(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157453
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】首掛け型装置用の留具
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20231019BHJP
【FI】
H04R1/00 328Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067384
(22)【出願日】2022-04-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】513190830
【氏名又は名称】Fairy Devices株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】藤野 真人
(72)【発明者】
【氏名】久池井 淳
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
【テーマコード(参考)】
5D017
【Fターム(参考)】
5D017BB04
(57)【要約】
【課題】安価かつ簡易的な構造の首掛け型装置用の留具を提供する。
【解決手段】ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部110,120を備える首掛け型装置100をユーザの首周りに装着するための留具1であって、左右の腕部110,120のそれぞれに取り付け可能であり、かつ、首掛け型装置100の装着時にユーザの正面側において互いに係合可能な一対の係合部材10,20を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部(110,120)を備える首掛け型装置(100)を、前記ユーザの首周りに装着するための留具(1)であって、
前記左右の腕部のそれぞれに取り付け可能であり、かつ、前記首掛け型装置の装着時に前記ユーザの正面側において互いに係合可能な一対の係合部材(10,20)を備える
留具。
【請求項2】
前記一対の係合部材は、それぞれ、
前記左右の腕部の着脱自在に取り付け可能な取付部(11,21)と、
前記取付部から前記左右の腕部の端部を超えて延出した延出部(12,22)と、
前記延出部に設けられた係合手段(30)を有する
請求項1に記載の留具。
【請求項3】
前記係合手段は、突起部(31)と穴部(32)の組み合わせであり、
前記突起部が前記一対の係合部材の一方に設けられ、前記穴部が前記一対の係合部材の他方に設けられている
請求項2に記載の留具。
【請求項4】
前記係合手段は、磁石(33)同士又は磁石と磁性体(34)の組み合わせであり、
前記磁石が前記一対の係合部材の一方に設けられ、前記磁石又は磁性体が前記一対の係合部材の他方に設けられている
請求項2に記載の留具。
【請求項5】
前記首掛け型装置は、前記2つの腕部を前記ユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部(130)を有するものであり、
前記本体部(130)の前記ユーザに対向する部分に取付可能な滑り止め手段(40)をさらに備える
請求項1に記載の留具。
【請求項6】
前記滑り止め手段は、前記本体部に巻き付け可能な一又は複数の環状部材(41,42)を含む
請求項5に記載の留具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首掛け型装置を装着するために用いられる留具に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、いわゆるウェアラブルデバイスの一種として、装着者の首周りに装着される首掛け型装置を提案している(特許文献1,特許文献2)。本願出願人が提案する首掛け型装置は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部を備えており、各腕部にマイクや、カメラ、各種センサなどが搭載されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6786139号公報
【特許文献2】特許第6719140号公報
【特許文献3】特許第6912135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、首掛け型装置は、ユーザの両肩の上に置くようにして装着することを想定した構造となっているが、ユーザはその装着中に、歩行したり、前屈みになったり、後ろに仰け反ったりするなど、様々な動作を行うことが予想される。そして、ユーザによってこのような動作が行われると、首掛け型装置の装着位置にずれが生じるおそれがある。特に、本願出願人が提案する首掛け型装置は、腕部の先端面にカメラが搭載されており、ユーザの正面側の風景を撮影することを特徴の一つとしたものであるが、首掛け型装置の装着位置がずれてしまうと、ユーザが見ているものとカメラによって撮影した風景が異なるという不具合が発生する。
【0005】
このような問題の解決手段の一つとして、本願出願人は、首掛け型装置をユーザの首周り装着するための衣服を提案している(特許文献3)。このような衣服は、首掛け型装置を安定的にユーザの首周りに固定できるというメリットがあるものの、製造コストが高く、また衣服の装着に手間がかかるという課題もある。このため、このような衣服の他に、より安価で簡便に装着できる別の選択肢があるとユーザにとっての利便性が高まるといえる。
【0006】
そこで、本発明は、安価かつ簡易的な構造の首掛け型装置用の留具を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、首掛け型装置100をユーザの首周りに装着するときに用いられる留具1に関する。首掛け型装置100は、ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部110,120を備える。首掛け型装置100は、ウェアラブルデバイスの一種であって、マイクや、カメラ、各種センサなどを搭載した電子機器である。なお、本発明の対象は、首掛け型装置100の装着を補助するための留具1であり、首掛け型装置100自体は本発明には含まれない。なお、本願明細書において「留具」とは、複数の部材を含むセットとしての意味合いを持つ。ここで、本発明に係る留具1は、一対の係合部材10,20を備える。一対の係合部材10,20は、首掛け型装置100の左右の腕部110,120にそれぞれ取り付け可能に構成されている。さらに、一対の係合部材10,20は、首掛け型装置100の装着時にユーザの正面側において互いに係合可能に構成されている。
【0008】
上記構成のように、一対の係合部材10,20をユーザの正面側に係合させることにより、安価かつ簡易的な留具1であっても首掛け型装置100をユーザの周りに安定的に配置することができる。すなわち、首掛け型装置100は、上方から見たときにU字型をなす構造となっており、一対の係合部材10,20を首掛け型装置100に取り付けることで、これらの一対の係合部材10,20と首掛け型装置100とによってユーザの首周りの全周を囲うことができる。従って、ユーザが首掛け型装置100の装着中に、歩行したり、前屈みになったり、後ろに仰け反ったりした場合でも、首掛け型装置100がユーザの首元から脱落することを防止できる。
【0009】
本発明に係る留具1において、一対の係合部材10,20は、それぞれ、取付部11,21、延出部12,22、及び係合手段30を有することが好ましい。取付部11,21は、首掛け型装置100の左右の腕部110,120に着脱自在に取り付け可能に構成された部位である。延出部12,22は、取付部11,21を左右の腕部110,120の先端付近に取り付けた場合に、この取付部11,21から左右の腕部110,120の端部を超えて延出可能な部位である。係合手段30は、この延出部12,22に設けられている。つまり、一対の係合部材10,20が持つ係合手段30が互いに係合することとなる。このように、一対の係合部材10,20の延出部12,22に係合手段30を設けることで、ユーザは自身の正面側(胸の前辺り)で係合手段30同士を係合させることができるため、この留具1を利用して首掛け型装置100を装着しやすくなる。
【0010】
本発明に係る留具1において、係合手段30は、突起部31と穴部32の組み合わせであってもよい。なお、突起部31と穴部32はそれぞれ一個ずつ設けることもできるし、突起部31一個に対して穴部32を複数個設けることもできるし、突起部31と穴部32をそれぞれ複数個設けることもできる。この場合、突起部31は一対の係合部材10,20の一方に設けられ、穴部32が一対の係合部材10,20の他方に設けられることとなる。これにより、簡単な構造で首掛け型装置100用の留具1を実現できる。
【0011】
本発明に係る留具1において、係合手段30は、磁石33同士の組み合わせ、又は、磁石33と磁性体34の組み合わせであってもよい。なお、磁石33同士の組み合わせの場合、両者は吸着し合う向きで配置される。なお、磁石33は、永久磁石であることが好ましいが、電磁石であってもよい。また、磁性体34としては、磁石33に吸着する性質の材料(鉄、ニッケル、コバルト等)が用いられる。この場合、磁石33が一対の係合部材10,20の一方に設けられ、これに吸着する磁石33又は磁性体34が一対の係合部材10,20の他方に設けられることとなる。これにより、簡単な構造で首掛け型装置100用の留具1を実現できる。また、係合手段30を磁石等で実現することで、ユーザも一対の係合部材10,20を係合させる操作を行いやすくなる。
【0012】
本発明において、首掛け型装置100は、2つの腕部110,120をユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部130を有するものであることが想定されている。この場合に、本発明に係る留具1は、本体部130のユーザに対向する部分に取付可能な滑り止め手段40をさらに備えることとしてもよい。これにより、ユーザの動作によって首掛け型装置100の装着位置がずれてしまうことを抑制できる。
【0013】
本発明に係る留具1において、滑り止め手段40は、本体部130に巻き付け可能な一又は複数の複数の環状部材41,42であることが好ましい。これにより、環状部材41,42を簡単に巻きつけるだけで、首掛け型装置100の装着位置のずれを抑制できる。特に、首掛け型装置100の本体部130には、接触センサやスピーカなどを搭載する場合があるが、環状部材41,42によって滑り止めを実現することで、これらのセンサやスピーカへの干渉を避けることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、安価かつ簡易的な構造で首掛け型装置用の留具を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る留具が開放された状態を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る留具が閉鎖された状態を示した斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係る留具が閉鎖された状態を示した背面図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態に係る留具が開放された状態を示した斜視図である。
【
図5】
図5は、第2の実施形態に係る留具が閉鎖された状態を示した斜視図である。
【
図6】
図6は、第2の実施形態に係る留具が閉鎖された状態を示した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0017】
[1.首掛け型装置]
まず、本発明に係る留具1を取り付けることのできる首掛け型装置100の例について説明する。この首掛け型装置100については、特許文献1(特許第6786139号公報)及び特許文献2(特許第6719140号公報)に記載された構成を参照できる。この首掛け型装置100は、複数の集音部(マイク)を備えていることから、装着者又はその対話者の発した音声を録音することができる。また、この首掛け型装置100は、撮像部(カメラ)を備えていることから、ユーザに装着された状態でその前方の風景を撮像することができる。以下では、主に首掛け型装置100のハードウェアについて説明する。
【0018】
例えば
図1~
図3に示されるように、首掛け型装置100を構成する筐体は、左腕部110、右腕部120、及び本体部130を備える。左腕部110と右腕部120は、本体部130の左端と右端から前方に向かって延出しており、首掛け型装置100は、平面視したときに装置全体として略U字をなす構造となっている。首掛け型装置100を装着する際には、本体部130を装着者の首裏に接触させ、左腕部110と右腕部120を装着者の首横から胸部側に向かって垂らすようにして、装置全体を首元に引っ掛ければよい。首掛け型装置100の筐体内には、各種の電子部品が格納されている。
【0019】
左腕部110と右腕部120には、それぞれ複数の集音部(マイク)140が設けられている。各集音部140としては、ダイナミックマイクやコンデンサマイク、MEMS(Micro-Electrical-Mechanical Systems)マイクなど、公知のマイクロフォンを採用すればよい。集音部140は、主に装着者とその対話者の音声を取得することを目的として配置されている。
図1に示されるように、左腕部110と右腕部120のそれぞれに3箇所ずつ集音部140を設けることが好ましい。ただし、左腕部110と右腕部120の集音部140の数はこれに限られず、例えば1~4個の範囲でそれぞれ選択することが可能である。これらの集音部140によって取得した音信号は、本体部130内に設けられた制御部(メインCPU)へ伝達されて所定の解析処理が行われる。また、本体部130には、このような制御部を含む電子回路やバッテリーなどの制御系が内装されている。
【0020】
また、左腕部110には、操作部150が設けられている。操作部150は、装着者による操作の入力を受け付ける。操作部150としては、公知のスイッチ回路又はタッチパネルなどを採用することができる。操作部150は、例えば音声入力の開始又は停止を指示する操作や、装置の電源のON又はOFFを指示する操作、スピーカの音量の上げ下げを指示する操作、その他首掛け型装置100の機能の実現に必要な操作を受け付ける。
【0021】
左腕部110には、さらに撮像部160が設けられている。具体的には、左腕部110の先端面に撮像部160が設けられており、この撮像部160によって装着者の正面側の静止画像や動画像を撮影することができる。撮像部160としては一般的なデジタルカメラを採用すればよい。撮像部160は、例えば、撮影レンズ、メカシャッター、シャッタードライバ、CCDイメージセンサユニットなどの光電変換素子、光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、及びICメモリで構成される。また、撮像部160は、撮影レンズから被写体までの距離を測定するオートフォーカスセンサ(AFセンサ)と、このAFセンサが検出した距離に応じて撮影レンズの焦点距離を調整するための機構とを備えることが好ましい。また、撮像部160は、いわゆる広角レンズを備えるものであることが好ましい。撮像部160によって取得された画像は、本体部130内の制御部に伝達され、画像データとして記憶される。また、撮像部160によって取得された画像をインターネットでサーバ装置へ送信することとしてもよい。
【0022】
右腕部120には、さらに非接触型のセンサ部170が設けられている。センサ部170は、主に首掛け型装置100の正面側における装着者の手の動きを検知することを目的として、右腕部120の先端面に配置されている。センサ部170の検知情報は、撮像部160の起動や、撮影の開始、停止など、主に撮像部160の制御に利用される。例えば、センサ部170は、装着者の手などの物体がそのセンサ部170に近接したことを検知して撮像部160を制御することとしてもよいし、あるいはセンサ部170の検知範囲内で装着者が所定のジェスチャーを行ったことを検知して撮像部160を制御することとしてもよい。センサ部170の例は、近接センサ又はジェスチャーセンサである。近接センサは、例えば装着者の手指が所定範囲まで近接したことを検知する。近接センサとしては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。ジェスチャーセンサは、例えば装着者の手指の動作や形を検知する。ジェスチャーセンサの例は光学式センサであり、赤外発光LEDから対象物に向けて光を照射し、その反射光の変化を受光素子で捉えることで対象物の動作や形を検出する。また、センサ部170での検知情報を、撮像部160、集音部140、及び/又は制御部(メインCPU)の起動に利用することも可能である。なお、本実施形態において、左腕部110の先端面に撮像部160を配置し、右腕部120の先端面にセンサ部170を配置することとしているが、撮像部160とセンサ部170の位置を入れ替えることも可能である。
【0023】
上記した左腕部110と右腕部120は、装着者の首裏に当接する位置に設けられた本体部130によって連結されている。この本体部130には、プロセッサやバッテリーなどの電子部品が内装されている。例えば、本体部130には、回路基板やCPU等の制御装置、メモリやストレージ等の記憶装置、通信装置、各種のセンサ装置が内装される。本体部130を構成する筐体は、
図1に示されるように、ほぼ平坦な形状となっており、平面状(板状)の回路基板やバッテリーを格納することができる。また、本体部130は、左腕部110及び右腕部120よりも下方に向かって延出する下垂部131を有する。本体部130に下垂部131を設けることで、制御系回路を内装するための空間を確保している。また、本体部130には制御系回路が集中して搭載されている。このため、首掛け型装置100の全重量を100%とした場合に、本体部130の重量は40~80%又は50%~70%を占める。このような重量の大きい本体部130を装着者の首裏に配置することで、装着時における安定性が向上する。また、装着者の体幹に近い位置に重量の大きい本体部130を配置することで、装置全体の重量が装着者に与える負荷を軽減できる。
【0024】
また、本体部130の内側(装着者側)には近接センサ180が設けられている。近接センサ180は、物体の接近を検出するためのものであり、首掛け型装置100が装着者の首元に装着されると、その首元の接近を検出することとなる。このため、近接センサ180が物体の近接を検出している状態にあるときに、集音部140、撮像部160、及びセンサ部170などの機器をオン(駆動状態)とし、近接センサ180が物体の近接を検出していない状態にあるときには、これらの機器をオフ(スリープ状態)、もしくは起動できない状態とすればよい。これにより、バッテリーの電力消費を効率的に抑えることができる。なお、近接センサ180としては公知のものを用いることができるが、光学式のものが用いられる場合には、近接センサ180の検出光を透過するために、本体部筐体に検出光を透過する透過部を設けるとよい。近接センサ180としては、光学式、超音波式、磁気式、静電容量式、又は温感式などの公知のものを採用できる。
【0025】
また、
図3に示されているように、本体部130の外側(装着者の反対側)には放音部190(スピーカ)が設けられている。放音部190は、本体部130の外側に向かって音を出力するように配置されている。
【0026】
なお、首掛け型装置100の構造的特徴として、例えば
図1から
図3に示されているように、首掛け型装置100は、ディスプレイやモニタなどの表示装置を有していない。このため、ユーザは、放音部190から出力される音声ガイドなどを参照し、前述した操作部150や非接触型のセンサ部170を利用して各ハードウェア要素のオン・オフ等の操作を行うこととなる。
【0027】
[2.留具]
続いて、前述した首掛け型装置100をユーザの首周りに装着するための留具1について説明する。本発明に係る留具1は、略U字型の首掛け型装置100専用のものとして用いられることを想定している。
【0028】
[2-1.留具の第1の実施形態]
図1から
図3は、本発明に係る留具1の第1の実施形態を示している。これらの図に示されるように、本実施形態に係る留具1は、互いに対となる第1の係合部材10と第2の係合部材20を含む。第1及び第2の係合部材10,20を構成する素材としては、それぞれ、例えばシリコーンゴムなど、エラストマーなどの伸縮性があり且つ一定の摩擦係数を持つ弾性材料が採用される。このため、第1及び第2の係合部材10,20は、弾性変形しやすく、また一定の滑り止め効果を持つものとなっている。
【0029】
図1等に示されるように、第1及び第2の係合部材10,20は、それぞれ、取付部11,21及び延出部12,22を有する。これらの取付部11,21と延出部12,22は一体的に成型されている。
【0030】
取付部11,21は、首掛け型装置100の腕部110,120に取り付けるための部位である。すなわち、第1の係合部材10の取付部11は首掛け型装置100の左腕部110に取り付けられ、第2の係合部材20の取付部21は首掛け型装置100の右腕部120に取り付けられる。本実施形態において、第1及び第2の係合部材10,20は、その中心に開口を持つ環状又は管状に形成されている。第1及び第2の係合部材10,20は、取付部11,21を含め、その全体が伸縮可能な弾性材料によって構成されている。このため、取付部11,21を弾性変形させてその開口を拡大させることで、その開口の中に首掛け型装置100の各腕部110,120を挿入することができる。その後、取付部11,21の伸長状態を解除してその開口を縮小させることで、その回復時に得られる収縮力によって取付部11,21が首掛け型装置100の各腕部110,120に保持される。
【0031】
第1及び第2の係合部材10,20を取り付ける位置は、首掛け型装置100の各腕部110,120の先端付近が好ましい。具体的には、首掛け型装置100の各腕部110,120の先端には撮像部160とセンサ部170が設けられており、各腕部110,120の中腹には集音部140や操作部150が設けられている。第1及び第2の係合部材10,20の取付部11,21は、これらの各種機器に干渉しないような位置に取り付けられることが好ましい。例えば、
図1に示したように、撮像部160と集音部140の間、あるいは、センサ部170と集音部140の間に、第1及び第2の係合部材10,20の取付部11,21が位置すると良い。より具体的には、先端面に設けられた撮像部160と集音部140から5~30mm程度の範囲内に、第1及び第2の係合部材10,20の取付部11,21が位置することが好ましい。
【0032】
延出部12,22は、第1及び第2の係合部材10,20が首掛け型装置100の各腕部110,120に取り付けられた状態において、取付部11,21から各腕部110,120の端部を超えて延出した部位である。この延出部12,22は、板状であり、環状又は管状の取付部11,21から延在している。具体的には、第1の係合部材10には第1の延出部12が形成され、第2の係合部材20には第2の延出部22が形成されている。各延出部12,22は、第1及び第2の係合部材10,20を首掛け型装置100の各腕部110,120先端付近に取り付けた状態において、各延出部12,22の端部が重なり合う程度の長さを有している。また、各延出部12,22も、取付部11,21と同様に伸縮可能な弾性材料で形成されている。このため、各延出部12,22を変形させながら、それらの端部を重ね合わせることができる。
【0033】
図1等に示されるように、第1及び第2の係合部材10,20の延出部12,22には、係合手段30が設けられている。係合手段30は、延出部12,22同士を重ね合わせたときに、両者を着脱自在に係合させるための手段である。
【0034】
図1から
図3に示した第1の実施形態では、この係合手段30として、突起部31と、これが嵌合する複数の穴部32の組み合わせが採用されている。すなわち、第1の係合部材10の延出部12には、第2の係合部材20の対向する位置に突起部31が形成されている。一方、第2の係合部材20の延出部22には、突起部31を嵌め込むことができる位置に複数の穴部32が形成されている。複数の穴部32は、第2の係合部材20の延出部22の長手方向に沿って並べられている。このため、ユーザは、第1及び第2の係合部材10,20が取り付けられた首掛け型装置100を装着する際に、突起部31を嵌め込む穴部32を選択することができる。これにより、ユーザは、自身の体格や装着時に着用している衣服にあわせて、複数の穴部32の中から、突起部31を嵌合させるのに適切な一つの穴部32を選択できる。
【0035】
図2及び
図3は、突起部31を穴部32に嵌合させた状態を示している。これらの図に示されるように、首掛け型装置100の装着時に、ユーザの正面側において、第1及び第2の係合部材10,20が互いに係合される。第1及び第2の係合部材10,20が係合すると、首掛け型装置100の左腕部110と右腕部120の先端部の間の空間が閉じられることとなる。すなわち、首掛け型装置100本体は平面視において略U字型であるが、首掛け型装置100に第1及び第2の係合部材10,20を取り付けてこれらを係合させたものは平面視において略O字型となる。これにより、首掛け型装置100と係合部材10,20とによって、ユーザの首元の全周囲を囲うことができる。その結果、係合部材10,20が首掛け型装置100から取り外されたり、あるいは係合部材10,20同士の係合状態が解除されない限り、首掛け型装置100はユーザの首元から脱落することはなくなる。これにより、ユーザは首掛け型装置100を安定的に装着することができる。
【0036】
本実施形態において、留具1には、さらに滑り止め手段40が含まれていてもよい。滑り止め手段40は、首掛け型装置100の本体部130とユーザの首裏(又はその衣服)との摩擦抵抗を高めることにより、首掛け型装置100の装着位置にずれが生じることを抑制するための手段である。このため、滑り止め手段40は、首掛け型装置100の本体部130のうち、少なくともユーザの首裏に対向する部分に取り付けられる。
【0037】
図1から
図3に示されるように、本実施形態では、滑り止め手段40として、2本の環状部材41,42が採用されている。環状部材41,42は、前述した係合部材10,20と同様に、シリコーンゴム等の伸縮性及び一定の摩擦係数を持つ弾性材料が採用されている。このため、環状部材41,42を伸長させて開口部を広げた状態で、その開口部の中に首掛け型装置100の本体部130を差し込む。これにより、環状部材41,42を首掛け型装置100の本体部130に取り付けることができる。また、前述したように、首掛け型装置100の本体部130には、近接センサ180や放音部190が設けられているが、このような環状部材41,42によれば、これらのセンサ等に干渉することなく、本体部130に滑り止め効果を付与できる。
【0038】
[2-2.留具の第2の実施形態]
続いて、
図4から
図6を参照して、本発明に係る留具1の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態については、前述した第1の実施形態と異なる構成を中心に説明を行い、第1の実施形態と同じ構成には同じ符号を付すことでその説明を割愛する。
【0039】
図4から
図6に示されるように、第2の実施形態に係る留具1では、第1及び第2の係合部材10,20同士の係合手段30として、突起部31と穴部32の組み合わせの代わりに、磁石33と磁性体34の組み合わせを採用している。すなわち、首掛け型装置100の左腕部110に取り付けられた第1の係合部材10の延出部12には磁石33が取り付けられており、首掛け型装置100の右腕部120に取り付けられた第2の係合部材20の延出部22にはこの磁石33に吸着する磁性体34が取り付けられている。磁石33と磁性体34を吸着させることで、首掛け型装置100を装着したユーザの正面側において、第1の係合部材10と第2の係合部材20を係合させることができる。
【0040】
係合手段30として、磁石33と磁性体34の組み合わせを採用することで、ユーザは、第1の実施形態で説明した突起部31と穴部32の組み合わせと比較して、より簡単に第1の係合部材10と第2の係合部材20を係合させることができるようになる。
【0041】
なお、
図4等に示した例では、第1の係合部材10に磁石33を設け、第2の係合部材20に磁性体34を設けることとしているが、これらの磁石33と磁性体34の位置は入れ替えることもできる。また、磁性体34の代わりに、別の磁石を採用することも可能である。この場合には、第1の係合部材10の磁石と第2の係合部材20の磁石とが反発しあわないように、2つの磁石の極性の向きを調整すればよい。
【0042】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0043】
1…留具 10…第1の係合部材
11…取付部 12…延出部
20…第2の係合部材 21…取付部
22…延出部 30…係合手段
31…突起部 32…穴部
33…磁石 34…磁性体
40…滑り止め手段 41…第1の環状部材
42…第2の環状部材 100…首掛け型装置
110…左腕部 120…右腕部
130…本体部 131…下垂部
140…集音部 150…操作部
160…撮像部 170…センサ部
180…近接センサ 190…放音部
【手続補正書】
【提出日】2022-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの首元を挟んだ位置に配置可能な2つの腕部(110,120)を備える首掛け型装置(100)を、前記ユーザの首周りに装着するための留具セット(1)であって、
前記左右の腕部のそれぞれに取り付け可能であり、かつ、前記首掛け型装置の装着時に前記ユーザの正面側において互いに係合可能な一対の係合部材(10,20)を備え、
前記一対の係合部材は、それぞれ、
前記左右の腕部に着脱自在に取り付け可能な取付部(11,21)と、
前記取付部から前記左右の腕部の端部を超えて延出した延出部(12,22)と、
前記延出部に設けられた係合手段(30)とを有し、
前記取付部と前記延出部が一体的に成型されている
留具セット。
【請求項2】
前記取付部と前記延出部は、伸縮可能な弾性材料によって構成されている
請求項1に記載の留具セット。
【請求項3】
前記係合手段は、突起部(31)と穴部(32)の組み合わせであり、
前記突起部が前記一対の係合部材の一方に設けられ、前記穴部が前記一対の係合部材の他方に設けられている
請求項1に記載の留具セット。
【請求項4】
前記係合手段は、磁石(33)同士又は磁石と磁性体(34)の組み合わせであり、
前記磁石が前記一対の係合部材の一方に設けられ、前記磁石又は磁性体が前記一対の係合部材の他方に設けられている
請求項1に記載の留具セット。
【請求項5】
前記首掛け型装置は、前記2つの腕部を前記ユーザの首裏に相当する位置にて連結する本体部(130)を有するものであり、
前記本体部(130)の前記ユーザに対向する部分に取付可能な滑り止め手段(40)をさらに備える
請求項1に記載の留具セット。
【請求項6】
前記滑り止め手段は、前記本体部に巻き付け可能な一又は複数の環状部材(41,42)を含む
請求項5に記載の留具セット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
[2-1.留具の第1の実施形態]
図1から
図3は、本発明に係る留具1の第1の実施形態を示している。これらの図に示されるように、本実施形態に係る留具1は、互いに対となる第1の係合部材10と第2の係合部材20を含む。第1及び第2の係合部材10,20を構成する素材としては、それぞれ、例えばシリコーンゴ
ム、エラストマーなどの伸縮性があり且つ一定の摩擦係数を持つ弾性材料が採用される。このため、第1及び第2の係合部材10,20は、弾性変形しやすく、また一定の滑り止め効果を持つものとなっている。