃料供給通路12に設けられている。このエゼクタ13は、
図2に示すように、ディフューザ31と、燃料を噴射するノズルとして、小ノズル32と、大ノズル33を備えている。小ノズル32は、大ノズル33よりも径が小さく、大ノズル33よりも少ない流量の燃料を噴射可能である。大ノズル33は、小ノズル32よりも径が大きく、小ノズル32よりも多くの流量の燃料を噴射可能である。そして、小ノズル32が大ノズル33の内側に配置されるようにして、小ノズル32と大ノズル33は同軸に(すなわち、各々の中心軸が一致するようにして)配置されている。なお、小ノズル32は本開示の「第1ノズル」の一例であり、大ノズル33は本開示の「第2ノズル」の一例である。
【0021】
このような構成を有するエゼクタ13は、小ノズル32および/または大ノズル33により燃料を噴射することにより、ディフューザ31内に燃料を供給するとともに、ディフューザ31内に発生する負圧により循環通路16からオフガス(すなわち、未使用の燃料)を吸引する。そして、ディフューザ31内に供給された燃料と循環通路16から吸引したオフガスとを、エゼクタ13から燃料供給通路12を介してFCスタック11に供給する。
【0022】
図1の説明に戻って、小流量調整弁14は、小ノズル32に供給する燃料の流量を調整する。大流量調整弁15は、大ノズル33に供給する燃料の流量を調整する。
【0023】
循環通路16は、FCスタック11から排出されるオフガスをエゼクタ13に循環させる通路である。
【0024】
減圧弁17は、燃料タンク(不図示)から供給される高圧の燃料を減圧させる弁である。パージバルブ18は、循環通路16に接続しており、FCスタック11で消費できない余剰の燃料(すなわち、余剰のオフガス)を外部へ放出させるときに開弁させる弁である。
【0025】
制御部19は、例えば中央処理装置(CPU)や各種メモリ等を備え、燃料電池システム1の全体を制御するECUである。具体的には、制御部19は、小流量調整弁14や大流量調整弁15や減圧弁17やパージバルブ18やバイパス流量調整弁22などを制御する。
【0026】
このような構成を有する燃料電池システム1は、燃料タンクから供給される高圧の燃料を減圧弁17にて減圧した後、小流量調整弁14や大流量調整弁15により燃料の流量を調整して燃料をエゼクタ13に供給し、エゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に燃料を供給する。なお、
図1に示すバイパス通路21とバイパス流量調整弁22については、後述する。
【0027】
<バイパス通路について>
従来、
図9に示すように、要求されるFCスタック11への燃料の供給流量である要求供給流量Qが、0から徐々に増加して、小ノズル32の使用時の最大流量である第1の流量th1になるまでは、小ノズル領域として小ノズル32を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に燃料を供給していた。そして、その後、要求供給流量Qが第1の流量th1よりも多くなると、大ノズル領域として大ノズル33を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に燃料を供給していた。このようにして、従来は、要求供給流量Qが第1の流量th1よりも多くなると、エゼクタ13で使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替えていた。
【0028】
しかしながら、エゼクタ13の循環効率は、
図9に示すように、小ノズル32を使用するときよりも、大ノズル33を使用するときのほうが大きく低下する。そのため、要求供給流量Qが第1の流量th1よりも多くなったときに、エゼクタ13で使用するノズルをすぐに小ノズル32から大ノズル33に切り替えると、エゼクタ13の循環効率が大きく低下してしまう。したがって、エゼクタ13へのオフガスの循環流量が大きく低下するので、エゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に供給される燃料の流量が少なくなって、必要な流量の燃料をFCスタック11に供給できないおそれがある。
【0029】
ここで、エゼクタ13の循環効率とは、FCスタック11への燃料の供給流量に対する、エゼクタ13へのオフガスの循環流量の割合であり、以下の数式で示される。
[数1]
(エゼクタ13の循環効率)=(エゼクタ13へのオフガスの循環流量)/(FCスタック11への燃料の供給流量)
【0030】
なお、例えば、小ノズル32と大ノズル33を同時に使用すると、大ノズル33による流れが小ノズル32の負圧を打ち消してしまうので、
図9に点線で示すように、エゼクタ13の循環効率は低下してしまう。
【0031】
これに対し、本実施形態の燃料電池システム1は、
図1に示すように、バイパス通路21とバイパス流量調整弁22を有する。ここで、バイパス通路21は、減圧弁17とFCスタック11との間でエゼクタ13や小流量調整弁14や大流量調整弁15を迂回するようにして、燃料供給通路12とは別に設けられており、エゼクタ13を介さずにFCスタック11に燃料を供給する通路である。また、バイパス流量調整弁22は、バイパス通路21における燃料の流量を調整する弁である。なお、バイパス流量調整弁22は、本開示の「バイパス流量調整部」の一例である。
【0032】
そして、本実施形態では、
図3に示すように、要求供給流量Qが第1の流量th1よりも多くなったときに、小ノズル32の使用を継続するとともに、バイパス通路21も使用する。すなわち、要求供給流量Qが、0から増加して、小ノズル領域よりも多くなったときに、第2の流量th2となるまでの中間領域である小ノズル+バイパス通路領域では、制御部19は、小ノズル32を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給することを継続するとともに、バイパス通路21から燃料をFCスタック11に供給するように制御する。なお、小ノズル領域は本開示の「第1供給領域」の一例であり、小ノズル+バイパス通路領域は本開示の「第2供給領域」の一例である。
【0033】
ここで、第2の流量th2は、大ノズル33を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給するときに、エゼクタ13の循環効率が最大値η2となるときのFCスタック11への燃料の供給流量である。また、
図3において、値η1は、要求供給流量Qが第1の流量th1であるときのエゼクタ13の循環効率の値である。
【0034】
このようにして、要求供給流量Qが小ノズル領域よりも多くなったときに小ノズル+バイパス通路領域にて小ノズル32とバイパス通路21を使用することにより、要求供給流量Qが小ノズル領域よりも多くなったときにすぐにエゼクタ13で使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替える従来技術と比較して、エゼクタ13の循環効率を向上させることができる。
【0035】
すなわち、本実施形態では、要求供給流量Qが小ノズル領域よりも多くなったときに、エゼクタ13で使用するノズルを小ノズル32のまま継続して燃料をFCスタック11に供給するとともに、FCスタック11に供給する燃料をバイパス通路21からも補う。そのため、エゼクタ13の循環効率が高い小ノズル32の使用が継続されるので、エゼクタ13の循環効率の低下が抑制される。したがって、エゼクタ13へのオフガスの循環流量が低下することが抑制されるので、エゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に供給される燃料の流量が維持されるとともに、FCスタック11に供給する燃料をバイパス通路21からも補うので、安定して必要な流量の燃料をFCスタック11に供給できる。
【0036】
なお、小ノズル+バイパス通路領域におけるエゼクタ13の循環効率ηXは、以下の数式のように表すことができる。なお、thXは、バイパス通路21における燃料の供給流量である。
[数2]
ηX=η1×th1/(th1+thX)
【0037】
本実施形態では、具体的には、制御部19は、
図4に示す内容の制御を行う。
図4に示すように、制御部19は、まず、要求供給流量Qが小ノズル領域であるか否かを判断する(ステップS1)。
【0038】
そして、要求供給流量Qが小ノズル領域である場合(ステップS1:YES)には、制御部19は、小ノズル32のみを使用する(ステップS2)。このようにして、要求供給流量Qが、小ノズル32の使用時の最大流量である第1の流量th1となるまでの小ノズル領域では、制御部19は、小流量調整弁14により小ノズル32へ供給する燃料の流量を調整しながら小ノズル32を使用して、エゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給する。
【0039】
一方、要求供給流量Qが小ノズル領域でない場合(ステップS1:NO)には、制御部19は、要求供給流量Qが大ノズル領域であるか否かを判断する(ステップS3)。なお、大ノズル領域は、本開示の「第3供給領域」の一例である。
【0040】
そして、要求供給流量Qが大ノズル領域である場合(ステップS3:YES)には、制御部19は、大ノズル33のみを使用する(ステップS4)。このようにして、要求供給流量Qが、小ノズル+バイパス通路領域よりも多くなった大ノズル領域では、制御部19は、大流量調整弁15により大ノズル33へ供給する燃料の流量を調整しながら大ノズル33を使用して、エゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給する。
【0041】
一方、要求供給流量Qが大ノズル領域でない場合(ステップS3:NO)、すなわち、第1の流量th1よりも多くかつ第2の流量th2未満である小ノズル+バイパス通路領域である場合には、制御部19は、小ノズル32とバイパス通路21を使用する(ステップS5)。このようにして、要求供給流量Qが小ノズル+バイパス通路領域では、制御部19は、小流量調整弁14により小ノズル32へ供給する燃料の流量を調整しながら小ノズル32を使用して、エゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給するとともに、バイパス流量調整弁22によりバイパス通路21における燃料の流量を調整しながらバイパス通路21を使用して、エゼクタ13を介さずにバイパス通路21から燃料をFCスタック11に供給する。
【0042】
このような
図4に示す制御を行うことにより、例えば、
図5のタイムチャートに示されるような制御の一例が行われる。
図5に示すように、要求供給流量Qが0(時間T0)から増加して第1の流量th1に達する(時間T1)までは、小ノズル領域として、小ノズル32のみが使用される。
【0043】
その後、要求供給流量Qが第1の流量th1から増加して第2の流量th2に達する(時間T2)までは、小ノズル+バイパス通路領域として、小ノズル32とバイパス通路21が使用される。
【0044】
さらに、その後、要求供給流量Qが第2の流量th2から増加すると(時間T2以降)、大ノズル領域として、大ノズル33が使用される。
【0045】
<本実施形態の作用効果>
以上のように、本実施形態の燃料電池システム1は、エゼクタ13を介さずにFCスタック11に燃料を供給するバイパス通路21と、バイパス通路21における燃料の流量を調整するバイパス流量調整弁22と、を有する。
【0046】
これにより、エゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11へ供給される燃料の流量が必要な流量に対して不足する場合に、エゼクタ13を介さずにバイパス通路21からFCスタック11へ燃料を供給することにより、安定して必要な流量の燃料をFCスタック11に供給できる。そのため、FCスタック11の制御性を向上させることができる。
【0047】
そして、制御部19は、要求供給流量Qが、第1の流量th1となるまでの小ノズル領域では、小ノズル32を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給する。
【0048】
また、制御部19は、要求供給流量Qが、小ノズル領域よりも多くなったときに、第2の流量th2となるまでの中間領域である小ノズル+バイパス通路領域では、小ノズル32を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給するとともに、バイパス通路21から燃料をFCスタック11に供給する。
【0049】
さらに、制御部19は、要求供給流量Qが、小ノズル+バイパス通路領域よりも多くなった大ノズル領域では、大ノズル33を使用してエゼクタ13を介して燃料供給通路12からFCスタック11に燃料を供給する。
【0050】
このようにして、小ノズル32を使用して燃料をFCスタック11に供給している状況下で、要求されるFCスタック11への燃料の供給流量が、小ノズル領域よりも多くなったときに、第2の流量th2となるまでの小ノズル+バイパス通路領域では、小ノズル32を使用して燃料をFCスタック11に供給することを継続したまま、バイパス通路21から燃料をFCスタック11に供給する。そして、このようにして、大ノズル33よりもエゼクタ13の循環効率が高くなる小ノズル32を継続して使用する。
【0051】
これにより、要求供給流量Qが小ノズル領域よりも多くなったときにすぐに小ノズル32から大ノズル33に切り替えて大ノズル33を使用して燃料をFCスタック11に供給する場合と比較して、エゼクタ13の循環効率を向上させることができる。そのため、エゼクタ13へのオフガスの循環流量を確保しながらエゼクタ13を介して燃料供給通路12から燃料をFCスタック11に供給するとともに、バイパス通路21から燃料をFCスタック11に供給するので、より確実に、安定して必要な流量の燃料をFCスタック11に供給できる。
【0052】
また、小ノズル領域では小ノズル32を使用し、小ノズル+バイパス通路領域では小ノズル32とバイパス通路21を使用し、大ノズル領域では大ノズル33を使用することにより、要求されるFCスタック11への燃料の供給流量の全ての領域について、安定して必要な流量の燃料をFCスタック11に供給できる。
【0053】
また、小ノズル領域は、第1の流量th1付近となるまでの領域であるとしてもよい。また、小ノズル+バイパス通路領域は、第2の流量th2付近となるまでの領域であるとしてもよい。
【0054】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点を説明する。
【0055】
本実施形態では、エゼクタ13にて使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替えるときに、所定時間Δt、小ノズル32と大ノズル33の両方のノズルを使用する。ここで、所定時間Δtは、小ノズル32の噴射実行(使用時)から噴射停止(不使用時)までの応答性と、大ノズル33の噴射停止(不使用時)から噴射実行(使用時)までの応答性とを考慮して求めた時間とする。
【0056】
これにより、エゼクタ13にて使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替えたときの初期の燃料の流量不足を小ノズル32で補うことができるので、エゼクタ13の循環効率が向上する。
【0057】
具体的には、制御部19は、
図6に示す内容の制御を行う。
図6に示すように、まず、制御部19は、要求供給流量Qが大ノズル領域であるか否かを判断する(ステップS101)。
【0058】
そして、要求供給流量Qが大ノズル領域である場合(ステップS101:YES)には、制御部19は、要求供給流量Qの前回値が小ノズル領域であるか否かを判断する(ステップS102)。なお、「要求供給流量Qの前回値」とは、前回
図6に示す制御処理を行ったときの要求供給流量Qの値である。
【0059】
そして、要求供給流量Qの前回値が小ノズル領域である場合(ステップS102:YES)には、制御部19は、オーバラップ制御を実行する(ステップS103)。ここで、「オーバラップ制御」とは、小ノズル32と大ノズル33の両方のノズルを使用する制御である。
【0060】
一方、要求供給流量Qの前回値が小ノズル領域でない場合(ステップS102:NO)には、制御部19は、大ノズル通常制御を実行する(ステップS104)。ここで、「大ノズル通常制御」とは、大ノズル33のみ使用する制御である。
【0061】
また、ステップS101において要求供給流量Qが大ノズル領域でない場合(ステップS101:NO)には、制御部19は、小ノズル通常制御を実行する(ステップS104)。ここで、「小ノズル通常制御」とは、小ノズル32のみ使用する制御である。
【0062】
また、オーバラップ制御は、
図7に示すようにして行われる。
図7に示すように、制御部19は、オーバラップ制御を実行中か否かを判断する(ステップS201)。
【0063】
そして、オーバラップ制御を実行中である場合(ステップS201:YES)には、制御部19は、大ノズル応答遅れ(大ノズル33の噴射停止(不使用時)から噴射実行(使用時)までの応答遅れ)を計算し(ステップS202)、小ノズル応答遅れ(小ノズル32の噴射実行(使用時)から噴射停止(不使用時)までの応答遅れ)を計算し(ステップS203)、大ノズル応答遅れと小ノズル応答遅れとの差である応答遅れ時間差に相当する所定時間Δtを計算する(ステップS204)。次に、制御部19は、小流量調整弁14をオフにするタイミングを所定時間Δtだけ遅延させる(ステップS205)。これにより、エゼクタ13にて使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替えるときに、所定時間Δt、小ノズル32と大ノズル33の両方のノズルを使用する。
【0064】
このような
図6と
図7に示す制御を行うことにより、例えば、
図8のタイムチャートに示されるような制御の一例が行われる。
図8に示すように、要求供給流量Q(FC要求電流)が閾値に達して、エゼクタ13にて使用するノズルを小ノズル32から大ノズル33に切り替えるとき(時間T11)において、その後、図中破線で示すように小ノズル32の使用を継続し、所定時間Δt、小ノズル32と大ノズル33の両方のノズルが使用される。これにより、従来は流量不足であった時間T11からT12の間において、燃料の供給流量を確保できる。なお、
図8において、「小ノズル中間圧」とは小流量調整弁14と小ノズル32との間の位置での圧力であり、「大ノズル中間圧」とは大流量調整弁15と大ノズル33との間の位置での圧力であり、「出口圧」とはエゼクタ13の出口の圧力である。
【0065】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0066】
1 燃料電池システム
11 FCスタック
12 燃料供給通路
13 エゼクタ
16 循環通路
19 制御部
21 バイパス通路
22 バイパス流量調整弁
32 小ノズル
33 大ノズル
Q 要求供給流量
th1 第1の流量
th2 第2の流量
Δt 所定時間