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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023015747
(43)【公開日】2023-02-01
(54)【発明の名称】空気調和機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0022 20190101AFI20230125BHJP
【FI】
F24F1/0022
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021119701
(22)【出願日】2021-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 健吾
(72)【発明者】
【氏名】松井 大
【テーマコード(参考)】
3L049
【Fターム(参考)】
3L049BB08
3L049BD01
(57)【要約】
【課題】熱交換器と、ファンから吹き出された空気との熱交換効率を向上できる空気調和機を提供する。
【解決手段】空気を径方向に排気するシロッコファン52と、シロッコファン52を収容し、シロッコファン52の回転により空気をシロッコファン52の回転軸78の方向から吸入する開口部57と、吸入された空気が吹き出される開口である吹出口58と、吹出口58の左右に設けられる側面部63とを備えるスクロールケーシング56と、吹出口58から吹き出された空気を受ける熱交換器69と、天板16と底板15と側板とを備え、スクロールケーシング56と熱交換器69とを収容する筐体19とを備え、少なくとも一方の側面部63の内側面73には、吹出口58に接近するにつれて吹出口58の上縁86側から下縁88側に向かって線状に延び、吹出口58から吹き出される空気を整流する整流部が設けられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を径方向に排気するシロッコファンと、
前記シロッコファンを収容し、前記シロッコファンの回転により空気を前記シロッコファンの回転軸の方向から吸入する開口部と、吸入された空気が吹き出される開口である吹出口と、前記吹出口の左右に設けられる側面部とを備えるスクロールケーシングと、
前記吹出口から吹き出された空気を受ける熱交換器と、
天板と底板と側板とを備え、前記スクロールケーシングと前記熱交換器とを収容する筐体とを備え、
少なくとも一方の前記側面部の内側面には、前記吹出口に接近するにつれて前記吹出口の上縁側から下縁側に向かって線状に延び、前記吹出口から吹き出される空気を整流する整流部が設けられる
ことを特徴とする空気調和機。
【請求項2】
前記スクロールケーシングは、前記吹出口の上縁に連続する上面部を備え、
前記スクロールケーシングを流れる空気の上流側に位置する前記整流部の端部と前記吹出口側に位置する前記整流部の端部とを結ぶ直線と、前記天板とが成す角度は、
前記天板と前記上面部とが成す角度より大きく、
前記吹出口の下縁を通る前記シロッコファンの接線と前記天板とが成す角度より小さい
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和機。
【請求項3】
前記整流部は、前記回転軸の方向から見て、前記回転軸を通り、前記天板に直交する鉛直面より前記吹出口側の領域に形成される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の空気調和機。
【請求項4】
前記整流部は、前記回転軸の方向から見て、前記回転軸を通り、前記天板に直交する鉛直面に接近する位置に亘って設けられる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項5】
前記整流部は、前記側面部を溝状に窪ませることで形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気調和機。
【請求項6】
前記整流部は、前記側面部から突状に突出して形成される
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、様々な長さや形態の接続ダクトに合わせてシロッコファンの吹出口の開口面積を変えることが可能な空気調和機を開示する。この空気調和機は、熱交換器が収納された熱交換室と、シロッコファンが収納された送風室と、熱交換器室側に吹出口と、送風室側に吸込口と、吹出口及び吸込口にそれぞれ着脱可能なダクト接続フランジとを有する。
特許文献2は、一定した風速を確保することができ、快適な空気調和のできる空気調和機を開示する。この空気調和機は、回転軸方向から吸入した空気を径方向に吹き出す羽根車と、該羽根車を収容し該羽根車から吹き出される空気を羽根車の周りに周回させて外部に吹き出す吹出口に設けられたディフューザと、を有するシロッコファンを備える。またこの空気調和機のディフューザは、ディフューザから吹き出される吹出空気の吹出方向を横方向に広げる分流板と、分流板を取り付けるための複数の取付部とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-249287号公報
【特許文献2】特開2017-186944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、熱交換器と、ファンから吹き出された空気との熱交換効率を向上できる空気調和機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における空気調和機は、空気を径方向に排気するシロッコファンと、前記シロッコファンを収容し、前記シロッコファンの回転により空気を前記シロッコファンの回転軸の方向から吸入する開口部と、吸入された空気が吹き出される開口である吹出口と、前記吹出口の左右に設けられる側面部とを備えるスクロールケーシングと、前記吹出口から吹き出された空気を受ける熱交換器と、天板と底板と側板とを備え、前記スクロールケーシングと前記熱交換器とを収容する筐体とを備える。
少なくとも一方の前記側面部の内側面には、前記吹出口に接近するにつれて前記吹出口の上縁側から下縁側に向かって線状に延び、前記吹出口から吹き出される空気を整流する整流部が設けられる。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、熱交換器と、ファンから吹き出された空気との熱交換効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の実施の形態1における空気調和機が備える室内ユニットのシロッコファンの回転軸に沿った横断面図
図2】室内ユニットの縦断面図
図3】筐体と送風ファンとの縦断面図
図4】整流溝を示す図
図5】本開示の実施の形態2における空気調和機の室内ユニットが備える筐体と送風ファンとの縦断面図
図6】本開示の実施の形態3における空気調和機の室内ユニットが備える筐体と送風ファンとの縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示の基礎となった知見等)
発明者らが本開示に想到するに至った当時、熱交換器と熱交換させる空気を吹き出すシロッコファンを備える空気調和機において、空気調和機本体が備えるシロッコファンの吹出口側に接続されたダクト接続フランジを自在に移動させることを可能にし、吹出口の開口寸法を自由に変化させる技術があった。これにより、この空気調和機では、様々な長さや形態の接続ダクトに合わせて吹出口の開口面積を変えることが可能となる。
また、空気調和機において、シロッコファンにディフューザを設け、さらにディフューザには、吹き出される吹出空気の吹出方向を横方向に広げる分流板と、分流板を取り付けるための複数の取付部とが設けられ、複数の取付部から選択した特定の取付部に分流板が取り付け可能にする技術があった。これにより、この空気調和機では、シロッコファンに設けられたディフューザから吹き出される吹出空気の分流内容を切り替えることが可能となる。
【0009】
しかしながら、従来の空気調和機では、シロッコファンから吹き出される空気は、シロッコファンの径方向に吹き出され、当該シロッコファンを収めるスクロールケーシングの外周側に偏って流れる。このため、スクロールケーシングが備える吹出口から吹き出される空気は、スクロールケーシングの外周側での流速が大きく、スクロールケーシングの内周側での流速が小さくなる。したがって、シロッコファンから吹き出された空気は、熱交換器一部に偏って吹き付けられる。そして、より多くの空気が吹き付けられた熱交換器の一部における空気と冷媒との熱交換量に対して、より少ない空気が吹き付けられた熱交換器の他の部分との熱交換量は、少なくなる。すなわち、従来の空気調和機では、熱交換器に流入する冷媒と、空気との熱交換効率が低下するという課題を発明者らは発見し、その課題を解決するために、本開示の主題を構成するに至った。
【0010】
そこで本開示は、熱交換器と、ファンから吹き出された空気との熱交換効率を向上できる空気調和機を提供する。
以下、図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が必要以上に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0011】
(実施の形態1)
以下、図1図4を用いて、実施の形態1を説明する。なお、各図に示す符号FRは、平吊り状態における室内ユニットの前方を示し、符号UPは、室内ユニットの上方を示し、符号RHは、室内ユニットの右方を示す。以下の説明において、各方向は、これらの室内ユニットの方向に沿った方向である。
[1-1.構成]
[1-1-1.空気調和機の構成]
図1は、空気調和機1が備える室内ユニット10のシロッコファン52の回転軸78に沿った横断面図である。この図1は、シロッコファン52の回転軸78を通り、且つ室内ユニット10の前後方向、及び左右方向に沿った断面を平面視した図である。
【0012】
図1に示すように、本実施の形態の空気調和機1は、室内ユニット10を備える。空気調和機1は、室内ユニット10に収められた熱交換器69と、室外ユニットに収められた圧縮機や電子膨張弁等の減圧装置、室外熱交換器等で形成された空気調和機1の冷凍サイクルを備える。そして、空気調和機1では、この冷凍サイクルに冷媒を流通させることで、所定の被調和空間の空調を行う。
【0013】
室内ユニット10は、天井空間や壁内、あるいは床下等に設置されるダクト式の空気調和機1の室内機である。室内ユニット10は、設置個所に応じて送風方向を変更可能となるように、吹き出し口の配置方向を変更可能に形成される。このため、例えば、水平方向に送風する場合には、室内ユニット10は、吹き出し口が側方に位置する、所謂平吊り状態で設置される。また、上方に送風する場合には、室内ユニット10は、送風口が上方に位置する、所謂縦吊り状態で設置される。
以下の説明において、上下方向は、室内ユニット10を平吊り状態で設置した場合における上下方向を意味するものとする。
【0014】
図2は、室内ユニット10の縦断面図である。この図2は、複数の送風ファン35を避けた位置を通り、且つ室内ユニット10の前後方向、及び上下方向に沿った断面を当該室内ユニットの左方から視た図である。
図1図2に示すように、室内ユニット10は、前面板11、背面板12、一対の側板である右側板13及び左側板14、底板15、天板16により構成される筐体19を有する。前面板11には、左右方向全体に亘って、矩形の開口部である吐出口18が設けられる。また、背面板12には、矩形の開口部である吸込口59が設けられる。
【0015】
筐体19の内部空間は、仕切板21によって送風室22と熱交換室23に区画される。
仕切板21は、所定の長さ寸法を有した平板状部材である。この仕切板21は、長手方向の両端が右側板13、及び左側板14のそれぞれの略中央に連結される。
【0016】
送風室22には、電動機54と、複数の送風ファン35が配置される。
電動機54は、所謂モータである。
各送風ファン35は、シロッコファン52とスクロールケーシング56と主板71とを備える。シロッコファン52は、遠心ファンであり、回転軸78を備える。複数の送風ファン35が備えるシロッコファン52は、回転軸78によって互いに連結される。スクロールケーシング56は、シロッコファン52を収めるケーシングである。このスクロールケーシング56には、シロッコファン52の回転によって空気を取り込む開口部57と、シロッコファン52によって取り込まれた空気を所定方向に送り出すダクト状の送風部65とが設けられる。
【0017】
電動機54は、シロッコファン52の回転軸78に連結され、この回転軸78を介してシロッコファン52を回転駆動させる。
図1に示すように、本実施の形態では、送風室22には、3台の送風ファン35が配置される。なお、図1の構成は、一例であり、室内ユニット10が備える電動機54、および送風ファン35の数は、制限されない。
【0018】
仕切板21には、送風室22と熱交換室23とに連通する複数の連通開口25が設けられ、この連通開口25のそれぞれに送風ファン35の送風部65が接合される。また、送風ファン35の開口部57は、送風室22に開口する。
【0019】
送風ファン35が動作すると、送風室22から送風ファン35が吸込口59を介して吸気を行うことで、送風室22に外気が流入する。この外気が送風ファン35により、仕切板21に形成された連通開口25を通じて熱交換室23に送られる。
すなわち、送風室22は、送風ファン35の一次側の空間であり、熱交換室23は二次側の空間である。
【0020】
熱交換室23には、熱交換器69が配置される。熱交換器69は、室外ユニットから供給される冷媒を蒸発させる蒸発器、或いは、冷媒を凝縮させるコンデンサ(凝縮器)として機能する利用側熱交換器である。
【0021】
本実施の形態の熱交換器69は、所謂フィン・チューブ型の熱交換器であり、当該熱交換器69は、銅製の冷媒管に金属製の複数のフィンが接合され、全体として長尺の平板形状に形成される。
この冷媒管の一方の端部には、室外ユニットから送られた冷媒が流入する。流入した冷媒は、冷媒管によって熱交換器69の全体を流れ、当該冷媒管の他方の端部から再度室外ユニットへと流出する。
【0022】
この熱交換器69は、図1に示すように、長手方向が熱交換室23の左右方向に沿うように配置される。
また、熱交換器69は、図2に示すように、熱交換室23において、当該熱交換器69の上縁から下縁に向かうにつれて、前面板11側から仕切板21側に向かうように傾けられた状態で配置される。
すなわち、熱交換器69は、室内ユニット10の側面視で、仕切板21の上下方向に対して、上下方向が斜めになるように配置される。
これによって、熱交換器69は、一方の平面が仕切板21、及び各送風部65に対向し、他方の平面が吐出口18に対向して配置される。
【0023】
送風ファン35により送風室22に送られた空気は、主に各フィン同士の隙間を介して熱交換器69を通過するときに冷媒管を流れる冷媒と熱交換し、前面板11に形成された吐出口18から排気される。
【0024】
[1-1-2.送風ファンの構成]
図3は、筐体19と送風ファン35との縦断面図である。この図3は、1つの送風ファン35の左右方向における略中央を通り、且つ室内ユニット10の前後方向、及び上下方向に沿った断面を当該室内ユニット10の左方から視た図である。
次いで、送風ファン35の構成について詳述する。
上述の通り、送風ファン35は、空気を径方向に排気するシロッコファン52と、当該シロッコファン52を収容するスクロールケーシング56とを備える。
シロッコファン52は、周方向に多数の羽根が設けられたドラム状、あるいは円筒状に形成された遠心ファンである。当該シロッコファン52は、図3に示すように、回転軸方向から視て略環状に形成される。
【0025】
スクロールケーシング56は、シロッコファン52を格納するケーシング本体84と、当該ケーシング本体84から一方向に突出する送風部65とが設けられる。
ケーシング本体84は、シロッコファン52の回転軸方向に位置する一対の側板72を備える。各側板72には、上述の通り、シロッコファン52の回転軸方向に開口する開口部57が設けられる。送風ファン35は、シロッコファン52の回転によって、開口部57から空気を吸入する。
【0026】
送風部65は、ダクト状に形成され、当該送風部65の上面を形成する上面部61と、下面を形成する下面部62と、左右の側面を形成する側面部63を備える。各側面部63は、各側板72に連続した平板部である。
送風部65のケーシング本体84と反対側に位置する端部には、開口部である吹出口58が設けられる。この吹出口58には、上面部61と、下面部62と、各側面部63とのそれぞれの縁部で形成される開口端66が設けられる。
【0027】
図4は、整流溝60を示す図である。
図4に示すように、側面部63の少なくとも一方には、複数の整流溝60が設けられる。これらの整流溝60は、本開示の請求項に記載の整流部の一例である。
詳述すると、これらの整流溝60は、スクロールケーシング56の内部側の平面である内側面73に溝状に窪むことで設けられる整流部である。これらの整流溝60は、開口端66から側板72に向かって延びる線状の溝であり、これらの整流溝60は、互いに略平行となるように所定の間隔を空けて、スクロールケーシング56の上下方向に沿って、配列される。これらの整流溝60は、いずれもシロッコファン52の周面に沿うように弧状に湾曲して形成される。換言すれば、これらの線状の整流溝60は、所定の曲率で曲線を描くように形成される。
【0028】
本実施の形態では、これらの整流溝60の吹出口58側とは反対側に位置する端部は、回転軸53方向から見て、回転軸53を通る鉛直面83よりも、吹出口58から離間した位置に配置される。
ここで、鉛直面83は、室内ユニット10の上下方向に平行、且つ室内ユニット10の左右方向に平行な仮想面である。この鉛直面83は、天板16に直交する。各整流溝60の吹出口58側とは反対側に位置する端部は、この鉛直面83に交差し、さらに当該鉛直面83よりも吹出口58側から離間した位置に配置される。
【0029】
各整流溝60において、整流溝60の上流側端点から開口端66側端点へ仮想直線L1を引いた場合に、仮想直線L1と天板16とが成す角度θ1は、天板16に対する上面部61の角度θ2より大きい。また、この角度θ1は、下面部62の最下流位置から引いたシロッコファン52の接線L2が天板16と成す角度θ3より小さい。
【0030】
[1-2.動作]
以上のように構成された空気調和機1について、その動作を以下説明する。
空気調和機1では、シロッコファン52の運転により、吸込口59から空気を吸気し、開口部57より、回転軸方向にスクロールケーシング56に流入し、送風部65から熱交換器69へ吹き出され、熱交換器69で熱交換された調和空気が吐出口70より吐出される。
シロッコファン52から排気される空気は、シロッコファン52の径方向に吹き出され、スクロールケーシング56の外周側に偏って流れる。このため、スクロールケーシング56の送風部65から吹き出される空気は、熱交換器69の上部の流速が大きく、下部の流速が小さくなる。したがって、熱交換器69の上部へ流入する冷媒の熱交換量に対し、下部へ流入する冷媒の熱交換量が少なくなり、熱交換効率が低下するという虞があった。
【0031】
本実施の形態では、整流溝60を設けることで、シロッコファン52から径方向に排気されるスクロールケーシング56内で外周側に偏った気流は、整流溝60方向に誘導され、さらに整流溝60付近の気流が誘導された気流によって誘引され、吹出口58の下方向へ偏向する。
このように、スクロールケーシング56からの吹出気流が吹出口58の下方向へ偏向するため、熱交換器69の下部への流入空気の風速が増大し、熱交換器69に流入する空気の上下方向の風速分布を改善して熱交換効率を向上させることができる。
【0032】
[1-3.効果等]
以上のように、本実施の形態において、空気調和機1は、空気を径方向に排気するシロッコファン52と、シロッコファン52を収容し、シロッコファン52の回転により空気をシロッコファン52の回転軸53の方向から吸入する開口部57と、吸入された空気が吹き出される開口である吹出口58と、吹出口58の左右に設けられる側面部63とを備えるスクロールケーシング56を備える。また、空気調和機1は、吹出口から吹き出された空気を受ける熱交換器69と、天板16と底板15と、右側板13と、左側板14とを備え、スクロールケーシング56と熱交換器69とを収容する筐体19とを備える。そして、少なくとも一方の側面部63の内側面73には、吹出口58に接近するにつれて吹出口58の上縁86側から下縁88側に向かって線状に延び、吹出口58から吹き出される空気を整流する整流溝60が設けられる。
【0033】
これによって、吸入された空気がスクロールケーシング56からの吹出気流が下方向へ偏向するため、熱交換器69の下部への流入空気の風速が増大し、熱交換器69に流入する空気の上下方向の風速分布を改善して熱交換効率を向上させることができる。
【0034】
本実施の形態のように、スクロールケーシング56は、吹出口58の上縁86に連続する上面部61を備える。そして、スクロールケーシングを流れる空気の上流側に位置する整流溝60の端部と吹出口58側に位置する整流溝60の端部とを結ぶ仮想直線L1と、天板16とが成す角度θ1は、天板16と上面部61とが成す角度θ2より大きく、吹出口の下縁88を通るシロッコファン52の接線L2と天板16とが成す角度θ3より小さくなるようにしてもよい。
これによって、スクロールケーシング内で外周側に偏った気流は、整流溝方向に誘導、また整流溝付近の気流は誘導された気流によって誘引され、下方向へ偏向される。このため、シロッコファン52の回転により吸入された空気をよりスムーズに吹出口58の下面部62側に誘導することができる。
【0035】
(実施の形態2)
以下、図5を用いて、実施の形態2を説明する。
図5は、空気調和機1の室内ユニット10が備える筐体19と送風ファン35との縦断面図である。
図5において、図3と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
[2-1.構成]
図5に示すように、本実施の形態は、回転軸53方向から見て回転軸53を通る鉛直面83より吹出口58側の領域にのみ整流溝60が形成される点において、実施の形態1と異なる。これらの整流溝60の吹出口58側とは反対側に位置する端部は、鉛直面83から所定の距離を空けた位置に配置される。
【0037】
[2-2.動作]
以上のように構成された空気調和機1において、シロッコファン52から排気される気流は、接線方向に吐き出され、回転軸53を通る鉛直面83より吹出口58側から排気される気流は、天板16に向かうような鉛直方向の速度ベクトルを持たないため、整流溝60の側面に衝突することなく流入し偏向する。
このため、スクロールケーシング56に取り込まれた空気は、徐々に偏向するため、圧力損失の発生を抑制し、風量を維持することができる。
【0038】
(実施の形態3)
以下、図6を用いて、実施の形態3を説明する。
図6は、空気調和機1の室内ユニット10が備える筐体19と送風ファン35との縦断面図である。
図6において、図3と同一部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
[3-1.構成]
図5に示すように、本実施の形態は、回転軸53方向から見て、回転軸53を通る鉛直面83の近傍から吹出口58側へ向かって整流溝60が延出する点において、実施の形態1と異なる。また、これらの整流溝60の吹出口58側とは反対側に位置する端部は、実施の形態2で示した整流溝60よりも、吹出口58側から鉛直面83に十分に接近した位置に配置される。
【0040】
[3-2.動作]
これにより、シロッコファン52から排気された気流は、スクロールケーシング56内で回転軸53を通る鉛直面83を通過し、気流方向が吹出口58に向かって略水平方向になり整流溝60へ流入する。このことで、整流溝60内で徐々に偏向されるため、急偏向を抑制でき、整流性を向上させることができる。
【0041】
(他の実施の形態)
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態1から実施の形態3を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用できる。また、上記実施の形態1から実施の形態3で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
そこで、以下、他の実施の形態を例示する。
【0042】
上記実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、整流溝60が上流側から開口端66まで設けられている例が示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、上流側から開口端66に至るまでに整流溝60の開口端66側の端部、また、区切りが位置してもよい。
【0043】
また、上記実施の形態1では、整流溝60の断面形状が矩形である例が示されている。これにより、整流溝60への流入空気を囲い込み、整流溝60外へ流出することを抑制することができる。ただし、本開示はこれに限定されるものではなく、気流を誘導できるものであれば種々の幅および深さ、断面形状、また、端部の形状を採用してもよい。
【0044】
また、整流溝60は、気流が上流側から開口端66側へ誘導できるものであれば、種々の曲線および曲率、角度を採用してもよい。例えば、側面部63のシロッコファン52の最上点付近より整流溝60を形成する場合には、整流溝60を水平方向に平行に形成し始めた後に、開口端に向かうにつれて下面部62へ向かうように形成してもよい。これにより、シロッコファン52の最上点から排気される気流はシロッコファン52の接線方向に排気されるため、気流が整流溝60の内側面73と衝突するのを抑制することができる。
【0045】
また例えば、整流溝60の上流側および開口端66側の端面は、側面部63に対して種々の形状で接合してもよい。
例えば、上記実施の形態1では、整流溝60の上流側の端面を側面部63に対してR形状で接続している。これにより、整流溝60へ流入する気流は、段差による圧力損失の発生を抑制することができる。同様に、整流溝60は、開口端66側に位置する端面の下面部62側の角をR形状化している。これにより、整流溝60内の気流が下方へ吹き出す際、角での剥離を抑制することができる。
【0046】
上記実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、整流溝60が上流側から開口端66側まで同一の形状が維持された例が示されているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、空気調和機1は、気流が上流側から開口端66側へ誘導できるものであれば、上流側から開口端66側に至る間において、何度、整流溝60の幅および深さ、断面形状、端部形状の変更をしてもよい。
【0047】
上記実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、上面部61側の整流溝60から下面部62側の整流溝60まで同角度かつ同形状の整流溝60が並び設けられている例が示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、それぞれ異なる形状および角度、曲率、長さの組み合わせを採用してもよい。
また、左右の側面部63に整流溝60を配設する際、左右対称でなくても、異なる形状および本数、角度、長さ、配置の組み合わせを採用してもよい。
【0048】
また例えば、整流溝60を配設する場合には、少なくとも、上面部61付近から延伸する整流溝60を設けると好ましい。これにより、シロッコファン52の遠心力によりスクロールケーシング56の外周側に偏った多くの気流を下方へ偏向することができる。
【0049】
また、上記実施の形態1、実施の形態2および実施の形態3では、整流部の一例として、整流溝60を形成したが、これに限らず、気流を下方向へ偏向する手段として、内側面73から突出する突状部を採用してもよい。この突状部は、整流溝60と同様に、開口端66から側板72に向かって延びる線状に形成され、複数が互いに略平行となるように所定の間隔を空けて、スクロールケーシング56の上下方向に沿って配列される。これらの突状部は、いずれもシロッコファン52の周面に沿うように弧状に湾曲して形成され、所定の曲率で曲線を描くように形成される。
シロッコファン52から排気された気流は、突状部により整流され下方向へ徐々に偏向されるので、気流の急偏向による圧力損失の発生を抑制することができる。
【0050】
また、整流溝60を配設する際、いかなる製造方法および組立方法、材料、素材を採用してもよい。例えば、空気調和機1には、側面部63に対して着脱可能なアタッチメント式の整流溝60を取り付けることで配設する。これにより、整流溝60の形状をアタッチメント式に変更することが可能となり、熱交換器69の仕様や熱交換器69に対してスクロールケーシング56が取り付けられる位置に応じて、吹出気流の拡散方向を変更することができる。
【0051】
上記実施の形態1では、シロッコファン52が回転軸53方向中心に対して、2個連結したものを収納するスクロールケーシング56が配置されている例が示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、種々の形状および個数、組み合わせ、配置のシロッコファン52およびスクロールケーシング56を採用してもよい。
【0052】
上記実施の形態1では、I字状の熱交換器69がスクロールケーシング56の吹出口58がある側との距離が大きくなるように配置されている例が示されているが、本開示はこれに限定されるものではなく、種々の形状および配置の熱交換器69を採用してもよい。
【0053】
なお、上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様の例示であり、本発明の要旨の範囲において任意に変形、及び応用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示は、スクロールケーシングからの吹出気流を下方向へ偏向させることができるので、天井埋め込み型のダクト型室内機、天吊型室内機や床置型室内機等の冷凍サイクル装置の他にも、乾燥装置や給排気の換気装置等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 空気調和機
10 室内ユニット
15 底板
16 天板
18 吐出口
19 筐体
35 送風ファン
52 シロッコファン
53 回転軸
56 スクロールケーシング
57 開口部
58 吹出口
59 吸込口
60 整流溝(整流部)
61 上面部
62 下面部
63 側面部
65 送風部
66 開口端
69 熱交換器
70 吐出口
72 側板
73 内側面
78 回転軸
L1 仮想直線(直線)
L2 接線
θ1、θ2、θ3 角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6