(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023157455
(43)【公開日】2023-10-26
(54)【発明の名称】駆動機構
(51)【国際特許分類】
F16H 25/12 20060101AFI20231019BHJP
F16H 25/20 20060101ALI20231019BHJP
F16D 13/52 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
F16H25/12 D
F16H25/20 B
F16D13/52 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022067390
(22)【出願日】2022-04-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】磯野 宏
【テーマコード(参考)】
3J056
3J062
【Fターム(参考)】
3J056AA33
3J056AA60
3J056BE07
3J056CA07
3J056CC37
3J056GA12
3J062AA07
3J062AB31
3J062AC01
3J062BA12
3J062CC02
3J062CC04
3J062CC16
3J062CD02
3J062CD22
3J062CG83
(57)【要約】
【課題】良好なロック機能を有し省電力且つ簡便な駆動機構を得る。
【解決手段】駆動軸Maを有するモータMと、駆動軸Maの回転を受ける第1軸s1を有し、回転を減速しつつ駆動対象に伝達する減速部Gと、を備え、駆動軸Maの回転と連動して、駆動軸Maの回転時に第1軸s1の回転が許容されるアンロック状態となり、駆動軸Maの停止時に第1軸s1の回転が規制されるロック状態となる切替部Cを備えた駆動機構K。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動軸を有するモータと、
前記駆動軸の回転を受ける入力軸を有し、前記回転を減速しつつ駆動対象に伝達する減速部と、を備え、
前記駆動軸の回転と連動して、前記駆動軸の回転時に前記入力軸の回転が許容されるアンロック状態となり、前記駆動軸の停止時に前記入力軸の回転が規制されるロック状態となる切替部を備えた駆動機構。
【請求項2】
前記切替部が、前記モータに従動回転する少なくとも一つの摩擦板と、前記摩擦板に対向配置される押圧板と、前記押圧板を前記摩擦板に押圧する付勢部材と、前記摩擦板の回転軸心と同軸心に設けられて前記押圧板の押圧を解除する回転―直動変換部と、を有するクラッチを備えている請求項1に記載の駆動機構。
【請求項3】
前記回転―直動変換部が、前記駆動軸および前記押圧板の何れか一方に保持されて前記駆動軸の軸心の周りに回動する少なくとも一つのボールと、前記駆動軸および前記押圧板の何れか他方または両方に形成されたカム面と、を備えている請求項2に記載の駆動機構。
【請求項4】
前記切替部に、前記押圧板を操作する第2モータが備えられている請求項2または3に記載の駆動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータと当該モータの駆動回転を減速させつつ駆動対象に伝達する減速部とを備えた駆動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような駆動機構としては例えば特許文献1に示すものがある(〔0006〕~〔0007〕および
図3参照)。
【0003】
この駆動機構は、転舵アクチュータの出力軸の回転を直動機構部によって直進運動に変換し、これを操舵リンク機構に伝達するステアバイワイヤ式の操舵装置である。この装置では、回転出力軸7の外径側にこれと同心に外輪部材13を配置すると共に、回転出力軸7に対して回転自在にキャリア14を支持し、このキャリア14に支持した遊星ローラ16を外輪部材13に螺合させている。
【0004】
遊星ローラ16と外輪部材13とは螺旋状の凸条25と周方向溝26とで螺合しており、遊星ローラ16の自公転を軸方向移動に変換して、外輪部材13または回転出力軸7に対して各遊星ローラ16が軸方向に相対移動する。この各遊星ローラ16の相対移動に応じた外輪部材13の軸方向移動が操舵リンク機構のアームに伝達され転舵輪が転舵されるというものである。
【0005】
この構成によれば、転舵アクチュエータの回転出力軸の回転を遊星ローラの自公転により外輪部材の軸方向移動に変換する。よって、遊星ローラの機構が回転力を直線運動に変換する変換機構として機能するだけでなく、減速機の役割も担うことになり、小型化および軸方向長さの短縮化が可能となる。これにより、ステアバイワイヤ式操舵装置の転舵機構をホイールハウス内に収めることができ、車内スペースを広く確保することができる。また、回転力を直線運動に変換する変換機構として遊星ローラを用いることで、荷重保持が可能となり車両の直進等で転舵輪からの逆入力を防止しつつ省電力化も可能になるとのことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の駆動機構にあっては、車両の直進等で転舵輪からの逆入力を防止するために、遊星ローラ16と外輪部材13における螺旋状の凸条25と周方向溝26の断面が台形状とされている。しかし、本構成の場合、回転出力軸からの駆動回転が直動に変換されるまでの機械効率が低下し、モータが大型化する等の課題があった。
【0008】
このように、上記従来の駆動機構においては、種々の解決すべき課題を有しており、駆動対象を動作させない場合には良好なロック機能が発揮され、省電力且つ簡便な駆動機構が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(特徴構成)
本発明に係る駆動機構の特徴構成は、
駆動軸を有するモータと、
前記駆動軸の回転を受ける入力軸を有し、前記回転を減速しつつ駆動対象に伝達する減速部と、を備え、
前記駆動軸の回転と連動して、前記駆動軸の回転時に前記入力軸の回転が許容されるアンロック状態となり、前記駆動軸の停止時に前記入力軸の回転が規制されるロック状態となる切替部を備えた点にある。
【0010】
(効果)
本構成の駆動機構は、モータを駆動しない非通電の状態においては切替部がロック状態に維持される。よって、常時は非通電状態に維持される駆動対象を制御する場合には省電力化を図ることができる。
【0011】
また、一つのモータで切替部のロック操作およびアンロック操作と減速部への出力を行うから構成部品が少なくなり低コスト化が可能となる。
【0012】
(特徴構成)
本発明に係る駆動機構にあっては、前記切替部が、前記モータに従動回転する少なくとも一つの摩擦板と、前記摩擦板に対向配置される押圧板と、前記押圧板を前記摩擦板に押圧する付勢部材と、前記摩擦板の回転軸心と同軸心に設けられて前記押圧板の押圧を解除する回転―直動変換部と、を有するクラッチを備えていると好都合である。
【0013】
(効果)
本構成では、モータの駆動軸が回転していない状態では押圧板が摩擦板に押し付けられ入力軸がロック状態となる。しかし、モータが稼働すると駆動軸が回転し、回転―直動変換部が押圧板の押し付けを解除する。このような付勢部材を用いた押圧式のクラッチであれば、装置の小型化が容易であり搭載性に優れた駆動機構を得ることができる。
【0014】
また、回転―直動変換部が摩擦板の回転軸心と同軸心状に配置してあるから、切替部における特に径外方向の寸法が小径化し易く、駆動機構の小型化が可能である。
【0015】
さらに、クラッチはモータの駆動軸と同軸心状に設けてあるから、モータの回転駆動力をクラッチに直接伝えるよう接続部を構成ることも容易となり、機械的効率の良い駆動機構を得ることができる。
【0016】
(特徴構成)
本発明に係る駆動機構にあっては、前記回転―直動変換部が、前記駆動軸および前記押圧板の何れか一方に保持されて前記駆動軸の軸心の周りに回動する少なくとも一つのボールと、前記駆動軸および前記押圧板の何れか他方または両方に形成されたカム面と、を備えた構成にすることができる。
【0017】
(効果)
本構成のように、カム面とボールを備えるクラッチであれば、駆動軸の回転に伴うカム面の効果により押圧板の押圧解除が容易に行われる。カム面は、駆動軸および押圧板のうちボールを保持する側と反対の部材に設けるが、加えてボールを保持する側に設けることもできる。ボールはカム面に対して転がるため双方の部材にカム面を設けることで摩擦損失を減らすことができる。このようなカム面とボールの配置は比較的簡単である。よって、構成が簡略化され小型化されたクラッチの設置が容易となる。
【0018】
また、カム面の傾斜角度を調節することで、駆動軸の回転角度に対するクラッチの断続応答性の設定も容易である。よって、当該駆動機構の適応対象を広げることができる。
【0019】
(特徴構成)
本発明に係る駆動機構にあっては、前記切替部に、前記押圧板を操作する第2モータを備えておいてもよい。
【0020】
(効果)
本構成では、切替部のロック解除を行うべく専用の第2モータを備えている。このような第2モータの駆動タイミングは、主たるモータの駆動タイミングに合わせて設定自由である。よって、例えば第2モータによってロック解除を行った後、直ちに主たるモータの回転駆動を減速部に出力することが可能となるなど、制御応答性に優れた駆動機構を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】第1実施形態に係るクラッチの要部を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
(概要)
本発明に係る駆動機構Kは、例えば車両の電動操舵装置用のアクチュエータ等に用いられる。電動操舵装置は、前輪或いは後輪の例えば操舵リンク1に組み込まれ、モータMの駆動によって直動部2の長さを調節することで車輪の方向が決定される。
【0023】
本実施形態に係る駆動機構Kを
図1および
図2に示す。駆動機構Kは、駆動対象である操舵リンク1の直動部2を駆動するよう、モータMおよび減速部Gを備えている。直動部2は、外側で回転する筒状部材2aと、この筒状部材2aの内部にボールねじ3を介して螺合し、往復移動する直動部材2bとを備えている。直動部材2bの一部には例えば凸状のガイド部2b1が設けられ、このガイド部2b1が操舵リンク1の内面に形成された溝部1aに案内されることで直動部材2bは回転を伴わずに往復移動が可能である。筒状部材2aの外周部には大径ギアg4が設けられ、減速部Gの出力ギアg3によって駆動される。尚、この筒状部材2aおよび大径ギアg4は減速部Gの第3軸s3として機能する。
【0024】
(減速部)
減速部Gは、後述のモータMの駆動軸Maによって駆動される入力軸s1たる第1軸s1と、出力ギアg3を有する第2軸s2とで構成される。第1軸s1および第2軸s2はともに、両端をベアリングで軸支されている。第1軸s1には小径の第1ギアg1が設けられ、第2軸s2には大径の第2ギアg2が設けられている。第2軸s2にはさらに小径の出力ギアg3が設けられ、第3軸s3である筒状部材2aの大径ギアg4に歯合している。このように本実施形態の減速部Gは3段のギア列を有する。
【0025】
減速部Gのギアは何れも平ギアであり簡便に構成されている。平ギアであれば、ギアの歯合による摩擦が少なく高効率のギア伝達機構を得ることができる。
【0026】
(モータ)
減速部Gの第1軸s1はモータMの駆動軸Maからの回転駆動が入力される。モータMの構成は任意であり、例えば12Vで駆動する各種の直流モータが用いられる。モータMは、別途備えられた制御部ECUにより、種々の運転状況に応じて回転速度と回転方向が設定されて駆動される。
【0027】
(クラッチ)
直動部材2bは、操向指示が出されていない状態では完全に停止していることが望ましい。しかし、車輪から操舵リンク1などに作用する逆入力は、減速部GおよびモータMの駆動軸Maを従動回転させようとする。直動部材2bに作用する逆入力は、ボールねじ3を介して筒状部材2aを従動回転させる。筒状部材2aに歯合する減速部Gは平歯車で構成されるため第2軸s2および第1軸s1も容易に従動回転する。さらに、第1軸s1に連動するモータMの駆動軸Maも、モータMが非通電である場合には従動回転する可能性がある。
【0028】
そこで、本実施形態では、当該従動回転を阻止する切替部Cを備えている。切替部Cは所謂クラッチC1であり、モータMに従動回転する少なくとも一つの摩擦板Pと、この摩擦板Pに対向配置される押圧板Qと、この押圧板Qを摩擦板Pに押圧する付勢部材Fとを備え、摩擦板Pの回転軸心Xと同軸心に設けられて押圧板Qの押圧を解除する回転―直動変換部が形成されている。
【0029】
この切替部Cにより、モータMの駆動軸Maが回転する際には、押圧板Qと摩擦板Pとの押圧が解除されて第1軸s1の回転が許容されるアンロック状態となる。また、駆動軸Maが停止している際には、押圧板Qが摩擦板Pに押し付けられ、第1軸s1の回転が規制されてロック状態となる。
【0030】
より具体的には、
図1および
図2に示すように、駆動軸Maと第1軸s1との間に摩擦板支持体Hが設けられている。摩擦板支持体Hは、円盤状の基部H1を有し、基部H1の一方には筒状のボス部H2を備えている。このボス部H2の内部に第1軸s1がスライド可能に係合されている。
【0031】
基部H1の他方の面には第1軸s1の回転軸心Xの周囲に沿って複数のカム面C1aが形成されている。カム面C1aはV字状の凹部として形成され、周方向に沿った中央が低く両側が高く構成されている。このカム面C1aの夫々にはボールC1bが当接し、ボールC1bは駆動軸Maの端面に形成した凹部Ma1に保持されている。つまり、駆動軸Maが正逆何れかの方向に回転すると、ボールC1bを従動回転させ、さらにこのボールC1bがV字状のカム面C1aの左右の何れかに乗り上げる。これにより、摩擦板支持体Hが回転軸心Xに沿って第1軸s1の側に押される。
【0032】
カム面C1aの角度を大きくするほど、駆動軸Maの回転角度に対する基部H1の押出量が増えるので、後述の摩擦板Pどうしの押圧を素早く解除することができる。
【0033】
尚、カム面C1aが駆動軸Maの端面に形成され、ボールC1bが基部H1に保持される構成であってもよい。また、カム面C1aは、駆動軸Maおよび押圧板QのうちボールC1bを保持する側と反対の部材に設けるが、加えてボールC1bを保持する側に設けることもできる。ボールC1bはカム面C1aに対して転がるため双方の部材にカム面C1aを設けることで摩擦損失を減らすことができる。
【0034】
このように、カム面C1aとボールC1bを備えるクラッチC1であれば、駆動軸Maの回転に伴うカム面C1aの効果により押圧板Qの押圧解除が容易に行われる。加えて、このようなカム面C1aとボールC1bの配置は比較的簡単である。よって、構成が簡略化され小型化されたクラッチC1の設置が容易となる。また、カム面C1aの傾斜角度を調節することで、駆動軸Maの回転角度に対するクラッチC1の断続応答性の設定も容易である。よって、当該駆動機構Kの適応対象を広げることができる。
【0035】
図2に示すように、基部H1はスラストベアリング4を介して環状の押圧板Qと接している。押圧板Qはハウジング5の底部に反力を取る複数の付勢部材Fによって基部H1に向けて常に付勢されている。ここでは付勢部材FとしてコイルスプリングFaを用い、このコイルスプリングFaを受けるために、ハウジング5及び押圧板Qには保持孔6が形成してある。この保持孔6の深さは、仮に押圧板Qがハウジング5に当接するまで押し戻された状態でもコイルスプリングFaが保持孔6の内部で完全に縮まない程度に設定してある。
【0036】
基部H1の外周面は略円筒状であるが、回転軸心Xに沿って延出する凸部7が少なくとも一つ形成してある。基部H1の外周側には複数の摩擦板Pが配置される。摩擦板Pは二種類あり、一つは、環状の内縁側に少なくとも一つの切欠き8を備え、基部H1の凸部7に係合するように構成された第1摩擦板P1である。もう一つは、環状の外縁に切欠き8を備えた第2摩擦板P2である。ハウジング5の内面にも回転軸心Xに沿って少なくとも一つの凸部7が延出しており、ここに第2摩擦板P2の切欠き8が係合する。
【0037】
つまり、付勢部材Fによって押圧板Qが第1摩擦板P1と第2摩擦板P2を押し付けることで、双方の摩擦板Pの相対回転が阻止され、中央の基部H1がロック状態となる。押圧板Qが回転しないように、押圧板Qに当接する最外側には第2摩擦板P2が配置される。
【0038】
以上のクラッチC1を備えることで、当該駆動機構Kは、モータMを駆動しない非通電の状態においては切替部Cがロック状態に維持される。よって、常時は非通電状態に維持されるため省電力化を高めることができる。
【0039】
付勢部材Fを用いた押圧式のクラッチC1であれば小型化が容易であり搭載性に優れた駆動機構Kを得ることができる。
また、一つのモータMで切替部Cのロック操作およびアンロック操作と減速部Gへの出力を行うから構成部品が少なくなり低コスト化が可能となる。
【0040】
回転―直動変換部であるクラッチC1が摩擦板Pの回転軸心Xと同軸心状に配置してあることで、クラッチC1における特に径外方向の寸法が小径化し易く、駆動機構Kの小型化が可能である。また、クラッチC1がモータMの駆動軸Maと同軸心状に設けてあるから、モータMの回転駆動力をクラッチC1に直接伝えるよう接続部を構成ることも容易となり、機械的効率の良い駆動機構Kを得ることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
図3には、本発明の第2実施形態を示す。ここでは、切替部Cを外側に配置し、減速部G、モータM、切替部Cの順に構成してある。減速部GおよびモータMの構成は同じであり、モータMの駆動軸Maに基部H1がスライド可能に係合している。基部H1の外周部には第1摩擦板P1および第2摩擦板P2が配置され、第2摩擦板P2には押圧板Qが当接している。ハウジング5と押圧板Qとの間には付勢部材Fが設けてある。ただし、切替部Cの動作機構が第1実施形態とは異なっている。
【0042】
ここでは、切替部Cとして第2モータM2を用いている。第2モータM2は切替部Cのさらに外側に設けられ、第2モータM2の第2駆動軸Ma2が押圧板Qに螺合している。第2駆動軸Ma2の先端には雄ねじ部9が形成され、押圧板Qの中央に形成されたボス部H2の内面には当該雄ねじ部9に螺合する雌ねじ部10が形成してある。雄ねじ部9および雌ねじ部10のピッチは第2駆動軸Ma2の回転に際して押圧板Qが素早く移動できるように適宜設定する。この場合、第2モータM2への通電が解除されると、押圧板Qの位置が不安定になる可能性がある。ただし、本実施形態では、付勢部材Fによって押圧板Qを第2摩擦板P2に向けて常時付勢しているので、第2モータM2が非通電の状態であっても、切替部Cはロック状態を維持することができる。
【0043】
第2モータM2は、制御部ECUによって作動制御される。その際には、モータMとのタイミングをとりつつ第2モータM2が正逆回転される。これにより、押圧板Qの第2摩擦板P2に対する押し付け状態が変化し、切替部Cのロック状態とアンロック状態が切り替わる。
【0044】
本構成であれば、第2モータM2が非通電の状態で減速部Gの回転を規制することができ、操舵リンクの状態を変更すべくモータMを駆動する際には、第2モータM2によってロック解除を行った後、直ちにモータMの回転駆動を減速部Gに出力することができ、制御応答性に優れた駆動機構Kを得ることができる。
【0045】
〔その他の実施形態〕
上記第2実施形態において、雄ねじ部9と雌ねじ部10のピッチが小さく、モータMからの逆入力によって第2駆動軸Ma2が従動回転し難い場合には、付勢部材Fを省略することもできる。つまり、第2モータM2を駆動して押圧板Qを第2摩擦板P2に押し付けた状態で通電を止め、押圧板Qの押し付け状態がそのまま維持されるのであれば、付勢部材Fは不要となる。
【0046】
上記クラッチC1においては、摩擦板Pどうしの押圧が解除された後は、駆動軸Maの回転駆動が基部H1に効率的に伝わるのが好ましい。そのためには、駆動軸Maの端面と、基部H1の表面との間に、互いに周方向に沿って回転力の伝達が可能な当接面を設けておくとよい。つまり、ボールC1bとカム面C1aとで摩擦板Pどうしの押圧を解除されたのちさらに駆動軸Maが回転された状態で、互いの当接面が接触する。これによって駆動軸Maから基部H1へ回転駆動力が伝わるようにし、ボールC1bとカム面C1aとが回転駆動のトルクを受けないようにする。これにより、ボールC1bおよびカム面C1aの摩耗等が低減され、クラッチC1部の耐久性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の駆動機構は、モータおよび減速部を用いて駆動対象を動作させる各種のアクチュエータに広く用いることができる。
【符号の説明】
【0048】
C 切替部
C1 クラッチ
C1a カム面
C1b ボール
F 付勢部材
G 減速部
K 駆動機構
M モータ
Ma 駆動軸
M2 第2モータ
P 摩擦板
Q 押圧板
s1 入力軸
X 回転軸心