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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157445
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】塗料組成物及び複層塗膜形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/14 20060101AFI20231019BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20231019BHJP
   C09D 7/48 20180101ALI20231019BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D7/65
C09D7/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067374
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001409
【氏名又は名称】関西ペイント株式会社
(72)【発明者】
【氏名】管本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】平本 勇也
(72)【発明者】
【氏名】永井 彰典
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG141
4J038DL032
4J038GA03
4J038GA15
4J038KA03
4J038KA12
4J038NA05
(57)【要約】
【課題】汚染除去性、及び屋外曝露後の汚染除去性に優れた塗膜を形成できる、塗料組成物を提供すること。
【解決手段】水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)、並びに、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体、を含有する塗料組成物。上記水酸基含有樹脂(A)が、水酸基及びアルコキシシリル基を有する樹脂(A’)を含む、塗料組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有樹脂(A)、
架橋剤(B)、
反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)、並びに、
水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体、を含有する塗料組成物。
【請求項2】
前記水酸基含有樹脂(A)が、水酸基及びアルコキシシリル基を有する樹脂(A’)を含む、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記水酸基含有樹脂(A)が、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含む、請求項1又は2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記紫外線吸収剤(d31)及び/又は前記ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が前記水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した水酸基含有アクリル樹脂(d2)がシリカ粒子(D)に結合している、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記シリカ粒子(D)分散体が、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との反応物を含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー、並びに紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーを含む、請求項5に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)中の、前記紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーの合計割合が、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して、0.5~40質量%の範囲内である、請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、さらに、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む、請求項6又は7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
(効果:汚染除去)
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、さらに、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項10】
前記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との質量比が、(d1)/(d2-1)の比で20/80~90/10の範囲内である、請求項6~9のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項11】
前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が、前記水酸基含有アクリル樹脂(d2)とは独立してシリカ粒子(D)に結合している、請求項1~10のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項12】
前記シリカ粒子(D)分散体が、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)との反応物を含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含まない、請求項11に記載の塗料組成物。
【請求項13】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、さらに、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む、請求項12に記載の塗料組成物。
【請求項14】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、さらに、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む、請求項12又は13に記載の塗料組成物。
【請求項15】
前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)との質量比が、(d1’)/(d2-1’)の比で20/80~90/10の範囲内である、請求項12~14のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項16】
被塗物に順次、少なくとも1層の着色塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより、複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として請求項1~15のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗装することを含む、複層塗膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物及び複層塗膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車車体、トラック、オートバイ、バス、自動車部品、鉄道車両、産業機器、建物、構造物等の被塗物に塗装される塗料には、塗膜外観に優れることが求められている。さらに近年では、塗膜に対する油性インキ等による落書きを容易に除去できるといった汚染除去性が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、有機微粒子が有機溶媒に分散された艶消し剤(A)と、主鎖または側鎖にオルガノシロキサン鎖を有する共重合体(B)と、フッ素樹脂(C)を含有する塗料用組成物が、艶を抑えた塗膜外観が得られ、また、ラッカーや油性インキなどによる汚染除去性に優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-127424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術では、汚染除去性に優れるものの、屋外曝露後の汚染除去性が十分でない場合があった。
【0006】
本発明の目的は、汚染除去性、及び屋外曝露後の汚染除去性に優れた塗膜を形成できる塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意検討を重ねた結果、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)、並びに、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体、を含有する塗料組成物によれば、上記目的を達成できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は下記<1>~<16>に関するものである。
<1>水酸基含有樹脂(A)、
架橋剤(B)、
反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)、並びに、
水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体、を含有する塗料組成物。
<2>前記水酸基含有樹脂(A)が、水酸基及びアルコキシシリル基を有する樹脂(A’)を含む、<1>に記載の塗料組成物。
<3>前記水酸基含有樹脂(A)が、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含む、<1>又は<2>に記載の塗料組成物。
<4>前記架橋剤(B)が、ポリイソシアネート化合物(B1)を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<5>前記紫外線吸収剤(d31)及び/又は前記ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が前記水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した水酸基含有アクリル樹脂(d2)がシリカ粒子(D)に結合している、<1>~<4>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<6>前記シリカ粒子(D)分散体が、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との反応物を含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー、並びに紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーを含む、<5>に記載の塗料組成物。
<7>前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)中の、前記紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーの合計割合が、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して、0.5~40質量%の範囲内である、<6>に記載の塗料組成物。
<8>前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、さらに、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む、<6>又は<7>に記載の塗料組成物。
<9>前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、さらに、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む、<6>~<8>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<10>前記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との質量比が、(d1)/(d2-1)の比で20/80~90/10の範囲内である、<6>~<9>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<11>前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が、前記水酸基含有アクリル樹脂(d2)とは独立してシリカ粒子(D)に結合している、<1>~<10>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<12>前記シリカ粒子(D)分散体が、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)との反応物を含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含み、かつ前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含まない、<11>に記載の塗料組成物。
<13>前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、さらに、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む、<12>に記載の塗料組成物。
<14>前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が、さらに、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む、<12>又は<13>に記載の塗料組成物。
<15>前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)との質量比が、(d1’)/(d2-1’)の比で20/80~90/10の範囲内である、<12>~<14>のいずれか1つに記載の塗料組成物。
<16>被塗物に順次、少なくとも1層の着色塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより、複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として<1>~<15>のいずれか1つに記載の塗料組成物を塗装することを含む、複層塗膜形成方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗料組成物によれば、汚染除去性、及び屋外曝露後の汚染除去性に優れた塗膜を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
【0011】
本発明の塗料組成物(以下、「本塗料」と略称する場合がある)は、水酸基含有樹脂(A);架橋剤(B);反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C);並びに、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体、を含有する塗料組成物である。
【0012】
水酸基含有樹脂(A)
水酸基含有樹脂(A)は、1分子中に少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。水酸基含有樹脂(A)としては、公知の樹脂を広く使用でき、例えば、水酸基含有アクリル樹脂、水酸基含有ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリウレタン樹脂、水酸基含有アクリル変性ポリエステル樹脂、水酸基含有ポリエーテル樹脂、水酸基含有ポリカーボネート樹脂、水酸基含有エポキシ樹脂、水酸基含有アルキド樹脂等の樹脂が挙げられる。
【0013】
なかでも、水酸基含有樹脂(A)は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、水酸基含有アクリル樹脂(A1)、水酸基含有ポリエステル樹脂及び水酸基含有ポリウレタン樹脂から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含むことがより好ましい。
【0014】
また、水酸基含有樹脂(A)としては、水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂、水酸基及びアルコキシシリル基を有するポリエステル樹脂等の、水酸基及びアルコキシシリル基を有する樹脂(A’)を用いてもよい。これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0015】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、例えば、水酸基含有重合性不飽和モノマー及びその他の重合性不飽和モノマー(水酸基含有重合性不飽和モノマー以外の重合性不飽和モノマー)を共重合することにより得ることができる。
【0016】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、「カージュラE10P」(商品名、Hexion社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0017】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能な他の重合性不飽和モノマーとしては、例えば、下記(1)~(8)に示すモノマー等を使用することができる。これらの重合性不飽和モノマーは単独でもしくは2種以上で組み合わせて使用することができる。
【0018】
(1)酸基含有重合性不飽和モノマー
酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に酸基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個以上有する化合物である。該モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸及び無水マレイン酸などのカルボキシル基含有モノマー;ビニルスルホン酸、2-スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基含有モノマー;2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルアシッドホスフェート、2-メタクロイルオキシエチルフェニルリン酸などの酸性リン酸エステル系モノマーなどを挙げることができる。これらは1種で又は2種以上を使用することができる。酸基含有重合性不飽和モノマーを使用する場合、水酸基含有アクリル樹脂(A1)の酸価が、0.5~15mgKOH/gの範囲内となる量とすることが好ましく、1~10mgKOH/gの範囲内となる量とすることが好ましい。
【0019】
(2)アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1~20の1価アルコールとのエステル化物
具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート,tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、「イソステアリルアクリレート」(大阪有機化学工業社製、商品名)、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
(3)アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にアルコキシシリル基及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。該アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシエチルトリメトキシシラン、メタクリロキシエチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン等を挙げることができる。
【0020】
上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、ビニルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが好ましく、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0021】
アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては市販品を使用することができる。該市販品としては、例えば、「KBM-1003」、「KBE-1003」、「KBM-502、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」、「KBM-5103」、「KBM-5803」(以上、信越化学工業株式会社製)、「Y-9936、「A-174」(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、「OFS-6030」、「Z-6033」(以上、東レ・ダウコーニング株式会社製)等を挙げることができる。
【0022】
(4)芳香族系ビニルモノマー
具体的には、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等を挙げることができる。
【0023】
芳香族系ビニルモノマーを構成成分とすることにより、得られる樹脂のガラス転移温度が上昇し、また、高屈折率で疎水性の塗膜を得ることができることから、塗膜の光沢向上による仕上り外観の向上効果を得ることができる。
【0024】
芳香族系ビニルモノマーを構成成分とする場合、その配合割合は、モノマー成分の総量に対して3~50質量%の範囲内であることが好ましく、5~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0025】
(5)グリシジル基含有重合性不飽和モノマー
グリシジル基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にグリシジル基と重合性不飽和結合とをそれぞれ1個以上有する化合物であり、具体的には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等を挙げることができる。
【0026】
(6)重合性不飽和結合含有窒素原子含有化合物
例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等を挙げることができる。
【0027】
(7)ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマー
ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーは、1分子中にポリシロキサン鎖及び重合性不飽和結合をそれぞれ1個以上有する化合物である。具体的には、シロキサン基含有モノ(メタ)アクリレートモノマー等を挙げることができる。該ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーとしては市販品を使用することができる。該市販品としては、例えば、「サイラプレーンFM-0721」、「サイラプレーンFM-0711」、「サイラプレーンFM-0725」(以上、JNC社製)、「X-22-174ASX」、「X-22-174BX」、「KF-2012」、「X-22-2426」、「X-22-2404」、「X-22-2475」(以上、信越化学工業社製)等を挙げることができる。
【0028】
(8)その他のビニル化合物
例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、塩化ビニル、バーサティック酸ビニルエステル等を挙げることができる。バーサティック酸ビニルエステルとしては、市販品である「ベオバ9」、「ベオバ10」(以上、商品名、三菱ケミカル(株)製)等を挙げることができる。
【0029】
その他の重合性不飽和モノマーとしては、前記(1)~(8)に示すモノマーを1種で、又は2種以上を用いることができる。
【0030】
本発明において、重合性不飽和モノマーとは、1個以上(例えば、1~4個)の重合性不飽和基を有するモノマーを示す。重合性不飽和基とは、ラジカル重合しうる不飽和基を意味する。かかる重合性不飽和基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、マレイミド基等が挙げられる。
【0031】
また、本明細書において、「(メタ)アクリレート」はアクリレート又はメタクリレートを意味する。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する。また、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。また、「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミド又はメタクリルアミドを意味する。
【0032】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の水酸基価は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、70~200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、80~185mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、90~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0033】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の重量平均分子量は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、2000~50000の範囲内であることが好ましく、3000~30000の範囲内であることがより好ましく、4000~10000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0034】
なお、本明細書において、平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフで測定したクロマトグラムから標準ポリスチレンの分子量を基準にして算出した値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフは、「HLC8120GPC」(東ソー社製)を使用した。カラムとしては、「TSKgel G-4000HXL」、「TSKgel G-3000HXL」、「TSKgel G-2500HXL」、「TSKgel G-2000HXL」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1mL/分、検出器;RIの条件で行った。
【0035】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)のガラス転移温度は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、-50~60℃の範囲内であることが好ましく、10~50℃の範囲内であることがより好ましく、20~45℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0036】
本明細書において、アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出した。
【0037】
1/Tg(K)=W1/T1+W2/T2+・・・Wn/Tn
Tg(℃)=Tg(K)-273
式中、W1、W2、・・・Wnは各モノマーの質量分率であり、T1、T2・・・Tnは各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)である。
なお、各モノマーのホモポリマーのガラス転移温度は、POLYMER HANDBOOK Fourth Edition,J.Brandrup,E.h.Immergut,E.A.Grulke編(1999年)による値であり、該文献に記載されていないモノマーのガラス転移温度は、該モノマーのホモポリマーを重量平均分子量が5万程度になるようにして合成し、そのガラス転移温度をセイコー電子工業「DSC220U」(示差走査型熱量計)により測定した値である。測定は試料50mgを専用のサンプル皿に所定量秤取し、130℃で3時間乾燥させた後、不活性気体中で、-50℃から10℃/分のスピードで150℃まで昇温し、得られた熱量変化カーブの変曲点の温度を読み取ることにより行った。
【0038】
上記モノマー混合物を共重合して水酸基含有アクリル樹脂(A1)を得るための共重合方法は、特に限定されるものではなく、それ自体既知の共重合方法を用いることができるが、なかでも有機溶剤中にて、重合開始剤の存在下で重合を行なう溶液重合法を好適に使用することができる。
【0039】
上記溶液重合法に際して使用される有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油社製、商品名、高沸点石油系溶剤)等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、2-エトキシエチルプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤;1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤等を挙げることができる。
【0040】
これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組合せて使用することができるが、アクリル樹脂の溶解性の点からエステル系溶剤、芳香族系溶剤を使用することが好ましい。
【0041】
前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の共重合に際して使用できる重合開始剤としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-t-アミルパーオキサイド、t-ブチルパーオクトエート、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等の公知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0042】
水酸基含有アクリル樹脂(A1)は単独で又は2種以上を併用して使用することができる。
【0043】
上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、形成される塗膜の仕上がり外観等の観点から、2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)を含むことが好ましい。
【0044】
上記2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)は、例えば、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造方法において、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーの1種として、2級水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することによって製造することができる。
【0045】
上記2級水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のエステル部のアルキル基の炭素数が2~8、好ましくは3~6、さらに好ましくは3又は4の2級水酸基を有する重合性不飽和モノマー;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、「カージュラE10P」(商品名、Hexion社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成される塗膜の仕上がり外観等の観点から、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートを好適に使用することができる。
【0046】
上記2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)において、上記2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の仕上がり外観等の観点から、共重合モノマー成分の総量に対して、5~45質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0047】
また、上記2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)において、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー全量中の上記2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の耐水性、仕上がり外観等の観点から、30~100質量%の範囲内であることが好ましく、35~100質量%の範囲内であることがより好ましく、40~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0048】
また、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’)を含むことが好ましい。
【0049】
上記水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’)は、例えば、上記水酸基含有アクリル樹脂(A1)の製造方法において、前記その他の重合性不飽和モノマーの1種として、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(3)を使用することによって製造することができる。
【0050】
上記水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’)は、アルコキシシリル基を有することにより、水酸基と架橋剤(B)との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等を向上させることができる。
【0051】
上記水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’)において、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、共重合モノマー成分の総量に対して、3~60質量%の範囲内であることが好ましく、5~50質量%の範囲内であることがより好ましく、5~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0052】
また、水酸基含有アクリル樹脂(A1)は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、上記2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)又は上記水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’)として、2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)を含むことが好ましい。
【0053】
上記2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)は、例えば、上記2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’)の製造方法において、前記その他の重合性不飽和モノマーの1種として、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマー(3)を使用することによって製造することができる。
【0054】
上記2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)において、前記2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の仕上がり外観等の観点から、共重合モノマー成分の総量に対して、5~45質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0055】
また、上記2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)において、前記水酸基含有重合性不飽和モノマー全量中の上記2級水酸基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の耐水性、仕上がり外観等の観点から、30~100質量%の範囲内であることが好ましく、35~100質量%の範囲内であることがより好ましく、40~100質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0056】
また、上記2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)において、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーの含有割合は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上がり外観等の観点から、共重合モノマー成分の総量に対して、3~60質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、5~30質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有樹脂(A)が前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)を含有する場合、該水酸基含有アクリル樹脂(A1)の含有量は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性、耐水性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40~95質量部の範囲内であることが好ましく、50~85質量部の範囲内であることがより好ましく、55~75質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0058】
また、本発明の塗料組成物において、水酸基含有樹脂(A)が前記2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)を含有する場合、該2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’)の含有量は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性、耐水性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40~95質量部の範囲内であることが好ましく、50~85質量部の範囲内であることがより好ましく、55~75質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0059】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂は、常法により、例えば、多塩基酸と多価アルコ-ルとのエステル化反応によって製造することができる。該多塩基酸は、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する化合物であり、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸及びこれらの無水物などが挙げられる。また、該多価アルコールは、1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9-ノナンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチルペンタンジオール、水素化ビスフェノールA等のジオール類;及びトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の3価以上のポリオール成分;並びに、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロールペンタン酸、2,2-ジメチロールヘキサン酸、2,2-ジメチロールオクタン酸等のヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0060】
また、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドなどのα-オレフィンエポキシド、「カージュラE10P」(Hexion社製、商品名、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル)などのモノエポキシ化合物などを酸と反応させて、これらの化合物をポリエステル樹脂に導入しても良い。
【0061】
ポリエステル樹脂へカルボキシル基を導入する場合、例えば、水酸基含有ポリエステルに無水酸を付加し、ハーフエステル化することで導入することもできる。
【0062】
前記水酸基含有ポリエステル樹脂の水酸基価は、80~250mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、100~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
【0063】
上記水酸基含有ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、500~3,500の範囲内であることが好ましく、500~2,500の範囲内であることがより好ましい。
【0064】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有ポリエステル樹脂を含有する場合、該水酸基含有ポリエステル樹脂の含有量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、1~30質量部の範囲内であることが好ましく、2~25質量部の範囲内であることがより好ましく、3~20質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0065】
前記水酸基含有ポリウレタン樹脂としては、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させることにより得られる水酸基含有ポリウレタン樹脂を挙げることができる。
【0066】
ポリオール化合物としては、例えば、低分子量のものとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール等の2価のアルコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価のアルコール等を挙げることができる。高分子量のものとして、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール等を挙げることができる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等があげられる。ポリエステルポリオールとしては前記の2価のアルコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルコールとアジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の2塩基酸との重縮合物、ポリカプロラクトン等のラクトン系開環重合体ポリオール、ポリカーボネートジオール等を挙げることができる。また、例えば、2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ポリオールも使用することができる。
【0067】
上記のポリオール化合物と反応させるポリイソシアネート化合物としては、例えば、後記の架橋剤(B)の説明欄に記載されたポリイソシアネート化合物を使用することができる。
【0068】
前記水酸基含有ポリウレタン樹脂の水酸基価は、80~250mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、100~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましい。
【0069】
上記水酸基含有ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、500~10000の範囲内であることが好ましく、1000~5000の範囲内であることがより好ましい。
【0070】
本発明の塗料組成物において、水酸基含有ポリウレタン樹脂を含有する場合、該水酸基含有ポリウレタン樹脂の含有量は、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、1~30質量部の範囲内であることが好ましく、2~25質量部の範囲内であることがより好ましく、3~20質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0071】
また、本発明の塗料組成物において、上記水酸基含有樹脂(A)の含有量は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性、耐水性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、40~95質量部の範囲内であることが好ましく、50~85質量部の範囲内であることがより好ましく、55~75質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0072】
架橋剤(B)
架橋剤(B)は、前記水酸基含有樹脂(A)中の水酸基と反応し得る官能基を有する化合物である。
【0073】
上記架橋剤(B)としては、具体的には、例えば、ポリイソシアネート化合物、ブロック化ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂等を好適に用いることできる。なかでも、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上り外観等の観点から、該架橋剤(B)が、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂を含有することが好ましく、ポリイソシアネート化合物を含有することが特に好ましい。
【0074】
上記ポリイソシアネート化合物は、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物であって、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物、芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、該ポリイソシアネート化合物の誘導体等を挙げることができる。
【0075】
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,2-ブチレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、2,4,4-又は2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、2,6-ジイソシアナトヘキサン酸メチル(慣用名:リジンジイソシアネート)等の脂肪族ジイソシアネート化合物;2,6-ジイソシアナトヘキサン酸2-イソシアナトエチル、1,6-ジイソシアナト-3-イソシアナトメチルヘキサン、1,4,8-トリイソシアナトオクタン、1,6,11-トリイソシアナトウンデカン、1,8-ジイソシアナト-4-イソシアナトメチルオクタン、1,3,6-トリイソシアナトヘキサン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアナト-5-イソシアナトメチルオクタン等の脂肪族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0076】
前記脂環族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(慣用名:イソホロンジイソシアネート)、4-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート(慣用名:水添TDI)、2-メチル-1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-もしくは1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(慣用名:水添キシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物、メチレンビス(4,1-シクロヘキサンジイル)ジイソシアネート(慣用名:水添MDI)、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアナトシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルイソシアナトシクロヘキサン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、2-(3-イソシアナトプロピル)-2,6-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、3-(3-イソシアナトプロピル)-2,5-ジ(イソシアナトメチル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-3-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン、5-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)-ヘプタン、6-(2-イソシアナトエチル)-2-イソシアナトメチル-2-(3-イソシアナトプロピル)-ビシクロ(2.2.1)ヘプタン等の脂環族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0077】
前記芳香脂肪族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンビス(4,1-フェニレン)ジイソシアネート(慣用名:MDI)、1,3-もしくは1,4-キシリレンジイソシアネート又はその混合物、ω,ω'-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、1,3-又は1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン(慣用名:テトラメチルキシリレンジイソシアネート)もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物;1,3,5-トリイソシアナトメチルベンゼン等の芳香脂肪族トリイソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0078】
前記芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,4-TDI)もしくは2,6-トリレンジイソシアネート(慣用名:2,6-TDI)もしくはその混合物、4,4'-トルイジンジイソシアネート、4,4'-ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物;トリフェニルメタン-4,4',4''-トリイソシアネート、1,3,5-トリイソシアナトベンゼン、2,4,6-トリイソシアナトトルエン等の芳香族トリイソシアネート化合物;4,4'-ジフェニルメタン-2,2',5,5'-テトライソシアネート等の芳香族テトライソシアネート化合物等を挙げることができる。
【0079】
また、前記ポリイソシアネート化合物の誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート化合物のダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、ウレトジオン、ウレトイミン、イソシアヌレート、オキサジアジントリオン、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)、クルードTDI等を挙げることができる。
【0080】
上記ポリイソシアネート化合物及びその誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく又は2種以上併用してもよい。
【0081】
上記ポリイソシアネート化合物としては、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環族ポリイソシアネート化合物及びこれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種を使用することが好ましく、得られる塗料組成物の高固形分化、形成される塗膜の仕上り外観及び屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体を使用することがより好ましい。
【0082】
上記脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又はその誘導体としては、得られる塗料組成物の高固形分化、形成される塗膜の仕上り外観等の観点から、なかでも、脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又はそのイソシアヌレート体を使用することが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はそのイソシアヌレート体を使用することがより好ましい。
【0083】
本発明の塗料組成物が、架橋剤(B)として上記ポリイソシアネート化合物を含有する場合、該ポリイソシアネート化合物の含有量は、形成される塗膜の仕上り外観及び屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、前記水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、5~60質量部の範囲内であることが好ましく、15~50質量部の範囲内であることがより好ましく、20~45質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0084】
また、架橋剤(B)として使用し得る前記ブロック化ポリイソシアネート化合物は、上記ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤でブロックした化合物である。
【0085】
上記ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、ニトロフェノール、エチルフェノール、ヒドロキシジフェニル、ブチルフェノール、イソプロピルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸メチル等のフェノール系;ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム、β-プロピオラクタム等のラクタム系;メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ラウリルアルコール等の脂肪族アルコール系;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メトキシメタノール等のエーテル系;ベンジルアルコール、グリコール酸、グリコール酸メチル、グリコール酸エチル、グリコール酸ブチル、乳酸、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、メチロール尿素、メチロールメラミン、ジアセトンアルコール、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のアルコール系;ホルムアミドオキシム、アセトアミドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系;ブチルメルカプタン、t-ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、2-メルカプトベンゾチアゾール、チオフェノール、メチルチオフェノール、エチルチオフェノール等のメルカプタン系;アセトアニリド、アセトアニシジド、アセトトルイド、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸アミド、ステアリン酸アミド、ベンズアミド等の酸アミド系;コハク酸イミド、フタル酸イミド、マレイン酸イミド等のイミド系;ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、キシリジン、N-フェニルキシリジン、カルバゾール、アニリン、ナフチルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、ブチルフェニルアミン等アミン系;イミダゾール、2-エチルイミダゾール等のイミダゾール系;尿素、チオ尿素、エチレン尿素、エチレンチオ尿素、ジフェニル尿素等の尿素系;N-フェニルカルバミン酸フェニル等のカルバミン酸エステル系;エチレンイミン、プロピレンイミン等のイミン系;重亜硫酸ソーダ、重亜硫酸カリ等の亜硫酸塩系;アゾール系の化合物等が挙げられる。上記アゾール系の化合物としては、ピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール、3-メチルピラゾール、4-ベンジル-3,5-ジメチルピラゾール、4-ニトロ-3,5-ジメチルピラゾール、4-ブロモ-3,5-ジメチルピラゾール、3-メチル-5-フェニルピラゾール等のピラゾール又はピラゾール誘導体;イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のイミダゾール又はイミダゾール誘導体;2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾリン誘導体等が挙げられる。
【0086】
なかでも、好ましいブロック剤としては、オキシム系のブロック剤、活性メチレン系のブロック剤、ピラゾール又はピラゾール誘導体が挙げられる。
【0087】
ブロック化を行なう(ブロック剤を反応させる)にあたっては、必要に応じて溶剤を添加して行なうことができる。ブロック化反応に用いる溶剤としてはイソシアネート基に対して反応性でないものが良く、例えば、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル類、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)のような溶剤を挙げることができる。
【0088】
本発明の塗料組成物が、架橋剤(B)として上記ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、該ブロック化ポリイソシアネート化合物の含有量は、形成される塗膜の仕上り外観及び屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、前記水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、5~60質量部の範囲内であることが好ましく、15~50質量部の範囲内であることがより好ましく、20~45質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明の塗料組成物が、架橋剤(B)として、前記ポリイソシアネート化合物及び/又は上記ブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、その配合割合は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上がり外観等の観点から、該ポリイソシアネート化合物及びブロック化ポリイソシアネート化合物の合計イソシアネート基(ブロック化イソシアネート基を含む)と、前記水酸基含有樹脂(A)の水酸基との当量比(NCO/OH)が通常0.5~2、特に0.8~1.5の範囲内となる割合で使用することが好適である。
【0090】
上記架橋剤(B)として使用し得るアミノ樹脂としては、アミノ成分とアルデヒド成分との反応によって得られる部分メチロール化アミノ樹脂又は完全メチロール化アミノ樹脂を使用することができる。アミノ成分としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等が挙げられる。アルデヒド成分としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0091】
また、上記メチロール化アミノ樹脂のメチロール基を、適当なアルコールによって、部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0092】
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂が好ましい。メラミン樹脂としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基を上記アルコールで部分的に又は完全にエーテル化したアルキルエーテル化メラミン樹脂を使用することができる。
【0093】
上記アルキルエーテル化メラミン樹脂としては、例えば、部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したブチルエーテル化メラミン樹脂;部分又は完全メチロール化メラミン樹脂のメチロール基をメチルアルコール及びブチルアルコールで部分的に又は完全にエーテル化したメチル-ブチル混合エーテル化メラミン樹脂等を好適に使用することができる。
【0094】
また、上記メラミン樹脂は、重量平均分子量が400~6000の範囲内であることが好ましく、500~5000の範囲内であることがより好ましく、800~4000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0095】
メラミン樹脂としては市販品を使用できる。該メラミン樹脂の市販品としては、例えば、「サイメル202」、「サイメル203」、「サイメル238」、「サイメル251」、「サイメル303」、「サイメル323」、「サイメル324」、「サイメル325」、「サイメル327」、「サイメル350」、「サイメル385」、「サイメル1156」、「サイメル1158」、「サイメル1116」、「サイメル1130」(以上、オルネクスジャパン社製)、「ユーバン120」、「ユーバン20HS」、「ユーバン20SE60」、「ユーバン2021」、「ユーバン2028」、「ユーバン28-60」(以上、三井化学社製)等が挙げられる。
【0096】
以上に述べたメラミン樹脂は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0097】
本発明の塗料組成物が、架橋剤(B)として上記アミノ樹脂を含有する場合、該アミノ樹脂の含有量は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、1~60質量部の範囲内であることが好ましく、3~40質量部の範囲内であることがより好ましく、5~30質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0098】
上記架橋剤(B)は、それぞれ単独でもしくは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0099】
反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)
反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)は、分子の末端及び/又は側鎖に反応性官能基を含有するオルガノポリシロキサンである。
【0100】
上記反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)は、自己架橋反応をできてもよく、前記水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)及び/又はシリカ粒子(D)の反応性官能基との反応をできてもよく、自己架橋反応、並びに、水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)及び/又はシリカ粒子(D)の反応性官能基との反応の両方をできてもよい。
【0101】
上記反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)としては、例えば、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン、水酸基含有オルガノポリシロキサン、エポキシ基含有オルガノポリシロキサン、カルボキシル基含有オルガノポリシロキサン等が挙げられ、なかでも、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上がり外観等の観点から、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、イソシアネート基含有オルガノポリシロキサン及び水酸基含有オルガノポリシロキサンから選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサンを含むことが好ましい。
【0102】
上記アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサンの市販品としては、例えば「SR2406」、「SR2410」、「SR2420」、「SR2416」、「SR2402」、「AY42-161」(以上東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)、「FZ-3704」、「FZ-3511」(以上日本ユニカー社製)、「KC-89S」、「KR-500」、「X-40-9225」、「X-40-9246」、「X-40-9250」、「KR-217」、「KR-9218」、「KR-213」、「KR-510」、「X-40-9227」、「X-40-9247」、「X-41-1053」、「X-41-1056」、「X-41-1805」、「X-41-1810」、「X-40-2651」、「X-40-2308」、「X-40-9238」、「X-40-2239」、「X-40-2327」、「KR-400」、「X-40-175」、「X-40-9740」(以上信越化学工業株式会社製)、「Silmer TMS C50」、「Silmer TMS Di-10」、「Silmer TMS Di-50」(以上SILTECH社製)などの市販品が適用可能である。
【0103】
前記反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)は、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、メチル基、フェニル基等の炭化水素基を含有することが好ましい。
【0104】
上記反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)の数平均分子量としては、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び仕上がり外観等の観点から、200~10,000の範囲内であることが好ましく、400~5,000の範囲内であることがより好ましく、500~2,000の範囲内であることがさらに好ましい。
【0105】
上記反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)の含有量は、形成される塗膜の汚染除去性、屋外曝露後の汚染除去性、透明性及び硬化性等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として、0.01~10質量部の範囲内であることが好ましく、0.05~1質量部の範囲内であることがより好ましく、0.1~0.4質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0106】
シリカ粒子(D)分散体
シリカ粒子(D)分散体は、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子の分散体である。以下、シリカ粒子(D)分散体についてさらに詳細に説明する。
【0107】
原料シリカ粒子
シリカ粒子(D)分散体を形成するための原料シリカ粒子としては、水酸基含有アクリル樹脂(d2)、並びに紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)との結合を形成できるシリカ粒子であれば特段制限なく使用することができる。このようなシリカ粒子としては、例えば、乾式シリカ、湿式シリカ、シリカゲル、カルシウムイオン交換シリカ微粒子、コロイダルシリカ等を挙げることができるが、特に、水酸基及び/又はアルコキシ基を粒子表面に有し、分散媒に分散されたシリカ微粒子であるコロイダルシリカが好ましい。
【0108】
上記分散媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、イソブタノール、n-ブタノール等のアルコール系溶剤;エチレングリコール等の多価アルコール系溶剤;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセトンアルコール等のケトン系溶剤等が挙げられる。上記分散媒としては、炭素数3以下の低級アルコール系溶剤、低級多価アルコール誘導体が好ましい。重合性不飽和基を有するシリカ粒子の製造における溶剤除去工程で除去しやすいからである。
【0109】
前記コロイダルシリカとしては市販品を使用することができる。該市販品としては、例えば、「IPA-ST」、「MEK-ST」、「NBA-ST」、「XBA-ST」、「DMAC-ST」、「PGM-ST」、「ST-UP」、「ST-OUP」、「ST-20」、「ST-40」、「ST-C」、「ST-N」、「ST-O」、「ST-50」、「ST-OL」(いずれも日産化学工業社製)等が挙げられる。
【0110】
前記原料シリカ粒子の平均一次粒子径は、5~100nmが好ましく、5~50nmがより好ましい。平均一次粒子径が5nm未満であると、本分散体を他の有機材料と混合して使用した場合に、機械特性等の改良効果が小さくなる場合がある。平均一次粒子径が100nmを超えると、透明性が損なわれる場合がある。
【0111】
本明細書において、「平均一次粒子径」は、体積基準粒度分布のメジアン径(d50)を意味し、体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱法によって測定される。本発明において、本分散体の体積基準の粒度分布は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「マイクロトラックNT3300」(商品名、日機装社製)を使用して測定した。その際、サンプル濃度は装置に設定された所定の透過率の範囲となるように調整した。
【0112】
前記シリカ粒子(D)分散体は、原料シリカ粒子と、水酸基含有アクリル樹脂(d2)、並びに紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)とが結合したシリカ粒子の分散体であるが、以下では、その構成要素である水酸基含有アクリル樹脂(d2)、紫外線吸収剤(d31)、及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)について説明し、次いでこれらの構成要素とシリカ粒子との結合の態様について説明する。
【0113】
水酸基含有アクリル樹脂(d2)
水酸基含有アクリル樹脂(d2)は、水酸基含有重合性不飽和モノマーを重合せしめることによって形成させることができる。
【0114】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーは、1分子中に水酸基と重合性不飽和基とをそれぞれ1個以上有する化合物であり、該水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物;該(メタ)アクリル酸と炭素数2~8の2価アルコールとのモノエステル化物のε-カプロラクトン変性体;(メタ)アクリル酸とエポキシ基含有化合物(例えば、「カージュラE10P」(商品名)、Hexion社製、ネオデカン酸グリシジルエステル)との付加物;N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド;アリルアルコール、さらに、分子末端が水酸基であるポリオキシエチレン鎖を有する(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0115】
また、水酸基含有アクリル樹脂(d2)を形成するにあたっては、水酸基含有樹脂(A)としての水酸基含有アクリル樹脂(A1)の場合と同様に、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを加えて、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合せしめてもよい。このようなその他の重合性不飽和モノマーの例としては、前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した、1分子中に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物の具体例(1)~(8)を挙げることができる。
【0116】
紫外線吸収剤(d31)
紫外線吸収剤(d31)としては、従来から公知のものが使用でき、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等を使用できる。また、該紫外線吸収剤(d31)は、重合性不飽和基を有するものであってもよい。
【0117】
上記ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0118】
前記トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0119】
前記サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0120】
前記ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0121】
前記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「Tinuvin900」、「Tinuvin928」、「Tinuvin348-2」、「Tinuvin479」、Tinuvin405」、「Tinuvin400」(以上、BASF社製、商品名、Tinuvinは登録商標)、「RUVA-93」(以上、大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0122】
ヒンダートアミン系光安定剤(d32)
ヒンダードアミン系光安定剤(d32)としては、ヒンダードピペリジン化合物等の従来から公知のものが使用できる。また、該ヒンダードアミン系光安定剤(d32)は、重合性不飽和基を有するものであってもよい。
【0123】
上記ヒンダードアミン系光安定剤(d32)としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2’,6,6’-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート等の重合性不飽和基を有するもの等が挙げられる。
【0124】
上記ヒンダードアミン系光安定剤の市販品としては、例えば、「Tinuvin765」、「Tinuvin770DF」、「Tinuvin144」、「Tinuvin622SF」、「Tinuvin152」(以上、BASF社製、商品名、Tinuvinは登録商標)、「アデカスタブLA-52」、「アデカスタブLA-57」、「アデカスタブLA-63P、「アデカスタブLA-72」、「アデカスタブLA-77Y」、アデカスタブLA-81」、「アデカスタブLA-82」、「アデカスタブLA-87」(以上、株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブは登録商標)等が挙げられる。
【0125】
水酸基含有アクリル樹脂(d2)、紫外線吸収剤(d31)、及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)とシリカ粒子との結合
原料シリカ粒子と、水酸基含有アクリル樹脂(d2)並びに紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)とが結合した構造とすることにより、シリカ粒子(D)分散体を得ることができる。原料シリカ粒子と、水酸基含有アクリル樹脂(d2)、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)との結合の態様は、これらが共有結合により結合するものであれば特段の制限はないが、例えば次の(1)、(2)及び(3)のような態様の結合を含むことができる。
(1):紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、このような水酸基含有アクリル樹脂(d2)が、シリカ粒子に結合した態様(紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)は、水酸基含有アクリル樹脂(d2)を介してシリカ粒子に結合している態様)、
(2):紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が、それぞれ独立してシリカ粒子に結合した態様、
(3):上記(1)及び(2)が組み合わされた態様であって、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、かつ該水酸基含有アクリル樹脂(d2)が、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子に結合した態様、
が挙げられる。
【0126】
また、紫外線吸収剤(d31)、ヒンダートアミン系光安定剤(d32)、水酸基含有アクリル樹脂(d2)をシリカ粒子に結合させるにあたっては、必要に応じてシランカップリング剤等により変性処理されたシリカ粒子を用いることができる。
【0127】
以下、上記態様(1)~(3)につき説明する。
【0128】
態様(1):紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した水酸基含有アクリル樹脂(d2)が、シリカ粒子に結合した態様
シリカ粒子(D)分散体は、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、かつかかる水酸基含有アクリル樹脂(d2)がシリカ粒子に結合した態様のシリカ粒子分散体として得ることができる。
【0129】
かかる態様のシリカ粒子(D)分散体は、例えば、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)を、水酸基含有重合性不飽和モノマー並びに紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)と反応させることにより、得ることができる。
【0130】
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)としては、例えば、原料シリカ粒子と有機溶剤と重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとを、混合加熱することによって得ることができる重合性不飽和基を有するシリカ粒子を用いることができる。また、前記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)に、さらにアミンを添加したものを用いることもできる。
【0131】
上記有機溶剤は、親水性有機溶剤であることが好ましく、該親水性有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等のアルコール系有機溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノn-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソプロピルエーテル等のグリコールエーテル系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系有機溶剤等が挙げられ、これらは単独で、または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0132】
上記有機溶剤としては、アルコール類及び/又はグリコールエーテル類が好ましい。なかでも、沸点が64~132℃、特には沸点が82~118℃のアルコール類、及び、沸点が120~208℃、特には沸点が120~192℃のグリコールエーテル類がより好ましく、炭素数2~8、特には3~5のアルコール類、及び、炭素数3~5、特には3~4のグリコールエーテル類がさらに好ましい。
【0133】
前記重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーは、例えば、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、各種シランカップリング剤の有する加水分解性シリル基以外の官能基と不飽和化合物の不飽和基以外の官能基との反応により得られる重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマー等を挙げることができる。
【0134】
前記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)は、原料シリカ粒子、有機溶剤、並びに重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーを加熱混合することによって得られる。より詳細には、分散媒に分散した原料シリカ粒子と、有機溶剤と、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとを混合し、この混合物から、有機溶剤及びシリカ粒子の分散媒(重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーを加水分解して生じた低級アルコールを含む。)を常圧又は減圧下で共沸留出させ、分散媒を上記有機溶剤に置換しながら、又は置換した後に、加熱下で脱水縮合反応させることにより製造することができる。
【0135】
反応中の分散液の不揮発分濃度は約5~約50質量%の範囲が好ましい。不揮発分濃度が約5質量%未満、すなわち溶媒が約95質量%を超えると、シリカ粒子と重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとの反応時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。一方、不揮発分濃度が約50質量%を超えると、生成物がゲル化する恐れがある。
【0136】
これらの製造方法により、原料シリカ粒子表面のケイ素原子と重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーのケイ素原子とが酸素原子を介して結合し、シロキサン結合が形成されることにより、シリカ粒子と重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとが化学的に結合した、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液を得ることができる。
【0137】
上記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)を得る際の重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーの配合割合は、シリカ粒子100質量部に対して、0.2質量部~95質量部の範囲内であることが好ましく、0.5質量部~50質量部の範囲内であることがより好ましく、1.0質量部~20質量部の範囲内であることがさらに好ましい。重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーの割合が0.2質量部未満であると、生成する重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)が、分散媒中で安定性に劣る場合がある。重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーの割合が95質量部よりも多いと、原料シリカ粒子との反応において重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーが未反応のまま残存する場合がある。
【0138】
また、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)を得る場合において、必要に応じて、炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとともに原料シリカ粒子と反応させても良い。炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランを反応させることで、得られる塗膜の耐水性を向上させる場合がある。かかる炭素数1以上のアルキル基を有するアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン等が挙げられ、これら例示した化合物中のメトキシ基をエトキシ基に置換した化合物(例えばメチルトリエトキシシラン等)も挙げられる。
【0139】
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液としては、貯蔵安定性及び形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、アミンを添加して得られた重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液を用いることが好ましく、3級アミンを添加して得られた重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液を用いることがより好ましい。
【0140】
上記3級アミンは、分子量が120~380、好ましくは130~350、さらに好ましくは150~300であり、かつ末端がアルキル基及び/又はアリール基である3級アミンであれば特に制限なく用いることができる。3級アミンとしては、貯蔵性等の観点から、3級アミンの有するアルキル基のうち少なくとも1つが炭素数3以上、好ましくは4~12、さらに好ましくは5~10のアルキル基であることが好適である。なかでも、貯蔵性等の観点から、特に3級アミンの有するアルキル基のうち少なくとも1つが直鎖状のアルキル基であることが好ましい。
【0141】
上記3級アミンとしては例えば、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリ-n-ヘキシルアミン、トリ-n-ヘプチルアミン、トリ-n-オクチルアミン等の直鎖3級アミン;トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ-2-エチルヘキシルアミン等の分岐トリトリデシルアミン等の分岐3級アミン;ジメチルオクチルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ヘキシルジエチルアミン、オクチルジエチルアミン、ジエチルドデシルアミン等の混合炭化水素基を有する三級アミン;ジメチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン等の脂環3級アミン;ジメチルベンジルアミン、トリベンジルアミン等の芳香環置換基を持つ3級アミン、等が挙げられる。これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0142】
前記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液に上記3級アミンを添加する方法としては、従来既知の方法を用いることができる。上記3級アミンの使用量としては、貯蔵安定性、及び、塗料に配合した際に形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)の固形分100質量部を基準として0.1~5.0質量部の範囲内であることが好ましく、1.5~3.0質量部の範囲内であることがより好ましく、1.7~2.5質量部であることがさらに好ましい。
【0143】
上記で得られた重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)を、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー、並びに紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)と反応させることにより、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した水酸基含有アクリル樹脂(d2)がシリカ粒子に結合した態様の、シリカ粒子分散体(D)が得られる。以下、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)について説明する。
【0144】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)との反応に供される重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)は、その成分の少なくとも一部として、水酸基含有重合性不飽和モノマー、並びに、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーから選ばれる少なくとも一種の重合性不飽和モノマーを含む。
【0145】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記水酸基含有アクリル樹脂(d2)に関連して説明した水酸基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0146】
また、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)には、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを加えてもよい。このようなその他の重合性不飽和モノマーの例としては、前記水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した1分子中に1個以上の重合性不飽和基を有する化合物の具体例(1)~(8)を挙げることができる。
【0147】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等の観点から、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。
【0148】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、水酸基と架橋剤(B)との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等を向上させることができる。
【0149】
上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0150】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む場合、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して3~60質量%の範囲内であることが好ましく、5~55質量%の範囲内であることがより好ましく、5~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0151】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。
【0152】
上記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した、前記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0153】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が上記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む場合、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して0.5~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~30質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5~20質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0154】
前記紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマーとしては、重合性不飽和基を有する紫外線吸収剤が使用でき、市販品としては例えば「RUVA-93」(大塚化学社製、商品名)等を好適に使用できる。
【0155】
また、上記紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマーとしては、例えば、反応性基を有する重合性不飽和モノマーと、この反応性基と反応し得る官能基を有する紫外線吸収剤とを反応させることにより得ることができる。具体的には例えば、イソシアネート基を有する重合性不飽和モノマーと、水酸基やアミノ基等の活性水素基、好ましくは水酸基を有する紫外線吸収剤とを反応させることにより、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマーを得ることができる。
【0156】
また、前記ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーとしては、重合性不飽和基を有するヒンダートアミン系光安定剤が使用でき、市販品としては例えば、「アデカスタブLA-82」、「アデカスタブLA-87」(株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブは登録商標)等を好適に使用できる。
【0157】
また、上記ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーとしては、例えば、反応性基を有する重合性不飽和モノマーと、この反応性基と反応し得る官能基を有するヒンダートアミン系光安定剤とを反応させることにより得ることができる。具体的には例えば、イソシアネート基を有する重合性不飽和モノマーと、水酸基やアミノ基等の活性水素基、好ましくは水酸基を有するヒンダートアミン系光安定剤とを反応させることにより、ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを得ることができる。
【0158】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)における水酸基含有重合性不飽和モノマーの割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して4.5~60質量%の範囲内であることが好ましく、10~50質量%の範囲内であることがより好ましく、15~45質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0159】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマーを含む場合、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して0.5~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~20質量%の範囲内であることがより好ましく、1~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0160】
また、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が、ヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマー含む場合、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して0.5~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~20質量%の範囲内であることがより好ましく、1~15質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0161】
さらに、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)における紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーの合計割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の総量に対して0.5~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~40質量%の範囲内であることがより好ましく、5~35質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0162】
また、上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)から製造される水酸基含有アクリル樹脂(d2)の水酸基価は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、20~215mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、40~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、60~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0163】
シリカ粒子(D)分散体の形成
シリカ粒子(D)分散体は、上記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)とを、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。該重合方法としては特に限定されるものではなく、それ自体既知の重合方法を用いることができるが、なかでも、有機溶剤中にて、適宜、触媒、重合開始剤等の存在下で重合を行う溶液重合法を好適に使用することができる。
【0164】
上記溶液重合法において使用される有機溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、「スワゾール1000」、「スワゾール1500」(商品名、丸善石油化学社製、高沸点石油系溶剤)等の芳香族化合物、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、ミネラルスピリット等の炭化水素系溶媒;トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、プロピオン酸エチル、メチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のアルコール系溶媒;n-ブチルエーテル、ジオキサン、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン又は水等を挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、形成される塗膜外観の観点から芳香族系溶剤及びエステル系溶剤が好ましく、エステル系溶剤がさらに好ましい。
【0165】
上記重合に際して使用できる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、例えばベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ラウロイルパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、tert-ブチルパーオキシピバレート、1,1’-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレレート、2,2’-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ブタン、tert-ブチルヒドロキシパーオキシド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキシド、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、tert-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,3-ビス(tert-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert-ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、過酸化水素等の過酸化物系重合開始剤;1,1-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2-(tert-ブチルアゾ)-2-シアノプロパン、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス-(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)等のアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸系開始剤;過酸化物と還元剤とからなるレドックス型開始剤等といった、それ自体既知のラジカル重合開始剤を挙げることができる。
【0166】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)100質量部に対して0.1~20質量部の範囲内であることが好ましく、1~10質量部であることがより好ましい。上記ラジカル重合開始剤が0.1質量部未満であると、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と反応しない未反応の重合性不飽和モノマーの割合が多くなる場合がある。上記ラジカル重合開始剤が20質量部よりも多いと、水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合したシリカ粒子同士の重合によって粒子の凝集が起こる場合がある。
【0167】
また、シリカ粒子(D)分散体には、未反応の重合性不飽和モノマー又は、重合性不飽和モノマー同士で反応はしたが重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)とは反応しなかったポリマーが含まれていても構わない。上記重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)分散液と重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との混合割合は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、質量比で(d1)/(d2-1)=20/80~90/10の範囲内であることが好ましく、30/70~80/20の範囲内であることがより好ましく、40/60~60/40の範囲内であることがさらに好ましい。
【0168】
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)及び重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の反応を溶媒中で行なう場合、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)及び重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の合計質量濃度は、10質量%~90質量%の範囲内であることが好ましく、20質量%~70質量%の範囲であることがより好ましい。上記合計質量濃度が10質量%未満であると、反応時間が長くなり製造効率が低下する場合がある。上記合計質量濃度が90質量%よりも高いと、反応系の粘度が高くなり撹拌が困難になる場合がある。
【0169】
前記反応は、酸素による重合反応阻害を抑制し、反応率を向上させる観点から反応容器内の気相を不活性ガスにより置換して撹拌しながら行うことが好ましい。反応温度と反応時間は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の種類等により適宜選択することができるが、反応温度は約0℃~約250℃の範囲内であるのが好ましく、反応時間は1~72時間の範囲内であるのが好ましい。反応は、通常、常圧下で行うことができるが、加圧又は減圧下でも行うことができる。
【0170】
上記反応における、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の重合率は、約90%以上であることが好ましく、約95%以上であることがより好ましい。重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の重合率が約90%未満では、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等に劣る場合があり、また、得られるシリカ粒子(D)分散体の使用時に、未反応の重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)に起因する臭気が問題になる場合がある。未反応の重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)の量は、反応時間を延長して減少させることができる。未反応の重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)が少量の場合には、ラジカル重合開始剤を添加して重合反応をさらに行うことにより減少させることができる。また、得られたシリカ粒子(D)分散体は、所望により、その溶媒を水等の他の溶媒に置換してもよい。
【0171】
また、上記製造方法によって得られたシリカ粒子(D)分散体と結合している水酸基含有アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、-40~40℃の範囲内であることが好ましく、-30~30℃の範囲内であることがより好ましい。
【0172】
態様(2):紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が、水酸基含有アクリル樹脂(d2)とは独立してシリカ粒子に結合した態様
シリカ粒子(D)分散体は、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が、水酸基含有アクリル樹脂(d2)とは独立してシリカ粒子に結合した態様のシリカ粒子分散体として得ることもできる。
【0173】
かかる態様のシリカ粒子(D)分散体は、例えば、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)を、水酸基含有重合性不飽和モノマーを含み、かつ紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含まない重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)と反応させることにより得ることができる。
【0174】
紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)
紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)は、例えば、紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物、並びに、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーを、原料シリカ粒子と反応させることにより得ることができる。
【0175】
上記紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物としては、例えば、反応性基を有するシランカップリング剤と、この反応性基と反応し得る官能基を有する紫外線吸収剤及び/又はヒンダートアミン系光安定剤とを、反応させることにより得ることができる。例えば、イソシアネート基を有するシランカップリング剤と、ヒドロキシ基やアミノ基等の活性水素基を有する紫外線吸収剤(d31)又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)とを反応させることにより、紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物を得ることができる。
【0176】
このようなシランカップリング剤として好適に使用されるものとしては、例えば、イソシアン酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、「SILIQUEST A-Link25」又は「SILIQUEST A-Link35」(Momentive Performance Materials社製、商品名、SILIQUESTは商標。イソシアネート基を有するシランカップリング剤。)、「KBE-9007N」(信越シリコーン社製、商品名、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル)等が挙げられる。
【0177】
また、このような紫外線吸収剤(d31)又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)として好適に使用されるものとしては、例えば、ヒドロキシ基を有する紫外線吸収剤(d31)又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)等が挙げられる。また、市販品としては、例えば、「TinuvinPS」、「Tinuvin99-2」、「Tinuvin326」、「Tinuvin384-2」、「Tinuvin900」、「Tinuvin928」、「Tinuvin1130」、「Tinuvin400」、「Tinuvin405」、「Tinuvin460」、「Tinuvin477」、「Tinuvin479」、「UVA-903KT」、「UVA-935LH」(以上、BASF社製、商品名、Tinuvinは登録商標。ヒドロキシ基を有する紫外線吸収剤。)、「Tinuvin111FDL」、「Tinuvin144」、「Tinuvin152」(同。ヒドロキシ基を有するヒンダードアミン系光安定剤。)等が挙げられる。
【0178】
また、このような紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物としては、市販品を用いることもできる。このような市販品としては、例えば、「TMPS-E」(信越シリコーン社製、ヒンダードアミン系光安定化基含有シラン)等が挙げられる。
【0179】
以上説明した紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物と、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとを、原料シリカ粒子と反応させることにより、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)を得ることができる。
【0180】
シリカ粒子(d1’)を得るために用いる重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとしては、上記シリカ(d1)を得るために用いられる重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーと同様のモノマーを用いることができる。
【0181】
紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物と、重合性不飽和基及び加水分解性シリル基を有するモノマーとを、原料シリカ粒子と反応させる方法には特段の制限はなく、通常用いられるシランカップリング剤による処理方法を適宜選択することができる。例えば、原料シリカ粒子を含むスラリーに、紫外線吸収性基及び/又はヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物とを含む溶液を加えて撹拌する方法等を挙げることができる。
【0182】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)
以上のようにして得られたシリカ粒子(d1’)を、その成分の少なくとも一部として水酸基含有重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)と反応させることにより、シリカ粒子(D)分散体を得ることができる。
【0183】
上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)は、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含まない。
【0184】
上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)に含まれる水酸基含有重合性不飽和モノマーとしては、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)に用いるものと同様の水酸基含有重合性不飽和モノマーを用いることができる。また、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)には、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)と同様、前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーを加えてもよい。
【0185】
上記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等の観点から、アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。
【0186】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含むことにより、水酸基と架橋剤(B)との架橋結合に加え、アルコキシリル基同士の縮合反応及びアルコキシシリル基と水酸基との反応による架橋結合を生成することから、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等を向上させることができる。
【0187】
上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した、前記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0188】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が上記アルコキシシリル基含有重合性不飽和モノマーを含む場合、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性及び硬化性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)の総量に対して3~60質量%の範囲内であることが好ましく、5~55質量%の範囲内であることがより好ましく、5~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0189】
前記水酸基含有重合性不飽和モノマーと共重合可能なその他の重合性不飽和モノマーとしては、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含むことが好ましい。
【0190】
上記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーとしては、例えば、水酸基含有アクリル樹脂(A1)に関連して説明した、前記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを使用することができる。
【0191】
前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)が上記ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマーを含む場合、形成される塗膜の汚染除去性等の観点から、その配合割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)の総量に対して0.5~40質量%の範囲内であることが好ましく、1~30質量%の範囲内であることがより好ましく、1.5~20質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0192】
重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)における水酸基含有重合性不飽和モノマーの割合は、重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)の総量に対して4.5~60質量%の範囲内であることが好ましく、10~50質量%の範囲内であることがより好ましく、15~45質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0193】
また、上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)から製造される水酸基含有アクリル樹脂(d2)の水酸基価は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、20~215mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、40~200mgKOH/gの範囲内であることがより好ましく、60~170mgKOH/gの範囲内であることがさらに好ましい。
【0194】
シリカ粒子(D)分散体の形成
シリカ粒子(D)分散体は、上記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、上記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)とを、溶媒の存在下で重合反応させることにより得ることができる。該重合方法としては特に限定されるものではなく、例えば、重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)と重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)との重合反応に準じた重合方法を用いることができる。
【0195】
前記紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)と、前記重合性不飽和モノマー混合物(d2-1’)との混合割合は、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、質量比で(d1’)/(d2-1’)=20/80~90/10の範囲内であることが好ましく、30/70~80/20の範囲内であることがより好ましく、40/60~60/40の範囲内であることがさらに好ましい。
【0196】
また、上記製造方法によって得られたシリカ粒子(D)分散体と結合している水酸基含有アクリル樹脂(d2)のガラス転移温度Tgは、形成される塗膜の屋外曝露後の汚染除去性等の観点から、-40~40℃の範囲内であることが好ましく、-30~30℃の範囲内であることがさらに好ましい。
【0197】
態様(3):上記態様(1)及び態様(2)が組み合わされた態様
原料シリカ粒子と、水酸基含有アクリル樹脂(d2)、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)との結合の態様は、上記態様(1)及び態様(2)が組み合わされた態様であって、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が水酸基含有アクリル樹脂(d2)に結合しており、かつ該水酸基含有アクリル樹脂(d2)が、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子に結合した態様であってもよい。
【0198】
かかる態様のシリカ粒子(D)分散体は、例えば、上記態様(2)に関して説明した「紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)」を、上記態様(1)に関して説明した「水酸基含有重合性不飽和モノマー並びに紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合した重合性不飽和モノマーを含む重合性不飽和モノマー混合物(d2-1)」と反応させることにより得ることができる。それぞれの成分や反応条件等の選択は、上記態様(1)、態様(2)に関して詳述したところに準じて行うことができる。
【0199】
水酸基含有アクリル樹脂(d21)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体の含有量は、形成される塗膜の汚染除去性、屋外曝露後の汚染除去性、透明性、耐水性及び仕上がり外観等の観点から、水酸基含有樹脂(A)及び架橋剤(B)の合計固形分100質量部を基準として0.1~25質量部の範囲内であることが好ましく、0.5~20質量部の範囲内であることがより好ましく、1~15質量部の範囲内であることがさらに好ましい。
【0200】
塗料組成物
以上のようにして得られた水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)、反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)、並びに、水酸基含有アクリル樹脂(d21)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体を混合することにより、本発明の塗料組成物を得ることができる。
【0201】
本発明の塗料組成物は、さらに必要に応じて、水酸基含有樹脂(A)以外の樹脂、着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有することができ、さらにまた体質顔料、紫外線吸収剤、光安定剤、触媒、消泡剤、粘性調整剤、防錆剤、表面調整剤、有機溶剤等を適宜含有することができる。
【0202】
上記水酸基含有樹脂(A)以外の樹脂としては、例えば、水酸基を含有しないアクリル樹脂、水酸基を含有しないポリエステル樹脂、水酸基を含有しないポリウレタン樹脂、水酸基を含有しないポリエーテル樹脂等を挙げることができる。
【0203】
前記着色顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムエロー、酸化クロム、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料等を挙げることができる。
【0204】
前記光輝性顔料としては、例えば、アルミニウム顔料、雲母顔料、酸化チタンで被覆された雲母顔料、酸化チタンで被覆された酸化アルミニウム顔料等を挙げることができる。
【0205】
前記体質顔料としては、例えば、タルク、クレー、カオリン、バリタ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、アルミナホワイト等を挙げることができる。
【0206】
前記顔料の各々は単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0207】
本発明の塗料組成物がクリヤ塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、該顔料の配合量は、得られる塗膜の透明性を阻害しない程度の量であることが好ましく、例えば塗料組成物中の固形分総量に対して、0.1~20質量%の範囲内であることが好ましく、0.3~10質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5~5質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0208】
また、本発明の塗料組成物が着色塗料として使用される場合であって、顔料を含有する場合、顔料の配合量は、塗料組成物中の固形分総量に対して、1~200質量%の範囲内であることが好ましく、2~100質量%の範囲内であることがより好ましく、5~50質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0209】
本明細書において、「固形分」は、塗料組成物を110℃で1時間乾燥させた後に残存する、塗料組成物中に含有される樹脂、架橋剤、顔料等の不揮発性成分を意味する。このため、例えば、塗料組成物の合計固形分は、アルミ箔カップ等の耐熱容器に塗料組成物を量り取り、容器底面に該塗料組成物を塗り広げた後、110℃で1時間乾燥させ、乾燥後に残存する塗料組成物中の成分の質量を秤量して、乾燥前の塗料組成物の全質量に対する乾燥後に残存する成分の質量の割合を求めることにより、算出することができる。
【0210】
前記紫外線吸収剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系吸収剤、トリアジン系吸収剤、サリチル酸誘導体系吸収剤、ベンゾフェノン系吸収剤等の紫外線吸収剤を挙げることができる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用することができる。
【0211】
上記ベンゾトリアゾール系吸収剤の具体例としては、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-t-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-{2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0212】
前記トリアジン系吸収剤の具体例としては、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソオクチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4((2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-[4-((2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)-オキシ)-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンン、2-(2,4-ジヒドロキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0213】
前記サリチル酸誘導体系吸収剤の具体例としては、フェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0214】
前記ベンゾフェノン系吸収剤の具体例としては、4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノントリヒドレート、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシ-5-スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、4-ドデシロキシ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、5-クロロ-2-ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジベンゾイルレゾルシノール、4,6-ジベンゾイルレゾルシノール、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0215】
また、前記紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 384-2」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 400」、(BASF社製、商品名、TINUVINは登録商標)、「RUVA 93」(大塚化学社製、商品名)等が挙げられる。
【0216】
本発明の塗料組成物が、紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の配合量は、塗料組成物中の固形分総量に対して、0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.3~3質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0217】
前記光安定剤としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0218】
上記ヒンダードアミン化合物としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、ビス(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケート、4-ベンゾイルオキシ-2,2’,6,6’-テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル){[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル}ブチルマロネート等のモノマータイプのもの;ポリ{[6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)イミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル][(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノール]}等のオリゴマータイプのもの;4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとコハク酸とのポリエステル化物等のポリエステル結合タイプのもの等が挙げられる。
【0219】
前記光安定剤の市販品としては、例えば、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 152」、「TINUVIN 292」(BASF社製、商品名、TINUVINは登録商標)、「HOSTAVIN 3058」(クラリアント社製、商品名、Hostavinは登録商標)、「アデカスタブLA-82」(株式会社ADEKA製、商品名、アデカスタブは登録商標)等が挙げられる。
【0220】
本発明の塗料組成物が、光安定剤を含有する場合、該光安定剤の配合量は、塗料組成物中の固形分総量に対して、0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2~5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.3~3質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0221】
前記触媒としては、従来から公知のものを使用することができ、例えば、本発明の塗料組成物が前記架橋剤(B)として、前記ポリイソシアネート化合物及び/又はブロック化ポリイソシアネート化合物を含有する場合、本発明の塗料組成物はウレタン化反応触媒を含有することができる。
【0222】
上記ウレタン化反応触媒としては、具体的には、例えば、オクチル酸錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫サルファイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、オクタン酸ビスマス、2-エチルヘキサン酸ビスマス、オレイン酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、バーサチック酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート等の有機金属化合物;第3級アミン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独でもしくは2種以上組み合せて使用することができる。
【0223】
本発明の塗料組成物が、上記ウレタン化反応触媒を含有する場合、ウレタン化反応触媒の配合量は、本発明の塗料組成物の固形分総量に対して、0.005~2質量%の範囲内であることが好ましく、0.01~1質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0224】
また、本発明の塗料組成物が上記ウレタン化反応触媒を含有する場合、本発明の塗料組成物は貯蔵安定性、硬化性等の観点から、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソペンタン酸、ヘキサン酸、2-エチル酪酸、ナフテン酸、オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、2-エチルヘキサン酸、イソオクタン酸、イソノナン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ネオデカン酸、バーサチック酸、無水イソ酪酸、無水イタコン酸、無水酢酸、無水シトラコン酸、無水プロピオン酸、無水マレイン酸、無水酪酸、無水クエン酸、無水トリメリト酸、無水ピロメリット酸、無水フタル酸等の有機酸;塩酸、リン酸等の無機酸;アセチルアセトン、イミダゾール系化合物等の金属配位性化合物等を含有してもよい。
【0225】
また、本発明の塗料組成物が、前記架橋剤(B)として前記メラミン樹脂を使用する場合、本発明の塗料組成物は硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸等のスルホン酸;モノブチルリン酸、ジブチルリン酸、モノ(2-エチルヘキシル)リン酸、ジ(2-エチルヘキシル)リン酸等のアルキルリン酸エステル;これらの酸とアミン化合物との塩等を含有することができる。
【0226】
本発明の塗料組成物が、上記メラミン樹脂の硬化触媒を含有する場合、メラミン樹脂の硬化触媒の配合量は、本発明の塗料組成物の固形分総量に対して、0.1~2質量%の範囲内であることが好ましく、0.2~1.7質量%の範囲内であることがより好ましく、0.3~1.4質量%の範囲内であることがさらに好ましい。
【0227】
本発明の塗料組成物はその好ましい態様において、溶媒が有機溶剤を主体とする溶媒である、有機溶剤型の塗料組成物である。
【0228】
上記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、「スワゾール1000」(コスモ石油(株)社製、商品名、高沸点石油系溶剤)等の芳香族系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、2-エトキシエチルプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤等を挙げることができる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0229】
塗装方法
本発明の塗料組成物が適用される被塗物としては、特に限定されるものではなく、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができ、なかでも、自動車車体の外板部及び自動車部品が好ましい。
【0230】
また、上記被塗物の素材としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄、アルミニウム、真鍮、銅、ブリキ、ステンレス鋼、亜鉛メッキ鋼、合金化亜鉛(Zn-Al、Zn-Ni、Zn-Fe等)メッキ鋼等の金属材料;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂類や各種のFRP等のプラスチック材料;ガラス、セメント、コンクリート等の無機材料;木材;繊維材料(紙、布等)等を挙げることができ、なかでも、金属材料及びプラスチック材料が好適である。
【0231】
上記被塗物は、上記金属材料やそれから成形された車体等の金属表面に、リン酸塩処理、クロメート処理、複合酸化物処理等の表面処理が施されたものであってもよい。さらに、該被塗物は、上記金属基材、車体等に、各種電着塗料等の下塗り塗膜が形成されたものであってもよく、該下塗り塗膜の上に中塗り塗膜が形成されたものであってもよい。また、バンパー等のプラスチック基材にプライマー塗膜が形成されたものであってもよい。また、上記中塗り塗膜及びプライマー塗膜は未硬化のものであってもよい。
【0232】
本発明の塗料組成物の塗装方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、回転霧化塗装、カーテンコート塗装等の塗装方法が挙げられ、これらの方法によりウエット塗膜を形成することができる。これらの塗装方法では、必要に応じて、静電印加してもよい。これらのうち、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装が特に好ましい。本発明の塗料組成物の塗布量は、通常、硬化膜厚として、10~60μm、特に25~50μmとなる量とすることが好ましい。
【0233】
また、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装及び回転霧化塗装を行う場合には、本発明の塗料組成物の粘度を、該塗装に適した粘度範囲、通常、フォードカップNo.4粘度計において、20℃で15~60秒、特に20秒~40秒の粘度範囲となるように、有機溶剤等の溶媒を用いて、適宜、調整しておくことが好ましい。
【0234】
被塗物に本発明の塗料組成物を塗装してなるウエット塗膜の硬化は、加熱することにより行うことができ、加熱は公知の加熱手段により行うことができ、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を使用することができる。加熱温度は、特に制限されないが、60~160℃の範囲内であることが好ましく、80~140℃の範囲内であることがより好ましい。加熱時間は、特に制限されないが、10~60分間の範囲内であることが好ましく、15~30分間の範囲内であることがより好ましい。
【0235】
本発明の塗料組成物は汚染除去性に優れた塗膜を形成することができる塗料組成物、特には屋外環境下に曝露される場合であっても優れた汚染除去性を長期にわたって維持し得る塗膜を形成できる塗料組成物であるので、上塗りトップクリヤコート塗料として特に好適に用いることができる。本発明の塗料組成物は、特に自動車用塗料として好適に用いることができる。
【0236】
なお、本塗料により屋外環境下に曝露される場合であっても優れた汚染除去性を長期にわたって維持し得る塗膜を得ることができる理由は、必ずしも明らかではないが、水酸基含有樹脂(A)中の水酸基及びシリカ粒子(D)に結合した水酸基含有アクリル樹脂(d2)中の水酸基が、架橋剤(B)と反応することにより、該水酸基含有樹脂(A)及び該架橋剤(B)によって形成される架橋塗膜中に該シリカ粒子(D)が強固に結合された塗膜が形成されること、該シリカ粒子(D)が塗膜の乾燥過程において塗膜の表面側に比較的多く移行して、塗膜の表面側に比較的多く存在し、これに伴って該シリカ粒子(D)に結合した紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が塗膜の表面側に比較的多く存在することとなり、塗膜の表面側における紫外線吸収機能及び/又は光安定機能が高まること、反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)が塗膜の乾燥過程において塗膜の表面側に比較的多く移行して、塗膜の表面側に比較的多く存在し、該反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)の反応性官能基が水酸基含有樹脂(A)、架橋剤(B)及び/またはシリカ粒子(D)と架橋反応及び/又は、該反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)の反応性官能基自身による自己架橋反応がおこることにより、該反応性官能基含有オルガノポリシロキサン(C)が塗膜表面付近に架橋された状態で存在すること、さらに、該シリカ粒子(D)に結合した紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が、上記水酸基含有樹脂(A)及び該架橋剤(B)によって形成される架橋塗膜に強固に結合されることにより、雨等による塗膜外への流出が抑制されるため、塗膜の劣化が長期にわたって効果的に抑制されることが推測される。
【0237】
複層塗膜形成方法
本発明の塗料組成物が上塗りトップクリヤコート塗料として塗装される複層塗膜形成方法としては、被塗物に順次、少なくとも1層の着色塗料及び少なくとも1層のクリヤコート塗料を塗装することにより複層塗膜を形成する方法であって、最上層のクリヤコート塗料として本発明の塗料組成物を塗装することを含む複層塗膜形成方法を挙げることができる。
【0238】
具体的には、例えば、電着塗料によって下塗り塗膜を形成し、該下塗り塗膜を硬化させた後、該下塗り塗膜上に中塗り塗料によって中塗り塗膜を形成し、該中塗り塗膜を硬化させた後、該中塗り塗膜上に、着色塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、必要に応じて着色塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40~90℃で3~30分間程度のプレヒートを行い、この未硬化の着色塗膜上にクリヤコート塗料として本発明の塗料組成物の塗装を行った後、着色塗膜とクリヤコート塗膜とを一緒に硬化させる、2コート1ベーク方式;電着塗料によって下塗り塗膜を形成し、該下塗り塗膜を硬化させた後、該下塗り塗膜上に中塗り塗料によって中塗り塗膜を形成し、該中塗り塗膜を硬化させることなく、必要に応じて中塗り塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40~90℃で3~30分間程度のプレヒートを行い、この未硬化の中塗り塗膜上に、着色塗料を塗装し、該塗膜を硬化させることなく、必要に応じて着色塗料中の溶媒の揮散を促進させるために、例えば、40~90℃で3~30分間程度のプレヒートを行い、この未硬化の着色塗膜上にクリヤコート塗料として本発明の塗料組成物の塗装を行った後、該中塗り塗膜、着色塗膜及びクリヤコート塗膜を一緒に硬化させる、3コート1ベーク方式の複層塗膜形成方法を挙げることができる。
【0239】
上記で用いられる中塗り塗料としては、従来から公知の通常の熱硬化型中塗り塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂系等の基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤を基体樹脂が含有する反応性官能基と適宜組合せてなる塗料を使用することができる。上記基体樹脂が含有する反応性官能基は水酸基であることが好ましい。
【0240】
また、中塗り塗料としては、例えば、水性塗料、有機溶剤系塗料、粉体塗料を用いることができる。なかでも、環境負荷低減及び塗膜の仕上り外観等の観点から水性塗料が好ましい。
【0241】
また、上記で用いられる着色塗料としては、従来から公知の通常の熱硬化型着色塗料を使用することができ、具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等の基体樹脂にアミノ樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物等の架橋剤を基体樹脂が含有する反応性官能基と適宜組合せてなる塗料を使用することができる。上記基体樹脂が含有する反応性官能基は水酸基であることが好ましい。
【0242】
また、着色塗料としては、例えば、水性塗料、有機溶剤系塗料、粉体塗料を用いることができる。なかでも、環境負荷低減及び塗膜の仕上り外観等の観点から水性塗料が好ましい。
【0243】
上記複層塗膜形成方法において、クリヤコートを2層以上塗装する場合、最上層以外のクリヤコート塗料としては、本発明の塗料組成物を使用してもよく、従来から公知の熱硬化型クリヤコート塗料を使用してもよい。
【実施例0244】
以下、製造例、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、これらにより限定されるものではない。各例において、「部」および「%」は、特記しない限り、質量基準による。また、塗膜の膜厚は硬化塗膜に基づくものである。
【0245】
水酸基含有樹脂(A)の製造
製造例1
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)27部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら150℃で攪拌し、この中にスチレン22部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート18部、4-ヒドロキシブチルアクリレート4部、イソブチルメタクリレート55部、アクリル酸1.0部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)1.5部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、150℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸ブチルを34部加えて希釈し、固形分濃度60質量%の2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’-1)溶液を得た。得られた2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’-1)の水酸基価は93mgKOH/g、酸価は6.7mgKOH/g、重量平均分子量は8,000、ガラス転移温度は44.3℃であった。
【0246】
製造例2
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)27部及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート5部を仕込み、窒素ガスを吹き込みながら150℃で攪拌し、この中にスチレン17部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート28.5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10.5部、イソブチルメタクリレート43部、アクリル酸1.0部及びジターシャリアミルパーオキサイド(重合開始剤)1.5部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、150℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸ブチルを34部加えて希釈し、固形分濃度60質量%の2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’-2)溶液を得た。得られた2級水酸基含有アクリル樹脂(A1’-2)の水酸基価は164mgKOH/g、酸価は6.7mgKOH/g、重量平均分子量は8,000、ガラス転移温度は27.9℃であった。
【0247】
製造例3
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)30部及びn-ブタノール10部を仕込んだ。反応容器に窒素ガスを吹き込みながら125℃で仕込み液を攪拌し、この中にγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15部、スチレン22部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート18部、4-ヒドロキシブチルアクリレート4部、イソブチルメタクリレート41部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)4.5部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で30分間熟成させた後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.5部及び「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)5.0部からなる溶液を1時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸イソブチルを8部加えて希釈し、固形分濃度65質量%の2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’-1)溶液を得た。得られた2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’-1)のアルコキシシリル基含有量は0.6mmol/g、水酸基価は93mgKOH/g、重量平均分子量は8,000、ガラス転移温度は33.2℃であった。
【0248】
製造例4
温度計、サーモスタット、撹拌装置、還流冷却器、窒素導入管及び滴下装置を備えた反応容器に、「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)30部及びn-ブタノール10部を仕込んだ。反応容器に窒素ガスを吹き込みながら125℃で仕込み液を攪拌し、この中にγ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン15部、スチレン10部、2-ヒドロキシプロピルアクリレート28.5部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10.5部、イソブチルメタクリレート36部及び2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(重合開始剤)4.5部からなるモノマー混合物を4時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で30分間熟成させた後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.5部及び「スワゾール1000」(商品名、コスモ石油社製、芳香族系有機溶剤)5.0部からなる溶液を1時間かけて均一速度で滴下した。その後、125℃で1時間熟成させた後冷却し、さらに酢酸イソブチルを8部加えて希釈し、固形分濃度65質量%の2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’-2)溶液を得た。得られた2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’-2)のアルコキシシリル基含有量は0.6mmol/g、水酸基価は164mgKOH/g、重量平均分子量は8,000、ガラス転移温度は15.6℃であった。
【0249】
紫外線吸収性基と加水分解性シリル基とを有する化合物の製造
製造例5
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「SILIQUEST A-Link 25 Silane」(商品名、Momentive Performance Materials社製、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、固形分100%)70部及び「Tinuvin405」(商品名、BASF社製、水酸基を有する紫外線吸収剤、固形分100%)137.7部及び酢酸ブチル207.7部を入れ、室温下混合撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて80℃で3時間反応させて紫外線吸収性基と加水分解性シリル基とを有する固形分濃度50質量%の化合物(s-1)を得た。
【0250】
製造例6
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「SILIQUEST A-Link 35 Silane」(商品名、Momentive Performance Materials社製、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)70部及び「Tinuvin405」(商品名、BASF社製、水酸基を有する紫外線吸収剤、固形分100%)165.9部及び酢酸ブチル235.9部を入れ、室温下混合撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて80℃で3時間反応させて、紫外線吸収性基と加水分解性シリル基とを有する固形分濃度50質量%の化合物(s-2)を得た。
【0251】
ヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物の製造
製造例7
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「SILIQUEST A-Link 25 Silane」(商品名、Momentive Performance Materials社製、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、固形分100%)70部及び「Tinuvin152」(商品名、BASF社製、水酸基を有するヒンダードアミン系光安定剤、固形分100%)203.4部及び酢酸ブチル273.4gを入れ、室温下混合撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて80℃で3時間反応させてヒンダードアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する固形分濃度50質量%の化合物(s-3)を得た。
【0252】
製造例8
温度計、撹拌機、還流冷却器及び窒素導入管を取り付けたセパラブルフラスコに、「SILIQUEST A-Link 35 Silane」(商品名、Momentive Performance Materials社製、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、固形分100%)70部及び「Tinuvin152」(商品名、BASF社製、水酸基を有するヒンダードアミン系光安定剤、固形分100%)245.1部及び酢酸ブチル315.1gを入れ、室温下混合撹拌した。その後、マントルヒーターを用いて80℃で3時間反応させて、ヒンダートアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する固形分濃度50質量%の化合物(s-4)を得た。
【0253】
重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1)の製造
製造例9
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、「PGM-ST」(商品名、日産化学工業社製、シリカ平均一次粒子径;15nm、シリカ濃度;30質量%、分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル)333部(固形分100部)及び脱イオン水 10部を入れた後、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)10部(固形分10部)を添加し、80℃で3時間攪拌しながら脱水縮合反応を行い、その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル30部を添加し、次いで減圧状態で揮発成分を留出させて、固形分40%の重合性不飽和基を有するシリカ粒子分散液(d1-1)を得た。
【0254】
製造例10
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、「スノーテックス O-40」(商品名、日産化学工業社製、シリカ平均一次粒子径;20~25nm、シリカ濃度;40質量%、分散媒;水)250部(固形分100部)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル250部を入れた後、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)10部(固形分10部)を添加し、80℃で3時間攪拌しながら脱水縮合反応を行い、その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル200部を添加し、次いで減圧状態で揮発成分を留出させて、固形分40%の重合性不飽和基を有するシリカ粒子分散液(d1-2)を得た。
【0255】
紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1’)の製造
製造例11
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、「PGM-ST」(商品名、日産化学工業社製、シリカ平均一次粒子径;15nm、シリカ濃度;30質量%、分散媒;プロピレングリコールモノメチルエーテル)333部(固形分100部)及び脱イオン水 10部を入れた後、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)10部(固形分10部)及び製造例5で得た紫外線吸収性基と加水分解性シリル基とを有する化合物(s-1)20部(固形分10部)を添加し、80℃で3時間攪拌しながら脱水縮合反応を行い、その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル30部を添加し、次いで減圧状態で揮発成分を留出させて、固形分40%の、紫外線吸収剤(d31)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子分散液(d1’-1)を得た。
【0256】
製造例12~15
表1に示す配合とする以外は製造例11と同様にして、固形分40%の、紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子分散液(d1’-2)~(d1’-5)を得た。
【0257】
【表1】
【0258】
(注1)「TMPS-E」:商品名、信越化学工業社製、ヒンダードアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物、有効成分95%以上。
【0259】
製造例16
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、「スノーテックス O-40」(商品名、日産化学工業社製、シリカ平均一次粒子径;20~25nm、シリカ濃度;40質量%、分散媒;水)250部(固形分100部)及びプロピレングリコールモノメチルエーテル250部を入れた後、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)10部(固形分10部)、製造例5で得た紫外線吸収性基と加水分解性シリル基とを有する化合物(s-1)20部(固形分10部)及び製造例7で得たヒンダードアミン系光安定化基と加水分解性シリル基とを有する化合物(s-3)20部(固形分10部)を添加し、80℃で3時間攪拌しながら脱水縮合反応を行い、その後、フッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム0.03部を加えて更に1時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、プロピレングリコールモノメチルエーテル200部を添加し、次いで減圧状態で揮発成分を留出させて、固形分40%の、紫外線吸収剤(d31)及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合し、かつ重合性不飽和基を有するシリカ粒子分散液(d1’-6)を得た。
【0260】
水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体の製造
製造例17
還流冷却器、温度計、攪拌機及び窒素ガス導入口を取り付けたセパラブルフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテル135部を仕込み、窒素ガス通気下で100℃まで昇温した。100℃に達した後、製造例9で得た重合性不飽和基を有するシリカ粒子(d1-1)分散液275部(固形分110部)と、2-ヒドロキシエチルメタクリレート30部、「RUVA-93」(商品名、大塚化学社製、紫外線吸収剤(d31)が結合した重合性不飽和モノマー)5部(固形分5部)、スチレン21.5部、2-エチルヘキシルアクリレート8.5部、「X-22-174ASX」(商品名、信越化学工業社製、ポリシロキサン鎖含有重合性不飽和モノマー)5部(固形分5部)、「KBM-503」(商品名、信越化学工業社製、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン)30部(固形分30部)、「V-59」(商品名、富士フイルム和光純薬社製、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル))2.5部(固形分2.5部)の混合物を、2時間かけて滴下した。次いで、100℃で1時間熟成させた後、「V-59」0.83部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20部の混合溶液を、0.5時間かけて滴下し、更に2時間熟成させた。不揮発分から求めた重合率は99%であった。その後、エトキシエチルプロピオネートを加え、減圧状態で共沸留出することにより溶剤を置換し、実測された不揮発分が40%であるシリカ粒子分散体(D-1)を得た。
製造例18~47
表2に示す配合とする以外は製造例17と同様にして、シリカ粒子分散体(D-2)~(D-31)を得た。このうち、シリカ粒子分散体(D-30)は、紫外線吸収剤(d31)及びヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合していないため、上記水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合し、かつ紫外線吸収剤(d31)及び/又はヒンダートアミン系光安定剤(d32)が結合したシリカ粒子(D)分散体に該当しない。また、シリカ粒子分散体(D-31)は水酸基含有アクリル樹脂(d2)が結合していないため、これも上記シリカ粒子(D)分散体に該当しない。
【0261】
【表2】
【0262】
【表3】
【0263】
【表4】
【0264】
【表5】
【0265】
【表6】
【0266】
【表7】
【0267】
(注2)「アデカスタブLA-82」:商品名、株式会社ADEKA製、ヒンダートアミン系光安定剤(c22)が結合した重合性不飽和モノマー、
(注3)「アデカスタブLA-87」:商品名、株式会社ADEKA製、ヒンダートアミン系光安定剤(c22)が結合した重合性不飽和モノマー。
【0268】
塗料組成物の製造
実施例1
製造例3で得た2級水酸基及びアルコキシシリル基を有するアクリル樹脂(A1’’’-1)溶液120部(固形分72部)、「スミジュール N3300」(商品名、住友コベストロウレタン社製、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート環付加物、固形分含有率100%)28部(固形分28部)、「Silmer TMS Di10」(商品名、SILTECH社製、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%)0.2部(固形分0.2部)、製造例17で得たシリカ粒子分散体(D-1)25部(固形分10部)、「NACURE 4167」(商品名、KING INDUSTRIES社製、アルキルリン酸のトリエチルアミン塩、有効成分25%)4部(固形分1.0部)、「Tinuvin400」(商品名、BASF社製、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、固形分100%)1.5部(固形分1.5部)、「Tinuvin123」(商品名、BASF社製、水酸基を有さないヒンダードアミン系光安定剤、固形分100%)1.5部(固形分1.5部)及び「BYK-300」(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分52%)0.38部(固形分0.2部)を均一に混合し、さらに、酢酸ブチルを加えて、20℃におけるフォードカップNo.4による粘度が30秒となるように調整して塗料組成物No.1を得た。
【0269】
実施例2~45、比較例1~3
実施例1において、各成分の配合を下記表3に示す配合に変更する以外は実施例1と同様にして塗料組成物No.2~No.48を得た。
【0270】
塗料組成物の評価
(試験用塗装板の作製)
リン酸亜鉛化成処理を施した冷延鋼板に、「エレクロンGT-10」(商品名、関西ペイント社製、カチオン電着塗料)を乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装し、170℃で30分間加熱して、硬化した電着塗膜を形成した。該電着塗膜上に、「WP-522H」(商品名、関西ペイント社製、ポリエステル樹脂・アミノ樹脂系水性中塗り塗料)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚30μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行ない、未硬化の中塗り塗膜を形成した。該未硬化の中塗り塗膜上に、「WBC-713T」(商品名、関西ペイント社製、アクリルメラミン樹脂系水性ベースコート塗料、白塗色)を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、硬化膜厚15μmとなるように静電塗装し、5分間放置後、80℃で3分間プレヒートを行ない、未硬化のベースコート塗膜を形成した。
【0271】
次いで、該未硬化のベースコート塗膜上に、実施例1で得た塗料組成物No.1を、回転霧化型の静電塗装機を用いて、乾燥膜厚で40μmとなるように静電塗装してクリヤコート塗膜を形成させて、7分間放置した。次いで、140℃で30分間加熱して、未硬化の中塗り塗膜、未硬化のベースコート塗膜及び未硬化のクリヤコート塗膜を加熱硬化させることにより実施例1の試験用塗装板を作製した。
【0272】
実施例2~45及び比較例1~3の試験用塗装板の製造
上記塗料組成物No.1の試験用塗装板の作製において、塗料組成物No.1をそれぞれ塗料組成物No.2~48のいずれかとする以外は、塗料組成物No.1の試験用塗装板の作製と同様にして実施例2~45及び比較例1~3の試験用塗装板をそれぞれ作製した。
【0273】
上記で得られた各試験用塗装板について、下記の試験方法により評価を行なった。評価結果を塗料組成と併せて表3に示す。
【0274】
(試験方法)
汚染除去性
上記で得られた各試験用塗装板に、油性マーカー「マジックインキ極太 MGD-T1 黒」(商品名、寺西工業株式会社製、黒色油性マーカー)で20mm×20mmの正方形を描き汚染した。その後、1分静置してから、状態を観察し、さらに乾いた「セルリーフ WA-25C」(商品名、小津産業社製、不織布ワイパー)を用いて、汚染部分をふき取り、上記部分を観察し、以下の基準で評価した。A及びBが合格レベルである。
A:インクがはじかれており、拭き取り後は色残りが全くない、
B:汚染部の40%以上の面積でインクがはじかれており、拭き取り後は色残りがほとんどない、
C:汚染部の40%未満の面積でインクがはじかれており、拭き取り後も色残りが認められる、
D:インクがはじかれておらず、拭き取り後も色残りが認められる。
【0275】
屋外曝露後の汚染除去性
上記で得られた各試験用塗装板を、鹿児島県沖永良部島で南面に向かって、垂直から4度の角度を付けて取り付け、12ヶ月間屋外曝露した。その後、屋外曝露後の各試験用塗装板に、油性マーカー「マジックインキ極太 MGD-T1 黒」(商品名、寺西工業株式会社製、黒色油性マーカー)で20mm×20mmの正方形を描き汚染した。その後、1分静置してから、状態を観察し、さらに乾いた「セルリーフ WA-25C」(商品名、小津産業社製、不織布ワイパー)を用いて、汚染部分をふき取り、上記部分を観察し、以下の基準で評価した。A及びBが合格レベルである。
A:インクがはじかれており、拭き取り後は色残りが全くない、
B:汚染部の40%以上の面積でインクがはじかれており、拭き取り後は色残りがほとんどない、
C:汚染部の40%未満の面積でインクがはじかれており、拭き取り後も色残りが認められる、
D:インクがはじかれておらず、拭き取り後も色残りが認められる。
【0276】
【表8】
【0277】
【表9】
【0278】
【表10】
【0279】
【表11】
【0280】
【表12】
【0281】
【表13】
【0282】
【表14】
【0283】
【表15】
【0284】
(注4)「サイメル202」:商品名、オルネクスジャパン社製、メラミン樹脂、固形分80%、
(注5)「XR31-B1410」:商品名、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%、
(注6)「KR-500」:商品名、信越化学工業株式会社製、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%、
(注7)「KR-510」:商品名、信越化学工業株式会社製、アルコキシシリル基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%、
(注8)「KF-8010」:商品名、信越化学工業株式会社製、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%、
(注9)「Silmer NH Di8」:商品名、SILTECH社製、アミノ基含有オルガノポリシロキサン、固形分100%、
(注10)「BYK-333」:商品名、ビックケミー社製、表面調整剤、有効成分100%。
【0285】
以上、本発明の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。