IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図1
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図2
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図3
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図4
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図5
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図6
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図7
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図8
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図9
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図10
  • 特開-採血管ホルダ及びその製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157452
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】採血管ホルダ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/154 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
A61B5/154 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067383
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大木 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】小野 和也
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 美佑
(72)【発明者】
【氏名】実川 聡
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038TA01
4C038UD10
(57)【要約】
【課題】採血管ホルダにおいて、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題を生じ難くし、ハブとホルダ本体との安定的な固定を実現する。
【解決手段】採血管ホルダ10は、筒状の樹脂製ホルダ本体12と、採血針が固定され、ホルダ本体12の内側に固定される樹脂製ハブ40とを含み、ホルダ本体12に採血管が着脱可能に装着される。ハブ40は、外周面に雄ネジ部を有する。ホルダ本体12は、採血管の装着側とは反対側の端部に、雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有する。ハブ40とホルダ本体12は、雄ネジ部に雌ネジ部が螺合された状態で、互いの樹脂が溶融した溶融部を有する。ホルダ本体12は、外筒と、外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有し、溶融部は、内筒とハブ40とで、内筒を介してリブと対向する位置の内筒の内周に形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の樹脂製ホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定される樹脂製ハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管が着脱可能に装着される採血管ホルダであって、
前記ハブは、外周面に雄ネジ部を有し、
前記ホルダ本体は、前記採血管の装着側とは反対側の端部に、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有し、
前記ハブと前記ホルダ本体は、前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺合された状態で、互いの樹脂が溶融した溶融部を有する、
採血管ホルダ。
【請求項2】
請求項1に記載の採血管ホルダにおいて、
前記溶融部は、前記ハブの外周面における周方向及び軸方向の少なくとも一方における一部で、前記ハブと前記ホルダ本体とを溶着しているポイント溶着である、
採血管ホルダ。
【請求項3】
請求項2に記載の採血管ホルダにおいて、
前記ポイント溶着は、前記ハブと前記ホルダ本体とを、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部のネジ結合部で溶着している、
採血管ホルダ。
【請求項4】
筒状のホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定されるハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管が着脱可能に装着される採血管ホルダであって、
前記ホルダ本体は、外筒と、前記外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有し、
前記内筒の内側に前記ハブが配置され、前記内筒と前記ハブとは、前記内筒を介して前記リブと対向する位置の前記内筒の内周で、互いの樹脂が溶融した溶融部を有する、
採血管ホルダ。
【請求項5】
請求項4に記載の採血管ホルダにおいて、
前記ハブは、外周面に雄ネジ部を有し、
前記ホルダ本体は、前記採血管の装着側とは反対側の端部の内周面に、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有し、
前記雌ネジ部に前記雄ネジ部が螺合されている、
採血管ホルダ。
【請求項6】
請求項5に記載の採血管ホルダにおいて、
前記溶融部は、前記ハブと前記ホルダ本体とを、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部のネジ結合部で溶着している、
採血管ホルダ。
【請求項7】
請求項1から請求項3、請求項5、請求項6のいずれか1項に記載の採血管ホルダにおいて、
前記溶融部は、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部のネジ結合部の軸方向中央位置か、前記軸方向中央位置より、前記ホルダ本体の前記採血管の装着側で、前記ハブと前記ホルダ本体とを溶着している、
採血管ホルダ。
【請求項8】
筒状のホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定されるハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管が着脱可能に装着される採血管ホルダの製造方法であって、
前記ホルダ本体は、外筒と、前記外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有し、
前記内筒の内側に前記ハブを配置し、前記外筒の外周面において、内側に前記リブが位置する部分に超音波ホーンを当てて、前記ハブと前記ホルダ本体とを超音波溶着によって溶着する、
採血管ホルダの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の採血管ホルダの製造方法において、
前記ハブは、軸方向の一部に径方向外側に突出するフランジを有し、
前記ホルダ本体に前記ハブを前記超音波溶着によって固定する前に、前記ホルダ本体に前記フランジの側面を接触させることにより、前記ホルダ本体に対して前記ハブを軸方向に位置決めする、
採血管ホルダの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血に用いられる採血管を保持するための採血管ホルダ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患者から採血を行う場合に、採血管に血液を採取しており、その際、一般的に、採血管を保持する採血管ホルダが用いられる。
【0003】
特許文献1には、筒状の樹脂製ホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定される樹脂製ハブとを備え、ホルダ本体に採血管が着脱可能に装着される採血管ホルダが開示されている。この採血管ホルダでは、ハブとホルダ本体とをそれぞれ熱溶着樹脂により形成し、超音波シール等によって熱溶着(超音波溶着)している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-342100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
採血管ホルダは採血針とホルダ本体とがネジにより固定されているものがあるが、輸送中等に生じる振動や外圧によりネジが変形して固定が外れてしまう現象が確認されており、別の固定技術が検討されている。別の固定技術として特許文献1のような溶着という手段がある。しかしながら、溶着という技術は互いの樹脂が溶け合うため、ハブ及びホルダ本体とを安定的に固定させることが難しく、溶着のブレにより、ハブが微小に傾き的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じうる。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決できる採血管ホルダ及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様である採血管ホルダは、筒状の樹脂製ホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定される樹脂製ハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管を着脱可能に装着するための採血管ホルダであって、前記ハブは、外周面に雄ネジ部を有し、前記ホルダ本体は、前記採血管の装着側とは反対側の端部に、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有し、前記ハブと前記ホルダ本体は、前記雄ネジ部に前記雌ネジ部が螺合された状態で、互いの樹脂が溶融した溶融部を有する、採血管ホルダである。
【0008】
上記構成によれば、ネジ結合部によりハブとホルダ本体とが適切な位置に位置決めされた上で、溶融部によりハブとホルダ本体とが固定される。このため、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難く、ハブとホルダ本体との安定的な固定を実現できる。
【0009】
本発明の一態様である採血管ホルダにおいて、前記溶融部は、前記ハブの外周面における周方向及び軸方向の少なくとも一方における一部で、前記ハブと前記ホルダ本体とを溶着しているポイント溶着である構成としてもよい。
【0010】
上記構成によれば、溶着部をポイントとすることで、溶着時に過剰に溶けて刃先が傾いてしまう事態が生じにくく、安定的にハブ及びホルダ本体を固定することができる。
【0011】
上記構成において、前記ポイント溶着は、前記ハブと前記ホルダ本体とを、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部とのネジ結合部で溶着している構成としてもよい。
【0012】
上記構成によれば、雄ネジ部と雌ネジ部との変形によって螺合が緩むことをより確実に防止しやすくなる。これにより、ホルダ本体とハブのさらなる結合強度の向上を図れる。また、溶着作業を行う際に、螺合でハブとホルダ本体とを仮固定しやすくなるので、ハブとホルダ本体との結合作業の作業性向上を図れる。
【0013】
本発明の一態様である採血管ホルダは、筒状のホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定されるハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管を着脱可能に装着するための採血管ホルダであって、前記ホルダ本体は、外筒と、前記外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有し、前記内筒の内側に前記ハブが配置され、前記内筒と前記ハブとは、前記内筒を介して前記リブと対向する位置の前記内筒の内周で、互いの樹脂が溶融した溶融部を有する、採血管ホルダである。
【0014】
上記構成によれば、外筒があることで、内筒やハブに外圧が加わり難くすることができ、輸送中におけるハブの脱離現象を抑止することができる。しかも、外筒と内筒との間にリブが設けられ、ハブと内筒とは所定の位置で溶着固定されており、ホルダ本体とハブとを安定的に固定させることができる。これにより、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難くなる。
【0015】
上記構成において、前記ハブは、外周面に雄ネジ部を有し、前記ホルダ本体は、前記採血管の装着側とは反対側の端部の内周面に、前記雄ネジ部と螺合可能な雌ネジ部を有し、前記雌ネジ部に前記雄ネジ部が螺合されている構成としてもよい。
【0016】
上記構成によれば、ネジ結合部によりハブとホルダ本体とが適切な位置に位置決めされた上で、溶融部によりハブとホルダ本体とが固定される。このため、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題がより生じ難く、ハブとホルダ本体とのより安定的な固定を実現できる。
【0017】
上記構成において、前記溶融部は、前記ハブと前記ホルダ本体とを、前記雄ネジ部と前記雌ネジ部のネジ結合部で溶着している構成としてもよい。
【0018】
上記構成によれば、雄ネジ部と雌ネジ部との変形によって螺合が緩むことをより確実に防止しやすくなる。これにより、ホルダ本体とハブのさらなる結合強度の向上を図れる。また、溶着作業を行う際に、螺合でハブとホルダ本体とを仮固定しやすくなるので、ハブとホルダ本体との結合作業の作業性向上を図れる。
【0019】
上記構成において、前記溶融部は、前記雌ネジ部と前記雄ネジ部のネジ結合部の軸方向中央位置か、前記軸方向中央位置より、前記ホルダ本体の前記採血管の装着側で、前記ハブと前記ホルダ本体とを溶着している構成としてもよい。
【0020】
上記構成によれば、ホルダ本体の採血管の装着側とは反対側の端部に、採血針保護用のコンテナを装着可能とする場合でも、そのコンテナが溶着の作業時にホルダ本体に熱溶着されることを防止しやすくなる。
【0021】
本発明の一態様である採血管ホルダの製造方法は、筒状のホルダ本体と、採血針が固定され、前記ホルダ本体の内側に固定されるハブとを備え、前記ホルダ本体に採血管を着脱可能に装着するための採血管ホルダの製造方法であって、前記ホルダ本体は、外筒と、前記外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有し、前記内筒の内側に前記ハブを配置し、前記外筒の外周面において、内側に前記リブが位置する部分に超音波ホーンを当てて、前記ハブと前記ホルダ本体とを超音波溶着によって溶着する、採血管ホルダの製造方法である。
【0022】
上記構成によれば、外筒があることで、内筒やハブに外圧が加わり難くすることができ、輸送中におけるハブの脱離現象を抑止することができる。しかも、外筒と内筒との間にリブが設けられ、ハブと内筒とは所定の位置で溶着固定されており、ホルダ本体とハブとを安定的に固定させることができる。これにより、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難くなる。
【0023】
上記構成において、前記ハブは、軸方向の一部に径方向外側に突出するフランジを有し、前記ホルダ本体に前記ハブを前記溶着によって固定する前に、前記ホルダ本体に前記フランジの側面を接触させることにより、前記ホルダ本体に対して前記ハブを軸方向に位置決めする構成としてもよい。
【0024】
上記構成によれば、溶着作業を行う前に、ホルダ本体に対してハブを容易に位置決めできるので、ホルダ本体とハブとの溶着作業を行いやすい。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る採血管ホルダ及び採血管ホルダの製造方法によれば、ハブが微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難く、ハブとホルダ本体との安定的な固定を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】実施形態の採血管ホルダの採血針固定前の状態を示す断面図である。
図2図1のA部拡大図である。
図3図1において、採血管ホルダにコンテナを装着した状態を示す図である。
図4図1の採血管ホルダを構成するホルダ本体の斜視図である。
図5図4のホルダ本体の先端側から見た拡大斜視図である。
図6図5のB矢視図である。
図7図4のホルダ本体の先端側から見た図である。
図8図7のC部拡大図である。
図9図5のD-D断面を示す図である。
図10図5のE-E断面で切断した透視斜視図である。
図11図7のF-F断面図(a)と、(a)のG部拡大図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る採血管ホルダ及びその製造方法の実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0028】
図1は実施形態の採血管ホルダ10の採血針固定前の状態を示す断面図である。図2は、図1のA部拡大図である。図3は、図1において、採血管ホルダ10にコンテナ100を装着した状態を示す図である。
【0029】
図1図3に示すように、採血管ホルダ10は、筒状の樹脂製のホルダ本体12と、ホルダ本体12の先端部(図1図3の左端部)の内側に固定された樹脂製のハブ40とを含む。採血管ホルダ10は、ホルダ本体12の基端側(図1図3の右端側)から内側に採血管102(図4)を着脱可能に装着することにより、採血管102を保持するために用いられる。ホルダ本体12及びハブ40は、いずれも熱溶着に適した熱可塑性樹脂等の樹脂により形成される。
【0030】
ハブ40は、中心部に採血針80(図3)が貫通して固定され、その採血針80の先端側及び基端側の両側がハブ40の両端から突出する。図3では、ハブ40の基端側から突出する採血針の図示は省略する。採血針80の先端側は、ホルダ本体12の先端からも突出する。採血管ホルダ10は、使用時に内側に採血管102が装着される。採血時には、医師、看護師等により患者の皮膚に採血針80の先端が穿刺され、採血針80内に血液を流入させる。次いで、ホルダ本体12の基端側から内側に採血管102を挿入し、採血針80の基端側の針先が採血管102のゴム栓に当接し、さらに採血管102を押し込むことにより、針先がゴム栓を貫通して採血管102内に血液が採取される。また、使用済みの採血針80は、図3に示すように、ホルダ本体12の先端部の内側に装着したコンテナ100により覆われて保護される。
【0031】
採血管ホルダ10の構成要素を詳しく説明する。図4は、採血管ホルダ10を構成するホルダ本体12の斜視図である。図5は、ホルダ本体12の先端側から見た拡大斜視図である。図6は、図5のB矢視図である。図7は、図4のホルダ本体12の先端側から見た図である。
【0032】
ホルダ本体12は、本体筒部13と、本体筒部13の先端側に連結されハブ40が内側に固定可能であり、本体筒部13より小径で略円筒状の保持部16とを含んでいる。本体筒部13は、基端側に向かって拡径している。保持部16は、円筒状の外筒17と、外筒17の内側において、軸方向中間部から基端部にかけて設けられた円筒状の内筒19とを有し、内筒19の内周面の軸方向中央付近に、略半円状に分かれた2条ネジである雌ネジ部20が形成される。
【0033】
本体筒部13の外周面の周方向複数位置には、補強のための縦リブ14が長手方向に延びるように形成される。本体筒部13の基端部外周面からはフランジ15が突出形成される。フランジ15は、本体筒部13の軸方向に対し直交する平面に沿った直線状の第1方向に突出方向が長くなっており、その平面に沿って第1方向に対し直交する直線状の第2方向に突出方向が短くなっている。
【0034】
保持部16の形状をさらに詳しく説明する。図8は、図7のC部拡大図である。図9は、図5のD-D断面を示す図である。図10は、図5のE-E断面で切断した透視斜視図である。図11(a)は、図7のF-F断面図であり、図11(b)は、図11(a)のG部拡大図である。
【0035】
図8に示すように、ホルダ本体12の保持部16において、内筒19は、外筒17において、内側に周方向の一部、より具体的には、略90度ずつ位相が異なる4つの位置に設けられたリブ23,24を介して結合されている。内筒19は、ハブと螺合するネジを有しており、安定的にハブと接続可能としている。外筒17は内筒19を囲むように構成されており、ハブと内筒に使用者の指等の外圧が加わることを防止する。4つのリブ23,24は、内筒19と外筒17とをつなぐように形成されており、第1方向に対向する2つの第1リブ23と、第1方向に対し直交する第2方向に対向する2つの第2リブ24とを有する。第1方向に対向する2つの第1リブ23は外筒17に当てられた超音波ホーンの振動を内筒19に効率的に伝達し、内筒19とハブの超音波溶着を補助する機能を有する。第2方向に対向する2つの第2リブ24はハブを内筒19に挿入した際に内筒が変形することを抑え、超音波溶着時の安定性を向上させる機能を有する。2つの第1リブ23のうち、少なくとも後述の溶融部50(図2)が形成される側(図8の上側)の一方の第1リブ23の径方向内側端の周方向幅d1は、2つの第2リブ24のそれぞれの径方向内側端の周方向幅d2より長い。これにより、ハブと内筒19とを大きく接合させて、溶着を確実にすることができる。また、ハブ及び内筒に設けられたネジは螺合時において刃面が第二の方向向くように設計されており、穿刺時の針と皮膚との角度が大きくならないようにハブは内筒に固定される。2つの第2リブ24は穿刺の際に針を支持するように作用するため、穿刺時に針が撓みにくくされている。なお、超音波ホーンの振動を内筒19に効率的に伝達するためのリブは第1方向に限るものではなく、第2方向であっても別の方向であってもよい。リブを介することで、内筒19の内側に配置されたハブ40(図1図2)と、内筒19を超音波振動で溶着する場合に、保持部16からハブ40に超音波振動をより伝えやすくなるので、内筒19とハブ40とに所定の位置の溶融部50を形成しやすくなる。
【0036】
また、4つのリブ23,24同士の間に形成される略円弧形の孔25において、各第1リブ23の両端となる孔の一方側端縁は、第1リブ23の内筒19からの突出方向である第1方向に対し直交する第2方向に略沿っている。これにより、各第1リブ23は、ホルダ本体12の軸方向に見た場合に、径方向外側で広がった略T字形となっている。なお、各第1リブ23は、径方向内側端の周方向長さを径方向外側端の周方向長さと略同じとしてもよい。
【0037】
2つの第1リブ23のうち、一方の第1リブが超音波溶着によりハブ40と溶着されている。このため、ホルダ本体12とハブ40とは分離不可能に固定されている。2つの第1リブ23のうち、他方(図8の下側)の第1リブ23も一方の第1リブと同様に、周方向幅が、2つの第2リブの周方向幅より長くなっているが、これは溶着作業を行うときに、いずれの第1リブが溶着側となってもよいようにするためである。また、一方の第1リブとハブ40とを超音波で溶着する際、他方の第1リブでハブ40を支持しやすくなり、超音波溶着を安定的に行うことができる。なお、本実施形態では一方の第1リブとハブ40のみを溶着しているが、2つの第1リブ23の両方をハブ40に溶着してもよい。
【0038】
図2に示すように、ハブ40は、多角柱状の先端部41と、外周面に雄ネジ部43が形成された中間軸部42と、中間軸部42の基端側端面に突出形成された小径の基端軸部44と、先端部41の基端に形成された外向きのフランジ41aとを有し、全体が柱状に形成される。ハブ40の中心部には、前記の採血針80(図3)が貫通して固定される。
【0039】
そして、中間軸部42がホルダ本体12の内筒19内側に配置され、フランジ41aが内筒19の端面に位置決めのために突き当てられ、中間軸部42の雄ネジ部43が内筒19の雌ネジ部20に螺合する。この状態で、ホルダ本体12とハブ40とは、内筒19の内周部とハブ40の外周部とが互いの樹脂が溶融した溶融部50を有する。溶融部50は、図8に点Pで示す、ホルダ本体12の周方向について、内筒19からハブ40に超音波振動が伝達されやすい部分である、内筒19の内周の一方の第1リブ23の周方向中央の位相と合致する部分であって、図2に示すように、ハブ40の軸方向について、雄ネジ部43及び雌ネジ部20の接触部に形成される。
【0040】
また、溶融部50は、雌ネジ部20と雄ネジ部43とのネジ結合部52(図1~3)の軸方向中央位置で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着している。雄ネジ部と雌ネジ部との変形によって螺合が緩むことをより確実に防止しやすくなる。これにより、ホルダ本体とハブのさらなる結合強度の向上を図れる。また、溶着作業を行う際に、螺合でハブとホルダ本体とを仮固定しやすくなるので、ハブとホルダ本体との結合作業の作業性向上を図れる。図2で矢印L1は、ハブ40及びホルダ本体12の軸方向におけるネジ結合部52の形成範囲を示している。これにより、溶融部50は、ハブ40の外周面における周方向及び軸方向の両方における一部である点状部分で、ハブ40とホルダ本体12とが溶着されるポイント溶着となっている。ポイント溶着とされることで、過剰に樹脂が溶融して針がハブ及び針の位置に影響を与えてしまう事態を低減している。溶融部50は、内筒19とハブ40とで、内筒19を介してリブ23と対向する位置の内筒19の内周で、互いの樹脂が溶融して形成される。
【0041】
なお、図2では、溶融部50が、ネジ結合部52の軸方向中央位置で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着しているが、溶融部は、この軸方向中央位置より、ホルダ本体12の採血管の装着側(図2の右側)で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着してもよい。
【0042】
また、溶融部50は、図2で示す位置だけに形成されるものに限定せず、例えば、図8の点Pの近傍であり、ネジ結合部52の軸方向中央位置の近傍であって、雄ネジ部43及び雌ネジ部20が接触する、ハブ40及びホルダ本体12の周方向に延びた部分に形成されてもよい。
【0043】
なお、本例では、ハブ40にフランジ41aが形成されているが、フランジ41aはハブ40のホルダ本体12に対する位置決めを図るものである。このため、他の手段、例えばネジ結合によりハブ40のホルダ本体12に対する軸方向の位置決めを図れる場合には、フランジは省略されてもよい。
【0044】
また、ホルダ本体は、外筒と、外筒の内側に周方向の一部に設けられたリブを介して結合された内筒とを有する構成であればよく、溶融部50の形成側とは反対側の他方の第1リブ23や、各第2リブ24を省略してもよい。一方、本例のように他方の第1リブ23が形成されることによって、内筒19の超音波ホーンを当てる側とは反対側の部分を、外筒17に、他方の第1リブ23を介して受けることができるので、より安定して所定の位置に溶融部50を形成することができる。
【0045】
採血管ホルダ10の製造方法をさらに詳しく説明する。この製造方法では、ホルダ本体12を固定部(図示せず)に、フランジ15の長い方を第1方向である上下方向に一致させた状態で保持し、その状態で上側から超音波ホーン(図示せず)の先端を図1図2に矢印αで示す外筒の上端に当てた状態で、超音波振動を行って、ハブ40とホルダ本体12とを超音波溶着によって溶着して固定する。このとき、超音波ホーンの外筒17に対する接触位置は、外筒17の軸方向について、ネジ結合部52の軸方向中央位置、またはこの軸方向中央位置より、ホルダ本体12の採血管の装着側(図1図2の右側)である。
【0046】
このようにホルダ本体12にハブ40を超音波溶着によって固定する前には、ホルダ本体12にフランジ41aの側面を接触させることにより、ホルダ本体12に対してハブ40を軸方向に位置決めする。
【0047】
上記の採血管ホルダ10及びその製造方法によれば、ハブ40とホルダ本体12との結合時に、ハブ40が微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難く、ハブ40とホルダ本体12との安定的な固定を実現できる。
【0048】
具体的には、ネジ結合部によりハブ40とホルダ本体12とが適切な位置に位置決めされた上で、溶融部50によりハブ40とホルダ本体12とが固定される。このため、ハブ40が微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難く、ハブ40とホルダ本体12との安定的な固定を実現できる。
【0049】
さらに、溶融部50は、ハブ40の外周面における周方向及び軸方向の両方における一部で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着しているポイント溶着である。これにより、溶融部50をポイントとすることで、溶着時に過剰に溶け合ってしまうといった事態が生じにくく、安定的にハブ40及びホルダ本体12を固定することができる。なお、溶融部50は、ハブ40の外周面における周方向及び軸方向の一方のみにおける一部で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着しているポイント溶着としてもよい。これによっても、溶融部50で安定的にハブ40及びホルダ本体12を固定することができる。
【0050】
さらに、ポイント溶着は、ハブ40とホルダ本体12とをネジ結合部52で溶着している。これにより、ポイント溶着に伴う雄ネジ部43と雌ネジ部20との変形によって螺合が緩むことをより確実に防止しやすくなる。このため、ホルダ本体12とハブ40のさらなる結合強度の向上を図れる。また、溶着作業を行う際に、螺合でハブ40とホルダ本体12とを仮固定しやすくなるので、ハブ40とホルダ本体12との結合作業の作業性向上を図れる。なお、本例の構成において、溶融部とネジ結合部とを別の位置に形成することもできる。例えば、図2に点Qで示すネジ結合部52から外れた位置の、雄ネジ部43と内筒19内周面との接触部に、溶融部を形成することもできる。
【0051】
さらに、実施形態の採血管ホルダ10のホルダ本体12は、外筒17と、外筒17の内側に周方向の一部に設けられたリブ23、24を介して結合された内筒19とを有し、内筒19の内側にハブ40が配置され、内筒19とハブ40とは、内筒19を介して第1リブ23と対向する位置の内筒19の内周で、互いの樹脂が溶融した溶融部50を有する。これにより、外筒17があることで、内筒19やハブ40に外圧が加わり難くすることができ、輸送中におけるハブ40の脱離現象を抑止することができる。しかも、外筒17と内筒19との間にリブ23、24が設けられ、ハブ40と内筒19とは第1リブ23に対応する所定の位置で溶着固定されており、ホルダ本体12とハブ40とを安定的に固定させることができる。これによっても、ホルダ本体12とハブ40との結合時に、ハブ40が微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難くなる。
【0052】
さらに、溶融部50は、ネジ結合部52の軸方向中央位置か、軸方向中央位置より、ホルダ本体12の採血管の装着側で、ハブ40とホルダ本体12とを溶着している。これにより、図3に示したように、ホルダ本体12の採血管の装着側とは反対側の端部である先端部の内側に採血針保護用のコンテナ100を装着可能とし、コンテナ100を装着した状態でハブ40とホルダ本体12とを溶着する場合に、超音波溶着の作業時に超音波ホーンの先端のホルダ本体12に対する接触位置が、ホルダ本体12におけるコンテナ装着部から大きく離れる。このため、超音波ホーンの超音波振動がそのコンテナ装着部に伝達されることを抑制できるので、コンテナ100がホルダ本体12に熱溶着され、コンテナ100が取り外し不能となることを防止しやすくなる。
【0053】
さらに、実施形態の採血管ホルダの製造方法は、ホルダ本体12が、外筒17と、外筒17の内側に周方向の一部に設けられたリブ23,24を介して結合された内筒19とを有し、内筒19の内側にハブ40を配置し、外筒17の外周面において、内側に第1リブ23が位置する部分に超音波ホーンを当てて、ハブ40とホルダ本体12とを超音波溶着によって溶着する。これによっても、外筒17があることで、内筒19やハブ40に外圧が加わり難くすることができ、輸送中におけるハブ40の脱離現象を抑止することができる。しかも、ホルダ本体12とハブ40とを安定的に固定させることができるので、ハブ40が微小に傾き、的確な位置に刃先が位置しないといった問題が生じ難くなる。
【0054】
また、実施形態の採血管ホルダの製造方法は、ハブ40が、軸方向の一部に径方向外側に突出するフランジ41aを有し、ホルダ本体12にハブ40を溶着によって固定する前に、ホルダ本体12にフランジ41aの側面を接触させる。そしてこれによって、ホルダ本体12に対してハブ40を軸方向に位置決めする。このため、溶着作業を行う前に、ホルダ本体12に対してハブ40を容易に位置決めできるので、ホルダ本体12とハブ40との溶着作業を行いやすい。
【0055】
なお、内筒19と、ハブ40が、リブ23の内周位置で溶融部を有する場合には、ハブ40の雄ネジ部と内筒19の雌ネジ部とを省略して、ホルダ本体12とハブ40とを溶融部のみで結合する構成としてもよい。
【0056】
また、上記では、超音波ホーンでハブ40の外周面における周方向及び軸方向の両方の一部である点状部分に溶融部50を形成する場合を説明したが、本発明はこれに限定しない。例えば、超音波ホーンの先端を例えば中心角が90度より小さい円弧形等、外筒17の外周面の周方向に沿って長くした形状とし、ホルダ本体12とハブ40とを周方向に長い溶融部で溶着した構成としてもよい。また、超音波ホーンの先端を例えば外筒17の外周面の軸方向に沿って長くした形状とし、ホルダ本体12とハブ40とを軸方向に長い、または軸方向に間欠的に形成された溶融部で溶着した構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 採血管ホルダ、12 ホルダ本体、13 本体筒部、14 縦リブ、15 フランジ、16 保持部、17 外筒、19 内筒、20 雌ネジ部、23 第1リブ、24 第2リブ、25 孔、40 ハブ、41 先端部、41a フランジ、42 中間軸部、43 雄ネジ部、44 基端軸部、50 溶融部、52 ネジ結合部、80 採血針、100 コンテナ、102 採血管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11