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特開2023-157450管継手及び管継手に用いられるスリーブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157450
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】管継手及び管継手に用いられるスリーブ
(51)【国際特許分類】
   F16L 33/22 20060101AFI20231019BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20231019BHJP
   F16L 37/12 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F16L33/22
F16L21/00 B
F16L37/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067381
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 修司
(72)【発明者】
【氏名】清水 和生
【テーマコード(参考)】
3H017
3J106
【Fターム(参考)】
3H017HA03
3H017HA06
3H017HA15
3H017JA05
3J106AA06
3J106AB01
3J106BA02
3J106BB01
3J106BC04
3J106BD01
3J106BE21
3J106EA03
3J106EB02
3J106EC01
3J106EC06
3J106ED03
3J106EE11
3J106EF07
3J106EF09
3J106EF15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】管体の挿入をスムーズにしながら管体の挿入だけで確実に抜け不能に保持するのを可能としつつも、管体を抜くことも可能な管継手を提供する。
【解決手段】ニップルに設けられ、かつ可撓性を有する管体の内表面と対向して設けられる案内部と、前記案内部の外周面と対向して前記管体の挿入方向へ徐々に大径となるようなテーパー面を有する締め付け部材と、前記締め付け部材に沿って前記管体の挿入方向及び逆方向の管抜け方向へ往復動自在で、かつ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能なスリーブと、前記スリーブを前記テーパー面に沿って前記管抜け方向へ押圧する弾性部材と、を備え、前記スリーブは、前記管体の挿入方向と逆方向の前記管抜け方向へ前記締め付け部材よりも延出される延長部を有し、前記延長部は、挿入が完了した管体を抜く際に、前記管体の挿入方向へ前記スリーブを押圧操作して拡径させるための押圧部として機能する管継手。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニップルに設けられ、かつ可撓性を有する管体の内表面と対向して設けられる案内部と、
前記案内部の外周面と対向して前記管体の挿入方向へ徐々に大径となるように設けられるテーパー面を有する締め付け部材と、
前記締め付け部材に沿って前記管体の挿入方向及び逆方向の管抜け方向へ往復動自在で、かつ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブと、
前記スリーブを前記テーパー面に沿って前記管抜け方向へ押圧するように設けられる弾性部材と、を備え、
前記スリーブは、前記管体の挿入方向と逆方向の前記管抜け方向へ前記締め付け部材よりも延出される延長部を有し、
前記延長部は、挿入が完了した管体を抜く際に、前記管体の挿入方向へ前記スリーブを押圧操作して拡径させるための押圧部として機能することを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記延長部は、フランジを有しており、当該フランジが押圧部として機能することを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記スリーブは、管体の挿入方向と管抜け方向の両側が径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能なリバーシブル構造とされており、前記締め付け部材で覆われない側の変形可能部分が押圧部として機能することを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
前記スリーブは、締め付け部材の前記管体の挿入方向及び逆方向の管抜け方向のいづれの側からも組み付けが可能とすることを特徴とする請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記ニップルは、前記押圧操作がされた際に、前記弾性部材の受け部を前記管体の挿入方向へ収容しつつ退避させる逃げ部を有することを特徴とする請求項2、3又は4に記載の管継手。
【請求項6】
管継手における管体の抜け止め部材として用いられるスリーブであって、
前記スリーブは、接続完了状態において締め付け部材よりも管抜け方向へ延出される延長部を有し、
前記延長部は、フランジを有していることを特徴とするスリーブ。
【請求項7】
管継手における管体の抜け止め部材として用いられるスリーブであって、
前記スリーブは、管体の挿入方向と管抜け方向の両側が径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能なリバーシブル構造とされていることを特徴とするスリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば合成樹脂やゴムなどの材料で形成された可撓性を有する変形可能なホースやチューブなどの管体を差し込むだけで簡単に接続できる工具不要な管継手及び管継手に用いられるスリーブに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の管継手は、管体を差し込むだけで接続できる便利なものであるが、管体の挿入が一定の抵抗力を受けて円滑には行えないことがある。そのため、これらの抵抗力で作業者によってはパイプの挿入作業を途中で止めてしまう可能性があり、管体の挿入不足に起因して、管体の抜け事故や流体漏れが発生することがあった。そこで、このような事態を防止するために、作業者自身が管体の挿入不足状態を感じ取れる構造としたものが発案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-3980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の管継手は、作業者の経験などに依らずに、誰が管体の挿入作業を行っても規定位置まで挿入されていることが確実に把握可能とされ、管体の挿入不足を容易にかつ確実に防止することができるため、作業者や現場管理責任者が管体の配管作業を安心して行えるような構造とされている。
しかしながら、特許文献1の管継手は、管体を規定位置まで確実に挿入できる反面、一旦、挿入作業が完了してしまうと、管継手を破壊若しくは分解しなければ、管体を抜き取ることができないものであった。管体の設置現場では、設置した後に管体の長さが十分でないことが発覚して、適正な管体に取り換えなければならないような非常事態が生じることがあるし、このような事態が生じずとも、管体の抜け止め部材としてのスリーブは使用とともに経年劣化する消耗部品であり、交換が必要となるものであるにも関わらず、より耐用年数の長い継手部分迄をも破壊しなければならないのはコスト高となっていたし、継手が分解できる構造であったとしても相応の作業負担が生じることになる。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、管体の挿入をスムーズにしながら管体の挿入だけで確実に抜け不能に保持することを可能としつつも、管体を抜くことも可能とする管継手を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための管継手に関する本発明は、ニップルに設けられ、かつ可撓性を有する管体の内表面と対向して設けられる案内部と、前記案内部の外周面と対向して前記管体の挿入方向へ徐々に大径となるように設けられるテーパー面を有する締め付け部材と、前記締め付け部材に沿って前記管体の挿入方向及び逆方向の管抜け方向へ往復動自在で、かつ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブと、前記スリーブを前記テーパー面に沿って前記管抜け方向へ押圧するように設けられる弾性部材と、を備え、前記スリーブは、前記管体の挿入方向と逆方向の前記管抜け方向へ前記締め付け部材よりも延出される延長部を有し、前記延長部は、挿入が完了した管体を抜く際に、前記管体の挿入方向へ前記スリーブを押圧操作して拡径させるための押圧部として機能することを特徴とする。
また、管継手に用いられるスリーブに関する本発明は、管継手における管体の抜け止め部材として用いられるスリーブであって、前記スリーブは、接続完了状態においてナットよりも管抜け方向へ延出される延長部を有し、前記延長部は、フランジを有していることを特徴とする。
同じく、管継手に用いられるスリーブに関する本発明は、管継手における管体の抜け止め部材として用いられるスリーブであって、前記スリーブは、管体の挿入方向と管抜け方向の両側が径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能なリバーシブル構造とされていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す図であり、(a)が正面図であり、(b)が右斜視図であり、(c)が分解時の右斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続完了時であって、スリーブが縮径している様子を示し、(b)がスリーブが押し込まれることによって、スリーブが拡径している様子を示している。
図3】本発明の実施形態に係る管継手に用いられるスリーブであって、(a)が正面図であり、(b)が左斜視図であり、(c)が縦断正面図である。
図4】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続作業の途中の段階を示し、(c)が管体が管突き当り部まで押し込まれた接続完了の直前を示している。
図5】本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続状態および加圧時を示し、(b)が加圧の継続ないし大きくなった際の段階を示している。
図6】本発明の他の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続完了時であって、スリーブが縮径している様子を示し、(b)が管体の挿入されていない状態を示している。
図7】本発明の他の実施形態に係る管継手に用いられるスリーブであって、(a)が正面図であり、(b)が左斜視図であり、(c)が縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本発明の実施形態)
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る管継手Aは、図1図3に示すように、管体Bの内表面と対向して設けられる案内部14を有するニップル1と、案内部14の外周面と対向してその軸方向へ傾斜するように設けられるナット内傾斜面21(テーパー面)を有するナット2(締め付け部材)と、ナット2のナット内傾斜面21に沿って管体の挿入方向及び逆方向の管抜け方向へ往復動自在で且つ径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形可能に設けられるスリーブ3と、スリーブ3をナット内傾斜面21に沿って管抜け方向へ押圧するように設けられるスプリング4を、主要な構成要素として備えている。この他、スプリング4のバネ受けとなるリング5と、止水のためのOリング6も備えている。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す図であり、(a)が正面図であり、(b)が右斜視図であり、(c)が分解時の右斜視図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続完了時であって、スリーブが縮径している様子を示し、(b)がスリーブが押し込まれることによって、スリーブが拡径している様子を示している。
【0010】
ニップル1は、例えば真鍮などの金属や硬質合成樹脂などの剛性材料か、或いは例えばステンレスなどの変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工とすることで形成される。
図1(b)及び(c)に示すように、案内部14を有するニップル1に対して、ナット2の内周に設けられた雌ネジとニップル1の筒状部13の外周に設けられた雄ネジ(図2(a)も併せて参照されたい。)が螺合されることによって、ナット2をニップル1に対して回転させて接続するように構成している。ニップル1にはナット2を螺合させる際に用いられる六角二面幅などの工具係合部12が設けられている。ナット2をニップル1に対して接続する前に、案内部14に形成されている環状凹部15内にOリング6を嵌入装着して軸方向へ移動不能に保持すると共に、スプリング4とリング5をニップル1とナット2との間に配置するようにしてから、ナット2をニップル1に接続する。しかし、スリーブ3については、ニップル1とナット2を接続する前に組付けなくともよい。従来の管継手であれば、スリーブもニップルとナットの接続前に両者の間に配置して接続作業を行うことが迫られる、つまり、後からスリーブを取り付けることはできないのであるが、本発明では、ニップル1とナット2を接続した後であっても、スリーブ3を取り付けることが可能となっている。すなわち、従来のように、ニップル1とナット2の組み立て時にスリーブを取り付けることが可能である一方で、ニップル1とナット2を組み立てた後であっても、スリーブ3をナット2の開口部から押し付けるだけで、スリーブ3が縮径し、ナット2内へスリーブ3を収めることが可能である。
【0011】
案内部14とスリーブ3との間に形成される挿入空間に対して、管体Bの接続端部を挿入することにより、スリーブ3がスプリング4に抗して管体Bの挿入方向Nへ一旦は移動するものの、その後、スリーブ3が管挿入方向Nと逆方向である管抜け方向Uへ逆向きに移動して、管体Bの接続端部が案内部14とスリーブ3の間に挟み込まれ、そのまま引き抜き不能に接続保持される。図2(a)は、この様子を示している。そして、図2(b)は、本発明の最大の特徴であるところの、スリーブ3が有する押圧部31を押圧操作することによって、管体Bが接続された状態で、スリーブ3を拡径することができていることを示している。この状態であれば、容易に管体Bを引き抜くことができるのである。
なお、本実施形態においては、押圧部31は、フランジ形状として形成されているが、交換作業用治具を係合させることのできる係合部を設けるようにして、押圧する際に別体として用意した交換作業用治具を係合させて押圧させるようにしてもよく、重要なことは、スリーブ3が、ニップル1と逆側の管抜け方向Uへナット2よりも延出されていることである。
【0012】
案内部14は、ニップル1と一体的に形成されるものであり、例えば、真鍮などの金属や硬質合成樹脂などの剛性材料で、管体Bの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径を有する円筒状に形成するか、或いは、例えば、ステンレスなどの変形可能な剛性材料からなる板材をプレス加工やその他の成形加工とすることで、管体Bの内径と略同じか又はそれよりも若干小さな外径を有する肉厚が薄い円筒状に形成される。しかし、ニップル1と案内部14を別体で形成し、両者を組み付けるようにすることや、両者の材質を異ならせる、例えば、ニップル1は真鍮で形成し、案内部14は樹脂で形成することも可能である。
案内部14の外周面には、管体Bの内表面及びスリーブ3の内周面と対向して周方向へ延びる環状凹部15を形成し、環状凹部15内にOリング6を嵌入装着して軸方向へ移動不能に保持するとともに、Oリング6の外周端を案内部14の外周面から若干突出させて、管体Bの内表面に圧接させるようにしてある。
図示される例では、案内部14の外周面において、2つの環状凹部15及び2つのOリング6がそれぞれ所定間隔を空けて配置され、環状凹部15を除いた外周面全体が管挿入方向Nへ平滑な面に形成されている。
また、その他の例として図示しないが、環状凹部15内にOリング6を一組のみ配置したり、案内部14の軸方向へ三組以上の環状凹部15内にOリング6を所定間隔毎に配置したりすることも可能である。さらに、環状凹部15の配設位置と関係なく、案内部14の外周面を、全て平滑な面とするのでなく、管挿入方向Nへ環状突起と環状溝がそれぞれ交互に複数ずつ形成された竹の子状に形成することも可能である。
【0013】
案内部14の管挿入方向Nの奥側には段部である管突き当り部16が形成されており、管体Bを挿入する際に挿入完了を把握できるようにされている。管突き当り部16より、さらに管挿入方向Nの奥側には、スリーブ3を押し込む際に、リング5が退避できる空間としてのリング逃げ部17(逃げ部)が形成されている。
【0014】
ナット2は、透明又は着色された樹脂や金属製で、その軸方向一部がスリーブ3の外径よりも大きい内径を有する略円筒状に形成され、ニップル1に螺合されることによって、案内部14側に対してその軸方向へ移動不能に取り付けられている。
ナット2の内周面には、スリーブ3の締め付け手段として、管挿入方向Nに向けて徐々に大径となるとともに、管抜け方向Uへ向けて徐々に小径となるように傾斜するナット内傾斜面21(テーパー面)が形成されている。
従来の管継手のナットには、その内周面において管抜け方向Uの先端側に、スリーブが管抜け方向Uへ移動することを防止するために、スリーブと対向する規制部が形成されていた。そのため、ニップルとナットを接続した後に、スリーブを取り付けることはできないし、取り付けられたスリーブを、管継手を破壊ないし分解することなく取り外すこともできなかったのであるが、本発明の実施形態では、スリーブ3の取り付け及び取り外しが可能となっている。後述するスリーブ3の材質及び構造からすれば、図2(b)において、管体Bが存在しない状況で、スリーブ3が容易に取り付け及び取り外しが可能であることは容易に理解されよう。
【0015】
図3は、本発明の実施形態に係管継手に用いられるスリーブであって、(a)が正面図であり、(b)が左斜視図であり、(c)が縦断正面図である。
スリーブ3は、例えばポリアセタール樹脂やそれ以外の表面の滑り性と靭性、耐熱性に優れた合成樹脂などの弾性変形可能な材料で、径方向へ拡径及び縮径変形可能な略円筒状に形成され、その内径が、拡径時には管体Bの外径と略同じか又はそれよりも大きく、縮径時には管体Bの外径よりも小さくなるように設定している。
さらに、スリーブ3は、案内部14の外周面とナット2のナット内傾斜面21に沿って管挿入方向N及び管抜け方向Uへ往復動自在に支持されている。
スリーブ3の内周面には、周方向へ環状又は環状に近い状態で案内部14の外周面に向け突出形成されるスリーブ突起33が形成されている。
スリーブ突起33は、管体Bの挿入時には管体Bの接続端部における先端面と管挿入方向Nへ対向して突き当たるように配置されるとともに、管抜け方向Uへの移動に伴い接続端部の外表面に向けてその内端を管体Bの外径よりも小さく縮径変形させるように形成されている。
スリーブ突起33の個数は、管挿入方向Nへ複数のスリーブ突起33を配置することが好ましい。図2に示される例では、スリーブ3の内周面において、三つのスリーブ突起33がそれぞれ所定間隔を空けて一体成形されている。この三つのスリーブ突起33は、図2(a)に示される管体Bの接続完了状態において、管挿入方向Nの奥側のOリング6の上方に配置されるような位置関係とすることが好ましい。
【0016】
さらに、スリーブ3は、その外周面にナット2のナット内傾斜面21と対向して形成されるスリーブ傾斜面32と、スリーブ突起33及びスリーブ傾斜面32をスリーブ3の径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形させる弾性変形部を有している。
スリーブ傾斜面32は、スリーブ3の外周面に沿って周方向へ環状又は環状に近い状態で、ナット2のナット内傾斜面21と略平行となるように形成され、ナット内傾斜面21と非接触状態においては、スリーブ傾斜面32の最大径部位をナット内傾斜面21の最大径部位と同一径又は若干小径となるように寸法設定されつつも、接触状態においてはナット内傾斜面21が小径となっている部位によってスリーブ傾斜面32が縮径を余儀なくされるような配置関係とされている。すなわち、スリーブ傾斜面32がナット内傾斜面21に対し常時弾性的に圧接するように構成されている。
詳しく説明すると、スリーブ傾斜面32は、スリーブ突起33と管体Bの先端面との突き当たりに伴いナット内傾斜面21に沿って管挿入方向Nへ一旦移動した後、スプリング4により管抜け方向Uへ逆向きに移動するように配置されている。
【0017】
弾性変形部は、スリーブ3の軸方向一部にすり割りや凹みなどを切欠形成して、径方向へ弾性変形し易く構成され、スリーブ傾斜面32がナット内傾斜面21に接触しながら管挿入方向Nへ向けて移動することにより、スリーブ傾斜面32をスムーズに拡径変形させるとともに、スリーブ傾斜面32がナット内傾斜面21に接触しながら管抜け方向Uへ移動することにより、スリーブ傾斜面32をスムーズに縮径変形させるように構成されている。
図示される例では、スリーブ3の軸方向一部、詳しくは軸方向中間位置から管挿入方向Nの奥側端部に亘って、スリーブ傾斜面32が膨出形成されるとともに、スリーブ傾斜面32よりも軸方向へ直線状に長く延びるすり割り(スリット)を周方向へ複数切欠形成している。
【0018】
そして、三つのスリーブ突起33は、管挿入方向Nの奥側においては、図示上の鉛直方向に突出される形状であるのに対して、管挿入方向Nの手前側では、45度のテーパー面の形状とされている。
それにより、管体Bの挿入開始時は、管体Bの先端面の外周縁がスリーブ突起33の45度テーパー面と接触して管挿入方向Nへスリーブ3が押し込まれるものの、スリーブ傾斜面32とナット内傾斜面21の接触が解かれて、スリーブ突起33の拡径変形に伴って管体Bの先端面の外周縁がスリーブ突起33を押し上げながら通過し、管体Bが規定位置まで押し込まれた後、スプリング4により管抜け方向Uへ逆向きにスリーブ3が移動したならば、スリーブ突起33の縮径変形に伴ってその内端が管体Bの外表面に確実に食い込むように形成されている。
【0019】
スプリング4は、例えばコイルバネやスプリングなどの少なくとも一方向へ弾性的に伸縮変形可能に形成される弾性体であり、管挿入方向N及び管抜け方向Uへ伸縮変形可能に配置され、常時スリーブ3を管抜け方向Uへ向けて弾性的に押圧している。
図示される例では、ニップル1の筒状部13と案内部14とで形成される空間の管挿入方向Nの奥側のバネ突き当り部と、スリーブ3において管挿入方向Nの手前側に配置されたバネ受けであるリング5との間に、スプリング4としてコイルバネを介装することにより、コイルバネの押圧力がスリーブ3に対し周方向へ均一に作用するようにしている。リング5はバネ受けとして機能すると共に、管挿入方向へ一定の厚みを有し、かつ、ナット2の内面に隙間なく当接しているため、ニップル1と完全に平行状態を保って往復動する。このため、スリーブ3もニップル1と完全に平行状態を保って往復動することになるため、スリーブ3が傾くようなことはない。
【0020】
一方、管体Bは、例えば塩化ビニルなどの合成樹脂やシリコーンゴムやその他のゴムなどの可撓性を有する材料で成形されるものであって、例えば、軟質材料で成形されるホースやチューブなどであり、その内表面と外表面が平坦なものが好ましい。
管体Bの具体例として、図示される例では単層構造のホースを用いている。また、その他の例として図示しないが、その透明又は不透明な外層と内層との間に中間層として、複数本か又は単数本の合成樹脂製ブレード(補強糸)が螺旋状に埋設される積層ホース(ブレードホース)や、中間層として合成樹脂製又は金属製の断面矩形などの帯状補強材と断面円形などの線状補強材を螺旋状に巻き付けて一体化した螺旋補強ホースや、金属製線材や硬質合成樹脂製線材を螺旋状に埋設した螺旋補強ホースなどを用いることも可能である。
【0021】
さらに、ニップル1には、他の機器(図示しない)や他の管体(図示しない)などが接続される接続部11を設け、ニップル1を介してそれに接続される他の機器や他の管体などと、案内部14の外周面に接続される管体Bを連結させることになる。なお、接続部11の代わりに、案内部14を両端に設けることで、中間継手として機能させるようにすることも可能である。
【0022】
(管体の接続工程)
本発明の実施形態に係る管継手Aの接続工程について説明する。図4は、本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続開始時を示し、(b)が管体の接続作業の途中の段階を示し、(c)が管体が管突き当り部まで押し込まれた接続完了の直前を示している。
図4(a)に示されるように、案内部14とスリーブ3との間に形成される挿入空間に向け、管体Bの接続端部を差し込むことで、先ず、管体Bの先端面がスリーブ3におけるスリーブ突起33の45度のテーパー面に突き当たり、この突き当たり状態を維持しながら管体Bを押し込むことで、スリーブ3のスリーブ傾斜面32がナット2のナット内傾斜面21に沿って摺動し、スリーブ突起33を含むスリーブ3全体がスプリング4の押圧力に抗して管挿入方向Nへ移動する。この際、作業がやり難いと感じた際には、スリーブ3の押圧部31を使って、作業者がスリーブ3の押し込みをアシストしてもよい。特に、強い抵抗を感じるときには、手でスリーブ3を押し込むようにした方がよい。その理由は、スリーブ突起33がOリング6の上部にある状態で管体Bを挿入すると、スリーブ突起33の45度テーパー面によって、管体Bがスリーブ突起33の内側に潜り込んだ際に管体Bの端部とOリング6が強く接触し、Oリング6がめくれ、流体漏れの原因となるからである。
【0023】
このような背景もあり、本発明の実施形態においては、スリーブ突起33のテーパー面は45度に設定されている。スリーブ突起33のテーパー角度が45度より大きくなると、管体Bの端部とスリーブ突起33のテーパー面との接触が強くなり、管体Bがスリーブ突起33の内側に潜りにくく、スリーブ3が拡径しないため、管体Bの挿入が困難になる。スリーブ突起33のテーパー角度が45度より小さくなると、管体Bの端部がスリーブ突起33のテーパー面の接触面が増えることで、スリーブ突起33の内側に押さえつけられる力が強くなるため、管体Bの端部がOリング6と強く接触し、Oリング6がめくれやすくなる。スリーブ突起33の45度テーパー面は、管体Bによるスリーブ3の押し込みと、管体Bの端部がスリーブ突起33のテーパー面を利用してスリーブ突起33の内側に潜りこんで、スリーブ3を径方向に拡径させる際にバランスが良い角度として設定されているのである。ただし、管体Bの材質やOリング6の強さ如何によっては、テーパー角度が異なるようにされても実施不能というものではなく、45度というのは、飽くまで、本実施形態についての設定である。
【0024】
Oリング6を捲りあげることなく、管体Bが挿入されていくと、図4(b)に示されるように、スリーブ3のスリーブ傾斜面32がナット内傾斜面21に沿って管挿入方向Nへ押動されるため、自身が持つ弾性によりスリーブ3が拡径して、スリーブ傾斜面32とスリーブ突起33も徐々に拡径変形する。その後、スリーブ突起33の拡径変形に伴って、その先端内径が管体Bの先端外径よりも大きくなると、スリーブ突起33の45度テーパー面から管体Bの先端面が外れる。すると、スプリング4のバネ弾性によって、スリーブ3が管体Bの挿入方向Nと逆方向にスリーブ3を押し戻しているため、管体Bの端部がスリーブ突起33の45度テーパー面を滑って、管体Bがスリーブ3の突起の内側を通り、図4(c)に示されるように、ニップル1の管突き当り部16に管体Bが到達されるまで挿入される。
一方、管体Bの挿入が完了して、管挿入方向Nへの摩擦力が解かれると、スリーブ3は、スプリング4の弾性により管抜け方向Uへ勢い良く押圧され、それに伴いスリーブ3が一気に縮径変形してスリーブ突起33の内端を管体Bの外表面に食い込ませ、管体Bが案内部14の外周面との間に管抜け方向Uへ移動不能に挟持される(図2(a)参照)。
このように、管体Bを挿入するという作業だけで、工具が不要でワンタッチかつスムーズに、かつ、確実に抜け不能な接続を完了させることができる。
【0025】
(管体の取り外し工程)
次に、本発明の実施形態に係る管継手Aの取り外し工程について説明する。従来の管継手は、スリーブがナット内に完全に収納されてしまっているため、これを管挿入方向Nへ押し込むことはできない。しかし、本発明の実施形態に係る管継手Aでは、スリーブ3がニップル1と逆側の管抜け方向Uへナット2よりも延出される延長部を有し、かつ、延長部はフランジを有しており、これが押圧部31として機能するため、管体Bの接続が完了している状態であっても、スリーブ3を管挿入方向Nへ押し込むことができる。図2(b)は、スリーブ3が押し込まれた状態を示している。リング5は、ニップル1のリング逃げ部17に入り込めるようにされているため、よりスリーブ3を管挿入方向Nの奥側に押し込めるようになっている。スリーブ3が拡径されており、スリーブ突起33は管体Bには食い込んでいない。スリーブ3の押し込みを継続させたままで、管体Bを引けば、スリーブ突起33による抵抗が然程かかることはないので、管体Bを容易に引き抜くことができる。
【0026】
(止水構造について)
本発明の実施形態に係る管継手Aの止水構造について説明する。図5は、本発明の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続状態および加圧時を示し、(b)が加圧が継続ないし大きくなった際の段階を示している。
本発明の実施形態に係る管継手Aでは、止水構造についても改良されている。特許文献1に示される管継手においては、スリーブが傾きながら移動する事態が生じ、管体とOリングを適正に圧縮できないことがあり、止水不足となることがあった。本発明の実施形態に係る管継手Aでは、そのような事態が生じないようにされている。図5を用いて説明する。
管体Bの挿入後は、図5(a)に示されるように、スリーブ突起33が管挿入方向Nの奥側に位置するOリング6の上部に配置される。この時、スリーブ3は縮径されているため、スリーブ突起33が管体Bに食込み管体Bの抜け止めを行うと同時に管体BとOリング6を圧縮して、止水を行う。スプリング4がスリーブ3を押す際に、ナット2の内部でスリーブ3が傾く現象を抑えながら軸方向に移動できるよう、ナット2の内面に対して、リング5の外周面でガイドさせる。すなわち、ナット2の内面とリング5の外周面の平行面を利用して移動を安定させる。スリーブ突起33が管挿入方向Nの奥側に位置するOリング6の上部に配置された際に、スリーブ突起33とスリーブ突起33の間にOリング6があるような位置関係とすることで、万が一、スリーブ3に傾きなどが生じた場合でも管体BとOリング6を圧縮して、止水することができる。スリーブ突起33とスリーブ突起33の間にOリング6がない位置関係の場合は、スリーブ3に傾きが生じた際に管体BとOリング6を適正に圧縮できないことがあり、止水不足となり流体漏れの原因になる。管体B内に圧力が掛かると、管体Bが継手から引きぬかれようとする力がかかり、スプリング4のバネの力と合わせて、管体Bとスリーブ3が同時に管抜け方向Uへ移動する。スリーブ突起33が管体Bに食込んでいるため管体Bとスリーブ3が一体となって移動するのである。この時、ナット内傾斜面21とスリーブ傾斜面32の接触によって、更にスリーブ3が縮径し、スリーブ突起33が管体Bの食込みが強くなることによって、管体Bの抜け止めを確実に行うと同時に管体BとOリング6の圧縮力が上がり、止水を行う。比較的低い圧力では、管挿入方向Nの奥側のOリング6で止水されるが(図5(a)参照)、圧力が高くなるにつれて、管体Bが移動し、スリーブ3が縮径されると同時に管挿入方向Nの手前側のOリング6を利用して止水を行う(図5(b)参照)。スリーブ突起33の数やOリング6の数、Oリング6の弾性体の面積を増やすことも可能であるが、管体Bに圧力がかかった際に管体BはOリング6の上部を移動する必要があるところ、管体BとOリング6の摩擦抵抗、スリーブ傾斜面32とナット内傾斜面21の摩擦抵抗が増えるとスムーズに管体Bが移動せず、スリーブ3も縮径しないため、止水しにくくなることを考慮して、Oリング6の数や面積を設定する必要がある。
【0027】
(他の実施形態)
図6は、本発明の他の実施形態に係る管継手の全体構成を示す縦断正面図であり、(a)が管体の接続完了時であって、スリーブが縮径している様子を示し、(b)が管体の挿入されていない状態を示している。また、図7は、本発明の他の実施形態に係る管継手に用いられるスリーブであって、(a)が正面図であり、(b)が左斜視図であり、(c)が縦断正面図である。
ニップル1、ナット2、及びその構成要素、並びに、スプリング4、リング5、Oリング6の構成は、第1の実施形態と全く同じであり、スリーブ3’の構成のみが、第1の実施形態と異なっている。すなわち、スリーブ3’は、中間部は円筒で、この両端にスリーブ3’の径方向へ弾性的に拡径及び縮径変形させる弾性変形部が設けられている。ただし、スリーブ3’は、ニップル1と逆側の管抜け方向Uへナット2よりも延出されている点では、スリーブ3と共通しており、この延出された部分は通常状態で拡径されているため、この部分を押圧部31’として用いることができるのである。
そして、このようなスリーブ3’は、ナット2の何れの側からも組み付けが可能であるため、生産性を向上させることができる。
さらに、スリーブ交換性についても向上させることができる。先述したように、スリーブは使用とともに経年劣化する消耗部品であり、交換が必要となるのであるが、交換が必要となった際には、一旦、スリーブ3’を外して、逆向きにしてから、再度、ナット2に差し込めば、交換と同じ効果が得られるのである。リバーシブル構造には、このような有利な面がある。
【0028】
以上、本発明の実施形態に係る管継手について、図面を参照して詳述し、その構造について説明してきたが、具体的な構成は、これらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、締め付け部材は、螺合によりニップルに取り付けられるナットにより形成したが、ニップルに対して締め付け部材を着脱自在に連結したり、螺合せずに溶着などで一体的に固定したりするなどといったように変更することも可能である。本発明においては、管継手が組付けられた状態でスリーブを抜き差しできるため、ニップルと締め付け部材が溶着されていても不都合はないのである。
【符号の説明】
【0029】
1 ニップル
11 接続部
12 工具係合部
13 筒状部
14 案内部
15 環状凹部
16 管突き当り部
17 リング逃げ部(逃げ部)
2 ナット(締め付け部材)
21 ナット内傾斜面(テーパー面)
3 スリーブ
31 押圧部
32 スリーブ傾斜面
33 スリーブ突起
4 スプリング
5 リング
6 Oリング
3’ スリーブ
31’ 押圧部
32’ スリーブ傾斜面
33’ スリーブ突起
N 管体の挿入方向(管挿入方向)
U 管体の挿入方向と逆方向(管抜け方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7